JP3605571B2 - 貴金属元素で処理された金属基複合材料およびその製造方法 - Google Patents

貴金属元素で処理された金属基複合材料およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複合材料、とくに多孔質体なプリフォームの外表面ならびに空隙内の表面に、所要の方法にて貴金属類元素とくにAgを析出させてこれを被覆し、このようにして得られたAg被覆プリフォームの空隙中に、Alやその合金からなるるマトリックス金属・合金 (以下は、単に金属として表示する) を含浸させることにより複合化してなる、貴金属元素で処理された金属基複合材料、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強化材にて形成された多孔質プリフォームに、マトリックスとなる金属の溶湯を侵入含浸させて、分散強化型あるいは繊維強化型の金属基複合材を得る手法としては、例えば、特開昭61−295344号公報、特開平8−117964号公報等に開示されている溶融金属浸透法や溶湯鋳造法等などの技術から知られている。
【0003】
しかし、多孔質体中に金属溶湯を含浸させて複合材を製造する上記従来技術は、最表層面が酸化物などの化学的に安定な反応生成物層で覆われているか、または酸化物などが不純物として化学的、物理的に吸着した状態にあるため、含浸用金属溶湯と成形体 (プリフォーム等) との濡れ性が悪く、これらを単に接触させるだけでは複合化が十分ではなかった。このことは、従来技術の場合、材料の複合化に対し、金属自由表面が有する活性エネルギーを有効に利用できなかったことを意味している。
これに対し、多孔質体の空隙中に金属の溶湯を確実に含浸させて複合化する方法も検討されたが、そのためには非常に高い加圧力を必要とし、またはプリフォームを不活性ガス中で高温に予熱するか、濡れ性を改善するための特殊な元素や化合物を、溶湯中またはプリフォーム中に、添加することが必要であった(例えば、特開昭61−165265号公報、特開昭62−67133 号公報等) 。もちろん、そのためには、加圧や予熱のための特別な付帯設備が必要であった。
【0004】
その他の従来技術として、金属溶湯に圧力を加えず、しかもプリフォームの予熱も不要とする製造方法の提案もある(例えば、特開平1−279713号公報、特開平1−279720号公報、特開平1−279721号公報など)。
しかし、加圧や予熱を必要としないこれらの従来技術は、いずれもプリフォーム中に金属ふっ化物を所定量添加し、ふっ素による不純物の還元作用を利用して濡れ性を改善することで複合化を促進する方法である。ただし、こうした方法は本来、材料の複合化に対し金属自由表面が有する活性化エネルギーを有効に利用するものではない。しかも、かかる金属ふっ化物中に含まれるふっ素というのは、常温下では気体であり、あらゆる元素の中で最も高い電気陰性度を示し、最も反応性に富む物質であって、ヘリウム、ネオン、アルゴン以外のすべての元素と反応する。従って、このような金属ふっ化物等を工業用途に多用することは、環境上好ましい方法ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明の目的は、加圧や予熱を行う必要がなく、また反応性の良いふっ化物の添加を必要とせず、多孔質成形体とマトリックス金属との密着性を改善して両者の良好な複合化を実現してなる金属基複合材料を、簡便にかつ低コストにて製造することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、異種金属どうしの複合化における上述した問題点を克服するため、溶融金属浸透法による複合化技術について検討した。
その結果、多孔質プリフォームとマトリックス金属溶湯との濡れ現象において問題となるのは接触抵抗であり、良好な複合化を実現するには前記接触抵抗を低下させることが必要であるとの知見を得た。そのための方法として、本発明では、プリフォームの外表面あるいは空隙内表面に予め、貴金属類元素,例えば、Au, Ag, Pt, Pd, RuおよびRhの1種以上の成分を析出させて被覆しておくことにした。特に、前記貴金属類の中でも銀 (Ag) は接触抵抗の低下に対して頗る有効に作用することがわかった。
