JP3603513B2 - 低炭素鋼の脱酸方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、低炭素鋼の脱酸方法に関し、特に、Tiを主成分とする合金で脱酸し、連続鋳造過程での所謂浸漬ノズル(イマージョン・ノズル)の閉塞が少ないばかりでなく、製品での非金属介在物に起因した欠陥が少なく、且つ発錆しない鋼を製造する技術に係わる。
【0002】
【従来の技術】
Tiを含む極低炭素冷延鋼板の素材としての鋼材は、その製造開始当初、特公昭44−18066号公報に開示されているように、溶鋼を2次精錬で脱ガスした後、Alを用いずFeTiで脱酸して製造されていたが、近年では、Tiや酸素の濃度を安定させ、且つ低コストにするため、Alで脱酸して該Alを0.005重量%以上含有させて製造する方法が主流となっている。
【0003】
Alで脱酸する場合、通常は、ガス撹拌付き取鍋やRH脱ガス装置を用い、生成した酸化物を凝集、合体して浮上分離させスラグに吸収するが、鋳片には、どうしても不可避的酸化物(Al2 O3 )が残留する。しかも、このAl2 O3 は、クラスター状の形状となるので、溶鋼に対する見掛け比重の差が小さく、浮上分離し難く、鋼中には数100μm以上の大きさの介在物として残留する。このAl2 O3 からなるクラスター状の介在物が、精錬後の連続鋳造において、鋳型内で鋳片の表層部に捕捉されると、製品として美麗さを必要とする自動車用冷延鋼板の表面性状が損なわれるばかりでなく、所謂ヘゲやスリーバのような表面欠陥の生成原因となる。また、Al脱酸で生成した溶鋼中に浮遊する固相のAl2 O3 介在物は、該溶鋼を連続鋳造する際に、上記浸漬ノズルの内壁に付着堆積し、該ノズルの閉塞を引き起こす。
【0004】
そこで、上記Alでの脱酸問題を解決する方法として、例えば、特公昭63−41671号公報は、溶鋼中のCa濃度が0.001重量%以上になるようにCaを添加してAlとの複合脱酸とし、生成する酸化物をAl2 O3 −CaOやTiO2 −CaO等の低融点組成物に形態を変更する方法を提案している。しかしながら、この方法では、Ca合金としてCaSi、CaAl、FeCaを用い、溶鋼中のCa濃度を0.001重量%以上になるように添加するが、Caの蒸気圧が高いために,その歩留りが低いばかりでなく、Ca濃度が安定せず、しかも溶鋼の飛散やヒュームが発生して操業がやり難い。また、溶鋼中のCaO濃度が0.001重量%以上になると、冷延鋼板に錆が発生しやすくなるという問題もある。
【0005】
また、Alとの複合脱酸法による酸化物の形態変更方法として、別途、特公昭57−7216号公報に開示された技術もある。それは、Caを用いずに、Al:15〜89.5モル%、Ti:10〜80モル%、およびY、Ceまたはミッシュメタルの1種又は2種以上の金属:0.5〜5モル%から構成される合金を添加する方法である。しかしながら、この方法を採用すると、デンドライト状の酸化物系介在物の生成を防止したり、巨大なクラスター状介在物の発生防止には効果が認められるが、自動車用冷延鋼板で問題となるような直径100μm程度のクラスター状介在物の低減は不十分であり、また、連続鋳造に際しての浸漬ノズル閉塞も防止するまでには至らなかった。
【0006】
上記したことの他に、Alで脱酸する場合の問題として、特開昭62−30822号公報に記載されているように、酸化物として存在する以外のAlの濃度が増加してくると(つまり、sol.Alの増加)、その鋼材の冷延鋼板を焼鈍した後に、プレス成形性が劣化する。
