JP3604318B2 - 作業機の昇降制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業部を走行機体に対して昇降操作する昇降操作手段と、前記作業部の地面からの高さを検出する高さ検出手段と、前記作業部の上昇、下降及び停止を指令する手動操作式の昇降指令手段と、前記昇降指令手段の指令情報に基づいて前記昇降操作手段を作動させる手動昇降制御、及び、前記高さ検出手段の検出情報に基づいて、前記作業部の地面からの高さが設定高さに維持されるように前記昇降操作手段を作動させる自動昇降制御を実行する制御手段とが設けられ、その制御手段が、自動制御開始指令に基づいて前記自動昇降制御の実行を開始するとともに、自動制御停止指令に基づいて前記自動昇降制御の実行を停止し、且つ、前記手動昇降制御を前記自動昇降制御に優先して実行するように構成されている作業機の昇降制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記作業機の昇降制御装置では、作業機としての刈取作業用のコンバインにおいて、走行機体の前部側に作業部としての刈取部が昇降操作手段としての油圧シリンダによって揺動昇降自在に付設され、運転部には、揺動操作自在な手動操作レバーが設けられるとともに、その手動操作レバーが上昇側に操作されたことを検出する上昇スイッチと、下降側に操作されたことを検出する下降スイッチとが設けられている。そして、この手動操作レバー、上昇スイッチ及び下降スイッチにて、手動操作式の昇降指令手段が構成されて、上昇スイッチがオンしている間、刈取部の上昇が指令され、下降スイッチがオンしている間、刈取部の下降が指令され、両スイッチが共にオフ状態のときに、刈取部の昇降停止が指令され、手動昇降制御では、それらの指令情報に基づいて、上記油圧シリンダが伸縮作動されて刈取部が設定された一定の昇降速度で昇降するように制御される。
【0003】
又、上記コンバインには、刈取部の地面からの高さを検出する高さ検出手段として例えば超音波式の高さ検出センサが設けられるとともに、運転部の操作パネルに、刈取部の高さ目標値(設定高さ)を設定するための手動ボリューム等が備えられ、自動昇降制御においては、前記高さ検出センサにて検出される刈取部の地面からの高さが上記手動ボリューム等にて設定される設定高さに維持されるように、前記油圧シリンダを伸縮作動させて、適正な刈取作業が行なえるようにしている。尚、この自動昇降制御の実行中においても、前記手動操作レバーの指令に基づく手動昇降制御が優先して実行される。
【0004】
そして、従来では、上記自動昇降制御の実行を開始させる場合には、例えば、運転部の操作パネルに設けた自動制御入切スイッチを入り側に操作した状態で、前記手動操作レバーを下降操作して下降スイッチがオンすると、自動制御開始指令が指令されたものとして上記自動昇降制御の実行を開始するようにしていた。一方、上記自動昇降制御の実行を停止させる場合には、自動昇降制御の実行中において、前述の手動昇降制御の優先機能により前記手動操作レバーを上昇側に操作して、刈取部を予め設定された高さに上昇させると、自動制御停止指令が指令されたものとして、前記自動昇降制御の実行を停止するようにしていた。
【0005】
尚、上記のように刈取部を設定高さまで上昇させて自動昇降制御の実行を停止させるのは、例えば1行程に沿っての刈取作業を終えて枕地で旋回させるときにピッチング等により刈取部が地面に接触する等の不具合を避けるためであり、上記高さは比較的高い位置に設定されている。その結果、例えば低刈り状態で刈取作業している場合には、自動昇降制御の実行を停止させるためには、現在の刈取部の位置よりも大きく上昇させる必要があり、その上昇操作が面倒であるという不都合があった。
【0006】
そこで、上記不都合を解消する技術(以下、第1の従来技術という)では、刈取部を設定高さまで上昇させるのではなく、手動操作レバーが設定時間上昇側に操作されると、自動制御停止指令が指令されたものとして、前記自動昇降制御の実行を停止するようにしていた。つまり、前述のように刈取部は一定の昇降速度で昇降操作されるので、このように設定時間の上昇操作を自動昇降制御の実行停止の条件とすることにより、低刈り状態であるか高刈り状態であるかに関係なく、現在の刈取部の位置から上記設定時間に対応する高さだけ上昇させると、自動昇降制御の実行が停止されることになる。
【0007】