また、このような研究の過程で、発明者らは、プリフォームの空隙内へのAgの析出法として、銀鏡反応処理等を利用すれば、複合化に適したAgの効果的な析出が得られ、いわゆる良好な複合化が確実にできることを見い出した。
【0007】
即ち、本発明は、金属・合金からなる平均気孔径が 10 30 μmで気孔率が 20 80 vol %の多孔質プリフォームの外表面ならびに空隙内表面が、Au, Ag, Pt, Pd, RuおよびRhのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の貴金属類元素からなる複合化促進材によって覆われていると共に、このプリフォームの空隙中には、AlまたはMg,CuおよびSiのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含むAl合金からなるマトリックス金属を含浸してなることを特徴とする、貴金属元素によって複合化促進処理された金属基複合材料である。
【0008】
また、本発明は、
(i) 金属・合金からなる平均気孔径が 10 30 μmで気孔率が 20 80 vol %の多孔質プリフォームの外表面ならびに空隙内表面に、Au, Ag, Pt, Pd, RuおよびRhのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の貴金属類元素を被覆し、その後、このプリフォームの空隙中に、AlまたはMg,CuおよびSiのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含むAl合金からなるマトリックス金属を含浸させて複合化することを特徴とする貴金属元素で処理された金属基複合材料の製造方法、および、
(ii) 金属・合金からなる粉末の表面に、Au, Ag, Pt, Pd, RuおよびRhのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の貴金属類元素を被覆して原料粉末とし、次いで、少なくとも一部がそうした原料粉末によって構成されている多孔質のプリフォームを成形し、その後、かかるプリフォーム空隙中に、AlまたはMg,CuおよびSiのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の元素を含むAl合金からなるマトリックス金属を含浸させて複合化することを特徴とする貴金属元素で処理された金属基複合材料の製造方法、を提案する。
【0009】
なお、本発明においては、上記プリフォームとしては、このプリフォームの空隙中にマトリックス金属を、充填率:90〜150 mass%の割合で含浸させること、上記プリフォーム成形体またはプリフォーム成形用原料粉末への貴金属類元素の析出被覆方法として、銀鏡反応法や無電解めっきの還元法、イオン置換反応法あるいは蒸着法を用いること、および上記プリフォーム中へのマトリックス金属の含浸後は熱処理を施すこと、が好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
金属等の複合化技術としては、一般に、はんだ付け、ろう付け、固相溶接等が知られている。これらの方法では、濡れの接触抵抗を増大させている酸化膜などの汚染物質を除去するために、何らかの活性な物質 (フラックス) で前処理を行うのが普通である。即ち、フラックス処理により、本来の活性な表面を得て濡れ性を確保するのである。しかしながら、こうした方法の場合、多孔質体の場合には、内部構造である気孔経路網 (空隙の形態) が非常に複雑であるため、濡れ性の制御は困難を極める。それは、多孔質体というのは、気孔 (空隙) の存在を無視した見かけの表面積に対する真の表面積というのが、通常は数倍にも及ぶため、その気孔内壁面まで考慮して複合化に悪影響が出ないようにフラックス処理を行うことは、特に工業的規模で行うことは困難だからである。
【0011】
