JP3604441B2 - パターン認識装置及びその方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、光学的または電子的に二次元画像を取り扱う情報処理の技術分野において、合同フーリエ変換型相関法に基づいて複数の画像に対して相関演算を実行することにより、当該複数の画像を照合判定するパターン認識装置及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、二次元画像に対して相関演算を実行する方法の一つとして、並列的に配置された複数の画像に2回のフーリエ変換を実行する合同フーリエ変換型相関 (JTC; Joint Transform Correlation)法が知られている。このJTC法を高速に実行するために、光学レンズの結像作用をフーリエ変換として適用することにより、複数の画像を照合判定する光相関システムが提案されている。以下、このJTC法の原理について、指紋像を認識対象に設定して簡単に説明する。
【0003】
まず、図12(a)に示すように、2個の指紋像、すなわち予め撮像済みの参照像と新たに撮像された測定像とを、入力像として並列的な配置で表示する(図12(a)参照)。続いて、図12(b)に示すように、この入力像を照明したコヒーレント光を結像レンズに入射させることにより、入力像に対して1回のフーリエ変換を実行した変換像を生成する。続いて、図12(c)に示すように、この変換像を照明したコヒーレント光を結像レンズに入射させることにより、入力像に対して2回のフーリエ変換を実行した相関像を生成する(図12(c)参照)。
【0004】
このようにして得られた相関像は、中心部に出現した0次空間周波数成分と、この0次空間周波数成分を挟む両側の周辺領域にそれぞれ現れた1次空間周波数成分とから構成されている。この1次空間周波数成分の強度分布は、参照像と測定像との間の相関値に対応している。そのため、この1次空間周波数成分のピーク強度や半値幅などを検出することにより、参照像に対して測定像を照合判定することができる。
【0005】
なお、このようなJTC法の原理に関しては、文献「光学、第21巻第6号第392頁〜第399頁、1992年6月」などに詳細に記載されている。また、JTC法を利用した光相関システムの構成に関しては、文献「光学、第23巻第5号第315号〜第320号、1994年5月」などに詳細に記載されている。さらに、人体を構成するパターンを認識対象とするJTC法に基づいて個人を識別するパターン認識装置に関しては、公報「特開平6−76128号公報」及び「特開平6−176155号公報」などに詳細に記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のJTC法を利用したパターン認識装置では、同一のパターンである参照像と測定像とが不一致であると照合判定したり、異なるパターンである参照像と測定像とが一致していると照合判定したりするという誤った認識が避けられない場合がある。以下、この誤認識の要因について、相関演算における入力像と相関像とに注目して簡単に説明する。
【0007】
図13(a)に示すように、並列的に配置された参照像領域及び測定像領域に入力像として参照像IR 及び測定像IM をそれぞれ通常通り表示した場合でも、測定像IM の撮像状況に対応して測定像IM の入力位置が測定像領域中で変動することがある。このとき、図13(b)に示すように、入力像に対する2回のフーリエ変換に基づいて生成された相関像には、参照像IR と測定像IM との間の相関値に対応した1次空間周波数成分P1 (T)が、参照像IR と測定像IM との間で変動した距離DMRに対応した間隔D01T で0次空間周波数成分P0 の両側に出現する。そのため、参照像IR と測定像IM との間の照合判定は真である1次空間周波数成分P1 (T)の強度分布に基づいて行われるので、誤認識が起こることはない。
【0008】
しかしながら、図14(a)に示すように、入力像の一方として参照像IR を通常通り参照像領域に表示した場合でも、入力像の他方として同一パターンである2個の測定像IM1,IM2を測定像領域に表示すると、支障が生じることがある。このとき、図14(b)に示すように、入力像に対する2回のフーリエ変換に基づいて生成された相関像には、2個の測定像IM1,IM2の間の相関値に対応した1次空間周波数成分P1 (F)が、2個の測定像IM1,IM2の間の距離DMMに対応した間隔D01F で0次空間周波数成分P0 の両側に出現してしまう。そのため、参照像IR と測定像IM との間の照合判定は偽である1次空間周波数成分P1 (F)の光強度分布に基づいて行われるので、誤認識が起こり得る。
【0009】
また、図15(a)に示すように、入力像の一方として参照像IR を通常通り参照像領域に表示した場合でも、入力像の他方として第1の測定像IM0と同一パターンである2個の第2の測定像IM1,IM2とを測定像領域に表示すると、やはり支障が生じることがある。このとき、図15(b)に示すように、入力像に対する2回のフーリエ変換に基づいて生成された相関像には、参照像IR と第1の測定像IM0との間の相関値に対応した第1の1次空間周波数成分P1 (T)が、参照像IR と第1の測定像IM0との間の距離DMRに対応した間隔D01T で0次空間周波数成分P0 の両側に出現する。また、2個の第2の測定像IM1,IM2の間の相関値に対応した第2の1次光P1 (F)が、2個の第2の測定像IM1,IM2の間の距離DMMに対応した間隔D01F で0次空間周波数成分P0 の両側に出現してしまう。そのため、参照像IR と第1の測定像IM0との間の照合判定は真である第1の1次空間周波数成分P1 (T)ではなく偽である第2の1次空間周波数成分P1 (F)の光強度分布に基づいて行われると、誤認識が起こり得る。
【0010】
さらに、図16(a)に示すように、入力像の一方としてはいかなる画像も参照像領域に表示しないで、入力像の他方として同一パターンの2個の測定像IM1,IM2を測定像領域に表示する場合、次の現象が起こることがある。このとき、図16(b)に示すように、入力像に対する2回のフーリエ変換に基づいて生成された相関像には、入力像を構成した2個の測定像IM1,IM2の間の相関値に対応した1次空間周波数成分P1 が2個の測定像IM1,IM2の間の距離DMMに対応した間隔D01で0次空間周波数成分P0 の両側に出現する。その他に、2次光P2 ,…,N次光PN を含む高次空間周波数成分が、2個の測定像IM1,IM2の間の距離DMMに対応した間隔2D01,…,N・D01で0次光P0 の両側に出現してしまう。このような高次空間周波数成分は、変換像として生成される2個の測定像IM1,IM2の干渉縞の変調度に、いわゆるサイン波に対するズレが生じた場合に発生する。
【0011】
そのため、入力像としては参照像IR 及び測定像IM を参照像領域及び測定像領域にそれぞれ表示する場合でも、入力像の他方として同一または類似の像成分を測定像領域に表示すると、支障が生じることがある。つまり、変換像として生成される参照像IR 自体または測定像IM 自体の干渉縞の変調度にサイン波に対するズレが生じた場合に、上述した高次空間周波数成分が相関像に出現してしまう。そのため、参照像IR と測定像IM との間の照合判定は1次空間周波数成分P1 の他に高次空間周波数成分を含む強度分布に基づいて行われるので、誤認識が起こり得る。
【0012】
そこで、本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、参照像と測定像とに対する照合判定に生じる誤認識を低減させることにより、良好な認識率を有するパターン認識装置及びその方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のパターン認識装置は、上記の目的を達成するために、(A1)第1のパターンを二次元画像として撮像する入力手段と、(A2)この入力手段によって撮像された第1のパターンの像と当該第1のパターンの像に対して比較する少なくとも一つの第2のパターンの像とを入力像として並列的に配置して出力する制御手段と、(B−1)この制御手段によって出力された入力像を表示する入力面と、(B−2)この入力面に表示された入力像に対して合同フーリエ変換型相関演算を実行する演算手段と、(B−3)この演算手段によって入力像に対応して生成された相関像を配置する出力面とを含んで構成されている照合手段と、(C)この照合手段によって生成された相関像の強度分布に基づいて第1及び第2のパターンの像を照合判定する判定手段とを備えている。
【0014】
ここで、制御手段は、(B−1−a)第1のパターンの像を配置する第1の入力領域と、(B−1−b)この第1の入力領域に隣接する第2の入力領域と、(B−1−c)第1の入力領域に対向して第2の入力領域に隣接し、第2のパターンの像を配置する第3の入力領域とを、第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った第2の入力領域の領域幅が、当該配列方向に沿った第1の入力領域の領域幅以上になるように配列して入力像として出力している。
【0015】
また、出力面は、(B−2−a)相関像を構成する二つの1次空間周波数成分の一方を配置する第1の出力領域と、(B−2−b)この第1の出力領域に隣接し、相関像を構成した0次空間周波数成分を配置する第2の出力領域とを有し、第1及び第2の出力領域の配列方向に沿った第2の出力領域の領域幅として、第2の入力領域の領域幅と入力像に対する相関像の倍率との積に一致した距離を0次空間周波数成分の両側に保持している。
【0016】
さらに、判定手段は、第1及び第2の出力領域にそれぞれ配置された相関像の強度分布を分別した上で、第1の出力領域に配置された相関像の1次空間周波数成分の強度分布を用いて第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴とする。
【0017】
なお、第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った第2の入力領域の領域幅は、当該配列方向に沿った第1及び第3の入力領域の領域幅以上に設定されていることを特徴としてもよい。また、出力面は、第1の出力領域に対向して第2の出力領域に隣接し、二つの1次空間周波数成分の他方を配置する第3の出力領域とをさらに有しており、照合手段は、第1ないし第3の出力領域にそれぞれ配置された相関像の強度分布を分別した上で、第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴としてもよい。
【0018】
また、演算手段は、入力像に対してフーリエ変換を光学的に2度実行するレンズを含んでいること、あるいは入力像に対してフーリエ変換を電子工学的に2度実行するコンピュータを含んでいることを特徴としてもよい。さらに、パターンは、人間の指の腹に形成された指紋であることを特徴としてもよい。
【0019】
本発明のパターン認識方法は、上記の目的を達成するために、(A)第1のパターンを二次元画像として撮像する第1のステップと、(B)この第1のステップで撮像された第1のパターンの像と当該第1のパターンの像に対して比較する少なくとも一つの第2のパターンの像とを入力像として入力面に並列的に配置して信号を生成して出力し、信号に基づいて入力像を入力面に表示させる第2のステップと、(C)この第2のステップで表示された入力像に対して合同フーリエ変換型相関演算を実行することにより、当該入力像に対応して生成された相関像を出力面に配置する第3のステップと、(D)この第3のステップで生成された相関像の強度分布に基づいて第1及び第2のパターンの像を照合判定する第4のステップとを備えている。
【0020】
ここで、第2のステップにおいては、第1の入力領域、第2の入力領域及び第3の入力領域を、第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った第2の入力領域の領域幅が、当該配列方向に沿った第1の入力領域の領域幅以上になるように順次隣接して配置させると共に、第1及び第2のパターンの像を第1及び第3の入力領域にそれぞれ配置して信号を生成して出力する。
【0021】
また、第3のステップにおいては、出力面に第1の出力領域及び第2の出力領域を隣接して設定する際に、第1及び第2の出力領域の配列方向に沿った第2の出力領域の領域幅を、第2の入力領域の領域幅と入力像に対する相関像の倍率との積の2倍に一致した距離に設定した上で、相関像を構成する二つの1次空間周波数成分の一方及び0次空間周波数成分を第1の出力領域の内部及び第2の出力領域の中央部にそれぞれ配置する。
【0022】
さらに、第4のステップにおいては、第1及び第2の出力領域に配置された相関像の強度分布を分別した上で、第1の出力領域に配置された相関像の1次空間周波数成分の強度分布を用いて第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴とする。
【0023】
なお、第2のステップにおいては、第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った第2の入力領域の領域幅を、当該配列方向に沿った第1及び第3の入力領域の領域幅以上に設定することを特徴としてもよい。また、第3のステップにおいては、第1の出力領域に対向した上で第2の出力領域に隣接して設定した第3の出力領域に、二つの1次空間周波数成分の他方を第3の出力領域に配置し、第4のステップにおいては、第1及び第3の出力領域にそれぞれ配置された相関像の強度分布を分別した上で、第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴としてもよい。
【0024】
また、第4のステップにおいては、第2の出力領域に配置された相関像の強度分布が所定の閾値未満である場合、第1の出力領域に配置された相関像の強度分布に基づいて第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴としてもよい。さらに、第4のステップにおいては、第1のパターンの像のみからなる入力像に対応して生成された相関像の強度分布と、第2のパターンの像のみからなる入力像に対応して生成された相関像の強度分布とを、第1及び第2のパターンの像からなる入力像に対応して生成された相関像の強度分布から除去した上で、当該相関像の強度分布に基づいて第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴としてもよい。
【0025】
【作用】
本発明のパターン認識装置及びその方法においては、入力手段が第1のパターンを二次元画像としてそれぞれ撮像すると、照合手段は第1のパターンの像と当該第1のパターンの像に対して比較する少なくとも一つの第2のパターンの像とを入力像として入力面上で並列的に配置する。このとき、入力面において第2の入力領域の両側でそれぞれ隣接した第1及び第3の領域には、第1及び第2のパターンの像がそれぞれ配置されている。
【0026】
そして、照合手段は、入力面に配置された入力像に対して合同フーリエ変換型相関演算を実行することにより、その入力像に対応して生成された相関像を出力面に配置する。このとき、出力面において相互に隣接した第1及び第2の出力領域には、相関像を構成する1次空間周波数成分及び0次空間周波数成分がそれぞれ配置される。
【0027】
ここで、第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った第2の入力領域の領域幅は、その配列方向に沿った第1の入力領域の領域幅以上に設定されている。また、第1及び第2の出力領域の配列方向に沿った第2の出力領域の領域幅は、第2の入力領域の領域幅と前記入力面に対する前記出力面の倍率との積に一致した距離を0次空間周波数成分の両側に保持して設定されている。
【0028】
これにより、第1及び第3の入力領域にそれぞれ配置された第1及び第2のパターンの像の間隔は、第2の入力領域の領域幅以上であることから、第1の入力領域の領域幅以上となる。そのため、これら第1及び第2のパターンの像に対応する二つの1次空間周波数成分の一方は、当該第1及び第2のパターンの像の間隔と前記入力面に対する前記出力面の倍率との積に一致した距離を0次空間周波数成分に対して保持し、第1及び第2の出力領域の配列方向に生成されるので、第1の出力領域に配置される。
【0029】
一方、第1の入力領域に配置された第1のパターンの像が複数個の同一または類似の像成分を含んでいる場合、これら同一または類似の像成分の間隔は、当該第1の入力領域の領域幅未満であることから、第2の入力領域の領域幅未満となる。そのため、これら同一または類似の像成分に対応する二つの1次空間周波数成分の一方は、当該同一または類似の像成分の間隔と前記入力面に対する前記出力面の倍率との積に一致した距離を0次空間周波数成分に対して保持し、第1及び第2の出力領域の配列方向に生成されるので、第2の出力領域に配置される。
【0030】
この後、照合手段は、第1及び第2の出力領域にそれぞれ配置された相関像の強度分布を分別した上で、第1の出力領域に配置された相関像の強度分布に基づいて、第1及び第3の入力領域にそれぞれ配置された第1及び第2のパターンの像の照合を判定する。したがって、これら第1及び第2のパターンの像の照合は、第1の入力領域に配置されたパターンの像が含む複数個の同一または類似の像成分による相関ノイズを除去した上で決定される。
【0031】
【実施例】
以下、本発明に係る一実施例の構成及び作用について、図1ないし図11を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0032】
本実施例のパターン認識装置は、認識対象として指紋を設定した上で、JTC法に基づいて複数の指紋像の間で相関演算を実行することにより、当該複数の指紋像を照合判定して個人を識別する指紋認識装置として機能するものである。例えば、このパターン認識装置は、貴重品や重要情報を保管する機密室に通じるドアの開閉を制御する管理システムとして利用される。
【0033】
図1に示すように、パターン認識装置10は、操作者が識別コードや選択コードを入力するコード入力手段20と、操作者が提示した指紋を撮像するパターン入力手段30と、管理者が許可した操作者の指紋像を格納する記憶手段40と、予め登録済みの参照像と新規に撮像された測定像とからなる2個の指紋像に対して光学的相関演算を実行する照合手段50と、これら2個の指紋像の照合判定を相関値に基づいて決定する判定手段60と、これら各種機器の動作を集中的に制御する制御手段70とを備えている。
【0034】
ここで、コード入力手段20は、指紋の登録または照合を要望する操作者の入力操作に基づいて動作するキーボードである。このキーボードは、操作者が入力した識別コードや選択コードなどを測定信号として制御手段70に出力する。ただし、識別コードは、パターン認識装置10を全体的に監督する管理者が特定の操作者に予め割り当てて設定したものである。選択コードは、制御手段70から入力した制御信号に基づいてディスプレイ(図示しない)に表示されたメッセージに対応して、操作者が選択した処理を指定するものである。
【0035】
また、パターン入力手段30は、第1の照明光を投光するLED(Light Emitted Diode)31と、操作者の指が設置された斜面で第1の照明光を反射するプリズム32と、操作者の指紋に対応して散乱した第1の照明光を集束する集光レンズ33と、第1の照明光を受光して光電変換するCCD(Charge Coupled Device )カメラ34とから構成されている。
【0036】
