JP3597734B2 - 管ライニング材への樹脂含浸方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空度チェック計を用いた管ライニング材への樹脂含浸方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地中に埋設された下水管等の管路が老朽化した場合、この管路を地中から掘出することなくその内周面にライニングを施して該管路を補修する管ライニング工法が提案され、既に実用に供されている。斯かる管ライニング工法の1つとして、管ライニング材を流体圧によって管路内に反転挿入した後、該管ライニング材を管路の内壁に押圧した状態で、管ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させるようにしたものが知られている。
【0003】
ところで、上記管ライニング工法に供される管ライニング材は、外表面が気密性の高いプラスチックフィルムで被覆された管状樹脂吸着材に未硬化の液状硬化性樹脂を含浸せしめて構成されるが、管ライニング材への硬化性樹脂の含浸作業は次のように行われている。即ち、管ライニング材の内部に硬化性樹脂を注入し、バキュームポンプによって管ライニング材を真空引きすることによって硬化性樹脂を管ライニング材(管状樹脂吸着材)に吸引して含浸させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記樹脂含浸方法においては、管ライニング材の外表面にピンホールが発生している場合やバキュームポンプが正常に機能していない場合、或はバキュームホースとバキュームパッドで構成されるエアー抜きキッドにエアー漏れがある場合等には、管ライニング材の真空度が硬化性樹脂の含浸に必要な適正値(550mmHg〜760mmHg)に達しないために管ライニング材に硬化性樹脂の部分的な含浸不良が発生する。このように管ライニング材に硬化性樹脂の含浸不良が発生すると、ライニング後の管ライニング材に部分的な強度不足が発生する。
【0005】
しかしながら、従来の樹脂含浸方法においては、バキュームポンプによって管ライニング材を真空引きする場合、管ライニング材の真空度がどの程度の値であるかを確認することなく硬化性樹脂の含浸作業を行っていたため、前述のような原因によって管ライニング材の真空度が適正値に達していない場合であっても、これを確認することができなかった。
【0006】
尚、エアー抜きキッドに取り付けられた真空計によって管ライニング材の真空度を測定しようとしても、管ライニング材の真の真空度を正確に測定できない場合がある。即ち、エアー抜きキッド内は直接バキュームポンプによって常に減圧されているため、特に排空量の大きなバキュームポンプを使用した場合には、管ライニング材の表面に多少のピンホールが発生していてもエアー抜きキッド内は適正な真空度を示すため、真空計によって測定されたエアー抜きキッド内の真空度は管ライニング材の実際の真空度とは大きく異なる値を示すことになってしまう。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、樹脂含浸中の管ライニング材の真空度を正確に測定することができる真空チェック計を用いて管ライニング材に硬化性樹脂を均一に含浸させることができる管ライニング材への硬化性樹脂含浸方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、管状樹脂吸着材の外表面を気密性の高いプラスチックフィルムで覆って成る管ライニング材の内部に未硬化の液状硬化性樹脂を注入し、管ライニング材を真空引きしながら前記硬化性樹脂を管ライニング材に含浸せしめる管ライニング材への硬化性樹脂含浸方法において、硬化性樹脂含浸前の前記管ライニング材のプラスチックフィルムの一部を切り開き、その切り開いた部分に、エラストマー製パッド又は先端部が管ライニング材表面に突き刺し可能なパイプと真空計とを気密に連通連結して構成される真空度チェック計のパッドを密着し又はパイプを差し込み、該真空度チェック計で管ライニング材の真空度をチェックしながら硬化性樹脂を管ライニング材に含浸せしめることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記管ライニング材の外表面に色水又は色水吸着体を接触させることによって管ライニング材のピンホールをチェックすることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記管ライニング材のプラスチックフィルムの切り開いた部分を硬化性樹脂含浸後に同材質の別のプラスチックフィルムを接着又は溶着して気密的に塞ぐことを特徴とする。