そこで発明者らは、上記フラックス処理に代わるものとして、プリフォームの表面,即ち外表面ならびに空隙内表 (壁) 面に対し、予め複合化に際してはろう剤としての作用を担う貴金属類元素、例えば、Au, Ag, Pt等を、析出させて被覆しておくことで、多孔質プリフォーム全表面の濡れの接触抵抗を軽減することを考えた。ただし、多孔質体全表面への上記元素の析出被覆というのは難しい技術であり、例えば通常の電気めっき法だけの単純な適用では十分でない。もちろん、その他の無電解めっき法や蒸着法 (PVD,CVD)などもあるが、完全ではない。
【0012】
このような背景の下で発明者らは、TiやNi,Co,Feなどまたはこれらを主要な成分とする合金を、できれば低酸素分圧下で成形して得られる多孔質プリフォームに、例えば、還元性有機物の検出反応として知られる銀鏡反応 (還元性有機物の水溶液に硝酸銀溶液とアンモニア水を加えて加熱することにより、Agのアミン錯体の還元を導いて容器壁に金属Agを析出させて薄膜化した銀鏡 (Agめっき) を得るめっき反応) 処理などを適用すると、めっき膜としては不十分ながらも、1μm以下の極薄い金属銀 (Agの析出物) の膜が得られることがわかった。そして、この銀の析出物の膜は、AlまたはMg,CuおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含むAl合金からなるマトリックス金属との溶融金属浸透法による複合化の際に必要な、フラックスあるいはろう材としての役割を担う、複合化促進材としての作用をもつことを突き止めた。
【0013】
なお、前記銀鏡反応のような作用効果は、同じ原理に基づく無電解めっきの還元法であってもよく、この場合、Ag以外の貴金属類元素,例えばAu, Pt, Pd, Ru,Rhのうちから選ばれる1種以上の元素を析出させる場合に有効である。さらには、イオン置換反応法や蒸着法の適用も場合によっては可能であり、こうして得られた貴金属類の薄膜もまた、上記のAgの場合と同様に複合化促進作用をもっていることがわかった。
【0014】
以上説明したように、多孔質体 (プリフォーム) 外表面,空隙内表面に薄い貴金属類析出元素からなる複合化促進材の膜,例えばAgの薄膜があると、溶融状態にあるマトリックス金属と接触してこの膜が加熱されると、溶湯温度以下の低融点固溶体を瞬時にして形成し、必要最小限の液相を現出して汚染物質を除去すると同時に、毛細管現象における粘着力を確保して、濡れ性を改善し、金属どうしの良好な複合化を実現して強固に一体化するのである。
しかも、この複合化技術の特徴は、加圧や予熱を行う必要が全くなく、しかも反応性の高いふっ化物や浸漬作業において水素化物などを利用する必要がないので、作業も安全で簡便に多孔質体プリフォームとマトリックス金属・合金溶湯との良好な濡れ性を確保できるようになる。
【0015】
つまり本発明は、多孔質体 (プリフォーム) の外表面あるいは空隙内表面に析出形成 (被覆) させる貴金属類析出元素、例えばAgの膜が活性な表面を保護し、そして溶融状態にあるマトリックス金属との接触時には、この析出貴金属類元素の膜が、濡れ性を改善して両者の結びつきを強化するための、一種のろう材としての作用を有することに着目して開発した、安全かつ簡便な金属基材料の複合化技術である。
【0016】
次に、溶融金属浸透法を利用する本発明に係る金属基複合材料の製造方法について説明する。
本発明に係る、貴金属元素による複合化促進処理が施された金属基複合材料の製造に当たっては、まず、複合化を図ろうとする金属 (Ti,Ni,Co,Feなど) 基の多孔質プリフォーム体を、好ましくは低酸素分圧下で成形し、次いで、その多孔質プリフォームの表面に、上述した銀鏡反応法や無電解めっき還元法を適用して、Au, Ag,Pt, Pd, RuおよびRhのうちから選ばれる1種または2種以上の貴金属類元素、とくに好ましくはAgの析出処理を行って、プリフォーム外表面ならびに空隙内表 (壁) 面に、該貴金属類元素を析出させて被覆する。
【0017】