ところで、Alによる脱酸は、以上述べたように問題点が多いので、最近は、Tiを含む極低炭素冷延鋼板の製造に、Alを添加せず、Tiで脱酸した冷延鋼板の需要が再び高まっている。Ti脱酸では、冒頭で述べたように、Al脱酸に比べて溶鋼中の酸素濃度が不安定で、且つ到達酸素濃度が高く、介在物量が多い欠点もあるが、Al脱酸で生成するクラスター状の酸化物は生成せず、5〜10μm程度の酸化物が分散した状態で存在するので、冷延用鋼板にクラスター状介在物に起因した表面欠陥が発生し難いという利点がある。しかしながら、Al≦0.005重量%の極低炭素鋼の製造では、Ti濃度が0.010重量%以上とすると、Ti酸化物は溶鋼中では依然として固相状態であるため、Al2 O3 と同様、連続鋳造に際して浸漬ノズルの閉塞を引き起こす。このことは、「C≧0.50重量%の高炭素鋼で、Ti≦0.015重量%とすると浸漬ノズル閉塞の発生は少ないが、極低炭素鋼では脱酸前の初期酸素濃度が高いため、Ti濃度が0.010重量%程度でも浸漬ノズルの閉塞が発生する」という特公昭56−29730号公報の記載からも明らかである。Tiは、製品鋼材の優れた深絞り性を確保するには、少なくとも0.010重量%以上含有させる必要があるので、極低炭素鋼の製造でTi脱酸を行うと、連続鋳造時の浸漬ノズル閉塞はどうしても避けられなかった。
【0007】
そこで、この問題点を解決するために、特公平7−41382号公報は、浸漬ノズルより気泡径が0.6mm以上の不活性ガスを吐出させる方法、または、3μm以上の径を有する気孔を総気孔の13体積%以上含有する材質でノズルを製作し、その気孔を通して不活性ガスを吐出させる方法を提案している。しかしながら、これらの方法では、ノズル材の気孔率が高く弱いので、ノズル溶損が大きく、ノズル閉塞の防止効果も不十分であった。
【0008】
また、特公平7−47764号公報は、脱酸後、Mn:0.03〜1.5重量%、Ti:0.02〜1.5重量%となる溶鋼中の介在物が、MnO−Ti酸化物(MnO:17〜31重量%)を主成分とする低融点組成となるような非時効性冷延鋼板を提案している。この公報に記載されたMnO−Ti酸化物(MnO:17〜31重量%)は低融点組成であり、溶鋼中では液相状態であるので、この介在物を含んだ溶鋼は、浸漬ノズルを通過してもノズルに付着することなく鋳型に注入され、浸漬ノズルの閉塞は防止できる。一方、森岡泰行、森田一樹ら(鉄と鋼、81(1995)、p40参照)によれば、MnO:17〜31重量%含有するMnO−Ti酸化物を得るには、溶鋼中のMn及びTiの酸素との親和力の違いから、溶鋼中のMnとTiの濃度比を重量%でMn/Ti≧100とする必要がある。したがって、鋼中のTi濃度が0.010重量%の場合、MnOを17〜31重量%含有したMnO−Ti酸化物を得るには、Mn濃度は1.0重量%以上必要となる。
【0009】
しかしながら、Mn含有量が1.0重量%を越えると、鋼材の材質が硬化すると共に、Ti含有量が0.010重量%未満であると、優れた深絞り性が得られない。そのため、介在物をMnO−Ti酸化物(MnO:17〜31重量%)にすることは困難であった。
本発明は、かかる事情を鑑み、連続鋳造に際して浸漬ノズルの閉塞を起こさず、且つ鋼中にクラスター状介在物を生成させないと共に、製品鋼材のプレス加工性も劣化させない低炭素鋼の脱酸方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため、実験及び検討を重ね、その成果として新規な合金の脱酸剤を開発した。そして、この脱酸剤を活用して本発明を創案するに至った。
すなわち、本発明は、真空脱ガス装置内で脱炭処理した溶鋼から、
C≦0.020重量%、
Al≦0.005重量%、
Ti≧0.010重量%、
Si≦0.2重量%、
Mn≦1.0重量%、
S≦0.050重量%
を含有する低炭素鋼を製造する方法において、
上記溶鋼に、20重量%以下のCa,Mgの1種以上と、20重量%以下のSiと、5重量%以下の希土類金属と、30重量%以上のTiと残部Feとからなる合金の脱酸剤を投入し、生成介在物をCaO、MgO、Al2 O3 、SiO2 、希土類金属酸化物のうちの2種以上、MgOと希土類金属酸化物との合計が30重量%以下及び30〜85重量%のTi酸化物を含む組成とすることを特徴とする低炭素鋼の脱酸方法である。
【0012】
さらに、本発明は、 上記合金の脱酸剤を、20重量%以下のCa,Mgの1種以上と、5重量%以下の希土類金属と、30重量%以上のTiと残部Feとからなるものとしたことを特徴とする低炭素鋼の脱酸方法である。
