JP3598413B2 - プロジェクションボルトの溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
軸部とフランジと溶着用突起からなるプロジェクションボルトを、板状のワークに溶接することがおこなわれている。本発明は、このような溶接の技術分野に属している。
【0002】
【従来の技術】
上述のような技術分野における先行技術としては、特許第2509103号公報があげられる。ここには、プロジェクションボルトの軸部を差し込む受入孔が可動電極に明けられ、可動電極に保持されたプロジェクションボルトは同電極の進出によって鋼板等のワークに溶接されることが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとしている問題点】
上述のような先行技術であると、可動電極は一つの目的箇所にのみ進出してプロジェクションボルトを溶接しているので、ボルトの溶接箇所を自由に選択することができない。すなわち、自動車のフロアパネルやドアインナパネルのような大きな鋼板製ワークであると、定められた位置の複数箇所にプロジェクションボルトを溶接しなければならないのであるが、上記の先行技術であると、このような条件を満足させることができないこととなる。また、複数個のプロジェクションボルトを定められた箇所に溶接するに際して、ワークの取扱が簡単であることが、生産性や溶接品質の向上にとって重要である。さらに、たとえば自動車のフロアパネルであると、機種に応じて座席の配列が異なったりして、プロジェクションボルトの溶接位置が変化する。このような場合、一つの設備で種々な機種の仕様に対応できるようにしておくことが、設備投資の節減や設備の設置スペース縮小等の面から必要になる。
【0004】
【問題を解決するための手段とその作用】
本発明は、上述のような問題点や必要条件に注目して発案されたもので、請求項1の発明は、軸部とフランジと軸部とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起からなるプロジェクションボルトを板状のワークに溶接するものにおいて、支持基板に前記軸部の受入孔を有する中間電極をワークに対応した所定の箇所に設置し、前記受入孔に軸部を挿入してから前記溶着用突起に接触または溶着用突起との間に僅かな隙間を残した状態でワークを配置し、溶接機はその電極が前記中間電極に順次合致してゆく移動式のものとされ、溶接機の電極でワークを溶着用突起に圧接させて通電することにより、溶着用突起とワークとの圧着部が溶接されることを特徴とした方法である。
【0005】
上述のような方法で溶接をすることによって、支持基板に設置された中間電極はワークのボルト溶接位置に対応させてあるので、ワークを所定の箇所にセットするだけで、ワークの定められた位置にプロジェクションボルトの溶接ができる。中間電極に保持されたボルトの溶着用突起に対して電極によってワークを圧接させるものであるから、ワークと溶着用突起との圧着と通電が適正に果たされ、良好な品質の溶着状態が得られる。さらに、溶接機はロボット等によってその電極が中間電極に順次移動しながら合致してゆくので、複数個の中間電極の箇所を加圧してゆき、効率的な溶接が実現する。そして、中間電極を全機種に必要とされる位置にあらかじめ配置しておき、ある機種にとって必要な箇所だけにボルト軸部を保持させて、その箇所だけを電極で加圧通電をすることによって、単一の設備で複数機種に対応することができる。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1において、中間電極は支持基板に明けた通孔によって溶接機の電極が中間電極に圧接できる状態とされ、ワークと中間電極を溶接機の両電極で挟み付けて通電することにより、溶着用突起とワークとが溶接されることを特徴とした方法である。溶接時には、ワーク、溶着用突起、中間電極の3部材が両電極の間で挟み付けられるのであるが、前記通孔の設置によってこの挟み付けが可能になり、良好な溶接ができる。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1において、中間電極には通電ケーブルが接続され、溶接機の電極でワークを一方向から加圧して通電することにより、溶着用突起とワークとが溶接されることを特徴とした方法である。このように通電ケーブルを設置することによって、溶接電流は電極からワーク、溶着用突起、中間電極を経て通電ケーブルに流れるから、電極はワークの一方向から加圧して通電して溶接を完了させることができる。この場合には、一つの電極がワークを片側から押さえるだけであるから、溶接機の電極作動機構を簡素化することにとって有利である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図示の実施形態にしたがって、本発明をくわしく説明する。符号1は鉄製のプロジェクションボルトであり、軸部2とそれに一体に形成された円形のフランジ3と軸部2とは反対側のフランジ面に形成した溶着用突起4から構成されている。溶着用突起は「いぼ」状のものが3個あるいは4個設置されたものでもよい。
【0009】
