JP3598920B2 - 電子線照射方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層構造よりなる被処理物を形状を損なう事なく電子線照射処理する方法である。特に電子線によって分解ガスを発生する材料の両面を被膜によって覆った多層構造被処理物の電子線照射方法に関する。
【0002】
電子線を発生するのは電子線照射装置である。真空中で熱電子を発生するフィラメントカソード、電子を加速する加速電極、加速電源、電子線を真空から大気中へ出すための照射窓、照射窓に張られた窓箔、被処理物を搬送する搬送機構、搬送機構を覆うX線遮蔽された照射室等よりなる。被処理物は照射室の入口から搬送機構に乗せられ照射窓の直下へ運ばれ、ここで電子線照射処理を受ける。その時にX線が出る。また熱も出るから窓箔の周辺には冷却用の気体が吹き込まれる。X線によってオゾンができるので不活性ガスを吹き込むことが多い。
【0003】
目的は高分子架橋、塗膜のキュア、医療部品殺菌など多様である。加速エネルギーは数MeV〜100keV程度である。300keV以上の場合は走査型の電子線照射装置とする事が多い。300keV以下であると走査機構のないエリア型(非走査型)の装置とする事が多い。
【0004】
本発明は高分子の架橋に関することを問題にする。だから以下に架橋について述べる。加速された電子線は、炭素、水素、酸素、窒素などの連鎖よりなる高分子の酸素、水素などの原子に作用して隣接高分子間に新たな結合を作る。高分子間の横の結合であるから架橋という。プラスチック、ゴムなどは電子線照射によって架橋反応を起こし高分子構造が強化される。この時一部の水素、酸素原子などが分解し結合鎖からとれるので、これがガスとなることがある。ほとんどは水素分子(H2)ガスである。水蒸気(H2O)も僅かに含まれる。従来の被処理物は単層の構造物であった。被処理物が単層の構造で浅く電子線照射したものならば分解ガスは容易に表面へ出てゆき表面から排除される。冷却用X線防止用の不活性ガスと混ざって外部へ取り出される。
【0005】
しかし、単層でないシート部材、クッション部材、ラミネート部材など複合層を持つ対象物をも電子線架橋したいという要求が寄せられるようになってきた。基材を薄いフィルムによって覆った多層被処理物である。フィルムがガス透過性の良い物であれば問題ない。分解ガスはフィルムを通って外部へやすやすと逃げてくれるからである。
【0006】
しかし、ガスを通しにくいフィルムで基材が覆われている場合は電子線照射で生じた分解ガスがフィルムに遮られ外部へ排除され難い。分解ガスが排除されないと基材内部や基材・フィルム境界に溜まる。ガスが多層構造被処理物内部に溜まるとフィルムや基材が部分的に膨出し材料を醜く変形させることがある。本発明はこれを問題にする。
【0007】
【従来の技術】
電子線照射の被処理物には、電線、熱収縮チューブ、フィルム、ゴムシートなど多様なものがある。様様な形状をしているが、電子線照射を施す部分は表面に露出している。電線の場合は表面の被覆高分子に架橋反応を引き起こす。分解ガス(殆ど水素ガス)は表面から逃げる。熱収縮チューブの場合も表面で架橋反応が起こり、ガスが表面から出るから問題ない。フィルムの場合もフィルム高分子を架橋させるのでガスもすぐに除去される。材料変形の問題がない。ゴムシートの場合も表面で反応がおこり、表面からガスが出るのですぐにガスは消失する。これも問題ない。
【0008】
しかし、フィルム/基材/フィルムのような三層構造を持つような新規な材料に電子線照射をするという要望が出てきた。この場合、基材で架橋反応が起こり分解ガスがフィルムによって遮断されるという問題がある。分解ガスの連続的排除がなされないと被処理物が膨出変形し望ましくない。このような要求自体が新規であって基材の膨出変形という問題は実際にはいまだに起こっていない。実際に多層構造体を被処理物として電子線照射した実績はない。だから膨出変改は問題として当業者に意識されていない。だから従来技術として挙げるようなものはない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の被処理物は、電子線照射を必要とする部分が表面に露出した単純な形状であった。照射により発生した分解ガスは表面から逃げ、被処理物の内部に滞留しない。だから電子線照射場(照射窓の下)に被処理物を通過させるだけで良かった。
【0010】
しかし被処理物の両面が金属やプラスチックなどでラミネートされた多層構造体では電子線照射を必要とする部分(基材)が内部にある。図1に三層構造の被処理物を示す。基材1は高分子よりなり、これが電子線照射を必要とする。基材1の両側に薄膜(ラミネート物質)2、3が貼られている。このような複雑な形状であると、電子線照射場に被処理物を単に通過させるだけでは足らない。照射によって発生した分解ガスが被処理物とラミネート(薄膜)物質の間に滞留する。図2にその様子を示す。電子線4によって分解ガス5が基材1の内部で発生し、拡散で薄膜2に向かって進む。
【0011】
しかし薄膜からすぐにガスが出ない。そのため分解ガスによる気泡ができる。図3にその様子を示す。薄膜(フィルム)2と基材1の間に気泡6が形成され膨出部7が発生する。或いはラミネート物質との間の密着性が劣化する。甚だしい時はラミネート物質が剥離する。このように容易に排除できない分解ガスが問題を引き起こす。ガス滞留のため製品形状が損なわれ工業化が困難であった。
【0012】
本発明は、基材をラミネート物質で覆った多層構造被処理物に電子線照射した場合に分解ガスによって被処理物の変形膨出剥離などの問題を解決することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
