JP3599682B2 - ナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法 - Google Patents

ナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム−硫黄電池用の固体電解質管を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6に示すように、従来のナトリウム−硫黄電池用固体電解質管41としては、上端が開口した有底円筒状のものが一般的に使用されている。この固体電解質管41の開口端外周には、アルファアルミナ製の絶縁リング43がガラスハンダにより接合され、当該絶縁リング43に熱圧接合された支持金具45、47を介して、陽極容器19に取り付けるとともに開口部を陰極蓋21で密閉する。
【0003】
しかし、このような固体電解質管41は、陽極容器19に取り付けるために絶縁リング43を必要とするため部品点数が多くなるとともに、絶縁リング43をガラスハンダにより固体電解質管41に接合する作業が非常に面倒であるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、特開平6−260210号公報には、図5のように、開口端外周にフランジ部1aを一体的に形成するとともに当該フランジ部1aの外表面(外周及び端面)にアルファアルミナ等からなる絶縁皮膜(セラミック層)3を形成した固体電解質管1が開示された。
【0005】
この固体電解質管1は、フランジ部1aの外周面に形成した絶縁皮膜3上に支持金具15、17が固定され、当該支持金具を介して陽極容器19への取り付けや陰極蓋21による開口部の密閉がなされるので、絶縁リングが不要となり、部品点数が減少するとともに、絶縁リングをガラスハンダにより固体電解質管に接合するという面倒な作業が省略できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記特開平6−260210号公報に開示されているような固体電解質管1を製造するにあたっては、その開口端外周に一体的に形成されたフランジ部1aに対し、溶射により絶縁皮膜3の形成が行われるが、この溶射の際に、絶縁皮膜3が形成されるフランジ部1aとフランジ部1a下方の直管部1bとに大きな温度差が生じやすく、この温度差によって、薄肉の直管部1bから厚肉のフランジ部1aへと肉厚が変化する部位に応力が集中し、クラックが発生しやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開口端外周にフランジ部が一体的に形成され、当該フランジ部の外表面に絶縁皮膜が形成されたナトリウム−硫黄電池用固体電解質管を製造するにあたり、溶射による絶縁皮膜形成の際のフランジ部と直管部との温度差に起因するクラックの発生を効果的に抑制できるような製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上端が開口した有底円筒状の固体電解質管の開口端外周に、当該固体電解質管を陽極容器に取り付けるためのフランジ部を一体的に形成し、当該フランジ部の外表面に、溶射によりアルファアルミナよりなる絶縁皮膜を形成するナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法であって、前記絶縁皮膜の溶射直後における前記フランジ部の表面温度と前記フランジ部下方の直管部の表面温度との温度差が120℃以下となるように温度制御するとともに、前記固体電解質管の内径よりも若干小さな外径を有し、前記固体電解質管と同等の熱膨張率を有するアルミナ製のパイプの外周に耐熱性のOリングを装着してなる保持治具を、前記固体電解質管内に挿入し、当該保持治具で前記固体電解質管を内部から保持した状態で溶射を行うことを特徴とするナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法、が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
前記のとおり、本発明は、上端が開口した有底円筒状の固体電解質管の開口端外周に、当該固体電解質管を陽極容器に取り付けるためのフランジ部を一体的に形成し、当該フランジ部の外表面(外周及び端面)に、溶射によりアルファアルミナよりなる絶縁皮膜を形成するナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法であり、その特徴的な手法として、絶縁皮膜の溶射直後における前記フランジ部と前記フランジ部下方の直管部との表面の温度差が120℃以下、好ましくは100℃以下となるように温度制御を行う。
