JP3604469B2 - ポジトロンct装置およびその画像再構成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、測定対象物に投入されたRI線源により発生する電子・陽電子対消滅に伴って放出される光子対を検出することにより、その測定対象物内の物質分布を測定するポジトロンCT装置およびその画像再構成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポジトロンCT装置(Positron Emission Computed−Tomography ; 以下、PETと呼ぶ)は、生体や疾病患の研究あるいは臨床検査等に応用され、体内に投入された陽電子放出核種(以下、RI線源と呼ぶ)の分布を画像化し、生体機能を見るための装置である。
【0003】
RI線源は、神経伝達に関与するドーパミンや体内でのグルコース代謝に関係するFDG(18F−フルオロデオキシグルコース)等の生体内物質、或いは、例えば新規開発中の薬剤に、部分的に付加されて用いられる。PETは、このような物質の生体内での分布、消費量あるいは時間的変化の様子を見ることができる。又、PETは、脳血流量や酸素消費量などの生体の基礎代謝を測定することもできる。
【0004】
このようなPETの検出部は、リング状に配置された多数の光子検出器(これをリングと呼ぶ)からなり、そのリング内に、RI線源を注入あるいは吸入された人体などの測定対象物が置かれる。測定対象物内のRI線源から放出された陽電子は、直ちに近くの電子と結合して、それぞれ511keVのエネルギを持つ1対の光子(ガンマ線)が互いに反対方向に放出される。リングによってこの1対の光子を同時計数することにより、電子・陽電子対消滅がどの直線上で発生したかを特定することができる。PETは、このような同時計数情報を蓄積して画像再構成処理を行って、RI線源の分布画像を作成する。
【0005】
このようなPETによる計測に要する時間は、RI線源の半減期に依存し、数十分ないし数時間に及ぶ場合があり、従来、測定対象物は、この計測時間内では位置および方位ともに固定されている必要があった。このように計測時間が長時間に及ぶ場合には、測定対象物である人体やその他の動物にとっては非常な苦痛であり、計測時間内に測定対象物が動いて位置や方位が変化することがある。計測中に測定対象物が少しでも動くと正確が測定ができず、画像再構成して得られた画像には、測定対象物の動きに起因するアーティファクトが発生し、正確な再構成画像を得ることができなかった。
【0006】
また、仮りに測定対象物を固定することができたとしても、測定対象物は麻酔状態ではなく覚醒状態でその生理状態を測定する場合が多いので、長時間の固定に起因するストレスの為に生理状態が変化する。この変化は測定に悪影響を与え、やはり正確な測定はできない。
【0007】
そこで、測定対象物を固定することなく、すなわち、測定対象物の位置および方位に関する動き(以下、体動と言う)を容認することによって生理状態を維持したまま測定し、そして、その測定中に体動を測定し、この体動情報を用いて同時計数情報の補正を行う技術が知られている(例えば、特開平2−209133号公報、特開平4−128679号公報)。
【0008】
なお、リングの光子検出器の空間的な測定分解能を向上させるために、リングを回転運動やウォブリング運動させることが行われているが、逆に測定対象物が動くことによっても測定分解能が向上する。体動補正技術は、この点に関しても有効である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記の体動補正技術を採用することによって、測定対象物が動く場合であっても、以前に比べれば正確な再構成画像を得ることが可能となった。
【0010】
一方、一般にリングを構成する多数の光子検出器間に感度ムラがあるので、以上のように測定対象物から発生する光子対を検出して蓄積された同時計数情報(エミッションデータ)そのままに基づいて画像再構成処理すると正確なRI線源分布画像を得ることができない。そこで、較正用線源を用いて感度補正データ(ブランクデータ)を取得し、エミッションデータをブランクデータで除算することによって感度補正が行われる。
【0011】
しかし、測定対象物が動く場合には、このように単純に感度補正を行うことは問題がある。すなわち、測定対象物にとっては同一位置で発生し同一方向に飛行する光子対であっても、測定対象物の位置と方位が異なれば、その光子対は、異なる検出感度を有する異なる光子検出器対で受光される。それにも拘らず、従来の感度補正では、エミッションデータを同一のブランクデータで感度補正するので、正確な感度補正はできない。そこで、動きのある測定対象物を正確に測定するために、体動補正技術とともに、この場合に適した感度補正技術が求められていた。
【0012】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、測定対象物が測定中に動く場合であっても、その体動補正を行うとともに、精度のよい感度補正を行って正確な再構成画像を得ることができるポジトロンCT装置およびその画像再構成方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るポジトロンCT装置は、測定空間を囲んで所定軸の周囲に配列された複数の光子検出器からなるリングによって、測定空間における電子・陽電子対消滅に伴って発生する光子対を検出し、光子対のそれぞれの光子を検出した2つの光子検出器を結ぶ直線について測定空間に設定した極座標で表現した座標値に対応した番地に所定数を累積加算して蓄積された投影データに基づいて、電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を測定するポジトロンCT装置であって、(1) 電子・陽電子対消滅に伴う光子対を発生させる較正用線源を測定空間で所定軸を中心にしてリングに対して相対的に回転運動させる較正用線源回転手段と、(2) 較正用線源回転手段に対して較正用線源の回転運動を指示し、較正用線源が回転運動している状態で、較正用線源から発生する光子対を検出して蓄積された投影データを基準感度補正データとして獲得する基準感度補正データ生成手段と、(3) 測定空間に置かれた測定対象物のリングに対する相対的な位置および方位に応じた位置方位データを出力する位置方位測定手段と、(4) 測定空間に較正用線源がない状態で、測定対象物から発生する光子対を検出し、位置方位データに基づいて相対的な位置および方位の変化を補償して測定時間中に蓄積された投影データを測定データとして獲得するとともに、測定時間中の位置方位データを入力して記憶する測定手段と、(5) 基準感度補正データと測定時間中の位置方位データとに基づいて感度補正データを生成する感度補正データ生成手段と、(6) 測定データを感度補正データに基づいて感度補正する感度補正手段と、(7) 感度補正手段によって感度補正された測定データに基づいて、測定対象物における電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を算出し画像再構成を行なう画像再構成手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本装置の作用は以下のとおりである。