また、貴金属類元素による複合化促進処理が施された上記多孔質プリフォームの形成方法としては、その他に前記金属 (Ti,Ni,Co,Feなど) の原料粉末表面を、予め前記貴金属類元素にて被覆しておき、こうして得られたAg等被覆原料粉末を、少なくとも原料粉末の一部に混合して上記と同様に低酸素分圧下でプリフォーム体を成形したものであってもよい。この場合は、成形後のプリフォームに、銀鏡反応等による貴金属類元素の被覆処理が、少なくとも一部において不必要になる場合がある。
【0018】
このようにして成形した多孔質プリフォームの外表面および空隙内表面に析出させて被覆した貴金属類元素の薄膜、例えば、銀鏡膜は、該プリフォームをマトリックス金属溶湯中へ浸漬して含浸処理する時に、両金属の複合化促進材としての作用をするため、プリフォームの表面とマトリックス金属溶湯との間の濡れ抵抗を小さくする。従って、かかる含浸処理に当たって、予熱や外部加圧を行なわない単純浸漬処理を行っても、十分な浸透圧を有するので、いわゆる大気中でも両者の効果的な複合化が可能になる。
【0019】
上記プリフォームは、TiやNi,Fe,Coなどまたはこれらを主要な成分とする合金を、N,Ar, Heなどの不活性ガス雰囲気下で、好ましくは100 Pa以下の酸素分圧に制御された環境下で成形し、平均気孔径10〜30μm、気孔率20〜80 vol%の多孔質体としたものである。
【0020】
かかる多孔質プリフォームの成形方法としては、減圧プラズマ溶射法、粉末冶金焼結法 (プレス成形法,射出成形法) などが有利に適合する。特に、減圧プラズマ溶射法を採用すると、薄肉で複雑な形状のプリフォームを作製する点で有利である。
【0021】
このようにして得られた多孔質プリフォームの外表面および空隙内表面には、上述したように、厚みが1μm以下の貴金属類元素からなる複合化促進材の薄膜が形成される。その析出の方法としては、例えば、Agであれば上述した銀鏡反応処理が好適であり、白金族元素の場合、無電解めっきの還元法やイオン置換反応を利用する方法、あるいは蒸着法をも利用することができる。
【0022】
なかでも、銀鏡反応処理については、とくにグルコースを還元剤とする処理法は、反応速度が速く、緻密な銀が得られるので好ましい。例えば、Tiのプリフォームの例では、表面酸化膜が緻密で安定であることから、良好なAgの析出を得るための反応時間としては20〜70時間を必要とする。この場合もし、製造時の雰囲気制御が不十分であれば、240 時間反応させても良好な析出膜が得られない場合があることは注意を要する。この意味では、好適な雰囲気制御を行うことが好ましい。その他のプリフォームの例では、Niで10〜50時間、Coおよび13%Cr鋼では5 〜30時間程度の反応時間が好適と考えている。
また、その他の銀鏡反応処理法としては、ホルムアルデヒドを還元剤とする宮田法やナーカス法、あるいは還元剤として酒石酸塩、硫酸ヒドラジン、グリオキザルを用いる方法等がある。ただし、Agの標準単極電位(0.8V) は極めて高いので、もし、被めっき体の標準単極電位がAgより低い金属の場合には、イオン置換反応を利用してもよい。
しかしながら、無電解めっきの還元法を利用できるAg以外の貴金属類元素のうち、Ag同様の複合化促進化効果を有する例としては、Auおよび白金族元素すなわちPd, Ru, Rhが挙げられる。しかし、無電解めっきの還元法によりNi−P、Cuを析出させた場合には、複合化促進効果は確認できなかった。
【0023】
なお、上記銀鏡反応処理、あるいは無電解めっきの還元法というのは、金属や合金等の粉末表面にも容易に被覆することができるので、プリフォーム成形前の原料粉末の表面に、予め前記貴金属類元素を析出被覆し、こうして得られた原料粉末を、原料の一部または全部として上述のプリフォーム体を成形するようにしてもよい。
【0024】
