JP3600582B2 - エンジン排ガスの処理方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン排ガスの処理方法およびその装置に関し、さらに詳しくは、ディーゼルエンジン(軽油や重油)やガスエンジン(都市ガス原料)等のエンジン排ガス中に含まれる黒鉛微粒子等を、浄化処理するのに好適な排ガスの処理方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディーゼルエンジンから排出される黒煙微粒子(PM)と窒素酸化物(NOx)による環境汚染の深刻化に伴い、多くの国でディーゼル排ガス規制の強化が段階的に進められてきた。DPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル微粒子除去フィルター)はPMを低減するのに、有効な技術の1つである。ディーゼルエンジンはPMのみならずNOxの低減も必要とし、排ガスの後処理システムは複雑化している。
ディーゼルエンジンは燃費性能および耐久性に優れているため、動力源として特に産業上重要な地位を占めている。環境面ではその排ガスに含まれる炭化水素(HC)およびC0が少ない反面、発ガン性が疑われる有害物質のPMや大気汚染の原因であるNOxの発生量が多い。
【0003】
一般にはDPFの素材としては、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)又はSiC材料を用いることができる。DPFの再生には、電気ヒータでDPFを直接加熱しPM等を燃焼する方法がある。この方法によれば600℃程度から燃焼が起こるが、PMも燃焼し始めると、さらに高温の1000℃以上に上昇してしまい、材料の極めて高い耐熱性が要求される。よって高価なSiCなどの耐熱性に優れる材料であれば、DPF材料として用いることができる。しかし、他の材料では、600℃〜1000℃付近までなる高温条件下では、劣化してしまい使用に耐えられない。また、このような方法では、エネルギー的にロスが多く、効率的なDPFの再生処理方法が望まれていた。
【0004】
一方、従来の方法としては、例えば図2に示すように、DPF11の前段にNO酸化触媒10を設置することにより、この酸化触媒10で排ガス中のNOを二酸化窒素に酸化し、DPF11でトラップしたPMを二酸化窒素により酸化燃焼する方法がある。
しかしながら、二酸化窒素濃度は、排ガス中のNO濃度に依存するため、適正な二酸化窒素/カーボン(C)比の制御が困難であることや、前段の酸化触媒に耐硫黄(S)性がないため、燃料排ガス中の硫黄濃度を50ppm以下にする必要ある、等の問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、燃焼排ガス中に含まれる黒鉛微粒子を捕集し、捕集したPMを効率的に低温で燃焼除去できる方法、さらに装置全体の処理効率向上および運転効率の向上を可能とする処理方法を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、プラズマ発生器によるプラズマを用いて二酸化窒素を効率的に生成し、この二酸化窒素を流下させることでフィルター上に捕捉した黒鉛微粒子を酸化燃焼することによって、かかる課題が解決されることを見い出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エンジンからの排ガスの流路に備えられるプラズマ発生器によってプラズマを発生させ、該排ガス中の窒素成分をプラズマ化して二酸化窒素を生成し、排ガス中の黒鉛微粒子を酸化燃焼することを特徴とするエンジン排ガスの処理方法を提供するものである。例えば、エンジンからの排ガスの流れ方向に対して後流側に備えられるフィルターに、該排ガス中に含まれる黒鉛微粒子を捕集して蓄積する工程と、排ガスの流れ方向に対して前流側に備えられるプラズマ発生器によって生じるプラズマにより、該排ガス中の窒素成分(N2、NO)をプラズマ化して二酸化窒素を生成する工程と、該二酸化窒素を含むガスを流下させることによって、後流側に備えられたフィルターに蓄積した黒鉛微粒子を連続的又は間欠的に酸化燃焼する工程と、を含むエンジン排ガスの処理方法を提供するものである。ここで、プラズマ化とは、具体的にはプラズマによって発生する排ガス中のオゾンによる作用を示すものであり、窒素成分(N2、NO)がオゾンの強い酸化作用によって、二酸化窒素(NO2)となる反応である。