基準感度補正データ生成手段によって、較正用線源回転手段により回転させられている較正用線源から発生した光子対がリングによって検出され蓄積された投影データが基準感度補正データとして獲得される。位置方位測定手段によって、測定空間に置かれた測定対象物のリングに対する相対的な位置および方位が測定されて位置方位データが出力され、測定手段によって、測定対象物についての投影データが測定対象物の動きを補償して測定データとして獲得される。そして、感度補正データ生成手段によって測定対象物の動きを補償した感度補正データが生成され、感度補正手段によって測定データが正確に感度補正され、画像再構成手段によって正確な再構成画像を得る。
【0015】
請求項2に係るポジトロンCT装置では、感度補正データ生成手段は、測定時間中の位置方位データに基づいて測定時間内における測定対象物の極座標上での存在密度分布を求め、基準感度補正データを存在密度分布で加重平均計算した結果に基づいて、感度補正データを生成する。請求項3に係るポジトロンCT装置では、測定手段は、測定時間中の各時刻における位置方位データを蓄積し、感度補正データ生成手段は、蓄積された位置方位データに基づいて存在密度分布を生成する。請求項4に係るポジトロンCT装置では、測定手段は、測定時間中の各時刻において位置方位データに基づいて位置方位データ分布を逐次生成し、感度補正データ生成手段は、位置方位データ分布に基づいて存在密度分布を生成する。
【0016】
請求項5に係るポジトロンCT装置の画像再構成方法は、測定空間を囲んで所定軸の周囲に配列された複数の光子検出器からなるリングによって、測定空間における電子・陽電子対消滅に伴って発生する光子対を検出し、光子対のそれぞれの光子を検出した2つの光子検出器を結ぶ直線について測定空間に設定した極座標で表現した座標値に対応した番地に所定数を累積加算して蓄積された投影データに基づいて、電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を測定するポジトロンCT装置の画像再構成方法であって、(1) 電子・陽電子対消滅に伴う光子対を発生させる較正用線源を測定空間で所定軸を中心にしてリングに対して相対的に回転運動させた状態で、較正用線源から発生する光子対を検出して蓄積された投影データを基準感度補正データとして獲得する第1のステップと、(2) 測定空間に較正用線源がない状態で、測定空間に置かれた測定対象物のリングに対する相対的な位置および方位に応じた位置方位データを測定時間中に獲得するとともに、測定対象物から発生する光子対を検出し、位置方位データに基づいて相対的な位置および方位の変化を補償して測定時間中に蓄積された投影データを測定データとして獲得する第2のステップと、(3) 基準感度補正データと測定時間中の位置方位データとに基づいて感度補正データを生成する第3のステップと、(4) 測定データを感度補正データに基づいて感度補正する第4のステップと、(5) 第4のステップによって感度補正された測定データに基づいて、測定対象物における電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を算出し画像再構成を行なう第5のステップと、を備えることを特徴とする。
【0017】
本方法の作用は以下のとおりである。第1のステップにおいて、較正用線源回転手段により回転させられている較正用線源から発生した光子対がリングによって検出され蓄積された投影データが基準感度補正データとして獲得される。第2のステップにおいて、測定空間に置かれた測定対象物のリングに対する相対的な位置および方位に応じた位置方位データが獲得され、測定対象物についての投影データが測定対象物の動きを補償して測定データとして獲得される。そして、第3のステップにおいて測定対象物の動きを補償した感度補正データが生成され、第4のステップにおいて測定データが正確に感度補正され、第5のステップにおいて正確な再構成画像を得る。
【0018】
請求項6に係るポジトロンCT装置の画像再構成方法では、第3のステップは、測定時間中の位置方位データに基づいて測定時間内における測定対象物の極座標上での存在密度分布を求め、基準感度補正データを存在密度分布で加重平均計算した結果に基づいて、感度補正データを生成する。請求項7に係るポジトロンCT装置の画像再構成方法では、第2のステップは、測定時間中の各時刻における位置方位データを蓄積し、第3のステップは、蓄積された位置方位データに基づいて存在密度分布を生成する。請求項8に係るポジトロンCT装置の画像再構成方法では、第2のステップは、測定時間中の各時刻において位置方位データに基づいて位置方位データ分布を逐次生成し、第3のステップは、位置方位データ分布に基づいて存在密度分布を生成する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
実施形態の要部の説明に先立って、実施形態が適用されるPETの構成、動作、画像再構成方法および感度補正方法等について説明する。
【0021】
先ず、2D−PETの構成と動作について説明する。図8は、2D−PETのシステム構成図である。
【0022】
測定空間内にある測定対象物を囲んで中心軸の周囲にn個の光子検出器Dk (k=1,2,3,...,n )がリング状に配置されたリングは、光子検出器Dk (k=1,2,3,...,n )それぞれと同時計数回路30とが信号線で接続されている。リング20の何れかの光子検出器が光子を検出すると、その光子エネルギに応じた信号が信号線を通じて同時計数回路30に送られ、同時計数回路30は、リング20のそれぞれの光子検出器から到達した信号に基づいて、リング20の内の2つの光子検出器がRI線源10から放出された所定の光子エネルギ(511keV)を有する光子対を同時検出したことを認識して、その時のこれら2つの光子検出器それぞれを示す検出器識別信号(I,J)を出力する。
【0023】