支持基板5は、ワークの形状にあわせて適当に屈曲させるのが望ましいのであるが、ここでは理解しやすくするために肉厚の平板で製作されている。支持基板5は、床6から起立させた4本の支柱7に固定されて、水平な姿勢で配置されている。支持基板5と各支柱7とは、ボルト付けや溶接で一体化されている。支柱7には架橋材8が結合され、ワーク9はこの架橋材8の上に置かれてクランプ機構10でしっかりと固定される。
【0010】
支持基板5には複数個の中間電極11が設置してある。中間電極11は銅合金でできた円柱状の部材であり、その上端面12の中央部に受入孔13が開口させてある。中間電極11が配置される箇所は、ワーク9に対するプロジェクションボルト1の溶着位置に対応させてある。ワーク9は平板状の鋼板であり、架橋材8の上に置かれると図5のようにワーク下面が溶着用突起4にちょうど接触している。あるいは、接触せずに僅かな隙間ができる程度としてもよい。
【0011】
支持基板5には円形の通孔14が明けてあり、その内側にリング状の絶縁体15がはめ込んである。この絶縁体15には中心側に突出したフランジ16が形成され、中間電極11の下部がフランジ16に係止されている。このような通孔の設置によって、中間電極11の下端面17に電極が密着できるのである。図5のようにワーク9、溶着用突起4、中間電極11の3部材が一体になったところへ後述の電極18、19が圧接して通電がなされてワーク9と溶着用突起4が溶着される。
【0012】
軸部2を受入孔13に挿入する方法としては、作業者が手で入れるやり方、斜め上から供給ロッドで入れるやり方、あるいは水平移動式の供給装置等いろいろな手法が採用できる。ここでは図3に示した水平移動式の供給装置が採用されている。水平方向に配置された水平エアシリンダ20のピストンロッド21に支持ブロック22が結合され、静止部材23に固定された垂直エアシリンダ24のピストンロッド25が水平エアシリンダ20に固定されている。支持ブロック22には左側を開放させた収容溝26が形成され、マグネット(永久磁石)27が収容溝26の上側に埋め込んである。なお、受入孔13の奥にマグネット(永久磁石)28が設置してある。
【0013】
水平エアシリンダ20と垂直エアシリンダ24との合成された進退作動で、矢線29、30a、31、30bのようなスクエアーモーションがなされるのであり、そのときにはボルト1はマグネット27の吸引力で支持ブロック22に保持されている。矢線30の移行時に軸部2が受入孔13内に挿入され、その状態で矢線31の方へ復帰する。すると、今度はマグネット28の吸引力でボルト1が引き込まれフランジ3の下面が中間電極11の上端面12に密着する。
【0014】
溶接機32は、ロボット装置33によって、所定の中間電極11の箇所に移行される。溶接機32には前述の電極18と19が装備されている。それは、溶接フレーム34に設置され、一方は固定電極18、他方は可動電極19であり、その駆動手段としてエアシリンダ35が採用されている。溶接フレーム34は右側が開放されたコ字型であり、上方に伸びているアーム36に前述のエアシリンダ35が固定されている。また、アーム36はイコライザー37を介してロボット装置33に結合されている。エアシリンダ35を電動モータに置き換えることも可能である。このときには、回転運動を直進運動に変換する機構が併用される。
【0015】
ロボット装置33は通常の6軸タイプであり、揺動アーム38の下部に揺動装置が設置され、同アーム38の上部には関節ヘッド39が設置されている。このヘッド39にエアシリンダ40が固定され、そのピストンロッド41が関節接手42に結合されている。前述のイコライザー37は関節接手42に取り付けてある。溶接機32とロボット装置33がユニット化されたものは、電極18、19が支持基板5に近い箇所に待機できるように設置箇所が選定してある。
【0016】
ワーク9は、位置決めピン(図示していない)のような方法で、常に一定の箇所に配置され、こうすることによって、ワーク9と中間電極11との相対位置が所定の関係に設定され、ひいては溶着用突起4がワーク9の所定箇所に正しく溶接されることになる。ワーク9の位置がずれないようにするために、クランプ機構10が採用されている。この機構もいろいろなものが採用できるが、ここではエアシリンダ43で揺動する開閉アーム44が設置れされ、ワーク9は架橋材8に強く押しつけられて固定される。
【0017】
以上に述べた実施形態の作動を説明する。所定の箇所に配置されている中間電極11の受入孔13に軸部2が挿入される。その後、ワーク9が溶着用突起4の上側に置かれてクランプ機構10で固定される。つぎに、ロボット装置33が駆動されて溶接機32がワーク9の方へ移動させられ、電極18、19が順次中間電極11に合致して図5のように加圧通電がなされる。1か所の溶接が完了すると、電極18、19は隣の中間電極11に移行して、再び図5のような加圧通電がなされる。ワーク9と溶着用突起4との間に僅かな隙間があるときには、電極の加圧力によってワーク9が撓むので、ワーク9と溶着用突起4との圧着がなされる。
【0018】
ロボット装置33を上述のように移動させるためには、制御装置(図示していない)にティーチングをしておくことによって、電極18、19が各中間電極11を所定の順序で加圧通電をしてゆくのである。このようなロボット装置33のティーチングは、きわめて一般的な手法で実施することができる。
【0019】