電子線照射による被処理物でのガス発生量Qは、必要線量と形状、材質により実験によって求めることができる。また室温より高い雰囲気では、高分子の分子運動が活発になるため、放射線化学反応が向上する。ために高温ではガス発生量は多くなる。
【0014】
被処理物の両面がラミネートされている場合、発生したガスが薄膜中を拡散し表面に到達して初めて除去される。拡散により薄膜中を拡散散逸する量Rは、放置時間と形状と材質によって異なる。しかし単位時間あたりの散逸量Rは実験によって求めることができる。
【0015】
本発明は、ガス発生量Qに比べてガス拡散量Rが多い電子線照射条件を見い出し、被照射物を冷却しながら、多層被処理物に電子線を照射し、発生ガスが被処理物中に滞留しないようにする。常にガス発生量Qより拡散量Rを大きくすればガスは被処理物に残留しない。被処理物の膨出や変形、被膜剥離という事は起こり得ない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成に関わる技術内容、事項について詳細に説明する。
(1)被照射物
被照射物としては、表面の平滑性を向上するためにプラスチックシートの両面にラミネートしたゴムシートや、電気・電子部品として使用される金属箔を両面にラミネートした樹脂シートなどがある。
高分子に電子線照射を行う事により、分子間の架橋反応を生じ三次元構造とする事ができる。それにより耐熱性など高分子物性を改善する。
【0017】
(2)ガス発生量
高分子に電子線を照射すると、イオン化や励起を経て、架橋や崩壊がおこる。また同時に分解ガスが発生する。高分子への反応にともなう分解ガス発生量Qは、その材質に応じたガス発生量のG値によって求めることができる。
【0018】
ここでガス発生のG値というのは、電子線のエネルギー100eV当たりに発生したガスの分子数として定義される。現象論的な値である。対象物によって違う。ガスの種類によっても違う。しかし、ほとんどは水素であるから水素だけを考えればよい。また温度によっても異なる。温度が上がるとG値も上がる。
【0019】
G値は実験によって求めるか、概略の値であれば文献によって知ることもできる。電子線照射量とG値とから単位重量当たりの水素ガス発生量を計算できる。これに被処理物の質量をかけると全体のガス発生量が分かる。
【0020】
また、ガス発生量Qは照射時の温度によって異なる。被照射物の温度が高いほど高分子の分子運動が活発になるためガス発生量Qが多くなる。ガス発生を減らすためには被処理物を冷却するのがよい。
【0021】
具体例によって説明する。ポリエチレンに電子線照射を行うと発生するガスの種類は、99%以上が水素である。20℃における水素ガスのG値を測定したところ、それは2.5であった。つまり電子線100eVあたり水素2分子が生成されるということである。
【0022】
線量単位について述べる。1radは1gの対象物へ100ergのエネルギーを照射するというものである。被処理物への放射線量の国際単位はGy(グレイ)である。100rad=1Gyである。つまりグレイ(Gy)は1gに10000ergのエネルギーを与えたというものである。104Gy=1Mradである。しかしGyはあまり使われないから、ここで線量はMradで表現する。これは1g当たり108erg=10J(joule)ということである。
【0023】
単位線量(Mrad)当たりの水素ガスの発生量Qを計算する。100eV当たりにG個のガス分子ができる。1erg=6.24×1011eVである。だから1ergで6.24×109×G個のガス分子が生成される。1Mradは1gあたり108ergのエネルギーを意味するから、1Mradで発生するガス分子の数は、6.24×1017×G(個/g)である。これは分子の数である。水素ガスなどは個数、重量などで表現することもできるが通常は体積(cm3)で表現する。1molのガスはアボガドロ数L0の分子からなる。アボガドロ数はL0=6.02×1023、標準状態での1molガスはv0=22400cm3であり、これがL0個の分子を含むのであるから、1個当たりの体積はv0/L0である。これを先ほどの値にかけると1Mrad当たり分解ガスの体積qが求まる。
【0024】
q=6.24×1017×Gv0/L0 (1)
である。
【0025】
v0/Lを代入して、
【0026】
q=6.24×1017×22400G/6.02×1023
=2.32×10−2G (cm3/g) (2)
【0027】
ポリエチレンが被処理物の場合、G=2.5であるから、1Mrad当たりの水素ガス発生量は、
【0028】
q=5.8×10−2 cm3/g (3)
【0029】
と計算することができる。これは被処理物1g当たりのガス発生量である。被処理物の重量によってガス発生量は変わる。例えば、20cm×20cm×0.1cmのポリエチレンシート(比重0.92)は、質量m=36.8gである。これに、1Mradの電子線を照射した時の水素ガス発生量は、Q0=36.8、q=2.13cm3である。30Mradの電子線照射の場合はQ(30Mrad)=64cm3。20Mradの電子線照射の場合はQ(20Mrad)=42.6cm3である。
【0030】
G値というのは現象量であって実験によって相違する量である。単純にエネルギー100eV当たりの発生ガス分子数といっても他に条件がいろいろとあるからである。しかし大体のガス発生量をこれによって見積もることができる。さて、20Mradで40cm3ものガスが出る。シート面積は400cm2であるから単位面積当たり0.1cm3の値になり厚みに直すと0.1cmに達する。全くガスが逃げないとすると、被覆と基材の間に1mmもの気泡が生ずることになる。実際には被覆(ラミネート)中を拡散してガスは逃げるから、それだけ大きい気泡はできない。それではどれだけガスが拡散するか?
