JP3603453B2 - 誘電体共振器および帯域通過フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、マイクロ波帯やミリ波帯で使用される誘電体共振器および帯域通過フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、移動体通信システムの需要の急速な増加および所謂マルチメディア化に対応して大容量で且つ高速な通信システムが要求されている。このような通信すべき情報量の拡大に伴って、マイクロ波帯からミリ波帯へ使用周波数帯域が拡大されようとしている。このようなミリ波帯でも、従来からマイクロ波帯で使用されていたTE01δモード誘電体共振器を同様に用いることができるが、その共振周波数は円柱形状の誘電体の寸法によって決定され、たとえば60GHzでは、高さ0.37mm、直径1.6mmと非常に小さくなるため、厳しい加工精度が要求される。また、TE01δモード誘電体共振器を用いてフィルタを構成する場合、導波管の中に複数のTE01δモードの誘電体共振器を高い位置精度で所定間隔に配置する必要があり、更にその各共振器ごとに共振周波数を微調整するとともに、誘電体共振器間の互いの結合量を微調整するための構造も複雑になるという問題があった。
【0003】
そこで、本願出願人は特願平7−62625号にてこれらの問題を解消した誘電体共振器および帯域通過フィルタを提案している。
【0004】
上記出願に係る誘電体共振器の基本的な構成を図15に示す。図15において3は一定の比誘電率を有する誘電体基板であり、その両主面に所定寸法の円形の開口部4,5を有する電極1,2を形成していて、誘電体基板3から所定間隔隔てて互いに対向する第1の導体板7および第2の導体板8を設けている。この構造によって誘電体基板3の円柱形状部分にTE010モード誘電体共振器として作用する共振器領域60を構成する。この共振器領域60を除く誘電体基板の環状部分は、電極1と電極2とによって挟設された平行平板導波管を構成する。ここで、誘電体基板3の比誘電率と厚さおよび電極の開口部4,5の直径は、共振器領域60にTE010モード誘電体共振器の共振周波数と同一の周波数の信号が入力された時に定在波を生じるように定められる。また、誘電体基板3の厚さと比誘電率は当該平行平板導波管の基本伝搬モードであるTE01モードの遮断周波数が、TE010モード誘電体共振器の共振周波数より高くなるように定められる。したがって、共振器領域60を除く誘電体基板3の環状部分は、TE010モード誘電体共振器の共振周波数と同じ周波数を有する信号を減衰させる(遮断する)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このように誘電体基板の両主面に、略同一形状の開口部を有する電極を、開口部を対向させて形成するとともに、誘電体基板をその誘電体基板から所定間隔隔てて互いに対向する第1、第2の導体板の間に設けて構成した誘電体共振器においては、電極の開口部のエッジ部でTEM波が発生し、これが誘電体基板の両主面の電極間を伝搬し、誘電体基板の端面で反射して定在波となって共振する。その電磁界分布は例えば図16に示すようになる。図16の(A)は共振器領域60の中央を通る断面図、(B)は誘電体基板3の横断面図であり、(A)における矢印は電界、ドット記号およびクロス記号は磁界の分布(向き)をそれぞれ示し、(B)において破線は磁界、ドット記号およびクロス記号は電界の分布(向き)をそれぞれ示す。
【0006】
また、誘電体基板に設けた電極の開口部のエッジ部と上下の導体板との間にもTEM波が発生し、誘電体基板の両主面の電極と第1・第2の導体板との間を伝搬して、誘電体基板の端面と第1・第2の導体板との間で反射して定在波となって共振する。その電磁界分布は例えば図17に示すように表される。図17の(A)は共振器領域60の中央を通る断面図、(B)は(A)におけるB−B線についての横断面図であり、(A)における矢印は電界、ドット記号およびクロス記号は磁界の分布(向き)をそれぞれ示し、(B)において破線は磁界、ドット記号およびクロス記号は電界の分布(向き)をそれぞれ示す。
【0007】
このように誘電体基板の両主面の電極間、および誘電体基板の両主面の電極と第1・第2の導体板との間にTEMモードの共振モードが生じると、本来のTE010モードの誘電体共振器が上記TEMモードと結合して無負荷Qが劣化したり、帯域通過フィルタを構成した際に、通過帯域外の特性に悪影響を与えることになる。
【0008】