本発明では、前記フィルターの後流にて、排ガスに酸化窒素化合物の還元による脱硝工程をさらに含むことが好適である。
また、前記フィルター前後における排ガスの圧力損失を測定してフィルターに蓄積した黒鉛微粒子の量を換算し、該量から酸化燃焼に必要とされる二酸化窒素濃度を算出した後、流通する排ガスが該二酸化窒素濃度になるようにプラズマ発生器のプラズマ発生量を制御する方法が好ましい。これによって、フィルターにカーボンが蓄積して、圧力損失が一定以上になった段階で、効率的にプラズマを発生させることができるので、プラズマ発生を行うための電力等の無駄をなくすことができる。
さらに本発明においては、前記フィルター前で排ガスの温度を検知し、排ガス温度が任意の検出温度範囲に達した際に、プラズマ発生器を起動して二酸化窒素を生成させ、フィルターに蓄積した黒鉛微粒子を間欠的に燃焼する態様や、あるいは、前記フィルター前後で排ガスの圧力損失を検知し、任意の圧力損失に達した際に、プラズマ発生器を起動して二酸化窒素を生成させ、フィルターに蓄積した黒鉛微粒子を間欠的に燃焼する態様が好適に挙げられる。
【0007】
また、本発明は、エンジンから排出される排ガスの処理装置であって、排ガスの流れ方向に対して前流側に設けられ、窒素および酸素を含むガスを導入してプラズマを発生させる、プラズマ発生器と、該プラズマ発生器を経由した処理用ガスを排ガスの流れに合流させる、処理用ガス合流部と、該処理用ガス合流部の後流に設けられ、排ガス中の黒煙微粒子を捕集する、フィルターと、を含むエンジン排ガスの処理装置をも提供するものである。ここで、前記プラズマ発生器は後述するような作用を有する装置であれば、何ら限定されるものではないが、具体的には、例えば外部発振器からのマイクロ波を装置内部に共振させる、共振器と、該共振器近傍のガス流路内に設置され、該共振器からのマイクロ波によってプラズマを発生させる、プラズマ誘起体と、からなる装置が挙げられる。またエンジン排ガスの処理装置では、前記フィルターは、少なくとも2以上の異なる細孔径を有するフィルターの組合せからなる態様が好ましく、必要に応じて、前記フィルターの後流側に、さらに加えて脱硝触媒を備えている。なお、ここでプラズマ発生器に導入される窒素および酸素を含むガスとしては、通常の空気の他、エンジン排ガスの一部を用いることもできる。
【0008】
本発明で用いられるプラズマ発生器は、特に限定されるものではなく、プラズマによってオゾンが発生して二酸化窒素を生成できる装置であれば使用可能であり、具体的にはマイクロ波方式、パルスストリーマ放電方式、バリア放電方式などの装置が挙げられる。これらのいずれの方式によっても、プラズマが発生すれば排ガス中にオゾンが生成し、空気中の窒素ガス(N2)と反応して、二酸化窒素が生成する。
例えばマイクロ波方式のプラズマ発生器では共振器とプラズマ誘起体とを備えており、該共振器は、排ガス流路の外側に設け、外部発振器からのマイクロ波を装置内部に共振させる。プラズマ誘起体は、共振器の近傍であって排ガス流路内部に備えられ、共振器からのマイクロ波によってプラズマを発生させる。
【0009】
また、パルスストリーマ放電方式のプラズマ発生器では、排ガス流路の両側に、金属板を設けて高電圧を印加する。パルス高電圧は、火花ギャップスイッチにより高電圧で充電したコンデンサを負荷に接続して発生させる。電圧立上がり時間が短いほど、電流および発光強度が大きくなり、放電の発光領域も広範囲となる。時間幅の短いパルス電圧を発生するには、コンデンサとインダクタンスを組み合わせたパルス伝送回路を用い、その過渡現象を利用する方法などがあり、パルス電力伝達効率を高めるには電源回路と負荷とのインピーダンスマッチングを考慮する。印加電圧を上昇して放電が開始した際には、NOからNO2への酸化反応が起こり、さらに一定以上の電圧に上昇するとNO2が減少する。なお、NOからNO2への酸化は水分やCH化合物の添加により促進される。
【0010】
本発明の処理方法を実施できる装置として、例えばマイクロ波方式のプラズマ発生器を備える態様では、排ガスの流れ方向に対して前流側に外部発振器からのマイクロ波を装置内部に共振させる、共振器と、該共振器の近傍に共振器からのマイクロ波によってプラズマを発生させる、プラズマ誘起体と、該プラズマ誘起体の後流側に排ガス中の黒煙微粒子を捕集する、フィルターと、を含むエンジン排ガスの処理装置が好適に挙げられる。