【0031】
(3)ガス拡散量
ガス拡散量の測定はJIS Z1707に記載されている方法によって行うことができる。また文献によっても知る事ができる。ラミネート層(薄膜層、被覆層)をガスが透過するのは濃度差を平衡に近づけようとする拡散の作用である。図4に示すように媒体中にある媒質濃度の差がある時は、濃い方から薄い方へと媒質が巨視的に流れる。この流れは確率的な素運動の集積であって媒質の単位面積を通した流れをJによって表現し、濃度をc、拡散係数をKとすると、流れJは、濃度の勾配にKをかけて−を付けたものである。
【0032】
J=−K(dc/dx) (4)
【0033】
拡散係数というのは単位長さあたり1の濃度差があった時に発生する流れ量の値として定義される。薄膜の中での濃度cは不明であるが、薄膜の中(基材側)では濃度が1(つまりガスは全部水素ガス)である。c=1というのは少し分かりにくいがガスの全体の体積(cm3)のうち全部が水素(cm3)なのでc=1なのである。ガスの中にガスが含まれる場合は分圧によって表現すべきである。しかし、流量Jをcm3/secによって表現したいので、cがcm3/cm3になってしまうのである。分母は媒体容積、分子は媒質容積であって打ち消しあうので理解しにくい。媒体の全体も媒質も同じ体積を単位にしているからcは無次元数になり最大値は1となる。外部(空気側)では濃度が0である。(4)を薄膜の厚みLの間で積分すると、
【0034】
∫Jdx=−K(c(空気)−c(基材)) (5)
【0035】
となる。Jはこの間で一定値であるから右辺は単にJLとなる。c(空気)=0、c(基材)=1であるから、
【0036】
J=K/L (6)
【0037】
となる。Jの単位は(cm3/sec)であり、Kの単位は(cm2/sec)である。単位時間の水素ガス流量Rは単位面積当たりJなのであるから、全面積Aでは、JにAをかけて、
【0038】
R=JA=KA/L (7)
【0039】
となる。ここでAは被膜の面積(cm2)であり、Lは被膜(被覆、ラミネート)の厚みである。ガス拡散量は被膜の性質を反映するものであり、前項のガス発生量が基材の性質によるものと違う。ここでは再びポリエチレンについて考える。前項は基材としてのポリエチレンであったが、ここではラミネートとしてポリエチレンを使った場合ということである。拡散定数はK=3.7×10−7cm2/secである。これはある条件での測定値であり条件によって異なるが、これによって拡散量を評価すると、サイズは20cm×20cm×0.1cmとすると、
【0040】
R=1.48×10−3cm3/sec (8)
【0041】
である。前節で、30Mrad照射時のポリエチレン基材から64cm3の水素ガスが発生するという計算を述べた。被膜も同じ寸法、同じ材質だとすると、これだけの水素を抜くには、12時間かかることになる。実際には基材と被膜が同じ厚さ、同じ材質ということはない。ポリエチレンが被膜であって0.01cmの厚さとするとRが10倍になり、所用時間は1.2時間となる。
【0042】
(4)電子線照射条件
高分子の架橋に必要な線量は、材質および使用目的によって異なる。
一般に照射条件としては、加速電圧は100kV〜5000kV、線量は1〜100Mradの範囲である。
また照射による被照射物の温度上昇は、線量に応じて増大する。
【0043】
被照射物に入射した電子の大部分は熱エネルギーになる。線量単位としてMradを用いている。radは1g当たり100ergのエネルギー照射を意味し、Mradは1g当たり10Jのエネルギーを意味する。だから線量というのはエネルギーではない。線量は1g当たりの照射パワーである。対象物の質量mを線量にかけると全エネルギーとなる。線量がエネルギーそのものでないことに注意すべきである。4.2J=1calであるから、Mradを熱量で表現すると1Mrad=2.4cal/gとなる。
【0044】
電子線のエネルギーの一部は架橋反応を起こす化学エネルギーとなる。が、ほとんどは熱になる。従って被照射物の温度上昇は、2.4×線量/比熱によって算出することができる。線量をM(Mrad)、比熱をcvで表現すると、温度上昇はΔ=2.4M/cv(℃)である。
【0045】
例えば、ポリエチレンに20Mradの照射をした場合、ポリエチレンの比熱が0.5(cal/g)であるので、その温度上昇は2.4×20/0.5=96℃である。この場合ポリエチレンは基材として扱われているのである。被覆ではない。ポリエチレンは(2)では基材、(3)では被覆、(4)では基材として扱われている。別の役割を担うものであるから混同してはならない。