これら検出器識別信号(I,J)は、t−θ変換部40に入力され、光子対を検出した2つの光子検出器を結ぶ直線L1をリング20内の測定空間における極座標で表現する場合に用いられる2つの変数(t,θ)それぞれを座標軸とするt−θ平面上の写像位置(T,θ’)に変換される。ここで、Tは、この直線と座標原点との間の距離であり、θ’は、この直線に座標原点から下ろした垂線の座標系主軸に対する角度である。t−θメモリ50は、この(T,θ’)に対応する番地に記憶されている投影データに1を累積加算する。このようにして、RI線源10で発生した1対の光子対についての同時計数情報が、t−θメモリ50に蓄積される。
【0024】
このようにしてRI線源10で発生しリング20で検出された多数の光子対の同時計数情報は、t−θメモリ50に投影データとして蓄積される。図9は、リングにおける光子対検出と画像再構成とを説明する図である。リング20内の測定空間に設定した極座標系のθ’方向(図9の直線L1の方向)から見たRI線源10の分布を表す画像は、この蓄積された投影データの内の、極座標系でθ=θ’上の各T点に対応する投影データから画像再構成部60によって再構成され、この再構成画像は画像表示部70で表示される。
【0025】
しかし、測定空間で発生した全ての光子対が検出されるのではない。図10は、リングにおける光子対検出の説明図である。RI線源10からの光子対は、RI線源10が存在するあらゆる位置から放出され、あらゆる方向に向かって飛行するが、その内で、リング20面上で発生しリング20面に沿った方向に飛行した光子対のみが、リング20で検出され得る。例えば、図9で示すように、リング20内に存在するRI線源10から発生する光子対であっても、リング20面に沿った方向以外の方向L2ないしL4に飛行した光子対は検出されない。リング20面に沿った方向L1に飛行した光子対は、何れかの光子検出器I,Jで検出され、t−θ変換部40で(T,θ’)に変換され、t−θメモリ50の対応する番地の投影データに1が加算される。
【0026】
又、製作が容易であり安価であることから、光子検出器がブロック型構成とされる。このタイプのリングでは、図11に示すように、複数のブロックBp それぞれは、多数の光子検出器Dpqが並列配置されていて、これらのブロックBp がリング状に配置される(p=1,2,3,... 、q=1,2,3,... )。このブロック型PETは、単なる光子検出器の配置が異なるだけであって、動作原理、投影データの蓄積および画像再構成等は、上述の説明と差異がない。
【0027】
上述のPETでは、RI線源から放出されてあらゆる方向に飛行する光子対の内、リング面に沿った方向に飛行する光子対のみを検出するため、RI線源から放出される光子対を捕捉する確率が小さく、検出感度が低くて統計ノイズが大きいという問題がある。検出感度を向上させるために測定対象物に多量のRI線源を注入することも考えられるが、測定対象物が生体である場合には限界がある。
【0028】
そこで、このような場合には、3次元タイプのPET(3D−PET)が用いられる。図12は、3D−PETのシステム構成図であり、図13は、3D−PETのリングの構成図である。3D−PETの多層リング21は、前述の図9あるいは図10に示したのと同様の光子検出器の一層リングR1 ,R2 ,....,Rm を多層配置したものであり、RI線源10で放出され直線L1の方向に飛行した光子対は、互いに異なる単層リングRp 、Rq (p≠q)それぞれに属する2つの光子検出器によっても同時計数され得る。多層リング21の内の或2つの光子検出器が、RI線源10から放出されたエネルギ511keVの光子対を同時検出すると、同時計数回路31は、その2つの光子検出器それぞれを示す検出器識別信号(I,J)、および、その2つの光子検出器それぞれが属する2つの単層リング間の差信号RD(Ring Difference )を出力する。これら検出器識別信号(I,J)およびリング間差信号RDは、x−y−θ−ψ変換部41に入力され、光子対を検出した2つの光子検出器を結ぶ直線L1を多層リング21内の測定空間における極座標で表現する場合に用いられる4つの変数(x,y,θ,ψ)それぞれを座標軸とするx−y−θ−ψ空間上の写像位置(x,y,θ,ψ)に変換される。ここで、θとψは、直線L1の方向を表し、xとyは、直線L1に垂直な投射平面(Projection Plane)上の直交座標系による位置を表す。x−y−θ−ψメモリ51は、この(x,y,θ,ψ)に対応する番地に記憶されている投影データに1を累積加算する。このようにして、RI線源10で発生した1対の光子対についての同時計数情報が、x−y−θ−ψメモリ51に投影データとして蓄積され、この投影データから画像再構成部61によって再構成され、この再構成画像は画像表示部71で表示される。
【0029】
以上の何れのタイプのPETにおいても、光子検出器それぞれの検出感度は一定ではなくムラが多いので、光子検出器の感度補正を以下のようにして行う。すなわち、図14に示すように、リング内にRI線源を投与された測定対象物10aを置いて計測し、同時計数回路32とt−θ変換部42とを介して同時計数情報を蓄積することをエミッション計測と言い、これによってt−θメモリ52に蓄積されたデータをエミッションデータと言い、E(t,θ)で表す。また、これとは別に、図15に示すように、リング内に測定対象物のない状態で、リング内でリング中心軸の周りに較正用のRI線源10bを回転させ、模擬的な平行光を光子検出器それぞれに入射させて計測(ブランク計測)を行う。このようにしてt−θメモリ52に蓄積されたデータ(ブランクデータB(t,θ))は、光子検出器対の検出感度ばらつきを表す。そして、エミッションデータE(t,θ)をブランクデータB(t,θ)で割ることにより、感度補正を行う。
【0030】
さらに、測定対象物の光子吸収を以下のようにして補正する。図16に示すように、リング内にエミッション計測時と同じ位置にRI線源が投与されていない測定対象物10cを置き、ブランク計測と同様にリング内で較正用のRI線源10bを回転させて計測(トランスミッション計測)し、これによってt−θメモリ52に蓄積されたデータ(トランスミッションデータT(t,θ))を獲得する。このトランスミッションデータT(t,θ)をブランクデータB(t,θ)で割れば、同時計数ライン上の吸収係数が求まり、エミッションデータE(t,θ)をこの吸収係数で割ることにより、吸収補正ができる。なお、トランスミッション計測では、弱いRI線源が更に測定対象物による吸収を受け、得られる光子対検出が減少する為、統計精度は著しく劣化する。その対策として、T(t,θ)/B(t,θ)をフィルタ等でスムージングしておく。
【0031】
このようにして感度補正および吸収補正を行った後の真の投影データP(t,θ)は、エミッションデータE(t,θ)、ブランクデータB(t,θ)およびトランスミッションデータT(t,θ)を用いて、