図6、図7は、中間電極11に通電ケーブル45を接続したもので、こうすることによって一方の電極、ここでは固定電極18の使用を止めるのである。図6の場合は、下端面17に通電ケーブルの端子金具46をボルト47で固定したものである。また、図7の場合は、中間電極11の外周面に図6のものと同様にしてケーブル接続をしたもので、通電ケーブル45は支持基板5の通過孔48を通って支持基板5を貫通している。なお、符号49は通過孔48に取り付けた絶縁筒である。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、軸部とフランジと軸部とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起からなるプロジェクションボルトを板状のワークに溶接するものにおいて、支持基板に前記軸部の受入孔を有する中間電極をワークに対応した所定の箇所に設置し、前記受入孔に軸部を挿入してから前記溶着用突起に接触または溶着用突起との間に僅かな隙間を残した状態でワークを配置し、溶接機はその電極が前記中間電極に順次合致してゆく移動式のものとされ、溶接機の電極でワークを溶着用突起に圧接させて通電することにより、溶着用突起とワークとの圧着部が溶接されることを特徴とした方法である。
【0021】
上述のような方法で溶接をすることによって、支持基板に設置された中間電極はワークのボルト溶接位置に対応させてあるので、ワークを所定の箇所にセットするだけで、ワークの定められた位置にプロジェクションボルトの溶接ができる。中間電極に保持されたボルトの溶着用突起に対して電極によってワークを圧接させるものであるから、ワークと溶着用突起との圧着と通電が適正に果たされ、良好な品質の溶着状態が得られる。
【0022】
さらに、溶接機はロボット等によってその電極が中間電極に順次移動しながら合致してゆくので、複数個の中間電極の箇所を加圧してゆき、効率的な溶接が実現する。そして、中間電極を製品の全機種に必要とされる位置にあらかじめ配置しておき、ある機種にとって必要な箇所だけにボルト軸部を保持させて、その箇所だけを電極で加圧通電をすることによって、単一の設備で複数機種に対応することができる。手順としては、中間電極への軸部挿入、ワークの設置、電極の加圧通電といった簡単なものなので、溶接時間が短縮でき、さらにはボルトの位置ずれのようなトラブルも、受入孔への軸部挿入等によって、発生を防止できる。
【0023】
中間電極は支持基板に明けた通孔によって溶接機の電極が中間電極に圧接できる状態とされ、ワークと中間電極を溶接機の両電極で挟み付けて通電することにより、溶着用突起とワークとが溶接される方法であるから、溶接時には、ワーク、溶着用突起、中間電極の3部材が両電極の間でしっかりと挟み付けられる。このような挟み付けは、前記通孔の設置によって可能になり、良好な溶接ができるのである。
【0024】
中間電極には通電ケーブルが接続され、溶接機の電極でワークを一方向から加圧して通電することにより、溶着用突起とワークとが溶接される。このように通電ケーブルを設置することによって、溶接電流は電極からワーク、溶着用突起、中間電極を経て通電ケーブルに流れるから、電極はワークの一方向から加圧して通電して溶接を完了させることができる。この場合には、一つの電極がワークを片側から押さえるだけであるから、溶接機の電極作動機構を簡素化することにとって有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を全体的に示す側面図である。
【図2】図1のものの平面図である。
【図3】中間電極にボルト軸部を挿入する装置を示した縦断側面図である。
【図4】支持基板の設置状態を示す立体図である。
【図5】中間電極に電極が圧接している状態を示す縦断側面図である。
【図6】通電ケーブルの接続を示す側面図である。
【図7】他の通電ケーブルの接続を示す側面図である。
【図8】プロジェクションボルトの外観を示す側面図である。
【符号の説明】
2 軸部
3 フランジ
4 溶着用突起
1 プロジェクションボルト
9 ワーク
5 支持基板
13 受入孔
11 中間電極
32 溶接機
18、19 電極
14 通孔
45 通電ケーブル
Claims (3)
- 軸部とフランジと軸部とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起からなるプロジェクションボルトを板状のワークに溶接するものにおいて、支持基板に前記軸部の受入孔を有する中間電極をワークに対応した所定の箇所に設置し、前記受入孔に軸部を挿入してから前記溶着用突起に接触または溶着用突起との間に僅かな隙間を残した状態でワークを配置し、溶接機はその電極が前記中間電極に順次合致してゆく移動式のものとされ、溶接機の電極でワークを溶着用突起に圧接させて通電することにより、溶着用突起とワークとの圧着部が溶接されることを特徴とするプロジェクションボルトの溶接方法。
- 請求項1において、中間電極は支持基板に明けた通孔によって溶接機の電極が中間電極に圧接できる状態とされ、ワークと中間電極を溶接機の両電極で挟み付けて通電することにより、溶着用突起とワークとが溶接されることを特徴とするプロジェクションボルトの溶接方法。
- 請求項1において、中間電極には通電ケーブルが接続され、溶接機の電極でワークを一方向から加圧して通電することにより、溶着用突起とワークとが溶接されることを特徴とするプロジェクションボルトの溶接方法。
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