本発明では、このようにして得られた多孔質プリフォームを予熱することなく、Alまたは、Mg,Cu,Siのうちから選ばれるいずれか1種以上の元素を含むAl合金からなるマトリックス金属の浴中に浸漬すると、該プリフォームとマトリックス金属とは、該マトリックス金属の溶湯がプリフォーム空隙中に侵入して含浸し、複合化する。なお、この複合化の過程において、該プリフォームの表面に析出被覆した貴金属類元素は、マトリックス金属溶湯に接して昇温し、該マトリックス金属に速やかに固溶し、少なくとも一部が浴温以下でも液相を形成する。その結果、この液相が気孔内壁を濡らすことにより毛細管現象における粘着力を確保し、該プリフォームへの該マトリックス金属の円滑なる含浸を可能にし、良好な複合化を実現する。即ち、本発明にかかる溶融金属浸透法を用いた複合化の方法は、プリフォームの外表面および空隙内表面に、予め貴金属類元素からなる複合化促進材層を形成しておくことで、これらの元素による複合化促進作用により、複合化処理を確実に実現する方法であるということができる。
【0025】
上記多孔質プリフォームの構造は、気孔率が20〜80 vol%となるように成形する。このような気孔率に限定する理由は、多孔質体の気孔率が20 vol%未満では、閉気孔を多く含むようになり、該プリフォーム空隙中にマトリックス金属を十分に充填することができなくなる。一方、80 vol%を超える気孔率では、プリフォームの強度が不足して形状を維持することが困難になるからである。好ましくは30〜70 vol%の気孔率としたものがよい。
このプリフォームはまた、平均気孔径が10〜360 μm程度となるように、プリフォーム素材やその特性に応じて、圧力、温度等の条件や原料の粒度、その混合状態を調整し、形成される気孔経路網がマトリックス溶湯が侵入しやすく、かつ貴金属類元素が析出しやすい構造にすることが好ましい。
【0026】
上記プリフォーム空隙中へのマトリックス金属・合金溶湯の含浸は、充填率にして、90〜150 mass%とすることが好ましい。その理由は、充填率が90mass%未満では、複合化が不十分で内部に空隙欠陥が残存しやすくなるためであり、一方、150 mass%を超えると、プリフォームに与えた初期形状の維持が困難となる。
【0027】
本発明においては、プリフォーム空隙中に、マトリックス金属・合金溶湯を含浸させた後、熱処理を施すことが好ましい。この熱処理の目的は、複合化に際して生じる内部応力を解放することにあり、400 ℃〜600 ℃の温度に保持された不活性ガス置換雰囲気中で行うことが好ましい。
【0028】
【実施例】
実施例1
純度99.69 mass%のTi粉末 (粒度≦150 μm) を原料として用い、ArとHeとの混合ガス(20000Pa) をプラズマ作動ガスとする減圧プラズマ溶射法により、酸素分圧:1013Paの雰囲気中において、縦 100mm、幅25mm,厚さ3mmの短冊形の形状をもつプリフォームを作製した。このTiプリフォームの形状および重量を測定し、その体積気孔率を求めたところ、64 vol%であった。
【0029】
次に、上記Tiプリフォームの電解脱脂 (電流:約2A、温度:60℃、時間:10sec)を行い、水洗した後、室温 (15〜20℃) 下の調整済みの下記銀鏡液中に30時間浸漬した。その後、再び水洗を行い、熱風乾燥させた。Agの析出状態は、銀鏡反応処理後のプリフォーム表面の色調を目安とし、表面が乳白色の色調を呈したものをAgの析出状態が良好なものとして使用した。
使用した銀鏡液は、Brashear法で使用されるものと同じであって、水60mlに硝酸銀3.5 gと水酸化ナトリウム 2.5g/水60mlを加え、生じた黒色沈殿が再溶解するまでアンモニア水を加えて調整した銀液と、水500ml 、エタノール50mlの混合液に酒石酸2gとグルコース22.5gを加えた還元液を、容量比で1 :1 に混合したものを用いた。
【0030】
次に、A5052アルミニウム合金350 gを金属溶解用るつぼで溶解し、マトリックス合金浴とした。ここで、マトリックス合金浴の温度は680 ℃に維持し、この浴中に上記Tiプリフォームを30秒間浸漬して含浸処理を施したのち引き上げ、室温環境下で自然放冷により凝固させた。
【0031】
このようにして得られたAl合金含浸Tiプリフォームの試料の形状 (寸法) を測定したところ、浸漬前のプリフォーム形状にほぼ一致していた。また、重量測定により該Al合金含浸Tiプリフォームの試料密度(3355kgm−3) を求めたところ、プリフォームの空隙内 (開気孔中) にAl合金が完全に充填されたと仮定して求められる複合材の密度(3360kgm−3) にほぼ一致するものであった。