P=(E/B)/<T/B> … (1)
で表される。ここで、記号<>は、スムージングを意味する。3D−PETの場合も同様である。
【0032】
本発明は、動きのある測定対象物であっても、体動補正を行い、且つ、エミッションデータを精度良く感度補正し、これによって正確な再構成画像を得るものである。
【0033】
次に、本実施形態の要部について説明する。本実施形態は、リングが往復回転運動するブロック型3D−PETである。図1は、本実施形態に係るPETのシステム構成図である。
【0034】
本実施形態に係るPETは、(1) 光子を検出する多数の光子検出器からなるリング121、測定対象物100の位置・方位を測定し位置方位データを出力する体動測定部123、および、較正用線源110を回転させる回転手段等を備える検出部120と、(2) リング121が検出した光子が電子・陽電子対消滅に伴って発生した光子対であるか否かを判断するとともに、電子・陽電子対消滅に伴って発生した光子対を検出した光子検出器対を識別する同時計数回路130と、(3)同時計数回路130が識別した光子検出器対を結ぶ直線を極座標で表した座標値(x,y,θ,ψ)に変換するx−y−θ−ψ変換部140と、(4) 座標値(x,y,θ,ψ)に対応する番地に記憶されている投影データに所定値を累積加算するx−y−θ−ψメモリ150と、(5) x−y−θ−ψメモリ150に蓄積され感度補正等された投影データに基づいて再構成画像データを生成する画像再構成装置160と、(6) 再構成画像データに基づいて再構成画像を表示する画像表示部170と、(7) 以上の各部を制御するとともに、x−y−θ−ψメモリ150に蓄積された投影データを読み出して所定の処理を行うコンピュータ200と、(8) コンピュータ200が扱うデータを記憶する記憶装置180と、を備える。
【0035】
測定空間122をその内部に含む検出部120のリング121には多数の光子検出器がリング状に配列されており、これらの光子検出器は、測定対象物100が置かれる測定空間122の方向に受光面が向けられて、測定空間122で発生した光子を受光する。検出部120は、更に体動測定部(位置方位測定手段)123を有しており、これによって測定空間122に置かれた測定対象物100の位置および方位を測定し、位置方位データを出力する。また、検出部120には、ブランク計測およびトランスミッション計測に使用される較正用線源110およびそれを回転させる回転機構が備えられている。この回転機構は、例えば、較正用線源110を支持して中心軸を中心に回転可能な支持機構、その支持機構に回転を伝達するベルト、その回転を発生させるモータからなり、コンピュータ200によって制御される。較正用線源110は、使用時(ブランク計測時およびトランスミッション計測時)には、リング121の中心軸を中心としてリング121面上で回転運動し、それによって較正用線源110から発生する光子対のうちリング121面上で飛行するものが光子検出器対で検出される。一方、使用されない時(エミッション計測時)には、その較正用線源110から発生する光子対が何れの光子検出器にも到達しない位置に待避される。あるいは、その較正用線源110が本装置から取り去られてもよい。
【0036】
リング121の内の何れかの光子検出器が光子を受光すると、それぞれの光子検出器と同時計数回路130との間の信号線を通じて、その光子エネルギに応じた信号が同時計数回路130に送られる。リング121のそれぞれの光子検出器から到達した信号を受け取った同時計数回路130は、リング121の内の2つの光子検出器が電子・陽電子対消滅に伴って発生する所定のエネルギ(511keV)を有する光子対を同時検出したことを認識して、その時のこれら2つの光子検出器それぞれを示す検出器識別信号(I,J)およびリング間差信号RDを出力する。
【0037】
これら検出器識別信号(I,J)およびリング間差信号RDは、x−y−θ−ψ変換部140に入力され、検出器識別信号(I,J)が示す光子対を検出した2つの光子検出器を結ぶ直線をリング121内の測定空間122に設定された極座標で表現する場合に使用する4つの変数(x,y,θ,ψ)それぞれを座標軸とするx−y−θ−ψ空間上の位置に写像される。このx−y−θ−ψ変換部140は、体動測定部123から出力された位置方位データをも入力し、測定対象物100の体動を補償して、(x,y,θ,ψ)値を出力する。
【0038】
投影データを蓄積するx−y−θ−ψメモリ150は、x−y−θ−ψ変換部140から出力された(x,y,θ,ψ)値を入力し、この(x,y,θ,ψ)値に対応する番地に記憶されている投影データに、所定値(例えば ”1” )を累積加算する。このようにして、測定対象物100から発生した光子対についての多数の同時計数情報が、x−y−θ−ψメモリ150に蓄積されて投影データとなる。
【0039】
測定対象物100におけるRI線源の分布密度の画像を再構成する画像再構成装置160は、x−y−θ−ψメモリ150に蓄積された投影データ(エミッションデータ)或いは後述する補正処理後のエミッションデータから、リング121内の測定空間122に設定した極座標系の所定のθψ方向から見た測定対象物100における光子対発生分布を表す再構成画像データを生成し、画像表示部170は、この再構成画像データを入力して再構成画像を表示する。
【0040】
以上に述べた各部は、コンピュータ200によってバスライン210を介して統合されて制御等がなされる。すなわち、コンピュータ200は、較正用線源110の回転と待避を制御する。また、体動測定部123から出力された位置方位データを取得する。また、x−y−θ−ψメモリ150の各番地の全ての内容を測定に先立ってゼロクリアし、各番地に蓄積された投影データを測定終了後に取得する。また、x−y−θ−ψメモリ150から取得した投影データ(エミッションデータ、ブランクデータ、トランスミッションデータ)に基づいて、後述する補正処理(感度補正、吸収補正)を行う。また、画像再構成装置160にエミッションデータを送出し、画像再構成装置160によって生成された再構成画像データを取得する。また、再構成画像データを画像表示部170に送出し、再構成画像を表示させる。
【0041】