ところで、刈取部の昇降速度を手動操作によって変更したいという要求に答えるために、別の従来技術(以下、第2の従来技術という)では、上記手動操作レバーの握り部に、手動式の昇降速度調節ボリュームが設けられ、この調節ボリュームを操作することによって、前記手動昇降制御及び自動昇降制御における刈取部の昇降速度を適宜変更設定できるようにしている。これにより、例えば、熟練作業者は速い昇降速度に設定して刈取作業を極力短い作業時間で能率良く行なうことができる一方、非熟練者は遅い昇降速度に設定して刈取作業を操作ミスなく行なうことができるようにしている(例えば特開平10−248346号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記第2の従来技術によって、作業部を速い昇降速度で昇降操作して能率良く作業を行なっている場合に、第1の従来技術のように、設定時間上昇操作がされたことを自動昇降制御の停止条件とすると、昇降速度が速いので上記設定時間の間に作業部が上昇し過ぎることになり、その結果、例えば次に作業部を下降させて作業を行なうような場合に、下降させるのに長い時間を要して、作業能率の低下をきたすおそれがあった。
逆に、上記第2の従来技術によって、作業部を遅い昇降速度で昇降操作している場合に、第1の従来技術のように、設定時間上昇操作がされたことを自動昇降制御の停止条件とすると、昇降速度が遅いので、作業部があまり上昇しないうちに自動昇降制御が停止され、その結果、例えば作業部が地面に近い状態で昇降が停止して、地面の凹凸に接触する等の不都合が生じるおそれがあった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記従来技術の不具合を解消させるべく、手動昇降操作において作業部の昇降速度を適宜変更設定できるようにしながら、作業部を適切な上昇量確実に上昇させた状態で自動昇降制御を停止させることができる作業機の昇降制御装置を提供する点にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1によれば、前記作業部の昇降速度を変更設定する手動操作式の昇降速度設定手段が設けられ、前記制御手段が、前記手動昇降制御において、前記昇降速度設定手段にて設定されている昇降速度で前記昇降操作手段を昇降作動させ、且つ、前記自動昇降制御を実行しているときに、前記手動昇降制御により前記作業部が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇されると、前記自動制御停止指令が指令されたものとして、前記自動昇降制御の実行を停止するように構成されている。
つまり、手動昇降制御においては、手動操作式の昇降速度設定手段にて設定されている昇降速度で昇降操作手段が昇降作動され、自動昇降制御を実行しているときに、昇降指令手段の指令に基づく手動昇降制御が優先して実行されて、作業部が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇されると、自動制御停止指令が指令されたものとして、自動昇降制御の実行が停止される。
【0011】
従って、手動昇降制御により作業部を手動操作で昇降させるときは、作業部の昇降速度を変更設定できるので、例えば熟練作業者が速い昇降速度で能率良く作業を行なうようにしたり、非熟練者が遅い昇降速度に設定して操作ミスなく作業を行なうようにすることができ、且つ、作業部が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇されたときに自動昇降制御の実行が停止されるので、例えば作業部の昇降速度が速い速度に設定された場合には、短時間のうちに作業部が上記設定昇降量上昇して自動昇降制御の実行が停止され、逆に、作業部の昇降速度が遅い速度に設定された場合には、作業部が上記設定昇降量上昇するまでは自動昇降制御の実行が停止されないことになり、もって、手動昇降操作における作業部の昇降速度を適宜変更設定できるようにしながら、作業部を適切な上昇量を確実に上昇させた状態で自動昇降制御の実行を停止させることができる作業機の昇降制御装置を提供できるに至った。
【0012】
因みに、作業機が例えば刈取作業用のコンバインで作業部が刈取部の場合において、畦際で刈り上げ操作するようなときに、昇降速度を速い速度に設定しておけば、極力畦に近い箇所まで自動昇降制御にて刈取作業を行ながら、畦際で手動上昇させると、刈取部が上記設定昇降量を高速で上昇して短時間で自動昇降制御が停止するので、畦近くまで適正な刈高さの条件で刈り取り作業を行なうことができることになる。
