JP3605533B2 - 木本植物種子の貯蔵コンテナ及び中長期貯蔵方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生鮮品である植物種子の貯蔵に用いられるコンテナに関し、さらに、このようなコンテナを用いた植物種子の中長期貯蔵方法に関する。生鮮品とは、各種植物種子を含む。本発明は、これら生鮮品の搬送保管にも適用可能な貯蔵システムを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
生鮮品の貯蔵に類するものとして、パレット上に積載した農産物の移動を伴うことなく、温度制御やバナナ等の熟成制御を行う方法として、次のような公知の方法がある。
1)特開昭第58-183014号公報に記載の、農産物を収容したコンテナを運搬するフォークリフト用パレット上に気体を噴出するダクトを配置することにより、農産物をコンテナに収容したままの状態で、乾燥、加湿、冷却、加温等の作業を容易に行う方法。
2)特開昭第63-79527号公報に記載の、パレット上に積み上げられたコンテナ全体をガス不透過性のシートで包み混んでガスを流通させ、生鮮品の熟成を制御する方法。
【0003】
一方、果実または野菜類の長期保存方法として次のような方法が公知となっている。
1)特開平第6-153785号公報に記載の、エチレン吸収剤や炭酸ガス吸収剤を同封してそれらの有害ガスを吸収させると共に、プラスチックフィルムを包み込むことにより内部の湿度を90%程度に保つ方法。
2)特公昭61-13793号公報に記載の、魚介類等の貯蔵物の乾燥を防止するために加湿装置を備えた真空保存庫を用いる方法。
【0004】
また、貯蔵物品が種子である場合、竹内虎太郎著(1975年)「緑化用樹木の実生繁殖法」によると一般的な貯蔵方法として次のような方法がある。
1)布袋等の通気性のある袋に種子を入れ、倉庫や物置等に常温下で貯蔵する方法(乾燥常温貯蔵:エゾマツ、トドマツ、アカシア類、マメ科植物等)
2)シリカゲル等の乾燥剤と共に種子を容器に入れて密封し低温下で貯蔵する方法(乾燥低温貯蔵:スギ、ヒノキ、カラマツ、ニレ、カンバ類、ツツジ類、シャクナゲ類、トベラ、ナンキンハゼ、アカメガシワ、ムクノキ、ウシコロシ、サンザシ類、ベニマンサク等)。
3)水洗後に陰干しした後に密封して低温下で貯蔵する方法(風乾低温貯蔵:乾燥が著しいと発芽力を失うハゼノキ、シロダモ、ヤブニッケイ、ハクサンボク、シャシャンポ、サクラ類、モッコク、エノキ、ブナ、カシ類、イボタノキ、ゴンズイ、クロガネモチ、タラヨウ、ナナメノキ、モチノキ、ヤマモガシ等)。
4)網状の袋に種子を入れ、排水の良い土地に穴を掘って埋蔵する方法(土中埋蔵貯蔵:倉庫等の室内貯蔵では、乾燥によって発芽力を失うイチョウ、イチイ、カエデ類、クスノキ、ゲッケイジュ、クリ、センダン、ツバキ、サザンカ、シャリンバイ、クヌギ、コナラ、トチノキ、ナギ、トウネズミモチ、エゾユズリハ等)。
5)湿った砂や水苔と混合して保湿し、低温下で貯蔵する方法(保湿低温貯蔵:シナノキ、オオバボダイジュ、マユミ、ニシキギ、ツリバナ、ナナカマド、ヤマボウシ、ウメモドキ、ニワトコ、オオカメノキ等の休眠性の高い種子を暖地で貯蔵する場合)。
尚、保湿低温貯蔵は、土中埋蔵貯蔵種子等のように湿潤低温条件下での貯蔵が好ましい種子に対しても広く用いられている。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】
従来、果実や根菜等の生鮮品は、木箱、ダンボール箱、プラスチックケース等の貯蔵容器に収納されて倉庫や保冷庫内に貯蔵されている。通常、こうした貯蔵容器は、フォークリフト用パレット上に複数積載される。また、送風、加湿等の制御を行いながら貯蔵する方法がとられたり、塊根や塊茎の場合はX線を照射したり、あるいは二酸化炭素濃度を高くして萌芽を抑える貯蔵等が一般的に行われている。