コンピュータ200の各処理において扱われる各データは、記憶装置180に記憶され、また、必要時には記憶装置180から読み出される。すなわち、記憶装置180は、エミッション計測後にx−y−θ−ψメモリ150から読み出されたエミッションデータを記憶するとともに、エミッション計測の最中に体動測定部123から出力された測定対象物100の位置および方位に関する位置方位データを記憶する。また、記憶装置180は、ブランク計測で得られたブランクデータや、トランスミッション計測で得られたトランスミッションデータをも記憶する。また、感度補正や吸収補正の計算に際しては、記憶装置180は、エミッションデータ、ブランクデータ、トランスミッションデータなどが読み出され、そして、その計算の中間データや感度補正後のエミッションデータを記憶する。また、画像再構成処理に際しては、記憶装置180は、感度補正後のエミッションデータが読み出され、画像再構成装置で生成された再構成画像データを記憶する。なお、記憶装置180は、記憶領域が複数の領域に分割されており、必要に応じて上記各データをそれぞれ異なる領域に記憶する。記憶装置180は、磁気ディスク、磁気テープ等であってもよいし、或いは、コンピュータ200内にある半導体メモリからなる主記憶装置であってもよい。
【0042】
以上に述べた各部は、それぞれ独立して動作するのではなく、コンピュータ200の指示に従い、互いに連係をもって動作する。すなわち、コンピュータ200は、(1) 較正用線源110を回転させてブランクデータ(基準感度補正データ)を取得する基準感度補正データ生成モジュール201と、(2) エミッションデータを取得する測定モジュール202と、(3) 測定対象物100の体動を補償した感度補正データを生成する感度補正データ生成モジュール203と、(4) エミッションデータを感度補正する感度補正モジュール204と、(5) 画像再構成処理と画像表示を行わせる画像再構成モジュール205と、を有し、それぞれのモジュールは、対応する処理ステップにおいて、各部の動作を統合制御等する。
【0043】
基準感度補正データ生成モジュール201は、ブランク計測に先立ち、較正用線源110の回転を指示し、x−y−θ−ψメモリ150のデータをゼロクリアする。そして、ブランク計測が終了した後、x−y−θ−ψメモリ150に蓄積された基準感度補正データを獲得し、その基準感度補正データを記憶装置180に記憶させる。
【0044】
また、エミッションデータを取得する測定モジュール202は、エミッション計測に先立ち、較正用線源110の停止と待避を指示し、x−y−θ−ψメモリ150のデータをゼロクリアする。エミッション計測中に体動測定部123から出力された位置方位データを取得し、そして、その計測が終了した後、x−y−θ−ψメモリ150に蓄積されたエミッションデータを獲得し、そのエミッションデータと位置方位データとを記憶装置180に記憶させる。
【0045】
また、感度補正データ生成モジュール203は、記憶装置180に記憶されている基準感度補正データと位置方位データとを読み出し、これらのデータに基づいて感度補正データを生成し、その感度補正データを記憶装置180に記憶させる。
【0046】
また、感度補正モジュール204は、記憶装置180に記憶されているエミッションデータと感度補正データとを読み出し、これらのデータに基づいてエミッションデータを感度補正する。さらに、吸収補正を行ってもよい。そして、補正されたエミッションデータを記憶装置180に記憶する。
【0047】
また、画像再構成モジュール205は、記憶装置180に記憶されている感度補正されたエミッションデータを読み出し、そのデータを画像再構成装置160に送り、画像再構成装置160で処理されて得られる再構成画像データを取得し、そのデータを画像表示部170に送って画像表示させる。
【0048】
次に、本実施形態に係るPETの検出部について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係るPETの検出部の断面図である。検出部120は、多数の光子検出器Dからなるリング121と、測定対象物100の位置および方位を測定する体動測定部123等を備える。
【0049】
測定空間122を内部に有するリング121は、ブロック型の単層リングが多層(この図では5層)に配置された構造であり、それぞれの層は、それぞれ複数個の光子検出器Dからなるブロックが複数個リング状に配列され、それぞれのブロックのそれぞれの光子検出器Dは、測定対象物100が置かれる測定空間122の方向に受光面が向けられている。遮蔽シールド124は、光子対が測定空間122外に洩れるのを防ぐためのものであり、単層リングのそれぞれを互いに隔てるものではない。したがって、異なる単層リング間で光子対を検出することが可能である。
【0050】
測定対象物100の位置および方位を測定する体動測定部123は、例えば、それぞれ発光素子と受光素子とからなる光学式の測距センサ123aないし123c、および、これらからの出力に基づいて位置方位データを出力する体動データ処理部123dからなる。測距センサ123aないし123cそれぞれは、リング121との相対的な位置関係が固定されており、測定対象物100の所定箇所(この図では、測定対象物100である人体の頭部)に設けられたマーカ101aないし101cそれぞれに光ビームを照射してその反射光を受光し、これらマーカ101aないし101cそれぞれとの距離を測定する。3つの測距センサ123aないし123cそれぞれから得られた距離データは、体動データ処理部123dに入力され、測定対象物100の位置と方位とが求められる。
【0051】
また、体動測定部123として撮像カメラを用い、得られた画像を解析して測定対象物100の位置と方位とを求めてもよい。あるいは、体動測定部123として、測定対象物100の所定箇所に設けられた加速度センサも用いてもよく、この場合、加速度センサからの出力に基づいて、測定対象物100の位置と方位とを求めることができる。
【0052】
次に、体動測定部123による測定対象物100の位置および方位の測定についてより詳細に説明する。図3は、本実施形態に係るPETにおける体動測定の説明図である。
【0053】
測定対象物100の位置は、リング121内の測定空間122に設定されたX−Y−Z直交座標系における測定対象物100中の所定点(例えば、測定対象物100の中心点)の座標値(X,Y,Z)で表される。また、測定対象物100の方位は、そのX−Y−Z直交座標系における測定対象物100の向き(Θ,Ψ)で表される。ここで、Θは、X−Y平面上に投影された方位のX軸からの角度であり、Ψは、X−Y平面からの仰角である。この測定対象物100の位置および方位を表す位置方位データ(X,Y,Z,Θ,Ψ)は、体動データ処理部123dにおいて、測距センサ123aないし123cから出力された距離データに基づいて求められる。
【0054】
