JP3599462B2 - 流体封入型防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車のエンジンマウント等として用いられる略円筒形の防振装置、特に、内部にエチレングリコール等の液体が封入された流体封入型防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車のエンジンマウントとして、略円筒形をなす流体封入型防振装置が従来から多用されている。これは、内筒と外筒との間のゴム体の内部に、弾性変形可能な2つの液室を設けるとともに、両液室を外筒内周に沿ったオリフィス通路によって連通したものであって、液室の拡張弾性とオリフィス通路の等価質量とによる共振作用によって振動を低減するようになっている。
【0003】
ここで、上記オリフィス通路は、従前は、ゴム体の外周面に凹溝を金型成形しておき、ここに外筒が嵌合することによって、通路状に画成するようにした構成が一般に採用されていた。しかし、このようにゴム体に直接オリフィス通路を形成すると、オリフィス通路を囲むゴム体自体が弾性変形してしまうため、所期の振動低減作用が正しく得られない。
【0004】
そこで、近年では、ゴム体外周部に金属等からなる別体のオリフィス形成部材をはめ込み、この剛性の高いオリフィス形成部材にオリフィス溝を設けて、外筒内周面との間にオリフィス通路を形成するようにした構成が提案されている(例えば特公平6−81978号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような液体封入型防振装置における外筒は、組立工程の最終段階で、径が縮小するように絞り加工がなされ、ゴム体等に堅固に一体化されるので、金属製のオリフィス形成部材を用いた場合でも、外筒内周面とオリフィス形成部材外周面とは、一応は密接状態となる。しかしながら、金属面同士が直接接触していると、その間のシール性は非常に不安定であり、流体の漏洩によりオリフィス通路が実質的に短絡した状態となってしまう可能性がある。
【0006】
なお、上記特公平6−81978号公報の装置では、オリフィス形成部材の外周に円筒状のゴム薄膜を被せ、このゴム薄膜外周に外筒を嵌合するようにして、シール性の確保を図っているが、このように別体の円筒状ゴム部材を用いるのでは、部品点数が多くなり、工数やコストが嵩んでしまう。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明は、金属製の内筒と、この内筒を囲む金属製の外筒と、上記内筒と上記外筒との間に位置し、かつ両端部が上記外筒内周に嵌合しているとともに、軸方向の中間部に凹部を有し、かつ一つあるいは複数の開口部を有する中間筒と、内筒と外筒との間に介装され、かつ中間筒と内筒とに一体に接合して成形されたゴム体と、このゴム体に形成された複数の液室と、略円弧形をなし、上記中間筒の凹部に嵌合装着されるとともに、外筒に接する外周面を有し、この外周面に、液室同士を連通するオリフィス通路となるオリフィス溝が凹設された金属製のオリフィス形成部材と、を備えてなる流体封入型防振装置において、
上記オリフィス形成部材と上記外筒との接触面に、弾性材料からなるコーティング層を設けたことを特徴としている。
【0008】
上記コーティング層は、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、弾性を有するナイロン系樹脂等からなり、オリフィス形成部材の外周面に、例えば、転写、吹き付け、はけ塗り等の方法により塗布される。
【0009】
このコーティング層によって、オリフィス形成部材と外筒との接触面が確実にシールされ、オリフィス通路からの流体の漏洩が生じない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図2および図3は、この発明に係る円筒形の流体封入型防振装置の一実施例を示している。図において、1は図示せぬロッドを介して例えば車体側に取り付けられる金属製の内筒、2は図示せぬブラケットを介して例えばエンジン側に取り付けられる金属製の外筒である。内筒1と外筒2との間には、ゴム体3が介装されている。また、内筒1と外筒2との間に、金属製の中間筒4が配設されており、上記ゴム体3は、この中間筒4と内筒1とに一体に接合した状態に成形されている。つまり、中間筒4と内筒1とに一体に加硫接着されている。そして、ゴム体3と一体となった中間筒4の外周に外筒2が嵌合され、かつ内周側へかしめられて一体化されている。
【0012】