【0046】
このように電子線照射によってかなり温度が上昇するので、被処理物は冷却しながら電子線照射するのが望ましい。温度が上がりすぎると基材と被覆が劣化するので、これを防ぐという意味がある。
【0047】
またガス発生からみても、温度が上昇するとガス発生のG値も増大するので、この意味からも冷却は必要である。すでに述べたようにG値というのは現象論的な量で、様々の条件に依存する。温度によっても、加速電圧によっても線量によっても変わる。温度が上がると架橋反応が起こり易くなり水素ガス発生も多くなる。
【0048】
(5)分割照射の条件
これまで(1)〜(4)で説明したものは本発明に特有のものではない。冷却しながら電子線を浴びせるというのは本発明の特徴の一つである。被照射物は三層構造で新規な対象であるが発明の骨子でない。照射量は架橋の必要性から決まるもので本発明を特徴付けるものでない。
【0049】
本発明は分割照射というものを提唱する。分割照射に本発明の特徴がある。だから、ここ(5)に至って本発明の特徴が初めて鮮明に表れるのである。ただに分割照射するのでない。1回の照射によって発生するガス量をQとして、休止期間Tの間に被覆を拡散して消失するガス量をSとし、QがSより小さくなるように休止期間T、分割数N、1回当たりの線量Mを決めるのである。つまり、
【0050】
Q< S (9)
【0051】
に本発明の思想が簡明に表される。冷却しながら、分割電子線照射するのである。冷却するのは1回当たりの分解ガス量Qを減らすためである。
【0052】
本発明は被照射物を冷却しながら、ガス発生量(Q)に比べてガス拡散量(S)が多い条件にて(Q< S)照射する。これに尽きると言ってよい。
方法はこれまで述べて来たことによりまとめると、以下のようになる。
【0053】
[ガス発生量] G値×被照射物の重量×線量
[ガス拡散量] 被照射物の面積×照射時間間隔×K値/厚み
従って、G値×被照射物の重量×線量<被照射物の面積×照射時間間隔×K値/厚みの条件であれば、照射により発生した分解ガスが、被照射物とラミネート物質の間に滞留することがないので、製品形状が損なわれることはない。
【0054】
用語で表現すると上の通りである。ガス拡散量は質量と直接の関係はない。ガス発生量は対象物の質量mに比例する。対象物はシート状であるから、面積Aと厚みDの積に、密度ρを掛けることによっても与えられる。m=ρADである。
【0055】
上に述べた事を記号を用いて、より正確に表現しよう。
必要な総線量をM(Mrad)とする。これは20Mradとか30Mradとかかなり大きい。これは対象物によって決まる。自由に選択できないパラメータである。分割数をNとする。休止期間をTする。NとTは自由に選べる自由パラメータである。
【0056】
1回当たりの線量は(M/N)である。被処理物の単位重量あたり照射1回当たりのガス発生量Qは(1)のq(1Mradのガス発生量)に対象の質量mと(M/N)を掛けることによって与えられるから、
【0057】
Q=6.24×1017×mGv0M/NL0 (10)
である。
【0058】
ここでGはG値であり100eV当たりの発生ガス分子数、v0は1モルの体積で22400cm3である。L0はアボガドロ数で6.02×1023である。これらを入れた式が(2)であるが、Qは結局、
【0059】
Q=2.32×10−2mGM/N (cm3) (11)
となるのである。
【0060】
一方被覆を抜けるガス量Sを考える。照射の休止期間をTとする。単位時間の逃げ量Rは(7)式で与えられる。休止期間Tの間で放散するガス量をSとするとこれはτRである。休止期間Tでのガス放散量Sは、
【0061】
S=Rτ=TJA=TKA/L (12)
【0062】
によって与えられる。Jは単位面積当たり流量、Kは拡散係数(cm2/sec)、Aは被覆の面積、Lは被覆厚みである。1回当たりのガス発生量Qを、1回当たりの放散量Sより小さくする、というのが本発明の主張である。
【0063】
分割照射を旨とする本発明の思想は端的に
Q<S (13)
【0064】
によって表現される。より具体的に述べると、
【0065】
2.32×10−2mGM/N<TKA/L (14)
あるいは、分母をはらって、
【0066】
2.32×10−2mGML<TKAN (15)
【0067】
と書くこともできる。中間層の基材の質量mはm=ρADであるから、これを代入して、面積Aを除く事もできる。分割照射の条件が面積Aによらないということは考えれば当然のことである。
【0068】
2.32×10−2ρDGML<TKN (16)
【0069】