【0006】
こうした従来の貯蔵方法には、生鮮品である植物種子を貯蔵する上で次のような問題点がある。
1)木箱、ダンボール箱、プラスチックケース等の貯蔵容器は、各貯蔵容器毎に湿度を制御することが困難である。従って、調湿する必要がある場合は貯蔵室全体を制御する方法、あるいは、後述するようにパレット上に積載した貯蔵容器をシート等で包んだ上で調湿送風機へ接続する等の方法をとる必要がある。
2)大量の同一貯蔵物品を貯蔵するような場合には合理的手法であるが、性質の異なる貯蔵物品を一つの貯蔵庫内で貯蔵する場合には、不適当である。特に、同一の貯蔵庫内において、植物種子のように種類によって貯蔵に適する相対湿度が異なり、多品種に及ぶような貯蔵物品を貯蔵する場合には、大きな問題となる。
【0007】
次に、フォークリフト用パレットを用いた場合の貯蔵方法には、生鮮品である植物種子を貯蔵する上で次のような問題点がある。
1)特開昭第58-183014号、特開昭第63-79527号に代表される方法は、穀物を始めとする農産物の貯蔵には適しているが、例えば植物種子のように種類によって貯蔵に適する相対湿度が異なるような貯蔵物品を貯蔵する場合には有効な方法とはいえない。また、各貯蔵物品に好適な相対湿度を外部から供給するためには、コンテナに収容した貯蔵物品毎に異なる湿度を供給できるような送風調湿設備が必要であり、同じ湿度条件で貯蔵可能な品種を大量に取り扱う場合を除き、実用化は経済的に困難である。
2)特開平第6-153785号に代表される方法は、コンテナ内の湿度のコントロールは吸水剤に頼らざるを得ず、厳密な相対湿度のコントロールを行うことは困難である。従って、比較的ラフな湿度コントロールで支障がないような貯蔵物品を対象とする場合には適用できるが、例えば植物種子のように種類によって長期貯蔵に好適な相対湿度が異なる貯蔵物品を貯蔵する場合には不適である。また、吸収剤が吸着できる有害ガスには限界があり、長期貯蔵を行う場合には吸着剤の容量をかなり大きくしないと困難である。
3)特公昭第61-13793号に代表される方法は、厳密に湿度を調節することが可能であるが、真空条件下での貯蔵となることから魚介類等の貯蔵には適するが、呼吸を阻止できるとしても、発酵によって有害ガス(アセトアルデヒド等)を放出する植物種子等の貯蔵には不適である。また、上述の特開昭第58-183014号及び特開昭第63-79527号に記載の方法と同様に、湿度供給装置等の外部取り付け装置が必要であるためコスト高となり、実用化が難しい。
【0008】
一方、近年では環境緑化への関心の高まりから、緑化工事等において郷土産の植物種子が多用されるようになり、遺伝資源として地域性を有する植物種子の長期貯蔵が必要となってきている。こうした植物を使用した緑化工事を効率よく行うためには、播種工で使用する場合も植栽工で使用する苗木を生産する場合も、種子を高品質のまま採取後から使用時期まで長期間貯蔵する必要がある。
【0009】
しかし、一般的に乾燥した状態での貯蔵が可能な種子は、乾燥常温貯蔵、乾燥低温貯蔵等の従来の方法でもある程度の期間は品質を保持することができるが、貯蔵期間中に湿潤状態を保つことが必要な種子は、土中埋蔵貯蔵や保湿低温貯蔵を行っても長期間品質を保持することは難しく、大量の種子を取り扱う緑化事業において大きな障害となっている。
【0010】
各貯蔵法の具体的な問題点は次の通りである。