加えて、本発明は、上記溶鋼の溶存酸素が200ppm以下となるよう、金属AlあるいはSiで予備脱酸することを特徴とする低炭素鋼の脱酸方法である。
【0013】
本発明では、低炭素鋼の脱酸を、上記のような構成で行うようにしたので、得られた溶鋼で連続鋳造を行なっても、浸漬ノズルの閉塞は起こらないようになる。また、鋼中にクラスター状介在物が生成しないので、その後に圧延、焼鈍、メッキ処理を施して製造した自動車用薄鋼板は、極めて表面性状が優れており、発錆も少なく、非金属介在物に起因する表面欠陥は皆無となり、加えて、従来の鋼材よりプレス加工性も劣化しなかった。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施形態は、上述したことから明らかなように、脱ガス後の溶鋼に、脱酸能力の大きい新規な合金の脱酸剤あるいは新規な合金と金属Alを混合した脱酸剤を投入し、脱酸反応で生成する介在物を3元系以上の低融点組成を有する複合介在物にすることである。ここで、図1は、1600℃における溶鋼中の金属元素濃度(ppm)と酸素の活量(ao )との関係であるが、この図1を用いれば、上記実施形態を具体的に説明することができる。
【0015】
例えば、本発明で狙いとする低融点組成の複合介在物のTi酸化物(Ti2 O3 )の活量(aTi2O3 )が0.5、Ce酸化物(Ce2 O3 )の活量(aCe2O3 )が0.3、Ca酸化物(CaO)の活量(aCaO )が0.3とすると、溶鋼中のTi濃度が0.050重量%の場合、Ce=1ppm、Ca=4ppmにする必要がある。このような溶鋼組成と複合介在物組成は、脱ガス後の溶鋼を、少量の希土類金属(主としてCe,La)と、Caと、Tiとからなる合金で脱酸すること、及び製造対象の溶鋼成分を下記のように限定することで達成されるのである。一方、狙いとする低融点組成の複合介在物のTi酸化物の活量(aTi2O3 )が0.5、Ce酸化物の活量(aCe2O3 )が0.3、Mg酸化物(MgO)の活量(aMgO )が0.3とすると、溶鋼中のTi濃度が0.050重量%の場合、Ce=1ppm、Mg=8ppmにする必要がある。このような溶鋼組成と複合介在物組成は、同様に少量の希土類金属と、Mgと、Tiとからなる合金で脱酸すること、及び製造対象の溶鋼成分を下記のように限定することで達成される。
【0016】
次に、本発明に係る脱酸方法の実施で製造する溶鋼成分の限定であるが、本発明では、AlとTiを特に重視して、Al≦0.005重量%で、Ti≧0.010重量%とする。
Alが0.005重量%を超えると、Al脱酸が起こり、Al2 O3 クラスターが大量に生成するからである。また、脱酸で生成する介在物を30〜85重量%のTi酸化物を主とした酸化物にし、粒径5〜10μm程度の大きさで鋼中に分散した状態で存在させて、冷延用鋼板において介在物中の表面欠陥を防止するには、Al≦0.005重量%であることが必要である。
【0017】
一方、Tiについては、それが0.010重量%未満では、Cが0.020重量%以下の低炭素鋼の深絞り性を確保することができず、また溶鋼の脱酸素能力が弱く、全酸素濃度が高くなるからである。なお、Tiは、TiNの大量の生成による浸漬ノズルの閉塞防止を図る観点からは、0.15重量%以下であることが望ましい。
【0018】
Cは、0.020重量%を超えると、製品鋼材の深絞り性が確保できなくなるので、0.020重量%以下にする必要がある。
Siは、0.20重量%を超えると、製品鋼材のめっき性が劣化し表面性状が悪化するので、0.20重量%以下にする必要がある。
Mnは、1.0重量%を超えると、鋼材が硬化するので、1.0重量%以下にする。また、1.0重量%を超えると、鋼中の介在物は、Ti酸化物−MnO系の低融点組成の介在物となり、本発明のような合金を添加する必要はなくなる。
【0019】