ρは基材密度、Gは基材のG値、Mは線量(Mrad)、Kは被覆の拡散係数、Nは照射の分割数である。Dは基材厚み、Lは被覆厚み、Tは照射休止期間である。
【0070】
具体的にはQ=Sとなる回数をNcとすると、Nc以上に分割して照射せよということである。
【0071】
Nc=2.32×10−2mGML/TKA (17)
或いは、
Nc=2.32×10−2ρDGML/TK (18)
【0072】
という臨界回数Ncというものを考える。これは整数とは限らない。そして本発明では電子線をN回に分割照射するということでNはNcより大きい。
【0073】
N>Nc (19)
【0074】
これが本発明の簡潔明瞭な表現である。同じ事を図10によって直観的に説明する。縦軸は一回当たりのガス発生量Qである。横軸は照射回数Nである。総照射線量Mは一定だから総ガス発生量も一定である。1回当たりの照射線量と照射回数Nは反比例する。だから分割数Nと1回当たりのガス発生量Qは反比例する。ワカは反比例のグラフである。QN=WのWは総ガス発生量である。分割数Nが大きいほど1回当たりのガス発生量Qは小さくなる。
【0075】
休止期間Tにおける拡散量をSとする。Q=SとQN=Wの交差する点をヨとする。ヨ点は臨界分割回数Ncを与える。これ以上の分割回数Nを選べば、1回当たりガス発生量Qは、拡散量Sより小さくてガスが被覆内に残留しない。N>Ncは許容範囲である。反対にNc未満の分割回数Nを選べば(ワヨ間)、1回当たりガス発生量Qは、拡散量Sより大きくてガスが被覆内に残留し被処理物を変形させ膨出させる。つまりN<Ncは禁止範囲(ワヨ)である。
【0076】
臨界回数Ncは、G値に比例する。G値は100eVあたり分解ガス分子数だからこれは当然のことである。Ncは総線量Mに比例する。総線量が大きいと分割回数が増えるというのも当たり前のことである。Ncは被覆厚みLに比例する。被覆厚みLが厚いほど放散が遅いのだからこれも当たり前である。Ncは休止期間Tに逆比例する。休止期間Tを長く取れば、1回の放散量が増えるから分割数が減るのはしばし当然と言うべきであろう。Ncは拡散係数Kに反比例する。拡散係数が小さい程拡散が遅く分割数を増やす必要がある。これも当たり前と言える。Ncは被覆面積Aに逆比例する。面積が大きいと放散も速いから分割数は節減できる。これも当然のことである。Ncというものが(17)で与えられるが、常にこれを計算せよということではない。G、Kのような現象論的なパラメータがあり、G、Kは必ずしも分からないこともあるからである。
【0077】
GとKがわからないと本発明は実施できないのか?というともちろんそうではない。総線量M(Mrad)を決めて、分割数N、休止期間Tを様々に変えて分割照射し、多重構造試料の膨出変形を見ればよいのである。変形しない分割数の下限をもってNcと経験的に決めればよいことである。
【0078】
同じ事は休止期間Tと放散期間τの関係によっても説明できる。放散期間τというのは1回当たりのガス発生量Qが被覆を通って外部に放散されるのに要する時間である。これはQ=Sとなる時の時間Tをτとすることによって求められる。つまり(17)、(18)から、
【0079】
τ=2.32×10−2mGML/KAN (20)
或いは、
【0080】
τ=2.32×10−2ρDGML/KN (21)
によって放散期間τが定義される。
【0081】
図8はτが休止期間Tより小さい場合を示す。電子線照射によってQ1のガスが発生する。イロのようにこれが被覆を通って抜けてゆく。ロではガスはない。次の電子線照射でまたQ1のガスが生じる。その繰り返しだからガスが残留しない。一回当たりガス発生量Q1が小さいので放散期間τ1が小さく、休止期間Tより小さくなる。
【0082】
許容条件 τ1<T (22)
【0083】
である。これは図10のヨカ間に対応する。Q<Sということと(22)は同値である。照射回数Nを決めることによってτも決まってくる。(20)、(21)からτを計算できる。
【0084】
これもG、K等の値がわからなければ適用できないように見えるがそうでない。Q1のガスが放散する時間τ1は実験によって求めることができる。そのτ1より大きくなるように休止期間Tを決めればよいのである。
【0085】
図9はτが休止期間Tより大きい場合を示す。電子線照射によってQ2のガスが発生する。休止期間Tにトチのようにガスが抜けても次の照射時にガスがチだけ残っている。ここでまた電子線を照射するからQ2のガスが新たに発生する。リヌというように減ってもまだヌだけ残る。ガス量Q2が大きすぎ、また休止期間Tが短すぎてガスが回を追うたびに溜まってゆく。残留ガスのために被処理物が変形し、一部が膨出する。つまりτ2>Tは禁止される。