フィルターは、プラズマ発生装置によるプラズマ発生領域の後流に設けられ、排ガス中の黒煙微粒子を捕集する。このフィルターは、黒鉛微粒子をより完全に捕集する観点から、少なくとも2種以上の異なる細孔径を有するフィルターの組合せからなることが好ましい。また、窒素酸化物を効果的に除去する観点から、前記フィルターの後流側に、さらに加えて、脱硝装置を備えることができる。
【0011】
プラズマ発生器にマイクロ波方式を用いる場合、プラズマ誘起体およびフィルター部に共に、SiC材料を用いることができるが、誘起体のみをSiC材料とすること、あるいは、共にSiC以外の材料を用いることもできる。プラズマ誘起体としてはSiC焼結体の他、例えばグラファイトブロック、粒状活性炭、導電率の高いペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。
フィルターの形状は特に限定されるものではなく、各装置における排ガス流路の形状によって任意に定めることができるが、例えば円柱状のフィルターやハニカム形状のフィルターを用いることができる。
【0012】
本発明によれば、プラズマによる二酸化窒素の生成源に、排気中の窒素ガスが利用できるため、フィルターに捕捉されたPM量に応じて、常に適正な二酸化窒素濃度に制御することができる。また、無触媒で二酸化窒素を生成できるため、燃料中の硫黄の影響がなく、現行燃料でも適用が可能である。
そして従来のようにフィルター部を直接加熱する方法では、高温での耐久性に極めて優れる材料をフィルター部に用いることが必須であったが、プラズマによって発生する二酸化窒素を用いて酸化燃焼する本発明の方法によれば、600℃以下の300℃〜400℃の範囲で黒鉛微粒子を燃焼させることができる。このように低温でも処理できるので、フィルター自体の耐熱性が少なくても足り、SiC等の高価な材料を用いなくてもよく、材料選択の余地が大幅に広がる。また、低温での処理が可能なので、黒鉛微粒子等のトラップ力、捕捉率を低下させることなく、フィルターを使用することができる。
このように本発明によれば、触媒を用いずに、低温での黒鉛微粒子の燃焼処理が可能になるという特徴がある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、多孔質体フィルターに排ガス中の黒鉛微粒子(すす成分、PM)を捕捉・回収させて、そのフィルター上に二酸化窒素を供給することによって、該PMを酸化燃焼するものである。以下、本発明に係る処理方法について、添付図面を参照しながら、その具体的な実施形態を説明する。なお、本実施の形態では、プラズマ発生器として、マイクロ波方式を用いた場合を例示する。
【0014】
実施の形態(その1)
図1に、本発明の処理方法に好適に用いられる排ガス処理装置の一例を示す。図1の装置では、DPFの態様として、細孔径が大きいものから小さいものへと3段階に変化させ、最終的には1μm程度の粒径の細孔径にし、微粒子を捕捉する。排ガスの流れる前流側には、筒状の共振器1およびその近傍にプラズマ誘起体2を設置し、ここでマイクロ波によってプラズマを発生させて、窒素成分(N2、NO)から二酸化窒素(NO2)を生成する。排ガス中にはNOxがかなりの量で含まれるので、DPFの後段には、必要に応じて、脱硝装置4を設置することができる。ここでの脱硝装置4としては、例えば尿素SCR脱硝、アンモニア脱硝装置などが挙げられる。なお、通常SCRの脱硝性能は、NOとNO2の混合ガスで導入された方が、二酸化窒素だけの場合よりも脱硝率が良好である。
以下、本実施の形態をさらに詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態では、先ず、共振器1にマイクロ波が吸収される。この共振器1の部分から内部に向かって出力されるマイクロ波は、排ガスの流れ方向に沿って、後流側にその照射域が拡大する。共振器1の形状は特に限定されないが、例えばリング状の二重円筒構造、又は箱型が用いられる。その内側である近傍には、同じくリング状で内径が小さい円筒構造のプラズマ誘起体2が設置される。