【0013】
請求項2によれば、請求項1において、前記昇降指令手段が、前記作業部の停止を指令する停止指令位置、この停止指令位置よりも上昇操作側に位置して前記作業部の上昇操作の起動を指令する上昇操作起動位置及び前記停止指令位置よりも下降操作側に位置して前記作業部の下降操作の起動を指令する下降操作起動位置を含む操作範囲に亘って位置変更操作自在な手動操作部と、その手動操作部の操作位置を連続的な位置情報として検出する位置検出部とを備えて構成され、前記昇降速度設定手段が、前記手動操作部及び前記位置検出部を利用して構成されて、前記手動操作部が前記上昇操作起動位置よりも上昇側に操作されるほど、前記作業部の上昇速度を速い速度に設定し、前記手動操作部が前記下降操作起動位置よりも下降側に操作されるほど、前記作業部の下降速度を速い速度に設定するように構成され、前記制御手段が、前記昇降速度設定手段の情報に基づいて、前記位置検出部の検出情報を積算して求めた前記作業部の昇降量が連続して上昇側に変化して設定量以上になったか否かにより、前記作業部が設定昇降量以上連続して上昇作動されたか否かを判別するように構成されている。
【0014】
つまり、手動昇降制御においては、手動操作式の昇降指令手段に備えた手動操作部の操作位置が連続的な位置情報として位置検出部にて検出され、その位置検出情報に基づいて、上記手動操作部が停止指令位置よりも上昇操作側に位置する上昇操作起動位置に操作されると、作業部の上昇操作が起動されるとともに、その上昇操作起動位置よりも上昇側に操作されるほど作業部が速い上昇速度で上昇操作され、上記手動操作部が上記停止指令位置よりも下降操作側に位置する下降操作起動位置に操作されると、作業部の下降操作が起動されるとともに、その下降操作起動位置よりも下降側に操作されるほど作業部が速い下降速度で下降操作され、上記手動操作部が上記停止指令位置に操作されると、作業部の昇降が停止される。
また、自動昇降制御を実行しているときに、上記手動操作部が上昇側に操作されると、その手動操作部の操作位置が連続的な位置情報として位置検出部にて検出され、その位置検出部の検出情報を積算して求めた作業部の昇降量が連続して上昇側に変化して設定量以上になると、作業部が設定昇降量以上連続して上昇作動されたものとして、自動昇降制御の実行が停止される。
【0015】
従って、手動昇降制御により作業部を手動操作にて昇降させる場合に、同一の手動操作部を位置変更操作するだけで、作業部の昇降指令と、昇降速度の変更設定とを同時に行なうことができるので、作業部の昇降の指令と昇降速度の変更とを簡単且つ迅速に行なうことができて便利であり、一方、手動操作部の操作量を積算して、作業部が設定昇降量以上連続して上昇作動されたことを判別して、自動昇降制御を停止させるので、例えば作業部の昇降位置を直接検出する対機体位置検出手段等を不要として装置構成を簡素化しながらも、作業部の昇降量を的確に判別して自動昇降制御を停止させるようにすることができ、もって、請求項1の作業機の昇降制御装置を実施する際の好適な手段が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る作業機の昇降制御装置を、作業機としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1L、1Rを備えた走行機体Vの前部に、植立穀稈を刈り取り、刈取穀稈を後方に向けて搬送する刈取部2が昇降自在に備えられ、走行機体Vに、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置3、脱穀された穀粒を貯留するグレンタンク、搭乗運転部5等を備えて構成されている。
【0017】
刈取部2は、植立茎稈を分草する分草具6、植立穀稈を立姿勢に引起す引起し装置7、引起された穀稈の株元側を切断するバリカン型刈取装置8、刈取られた穀稈を徐々に横倒れ姿勢に姿勢変更させながら後方に搬送する縦搬送装置9等を備えて、油圧シリンダCYの伸縮操作により走行機体Vに対して横軸芯X1周りで昇降揺動自在に枢支されている。つまり、作業部としての刈取部2を走行機体Vに対して昇降操作する昇降操作手段が、上記油圧シリンダCYにて構成されている。尚、刈取部2の機体に対する回動支点部には、刈取部2の走行機体Vに対する昇降位置を検出するポテンショメータ形式の対機体高さセンサS3が設けられている。
【0018】