禁止条件 τ2>T (23)
である。
【0086】
【実施例】
3つの実施例と、対応する3つの比較例を述べる。図6に実施例1、2と比較例1、2の対象物の断面図を示す。図7に実施例3、比較例3の断面図を示している。
【0087】
[実施例1]
被照射物は、ポリエチレン80μmに、両面に銅箔20μmをラミネートしたものである。サイズは20cm×20cm×0.12mmである。この被照射物を水冷されたステンレス台構造のコンベヤに設置し、電子線照射条件として、空気中雰囲気下、加速電圧750kVにて、1回の照射量が、1Mradを1分間隔で20回、合計線量20Mradを照射した。つまりM=20Mrad、N=20、T=60sec、M/N=1Mradである。
【0088】
銅箔の拡散定数はK=0.925×10−7cm2/secである。銅箔はA=400cm2の面積と、L=0.002cmの厚さを持つ。休止期間はT=60secであるから休止期間でのガス拡散量Sは(12)式から、
【0089】
S=KAT/L=0.925×10−7×400×60/0.002
=1.11cm3 (24)
【0090】
である。休止期間(60秒間)に最大1.11cm3(標準状態での体積)のガを銅箔から逃がすことができるということである。
表1にガス発生量とガス拡散量やラミネート部でのガス膨れ有無などの結果を示す。表1には実施例全ての結果を示している。
【0091】
[実施例2]
被照射物は、ポリエチレン80μmに、両面に銅箔20μmをラミネートしたものである。サイズは20cm×20cm×0.12mmである。この被照射物を水冷されたステンレス台構造のコンベヤに設置し、電子線照射条件として、空気雰囲気中、加速電圧750kVにて、1回の照射量が、2.5Mradを1分間隔で8回、合計線量20Mradを照射した。照射期間は数秒であり問題にしない。表1にガス発生量とガス拡散量やラミネート部でのガス膨れ有無などの結果を示す。
【0092】
[実施例3]
被照射物は、EPDMゴム100μmに、両面にPETフィルム50μmをラミネートしたものである。サイズは20cm×20cm×0.2mmである。この被照射物を水冷されたステンレス台構造のコンベヤに設置し、電子線照射条件として、空気雰囲気中、加速電圧300kVにて、1回の照射量が、2Mradを1分間隔で15回、合計線量30Mradを照射した。
【0093】
PETフィルムの拡散定数はK=1.7×10−7cm2/secである。PETフィルムはA=400cm2の面積と、L=0.005cmの厚さを持つ。休止期間はT=60secであるから休止期間でのガス拡散量Sは(12)式から、
【0094】
S=KAT/L=1.7×10−7×400×60/0.005
=0.82cm3 (25)
【0095】
である。休止期間(60秒間)に最大0.82cm3(標準状態での体積)のガスをPETフィルムから逃がすことができるということである。
この結果として、表1にガス発生量とガス拡散量やラミネート部でのガス膨れ有無などの結果を示す。
【0096】
[比較例1]
被照射物は、ポリエチレン80μmに、両面に銅箔20μmをラミネートしたものである。サイズは20cm×20cm×0.12mmである。この被照射物を水冷されたステンレス台構造のコンベヤに設置し、電子線照射条件として、空気雰囲気中、加速電圧750kVにて、1回の照射量が、5Mradを1分間隔で4回、合計線量で20Mradを照射した。表2にガス発生量とガス拡散量やラミネート部でのガス膨れ有無などの結果を示す。
【0097】
[比較例2]
被照射物は、ポリエチレン80μmに、両面に銅箔20μmをラミネートしたものである。サイズは20cm×20cm×0.12mmである。この被照射物を水冷しないステンレス台構造のコンベヤに設置し、電子線照射条件として、空気雰囲気中、加速電圧750kVにて、1回の照射量が、2.5Mradを1分間隔で8回、合計線量で20Mradを照射した。表2にガス発生量とガス拡散量やラミネート部でのガス膨れ有無などの結果を示す。
【0098】
[比較例3]
被照射物は、EPDMゴム100μmに、両面にPETフィルム50μmをラミネートしたものである。サイズは20cm×20cm×0.2mmである。この被照射物を水冷されたステンレス台構造のコンベヤに設置し、電子線照射条件として、空気雰囲気中、加速電圧300kVにて、1回の照射量が、5Mradを1分間隔で6回、合計線量で30Mradを照射した。表2にガス発生量とガス拡散量やラミネート部でのガス膨れ有無などの結果を示す。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例1〜3の結果では被照射物を冷却しながら、1回当たりの線量を少なくし、照射間隔を1分間にすることにより、1回当たりの線量で発生する分解ガス量が、1分間でのガス拡散量よりも少ないため、ラミネート部のガス膨れが発生しなかった。