Sは、0.050重量%を超えると、鋼中にCaSや希土類金属硫化物が多くなり、深絞り性が確保できないだけでなく、製品である冷延鋼板において非常に錆が発生しやすくなるので、0.050重量%以下に限定する。
さらに、本発明においては、冷延鋼板の材質要求に応じて、B、Nbの1種又は2種を含有させることは、何ら問題はない。
引き続き、本発明で脱酸剤として使用する合金の成分限定について説明する。
【0020】
この合金は、20重量%以下のCa、Mgの1種以上と、20重量%以下のSiと、5重量%以下の希土類金属と、30重量%以上のTiとを予め溶融して均一化したものである。
20重量%以下のCa、Mgの1種以上、20重量%以下のSiと、30重量%のTiとからなる合金、あるいはこの合金からSiを除いたものでは、生成する介在物が溶鋼中で十分な液相状態ではなく、その組成と形態は不安定であり、前記浸漬ノズルの詰りは十分には解消できない。そこで、該介在物の組成と形態を安定させるために、5重量%以下の希土類金属を加えたのである。また、Ca、Mgが20重量%超えるようにすると、鋼中にCaO、MgO、CaS濃度の高い介在物が大量に生成し、製品である冷延鋼板にお
いて非常に錆が発生しやすくなるので、それ以下に限定したのである。好ましくは10重量%以下が良い。さらに、Ca,Mgを入れずに、希土類金属とTiとからなる合金で脱酸すると、介在物は溶鋼中で十分な液相状態ではなく、該介在物の組成と形態は不安定で、ノズル詰りは十分に解消できなかった。
【0021】
合金中の希土類金属が5重量%を超えると、介在物中の希土類金属酸化物(Ce2 O3 、La2 O3 )が30重量%を超えるため、前述したように、介在物の融点が上がり、連続鋳造におけるイマージョンノズルの閉塞につながり、また、介在物の溶鋼中での浮上性が悪くなり、鋼中の全酸素濃度が高く、冷延鋼板での清浄性を悪化させる。
【0022】
なお、上記した本発明に係る合金の脱酸剤は、金属AlやFeTi合金に比べ高価であるので、介在物の組成制御が可能な範囲で少量の使用で済むよう添加するのが経済的である。そのため、本発明では、脱酸剤添加前の溶鋼中の酸素濃度を200ppm以下になるように、予め金属AlやSiで予備脱酸するようにもした。この予備脱酸は、真空中での溶鋼撹拌、脱酸後のAlが≦0.005重量%となるように予備脱酸するのがよい。予備脱酸は、真空中での溶鋼撹拌が良好で、予備脱酸後のAlが0.005重量%以下となるように、少量の金属Al、金属SiやFeSi合金、あるいは金属MnやFeMn合金による脱酸が好ましい。
【0023】
さらに引き続いて、本発明に係る脱酸方法の実施で生成させる複合介在物の組成限定について説明する。
該複合介在物中のTi酸化物の濃度が30重量%より少ないと、相対的にCaOやMgOが高くなり、かかる組成の介在物が鋼中に残留していると、製品である冷延鋼板において非常に錆が発生しやすくなる。また、MgOや希土類金属酸化物(例えば、Ce2 O3 、La3 O3 )が30重量%を超えるようになると、該介在物の融点が上がり、連続鋳造において浸漬ノズルの閉塞につながる。さらに、上記希土類金属酸化物の比重が他の酸化物に比べ大きいために、それが30重量%を超えて含有されると、該介在物の溶鋼中での浮上性が悪くなり、鋼中の全酸素濃度が高くなって、冷延鋼板の清浄性が悪化する。
【0024】
従って、本発明では、複合介在物中のTi酸化物濃度を30重量%にする必要があるが、そのために、添加する合金脱酸剤中のTiを30重量%以上にしたのである。一方、複合介在物中のTi酸化物濃度が85重量%より高いと、Ti酸化物は溶鋼中で固相状態となるため、連続鋳造において浸漬ノズルの閉塞が発生する。よって、本発明では、脱酸生成物としての複合介在物中のTi酸化物を30〜85重量%の組成としたのである。なお、好ましくは、(CaO+MgO+レアメタル酸化物)/Ti酸化物=0.2〜1.0の範囲の組成が良い。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