1)風乾低温貯蔵は、種子の過剰な乾燥を防止するために、一般的に水選後陰干しして軽く乾燥させた状態で密閉容器に種子を入れ、低温で貯蔵する方法である。しかしながら、貯蔵期間中は密閉条件下に置かれるため、有害なアルデヒド化合物の発生を伴うこととなり、種子の劣化が徐々に進み、長期間品質を保持することは難しい。
2)土中埋蔵貯蔵は、種子の貯蔵に労力を要するほか、湿度の調節が困難であることから天候等によって種子の品質が大きく左右される。従って、事業的に大量の種子を対象とする場合には、実用性の高い貯蔵方法とはいえない。
3)保湿低温貯蔵は、砂や水苔で湿度を維持しながら貯蔵する方法で、湿潤状態で貯蔵する必要がある種子の最も一般的な貯蔵方法である。しかし、事業的に砂や水苔等の保湿資材の取り扱いが面倒な上、風乾低温貯蔵と同様に密閉容器に種子を入れなくてはならないため、アルデヒド化合物に起因する種子の劣化が徐々に進み、長期間品質を保持することは難しい。また、砂や水苔等の保湿資材では種子の種類に応じた好適な湿度を正確に維持することは困難である。
【0011】
本発明の目的は、上記の各問題点を解消する生鮮品である植物種子の貯蔵に用いられるコンテナ及びそれを用いた生鮮品である植物種子の中長期貯蔵方法を提供することである。特に、アセトアルデヒドを発生する植物種子の貯蔵に有効なコンテナ及び中長期貯蔵方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するべく、本発明は以下の構成を提供する。
(1) 木本植物種子を中長期貯蔵するために用いられる貯蔵コンテナにおいて、
開閉装置を具備し密閉可能な耐減圧性の筐体からなる貯蔵容器と、前記貯蔵容器の内部の大気更新及び該貯蔵容器内に収納された前記木本植物種子に対する処理用気体の導入暴露を可能とするべく、該貯蔵容器の一部に設けられた該貯蔵容器の内部と外部を連通させる配管及び該配管を開閉する活栓とを有し、さらに前記貯蔵容器の内部に、アルデヒド化合物を吸着する固体吸着剤と、該貯蔵容器の相対湿度を制御するための飽和塩溶液の貯留設備とを設ける。
【0013】
(2) 木本植物種子を中長期貯蔵するための貯蔵コンテナであって、開閉装置を具備し密閉可能な耐減圧性の筐体からなる貯蔵容器と、前記貯蔵容器の内部の大気更新及び該貯蔵容器内に収納された前記木本植物種子に対する処理用気体の導入暴露を可能とするべく、該貯蔵容器の一部に設けられた該貯蔵容器の内部と外部を連通させる配管及び該配管を開閉する活栓とを有し、さらに前記貯蔵容器の内部に、アルデヒド化合物を吸着する固体吸着剤と、該貯蔵容器の相対湿度を制御するための飽和塩溶液の貯留設備とを設けた前記貯蔵コンテナを用いる木本植物種子の中長期貯蔵方法において、
前記貯蔵コンテナに木本植物種子を収納し、前記貯蔵コンテナを低温保冷庫内に格納し、定期的に前記貯蔵コンテナの内部のアルデヒド化合物を含有する大気を更新する。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による生鮮品である植物種子の貯蔵コンテナ(以下、単に「貯蔵コンテナ」と称する場合がある)及びそれを用いた植物種子の中長期貯蔵方法の各実施の形態についてそれぞれ説明する
【0021】
第1の実施の形態は、図1に概略的に示されている。貯蔵コンテナ1は、貯蔵容器2を主構造体とする中空の筐体である。貯蔵容器2は、耐減圧性すなわち減圧により破損しない材質及び構造を具備する。さらに、搬送収納容器2の一部には、当該容器内と容器外空間とを連通させる配管及びその開閉用の活栓4が設けられる。図示の例では、配管及び活栓4は、貯蔵容器2の側部を貫通するように設けられている。これにより、貯蔵物品から放出される二酸化炭素以外の各種揮発性活性物質(有害なアルデヒド類化合物、熟成促進のエチレン等)を含有するコンテナ内大気の更新を行うことができ、併せて貯蔵物品の殺菌、老化防止または熟成制御を行うための各種気体の導入等による曝露が可能な構造となっている。貯蔵コンテナに収納された貯蔵物品に対して所定の処理を施すこれらの各種気体を、本明細書では「処理用気体」と総称することとする。