【0010】
本発明者らが鋭意研究したところ、絶縁皮膜の溶射直後におけるフランジ部の表面温度とフランジ部下方の直管部の表面温度との温度差が120℃以下となるように固体電解質管の温度制御がなされていれば、溶射による絶縁皮膜形成の際のフランジ部と直管部との温度差に起因するクラックの発生を効果的に抑制できることがわかった。
【0011】
図1は、本発明の製造方法における溶射の要領を示す概要図である。本例においては、固体電解質管1の内径よりも若干小さな外径を有し、固体電解質管1と同等の熱膨張率を有するアルミナ製のパイプ5の外周に耐熱性のOリング7を装着してなる保持治具8を、固体電解質管1内に挿入して溶射を行う。このような保持治具8にて固体電解質管1を内部から保持した状態で溶射を行うと、溶射の際の固体電解質管1の割れが生じにくくなる。また、当該保持治具8は、耐熱ゴム等の耐熱性材料からなるOリング7でのみ固体電解質管1の内周面に接しているので、固体電解質管1を傷つけにくい。
【0012】
この保持治具8を内部に挿入した固体電解質管1を回転させながら、溶射ガン9にてフランジ部1aの端面及び外周を溶射し、フランジ部1a外表面の全周にわたって絶縁皮膜3を形成して行くが、この溶射による絶縁皮膜3の形成と同時に、空冷用ノズル11から冷却空気をフランジ部1aに吹き付けることにより、溶射によるフランジ部1aの過度な温度上昇を抑え、溶射直後のフランジ部1aとフランジ部1a下方の直管部1bとの表面の温度差が前記所定温度以下となるように温度を制御する。
【0013】
本発明においては、図2や図3に示すように、フランジ部1aからフランジ部下方の直管部1bに向かって漸次肉薄になるように肉厚に勾配を設けておくことが好ましい。通常、溶射に使用する溶射ガン9は、その動作をロボットにより行うが、このように肉厚に勾配を設けた方が、被溶射面に対して溶射ガン9の位置を合わせやすくなり、溶射性が向上する。
【0014】
また、このような勾配を設けると厚肉のフランジ部1aから薄肉の直管部1bへと移行する部位に対する溶射時の熱膨張による応力が緩和され、クラックがより発生しにくくなるとともに、固体電解質管1の焼成後の形状精度(真直度、真円度)も向上する。なお、図2はフランジ部1aから直管部1bまで一定の勾配で肉厚を変化させた例であり、図3はフランジ部1aから直管部1bへ移行する途中で勾配を段階的に変化させた例であるが、何れの場合も、前記のような好ましい効果が得られる。
【0015】
更に、本発明においては、図4のようにフランジ部1aの外表面全域に、その表面形状がローレット目、切削目及びヤスリ目のうちのいずれかとなるような溝13を設け、プラズマ溶射にて絶縁皮膜3を形成するようにすることが好ましい。この場合、溶射の初期においては、溝13によって皮膜3は細かく分断された状態で形成され、更に溶射が進行して溝13が溶射材によって完全に埋まってから、分断されていた皮膜3が相互に結合して一体となって行く。
【0016】
このように、溶射の途中までは絶縁皮膜3を断続的な状態で形成し、溶射の最終段階で絶縁皮膜3に連続性を持たせるようにすると、皮膜に作用する応力が緩和されて固体電解質管1に対する密着性が向上する。また、このような溝13を設けることにより、被溶射面であるフランジ部1aの外周面の表面積が拡大し、絶縁皮膜3との接触面積も拡大するので、密着性が一層向上する。
【0017】
なお、本発明において、溶射により形成される絶縁皮膜の厚さは、100〜300μmとすることが好ましい。絶縁皮膜の厚さが100μm未満では、耐電圧が低下するという問題が生じ、一方、300μmを超えると、密着性が低下する。
【0018】
また、絶縁皮膜の気孔率は、5〜15%とすることが好ましい。一般に、気孔率が5%未満の絶縁皮膜はセラミック溶射では容易に得がたく、一方、絶縁皮膜の気孔率が15%を超えると、耐電圧が低下するという問題が生じる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1〜5及び比較例1〜5)
図2に示すように開口端外周にフランジ部1aを一体的に形成したベータアルミナ製の固体電解質管1を作製し、前述の図1に示すような要領でフランジ部1aの外表面にアルファアルミナからなる絶縁皮膜3を形成した。絶縁皮膜の形成は、一方で空冷用ノズル11から冷却空気をフランジ部1aに吹き付けながら、プラズマ溶射により行い、冷却用空気の温度や流量、空冷用ノズル11とフランジ部1aとの距離等を変化させることにより、溶射直後におけるフランジ部1a及び直管部1bの表面温度並び両者の温度差ΔTを表1に示すような様々な値に制御した。絶縁皮膜の形成が完了した後、固体電解質管の破損の有無を調べ、その結果を表1に示した。