上記ゴム体3は、その上部に、図3に示すように、両側壁を残して内筒1の付近まで窪んだ凹部5が設けられている。また、下部には、軸方向に貫通したスリット状の空隙部6を有するとともに、この空隙部6より外周側に、同様の凹部7が設けられている。これらの上下の凹部5,7によって、図1に示す軸方向中間部の断面では、内筒1と外筒2とを主に支持する略V字形の主弾性部8が残された形となっている。そして、各凹部5,7によって、それぞれ第1液室9および第2液室10が構成されている。また、上記ゴム体3の下部には、第2液室10の径方向の幅を部分的に狭めるように外周側に延びたストッパ部3aが形成されている。
【0013】
また外筒2の上部内周面に沿って略180゜の円弧形をなすオリフィス形成部材11が配設されている。このオリフィス形成部材11は、アルミニュウムダイキャストからなり、外筒2に接する外周面にオリフィス溝12が凹設されている。このオリフィス溝12によって、第1液室9と第2液室10とを互いに連通するオリフィス通路13が構成されている。これらの液室9,10およびオリフィス通路13には、エチレングリコールやシリコンオイル等の液体が充填されている。
【0014】
上記中間筒4は、図4に示すように、軸方向の両端部4a,4aがそれぞれ短い円筒状をなしているとともに、各端部4a,4aを互いに連結する3つの連結片14,15,16のみを残すように、3カ所に開口部17,18,19が形成されている。そして、各連結片14,15,16は、内周側に略コ字状に凹んでいる。ここで、第1連結片14と第2連結片15は、互いに対称形状をなし、それぞれゴム体3の主弾性部8に対応して位置している。この第1連結片14と第2連結片15が内周側に凹んでいることにより、中間筒4の軸方向の中間部に、上記オリフィス形成部材11両端部が嵌合する一対の凹部20,21が構成される。また残りの第3連結片16は、周方向の幅が比較的狭く形成され、図2,図3に示すように、ゴム体3のストッパ部3a内に埋設されている。なお、中間筒4を金属板から形成し得るようにするために、第3連結片16のみが別部材として構成されており、その両端の取付片16a,16aを、環状に巻回した端部4a,4aの内周面に溶接することにより、中間筒4を円筒状に構成している。
【0015】
図1は、オリフィス形成部材11を単体で示したもので、このオリフィス形成部材11は、前述したように、アルミニュウムダイキャストからなり、一定の肉厚を有する半円筒形をなしている。その肉厚は、上述した第1,第2連結片14,15による凹部20,21の半径方向の深さに等しい。そして、円弧の中央部には、内筒1の過度の変位を阻止するためのストッパ部22が台形状に突出形成されている。このストッパ部22は、組付状態では、中間筒4の第1,第2連結片14,15間の開口部17を通して第1液室9内に突出する。
【0016】
また外筒2と接する外周面に凹設されたオリフィス溝12は、周方向に沿っており、かつ全体としてU字状をなすように、オリフィス形成部材11の一端部でUターンしている。つまり、オリフィス溝12は、一端12aがオリフィス形成部材11の端面に開口し、ここで第2液室10に連通しているとともに、他端が半径方向の連通孔12bに連続しており、該連通孔12bを介して第1液室9に連通している(図2参照)。
【0017】
ここで、上記オリフィス形成部材11の外周面には、外筒2との接触面をシールするために、コーティング層23が設けられている。このコーティング層23は、ある程度の耐熱性を有する適宜な弾性材料、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、等のゴム材料、あるいは弾性を有するナイロン系樹脂等の合成樹脂材料からなり、アルミニュウム合金からなるオリフィス形成部材11の表面に塗布されている。
【0018】
図5は、転写によるコーティング層23の形成方法を説明したもので、プレート24の表面に、液状のコーティング材料を塗り広げておき、その上で、オリフィス形成部材11を、その外周面がプレート24表面に接するように転して、外周面にコーティング材料を転写する。この方法によれば、コーティング材料の付着が好ましくないオリフィス溝12等をマスキングせずに、必要な外周面のみにコーティング層23を均一な厚さに形成することができる。なお、コーティング材料が確実に付着するように、必要に応じて、オリフィス形成部材11表面にサンドブラスト等による粗面加工を施すとよい。
【0019】
また、スプレーによる噴きつけ、あるいはハケ塗りによって塗布することも可能である。
【0020】
上記の流体封入型防振装置の製造工程を簡単に説明すると、まず所定形状に形成した内筒1と中間筒4とを成形金型内にセットし、ゴム体3の成形および加硫を行う。また、所定形状に形成したオリフィス形成部材11には、コーティング層23を予め塗布しておく。そして、このオリフィス形成部材11を、ゴム体3と一体となった中間筒4の凹部20,21にはめ込み、かつこのものを液中において外筒2内に挿入する。次に、外筒2を全体に内周側へ加圧して、径を縮小させ、中間筒4と堅固に一体化させる。また、このとき、外筒2内周面がオリフィス形成部材11外周面に密接することになる。これによって、内部に液体が封入された防振装置が完成する。