【0022】
尚、上記貯蔵容器2を図4に示すような小型とすることもでき、その場合該貯蔵容器2内に複数の小型貯蔵容器を収納することも出来る。またその場合、貯蔵容器2は、パレットと同程度の底面積を有する大型の容器となることからフレキシブルな材質が望ましい。該貯蔵容器2を単独で小型の貯蔵容器として利用する場合は、該貯蔵容器は積み重ねに耐える程度の硬質の材質が望ましい。この小型貯蔵容器は、貯蔵規模が小さい貯蔵物品を収納する場合に特に適する。
更に、この小型貯蔵容器の場合の蓋は、ジッパーなどの開閉装置よりも上蓋若
しくは引き出しタイプ等が好適である。
【0023】
貯蔵コンテナ1は、好適な搬送機能を備えるべく貯蔵物品の搬入及び搬出の便宜が図られていることが必要である。特に、貯蔵コンテナ1が大型の場合には、ジッパーまたはマジックテープ等の取り扱い容易でかつ迅速な操作が可能な開閉機構が設けられることが好ましい。本発明による貯蔵コンテナは真空貯蔵を対象としないため、このような簡易な構造とすることが可能である。従って、物品の貯蔵中に定期的品質検査等のモニタリングを行う場合にも容易に開閉操作することができる。
【0024】
貯蔵物品の殺菌、老化防止または熟成調節等を行うための各種処理用気体は特に限定されるものではなく、例えば、殺菌の場合はキャプタン、イプロジオン、クロロピクリン、ヒノキチオール、チアベンダゾール(TBZ)、オゾンガス等を用いる。老化防止の場合には、二酸化炭素等を用いる。熟成促進の場合には、エチレン混合ガス等の公知の方法が活用できる。
【0025】
さらに、従来の温度制御や湿度制御によって種子の休眠を打破したり、ホルモン処理等を施したりするのみでなく、低温湿潤貯蔵中に配管及び活栓4を通じて強い発芽促進効果の知られている二酸化炭素、エチレン及び酸素の混合ガスをボンベから流して種子の発芽力を増強することも可能である。
【0026】
また、有害ガスの吸着効果を併せ持つ活性炭、ゼオライト、アルデヒド類補足剤等の固体吸着剤、及びシリカゲル等の固体乾燥剤を、コンテナ内部に所定の設置場所を設け、必要に応じて常時備えることができる。
【0027】
この貯蔵コンテナ1は、通常、フォークリフト用パレットに載せて利用されることが好適である。従って、収納物品を直接、貯蔵コンテナ1に収納してもよく、あるいは、予め貯蔵用網袋や通気性のある既存のコンテナに収納物品を入れた上で貯蔵コンテナ1に収納してもよい。このように貯蔵物品に応じた収納方法を選択できる。
【0028】
第1の実施の形態の別の実施例は、貯蔵容器内に固体吸着剤及び湿度調節剤を具備した構造を有する貯蔵コンテナである。再び図1を参照すると、本実施例では、貯蔵容器2の内部空間の各角部近傍に筒状の湿度調節剤容器5が設置されている。湿度調節剤は、貯蔵容器2内の相対湿度を各々の貯蔵物品に応じて貯蔵適正水準に制御するものである。各湿度調節剤容器5内には、湿度調節剤として各種飽和塩溶液が一定量貯留されている。
【0029】
湿度調節剤容器5の形状、数及び配置は、図1に示す例に限られないが、少なくとも容器5の内部と貯蔵容器2の内部空間とを連通させる通気孔6を具備する。図1の例では、開閉可能なペットボトルの上部に通気孔を設けた容器5を用いている。
【0030】