【0021】
【表1】
Figure 0003599682
【0022】
表1に示す結果のとおり、絶縁皮膜の溶射直後におけるフランジ部の表面温度と直管部の表面温度との温度差が120℃以下となるように温度制御した実施例1〜5は、何れも固体電解質管の破損が認められなかった。これに対し、前記温度差が120℃を超える比較例1〜5は、図7に示すような、薄肉の直管部1bから厚肉のフランジ部1aへと肉厚が変化する部位30にクラックが発生していることが確認された。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、開口端外周にフランジ部が一体的に形成され、当該フランジ部の外表面に絶縁皮膜が形成されたナトリウム−硫黄電池用固体電解質管を製造するにあたり、溶射による絶縁皮膜形成の際のフランジ部と直管部との温度差に起因するクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法における溶射の要領を示す概要図である。
【図2】フランジ部からフランジ部下方の直管部に向かって漸次肉薄になるように肉厚に勾配を設けた固体電解質管を示す部分断面図である。
【図3】フランジ部からフランジ部下方の直管部に向かって漸次肉薄になるように肉厚に勾配を設けた固体電解質管を示す部分断面図である。
【図4】フランジ部の外表面全域に溝を設けてプラズマ溶射を行った状態を示す部分断面図である。
【図5】フランジ部を有するナトリウム−硫黄電池用固体電解質管と、その固体電解質管の陽極容器等への取り付け状態を示す断面図である。
【図6】従来のナトリウム−硫黄電池用固体電解質管と、その固体電解質管の陽極容器等への取り付け状態を示す断面図である。
【図7】比較例におけるクラックの発生部位を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1…固体電解質管、1a…フランジ部、1b…直管部、3…絶縁皮膜、5…パイプ、7…Oリング、8…保持治具、9…溶射ガン、11…空冷用ノズル、13…溝、15…支持金具、17…支持金具、19…陽極容器、21…陰極蓋、41…固体電解質管、43…絶縁リング、45…支持金具、47…支持金具。

Claims (5)

  1. 上端が開口した有底円筒状の固体電解質管の開口端外周に、当該固体電解質管を陽極容器に取り付けるためのフランジ部を一体的に形成し、当該フランジ部の外表面に、溶射によりアルファアルミナよりなる絶縁皮膜を形成するナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法であって、
    前記絶縁皮膜の溶射直後における前記フランジ部の表面温度と前記フランジ部下方の直管部の表面温度との温度差が120℃以下となるように温度制御するとともに、前記固体電解質管の内径よりも若干小さな外径を有し、前記固体電解質管と同等の熱膨張率を有するアルミナ製のパイプの外周に耐熱性のOリングを装着してなる保持治具を、前記固体電解質管内に挿入し、当該保持治具で前記固体電解質管を内部から保持した状態で溶射を行うことを特徴とするナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法。
  2. 前記フランジ部から前記フランジ部下方の直管部に向かって漸次肉薄になるように肉厚に勾配を設けた請求項1に記載のナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法。
  3. 前記フランジ部の外表面全域に、その表面形状がローレット目、切削目及びヤスリ目のうちのいずれかとなるような溝を設け、プラズマ溶射にて前記絶縁皮膜を形成する請求項1又は2に記載のナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法。
  4. 前記絶縁皮膜の厚さを100〜300μmとする請求項1ないしのいずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法。
  5. 前記絶縁皮膜の気孔率を5〜15%とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池用固体電解質管の製造方法。
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