【0101】
【表2】
【0102】
比較例1と比較例3では、被照射物を冷却しているが、1回当たりの線量が多いため、照射間隔が1分間では、分解ガスが十分に拡散できず、ラミネート部のガス膨れが発生した。
【0103】
比較例2では、被照射物を冷却していないので、ガス発生のG値が高くなり、照射間隔が1分間では、分解ガスが十分に拡散できず、ラミネート部のガス膨れが発生した。
【0104】
図11は実施例1、2と比較例1、2の照射回数、1回当たりのガス発生量などをQ−Nグラフの上に点によって表したグラフである。図10と同じように、一回当たりガス発生量Qは回数Nと逆比例する。横軸は回数である。実施例1は20回に分割照射している。一回当たりの照射量は1Mradで全体で20Mradである。全照射量が20Mradというのは実施例1、2、比較例1、2に共通である。だから4つとも(M/N)−Q反比例曲線の上にのるはずである。ここでは1回線量でなくガス量をQとして表現している。コンベヤを水冷した実施例1、2、比較例1は同じQ−N反比例曲線の上にのる。
【0105】
実施例1は20回分割で1回ガス発生量がQ=0.43cm3である。実施例2は8回分割で1回ガス発生量がQ=1.07cm3である。いずれも1分休止期間(T=60秒)における放散量S=1.11cm3よりも小さい。だから休止期間中に全てのガスが被覆(20μm銅箔)を通過して消失する。ところが比較例1は4回分割であって1回ガス発生量がQ=2.94cm3であってSよりも大きい。休止期間中にガスが逃げきらず一部が残る。だから被覆部が一部膨大したのである。臨界分割数はこの場合Nc=7.7である。つまり実施例1、2は8回、20回であっていずれも7.7以上であるから試料の変形や膨出膨大が起こらない。しかしNcが7.7というのは水冷する場合であって、コンベヤを冷却しない場合はそうでない。
【0106】
比較例2は冷却しない場合の例である。図11に破線によって示すように、1回ガス発生量Qと、分割数Nの積が一定であるという点は変わらないが積がより大きくなる。だから分割照射回数がN=8であるにも関わらず比較例2は変形膨大するのである。コンベヤを水冷しない場合は、Ncが18回となる。水冷しないと19回以上に分割して電子線照射しなければならない。Ncが変わるのは温度によってG値が変化するからである。
【0107】
図12は実施例3と比較例3の照射回数、1回当たりのガス発生量などをQ−Nグラフの上に点によって表したグラフである。図10と同じように、一回当たりガス発生量Qは回数Nと逆比例する。横軸は回数である。実施例3は15回に分割照射している。一回当たりの照射量は2Mradで全体で30Mradである。比較例3は一回当たり照射量が5Mradで回数が6回である。全照射量が30Mradというのは実施例3、比較例3に共通である。だから両方とも(M/N)−Q反比例曲線の上にのる。ここでは1回線量でなくガス量をQとして表現している。
【0108】
実施例3は15回分割で1回ガス発生量がQ=0.66cm3である。休止期間(T=60秒)における放散量S=0.82cm3よりも小さい。だから休止期間中に全てのガスが被覆(50μmPETフィルム)を通過して消失する。ところが比較例3は6回分割であって1回ガス発生量がQ=2.13cm3であってS=0.82cm3よりも大きい。休止期間中にガスが逃げきらず一部が残る。だから被覆部が一部膨大したのである。臨界分割数はこの場合Nc=12である。分割数Nが13以上であれば残留ガスがないようにできる。
【0109】
【発明の効果】
基材の両面に薄い金属やプラスチックなど被膜がラミネートされた多層構造体に一挙に電子線照射を行うと基材からの分解ガスによって構造体が変形膨大する。
【0110】
本発明はそれを避けるために休止期間Tを間に挟む分割照射を提唱する。必要な総線量をN回に分割してM/Nの線量だけを照射し休止期間Tで被膜を全ての分解ガスが拡散透過してゆくようにする。1回の電子線照射(M/N)で発生するガス量Qより、休止期間での拡散放散量Sが大きいようにする。Q<Sというようにするから毎回被膜を通してガス抜きできる。結果として残留ガスが残らない。
【0111】