図2は、さらに別の実施例を示す図である。この例では、搬送収納容器2の底部に固定式の湿度調節剤容器5を埋設している。図2の湿度調節剤容器5は引き出し式になっており、容易に飽和塩溶液の交換若しくは補充ができる。引き出し式容器5の天井部にあたる貯蔵容器2の底部に、通気孔6が適宜設けられている。この例の場合、引き出し式容器5を所定の位置に設置したとき、容器5の周縁部がゴム等のパッキンにより封止されることが好ましい。これにより、減圧に耐える程度の密閉性を確保することができる。
【0031】
図2では、配管及び活栓4についても図1とは異なる形状の例を示している。この場合、配管及び活栓4は、貯蔵容器2の底部に穿設されており、一方の開口が貯蔵容器2の内部空間に面した底部上面に、他方の開口が搬送収納容器2の外部に面した底部側面に設けられている。
【0032】
湿度調節剤として用いられる飽和塩溶液は、種子の貯蔵に適する相対湿度に応じて調整することが可能である。所定の相対湿度と、その場合に用いられる飽和塩溶液との組み合わせは、例えば3℃で貯蔵する場合には次のようなものが使用できる。
1)相対湿度 2%:塩化リチウム
2)相対湿度37%:塩化マグネシウム六水和物
3)相対湿度40%:塩化カルシウム
4)相対湿度43%:炭酸カリウム
5)相対湿度52%:チオシアン酸カリウム
6)相対湿度56%:臭化ナトリウム
7)相対湿度63%:硝酸マグネシウム六水和物
8)相対湿度76%:塩化ナトリウム
9)相対湿度79%:硝酸ナトリウム
10)相対湿度80%:塩化アンモニウム
【0033】
尚、湿度調節剤容器5には、湿度調節剤の補充が可能な開閉機構を備えておくことが好ましい。これにより、湿度調節剤の量を容易に管理することができる。また、搬送、保管若しくは貯蔵に湿潤条件が望ましい収納物品については、各種飽和塩溶液の代わりに水を利用する他、吸水ウレタンやスポンジ等を同封することで対応することができる。
【0034】
第1の実施形態のさらに別の実施例は、図3に概略的に示す通り、貯蔵容器2とフォークリフト用パレット7を一体化させた構造を有する貯蔵コンテナである。すなわち、貯蔵容器2の筐体の底部が、フォークリフト用パレットとしての形状及び材質を有し、フォークリフト用パレットとしての機能を具備している。フォークリフト用パレット7の側部には、フォークリフトの爪を挿入する複数の孔8が設けられている。図3の貯蔵コンテナ1は、貯蔵容器2とフォークリフト用パレット7間に設けた通気孔6により、これらの間の通気性が保たれる構造となっている。貯蔵容器2の配管及び活栓のための装置4は、フォークリフト用パレット7の上面と側面を連通させるべく穿設され、これにより貯蔵容器2の内部空間と外部との間を連通させる。一般的に、フォークリフト用パレットは硬質であり、このパレット自体に通気孔6や配管及び活栓4を設ける構造とすることにより、強度的にも強く、脱気作業や各種気体による曝露作業を容易に行うことができる。
【0035】
また、斯かる貯蔵コンテナを載置貯蔵する貯蔵庫内の収納棚に脱気、曝露用の配管を施しておくことにより、複数のパレットに積載された搬送収納コンテナをまとめて脱気、曝露等の処置を行うことが可能となる。尚、配管及び活栓のための装置をフォークリフト用パレットに設置する場合は、貯蔵コンテナ1の搬送時におけるコックの損傷等を防止するために、パレットの外側にこれらが突出しない設計とすることが望ましい。
【0036】
第1の実施形態のさらに別の実施例は、上記に加えて、貯蔵容器2内の貯蔵物品に応じた貯蔵適正水準に制御するための固体吸着剤または各種飽和塩溶液を一定量貯留する機能をフォークリフト用パレット7内に具備させた搬送貯蔵コンテナである。図3では、引き出し式の容器5として示されている。引き出し式容器5は、通気孔6の下に設けられる。フォークリフト用パレット7内にこれらの機能を具備させることにより、飽和塩溶液の液漏れによる貯蔵物品への悪影響を防止することができる。
【0037】