この発明の目的は、上記TEMモード等のスプリアスモードによる影響を受けないようにした誘電体共振器および帯域通過フィルタを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の誘電体共振器は、誘電体基板の両主面の電極間を伝搬するスプリアスモードの波を抑圧するために、誘電体基板の両主面に形成されている電極間を、電極の開口部を囲み且つ該開口部のエッジから所定距離遠ざかった位置で短絡する導体路を誘電体基板内に設ける。例えば、誘電体基板の電極開口部の周囲に相当する位置に、両主面の電極間を短絡させるスルーホールを形成する。図1はその誘電体共振器の構成を示す断面図である。図1において、誘電体基板3の両主面に、略同一形状の開口部4,5を有する電極1,2を、その開口部を対向させて形成するとともに、誘電体基板3から所定間隔隔てて互いに対向する第1の導体板7と第2の導体板8を設けている。これにより、dで示す領域が共振器領域、cで示す領域が減衰領域となり、開口部4,5が円形である場合、この共振器領域dがTE010モードの誘電体共振器として作用する。開口部4,5の周囲には、6で示す複数のスルーホールを設けていて、この箇所で電極1−2間を短絡させる。これにより電極開口部のエッジ部で、両主面の電極間に発生するTEM波等のスプリアス波が抑圧され、誘電体共振器の無負荷Qの低下が防止される。この電極間を短絡させるスルーホールは、図16に示したように、スプリアス波の電界エネルギーの集中している箇所(図16の(B)におけるドット記号またはクロス記号の集中する箇所)に設ければ、そのスプリアス波は効果的に抑圧される。
【0010】
また、この発明の誘電体共振器は、誘電体基板の両主面に形成した電極と第1または第2の導体板との間に発生するスプリアスモードの波を抑圧するために、誘電体基板の電極と第1または第2の導体板とを所定位置で結合させる導体路を設ける。この導体路は第1または第2の導体板側に設けるか、誘電体基板の電極側に設ける。また、上記導体路は、第1または第2の導体板と電極とを所定箇所で短絡させるか、電極から第1または第2の導体板方向へ突出させて、その導体路と第1または第2の導体板との間に静電容量を形成するか、逆に導体路を第1または第2の導体板から誘電体基板方向へ突出させて、導体路と電極との間に静電容量を形成する。図2〜図4はこれらの誘電体共振器の構成を示す断面図である。図1の場合と同様に、誘電体基板3の両主面に、略同一形状の開口部4,5を有する電極1,2を、その開口部を対向させて形成するとともに、誘電体基板3から所定間隔隔てて互いに対向する第1の導体板7と第2の導体板8を設けている。これにより、dで示す領域が共振器領域、cで示す領域が減衰領域となり、開口部4,5が円形である場合、この共振器領域dがTE010モードの誘電体共振器として作用する。図2の場合、導体路9,10によって、電極1,2と第1・第2の導体板7,8とを所定箇所で短絡させている。図3の場合、導体路9,10を誘電体共振器3の電極1,2側から第1・第2の導体板7,8方向へ突出させて、導体路9,10と第1・第2の導体板7,8との間に静電容量を形成している。図4の場合、導体路9,10を第1・第2の導体板7,8から誘電体共振器3の電極1,2側へ突出させて、導体路9,10と電極1,2との間に静電容量を形成している。このようにして、電極と第1または第2の導体板とを所定箇所で結合させることによって、電極と第1または第2の導体板との間を伝搬するスプリアスモードの波を抑圧する。
【0011】
また、この発明の誘電体共振器は、第1・第2の導体板を共振器領域の電磁界をシールドするキャビティの一部として構成するとともに、上記導体路をキャビティと一体に設けて、製造の際、導体路の取り付けのための作業工程を不要とする。
【0012】
この発明の帯域通過フィルタは、上記誘電体基板の電極の開口部を共振器領域とするとともに、この共振器領域の電磁界に結合する信号入力部および信号出力部を設けて構成する。また、この発明の帯域通過フィルタは、1つの誘電体基板に複数の共振器領域を形成し、所定の共振器領域の電磁界に結合する信号入力部および信号出力部を設けるとともに、誘電体基板内に設ける導体路または誘電体基板の電極と第1・第2の導体板との間に設ける導体路は、隣接する共振器領域の間を避けて設ける。すなわち、隣接する共振器領域の間には上記導体路を設けない。これによって、隣接する共振器間が結合して複数段の帯域通過フィルタを構成するとともに、スプリアスの波が効果的に抑圧され、通過帯域外特性の悪化が防止される。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態である誘電体共振器の構成を図5に示す。