なお、体動測定部123は、測定対象物100の位置および方位について基準値(例えば、測定開始時における測定対象物100の位置および方位)からの変位量を測定し出力してもよい。この体動測定部123は、エミッション計測の測定開始時刻から測定終了時刻まで、一定時間(例えば、数m秒ないし数十m秒)間隔で測定対象物100の位置および方位の変位量を測定し、各時刻tk における位置方位データ(ΔXk ,ΔYk ,ΔZk ,ΔΘk ,ΔΨk )を体動測定部123で得る(k=0,1,...,n,... )。図4は、本実施形態に係るPETにおける体動測定で得られる位置方位データの図表である。このように測定された測定対象物100の位置および方位を表す位置方位データは、x−y−θ−ψ変換部140に入力されるとともに、コンピュータ200に読み込まれ記憶装置180に記憶される。
【0055】
次に、体動測定部123により測定された測定対象物の体動を補償して感度補正データを生成し更に感度補正する方法について説明する。尚、以下に述べる感度補正データ生成および感度補正それぞれは、コンピュータ200の感度補正データ生成モジュール203および感度補正モジュール204それぞれによって処理される。図5は、本実施形態に係るPETにおける感度補正データ生成および感度補正のデータフロー図である。
【0056】
エミッション計測が終了した後に、エミッション計測で求めた各時刻の位置および方位の変位量(ΔXk ,ΔYk ,ΔZk ,ΔΘk ,ΔΨk )を、リング121の光子検出器対を結ぶ直線を測定空間122における極座標で表現する場合に用いられる4つの変数(x,y,θ,ψ)それぞれを座標軸とするx−y−θ−ψ空間上の変位(Δxk ,Δyk ,Δθk ,Δψk )に写像する(k=0,1,2,... )。そして、エミッション計測の測定時間全体に亘る変位量(Δxk ,Δyk ,Δθk ,Δψk )の分布を求め、それを測定対象物100の存在密度分布関数Cθψ(Δx,Δy,Δθ,Δψ)とする。
【0057】
この存在密度分布関数Cθψ(Δx,Δy,Δθ,Δψ)は、測定対象物100の同一地点で発生して同一方向に飛行した光子対がリング121で検出されて同時計数情報がx−y−θ−ψメモリ150に蓄積されるに際して、測定対象物100が基準位置・基準方位(例えば、エミッション計測開始時における位置・方位)にあるときには、同時計数情報が座標値(x,y,θ,ψ)に対応する番地に格納されるが、エミッション計測の最中に測定対象物100が変位(Δx,Δy,Δθ,Δψ)なる位置・方位にあるときには、その同時計数情報が座標値(x+Δx,y+Δy,θ+Δθ,ψ+Δψ)に対応する番地に格納され、その割合が値Cθψ(Δx,Δy,Δθ,Δψ)であることを示すものである。
【0058】
なお、この存在密度分布関数Cθψは、一般にθ値およびψ値によって、すなわち、投影方向によって異なる。図6は、本実施形態に係るPETにおける測定対象物の各位置・各方位における存在密度分布の説明図である。この図は、測定対象物(人体頭部)100の頂部から見た図であり、La,LbおよびLcそれぞれの投影方向における存在密度分布関数Cθψを、それぞれ、Ca,CbおよびCcとして表したものである。なお、存在密度分布関数は実際には4変数の関数ではあるが、この図では簡略化して表している。この図に示すように、測定対象物100の体動が、或方向または或回転方向に偏っていると、存在密度分布関数Cθψは、θとψによって異なる関数となる。
【0059】
そして、このような存在密度分布関数Cθψ(Δx,Δy,Δθ,Δψ)と、基準感度補正データ生成モジュール201で求められた基準感度補正データB (x,y,θ,ψ)とから、測定対象物100の体動を補償した感度補正データB1(x,y,θ,ψ)を、
【0060】
【数1】
【0061】
なる関係式で求める。ここで、4重の総和演算Σは、測定対象物100の体動の範囲に亘って計算する。この計算は、測定対象物100からの同一の光子対が、測定値対象物100の体動に従って異なる光子検出器対で検出されることがあっても、その光子対を検出する可能性のある光子検出器対について存在密度分布Cθψで表される重みを考慮して平均化した検出感度を算出することを意味している。
【0062】
以上より、エミッション計測で得られたエミッションデータE(x,y,θ,ψ)を、測定対象物100の体動を補償した感度補正データB1(x,y,θ,ψ)で感度補正することによって、感度補正後のエミッションデータE1(x,y,θ,ψ)が、
E1=E/B1 … (3)
で得られる。このエミッションデータE1は、測定対象物100の体動を補正してエミッション計測するのみでなく、測定対象物100の体動を補償したブランクデータB1で感度補正したものであるので、正確な感度補正がなされ、これに基づいて画像再構成すれば正確な再構成画像を得ることができる。
【0063】
もし、さらに吸収補正を行う場合には、エミッション計測と同じ要領でトランスミッション計測を行い、体動補償のなされたトランスミッションデータT、および、トランスミッション計測中の位置方位データを獲得し、この位置方位データから算出した存在密度分布関数に基づいて、感度補正データB2を(2)式の要領で算出する。そして、真の線和P1は、
P1=(E/B1)/<T/B2> … (4)
なる関係式で求められる。ここで、記号<>は、スムージングを意味する。
【0064】
次に、本実施例に係るPETの作用および画像再構成方法について説明する。図7は、本実施形態に係るPETにおける計測のフローチャートである。
【0065】
先ず、ステップS1では、コンピュータ200の基準感度補正データ生成モジュール201からの指示により、ブランク計測を行う。すなわち、リング121内に測定対象物100を置かないで、較正用線源110を中心軸を中心にしてリング121面上で回転させて模擬的な平行光を生成する。その状態で、その較正用線源110から発生する光子対は、リング121を構成する多数の光子検出器により検出され、同時計数回路130でエネルギ弁別され、x−y−θ−ψ変換部140で、光子対を検出した2つの光子検出器を結ぶ直線に対応する(x,y,θ,ψ)値に変換され、その(x,y,θ,ψ)値に対応するx−y−θ−ψメモリ150の番地に投影データとして蓄積される。このようにして投影データとして蓄積された基準感度補正データB(x,y,θ,ψ)は、基準感度補正データ生成モジュール201により、読み出されて記憶装置180に記憶される。
【0066】
続いて、ステップS2では、コンピュータ200の測定モジュール202からの指示により、エミッション計測を行う。すなわち、較正用線源110を待避させ、RI線源を注入された測定対象物100をリング121内の測定空間122に置いて、この状態で、測定対象物100から発生した光子対が検出されて、体動測定部123から出力された測定対象物100の位置および方位を示す位置方位データに基づいて体動補正されて、x−y−θ−ψメモリ150に投影データが蓄積される。このようにして投影データとして蓄積されたエミッションデータE(x,y,θ,ψ)は、測定モジュール202により、読み出されて記憶装置180に記憶される。また、同時に、測定モジュール202は、エミッション計測中に、体動測定部123から出力された位置方位データを一定時間間隔で獲得し、記憶装置180に記憶する。