なお、LED31は、制御手段70から入力した制御信号に基づいて第1の照明光を発光する光源である。この光源は、所定の拡がりを有する光線束として第1の照明光を投光する。プリズム32は、三角柱状に形成されて斜面を外部に露出して設置された基本プリズムである。この基本プリズムは、第1のLED31から入射した第1の照明光を斜面の内側で反射させる。ただし、プリズム32の斜面は、操作者の指の腹が接触して設置され、その指紋の隆線に対応して第1の照明光を散乱させるものである。
【0037】
集光レンズ33は、プリズム32から入射した第1の照明光をCCDカメラ34の受光面上に結像する両凸レンズである。CCDカメラ34は、集光レンズ33の結像面上にその受光面が配置されることにより、集光レンズ33から入射した第1の照明光を受光する光検出器である。この光検出器は、第1の照明光を光電変換して検出した操作者の指紋像を測定信号として制御手段70に出力する。
【0038】
また、記憶手段40は、操作者の識別コード及び指紋像に対する登録や検索などを管理するメモリである。このメモリは、制御手段70から入力したデータ信号に基づいて識別コード及び指紋像を登録像として格納するとともに、制御手段70から入力した制御信号に基づいて識別コードをキーとして検索した登録済みの指紋像をデータ信号として制御手段70に出力する。また、このメモリは、予め設定された閾値に達するまで、順次撮像された操作者の複数の指紋像を登録候補像として保持する。ただし、指紋像の撮像回数に対する閾値は、登録候補像に対する相互相関演算を有効にする観点から、3以上であることがより望ましい。
【0039】
また、照合手段50は、第2の照明光を投光するLD(Laser Diode) 51と、第2の照明光を2方向に分岐する第1のハーフミラー52aと、第2の照明光の一方である第3の照明光を反射する第1の平面ミラー53aと、参照像と測定像とからなる2個の指紋像を入力像として表示するLCD(Liquid Crystal Display)54と、入力像に対応して回折した第3の照明光をフーリエ変換する第1のフーリエ変換レンズ55aと、入力像に対応して回折した第3の照明光の光軸付近を除去するフィルタ56と、第3の照明光を受光して入力像の変換像の強度画像を表示するSLM(Spatial Light Modulator )57とを含んで構成されている。
【0040】
この照合手段50は、第2の照明光の他方である第4の照明光を反射する第2の平面ミラー53bと、第4の照明光を反射した後に変換像に対応して回折した第4の照明光を透過する第2のハーフミラー52bと、変換像に対応して回折した第4の照明光をフーリエ変換する第2のフーリエ変換レンズ55bと、第4の照明光を受光して光電変換するPD(Photo Detector)58とをさらに含んで構成されている。
【0041】
すなわち、照合手段50は、入力像を配置する入力面であるLCD54と、この入力像に対応して生成された相関像を配置する出力面であるPD58と、入力像に対するJTC演算によって相関像を生成する演算手段であるその他の全ての光学系とから構成されている。
【0042】
なお、LD51は、制御手段70から入力した制御信号に基づいて第2の照明光を発光する光源である。この光源は、所定の拡がりを有する光線束として第2の照明光を投光する。第1のハーフミラー52aは、LD51から入射した第2の照明光を2方向に分岐するビームスプリッタである。このビームスプリッタは、第2の照明光の一方を反射して第3の照明光として出射するとともに、第2の照明光の他方を透過して第4の照明光として出射する。第1の平面ミラー53aは、第1のハーフミラー52aから入射した第3の照明光を反射する反射鏡である。この反射鏡は、第3の照明光の光路を折り曲げることによって照合手段50自体の小型化に寄与している。
【0043】
LCD54は、制御手段70から入力した第3のデータ信号T3 に基づいて2個の指紋像を並列的な配置で表示するディスプレイである。このディスプレイは、記憶手段40に格納された登録済みの指紋像を参照像として参照像領域に表示するとともに、パターン入力手段30で新たに撮像された操作者の指紋像を測定像として間隙領域を挟んで参照像領域に隣接した測定像領域に表示する。また、このディスプレイは、第1の平面ミラー53aから入射した第3の照明光を、参照像と測定像とからなる入力像に対応して回折させつつ透過させる。
【0044】
第1のフーリエ変換レンズ55aは、LCD54から入射した第3の照明光を収斂して出射し、第3の照明光の振幅分布に対して焦平面上でフーリエ変換を成立させる両凸レンズである。この両凸レンズは、所定の拡がりを有する光線束として入力像に対応して回折した第3の照明光を集光する。フィルタ56は、光軸を中心とする円板状のマスクを有する遮蔽板である。この遮蔽板は、第1のフーリエ変換レンズ55aから入射した第3の照明光の光軸付近に位置する低次空間周波数成分である0次空間周波数成分を除去することにより、第3の照明光の周辺に位置する高次空間周波数成分である1次空間周波数成分を抽出する。ただし、0次空間周波数成分は、入力像に対応して回折した第3の照明光で最大強度を有する成分であり、入力像を構成する参照像と測定像との間の相関値の指標となる1次空間周波数成分に対してノイズとして大きく影響するものである。
【0045】
一方、第2の平面ミラー53bは、第1のハーフミラー52aから入射した第4の照明光を反射する反射鏡である。この反射鏡は、第4の照明光の光路を折り曲げることによって照合手段50自体の小型化に寄与している。第2のハーフミラー52bは、第2の平面ミラー53bから入射した第4の照明光を反射してSLM57に出射するとともに、SLM57で反射されることによって入射した第4の照明光を透過して第2のフーリエ変換レンズ55bに出射するビームスプリッタである。このビームスプリッタは、SLM57に保持された変換像を照明する第4の照明光を反射するとともに、SLM57の変換像に対応して回折した第4の照明光を透過する。
【0046】
SLM57は、ガラスからなる第1の基板と、透明導電材からなる第1の電極層と、α(amorphous )−Siからなる光アドレス層と、誘電体多層膜からなるミラー層と、ネマティック液晶からなる光変調層と、透明導電材からなる第2の電極層と、ガラスからなる第2の基板とを順次積層して形成され、実時間空間フィルタとして機能する位相変調器である。光変調層を構成するネマティック液晶は同一方向に対して平行に配向され、第1及び第2の電極層は所定の駆動電圧が印加されている。
【0047】
この位相変調器では、フィルタ56から入射した第3の照明光が第1の基板及び第1の電極層を介して光アドレス層で集光することにより、第3の照明光の強度分布に対応して光アドレス層の抵抗分布が変化する。そのため、この抵抗分布に基づいた電圧が光変調層に印加されるので、第3の照明光の強度分布に対応して光変調層を構成するネマティック液晶の分子軸の配向が変化する。したがって、入力像の振幅分布にフーリエ変換を施して生成された変換像は、光変調層の屈折率分布として書き込まれる。
【0048】
また、この位相変調器では、ハーフミラー52bから入射した第4の照明光が第2の基板及び第2の電極層を介して光変調層で回折した後、ミラー層で反射されて光変調層で再び回折して第2の電極層及び第2の基板を介して出射される。そのため、第4の照明光は、光変調層を往復して通過する際に、光変調層の屈折率分布に対応して位相変調を受けるので、光変調層に保持された変換像に対応して回折する。
【0049】
第2のフーリエ変換レンズ55bは、第2のハーフミラー52bから入射した第4の照明光を収斂して出射し、第4の照明光の振幅分布に対して焦平面上でフーリエ変換を成立させる両凸レンズである。この両凸レンズは、所定の拡がりを有する光線束として変換像に対応して回折した第4の照明光を集光する。PD58は、第2のフーリエ変換レンズ55bの焦平面上に受光面を配置し、第2のフーリエ変換レンズ55bから入射した第4の照明光を受光する光検出器である。この光検出器は、第4の照明光を光電変換することにより、変換像の振幅分布にフーリエ変換を施して生成された相関像を検出し、この相関像をデータ信号として制御手段70に出力する。ただし、相関像は、入力像の振幅分布に2回のフーリエ変換を施して生成されたものであり、0次空間周波数成分を除いて主に1次空間周波数成分からなる高次空間周波数成分として検出される。
【0050】
また、判定手段60は、入力像を構成した参照像と測定像との間の相関値を予め設定された閾値と比較することにより、これら2個の指紋像の照合判定を決定する演算ユニットである。この演算ユニットは、制御手段から入力したデータ信号に基づいて相関像で最大輝度を有する強度分布を1次空間周波数成分の強度分布として分別した後、この1次空間周波数成分の強度分布特性を参照像と測定像との間の相関値として所定の閾値に対してそれぞれ比較し、その照合判定の結果をデータ信号として制御手段70に出力する。なお、この演算ユニットは、相関値が閾値以上である場合に、参照像と測定像とが一致していることを照合判定し、相関値が閾値未満である場合に、参照像と測定像とが不一致であることを照合判定する。
【0051】
ただし、参照像と測定像との間の相関値に対する閾値は、異なる個人の指紋像の間の相関値の統計分布を分析することにより、セキュリティの度合、例えば99.9%以上の他人排他率に基づいて適切に決定することがより望ましい。
【0052】
さらに、制御手段70は、パターン認識装置10全体に対する電力供給を制御するとともに、コード入力手段20、パターン入力手段30、記憶手段40、照合手段50及び判定手段60に対する各種の信号入出力を制御するマイクロコンピュータである。このマイクロコンピュータの動作については、パターン認識装置10における主な作用として詳細な説明を後述する。
【0053】
このように構成されたパターン認識装置10には、後述する3種類の特徴的構成(A)〜(C)の少なくとも一つが施されている。
【0054】
(A)プリズム32の斜面における設置領域の限定