第1の実施形態のさらに別の実施例は、上述した貯蔵コンテナが、少なくとも酸素を透過する分子篩としての機能を具備しているものである。貯蔵容器の一部に分子篩機能をもたせる加工をするか、あるいは、貯蔵容器全体を分子篩機能を有する素材で製作する。
【0038】
例えば、種子、塊根、塊茎等の場合、一般に貯蔵中の酸素欠乏に伴ってアセトアルデヒドが生成され、蛋白質や核酸の変性を来して劣化する。従って、搬送収納コンテナ自体に少なくとも酸素を透過する機能をもたせることは、貯蔵環境を大きく改善することにつながるとともに、脱気作業等の軽減に寄与することとなる。
【0039】
以下、上述の貯蔵コンテナを用いた中長期貯蔵方法の実施の形態について説明する。第2の実施形態は、貯蔵物品を収納した貯蔵コンテナを低温貯蔵庫内に格納し、定期的に各種有害揮発性ガスを除去するために、コンテナ内の大気を更新する中長期貯蔵方法である。
【0040】
ガス吸着剤等によるこれら有害ガスの吸着には限界があり、短期間の貯蔵には有効であるが、中長期の貯蔵の場合に内部大気の更新作業を併用しなければ、貯蔵物品の劣化が急速に進行する。植物種子、塊根、塊茎等を少なくとも1〜2年間以上の中長期間貯蔵するためには、保冷庫で低温貯蔵を行い、加えて定期的な脱気作業(内部大気の更新)を行うことにより従来の種子貯蔵方法と比較して高品質の種子を長期間貯蔵することが可能となる。
【0041】
この場合、貯蔵コンテナの材質は、低温の保冷庫内においても硬化することがなく、減圧に耐え得る程度の弾性を有する透明乃至半透明の素材が特に好適である。また、作業上軽量であることが望ましく、合成樹脂素材で形成された構造体が好ましい。
【0042】
第2の実施形態の別の実施例は、貯蔵コンテナの内部大気の更新を、減圧により行う方法である。減圧後に大気を吸入させることにより、貯蔵容器内部の貯蔵物品の隙間に含まれる有害ガスをほぼ完全に更新することができる。尚、配管及び活栓のための装置は、適宜吸気ホース等を接続して内部大気を交換できる構造とし、ポンプ等を用いて貯蔵容器を減圧することにより貯蔵容器内のガスを効率よく容易に更新することができる。
【0043】
この場合、貯蔵物品の殺菌、老化防止、熟成制御を行うためには、搬送収納コンテナ内を減圧した後に、大気の代わりに各種気体を吸入曝露させることにより、これらの制御用気体を貯蔵物品の隅々にまで行き渡らせることができる。
【0044】
第2の実施形態のさらに別の実施例は、上述の貯蔵コンテナを用いた貯蔵物品が、特に木本植物種子である場合の貯蔵方法である。本発明による貯蔵方法は、生鮮物品一般に適用することができるが、特に、貯蔵中に多量のアセトアルデヒドを発散する木本植物種子の貯蔵方法として有効である。貯蔵期間中の種子は、低温下においても呼吸を行っているため、密閉した条件下では徐々にアルデヒド化合物等の有害ガスが発生して種子を劣化させる。これを防止するため定期的な脱気作業が必要となる。
【0045】
一般的に、従来の通常の低温貯蔵では、種子の品質を劣化させずに中長期貯蔵することは不可能である。例えば、緑化工事等において前年に採取した種子を翌春以降に使用することは難しかった。本発明の貯蔵方法を用いることにより、木本植物種子を1〜2年以上にわたる長期間貯蔵することが可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明は、木本植物種子等の長期貯蔵を可能とするばかりでなく、果実、根菜、花卉、塊根、塊茎等の生鮮品を短期〜長期間貯蔵する方法としても幅広く活用することができる。さらに、収納物品に応じて減圧脱気時に各種気体を曝露させることにより、熟成、老化防止、種子発芽力制御、塊根、塊茎の萌芽力制御等の生長調節を容易に行うことができる多機能貯蔵容器及び貯蔵方法である。