又、前記縦搬送装置9の搬送入口部には、刈取穀稈が存在するか否かを検出することで、刈取部2が刈取作業状態であるか否かを判別するための株元センサS0が設けられ、さらに、分草具6の後方側箇所に、刈取部2の地面からの高さを検出する高さ検出手段としての超音波センサS4が設けられている。この超音波センサS4は、図2に示すように、下方側に向けて超音波を発信する超音波発信器10と、地面にて反射された超音波を受信する超音波受信器11とで構成され、超音波発信器10が超音波を発信してから、地面にて反射された反射波を超音波受信器11が受信するまでの経過時間を計測することで、刈取部2の地面からの高さを検出するように非接触式に構成されている。
【0019】
次に、刈取部2を昇降操作するための制御構成について説明する。
図1及び図2に示すように、搭乗運転部5には、手動操作によって刈取部2を昇降操作するための昇降レバー16が中立位置に復帰付勢された状態で揺動操作自在に設けられ、この昇降レバー16の根元部には、レバー16の揺動操作量を検出するための昇降ボリュームVRが設けられている。
【0020】
具体的に説明すると、昇降ボリュームVRの固定端子の一方には、後述の制御装置14からバイアス電圧VB(例えば+5V)が供給されるとともに、他方の固定端子は接地され、昇降レバー16の揺動操作に伴って移動する可動端子の検出電圧Vsが制御装置14に入力されている。そして、図4に示すように、昇降ボリュームVRの検出電圧Vsは昇降レバー16が上昇側に操作されるほど大きくなり、その検出範囲において、昇降レバー16が中立位置から上昇側に設定量揺動操作された上昇操作起動位置に対応する検出電圧Vsが上昇作動電圧Vuとして設定され、昇降レバー16が中立位置から下降側に設定量揺動操作された下降操作起動位置に対応する検出電圧Vsが下降作動電圧Vdとして設定されている。中立位置を挟んで上昇操作起動位置と下降操作起動位置の間の操作位置が停止指令位置になる。さらに、上記下降操作起動位置よりも下降操作側に、後述の自動昇降制御の開始指令用の制御起動位置が設定され、この位置での検出電圧を制御起動電圧Vkとする。
なお、上記検出電圧Vsは、昇降ボリュームVRが正常で、昇降ボリュームVRと制御装置14との間の配線に断線がない正常な状態では、上記バイアス電圧VBよりも少し低い上限電圧Vg1とアースよりも少し高い下限電圧Vg2の間の値となる。
【0021】
従って、上記昇降レバー16及び昇降ボリュームVRによって、刈取部2の上昇、下降及び停止を指令する手動操作式の昇降指令手段SSが構成されるとともに、その昇降指令手段SSが、刈取部2の停止を指令する停止指令位置、この停止指令位置よりも上昇操作側に位置して刈取部2の上昇操作の起動を指令する上昇操作起動位置、及び、上記停止指令位置よりも下降操作側に位置して刈取部2の下降操作の起動を指令する下降操作起動位置を含む操作範囲に亘って位置変更操作自在な手動操作部としての昇降レバー16と、その昇降レバー16の操作位置を連続的な位置情報として検出する位置検出部としての昇降ボリュームVRとを備えて構成されている。
【0022】
図3にも示すように、上記昇降レバー16に備えた握り部16aの上部には、その握り部16aを握った手指にて押し操作自在な自動上昇スイッチSW1及び自動下降スイッチSW2の夫々が、昇降レバー16の上昇操作側に自動上昇スイッチSW1が位置し、昇降レバー16の下降操作側に自動下降スイッチSW2が位置する状態で設けられている。
【0023】
図2に示すように、前記油圧シリンダCYは単動型シリンダで構成され、搭載されるエンジンにて駆動される油圧ポンプPから油圧シリンダCYに対する圧油供給路18の途中に、油圧シリンダCYに対する作動油の供給状態を、圧油供給による上昇位置、中立停止位置、その他の油圧装置への供給位置の夫々に切り換える3位置切り換え式で且つ電磁操作式の上昇制御弁V1が備えられている。又、圧油供給路18の途中から並列状態で分岐されるドレン油路19に、圧油を通過させるオリフィス20と、圧油を排出させる排出位置及び圧油排出を停止させる停止位置に切り換える2位置切換え式の下降制御弁V2とが備えられている。
【0024】