図2(a)に示すように、プリズム32の斜面32a上には、平板状の第1のマスク35が設置されている。図2(b)に示すように、第1のマスク35は斜面32aの周辺部を被覆し、斜面32aの中央部上に位置する開口35aを有している。この開口35aには、斜面32aが領域幅WE を有する設置領域として露出されている。そのため、操作者が指を設置する位置は、第1のマスク35の開口35aによって形成された設置領域に限定されることになる。ただし、この領域幅WE は、LCD54で入力像を構成する測定像領域、間隙領域及び参照像領域を順次配列した方向に沿った当該測定像領域の領域幅WM を、集光レンズ33の結像倍率で除算して決定されている(図5(c)参照)。なお、第1のマスク35としては、LED31から出射された第1の照明光に対して不透明なプラスチックなどで形成されていることが必要である。
【0055】
(B)CCDカメラ34の受光面における検出領域の限定
図3(a)に示すように、CCDカメラ34の受光面34a上には、平板状の第2のマスク36が設置されている。図3(b)に示すように、第2のマスク36は、受光面34aの一方の半面のみを被覆している。この受光面34aの他方の半面は、領域幅WD を有する検出領域として露出されている。そのため、操作者の指紋に対応して回折した第1の照明光を受光する位置は、第2のマスク36によって形成された検出領域に限定されることになる。ただし、この領域幅WD は、LCD54で入力像を構成する測定像領域、間隙領域及び参照像領域を順次配列した方向に沿った当該測定像領域の領域幅WM に基づいて決定されている(図5(c)参照)。なお、第2のマスク36としては、LED31から出射された第1の照明光に対して不透明なプラスチックなどで形成されていることが必要である。
【0056】
(C)CCDカメラ34または制御手段70によるビデオ信号の変調処理
図4(a)に示すように、CCDカメラ34は、受光した第1の照明光を光電変換して検出した指紋像を、水平ライン毎に分割して第1のビデオ信号を生成する。この第1のビデオ信号は、1水平ラインの画像データ成分CV を水平同期成分CH で順次区分して構成されている。図4(b)に示すように、CCDカメラ34または第1のビデオ信号がCCDカメラ34から入力した制御手段70は、第1のビデオ信号の水平同期成分CH に同期してフィルタ制御信号を生成する。このフィルタ制御信号は、第1のビデオ信号の隣接した2個の水平同期成分CH に挟まれた区間に対応する区間で、領域幅WF を有する信号抽出成分CE を順次配列して構成されている。
【0057】
ここで、図4(c)に示すように、CCDカメラ34または制御手段70は、第1のビデオ信号の水平同期成分CH に同期した状態で、第1のビデオ信号の画像データ成分CV とフィルタ制御信号の信号抽出成分CE とに対するAND演算を実行して第2のビデオ信号を生成する。この第2のビデオ信号は、信号抽出成分CE の領域幅WF に対応して第1のビデオ信号の画像データ成分CV が抽出された画像データ成分CEVを、1水平ラインの画像データとして水平同期成分CH で順次区分して構成されている。そのため、操作者の指紋像を検出したCCDカメラ34が制御手段70に出力する第2のビデオ信号、あるいはCCDカメラ34から第1のビデオ信号を入力された制御手段70が生成する第2のビデオ信号の画像データは、フィルタ制御信号が含む信号抽出成分CE の区間に限定されることになる。ただし、この領域幅WF は、LCD54で入力像を構成する測定像領域、間隙領域及び参照像領域を順次配列した方向に沿った当該測定像領域の領域幅WM に基づいて決定されている(図5(c)参照)。
【0058】
これら3種類の特徴的構成によれば、図5(a)に示すように、操作者の指紋像を検出したCCDカメラ34から制御手段70に入力したビデオ信号が表す測定像IM は、画像全体の一方の端部側で領域幅WM を有する測定像領域に配置されている。一方、図5(b)に示すように、操作者が入力した識別コードに基づいて登録像を検索した記憶手段40から制御手段70に入力したビデオ信号が表す参照像IR は、画像全体の他方の端部側で領域幅WR を有する参照像領域に配置されている。そこで、図5(c)に示すように、制御手段70は、測定像IM を表すビデオ信号と参照像IR を表すビデオ信号とに対して画像ボード上でスーパーインポーズを実行することにより、測定像IM が配置された測定像領域と、いかなる画像も配置されない間隙領域と、参照像IR が配置された参照像領域とを順次配列した入力像を表すビデオ信号を生成してLCD54に出力する。
【0059】
この測定像領域は、画像全体の一方の端部側で各領域の配列方向に沿って領域幅WM を有し、操作者の指紋を新たに撮像して生成された測定像IM が配置される。また、参照像領域は、画像全体の他方の端部側で各領域の配列方向に沿って領域幅WR を有し、予め登録済みの指紋像を検索して生成された参照像IR が配置される。なお、参照像領域の領域幅WR は、測定像領域の領域幅WM にほぼ同一であって匹敵するように設定されている。さらに、これら測定像領域及び参照像領域に挟まれた間隙領域は、画像全体の中央部で各領域の配列方向に沿って領域幅WI を有し、いかなる画像も配置されることはない。なお、間隙領域の領域幅WI は、測定像領域の領域幅WM 以上になるように設定されている。
【0060】
このように生成されたビデオ信号が入力したLCD54は、図6(a)に示すように、間隙を保持して並列的に配置された参照像IR と測定像IM とからなる入力像を表示する。このLCD54の表示画面には、領域幅WM を有する測定系領域(第1の入力領域)と、領域幅WI を有する間隙領域(第2の入力領域)と、領域幅WR を有する参照領域(第3の入力領域)とが、すなわち第1ないし第3の入力領域が、領域幅WM ,WI ,WR の方向に順次配列されている。この測定像領域に測定像IM が配置されるとともに、参照像領域に参照像IR が配置される。また、間隙領域にはいかなる画像も配置されない。特に、間隙領域の領域幅WI は、測定像領域の領域幅WM 以上になるように設定されている。
【0061】
ここで、通常の指紋像のみから構成されている参照像IR を参照像領域に表示するとともに、通常の指紋像である第1の測定像IM0と同一パターンの2個の偽詐像である第2の測定像IM1,IM2とを測定像領域に表示する場合、参照像IR と第1の測定像IM0との間の距離DMRは、間隙領域の領域幅WI 以上であり、すなわち測定像領域の領域幅WM 以上となる。一方、2個の第2の測定像IM1,IM2の間の距離DMMは、測定像領域の領域幅WM 未満となる。
【0062】
このような入力像に対する相関演算の実行によって生成した相関像を検出するPD58は、図6(b)に示すように、入力像を構成した参照像IR と測定像IM との間に相関値に対応した1次空間周波数成分を受光する。この相関像の中心部には、0次空間周波数成分P0 が配置されている。PD58の受光面は、画像全体の一方の端部側で領域幅WT1を有する第1の基本検出領域(第1の出力領域)と、画像の中心部に位置する0次空間周波数成分P0 の両側にそれぞれ領域幅WF を有する補助検出領域(第2の出力領域)と、画像全体の他方の端部側で領域幅WT2を有する第2の基本検出領域(第3の出力領域)とから構成されている。このPD58は、第1及び第2の基本検出領域で受光した1次空間周波数成分と、補助検出領域で受光した1次空間周波数成分とを分割して光電変換する。なお、補助検出領域の領域幅WF は、第1及び第2のフーリエ変換レンズ55a,55bによる結像倍率Mと、入力像における測定像領域の領域幅WM とに対して、式(1)を満足するように設定されている。
【0063】
WF =M・WM (1)
ただし、第1及び第2の結像レンズ55a,55bによる結像倍率Mは、第1及び第2のフーリエ変換レンズ55a,55bの各焦点距離f1 ,f2 に対して式(2)を満足する。
【0064】
M=f2 /f1 (2)
ここで、入力像を構成した参照像IR と第1の測定像IM0との間の相関値に対応した第1の1次空間周波数成分P1 (T)は、間隔D01T で0次空間周波数成分P0 の両側に出現する。この間隔D01T は、第1及び第2のフーリエ変換レンズ55a,55bによる結像倍率Mと、入力像における参照像IR と第1の測定像IM0との間の距離DMRとに対して式(3)を満足する。
【0065】
D01T =M・DMR (3)
また、入力像を構成した2個の第2の測定像IM1,IM2の間の相関値に対応した第2の1次空間周波数成分P1 (F)は、間隔D01F で0次空間周波数成分P0 の両側に出現する。この間隔D01F は、第1及び第2のフーリエ変換レンズ55a,55bによる結像倍率Mと、入力像における2個の第2の測定像IM1,IM2の間の距離DMMとに対して式(4)を満足する。
【0066】
D01F =M・DMM (4)
ところで、入力像においては式(5)が成立していることから、3式(1),(3),(4)の間で式(5)を考慮すると、式(6)が成立する。
【0067】
DMR≧WM >DMM (5)
D01T ≧WF >D01F (6)
この式(6)によれば、真である第1の1次空間周波数成分P1 (T)は第1及び第2の基本検出領域でそれぞれ受光される一方、偽である第2の1次空間周波数成分P1 (F)は補助検出領域で受光されることになる。これにより、PD58は、真である第1の1次空間周波数成分P1 (T)と偽である第2の1次空間周波数成分P1 (F)とを分割した光電変換によって生成した検出信号を制御信号70に出力する。そのため、判定手段60は、同一パターンである2個の第2の測定像IM1,IM2が入力像に含まれているか否かを、偽である第2の1次空間周波数成分P1 (F)の強度分布特性に基づいて判定する。また、照合手段60は、参照像IR と第1の測定像IM0との照合判定を、真である第1の1次空間周波数成分P1 (T)の強度分布特性のみに基づいて実行する。したがって、制御手段70は、同一のパターンである参照像IR と第1の測定像IM0とが不一致であると照合判定したり、異なるパターンである参照像IR と第1の測定像IM0とが一致していると照合判定したりするという誤認識を起こさない。