【0014】
従って、請求項1記載の管ライニング材への樹脂含浸方法によれば、真空度チェック計は管ライニング材に直接密着して管ライニング材の真の真空度を正確に測定することができ、管ライニング材の外表面にピンホールが発生していたり、バキュームホースとバキュームパッドで構成されるエアー抜きキッドにエアー漏れがあるために管ライニング材の真空度が硬化性樹脂の含浸に必要な適正値に達しない場合には、真空度チェック計によってこのことを確実にチェックすることができ、適正な処置を施した後に管ライニング材に硬化性樹脂を均一に含浸させることができる。
【0015】
又、請求項2記載の発明によれば、管ライニング材の外表面にピンホールが発生している場合には、色水又は色水吸着体がピンホール部に吸引されて管状樹脂吸着材に浸透するため、目視にてピンホール部を発見することができる。
【0016】
更に、請求項3記載の発明によれば、管ライニング材のプラスチックフィルムの切り開いた部分が硬化性樹脂含浸後に同材質の別のプラスチックフィルムによって気密的に塞がれるため、管ライニング材に対する硬化性樹脂の含浸作業を継続して複数回行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1及び図2は本発明に係る硬化性樹脂含浸方法を示す断面図、図3は図1のA部拡大詳細図であり、本発明に係る硬化性樹脂の含浸方法においては、図1に示すように架台9上の端部に折り畳まれて多層に重ねられた管ライニング材1がその端部から引き延ばされて架台9上に水平にセットされ、その端部が開かれてその内部に樹脂タンク2から未硬化の液状硬化性樹脂3が重力によって所定量だけ注入される。尚、硬化性樹脂3を不図示の樹脂ポンプによって管ライニング材1の内部に強制的に注入するようにしても良い。
【0019】
ここで、硬化性樹脂3が未だ含浸されていない管ライニング材1は、外表面が気密性の高いプラスチックフィルム1aで被覆された管状樹脂吸着材1bで構成されている(図3参照)。尚、管状樹脂吸着材1bはポリエステルファイバーから成る不織布、アクリル、ポリプロピレン、ビニロン等の不織布、グラスファイバー、織物、チョップ或は不織布とグラスファイバー織物及びチョップをパンチング加工によって一体化した複合部材で構成され、その外表面に被覆される前記プラスチックフィルム1aとしてはポリエチレン又はポリウレタンフィルム或はナイロン、EVOH、ポリエチレン等を含む複合フィルムが用いられる。又、硬化性樹脂3としては例えば不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される。
【0020】
而して、図1に示すように架台9上に水平にセットされた管ライニング材1の途中の部分は、図3に示すように、その外表面に被覆されたプラスチックフィルム1aの一部が切り開かれ、その切り開かれた部分1A,1Bには本発明に係る真空度チェック計10のパッド12とバキュームホース4の端部に取り付けられたパッド5が切り開かれた部分1A,1Bを覆うようにそれぞれ密着される。
【0021】
そして、上記バキュームホース4にはバキュームポンプ6が取り付けられており、バキュームホース4の途中にはバルブ7と真空計8が取り付けられている。又、バキュームホース4の端部に取り付けられた前記パッド5は弾性変形可能なエラストマーで構成され、その内部には図3に示すように不織布等の通気性質体16が充填されている。
【0022】
ここで、本発明に係る前記真空度チェック計10の構成を図4に基づいて説明する。
【0023】
図4は本発明に係る真空度チェック計10の断面図であり、該真空度チェック計10は真空計11と弾性変形可能なエラストマー製パッド12とをSUS製の耐真空パイプ13で気密に連通連結して構成されている。
【0024】
即ち、上記耐真空パイプ13の上端には市販の真空計11が螺着されており、同耐真空パイプ13の下部外周には前記エラストマー製パッド12が下方から差し込まれ、その上端外周が締付具14によって耐真空パイプ13の外周に取り付けられている。そして、エラストマー製パッド12の内部には不織布等の通気性質体15が充填されている。ここで、パッド12を構成するエラストマーとしては、ポリウレタン、シリコーン、塩化ビニール、ブチルゴム、天然ゴム等が使用される。尚、耐真空パイプ13に代えてゴムやプラスチック製の耐真空ホースを用いても良い。