そして、この油圧シリンダCYは操作速度を変更調節することができるように構成されている。つまり、上昇制御弁V1を上昇位置に切り換えた状態で、下降制御弁V2を停止位置に切り換えると高速上昇速度になり、下降制御弁V2を排出位置に切り換えると低速上昇速度になり、下降制御弁V2の駆動状態を排出位置と停止位置との2位置の状態を短時間毎に繰り返す、所謂、デューティ制御を実行して、デューティ比を変更調節することにより中間の上昇速度にて適宜変更調節することができる。尚、上昇操作におけるデューティ比を、下降制御弁V2の排出位置時間と停止位置時間の合計時間に対する停止位置時間の比(%)として定義する。従って、図5(イ)に示すように、この上昇操作におけるデューティ比(%)を大きくするほど、上昇操作速度は速くなる。
【0025】
又、上昇制御弁V1を中立停止位置に切り換えた状態で、下降制御弁V2を停止位置に切り換えると昇降停止状態となり、下降制御弁V2を排出位置に切り換えると高速下降速度になり、下降制御弁V2に対して上記デューティ制御を実行してデューティ比を変更調節することにより中間の下降速度にて適宜変更調節することができる。尚、下降操作におけるデューティ比を、下降制御弁V2の停止位置時間と排出位置時間の合計時間に対する排出位置時間の比(%)として定義する。従って、図5(ロ)に示すように、この下降操作におけるデューティ比 (%)を大きくするほど、下降操作速度は速くなる。
【0026】
図2に示すように、マイクロコンピュータを利用して構成される制御装置14が設けられ、この制御装置14に、前記株元センサS0、超音波センサS4、対機体高さセンサS3、前記昇降ボリュームVR、前記自動上昇スイッチSW1、及び、前記自動下降スイッチSW2からの各検出情報が入力されている。前記搭乗運転部5には、自動昇降モードと手動昇降モードとを選択するモード切換スイッチSW3、及び、刈取部2の目標対地高さ(設定高さ)を設定するための手動ボリュームにて構成された刈高さ設定器15が設けられ、この制御モード切換スイッチSW3と、刈高さ設定器15からの各情報も上記制御装置14に入力されている。さらに、エンジンから前記脱穀装置3への動力伝達を入り切りする脱穀クラッチの入り切り状態を検出する脱穀スイッチS1と、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサS2の各検出情報も上記制御装置14に入力されている。
一方、制御装置14からは、前記上昇制御弁V1及び下降制御弁V2夫々に対する駆動信号が出力されている。
【0027】
上記制御装置14を利用して、前記昇降指令手段SSの指令情報に基づいて前記油圧シリンダCYを作動させる手動昇降制御、及び、前記超音波センサS4の検出情報に基づいて、前記刈取部2の地面からの高さが前記設定高さに維持されるように前記油圧シリンダCYを作動させる自動昇降制御を実行する制御手段100が構成されている。
【0028】
前記刈取部2の昇降速度を変更設定する手動操作式の昇降速度設定手段101が設けられている。具体的には、この昇降速度設定手段101は、前記昇降レバー16及び前記昇降ボリュームVRを利用して構成されて、前記昇降レバー16が前記上昇操作起動位置(上昇作動電圧Vuに対応する操作位置)よりも上昇側に操作されるほど、前記刈取部2の上昇速度を速い速度に設定し、前記昇降レバー16が前記下降操作起動位置(下降作動電圧Vdに対応する操作位置)よりも下降側に操作されるほど、前記刈取部2の下降速度を速い速度に設定するように構成されている。
【0029】
そして、上記制御手段100が、前記手動昇降制御において、前記昇降速度設定手段101にて設定されている昇降速度で前記油圧シリンダCYを昇降作動させるように構成されている。
具体的には、昇降レバー16が前記上昇操作起動位置よりも上昇側に操作されるほど、即ち、昇降ボリュームVRの検出電圧Vsが前記上昇作動電圧Vuよりも大きくなるほど、前記上昇操作におけるデューティ制御におけるデューティ比を大きくして、油圧シリンダCYを高速の上昇速度で上昇作動させる。一方、昇降レバー16が前記下降操作起動位置よりも下降側に操作されるほど、即ち、昇降ボリュームVRの検出電圧Vsが前記下降作動電圧Vdよりも小さくなるほど、前記下降操作におけるデューティ制御におけるデューティ比を大きくして、油圧シリンダCYを高速の下降速度で下降作動させる。尚、昇降ボリュームVRの検出電圧Vsが前記上昇作動電圧Vuと前記下降作動電圧Vdの間にあるときは、油圧シリンダCYの作動を停止させる。
【0030】
前記制御手段100は、前記自動昇降制御では、超音波センサS4による刈高さ検出値と刈高さ設定器15で設定された高さ設定値との偏差(刈高さ検出値−高さ設定値)を求めて、その偏差が制御不感帯内になく偏差が正であれば、刈取部2を上昇操作させ、上記偏差が制御不感帯内になく偏差が負であれば、刈取部2を下降操作させ、上記偏差が制御不感帯内にあれば、刈取部2の昇降を停止させるように、油圧シリンダCYを作動させる。