【0047】
本発明による貯蔵コンテナ及びこれをもちいた中長期貯蔵方法によれば、複数の異なる適正な相対湿度を各コンテナ、もしくは各パレット単位で制御することが可能であることから、貯蔵規模が小さい場合や、貯蔵物品が多品種に亘る場合においても容易に適用することができる。
【0048】
また、コンテナ内の湿度は各種飽和塩溶液を用いて調節するため、厳密な制御を行うことが可能で、必要に応じて飽和塩溶液の補充を行うことができる。また、脱気による内部大気の更新作業が可能なだけでなく、それを補完するために有害ガスを吸着する固体吸着剤を併せて設置することにより、貯蔵環境をさらに好適に保つことが可能となる。
【0049】
さらに、特別で高価な装置や真空貯蔵に拠ることなく、生鮮品である植物種子を長期間収納貯蔵したり、搬送したりすることが可能である。
【0050】
また、生鮮品の輸出入においては、税関において検疫検査が行われている。本発明による貯蔵容器を用いることにより、輸出元にて曝露による殺菌、殺虫処理を施して収納貯蔵し搬送し、そして輸入先にて一括して同様の処理を行うことにより、輸入時の煩雑な検疫を省略でき、輸出入の合理化に寄与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による一実施例の貯蔵コンテナの概略的斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による別の実施例の貯蔵コンテナの概略的斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるさらに別の実施例の貯蔵コンテナの概略的斜視図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態の変形体即ち小型貯蔵容器を示す概略図である。
【符号の説明】
1 貯蔵コンテナ
2 貯蔵容器
3 開閉装置
4 配管及び活栓
5 飽和塩貯留設備
6 通気孔
7 フォークリフト用パレット
8 フォークリフトの爪を挿入する孔
9 上蓋
Claims (2)
- 木本植物種子を中長期貯蔵するために用いられる貯蔵コンテナにおいて、
開閉装置を具備し密閉可能な耐減圧性の筐体からなる貯蔵容器と、前記貯蔵容器の内部の大気更新及び該貯蔵容器内に収納された前記木本植物種子に対する処理用気体の導入暴露を可能とするべく、該貯蔵容器の一部に設けられた該貯蔵容器の内部と外部を連通させる配管及び該配管を開閉する活栓とを有し、さらに前記貯蔵容器の内部に、アルデヒド化合物を吸着する固体吸着剤と、該貯蔵容器の相対湿度を制御するための飽和塩溶液の貯留設備とを設けたことを特徴とする
木本植物種子貯蔵コンテナ。 - 木本植物種子を収納するための貯蔵コンテナであって、開閉装置を具備し密閉可能な耐減圧性の筐体からなる貯蔵容器と、前記貯蔵容器の内部の大気更新及び該貯蔵容器内に収納された前記木本植物種子に対する処理用気体の導入暴露を可能とするべく、該貯蔵容器の一部に設けられた該貯蔵容器の内部と外部を連通させる配管及び該配管を開閉する活栓とを有し、さらに前記貯蔵容器の内部に、アルデヒド化合物を吸着する固体吸着剤と、該貯蔵容器の相対湿度を制御するための飽和塩溶液の貯留設備とを設けた前記貯蔵コンテナを用いる木本植物種子の中長期貯蔵方法において、
前記貯蔵コンテナに木本植物種子を収納し、前記貯蔵コンテナを低温保冷庫内に格納し、定期的に前記貯蔵コンテナの内部のアルデヒド化合物を含有する大気を更新することを特徴とする木本植物種子の中長期貯蔵方法。
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