図5の(A)は共振器領域の中央を通る縦断面図、(B)は(A)におけるB−B線についての横断面図である。この誘電体共振器は中央部に共振器領域60を形成した誘電体基板3を、キャビティを構成する導体ケース11内に収めて構成している。すなわち誘電体基板3の両主面には円形状の開口部4,5を有する電極1,2を、開口部4,5が対向するように形成している。この開口部4,5の周囲には、図5の(B)に示すように、開口部のエッジ部から所定距離遠ざかった位置に8つのスルーホール6を等間隔に形成している。このように電極1,2およびスルーホール6を形成した誘電体基板3を、電極1,2と導体ケース11の内面との間隔が所定距離となるように、スペーサ12を介して導体ケース11内の所定位置に支持させている。このスペーサ12は金属等の導体であっても、樹脂や絶縁体セラミクス等の絶縁体または誘電体セラミクス等の誘電体であってもよい。また、導体ケース11は導波管の一部として用いてもよい。
【0014】
次に、第2の実施形態に係る誘電体共振器の構成を図6を基に説明する。図6の(A)は共振器領域の中央部を通る縦断面図、(B)は(A)における上部導体ケース11aを取り外した状態での上面図、(C)は(A)におけるC−C線についての横断面図である。(A)に示すように、誘電体基板3の両主面には、円形状の開口部4,5を有する電極1,2を形成している。導体ケースは上部導体ケース11aと下部導体ケース11bとからなり、この2つの導体ケースの間に誘電体基板3を挟み込むようにして、導体ケース内に誘電体基板3を収納している。上部導体ケース11aには、電極1の開口部4のエッジ部から所定距離遠ざかった周囲に当接するように、導体柱9を突出させている。同様に、下部導体ケース11bには、電極2の開口部5のエッジ部から所定距離遠ざかった周囲に当接するように、導体柱10を突出させている。このように電極1,2と第1・第2の導体板である上下の導体ケース11a,11bとの間を所定箇所で短絡させたことにより、これらの間を伝搬するTEM波などのスプリアス波が抑圧される。特に、これらの導体柱9,10をスプリアス波の電界エネルギーの集中する箇所に設けることによって、スプリアス波が効果的に抑圧される。尚、図6に示した構造により誘電体基板3は上下の導体ケースから突出する導体柱9,10によっても支持されることになる。
【0015】
次に、第3の実施形態に係る誘電体共振器の構成を図7を基に説明する。図7の(A)は共振器領域の中央部を通る縦断面図、(B)は(A)におけるB−B線についての横断面図である。図6に示した第2の実施形態と異なる点は、上部導体ケース11aに、電極1の開口部4のエッジ部から所定距離遠ざかった周囲に導体柱9の先端が近接するように導体柱9を突出させ、同様に、下部導体ケース11bに、電極2の開口部5のエッジ部から所定距離遠ざかった周囲に導体柱10の先端が近接するように導体柱10を突出させている点である。その他の構成は図6に示したものと同様である。このように電極1,2と導体柱9,10との間に静電容量を形成させたことによって、これらの静電容量と導体柱9,10のインダクタンスとによってそれぞれLC共振器が構成され、これらのLC共振器の共振周波数の信号が電極1,2上の所定箇所で第1・第2の導体板である上下の導体ケース11a,11bに等価的に短絡される(電極1,2の所定箇所が導体ケース11a,11bと同電位となる。)ことになる。したがって上記LCの値と導体柱9,10の突出位置を適宜定めることにより、抑圧すべきTEM波等のスプリアス波が抑圧されて、共振器領域60のTE010モード誘電体共振器とTEMモードとの結合が抑制される。
【0016】
次に、第4の実施形態に係る誘電体共振器の構成を図8を基に説明する。図8の(A)は共振器領域の中央部を通る縦断面図、(B)は(A)におけるB−B線についての横断面図である。図7に示した第3の実施形態と異なる点は、電極の開口部4,5の周囲に複数の導体柱9,10を接着することによって、誘電体基板の電極1,2から上下の導体ケース11a,11bの方向に導体柱9,10を突出させている点である。その他の構成は図7に示したものと同様である。電極1,2の開口部4,5の周囲に図8の(B)に示すように複数の導体柱9,10を半だ付けまたは導電性接着剤で接着することによって、導体柱9,10と上下の導体ケース11a,11bとの間に静電容量が生じる。また、導体柱9,10を電極1,2に対して絶縁性接着剤で接着すれば、その接着面にも静電容量が生じる。このように導体柱9,10と第1・第2の導体板である上下の導体ケース11a,11bとの間に静電容量を形成させたことによって、これらの静電容量と導体柱9,10のインダクタンスとによってそれぞれLC共振器が構成され、これらのLC共振器の共振周波数の信号が電極1,2上の所定箇所で第1・第2の導体板である上下の導体ケース11a,11bに等価的に短絡されることになり、抑圧すべきTEM波等のスプリアス波が抑圧されて、共振器領域60のTE010モード誘電体共振器とTEMモードとの結合が抑制される。尚、導体柱9,10の両端を電極1,2と導体ケース11a,11bとにそれぞれ接着してもよい。