【0067】
もし、さらに吸収補正をも行う場合には、トランスミッション計測を行う。すなわち、RI線源が注入されていない測定対象物100を測定空間122に置き、較正用線源110を回転させ、この状態で、エミッション計測と同じ要領で測定し、トランスミッションデータTと位置方位データを獲得し、記憶装置180に記憶する。
【0068】
なお、ブランク計測(ステップS1)、エミッション計測(ステップS2)およびトランスミッション計測は、如何なる順序で行われても構わない。
【0069】
以上の各計測が終了すると、続いてステップS3で、これらの計測で獲得されたデータに基づいて、感度補正データ生成を行う。感度補正データ生成に際しては、コンピュータ200の感度補正データ生成モジュール203は、エミッション計測時の位置方位データを記憶装置180から読み出して存在密度分布関数Cθψを算出し、更に、基準感度補正データB(x,y,θ,ψ)を読み出して、感度補正データB1(x,y,θ,ψ)を(2)式に基づいて算出する。
【0070】
続いて、ステップS4で感度補正を行う。コンピュータ200の感度補正モジュール204は、記憶装置180から読み出したエミッションデータE(x,y,θ,ψ)を、ステップS3で求めた感度補正データB1(x,y,θ,ψ)で割ることにより、リング121を構成する複数の光子検出器間の感度ムラを補正し、感度補正後のエミッションデータE1(x,y,θ,ψ)を得る。
【0071】
もし、さらに吸収補正をも行う場合には、トランスミッションデータTを、トランスミッション計測時の位置方位データに基づいて、ステップS3と同じ要領で補正し、真の投影データP1を(4)式に基づいて算出する。
【0072】
そして、ステップS4で得られた感度補正後のエミッションデータE1(または、真の投影データP1)に基づいて、ステップS5で画像再構成を行う。すなわち、コンピュータ200の画像再構成モジュール205は、この感度補正後のエミッションデータE1(または、真の投影データP1)を画像再構成装置160に送出し、画像再構成装置160において生成された再構成画像データを獲得し、そして、その再構成画像データを画像表示部170に送出して再構成画像を表示させる。このようにすることにより、より正確な電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を測定することができる。
【0073】
本発明は、上述した3D−PETに限定されるものではなく、他のタイプのPETにも適用可能である。
【0074】
例えば、本発明は、多層のリングからなる2D−PETや、1層リングからなる2D−PETにも適用できる。多層のリングからなる2D−PETは、実質的には、1層リングからなる2D−PETが複数あるものと同様に考えることができるので、後者について説明する。この場合も、測定対象物が動くことは、リングが動くことと同等であり、特に、測定対象物がリング中心軸方向に動くことは、リングがその中心軸方向に動くことと同等である。したがって、測定対象物が固定されている場合には、その1断面しか測定できないのに対して、測定対象物が動く場合には、その体動の範囲内で、多数の断面の測定が可能となる。すなわち、模擬的な3D−PETとも言える。但し、実際にはリングが1層であるので、3D−PETに比べれば検出感度は低い。したがって、2D−PETであっても、上記実施形態と同様にして、エミッション計測最中に測定対象物の位置および方位を測定するとともに、その体動を補償したエミッションデータEをx−y−θ−ψメモリに蓄積し、その体動を補償した感度補正データB1を(2)式で算出し、感度補正後のエミッションデータE1を(3)式で求めて、画像再構成を行うことができる。
【0075】
また、リングが回転運動やウォブリング運動などの運動を行う場合であっても、同様に適用可能である。この場合、リングに固定した体動測定部によって測定対象物の位置・方位を測定し、或いは、リングの回転位置および測定対象物の位置・方位の双方を測定し、これによって求められるリングと測定対象物との相対的な動きに基づいて、上記実施形態と同様にして体動補償と感度補正とを施した真の線和を求めることができる。
【0076】
また、上記実施形態ではエミッション計測中に位置方位データを時系列データとして蓄積しエミッション計測後に存在密度分布関数を求めたが、エミッション計測中に位置方位データの分布密度を蓄積・生成してもよい。この場合、エミッション計測後に位置方位データ分布密度から直接に存在密度分布関数を求めることができる。
【0077】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したとおり、本発明に係るポジトロンCT装置では、基準感度補正データ生成手段によって、較正用線源回転手段により回転させられている較正用線源から発生した光子対がリングによって検出され蓄積された投影データが基準感度補正データとして獲得される。位置方位測定手段によって、測定空間に置かれた測定対象物のリングに対する相対的な位置および方位が測定されて位置方位データが出力され、測定手段によって、測定対象物についての投影データが測定対象物の動きを補償して測定データとして獲得される。そして、感度補正データ生成手段によって位置方位データから生成された存在密度分布関数に基づいて測定対象物の動きを補償した感度補正データが生成され、感度補正手段によって測定データが感度補正され、画像再構成手段によって再構成画像を得る。以上のような構成とすることにより、測定対象物の体動を補償した測定データ(エミッションデータ)が得られるだけでなく、体動補償した感度補正データが得られ、測定中に測定対象物が固定されず動く場合であっても、正確な感度補正データによって感度補正を行うことができ、したがって、アーティファクト発生のない正確な再構成画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るPETのシステム構成図である。
【図2】実施形態に係るPETの検出部の断面図である。
【図3】実施形態に係るPETにおける体動測定の説明図である。
【図4】実施形態に係るPETにおける体動測定で得られる位置方位データの図表である。
【図5】実施形態に係るPETにおける感度補正データ生成および感度補正のデータフロー図である。
【図6】実施形態に係るPETにおける測定対象物の各位置・各方位における存在密度分布の説明図である。