【0031】
尚、前記制御装置14は、刈取部2が対機体高さセンサS3の検出値により目標上昇位置にあることが検出されているときに、自動下降スイッチSW2が押し操作されてオン作動するに伴って、刈取部2を下降目標位置に下降させるべく油圧シリンダCYを前記高速下降速度で下降作動させ、刈取部2が対機体高さセンサS3の検出値により前記上昇目標位置以外の位置にあることが検出されているときに、自動上昇スイッチSW1が押し操作されてオン作動するに伴って、刈取部2を前記目標上昇位置に上昇させるべく油圧シリンダCYを前記高速上昇速度で上昇作動させる自動昇降作動を実行する。上昇目標位置は、刈取部2の昇降操作範囲の上限位置付近、具体的には上限位置から150mm内の範囲に設定され、下降目標位置は、上限位置から約450mm下方側の位置に設定されている。
【0032】
前記制御手段100は、自動制御開始指令に基づいて前記自動昇降制御の実行を開始するとともに、自動制御停止指令に基づいて前記自動昇降制御の実行を停止し、且つ、前記手動昇降制御を前記自動昇降制御に優先して実行するように構成されている。
上記自動昇降制御の実行開始及び実行停止について具体的に説明すると、前記モード切換スイッチSW3にて自動昇降モードが選択され、且つ、自動昇降制御の実行停止状態において、前記昇降レバー16が前記制御起動位置(図4において、制御起動電圧Vkに対応する操作位置)及びこれより下降操作側に操作されると、自動制御開始指令が指令されたものとして、前記自動昇降制御の実行を開始する。尚、前記自動下降スイッチSW2の指令に基づく前記自動昇降作動によって刈取部2が前記下降目標位置に下降したときも、自動制御開始指令が指令されたものとして、前記自動昇降制御の実行を開始する。
一方、前記自動昇降制御を実行しているときに、前記手動昇降制御により前記刈取部2が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇されると、前記自動制御停止指令が指令されたものとして、前記自動昇降制御の実行を停止する。つまり、前記自動昇降制御を実行しているときに、前記昇降指令手段SSにて手動の上昇指令が指令されると、いったん自動昇降制御の実行を停止して、手動の上昇指令に基づいて刈取部2を上昇作動させ、刈取部2が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇されると、自動昇降制御の実行を停止する。尚、刈取部2を前記上昇目標位置に上昇させるべく自動上昇スイッチSW1の指令に基づく前記自動昇降作動が指令されたときも、自動制御停止指令が指令されたものとして、自動昇降制御の実行を停止する。
【0033】
上記制御手段100は、前記昇降速度設定手段101の情報に基づいて、前記昇降ボリュームVRの検出情報を積算して求めた前記刈取部2の昇降量が連続して上昇側に変化して設定量以上になったか否かにより、前記刈取部2が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇作動されたか否かを判別するように構成されている。具体的に説明すると、前記昇降ボリュームVRの検出電圧Vsから前記上昇作動電圧Vuを引いた電圧Vs−Vuが大きくなるほど、刈取部2の上昇速度が速くなるように速度が設定されるので、例えば、上昇速度がその電圧Vs−Vuに比例して速くなるように設定すれば、図6に示すように、その電圧Vs−Vuを時間で積分した積分値は刈取部2が連続して上昇するときの上昇量に相当することになり、その積分値が設定値(斜線で示す)以上になったときに、刈取部2の昇降量が連続して上昇側に変化して設定量以上になったと判別することができる。
【0034】
次に、前記制御装置14による刈取昇降制御について、図7〜図12のフローチャートに基づいて説明する。
メインフロー(図7)では、先ず、昇降作動の作動条件が成立しているか否かを判断する。つまり、前記脱穀スイッチS1がオン状態で、エンジン回転数センサS2にてエンジン回転数が500rpm以上であることが検出され、且つ、前記対機体高さセンサS3の検出値が正常な値であれば、昇降作動の作動条件が成立していると判断される。