転炉から出鋼した300tonの溶鋼を、RH真空脱ガス装置にて脱炭処理し、主要成分をC=0.035重量%、Mn=0.20重量%、P=0.015重量%、S=0.010重量%に、その温度を1600℃に調整した。この溶鋼中に、金属Alを0.7kg/ton添加して予備脱酸し、溶鋼中の溶存酸素濃度を150ppmまで低下させた。なお、この時の溶鋼中のAl濃度は、0.003重量%であった。そして、この溶鋼に、60重量%Ti−20重量%Si−5重量%Ca−3重量%Ce−12重量%Feからなる合金を1.2kg/ton添加し、本発明に係る脱酸の実施と溶鋼の成分調整とを行った。
【0026】
このようにして得た溶鋼を、次に、2ストランドの連続鋳造装置にてスラブに鋳造した。その際、タンディッシュ内溶鋼の介在物を調査したところ、65重量%Ti2 O3 −13重量%CaO−10重量%Ce2 O3 −8重量%Al2 O3 −4重量%SiO2 の球状介在物であった。鋳造終了後、浸漬ノズルを観察したが、付着物はほとんど発見できなかった。このスラブを3.5mm厚まで熱間圧延してから、0.8mm厚みに冷間圧延し、780℃で45sec間の焼鈍を行った。その結果、焼鈍後の鋼板には、表面欠陥や非金属介在物性の欠陥は認められなかった。また、発錆は、従来のAl脱酸の場合と同程度で何ら問題はなかった。
(実施例2)
転炉から出鋼した300tonの溶鋼を、RH真空脱ガス装置にて脱炭処理し、主要成分をC=0.0030重量%、Mn=0.25重量%、P=0.020重量%、S=0.012重量%に、その温度を1600℃に調整した。この溶鋼中に金属Alを0.7kg/ton添加して予備脱酸し、溶鋼中の溶存酸素濃度を150ppmまで低下させた。なお、この時の溶鋼中のAl濃度は、0.003重量%であった。そして、この溶鋼に、60重量%Ti−15重量%Ca−3重量%Ce−17重量%Feからなる合金1.0kg/tonとAlを0.2kg/ton混合して添加し、本発明に係る脱酸と溶鋼の成分調整とを行った。
【0027】
このようにして得た溶鋼を、次に、2ストランドの連続鋳造装置にてスラブに鋳造した。その際、タンディッシュ内溶鋼の介在物を調査したところ、60重量%Ti2O3 −12重量%CaO−10重量%Ce2 O3 −15重量%Al2 O3 −3重量%SiO2 の球状介在物であった。鋳造終了後、浸漬ノズルを観察したが、付着物はほとんどなかった。このスラブを、3.5mm厚まで熱間圧延してから、0.8mm厚みまで冷間圧延し、780℃で45sec間焼鈍を行った。その結果、焼鈍後の鋼板には、表面欠陥や非金属介在物性の欠陥は認められなかった。また、発錆は、従来のAl脱酸の場合と同程度で何ら問題はなかった。
【0029】
(実施例3)
転炉から出鋼した300tonの溶鋼を、RH真空脱ガス装置にて脱炭処理し、主要成分をC=0.0025重量%、Mn=0.30重量%、P=0.010重量%、S=0.010重量%に、その温度を1600℃に調整した。この溶鋼に、予備脱酸せず、60重量%Ti−20重量%Si−5重量%Ca−3重量%Ce−12重量%Fe合金を2.4kg/ton添加し、本発明に係る脱酸と溶鋼の成分調整とを行った。
【0030】
このようにして得た溶鋼を、次に、2ストランドの連続鋳造装置にてスラブに鋳造を行った。その際、タンディッシュ内溶鋼の介在物を調査したところ、65重量%Ti2 O3 −13重量%CaO−10重量%Ce2 O3 −8重量%Al2 O3 −4重量%SiO2 の球状介在物であった。鋳造終了後、浸漬ノズルを観察したが、付着物はほとんどなかった。このスラブを、3.5mm厚まで熱間圧延してから、0.8mm厚みまで冷間圧延し、780℃で45sec間焼鈍を行った。その結果、焼鈍後の鋼板には、表面欠陥や非金属介在物性の欠陥は認められなかった。また、発錆は、従来のAl脱酸の場合と同様で何ら問題はなかった。
(比較例1)