一回当たりのガス発生量はQ=2.32×10−2mGM/N (cm3)によって与えられる。ここでmは基材の質量、Gは基材材料のG値、Mは総照射線量、Nは分割回数である。一方休止期間での拡散放散量Sは、S=KAT/L(cm3)によって与えられる。Aは被膜面積、Lは被膜の厚み、Tは休止期間、Kは被膜拡散係数である。
【0112】
先ほどの条件は、2.32×10−2mGM/N<KAT/Lということである。臨界分割数NcをNc=2.32×10−2mGML/KATとして、分割数NをNc以上にする(N>Nc)ということである。
【0113】
或いは回数Nを先に決めた場合は、一回当たり生成ガスの放散時間をτとして、τ=2.32×10−2mGML/KANによって計算し、休止期間Tがτより大きいように決める。T>τとするのである。NとTが自由パラメータであるから様々の組み合わせを許す。
【0114】
いずれにしても試料を冷却するのは有効である。試料温度が低いとG値が減る。τが小さくなるし、Ncも小さくなる。だからより短時間に処理することができる。しかし冷却は本発明の方法の必須要件でない。本発明の要件はあくまでN>NcあるいはT>τによって表現できるものである。冷却非冷却を含んで本発明は非膨大、非変形の条件を与えることができる。
【0115】
このように事前に電子線照射条件を決定することにより、被照射物とラミネート物質の間に照射による分解ガスを排除できる。多層構造であってもガス膨れや変形が起こらない。巧みな分割照射によって、まことに良好な製品が生産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子線により架橋処理すべき基材の両面を薄膜によって被覆(ラミネート)した3層構造の試料を示す断面図。
【図2】被覆/基材/被覆の三層構造の試料に電子線を当てると基材から分解ガスが発生し拡散によって移動することを説明する断面図。
【図3】被覆/基材/被覆の三層構造の試料に電子線を当てると分解ガスが被覆を押し上げて気泡をつくり膨出部ができることを示す断面図。
【図4】媒体中に媒質の濃度の差があると濃度差を減らすために濃度差に比例した物質流Jが生ずることを示す説明図。
【図5】基材側と大気側で濃度差がある時に薄膜を通る物質流がKA/Lによって与えられることを証明するための図。
【図6】銅/ポリエチレン/銅の三層構造よりなる実施例1、2および比較例1、2のシート部材の断面図。
【図7】PET/ゴム/PETの三層構造よりなる実施例3および比較例3のシート部材の断面図。
【図8】電子線照射1回当たりで発生するガス量Q1の薄膜を拡散して消滅する時間τ1が休止期間Tより短いので残留ガスが発生しないことを説明するガス量時間変化グラフ。
【図9】電子線照射1回当たりで発生するガス量Q2の薄膜を拡散して消滅する時間τ2が休止期間Tより長いので残留ガスが蓄積されて行くことを説明するガス量時間変化グラフ。
【図10】必要な全エネルギーを一定とした時に分割照射の回数Nと一回当たりのガス発生量Qの間の関係を示し、1回の休止期間で放散できるガス量Sより一回のガス発生量Qが小さくなる回数が許容範囲(N>Nc)を与えることを示すグラフ。
【図11】ポリエチレン基材を銅箔で挟んだ三層構造の実施例1、2及び比較例1、2の電子線分割照射回数Nと、一回当たりガス発生量Qを図示したグラフ。横軸は分割照射回数N、縦軸は一回当たりのガス発生量Q。
【図12】EPDMゴム基材をPETフィルムで挟んだ三層構造の実施例3及び比較例3の電子線分割照射回数Nと、一回当たりガス発生量Qを図示したグラフ。横軸は分割照射回数N、縦軸は一回当たりのガス発生量Q。
【符号の説明】
1 基材
2 被覆
3 被覆
4 電子線
5 分解ガス
6 気泡
7 膨出部
Claims (2)
- 基材の両面が被膜で被覆されている多層構造被処理物を電子線処理する方法であって、必要線量MをN分割し、1回当たりのガス発生量Qが休止期間での被覆を通るガス放散量Sよりも小さくなるように、休止期間Tをおいて分割線量(M/N)をN回に分けて被照射物に照射することを特徴とする電子線照射方法。
- 基材の質量をm、基材のG値(100eVのエネルギーによって発生するガス分子の個数)をG、総照射線量をM(Mrad)、照射分割数をN、被膜の面積をA、被膜の厚みをL、被膜の拡散定数をKとして、2.32×10−2mGML<TKANが成り立つように、分割数Nおよび休止期間Tを決めることを特徴とする請求項1に記載の電子線照射方法。
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