【0068】
また、このように構成されたパターン認識装置10には、後述するバックグラウンド処理の機能が設定されている。
【0069】
まず、制御手段70は、CCDカメラ34から入力したビデオ信号、すなわち測定像領域に配置された測定像IM のみからなる入力像を表すビデオ信号を生成してLCD54に出力する。図7(a)に示すように、このように生成されたビデオ信号が入力したLCD54は、測定像領域のみに測定像IM を表示する。
【0070】
一方、制御手段70は、記憶手段40から入力したビデオ信号、すなわち参照像領域に配置された参照像IR のみからなる入力像を表すビデオ信号を生成してLCD54に出力する。図7(b)に示すように、このように生成されたビデオ信号が入力したLCD54は、参照像領域のみに参照像IR を表示する。
【0071】
これらの場合のいずれにおいても、入力像に対する相関演算の実行によって生成した相関像を検出するPD58は、図16(b)を参照すると、入力像を構成した測定像IM 自体または参照像IR 自体の同一または類似の像成分の相関値に対応した1次空間周波数成分を含む高次空間周波数成分を受光する。この相関値の中心部には、0次空間周波数成分P0 が配置されている。
【0072】
この相関像は、0次空間周波数成分P0 の両側に中央部から周辺部に向かって順次配置された1次空間周波数成分P1 、2次空間周波数成分P2 、…、N次空間周波数成分PN から構成されている。なお、SLM57に記録された変換像が、LCD54に表示された入力像を構成した測定像IM 自体または参照像IR 自体の干渉縞として生成されることから、1次光を除外した高次光は、この干渉縞の変調度にいわゆるサイン波に対するズレが生じた場合に発生する。ただし、Nは2以上の自然数である。
【0073】
ここで、1次空間周波数成分P1 は、間隔D01で0次空間周波数成分P0 の両側に出現する。この間隔D01は、第1及び第2のフーリエ変換レンズ55a,55bによる結像倍率Mと、入力像における測定像IM 自体または参照像IR 自体に含まれる同一または類似の像成分の間の距離DMMまたはDRRに対して式(7)または (8)を満足する。
【0074】
D01=M・DMM (7)
D01=M・DRR (8)
また、1次空間周波数成分を除外したN次空間周波数成分PN は、間隔D0Nで0次空間周波数成分P0 の両側に出現する。この間隔D0Nは式(9)を満足する。
【0075】
D0N=N・D01 (9)
そのため、0次空間周波数成分P0 に対するN次空間周波数成分PN の間隔D0Nの中には、非検出領域の非検出幅WF 以上に達するものがある。なお、N次空間周波数成分PN の各強度KN として2次空間周波数成分ないし4次空間周波数成分の強度K2 〜K4 を例示すると、1次空間周波数成分P1 の強度を1とする規格化に基づいて、次のように理論的に算出される。
【0076】
K1 =1.00,
K2 =0.20,
K3 =0.09,
K4 =0.04
ただし、このような高次空間周波数成分の強度は、実際に光学的相関演算を実行した場合や、理論計算中にフィルタリング効果や非線形効果などを考慮した場合には、上記の値に対して増減することがある。例えば、2次空間周波数成分P2 の強度が1次空間周波数成分P1 の強度よりも大きくなる場合もある。一方、第1及び第2のフーリエ変換レンズ55a,55bによるフーリエ変換作用の条件である規格化の基準や周波数フィルタリングなどに基づいて、高次空間周波数成分の強度が無視できるほど小さくなることもある。しかしながら、フーリエ変換作用の条件設定によっては、全体的処理の複雑化のために全体的処理の低速化が発生するので、バックグラウンド処理が必要となる。
【0077】
ここで、PD58は、第1及び第2の基本検出領域及び補助検出領域を含む受光面全体で1次空間周波数成分P1 を含む全てのN次空間周波数成分PN を光電変換することにより、N次空間周波数成分PN の強度分布を表す検出信号を制御手段70に出力する。そのため、判定手段60は、入力像を構成する参照像IR と測定像IM とを照合判定する際に、参照像IR と測定像IM との間の相関値に対応した1次空間周波数成分P1 の強度分布特性から、参照像IR 自体の相関値に対応した高次空間周波数成分の強度分布特性、あるいは測定像IM 自体の相関値に対応した高次空間周波数成分の強度分布特性を除去する。したがって、判定手段60は、高次空間周波数成分の寄与を減じた、すなわちバックグラウンド処理を施した正味の1次空間周波数成分P1 の強度分布特性に基づいて、参照像IR と測定像IM とに対する照合判定を実行する。
【0078】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0079】
パターン認識装置10は、管理者が許可した操作者の指紋を予め撮像し、その指紋像を登録像として格納するパターン登録処理と、指紋の照合を要望する操作者の指紋を新たに撮像し、その指紋像を登録像に対して照合するパターン照合処理との中で、操作者が選択した処理を実行するものである。
【0080】
図8に示すように、まず、管理者が電源スイッチ(図示しない)をON状態に設定した場合、電源(図示しない)はコード入力手段20、パターン入力手段30、記憶手段40、照合手段50、判定手段60及び制御手段70に電力をそれぞれ供給するので、これら各種機器の稼働が開始する。このとき、制御手段70が各種機器の動作を制御するので、制御手段70の動作はステップ100に移行する。
【0081】
続いて、ステップ100では、制御手段70は、登録モード、すなわち操作者の指紋像を登録するパターン登録処理を実行するか否かという操作者の意向を尋ねるメッセージをディスプレイ(図示しない)に表示させる。ここで、操作者がコード入力手段20を操作することによって登録モードを選択する選択コードを入力した場合、コード入力手段20は登録モードを設定する選択コードを表す測定信号を制御手段70に入力するので、制御手段70の動作はステップ110に移行する。一方、操作者がコード入力手段20を操作することによって登録モードを選択しない選択コードを入力した場合、コード入力手段20は登録モードを拒否する選択コードを表す測定信号を制御手段70に入力するので、制御手段70の動作はステップ130に移行する。
【0082】
続いて、ステップ140では、制御手段70は、照合モード、すなわち操作者の指紋像を照合するパターン照合処理を実行するか否かという操作者の意向を尋ねるメッセージをディスプレイ(図示しない)に表示させる。ここで、操作者がコード入力手段20を操作することによって照合モードを選択する選択コードを入力した場合、コード入力手段20は照合モードを設定する選択コードを表す測定信号を制御手段70に入力するので、制御手段70の動作はステップ140に移行する。一方、操作者がコード入力手段20を操作することによって照合モードを選択しない選択コードを入力した場合、コード入力手段20は照合モードを拒否する選択コードを表す測定信号を制御手段70に入力するので、制御手段70の動作は全て終了する。
【0083】
なお、以下、制御手段70の動作が全て終了した際に、管理者が電源スイッチ(図示しない)をOFF状態に設定した場合、電源(図示しない)はコード入力手段20、パターン入力手段30、記憶手段40、照合手段50、判定手段60及び制御手段70に対して電力をそれぞれ遮断するので、これら各種機器の稼働が停止する。
【0084】
図9に示すように、ステップ110では、制御手段70はステップ120〜132を順次実行する。
【0085】
まず、ステップ120では、制御手段70は、識別コードを入力することを操作者に要求するメッセージをディスプレイ(図示しない)に表示させる。このとき、操作者がコード入力手段20を操作することによって識別コードを入力すると、コード入力手段20は操作者の識別コードを表す測定信号が制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ122に移行する。
【0086】
続いて、ステップ122では、制御手段70は、操作者が入力した識別コードを表すデータ信号を記憶手段40に出力する。このとき、記憶手段40は、管理者が許可した個人に割り当てた識別コードを予め格納しており、そのデータの中に操作者が入力した識別コードに一致するものを検索する。ここで、記憶手段40が操作者の識別コードを予め格納していた場合、記憶手段40は操作者の識別コードが真であることを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ124に移行する。一方、記憶手段40が操作者の識別コードを予め格納していない場合、記憶手段40は操作者の識別コードが偽であることを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作は全て終了する。
【0087】
続いて、ステップ124では、制御手段70は、プリズム32の斜面の外側に指を設置することを要求するメッセージをディスプレイ(図示しない)に表示させた後、LED31の駆動を指示する第1の制御信号C1 をパターン入力手段30に出力する。このとき、パターン入力手段30では、LED31から出射された第1の照明光は、操作者の指の腹が設置されたプリズム32の斜面の内側で反射することにより、操作者の指紋の隆線に対応して散乱される。このプリズム32から出射した第1の照明光は、集光レンズ33によって集束されることにより、CCDカメラ34の受光面上に結像される。そのため、CCDカメラ34は、第1の照明光の光電変換によって検出した操作者の指紋像を表す測定信号を制御手段70に出力する。
【0088】