転炉から出鋼した300tonの溶鋼を、RH真空脱ガス装置にて脱炭処理し、主要成分をC=0.0030重量%、Mn=0.20重量%、P=0.015重量%、S=0.010重量%に、その温度を1600℃に調整した。この溶鋼中に金属Alを0.7kg/ton添加して予備脱酸し、溶鋼中の溶存酸素濃度を170ppmまで低下させた。なお、この時の溶鋼中のAl濃度は、0.002重量%であった。そして、この溶鋼に、75重量%Ti−25重量%Fe合金を1.0kg/ton添加し、脱酸及び溶鋼の成分調整を行った。
【0031】
このようにして得た溶鋼を、次に、2ストランドの連続鋳造装置にてスラブに鋳造した。その際、タンディッシュ内溶鋼の介在物を調査したところ、組成が88重量%Ti2 O3 −12重量%Al2 O3 の微小介在物が分散していた。鋳造終了後、浸漬ノズルを観察したところ、Ti2 O3 −Al2 O3 の付着物が認められた。このスラブを3.5mm厚まで熱間圧延してから、0.8mm厚みまで冷間圧延し、780℃で45sec間焼鈍を行った。その結果、この焼鈍鋼板には、表面欠陥や金属介在物性の欠陥が認められた。また、発錆は、従来のAl脱酸の場合と同様で何ら問題はなかった。
(比較例2)
転炉から出鋼した300tonの溶鋼を、RH真空脱ガス装置にて脱炭処理し、主要成分をC=0.0030重量%、Mn=0.20重量%、P=0.15重量%、S=0.010重量%に、その温度を1600℃に調整した。この溶鋼中に、金属Alを1.3kg/ton添加して予備脱酸した後、75重量%Ti−25重量%Fe合金を0.7kg/tonを添加し、脱酸及び成分調整を行った。
【0032】
このようにして得た溶鋼を、次に、2ストランドの連続鋳造装置にてスラブに鋳造した。その際、タンディッシュ内溶鋼の介在物組成を調査したところ、5重量%Ti2 O3 −95重量%Al2 O3 のクラスター状の介在物であった。鋳造終了後、浸漬ノズルを観察したところ、Al2 O3 の付着物が認められた。このスラブを3.5mm厚まで熱間圧延してから、0.8mm厚みまで冷間圧延し、780℃で45sec間焼鈍を行った。その結果、この焼鈍鋼板には、表面欠陥や非金属介在物性の欠陥が認められた。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、溶鋼中の介在物をCaO、MgO、Al2 O3 、SiO2 、レアメタル酸化物の2種以上を含有し、Ti酸化物濃度を30〜85%の組成にした結果、連続鋳造時において浸漬ノズルの閉塞は起こらず、また、その後の圧延、焼鈍、メッキ処理を施した自動車用薄鋼板は、極めて表面性状が優れており、発生も少なく、非金属介在物に起因する表面欠陥は皆無となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】1600℃における溶鋼中の各種金属元素濃度(ppm)と酸素の活量(ao との関係を示す図である。
Claims (3)
- 真空脱ガス装置内で脱炭処理した溶鋼から、
C≦0.020重量%、
Al≦0.005重量%、
Ti≧0.010重量%、
Si≦0.2重量%、
Mn≦1.0重量%、
S≦0.050重量%
を含有する低炭素鋼を製造する方法において、
上記溶鋼に、20重量%以下のCa,Mgの1種以上と、20重量%以下のSiと、5重量%以下の希土類金属と、30重量%以上のTiと残部Feとからなる合金の脱酸剤を投入し、生成介在物をCaO、MgO、Al2 O3 、SiO2 、希土類金属酸化物のうちの2種以上、MgOと希土類金属酸化物との合計が30重量%以下及び30〜85重量%のTi酸化物を含む組成とすることを特徴とする低炭素鋼の脱酸方法。 - 上記合金の脱酸剤を、20重量%以下のCa,Mgの1種以上と、5重量%以下の希土類金属と、30重量%以上のTiと残部Feとからなるものとしたことを特徴とする請求項1記載の低炭素鋼の脱酸方法。
- 上記溶鋼の溶存酸素が200ppm以下となるよう、金属AlあるいはSiで予備脱酸することを特徴とする請求項1又は2記載の低炭素鋼の脱酸方法。
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