【0025】
而して、前述のように管ライニング材1の内部に硬化性樹脂3が部分的に注入されると、バキュームポンプ6が駆動され、管ライニング材1が真空引きされて管状樹脂吸着材1bに含まれている空気がバキュームホース4を経て吸引されるために管ライニング材1の内部が減圧され、該管ライニング材1に発生する負圧によって硬化性樹脂3が管状樹脂吸着材1bに含浸されていく。このとき、管ライニング材1の真空度はバキュームホース4に取り付けられた真空計8のみならず、管ライニング材1に直接密着された真空度チェック計10において測定されるが、真空計8はバキュームホース4の真空度を測定するものであって、管ライニング材1の真空度を常に正確に測定するものではない。つまり、例えば管ライニング材1の外表面にピンホールが発生している場合やバキュームホース4とバキュームパッド5で構成されるエアー抜きキッドにエアー漏れがある場合等には、管ライニング材1の真空度を正確に測定することができない。
【0026】
これに対して、真空度チェック計10は管ライニング材1に直接密着して管ライニング材1の真の真空度を正確に測定することができ、管ライニング材1の外表面にピンホールが発生していたり、バキュームホース4とバキュームパッド5で構成されるエアー抜きキッドにエアー漏れがあるために管ライニング材1の真空度が硬化性樹脂3の含浸に必要な適正値(550mmHg〜760mmHg)に達しない場合には、このことを真空度チェック計10によって確実にチェックすることができる。
【0027】
そして、上述のように管ライニング材1の真空度が適正値に達していないことが確認されると、先ず、管ライニング材1の外表面にピンホールが発生しているか否かをチェックする必要があるが、このチェックは管ライニング材1の外表面に色水又は色水吸着体を接触させることによってなされる。
【0028】
管ライニング材1の外表面にピンホールが発生している場合には、色水又は色水吸着体がピンホール部に吸引されて管状樹脂吸着材1bに浸透するため、目視にてピンホール部を発見することができる。そして、このようにして管ライニング材1の外表面のプラスチックフィルム1aにピンホールが発見されると、プラスチックフィルム1aのピンホールが発生している部分には該プラスチックフィルム1aと同材質の別の不図示のプラスチックフィルムが接着又は溶着され、これによってピンホールが気密的にシールされて塞がれる。
【0029】
而して、以上のように例えば管ライニング材1の外表面にピンホールが発生しているために管ライニング材1の真空度が適正値に達しない場合には、このことが真空度チェック計10によって確実にチェックされ、これに対する適正な処置が施されるため、管ライニング材1は常に適正な真空度に保たれた状態でこれに硬化性樹脂3が確実に含浸され、管ライニング材1に硬化性樹脂3の部分的な含浸不良が発生せず、ライニング施工後の硬化した管ライニング材1に部分的な強度不足が発生することがない。
【0030】
以上のようにして、硬化性樹脂3が均一に含浸された管ライニング材1は図2に示すように上下一対のギャップローラ17間を通過することによって所定の厚さに調整され、厚さが調整された管ライニング材1はタンク(硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合にはフリーザー又は水槽)18に折り畳まれて順次重ねられる。
【0031】
以上の硬化性樹脂3の含浸作業は管ライニング材の所定長さ部分毎に全長に亘って複数回繰り返されるが、真空度チェック計10及びバキュームホース4に取り付けられたパッド12,5を取り外した後、管ライニング材1のプラスチックフィルム1aを切り開いた部分1A,1B(図3参照)にはプラスチックフィルム1aと同材質の別の不図示のプラスチックフィルムが接着又は溶着され、切り開いた部分1A,1Bはプラスチックフィルムで気密的にシールされて塞がれる。
【0032】
次に、本発明の別形態に係る真空度チェック計とその使用方法を図5及び図6に示す。
【0033】
