JP3605843B2 - ケイ素化合物含有高硬度工具用焼結体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、立方晶窒化硼素(以下CBNと称す)を用いたケイ素化合物含有高硬度工具用焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】
CBNはダイヤモンドに次ぐ高硬度物質であり、その焼結体は主に鉄系材料の切削加工用工具として使用されている。この種の焼結体の一例は特開昭53−77811号公報や62−228451号公報に開示されており、焼入鋼や鋳鉄の切削において高い切削性能を示すことは上記市販品においても確かめられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のCBN焼結体工具では例えば鋳鉄の高速切削においては刃先の摩耗の進展が速く、その寿命が短かったり刃先が欠損するという問題があった。従って、この発明の目的は上記のCBN焼結体よりもさらに耐摩耗性に優れた高硬度焼結体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するため鋭意研究した結果、CBNの結合材の一成分としてケイ素含有化合物であるサイアロンを用いると優れた耐熱性と耐摩耗性が得られることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は、CBNを体積%で60%以上90%未満含有し、残部の結合材は(1) 10〜60重量%のサイアロン(SiAlON)、(2) 2〜7重量%のNi及び(3) 残部はCoとWの硼化物及び硼化アルミニウムから選択された化合物1種または2種以上の混合物および不可避不純物からなるケイ素化合物含有高硬度焼結体である。
【0005】
【作用】
この発明の焼結体工具が耐摩耗性に優れるのは以下の理由によるものと推測し得る。本発明の用途であるねずみ鋳鉄の高速切削において、本発明者らは以下の興味深い現象を発見した。すなわち上記の切削を行なうと、工具刃先にケイ素(Si)を含有する溶着物が生成し、これが保護膜となり刃先のすくい面および逃げ面の摩耗を著しく抑制することである。Siは一般に被削材である鋳鉄に含有され、これが供給源となり、従来のCBN焼結体においても耐摩耗性が多少向上することを発見したがSiの含有率は微量であるため刃先の保護による耐摩耗性向上は不十分であった。さらにSi化合物をX線回析により分析した結果、サイアロンであることが判明した。
このサイアロンは高温強度が高く耐摩耗性にも優れるこめ鋳鉄の高速切削のような刃先が高温となる場合に特に効果が現れたものと推測される。また、サイアロンはβ−サイアロンであることが望ましい。この理由は、β−サイアロンは特に高温強度に優れているからである。
【0006】
本発明のCBN焼結体に用いられるCBNは、この種の焼結体において通常用いられるものでよく、その結晶粒の大きさは数ミクロン以下とするのが好ましい。該焼結体中のCBN含有率は、体積%で通常60%以上90%未満、好ましくは65〜88%とする。30%未満であると焼結体の硬度や強度が低下し、また、90%をこえると相対的に結合材の量が減少し、高硬度の被削材や断続を有する被削材を切削した際に接触部に亀裂が発生し、欠損を生じ易くなる。
【0007】
結合材としてはその主成分として10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のサイアロン、及び2〜7重量%、好ましくは4〜6重量%のNiと残部がCoとWの硼化物及び硼化アルミニウムからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。特にサイアロンとしてはβ−サイアロン(Si6−z Alz Oz N8−z 、0<Z≦4.2)が高温強度に優れているので好ましい。このほか、α−Si3 N4 のSi,Nの一部がAl,Oにて置換されたα−サイアロンも用いることができる。このサイアロンは市販品でもよく、またSi3 N4 ,AlN,SiO2 ,Al2 O3 等の粉末を混合し熱処理することにより合成することができる。サイアロンは前記のごとく、鋳鉄の高速切削時にこれが保護膜となり刃先のすくい面および逃げ面の摩耗を著しく抑制する効果がある。このサイアロンが結合材中で10重量%未満であるとその供給が不十分となり、十分な耐摩耗性向上の効果が得られない。一方、60重量%を越えると、相対的に、CBNと強固な結合をせしめるCoとWの硼化物及び/又は硼化アルミニウムの化合物の量が減少し、焼結体として十分な強度が得られない。上記CoとWの硼化物及び/又は硼化アルミニウムは超高圧焼結体にてCBN粒子と強固に結合するばかりでなく、優れた耐摩耗性も有する。
【0008】
また結合材中には、2〜7重量%、好ましくは4〜6重量%のNiを含む。Niはその作用としては超高圧焼結中にCBN粒子との漏れ性が良いためにCoとWの硼化物との結合を促進せしめるもので、2%未満では充分な結合強度が得られない。7%を越えると、CBNと結合材との結合強度が高くなるものの、結合材自体の耐摩耗性が悪くなるので好ましくない。
また、Niは焼結後のはCoとWの硼化物に固溶しているものと思われる。さらに、不可避不純物としては、WC,Al2 O3 がX線回折によって確認された。
【0009】
【実施例】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明する。
(実施例1)
表1に示すCBN含有率と組成の結合材を超硬合金製ポットおよびボールを用いて配合し、混合したあとMo製容器に充填し圧力50kb,1450℃で25分間焼結し焼結体を得た。さらに、この焼結体を切削チップの形に加工し、切削工具とした。
この工具を用いて、ねずみ鋳鉄の板(100×400mm,3箇所にφ80の穴)の上面のフライス切削テストを行った。
切削条件はV=1200m/min,d=0.15mm,f=0.10mm/刃、乾式で行った。この結果を表1に示す。表中、No.1〜6は本発明の実施例、No.7〜10は比較例である。
【0010】
【表1】
【0011】
以下に本発明の好ましい実施態様を要約して示す。
(1)β−サイアロンを結合材中20〜50重量%の割合で含有させる請求項1に記載のケイ素化合物含有高硬度工具用焼結体。
(2)CBNを含有する焼結体であって、CBNを体積%で65〜88%含有し、残部の結合材が
(イ)サイアロン 20〜50 重量%
(ロ)Ni 4〜6 重量%
(ハ)CoとWの硼化物、窒化アルミニウム及び硼化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種
(ニ)不可避的不純物 残部
からなることを特徴とするケイ素化合物含有高硬度工具用焼結体。
(3)サイアロンがβ−サイアロンである上記(2)記載のケイ素化合物含有高硬度工具用焼結体。
【0012】
【発明の効果】
以上の説明のごとく、この発明ではCBNの他に結合材中に10〜60重量%のサイアロン(SiAlON)および2〜7重量%Niおよび残部はCoとWの硼化物及び硼化アルミニウムからなる群から選択された化合物の1種または2種以上の混合物および不可避不純物から構成される焼結体を得ことができ、さらにこの焼結体をもちいて作製した工具は優れた耐摩耗性を得ることが出来る。よって、例えば、ねずみ鋳鉄の切削速度1000m/min,を越える高速切削において有効である。さらに、鋼等の鉄系金属切削においても、本発明の工具は優れた耐摩耗性を示すことが確認された。
Claims (2)
- 立方晶窒化硼素を含有した焼結体工具において、該焼結体は立方晶窒化硼素を体積%で60%以上90%未満含有し、残部の結合材は(1) 10〜60重量%のサイアロン(2) 2〜7重量%のNi及び(3) 残部はCoとWの硼化物及び硼化アルミニウムから選択された化合物1種または2種以上の混合物および不可避不純物からなるケイ素化合物含有高硬度工具用焼結体。
- 前記結合材のサイアロンの組成がβ−サイアロン(Si6−z Alz Oz N8−z、0<Z≦4.2)である請求項1に記載のケイ素化合物含有高硬度工具用焼結体。
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