マイクロ波の波長としては、例えば2.45GHzを用いることができるが、水分子への吸収・加熱を防いで効率的に放電を誘起する観点からは、この波長に限定されるものではなく、誘起体に作用させて放電を生じ得る波長を幅広く用いることできる。また、出力も限定されるものではないが、例えば100〜700W程度の発振器を用いることができる。
【0016】
共振器1の内側に設置されたプラズマ誘起体2(SiC等)によって、マイクロ波からプラズマが誘起される。そこでプラズマが発生することによって、近傍ではオゾン(O3)が多量に発生し、そこを流れる排ガス中の窒素成分(N2,NO)は、オゾンによって二酸化窒素(NO2)に酸化される。二酸化窒素の生成量は、排ガス中の酸素濃度に依存して、酸素濃度が高くなれば徐々に増大し、同時に一酸化窒素も生成する。そしてプラズマを発生させれば、瞬時にNOおよびNO2を発生させることができる。
【0017】
本発明で用いるプラズマ誘起体2が存在する中では、外部からマイクロ波を発信した場合、通常の空気中に比べて極めて少ない電力でも効果的に内部で放電が生じ、その内部で集中的・局所的に放電が生じる。
ここでのプラズマ誘起体2としては、例えばグラファイトブロック、粒状活性炭、SiC焼結体の他、導電率の高いペロブスカイト型酸化物等が用いられる。誘起体の形状は何ら限定されるものではなく任意に定められるが、高コストのSiC材料等を用いる場合に効果的にプラズマを誘起する観点からは、例えば約1〜10mm幅程度のリング状の形状物を用いることができる。プラズマ誘起体の作用としては、形状的に電界の集中が生じやすくなること、マイクロ波を吸収しやすいのでガス成分の電子が放出しやすくなり、放電が持続的に起こること、等が挙げられる。
【0018】
排ガス中の黒鉛微粒子は、後流に設けられたフィルター3に捕集(トラップ)されている。上記マイクロ波によってプラズマを発生させ、二酸化窒素を生成して排ガスと共に流下させると、PMが燃焼し始める。これによって、フィルター自体を浄化することができる他、排ガス中に含まれる有害な物質、燃え残りの炭化水素や、一酸化炭素等も処理できる。エンジンの定常運転時には、排ガスの温度は通常約300℃以上なので、酸化反応はフィルター上で行われる。
図3に示すように、通常の酸素によるカーボンの燃焼には600℃程度が必要であるが、本発明の二酸化窒素による燃焼反応では、300〜400℃程度で足りる。よって、フィルター3内での酸化燃焼反応は、好ましくは350〜400℃で進行する。但し、エンジン始動時等においては排ガス温度が低温の場合があり、例えば100〜250℃程度であるので、このような段階に備えて、フィルター内に燃焼触媒を塗布することもできる。
【0019】
フィルター部3の構造としては、図1に例示するように目の粗さを変えた複数段のフィルターを設置して、粒径の大きなものから小さなものまで、確実に捕捉する構造が好ましい。また、フィルターの目の粗さによっては、PMの捕捉によって目が詰まってしまうことが考えられる。よって、目の粗さを変えた複数段のフィルターを設置する態様によれば、PM粒子の大きさによって適当なフィルターに捕捉可能であり、目が詰まる状態になりにくく、保守点検が容易となる。
【0020】
それぞれのフィルター3a,3b,3cの構造は特に限定されず、排ガス流路を塞いで粒子を捕捉できればよく、例えば円柱状の構造を有し、誘起体2のように内部に空洞は造らない。
フィルター3の材料としては、例えばSiC、コージュライト、シリカ、アルミナ等が用いられる。
フィルター3の細孔径には、例えば約10〜数10μm程度のものを用いれば、一段でも粒子をトラップ可能である。一方、1μm程度のフィルターを用いれば、殆どの粒子を捕捉することができるが、この場合には一段では目詰まりの問題がある。そこで、大きい黒鉛微粒子は前流でトラップし、徐々に後段になるに従い、徐々に異なる大きさの小さな粒子が捕捉されることによって、急激な詰まりが生じ難くなる。この態様によれば、DPFの圧損を抑えながら殆どの粒子を略完全にトラップして、排ガス中から取り除くことができる。
したがって、本発明では細孔径が大きいものから小さいものへ、複数段設置する態様が好ましい。具体的には、例えば入口側の前段3aを最も目が粗い約150〜50μm程度、中段3bを30〜10μm程度、後段3cを約5〜1μm程度にすることができる。
【0021】