【図7】実施形態に係るPETにおける計測のフローチャートである。
【図8】2D−PETのシステム構成図である。
【図9】2D−PETのリングにおける光子対検出と画像再構成の説明図である。
【図10】2D−PETのリングにおける光子対検出の説明図である。
【図11】ブロック型PETのリングの構成図である。
【図12】3D−PETのシステム構成図である。
【図13】3D−PETのリングの構成図である。
【図14】エミッション計測の説明図である。
【図15】ブランク計測の説明図である。
【図16】トランスミッション計測の説明図である。
【符号の説明】
100…測定対象物、110…較正用線源、120…検出部、121…リング、122…測定空間、123…体動測定部、124…遮蔽シールド、130…同時計数回路、140…x−y−θ−ψ変換部、150…x−y−θ−ψメモリ、160…画像再構成装置、170…画像表示部、180…記憶装置、200…コンピュータ。
Claims (8)
- 測定空間を囲んで所定軸の周囲に配列された複数の光子検出器からなるリングによって、前記測定空間における電子・陽電子対消滅に伴って発生する光子対を検出し、前記光子対のそれぞれの光子を検出した2つの光子検出器を結ぶ直線について前記測定空間に設定した極座標で表現した座標値に対応した番地に所定数を累積加算して蓄積された投影データに基づいて、電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を測定するポジトロンCT装置であって、
電子・陽電子対消滅に伴う光子対を発生させる較正用線源を前記測定空間で前記所定軸を中心にして前記リングに対して相対的に回転運動させる較正用線源回転手段と、
前記較正用線源回転手段に対して前記較正用線源の回転運動を指示し、前記較正用線源が回転運動している状態で、前記較正用線源から発生する光子対を検出して蓄積された前記投影データを基準感度補正データとして獲得する基準感度補正データ生成手段と、
前記測定空間に置かれた測定対象物の前記リングに対する相対的な位置および方位に応じた位置方位データを出力する位置方位測定手段と、
前記測定空間に前記較正用線源がない状態で、前記測定対象物から発生する光子対を検出し、前記位置方位データに基づいて前記相対的な位置および方位の変化を補償して測定時間中に蓄積された前記投影データを測定データとして獲得するとともに、前記測定時間中の前記位置方位データを入力して記憶する測定手段と、
前記基準感度補正データと前記測定時間中の前記位置方位データとに基づいて感度補正データを生成する感度補正データ生成手段と、
前記測定データを前記感度補正データに基づいて感度補正する感度補正手段と、
前記感度補正手段によって感度補正された前記測定データに基づいて、前記測定対象物における電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を算出し画像再構成を行なう画像再構成手段と、
を備えることを特徴とするポジトロンCT装置。 - 前記感度補正データ生成手段は、前記測定時間中の前記位置方位データに基づいて前記測定時間内における前記測定対象物の前記極座標上での存在密度分布を求め、前記基準感度補正データを前記存在密度分布で加重平均計算した結果に基づいて、前記感度補正データを生成する、ことを特徴とする請求項1記載のポジトロンCT装置。
- 前記測定手段は、前記測定時間中の各時刻における前記位置方位データを蓄積し、
前記感度補正データ生成手段は、蓄積された前記位置方位データに基づいて前記存在密度分布を生成する、
ことを特徴とする請求項2記載のポジトロンCT装置。 - 前記測定手段は、前記測定時間中の各時刻において前記位置方位データに基づいて位置方位データ分布を逐次生成し、
前記感度補正データ生成手段は、前記位置方位データ分布に基づいて前記存在密度分布を生成する、
ことを特徴とする請求項2記載のポジトロンCT装置。 - 測定空間を囲んで所定軸の周囲に配列された複数の光子検出器からなるリングによって、前記測定空間における電子・陽電子対消滅に伴って発生する光子対を検出し、前記光子対のそれぞれの光子を検出した2つの光子検出器を結ぶ直線について前記測定空間に設定した極座標で表現した座標値に対応した番地に所定数を累積加算して蓄積された投影データに基づいて、電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を測定するポジトロンCT装置の画像再構成方法であって、
電子・陽電子対消滅に伴う光子対を発生させる較正用線源を前記測定空間で前記所定軸を中心にして前記リングに対して相対的に回転運動させた状態で、前記較正用線源から発生する光子対を検出して蓄積された前記投影データを基準感度補正データとして獲得する第1のステップと、
前記測定空間に前記較正用線源がない状態で、前記測定空間に置かれた測定対象物の前記リングに対する相対的な位置および方位に応じた位置方位データを測定時間中に獲得するとともに、前記測定対象物から発生する光子対を検出し、前記位置方位データに基づいて前記相対的な位置および方位の変化を補償して前記測定時間中に蓄積された前記投影データを測定データとして獲得する第2のステップと、
前記基準感度補正データと前記測定時間中の前記位置方位データとに基づいて感度補正データを生成する第3のステップと、
前記測定データを前記感度補正データに基づいて感度補正する第4のステップと、
前記第4のステップによって感度補正された前記測定データに基づいて、前記測定対象物における電子・陽電子対消滅の発生頻度の空間分布を算出し画像再構成を行なう第5のステップと、
を備えることを特徴とするポジトロンCT装置の画像再構成方法。 - 前記第3のステップは、前記測定時間中の前記位置方位データに基づいて前記測定時間内における前記測定対象物の前記極座標上での存在密度分布を求め、前記基準感度補正データを前記存在密度分布で加重平均計算した結果に基づいて、前記感度補正データを生成する、ことを特徴とする請求項5記載のポジトロンCT装置の画像再構成方法。
- 前記第2のステップは、前記測定時間中の各時刻における前記位置方位データを蓄積し、
前記第3のステップは、蓄積された前記位置方位データに基づいて前記存在密度分布を生成する、
ことを特徴とする請求項6記載のポジトロンCT装置の画像再構成方法。 - 前記第2のステップは、前記測定時間中の各時刻において前記位置方位データに基づいて位置方位データ分布を逐次生成し、
前記第3のステップは、前記位置方位データ分布に基づいて前記存在密度分布を生成する、
ことを特徴とする請求項6記載のポジトロンCT装置の画像再構成方法。
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