【0021】
上記のように、オリフィス形成部材11の外周面にシリコンゴム等からなるコーティング層23を設けた上記実施例の流体封入型防振装置においては、オリフィス通路13を構成するオリフィス形成部材11が剛性の高い金属製であり、液圧の変動による弾性変形を生じないので、所期の振動低減特性を正確に確保することができる。そして、この金属製のオリフィス形成部材11と外筒2内周面との間が、コーティング層23によって確実にシールされ、オリフィス通路13からの液体の漏洩、ひいては特性の低下を確実に防止できる。また個別のシール部材を用いずに、単にコーティング層23を塗布形成するだけであるので、部品点数の増加がなく、工程の増加も最小限にできる。
【0022】
また、上記実施例では、オリフィス形成部材11側のみにコーティング層23を設けたが、オリフィス形成部材11と外筒2の双方にコーティング層23を設けることも可能である。図6は、外筒2内周面に設けたコーティング層23の一例を示すもので、外筒2の軸方向中間部に、帯状にコーティング層23を塗布してある。なお、スプレーにより吹き付ける場合には、外筒2の軸方向の全体に塗布しても勿論よい。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、この発明に係る流体封入型防振装置によれば、オリフィス通路を構成するオリフィス形成部材が剛性の高い金属製であり、液圧の変動による弾性変形を生じないので、所期の振動低減特性を正確に確保することができる。そして、この金属製のオリフィス形成部材と外筒内周面との間が、コーティング層によって確実にシールされるため、オリフィス通路からの液体の漏洩を防止でき、ひいては特性の低下を確実に防止できる。また個別のシール部材を用いずに、単にコーティング層を塗布形成するだけであるので、部品点数の増加がなく、工程の増加を最小限にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る流体封入型防振装置におけるオリフィス形成部材の斜視図。
【図2】この発明に係る流体封入型防振装置を示す図3のB−B線に沿った断面図。
【図3】同じく図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】中間筒の斜視図。
【図5】コーティング層を転写する方法を示す説明図。
【図6】外筒にコーティング層を設けた実施例を示す斜視図。
【符号の説明】
1…内筒
2…外筒
3…ゴム体
4…中間筒
9…第1液室
10…第2液室
11…オリフィス形成部材
12…オリフィス溝
13…オリフィス通路
23…コーティング層
Claims (1)
- 金属製の内筒と、この内筒を囲む金属製の外筒と、上記内筒と上記外筒との間に位置し、かつ両端部が上記外筒内周に嵌合しているとともに、軸方向の中間部に凹部を有し、かつ一つあるいは複数の開口部を有する中間筒と、内筒と外筒との間に介装され、かつ中間筒と内筒とに一体に接合して成形されたゴム体と、このゴム体に形成された複数の液室と、略円弧形をなし、上記中間筒の凹部に嵌合装着されるとともに、外筒に接する外周面を有し、この外周面に、液室同士を連通するオリフィス通路となるオリフィス溝が凹設された金属製のオリフィス形成部材と、を備えてなる流体封入型防振装置において、
上記オリフィス形成部材と上記外筒との接触面に、弾性材料からなるコーティング層が設けられており、このコーティング層は、上記オリフィス形成部材の外周面に設けられていることを特徴とする流体封入型防振装置。
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JP3018196A JP3599462B2 (ja) | 1996-02-19 | 1996-02-19 | 流体封入型防振装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP3018196A JP3599462B2 (ja) | 1996-02-19 | 1996-02-19 | 流体封入型防振装置 |
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JPH09222149A JPH09222149A (ja) | 1997-08-26 |
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1996
- 1996-02-19 JP JP3018196A patent/JP3599462B2/ja not_active Expired - Fee Related
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