従来法のようにフィルター前段に酸化触媒を用いると、燃焼排ガス中のNO濃度に依存して一定割合で二酸化窒素が生成してしまうが、本発明では、プラズマ発生の電力量によって任意に生成する二酸化窒素の量を制御可能である。これによって、フィルターに捕捉されているPMの量によって、適宜、酸化反応に最適な二酸化窒素量を供給可能である。残留するNOについては、フィルター3の後流に設けられる脱硝装置4によって窒素ガスに還元することができる。
【0022】
次に、上記のような本発明の処理方法は、以下のような運転方法によって排ガスを効果的に処理することができる。
従来の図2に示すような酸化触媒10を用いる態様では、NO2を生成する場合、排ガス中のNO濃度に依存して、排ガス中のNOが多ければフィルター11を通過するNO2濃度が高く、排ガス中のNOが少なければフィルター11を通過するNO2濃度も低かった。このように、酸化燃焼に寄与させるNO2の量は制御できなかったので、フィルターに捕捉されているPM(カーボン)量等に応じた酸化燃焼は困難であった。つまり、フィルターに捕捉されたPM量が少ないときに、NO2が多量に供給される場合には十分であるが、PM量が多いときに、NO2が少量しか供給されない場合には酸化燃焼が不十分であった。このような場合に連続的に運転を継続すると、次第にカーボンが蓄積してしまい、別途フィルターを再生処理することやフィルターを交換する必要が生じてしまう。
【0023】
本発明では、フィルター部が一定の圧力損失以上になった段階で、プラズマを発生させてNO2を生成させることが好ましい。
本発明における好適な運転方法は、エンジンから排出される排ガスを連続的に供給し、前記プラズマ発生器からは間欠的にプラズマを生じさせて処理する方法である。この場合、供給される排ガス中から黒鉛微粒子を捕集してフィルター上に蓄積する工程と、黒鉛微粒子の蓄積したフィルターにプラズマ発生による二酸化窒素を流下させて黒鉛微粒子を酸化燃焼する工程と、は別個の工程として実施することが効果的である。
多孔質体であるフィルターにてPMをトラップし、一定圧力損失以上になったら、プラズマを発生させて二酸化窒素を供給し、フィルター上のPMを燃焼させる。つまり、常時プラズマを発生させなくても、すす等が一定以上の量、フィルターにトラップされた時点で、プラズマを発生させる。例えば15〜30分間のトラップの後、約3〜5分間のプラズマ発生によってPM等の処理を行う。これにより、PM燃焼処理に必要とされる総エネルギー量が少なくて足り、効率的に燃焼処理を行うことができる。
【0024】
また、本発明では、プラズマ発生器によって発生させるプラズマ量によって、発生するNO2を制御できるので、フィルターに蓄積したPM量に合わせてNO2を生成させることができる。
例えば、フィルター前後における排ガスの圧力損失を測定してフィルターに蓄積した黒鉛微粒子の量を換算し、該量から酸化燃焼に必要とされる二酸化窒素濃度を算出する。その後、流通する排ガスが該二酸化窒素濃度になるようにプラズマ発生器のプラズマ発生量を制御することができる。
この場合、フィルター3前後の排ガス流路内には圧力計を設置して、それぞれ排ガスの圧力を測定する。その圧力差から、フィルター3部の圧力損失が計算できる。次いで、この圧力損失とフィルターに蓄積したPM量との関係は、ほぼ線形関係であることから、黒鉛微粒子の量が換算できる。
このPM量に合わせて、PMの酸化燃焼に必要とされる二酸化窒素濃度が算出される。そして、排ガスをこの二酸化窒素濃度にするのに十分なプラズマを発生させるだけの電力を、プラズマ発生器に送ることによって、効率的にPMを酸化燃焼させることができる。例えばDPF形状12mil/200cpi、排ガスの線速度2.5〜3m/hの場合には、経験的に以下のような圧力損失ΔPと黒煙微粒子の堆積量ΔWとの関係式(1)から、PM量を求めることができる。なお、milは壁厚を示し1m ilは1/1000インチであり、cpiは単位平方インチ当たりのセル数である。
【0025】
ΔW=(ΔP−500)/110×Vc ・・・(1)
〔式中、ΔPは圧力損失[mmH2O], ΔWは黒煙微粒子の堆積量[g], VcはDPFの容積[リットル]をそれぞれ示す。〕
【0026】
本発明の処理方法においては、上記フィルターの後流側には、尿素等による接触還元脱硝触媒(SCR)による脱硝装置4を設置することが好ましい。これにより、排ガス中に含まれる窒素酸化物(NO,NO2)を窒素ガス(N2)に分解除去することができる。