【0017】
次に、この発明の第5の実施形態である帯域通過フィルタの構成を図9を基に説明する。図9の(A)は複数の共振器領域の中央部を通る縦断面図、(B)は上部導体ケースを取り除いた状態での平面図である。図9に示すように、誘電体基板3の上面には4a,4b,4cで示す3つの開口部を有する電極1を形成していて、誘電体基板3の下面には5a,5b,5cで示す3つの開口部を有する電極2を形成している。上部の開口部4a,4b,4cと下部の開口部5a,5b,5cは誘電体基板3を挟んで互いに対向していて、これによって3つの共振器領域60a,60b,60cを構成している。誘電体基板3には、(B)に示すように、電極の開口部の周囲で、且つ隣接する共振器領域の間を避けて、電極1,2間を短絡するスルーホール6を形成している。また、誘電体基板3の上面には13,14で示す導体を形成していて、この導体13,14と電極1とによって2つのコプレーナガイドを構成している。誘電体基板3の上下には、これらの共振器領域の全体を覆うように、上部導体ケース11aおよび下部導体ケース11bを取り付けている。このように構成したことにより、導体13は共振器領域60aによるTE010モードの誘電体共振器と磁界結合し、導体14は共振器領域60cによるTE010モードの誘電体共振器と磁界結合する。また、共振器領域60a,60b,60cによる3つのTE010モードの誘電体共振器のうち、隣接する共振器同士が磁界結合する。これにより3段の共振器からなる帯域通過フィルタが得られる。
【0018】
次に、第6の実施形態に係る帯域通過フィルタの構成を図10を基に説明する。図10の(A)は複数の共振器領域の中央部を通る縦断面図、(B)は(A)におけるB−B線についての横断面図である。誘電体基板3にスルーホールを形成しないことを除いては、誘電体基板3に設けた電極1,2の構成は図9に示したものと同様である。この例では上部導体ケース11aおよび下部導体ケース11bの内面にそれぞれ誘電体基板3方向へ突出する導体柱9,10を一体に設けている。これらの導体柱9,10は上部導体ケースと下部導体ケースとの間の所定位置に誘電体基板3を挟持する。図10の(B)に示すように、下部導体ケース11bには同軸コネクタ15,16を取り付けていて、その中心導体をコプレーナガイドの導体13,14の端部に接続している。この構成によって、コネクタ15−16間を帯域通過フィルタとして用いることができる。
【0019】
なお、図9および図10に示した例では、3つの共振器領域を誘電体基板に形成して、その両端の共振器領域による誘電体共振器と結合する信号入力部および信号出力部を設けたが、誘電体共振器の段数をさらに多くしてもよく、また逆に単一の共振器領域による誘電体共振器に信号入力部と信号出力部をそれぞれ設けて1段の共振器からなる帯域通過フィルタを構成することもできる。また、信号入力部および信号出力部はコプレーナガイド以外にスロットラインやマイクロストリップラインで構成することもできる。
【0020】
次に、第7の実施形態に係る帯域通過フィルタの構成を図11〜図14を基に説明する。図11は分解斜視図、図12の(A)は1つの共振器領域の中央部を通る縦断面図、図12の(B)は下部導体ケースの平面図である。図11および図12において、11aは上部導体ケース、11bは下部導体ケースであり、誘電体基板3を上部導体ケース11aと下部導体ケース11bとの間に挟み込んで1つの帯域通過フィルタを構成している。誘電体基板3は比誘電率εr=30のBa(ZrZnTa)O3セラミクスからなり、その上面には4a,4bで示す2つの開口部を有する電極1を形成していて、誘電体基板3の下面にはこれらにそれぞれ対向する2つの開口部を有する電極2を形成している。これによって2つの共振器領域60a,60bを構成している。この誘電体基板3の外形寸法は14.0×10.0×1.0mm である。