この後、制御手段70は、操作者が入力した識別コードと操作者の指紋を撮像した指紋像とを表すデータ信号を記憶手段40に出力する。このとき、記憶手段40は、操作者の識別コードに対応して割り当てた所定のメモリ領域に操作者の指紋像を登録候補像として格納する。そして、記憶手段40は操作者の指紋像を保持したことを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ126に移行する。
【0089】
続いて、ステップ126では、制御手段70は、操作者の指紋像の撮像回数を予め設定された閾値と比較する。ここで、指紋像の撮像回数が閾値以上である場合、必要な個数の指紋像が既に撮像済みであるので、制御手段70の動作はステップ128に移行する。一方、指紋像の撮像回数が閾値未満である場合、必要な個数の指紋像が撮像されていないので、制御手段70の動作はステップ124に移行する。
【0090】
続いて、ステップ128では、制御手段70は、新規に撮像した複数個の指紋像の中で選択した異なる2個の指紋像を並列的に配置したビデオ信号をLCD54に出力する。このとき、LCD54は、新規に撮像した2個の指紋像の一方を参照像として参照像領域に表示するとともに、新規に撮像した2個の指紋像の他方を測定像として測定像領域に表示することにより、これら2個の指紋像を入力像として並列的な配置で表示する。
【0091】
この後、制御手段70は、LD51の駆動を指示する第2の制御信号C2 を照合手段50に出力する。このとき、照合手段50では、LD51から出射された第2の照明光は、第1のハーフミラー52aで反射されることによって第3の照明光として出射されるとともに、第1のハーフミラー52aを透過することによって第4の照明光として出射される。
【0092】
この第3の照明光は、第1の平面ミラー53aでその光路を折り曲げられた後、LCD54の参照像領域及び測定像領域を通過することにより、参照像と測定像とからなる入力像に対応して回折される。そして、第3の照明光は、第1のフーリエ変換レンズ55aによって収斂されることにより、フィルタ56を透過し、SLM57の光アドレス層中に結像される。このとき、第3の照明光は、フィルタ56によって光軸付近に位置する低次空間周波数成分である0次空間周波数成分を除去された後、第1のフーリエ変換レンズ55aによって振幅分布のフーリエ変換をSLM57の光アドレス層で成立させる。そのため、SLM57は、光アドレス層の抵抗分布に対応して変化した光変調層の屈折率分布として、LCD54に表示された入力像にフーリエ変換を施した変換像を保持する。ただし、この変換像は、第3の照明光の周辺に位置する高次空間周波数成分である1次空間周波数成分から構成されている。
【0093】
一方、第4の照明光は、第2の平面ミラー53bでその光路を折り曲げられた後、第2のハーフミラー52bで反射されることによってSLM57の光変調層を透過し、SLM57の光半透層で反射されることによってSLM57の光変調層を再び透過する。このとき、第4の照明光は、SLM57の光変調層を往復して通過する際に、光変調層の屈折率分布に対応して位相変調を受けるので、光変調層に保持された変換層に対応して回折される。
【0094】
この後、第4の照明光は、第2のハーフミラー52bを透過し、第2のフーリエ変換レンズ55bによって収斂されることにより、PD58の受光面上で結像される。このとき、第4の照明光は、第2のフーリエ変換レンズ55bによって振幅分布のフーリエ変換をPD58の受光面で成立させる。そのため、PD58は、変換像の振幅分布にフーリエ変換を施して生成した相関像、すなわち入力像の振幅分布に2回のフーリエ変換を施して生成した相関像を検出し、この相関像を表すデータ信号を制御手段70に出力する。ただし、この相関像は、第4の照明光の周辺に位置する1次空間周波数成分を含む高空間周波数成分のみから構成されている。
【0095】
さらに、制御手段70は、入力像に対応する相関像の強度分布を表すデータ信号を判定手段60に出力する。このとき、判定手段60は、相関像中で最大輝度を有する強度分布を1次空間周波数成分の強度分布として分別し、この1次空間周波数成分の強度分布特性としてピーク強度や半値幅などを検出する。そして、判定手段60は、入力像を構成した各指紋像の相関値として相関像における1次空間周波数成分の強度分布特性を追加して保持し、新規に撮像した指紋像の相関値を保持したことを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ130に移行する。
【0096】
続いて、ステップ130では、制御手段70は、記憶手段40に登録候補像として格納された複数の指紋像から選択した2個の指紋像で構成される全ての組み合わせについて、相互相関演算を実行したか否かを確認する。ここで、相互相関演算が全ての登録候補像の組み合わせについて実行されている場合、各登録候補像が必要な相関値の総和を既に有しているので、制御手段70の動作はステップ132に移行する。一方、相互相関演算が全ての登録候補像の組み合わせについて実行されていない場合、各登録候補像が必要な相関値の総和を有していないので、制御手段70の動作はステップ128に移行する。
【0097】
続いて、ステップ132では、制御手段70は、記憶手段40に登録候補像として格納された複数の指紋像から唯一の指紋像を選択することを要求する制御信号を判定手段60に出力する。このとき、判定手段60は、相互相関演算による相関値の総和として最大値を有する登録候補像を選択し、この登録候補像を登録像として指定することを表すデータ信号を制御手段70に出力する。
【0098】
この後、制御手段70は、登録像として指定する登録候補像を表すデータ信号を記憶手段40に出力する。このとき、記憶手段40は、登録像として指定を受けていない登録候補像を消去し、操作者の識別コードに対応して割り当てた所定のメモリ領域に指定を受けた登録候補像のみを登録像として格納する。この後、記憶手段40は操作者の指紋像を登録したことを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作は全て終了する。
【0099】
図10及び図11に示すように、ステップ150では、制御手段70はステップ160〜182を順次実行する。
【0100】
まず、ステップ160では、制御手段70は、識別コードを入力することを操作者に要求するメッセージをディスプレイ(図示しない)に表示させる。このとき、操作者がコード入力手段20を操作することによって識別コードを入力すると、コード入力手段20は操作者の識別コードを表す測定信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ162に移行する。
【0101】
続いて、ステップ162では、制御手段70は、操作者が入力した識別コードを表すデータ信号を記憶手段40に出力する。このとき、記憶手段40は、管理者が許可した個人に割り当てた識別コードを予め格納しており、そのデータの中に操作者が入力した識別コードに一致するものを検索する。ここで、記憶手段40が操作者の識別コードを予め格納していた場合、記憶手段40は操作者の識別コードが真であることを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ144に移行する。一方、記憶手段40が操作者の識別コードを予め格納していない場合、記憶手段40は操作者の識別コードが偽であることを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作は全て終了する。
【0102】
続いて、ステップ164では、制御手段70は、操作者の識別コードに対応した登録像の呼出を指示する制御信号を記憶手段40に出力する。このとき、記憶手段40は、操作者の識別コードに対応して割り当てたメモリ領域を検索する。この後、記憶手段40は該当するメモリ領域に予め格納されている登録像を表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ166に移行する。なお、登録像は、複数の指紋像からなる登録候補像の中で最も共通点を多く含むので、最も歪みが小さくで最も明瞭な指紋像となる。
【0103】
続いて、ステップ166では、制御手段70は、プリズム32の斜面の外側に指を設置することを要求するメッセージをディスプレイ(図示しない)に表示させた後、LED31の駆動を指示する制御信号をパターン入力手段30に出力する。このとき、パターン入力手段30では、前述したステップ124とほぼ同様な動作に基づいて、CCDカメラ34が第1の照明光の光電変換によって検出した操作者の指紋像を表す第2の測定信号S2 を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ168に移行する。
【0104】
続いて、ステップ168では、制御手段70は、予め登録済みの指紋像と新規に撮像した指紋像とを並列的に配置したビデオ信号をLCD54に出力する。このとき、LCD54は、予め登録済みの指紋像を参照像として参照像領域に表示するとともに、新規に撮像した指紋像を測定像として測定像領域に表示し、さらにいかなる画像をも間隙領域に表示しないことにより、これら参照像及び測定像を入力像として並列的な配置で表示する。
【0105】
この後、制御手段70は、LD51の駆動を指示する第2の制御信号C2 を照合手段50に出力する。このとき、照合手段50では、前述したステップ128とほぼ同様な動作に基づいて、Pd58が第4の照明光の光電変換によって基本検出領域及び補助検出領域で分割して検出した相関像の強度分布を表す測定信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ170に移行する。
【0106】