【0027】
実施の形態(その2)
図4に、本発明の排ガス処理装置の一例を示す。
図4のエンジン排ガス処理装置では、排ガスの流れ方向に対して前流側にて、窒素および酸素を含むガスをプラズマ発生器に通して処理用ガスとする。プラズマ発生器は上記したような作用を有する装置であれば、何ら限定されるものではないが、例えば図4に示すような共振器1とプラズマ誘起体2とを配置した装置が好適に挙げられる。共振器1では、外部発振器からのマイクロ波を装置内部に共振させ、近傍のガス流路内に設置されたプラズマ誘起体2では、共振器1からのマイクロ波によってプラズマを発生する。
【0028】
このプラズマ発生器を経由した窒素および酸素を含むガスは、プラズマ発生によるプラズマ化によって、二酸化窒素を含む処理用ガスとなる。ここでプラズマ発生器に導入される窒素および酸素を含むガスは、通常の空気の他、エンジン排ガスの一部を用いることもできる。この処理用ガスは、処理ガス合流部において排ガスを流通させる主管と合流する。該合流部は図4に示すように、排ガスを流通させる主幹に、枝状に付随させた処理用ガスを流通させる枝管を接続させた形状の他、一方が排ガス、他方が処理用ガスを流通させる略同型の2つの管を合流させる形状であってもよい。
このような処理用ガス合流部の後流には、排ガス中の黒煙微粒子を捕集するフィルター3が設けられている。このフィルター3は、少なくとも2以上の異なる細孔径を有するフィルターの組合せからなる態様が好ましい。例えば、細孔径が大きいものから小さいものへと3段階に変化させ、最終的には1μm程度の粒径の細孔径にし、微粒子を捕捉する。また必要に応じて、フィルター3の後流側に、さらに加えて脱硝触媒4を備える。脱硝装置4としては、例えば尿素SCR脱硝、アンモニア脱硝装置などが挙げられる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の処理方法によれば、プラズマによる二酸化窒素の生成源に、排気中の窒素ガスが利用できるため、フィルターに捕捉されたPM量に応じて、常に適正な二酸化窒素濃度に制御することができる。また、無触媒で二酸化窒素を生成できるため、燃料中の硫黄の影響がなく、現行燃料でも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理方法を好適に実施できる装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】従来の処理装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図3】カーボンの燃焼特性を、a)二酸化窒素による場合、b)酸素による場合、それぞれで温度に対してプロットした図である。
【図4】本発明の処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 共振器
2 プラズマ誘起体
3 フィルター
4 脱硝装置
10 酸化触媒
11 パテキュレートフィルター
12 排ガス処理装置
Claims (3)
- エンジンから排出される排ガスの処理装置であって、
排ガスの流れ方向に対して前流側に設けられ、窒素および酸素を含むガスを導入してプラズマを発生させる、プラズマ発生器と、
該プラズマ発生器を経由した処理用ガスを排ガスの流れに合流させる、処理用ガス合流部と、
該処理用ガス合流部の後流に設けられ、排ガス中の黒煙微粒子を捕集する、フィルターと、を含み、
前記プラズマ発生器が、
外部発振器からのマイクロ波を装置内部に共振させる、共振器と、
該共振器近傍のガス流路内に設置され、該共振器からのマイクロ波によってプラズマを発生させる、プラズマ誘起体と、
を含むことを特徴とするエンジン排ガスの処理装置。 - 前記フィルターが、少なくとも2以上の異なる細孔径を有するフィルターの組合せからなることを特徴とする請求項1記載のエンジン排ガスの処理装置。
- 前記フィルターの後流側に、さらに加えて、脱硝触媒が備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン排ガスの処理装置。
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