上部導体ケース11aおよび下部導体ケース11bは、それぞれ比誘電率εr=7.3のMgO−Mg2SO4セラミックスを壁厚0.5mm として成形してなり、図12に示すように外面となる面に本願発明に係る導体板に相当する、銀ペーストの塗布・焼成による導電体膜を形成している。この上部導体ケース11aの外形寸法は14.0×10.0×2.0mm 、下部導体ケースの枠部分の寸法は14.0×10.0 mm 、底板部分の寸法は14.0×14.0×0.5mm である。また、下部導体ケース11bの図における上面には、線幅0.6mm のマイクロストリップラインである引出電極17,18を形成していて、これらの引出電極17,18に直径0.3mm の棒状の信号入力プローブ19と信号出力プローブ20をそれぞれ半田付けなどにより接続している。また、引出電極17,18の近傍には図に示すように上下面を導通させるスルーホールを形成していて、引出電極近傍でのアース電位を上下同一にして、この部分でのスプリアスの発生を防止している。また、下部導体ケースの上面には、図12の(B)に示すように、リン青銅板のような弾性を有する導電性バネ材を円筒状に成形した導体バネ21,22を共振器領域60a,60bの近傍に接着している。(図12の(B)における60a,60bは、この下部導体ケース11bに誘電体基板3を載置した際の共振器領域を示している。)これらの構成部品を図12の(A)に示すように積み重ねて、下部導体ケースと誘電体基板との電極同士、および上部導体ケースと誘電体基板との電極同士をそれぞれ半田や導電性接着剤などの接合材で接合一体化する。この構成によって、信号入力プローブ19は共振器領域60aの共振器と結合し、信号出力プローブ20は共振器領域60bの共振器と結合する。また、導体バネ21,22は共振器領域の近傍で、電極2に直接弾性接触して、導体バネ21,22がインダクタンスとして作用し、導体バネ21,22と下部導体ケース11b下面の導電体膜との間に生じる静電容量とによって、LC回路(LC共振器)を構成する。これによって、共振器領域近傍の所定位置が等価的に下部導電体ケースの下面の導電体膜と同電位となって、TEM波などの所定のスプリアスが抑圧されることになる。なお、引出電極17,18は端面を介して裏面にまで回り込ませていて、この帯域通過フィルタは機器の回路基板に直接表面実装することができるが、引出電極の上部に表面実装型の同軸コネクタを取り付けてもよい。
【0021】
図13は上記フィルタの帯域通過特性を示す図であり、(A)は比較的広い周波数範囲にわたる特性、(B)は中心周波数付近の特性をそれぞれ示す。図14は上記フィルタにおいて、導体バネ21,22を設けない場合の帯域通過特性を示す図であり、図13に場合と同様に(A)は比較的広い周波数範囲にわたる特性、(B)は中心周波数付近の特性をそれぞれ示す。両図を対比すれば明らかなように、上記導体バネ21,22を設けたことにより、中心周波数20GHzに近いTEM波のレベルが抑圧され、このTEM波の影響を受けない帯域通過特性が得られる。
【0022】
なお、図11および図12に示した例では、導体バネを下部導体ケース側に接着したが、これを誘電体基板側に接着してもよく、また、接着することなく、ケースと誘電体基板間に挟み込むだけでもよい。さらに、導体バネは上部導体ケースと誘電体基板との間に設けてもよい。
【0023】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、誘電体基板の両主面に設けた電極間に発生するTEM波等のスプリアス波が電極開口部のエッジ部で抑圧され、このスプリアス波と共振器領域の共振器との結合がなくなり、誘電体共振器の無負荷Qの低下が防止される。
【0024】
請求項2〜請求項6に記載の発明によれば、誘電体基板の両主面に形成した電極と第1または第2の導体板との間に発生するスプリアスモードの波が電極開口部のエッジ部で抑圧され、このスプリアス波と共振器領域の共振器との結合がなくなり、誘電体共振器の無負荷Qの低下が防止される。
【0025】
請求項7,請求項8に記載の発明によれば、誘電体基板の両主面に設けた電極間に発生する、または誘電体基板の両主面に形成した電極と第1または第2の導体板との間に発生するスプリアスモードの波が効果的に抑圧され、通過帯域外特性の悪化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1,2に記載の誘電体共振器の構成例を示す断面図である。
【図2】請求項3,4に記載の誘電体共振器の構成例を示す断面図である。
【図3】請求項5に記載の誘電体共振器の構成例を示す断面図である。