続いて、ステップ170では、制御手段70は、参照像と測定像とに対する相互相関演算に基づいて補助検出領域で検出された相関像の強度分布を表すデータ信号を判定手段60に出力する。このとき、判定手段60は、補助検出領域で検出された相関像の強度分布特性としてピーク強度や半値幅などを検出し、この強度分布特性を予め設定された閾値に対して比較する。ここで、補助検出領域の強度分布特性が所定の閾値未満である場合、判定手段60は測定像自体が適切に撮像されていることを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ172に移行する。一方、補助検出領域の強度分布特性が所定の閾値以上である場合、判定手段60は測定像自体が不適切に撮像されていることを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作は全て終了する。
【0107】
続いて、ステップ170では、制御手段70は、予め登録済みである同一パターンの2個の指紋像を並列的に配置したビデオ信号である第3のデータ信号T3 をLCD54に出力する。このとき、LCD54は、予め登録済みである同一パターンの2個の指紋像を参照像として参照像領域に表示し、いかなる画像をも測定像領域及び間隙領域に表示しないことにより、入力像として2個の指紋像を並列的に配置した参照像を表示する。
【0108】
この後、制御手段70は、LD51の駆動を指示する第2の制御信号C2 を照合手段50に出力する。このとき、照合手段50では、前述したステップ128とほぼ同様な動作に基づいて、PD58が第4の照明光の光電変換によって基本検出領域及び補助検出領域で一体として検出した相関像の強度分布を表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ172に移行する。
【0109】
続いて、ステップ172では、制御手段70は、新規に撮像した同一パターンの2個の指紋像を並列的に配置したビデオ信号をLCD54に出力する。このとき、LCD54は、新規に撮像した同一パターンの2個の指紋像を測定像として測定像領域に表示し、いかなる画像をも参照像領域及び間隙領域に表示しないことにより、入力像として2個の指紋像を並列的に配置した測定像を表示する。
【0110】
この後、制御手段70は、LD51の駆動を指示する第2の制御信号C2 を照合手段50に出力する。このとき、照合手段50では、前述したステップ128とほぼ同様な動作に基づいて、PD58が第4の照明光の光電変換によって基本検出領域及び補助検出領域で一体として検出した相関像の強度分布を表す第4の測定信号S4 を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ174に移行する。
【0111】
続いて、ステップ174では、制御手段70は、参照像と測定像とに対する相互相関演算に基づいて基本検出領域で検出された相関像の強度分布と、参照像に対する自己相関演算に基づいて基本検出領域及び補助検出領域で検出された相関像の強度分布と、測定像に対する自己相関演算に基づいて基本検出領域及び補助検出領域で検出された相関像の強度分布とを表すデータ信号を判定手段60に出力する。このとき、判定手段60は、3種類の相関像の強度分布特性としてピーク強度や半値幅などをそれぞれ検出し、参照像と測定像とに対する相互相関演算に基づいた強度分布特性から、参照像または測定像に対する自己相関演算に基づいた強度分布特性を除去する。
【0112】
この後、判定手段60は、参照像と測定像とに対する相互相関演算に基づいて検出した後にバックグラウンド処理を施した強度分布特性を、入力像を構成した参照像と測定像との間の相関値として設定し、この相関値を予め設定された閾値に対して比較する。ここで、参照像と測定像との間の相関値が所定の閾値以上である場合、判定手段60は参照像と測定像とが一致していることを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ180に移行する。一方、参照像と測定像との間の相関値が所定の閾値以下である場合、参照像と測定像とが不一致であることを表すデータ信号を制御手段70に出力するので、制御手段70の動作はステップ182に移行する。
【0113】
続いて、ステップ180では、制御手段70は、操作者の指紋像に対する照合が成功した場合の処理を実行する。例えば、パターン認識装置10が前述した管理システムとして機能している場合、制御手段70は、操作者が管理者によって予め許可を受けている個人であると認識するので、管理対象である機密室に通じるドアのオートロックを解錠する。この後、制御手段70の動作は全て終了する。
【0114】
続いて、ステップ160では、制御手段70は、操作者の指紋像に対する照合が不成功になった場合の処理を実行する。例えば、パターン認識装置10が前述した管理システムとして機能している場合、制御手段70は、操作者が管理者によって予め許可を受けている個人ではないと認識するので、管理対象である機密室に通じるドアのオートロックを閉錠状態で保持する。この後、制御手段70の動作は全て終了する。
【0115】
なお、本発明は上記実施例に限られるものではなく、種々の変形を行うことが可能である。
【0116】
例えば、上記実施例においては、JTC法に基づいて並列的に配置した参照像と測定像とに対する相関演算として、光学的手段を利用する光学的相関演算を適用している。そのため、相関演算の速度はパターンの像の階調や画素数などに依存しないので、多値情報としてパターンの像を扱うことができる。しかしながら、JTC法に基づいて相関演算としては、コンピュータ等の電子計算機を利用する電子的相関演算を適用しても、相関演算の速度が多値情報や画素数などによって制約を受ける問題を補償することにより、上記実施例とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【0117】
また、上記実施例においては、個人を識別するパターンとして指紋を設定している。しかしながら、このようなパターンとしては、個人的特徴を有するものであれば、網膜像などの他のパターンを設定することも好適である。なお、個人の識別などの二次的な機能を必要としないで、単にパターン自体を比較して照合する場合には、二次元画像である限り、いかなるパターンを設定することも可能である。
【0118】
また、上記実施例においては、LCDの表示画面に設定した測定像領域及び参照像領域に、それぞれ単数の測定像及び参照像を配置している。しかしながら、例えば測定像領域、間隙領域及び参照像領域を順次配列した方向に直交した方向に沿って参照像領域を分割して設定し、この分割した各参照像領域に異なる複数の参照像を配置すれば、これら複数の参照像に対して測定像を同時に照合判定することができる。
【0119】
さらに、上記実施例においては、CCDカメラで撮像してメモリに格納した参照像に基づいて、測定像の照合判定を行っている。しかしながら、コンピュータを利用した画像処理技術によって作製した仮想像や、所定の特徴のみを抽出して作製した修整像などを参照象としても用いても、上記実施例とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【0120】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のパターン認識装置及びその方法においては、第1のパターンを二次元画像として撮像することにより、入力面において第2の入力領域の両側でそれぞれ隣接した第1及び第3の領域に、入力像を構成する二つのパターンの像をそれぞれ配置する。そして、入力面に配置された入力像として第1のパターンの像と当該第1のパターンの像に対して比較する少なくとも一つの第2のパターンの像とをそれぞれ配置する。そして、入力面に配置された入力像に対して合同フーリエ変換型相関演算を実行することにより、出力面において相互に隣接した第1及び第2の出力領域に、相関像を構成する1次空間周波数成分及び0次空間周波数成分をそれぞれ配置する。
【0121】
ここで、第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った第2の入力領域の領域幅は、その配列方向に沿った第1の入力領域の領域幅以上に設定されている。また、第1及び第2の出力領域の配列方向に沿った第2の出力領域の領域幅は、第2の入力領域の領域幅と入力面に対する前記出力面の倍率との積に一致した距離を0次空間周波数成分の両側に保持して設定されている。
【0122】
これにより、第1及び第3の入力領域にそれぞれ配置された第1及び第2のパターンの像の間隔は第1の入力領域の領域幅以上となる。一方、第1の入力領域に配置された第1のパターンの像が複数個の同一または類似の像成分を含んでいる場合、これら同一または類似の像成分の間隔は第2の入力領域の領域幅未満となる。そのため、第1及び第3の入力領域にそれぞれ配置された第1及び第2のパターンの像に対応する二つの1次空間周波数成分の一方は第1の出力領域に配置され、第1の入力領域に配置された同一または類似の像成分に対応する二つの1次空間周波数成分は第2の出力領域に配置される。
【0123】
この結果、照合手段は、第1の入力領域に配置された第1のパターンの像が含む複数個の同一または類似の像成分による相関ノイズを除去した上で、第1の出力領域に配置された相関像の強度分布に基づいて、第1及び第3の入力領域にそれぞれ配置された第1及び第2のパターンの像を照合判定する。したがって、これら第1及び第2のパターンの像に対する照合判定に生じる誤認識が低減するので、良好な認識率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパターン認識装置に係る一実施例の全体構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は図1のプリズムの斜面に第1のマスクを設置した状態を示す側面図であり、(b)は(a)の第1のマスクの形状を示す上面図である。
【図3】(a)は図1のCCDカメラの受光面に第2のマスクを設置した状態を示す側面図であり、(b)は(a)の第2のマスクの形状を示す上面図である。