さらに、該試料を切断し、その断面を研磨して電子顕微鏡観察を行ったところ、図1〜図3に示すように、Tiプリフォーム全体にAl合金が過不足なく均一に含浸しており、また、TiとAl合金との接合境界には、図4に示すように、上述の析出Agからなる複合化促進材の膜を仲介とする薄い合金層が形成されており、微視的にも良好に接合し複合化していることが確認できた。
なお、これらの結果は、α型またはβ型のTi合金、あるいは純NiおよびNi基合金などの材料を用いて同様に作製したプリフォームについても、また、Al合金浴を純Al浴に変更した場合にも同様であり、複合化の結果は良好であった。
【0032】
実施例2
この実施例は、平均粒径30μmのTi粉末 (15g)と平均繊維径30μm、平均繊維長1.5 mmとからなるTi繊維(30g) の表面に、銀鏡処理を行って銀を被覆し、このようにして得られたAg被覆Ti繊維を原料とし、金型を用いて、温度約200 ℃、圧力12MPa の条件で外径25mm、厚さ約3mmの円盤型の多孔質プリフォームを成形した。このプリフォームの形状および重量を測定し、その体積気孔率を求めたところ、35 vol%であった。そして、A5052アルミニウム合金浴の温度を 680℃とし、これに上記のプリフォームを30秒間浸漬したのち引き上げ、室温環境下で自然放冷により凝固させた。
【0033】
このようにして得られたTiとAl合金の複合材料の形状を測定したところ、試料形状は浸漬前のプリフォーム形状にほぼ一致していた。また、重量測定により、それの密度を求めたところ(3881kgm−3) 、気孔中にAl合金が充填されたと仮定して求められる複合材の密度に実質的に一致することを確認した。さらに、該試料を切断し、その断面を研磨して光学顕微鏡および電子顕微鏡観察を行ったところ、プリフォーム全体にAl合金が過不足なく均一に含浸しており、TiとAl合金との接合境界には、上述の析出Agを仲介とする薄い合金層が形成され、微視的にも良好に接合し複合化していることが確認された。
なお、こうした結果は、銀以外の貴金属類元素 (AU, Pd, Ru, Rh) を析出させた場合も同様であり、またAl合金浴を純Al浴に変更しても複合化の結果は良好であった。
【0034】
実施例3
この実施例は、1mass%の割合のAgを被覆してなる13%Cr鋼粉末 (粒度≦150μm) を溶射原料粉末とし、実施例1と同じ減圧プラズマ溶射法により、縦100mm、幅25mm、厚さ3mmの短冊形形状の、多孔質プリフォームを作製した。このプリフォームの形状および重量を測定し、その体積気孔率を求めたところ、53.6 vol%であった。
一方、A5052アルミ合金 350gを金属溶解用るつぼで溶解しマトリックス合金浴を準備し、このマトリックス合金浴の温度を 680℃に保持して、上記のプリフォームを30秒間浸漬した後、引き上げて室温環境下で自然放冷により凝固させた。
【0035】
このようにして得られた凝固試料の形状を測定したところ、試料形状は浸漬前のプリフォーム形状に実質的に一致していた。また、重量測定により、該凝固試料の密度 (5037 kgm−3) を求めたところ、プリフォームの気孔中にアルミ合金が充填されたと仮定して求められる複合剤の密度 (5094 kgm−3) にほぼ一致することがわかった。さらに凝固試料を切断し、その断面を研磨して光学顕微鏡および電子顕微鏡観察を行ったところ、プリフォーム全体にアルミ合金が過不足なく均一に含浸しており、13%Cr鋼とAl合金との接合境界には、Agを仲介とする薄い合金層が形成され、良好に密着し複合化していることが確認された。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、複合化に当たって加熱や予熱を行う必要がなく、また、反応性によいふっ化物の添加も必要とせずに多孔質プリフォームとマトリックス金属との良好な密着性を確保して複合化することができるので、目的とする所定形状の金属基複合材料を簡便にかつ低コストを実現して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のTi−Al複合材の電子顕微鏡写真であり、反射電子線組成像を示す。