上記昇降作動の作動条件が成立しているときは、前記昇降ボリュームVRの検出情報に基づいて手動昇降指令が指令されているか否かを判断し、手動昇降指令が指令されていれば、手動昇降制御処理を実行する。手動昇降指令が指令されていないときは、前記自動上昇スイッチSW1又は自動下降スイッチSW2がオンしているか否かを判断し、いずれかのスイッチSW1,SW2がオンしていれば、自動昇降作動処理を実行する。
【0035】
手動昇降指令が指令されず、前記自動上昇スイッチSW1又は自動下降スイッチSW2のいずれもオンしていないときに、前記モード切換スイッチSW3にて自動昇降モードが選択されていれば、自動昇降制御が実行中であることを示す自動制御実行中フラグがセットされているか否かを判断し、自動制御実行中フラグがセットされていないときに、前記自動制御開始指令が指令されていれば、自動制御実行中フラグをセットする。自動制御実行中フラグがセットされているときは、前記自動制御停止指令が指令されていなければ、前記自動昇降制御処理を実行し、前記自動制御停止指令が指令されているときは、自動制御実行中フラグをクリアする。尚、モード切換スイッチSW3にて自動昇降モードが選択されていないときも、自動制御実行中フラグをクリアする。
【0036】
手動昇降制御処理(図8)では、昇降ボリュームVRの検出電圧Vsが上昇作動電圧Vuよりも大であれば、刈取部2を上昇させるべく油圧シリンダCYを上昇作動させ、昇降ボリュームVRの検出電圧Vsが下降作動電圧Vdよりも小であれば、刈取部2を下降させるべく油圧シリンダCYを下降作動させ、昇降ボリュームVRの検出電圧Vsが上昇作動電圧Vuと下降作動電圧Vdの間であれば、油圧シリンダCYの作動を停止させる。
【0037】
自動昇降作動処理(図9)では、自動上昇スイッチSW1がオンされたときは、株元センサS0がオン状態又はオフ状態に変化後4秒以内の場合に限り、自動上昇フラグをセットする。自動下降スイッチSW2がオンされたときは、上昇目標位置にある場合に限り、自動下降フラグをセットする。
次に、自動上昇フラグがセットされているときは、自動上昇出力処理を行ない、自動下降フラグがセットされているときは、自動下降出力処理を行ない、前記昇降ボリュームVRによる手動昇降指令がなされたときは、自動上昇及び自動下降フラグをクリアするとともに、油圧シリンダCYの自動上昇及び自動下降作動を停止させる。
【0038】
自動上昇出力処理(図10)では、上昇目標位置まで上昇していない状態で、自動上昇の出力時間が5秒以上でないときにのみ、油圧シリンダCYを上昇作動させ、上昇目標位置まで上昇しているとき、及び、上昇目標位置まで上昇していないが自動上昇の出力時間が5秒以上のとき、自動上昇フラグをクリアし、且つ、油圧シリンダCYの上昇作動を停止させる。
【0039】
自動下降出力処理(図11)では、下降目標位置まで下降していない状態で、自動下降の出力時間が3秒以上でないときにのみ、油圧シリンダCYを下降作動させ、下降目標位置まで下降しているとき、及び、下降目標位置まで下降していないが自動下降の出力時間が3秒以上のとき、自動下降フラグをクリアし、且つ、油圧シリンダCYの下降作動を停止させる。
【0040】
自動昇降制御処理(図12)では、超音波センサS4にて刈高さを検出し、その刈高さ検出値と刈高さ設定器15による高さ設定値との偏差(刈高さ検出値−高さ設定値)を求めて、その偏差が制御不感帯内になく偏差が正であれば、油圧シリンダCYを上昇作動させ、上記偏差が制御不感帯内になく偏差が負であれば、油圧シリンダCYを下降作動させ、上記偏差が制御不感帯内にあれば、油圧シリンダCYの作動を停止させる。
【0041】
〔別実施形態〕
上記実施形態では、本発明の作業機の昇降制御装置を、作業機としてのコンバインに適用し、作業部としての刈取部を昇降させる場合について説明したが、コンバイン以外の各種作業機において各種の作業部を昇降させる場合に適用することができる。
【0042】
上記実施形態では、昇降操作手段を油圧シリンダCYにて構成したが、これ以外に、電動モータ等その他のアクチュエータで構成してもよい。
【0043】
上記実施形態では、手動操作式の昇降指令手段SSを、手動操作レバー16とその操作量を検出するボリュームVRにて構成したが、これ以外に、例えば、手動操作レバー16とその操作レバーが、上昇側及び下降側に夫々所定量操作されるとオンする上昇検出スイッチ及び下降検出スイッチにて構成してもよい。
【0044】
上記実施形態では、高さ検出手段を、非接触式の超音波センサS4にて構成したが、これ以外に、例えば、地面に接触して回動作動するそり式の接地部を作業部2に備えさせて、その接地部の回動状態によって、作業部2の地面からの高さを検出するように構成してもよい。