【図4】(a)は図1のCCDカメラで生成した第1のビデオ信号を示すタイムチャートであり、(b)は図1のCCDカメラまたは制御手段で(a)の第1のビデオ信号に同期して生成したフィルタ制御信号を示すタイムチャートであり、(c)は図1のCCDカメラまたは制御手段で(a)の第1のビデオ信号を(b)のフィルタ制御信号に対応して抽出した第2のビデオ信号を示すタイムチャートである。
【図5】(a)は図1のパターン入力手段で撮像した測定像を示す図であり、(b)は図1の記憶手段から検索した参照像を示す図であり、(c)は図1のLCDに表示する入力像として並列的に配置した(a)の測定像と(b)の参照像とを示す図である。
【図6】(a)は図1のLCDに表示した入力像として並列的に配置した真のパターンと偽のパターンとからなる測定像と真のパターンのみからなる参照像とを示す図であり、(b)は図1のPDで受光した相関像として真の1次光と偽の1次光とを示す図である。
【図7】(a)は図1のLCDに表示した入力像として配置した参照像のみを示す図であり、(b)は図1のLCDに表示した入力像として配置した測定像のみを示す図である。
【図8】図1のパターン認識装置における全般的動作を示すフローチャートである。
【図9】図1のパターン認識装置におけるパターン登録処理を示すフローチャートである。
【図10】図1のパターン認識装置におけるパターン照合処理を示すフローチャートである。
【図11】図1のパターン認識装置におけるパターン照合処理を示すフローチャートである。
【図12】(a)は従来のパターン認識装置において測定像と参照像とを並列的な配置で表示した入力像として指紋像を示す写真であり、(b)は(a)の入力像に対する二次元フーリエ変換によって生成した変換像として処理した指紋像を示す写真であり、(c)は(b)の変換像に対する二次元フーリエ変換によって生成した相関像として処理した指紋像を示す写真である。
【図13】(a)は従来のパターン認識装置において通常の測定像と参照像とを並列的な配置で表示した入力像を示す図であり、(b)は(a)の入力像に対する相関像を示す図である。
【図14】(a)は従来のパターン認識装置において2個の同一パターンからなる測定像と参照像とを並列的な配置で表示した入力像を示す図であり、(b)は(a)の入力像に対する相関像を示す図である。
【図15】(a)は従来のパターン認識装置において真のパターンと偽のパターンとからなる測定像と参照像とを並列的な配置で表示した入力像を示す図であり、(b)は(a)の入力像に対する相関像を示す図である。
【図16】(a)は従来のパターン認識装置において2個の同一パターンからなる測定像のみを表示した入力像を示す図であり、(b)は(a)の入力像に対する相関像を示す図である。
【符号の説明】
10…パターン認識装置、30…入力手段、50…照合手段、54…入力面、58…出力面、51〜53,55〜57…演算手段、60…判定手段。
Claims (11)
- 第1のパターンを二次元画像として撮像する入力手段と、
この入力手段によって撮像された前記第1のパターンの像と当該第1のパターンの像に対して比較する少なくとも一つの第2のパターンの像とを入力像として並列的に配置して出力する制御手段と、
この制御手段によって出力された前記入力像を表示する入力面と、この入力面に表示された前記入力像に対して合同フーリエ変換型相関演算を実行する演算手段と、この演算手段によって前記入力像に対応して生成された相関像を配置する出力面とを含んで構成されている照合手段と、
この照合手段によって生成された前記相関像の強度分布に基づいて前記第1及び第2のパターンの像を照合判定する判定手段とを備え、
前記制御手段は、
前記第1のパターンの像を配置する第1の入力領域と、前記第1の入力領域に隣接する第2の入力領域と、前記第1の入力領域に対向して前記第2の入力領域に隣接し、前記第2のパターンの像を配置する第3の入力領域とを、前記第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った前記第2の入力領域の領域幅が、当該配列方向に沿った前記第1の入力領域の領域幅以上になるように配列して前記入力像として出力し、
前記出力面は、
前記相関像を構成する二つの1次空間周波数成分の一方を配置する第1の出力領域と、
この第1の出力領域に隣接し、前記相関像を構成した0次空間周波数成分を配置する第2の出力領域とを有し、
前記第1及び第2の出力領域の配列方向に沿った前記第2の出力領域の領域幅として、前記第2の入力領域の領域幅と前記入力像に対する前記相関像の倍率との積に一致した距離を前記0次空間周波数成分の両側に保持しており、
前記判定手段は、前記第1及び第2の出力領域にそれぞれ配置された前記相関像の強度分布を分別した上で、前記第1の出力領域に配置された前記相関像の1次空間周波数成分の強度分布を用いて前記第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴とするパターン認識装置。 - 前記第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った前記第2の入力領域の領域幅は、当該配列方向に沿った前記第1及び第3の入力領域の領域幅以上に設定されていることを特徴とする請求項1のパターン認識装置。
- 前記出力面は、前記第1の出力領域に対向して前記第2の出力領域に隣接し、前記二つの1次空間周波数成分の他方を配置する第3の出力領域とをさらに有しており、前記照合手段は、前記第1ないし第3の出力領域にそれぞれ配置された前記相関像の強度分布を分別した上で、前記第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴とする請求項1のパターン照合装置。
- 前記演算手段は、前記入力像に対してフーリエ変換を光学的に2度実行するレンズを含んでいることを特徴とする請求項1記載のパターン認識装置。
- 前記演算手段は、前記入力像に対してフーリエ変換を電子工学的に2度実行するコンピュータを含んでいることを特徴とする請求項1記載のパターン認識装置。
- 前記パターンは、人間の指の腹に形成された指紋であることを特徴とする請求項1記載のパターン認識装置。
- 第1のパターンを二次元画像として撮像する第1のステップと、
この第1のステップで撮像された前記第1のパターンの像と当該第1のパターンの像に対して比較する少なくとも一つの第2のパターンの像とを入力像として並列的に配置して信号を生成して出力し、前記信号に基づいて前記入力像を入力面に表示させる第2のステップと、
この第2のステップで表示された前記入力像に対して合同フーリエ変換型相関演算を実行することにより、当該入力像に対応して生成された相関像を出力面に配置する第3のステップと、
この第3のステップで生成された前記相関像の強度分布に基づいて前記第1及び第2のパターンの像を照合判定する第4のステップとを備え、
前記第2のステップにおいては、第1の入力領域、第2の入力領域及び第3の入力領域を、前記第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った前記第2の入力領域の領域幅が、当該配列方向に沿った前記第1の入力領域の領域幅以上になるように順次隣接して配置させると共に、前記第1及び第2のパターンの像を前記第1及び第3の入力領域にそれぞれ配置して前記信号を生成して出力し、
前記第3のステップにおいては、前記出力面に第1の出力領域及び第2の出力領域を隣接して設定する際に、前記第1及び第2の出力領域の配列方向に沿った前記第2の出力領域の領域幅を、前記第2の入力領域の領域幅と前記入力像に対する前記相関像の倍率との積の2倍に一致した距離に設定した上で、前記相関像を構成する二つの1次空間周波数成分の一方及び0次空間周波数成分を前記第1の出力領域の内部及び前記第2の出力領域の中央部にそれぞれ配置し、
前記第4のステップにおいては、前記第1及び第2の出力領域に配置された前記相関像の強度分布を分別した上で、前記第1の出力領域に配置された前記相関像の1次空間周波数成分の強度分布を用いて前記第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴とするパターン認識方法。 - 前記第2のステップにおいては、前記第1ないし第3の入力領域の配列方向に沿った前記第2の入力領域の領域幅を、当該配列方向に沿った前記第1及び第3の入力領域の領域幅以上に設定することを特徴とする請求項7のパターン認識方法。
- 前記第3のステップにおいては、前記第1の出力領域に対向した上で前記第2の出力領域に隣接して設定した第3の出力領域に、前記二つの1次空間周波数成分の他方を前記第3の出力領域に配置し、前記第4のステップにおいては、前記第1及び第3の出力領域にそれぞれ配置された前記相関像の強度分布を分別した上で、前記第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴とする請求項7のパターン認識方法。
- 前記第4のステップにおいては、前記第2の出力領域に配置された前記相関像の強度分布が所定の閾値未満である場合、前記第1の出力領域に配置された前記相関像の強度分布に基づいて前記第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴とする請求項7記載のパターン認識方法。
- 前記第4のステップにおいては、前記第1のパターンの像のみからなる前記入力像に対応して生成された前記相関像の強度分布と、前記第2のパターンの像のみからなる前記入力像に対応して生成された前記相関像の強度分布とを、前記第1及び第2のパターンの像からなる前記入力像に対応して生成された前記相関像の強度分布から除去した上で、当該相関像の強度分布に基づいて前記第1及び第2のパターンの像を照合判定することを特徴とする請求項7記載のパターン認識方法。
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