【図2】実施例1のTi−Al複合材の電子顕微鏡写真であり、Ti−Kαの特性X線像 (Tiプリフォームに対応) を示す。
【図3】実施例1のTi−Al複合材の電子顕微鏡写真であり、Al−Kαの特性X線像 (Al含浸マトリックスに対応) を示す。
【図4】実施例1のTi−Al複合材の電子顕微鏡写真であり、TiとAlの境界部を拡大した反射電子線組成像 (複合化促進材層を構成するAgを仲介とする合金層に対応) を示す。

Claims (8)

  1. 金属・合金からなる平均気孔径が 10 30 μmで、気孔率が 20 80 vol %の多孔質プリフォームの外表面ならびに空隙内表面が、Au, Ag, Pt, Pd, RuおよびRhのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の貴金属類元素からなる複合化促進材層によって覆われていると共に、そうしたプリフォームの空隙中に、AlまたはMg,CuおよびSiのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含むAl合金からなるマトリックス金属・合金を含浸複合化してなることを特徴とする貴金属元素で処理された金属基複合材料。
  2. 上記プリフォームの空隙中に、マトリックス金属・合金を、充填率:90〜150 mass%で含浸してなることを特徴とする、請求項1に記載の金属基複合材料。
  3. 上記プリフォームの外表面ならびに空隙内表面に被成された複合化促進材層は、銀鏡反応法、無電解めっきの還元法、イオン置換反応法または蒸着法によって貴金属類元素を析出させて被覆したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属基複合材料。
  4. 金属・合金からなる平均気孔径が 10 30 μmで、気孔率が 20 80 vol %の多孔質プリフォームの外表面ならびに空隙内表面に、Au, Ag, Pt, Pd, RuおよびRhのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の貴金属類元素を被覆し、その後、このプリフォームの空隙中に、AlまたはMg,CuおよびSiのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含むAl合金からなるマトリックス金属・合金を含浸させて複合化することを特徴とする貴金属元素で処理された金属基複合材料の製造方法。
  5. 金属・合金からなる粉末の表面に、Au, Ag, Pt, Pd, RuおよびRhのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の貴金属類元素を被覆して原料粉末とし、次いで、少なくとも一部がそうした原料粉末によって構成される平均気孔径が 10 30 μmで、気孔率が 20 80 vol %の多孔質プリフォームを成形し、その後、かかるプリフォームの空隙中に、AlまたはMg,CuおよびSiのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の元素を含むAl合金からなるマトリックス金属・合金を含浸させて複合化することを特徴とする貴金属元素で処理された金属基複合材料の製造方法。
  6. 上記プリフォームの空隙中に、マトリックス金属・合金を、充填率:90〜150 mass%の割合で含浸させることを特徴とする、請求項またはに記載の金属基複合材料の製造方法。
  7. 上記プリフォーム成形体またはプリフォーム成形用原料粉末への貴金属類元素の析出被覆方法として、銀鏡反応法、無電解めっきの還元法、イオン置換反応法または蒸着法を用いることを特徴とする請求項またはに記載の金属基複合材料の製造方法。
  8. 上記プリフォーム中へのマトリックス金属・合金含浸後、熱処理を施すことを特徴とする請求項またはに記載の金属基複合材料の製造方法。
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