【図4】請求項6に記載の誘電体共振器の構成例を示す断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る誘電体共振器の構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る誘電体共振器の構成を示す図である。
【図7】第3の実施形態に係る誘電体共振器の構成を示す図である。
【図8】第4の実施形態に係る誘電体共振器の構成を示す図である。
【図9】第5の実施形態に係る帯域通過フィルタの構成を示す図である。
【図10】第6の実施形態に係る帯域通過フィルタの構成を示す図である。
【図11】第7の実施形態に係る帯域通過フィルタの構成を示す図である。
【図12】第7の実施形態に係る帯域通過フィルタの構成を示す図である。
【図13】第7の実施形態に係る帯域通過フィルタの特性図である。
【図14】第7の実施形態に係る帯域通過フィルタに対する従来の帯域通過フィルタの特性図である。
【図15】従来の誘電体共振器の構成例およびその電磁界分布の例を示す図である。
【図16】従来の誘電体共振器におけるTEM波の電磁界分布の例を示す図である。
【図17】従来の誘電体共振器におけるTEM波の電磁界分布の例を示す図である。
【符号の説明】
1,2−電極
3−誘電体基板
4a,4b,4c,4,5−開口部
6−スルーホール(導体路)
7−第1の導体板
8−第2の導体板
9,10−導体柱(導体路)
11−導体ケース(キャビティ)
11a−上部導体ケース
11b−下部導体ケース
12−スペーサ
13−コプレーナガイド用導体(信号入力部)
14−コプレーナガイド用導体(信号出力部)
15,16−コネクタ
17,18−引出電極
19−信号入力プローブ(信号入力部)
20−信号出力プローブ(信号出力部)
21,22−導体バネ(導体路)
60a,60b,60c,60−共振器領域
d−共振器領域(伝搬領域)
c−減衰領域(遮断領域)
Claims (8)
- 誘電体基板の両主面に、略同一形状の開口部を有する電極を前記開口部を対向させて形成するとともに、前記誘電体基板を該誘電体基板から所定間隔隔てて互いに対向する第1・第2の導体板の間に設けて、前記誘電体基板の前記開口部を共振器領域とした誘電体共振器において、
前記誘電体基板の前記電極の開口部を囲み、且つ該開口部のエッジから所定距離遠ざかった位置で両主面の電極間を短絡して、前記共振器により励振され前記電極間を伝搬するスプリアスモードの波を抑圧する導体路を前記誘電体基板内に設けたことを特徴とする誘電体共振器。 - 誘電体基板の両主面に、略同一形状の開口部を有する電極を前記開口部を対向させて形成するとともに、前記誘電体基板を該誘電体基板から所定間隔隔てて互いに対向する第1・第2の導体板の間に設けて、前記誘電体基板の前記開口部を共振器領域とした誘電体共振器において、
前記電極と第1または第2の導体板とを所定箇所で結合させて、前記電極と第1または第2の導体板との間を伝搬するスプリアスモードの波を抑圧する導体路を、第1の導体板、第2の導体板、または前記電極の少なくともいずれかに設けたことを特徴とする誘電体共振器。 - 前記導体路は前記電極と第1または第2の導体板との間にそれぞれ複数個設けられ、各導体路が前記電極と第1または第2の導体板とを所定箇所で短絡させるものである請求項2に記載の誘電体共振器。
- 前記導体路は前記電極から第1または第2の導体板の方向に突出し、該第1または第2の導体板と前記導体路との間に静電容量を形成するものである請求項2に記載の誘電体共振器。
- 前記導体路は前記第1または第2の導体板から前記誘電体基板の方向に突出し、前記第1または第2の導体板と前記誘電体基板の電極との間に静電容量を形成するものである請求項2に記載の誘電体共振器。
- 前記第1または第2の導体板は少なくとも前記共振器領域の電磁界をシールドするキャビティの一部を構成し、該キャビティに前記導体路を一体に設けたことを特徴とする請求項3または5に記載の誘電体共振器。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の誘電体共振器と、前記共振器領域の電磁界に結合する信号入力部および信号出力部とを設けて成る帯域通過フィルタ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の共振器領域を、1つの誘電体基板に複数個形成し、所定の共振器領域の電磁界に結合する信号入力部および信号出力部を設けるとともに、前記導体路を、隣接する共振器領域の間を避けて設けて成る帯域通過フィルタ。
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