図5に示す真空度チェック計20は、先端部が斜めにカットされたSUS製のパイプ23の上端に市販の真空計21を取り付けて構成されており、該真空度チェック計20は図示のようにパイプ23の先端を管ライニング材1の表面に突き刺すことによって使用される。この場合、真空度チェック計20の管ライニング材1に突き刺されたパイプ23の外周面は管ライニング材1の外面に被着されたプラスチックフィルム1aによって気密にシールされ、硬化性樹脂の含浸作業中における管ライニング材1の真の真空度は当該真空度チェック計20によって正確に測定される。尚、真空度チェック計20のパイプ23を先端に向かって細くなるようにテーパ状に成形しても良い。
【0034】
又、図6に示す真空度チェック計20’は、図5に示した前記真空度チェック計20のパイプ23の外周にシールパッド29を取り付けたものであって、該真空度チェック計20も図示のようにパイプ23の先端を管ライニング材1の表面に突き刺すことによって使用されるが、この使用状態においてはパイプ23に取り付けられた前記シールパッド29が管ライニング材1の外表面に密着してパイプ23の管ライニング材1への差し込み部を気密にシールする。
【0035】
而して、この真空度チェック計20’によっても硬化性樹脂の含浸作業中における管ライニング材1の真の真空度が正確に測定される。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1記載の管ライニング材への樹脂含浸方法によれば、真空度チェック計は管ライニング材に直接密着して管ライニング材の真の真空度を正確に測定することができ、管ライニング材の外表面にピンホールが発生していたり、バキュームホースとバキュームパッドで構成されるエアー抜きキッドにエアー漏れがあるために管ライニング材の真空度が硬化性樹脂の含浸に必要な適正値に達しない場合には、真空度チェック計によってこのことを確実にチェックすることができ、適正な処置を施した後に管ライニング材に硬化性樹脂を均一に含浸させることができるという効果が得られる。
【0037】
又、請求項2記載の発明によれば、管ライニング材の外表面にピンホールが発生している場合には、色水又は色水吸着体がピンホール部に吸引されて管状樹脂吸着材に浸透するため、目視にてピンホール部を発見することができるという効果が得られる。
【0038】
更に、請求項3記載の発明によれば、管ライニング材のプラスチックフィルムの切り開いた部分が硬化性樹脂含浸後に同材質の別のプラスチックフィルムによって気密的に塞がれるため、管ライニング材に対する硬化性樹脂の含浸作業を継続して複数回行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る硬化性樹脂含浸方法を示す断面図である。
【図2】本発明に係る硬化性樹脂含浸方法を示す断面図である。
【図3】図1のA部拡大詳細図である。
【図4】本発明に係る真空度チェック計の断面図である。
【図5】本発明の別形態に係る真空度チェック計とその使用方法を示す図である。
【図6】本発明の別形態に係る真空度チェック計とその使用方法を示す図である。
【符号の説明】
1 管ライニング材
1a プラスチックフィルム
1b 管状樹脂吸着材
3 液状硬化性樹脂
10 真空度チェック計
11 真空計
12 エラストマー製パッド
13 耐真空パイプ
20,20’ 真空度チェック計
21 真空計
23 パイプ
29 シールパッド
Claims (3)
- 管状樹脂吸着材の外表面を気密性の高いプラスチックフィルムで覆って成る管ライニング材の内部に未硬化の液状硬化性樹脂を注入し、管ライニング材を真空引きしながら前記硬化性樹脂を管ライニング材に含浸せしめる管ライニング材への硬化性樹脂含浸方法において、硬化性樹脂含浸前の前記管ライニング材のプラスチックフィルムの一部を切り開き、その切り開いた部分に、エラストマー製パッド又は先端部が管ライニング材表面に突き刺し可能なパイプと真空計とを気密に連通連結して構成される真空度チェック計のパッドを密着し又はパイプを差し込み、該真空度チェック計で管ライニング材の真空度をチェックしながら硬化性樹脂を管ライニング材に含浸せしめることを特徴とする管ライニング材への樹脂含浸方法。
- 前記管ライニング材の外表面に色水又は色水吸着体を接触させることによって管ライニング材のピンホールをチェックすることを特徴とする請求項1記載の管ライニング材への硬化性樹脂含浸方法。
- 前記管ライニング材のプラスチックフィルムの切り開いた部分を硬化性樹脂含浸後に同材質の別のプラスチックフィルムを接着又は溶着して気密的に塞ぐことを特徴とする請求項1記載の管ライニング材への硬化性樹脂含浸方法。
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