【0045】
上記実施形態では、昇降速度設定手段101を、手動操作式の昇降指令手段SSを構成する手動操作部16と位置検出部VRを利用して構成したが、これ以外に、昇降速度調節用の専用の調節ボリューム等を前記手動操作部16等に備えさせる構成でもよい。
【0046】
上記実施形態では、制御手段100が、昇降速度設定手段101の情報に基づいて、作業部2が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇作動されたか否かを判別するように構成したが、これ以外に、例えば前記対機体高さセンサS3の検出情報に基づいて、作業部2の昇降量を直接検出して、上記作業部2が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇作動されたか否かの判別を行なうように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの前部側の側面図
【図2】制御ブロック図
【図3】昇降レバーの握り部の平面図
【図4】昇降指令手段の指令情報を説明するためのグラフ
【図5】昇降速度の変更設定について説明するグラフ
【図6】上昇量の積算処理について説明するグラフ
【図7】制御動作のフローチャート
【図8】制御動作のフローチャート
【図9】制御動作のフローチャート
【図10】制御動作のフローチャート
【図11】制御動作のフローチャート
【図12】制御動作のフローチャート
【符号の説明】
2 作業部
16 手動操作部
100 制御手段
101 昇降速度設定手段
CY 昇降操作手段
S4 高さ検出手段
SS 昇降指令手段
V 走行機体
VR 位置検出部

Claims (2)

  1. 作業部を走行機体に対して昇降操作する昇降操作手段と、
    前記作業部の地面からの高さを検出する高さ検出手段と、
    前記作業部の上昇、下降及び停止を指令する手動操作式の昇降指令手段と、
    前記昇降指令手段の指令情報に基づいて前記昇降操作手段を作動させる手動昇降制御、及び、前記高さ検出手段の検出情報に基づいて、前記作業部の地面からの高さが設定高さに維持されるように前記昇降操作手段を作動させる自動昇降制御を実行する制御手段とが設けられ、
    その制御手段が、自動制御開始指令に基づいて前記自動昇降制御の実行を開始するとともに、自動制御停止指令に基づいて前記自動昇降制御の実行を停止し、且つ、前記手動昇降制御を前記自動昇降制御に優先して実行するように構成されている作業機の昇降制御装置であって、
    前記作業部の昇降速度を変更設定する手動操作式の昇降速度設定手段が設けられ、
    前記制御手段が、前記手動昇降制御において、前記昇降速度設定手段にて設定されている昇降速度で前記昇降操作手段を昇降作動させ、且つ、前記自動昇降制御を実行しているときに、前記手動昇降制御により前記作業部が昇降速度が変更されても同じとなる設定昇降量以上連続して上昇されると、前記自動制御停止指令が指令されたものとして、前記自動昇降制御の実行を停止するように構成されている作業機の昇降制御装置。
  2. 前記昇降指令手段が、前記作業部の停止を指令する停止指令位置、この停止指令位置よりも上昇操作側に位置して前記作業部の上昇操作の起動を指令する上昇操作起動位置及び前記停止指令位置よりも下降操作側に位置して前記作業部の下降操作の起動を指令する下降操作起動位置を含む操作範囲に亘って位置変更操作自在な手動操作部と、その手動操作部の操作位置を連続的な位置情報として検出する位置検出部とを備えて構成され、
    前記昇降速度設定手段が、前記手動操作部及び前記位置検出部を利用して構成されて、前記手動操作部が前記上昇操作起動位置よりも上昇側に操作されるほど、前記作業部の上昇速度を速い速度に設定し、前記手動操作部が前記下降操作起動位置よりも下降側に操作されるほど、前記作業部の下降速度を速い速度に設定するように構成され、
    前記制御手段が、前記昇降速度設定手段の情報に基づいて、前記位置検出部の検出情報を積算して求めた前記作業部の昇降量が連続して上昇側に変化して設定量以上になったか否かにより、前記作業部が設定昇降量以上連続して上昇作動されたか否かを判別するように構成されている請求項1記載の作業機の昇降制御装置。
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