JP3597712B2 - 遊星歯車組 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機などに用いられる遊星歯車組、特に、その構成要素であるサンギヤやリングギヤを関連するメンバと一体的に回転する板材と、これらサンギヤやリングギヤとの間における結着強度の向上技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
遊星歯車組はサンギヤと、リングギヤと、これらサンギヤおよびリングギヤ間に噛合させたプラネタリピニオンを回転自在に支持するキャリアとにより構成され、自動変速機などの伝動経路に挿入して実用する。
そして遊星歯車組は、サンギヤと、リングギヤと、キャリアとの3要素をどのメンバ(回転物だけでなく固定物も含む)に対して駆動結合させるかにより伝動経路(ギヤ比)が決まり、駆動結合させるメンバの変更により伝動経路(ギヤ比)を変更させることができる。
従って遊星歯車組は、サンギヤ、リングギヤ、およびキャリアを板材を介して対応するメンバと一体的に回転させて実用するが、サンギヤやリングギヤと、当該板材との間における結着を以下のごとくに行うのが常套であった。
【0003】
図1は、日産自動車(株)が1991年10月に発行した「NISSAN RE4F04A(V)型 オートマチックトランスミッション整備要領書」(A261C16)に記載の自動変速機における遊星歯車組(フロントプラネタリギヤ)1の周辺部を示すもので、
この遊星歯車組1は、サンギヤ2と、リングギヤ3と、これらサンギヤおよびリングギヤ間に噛合させたプラネタリピニオン4を回転自在に支持するキャリア5とより構成する。
【0004】
サンギヤ2は、入力軸6上に回転自在に支持したクラッチハブ7の中空軸部上に回転自在に支持すると共に、板材8を介してバンドブレーキB/Bのブレーキドラム9と一体的に回転させ、このブレーキドラム9を中空固定軸10上に回転自在に支持する。
ブレーキドラム9内にクラッチドラム11を固設し、該クラッチドラム11の内周に、入力軸6と一体的に回転するクラッチハブ12を配置し、これらでリバースクラッチR/Cを構成する。
クラッチハブ12にはクラッチドラム13を固設し、該クラッチドラム13の内周に上記のクラッチハブ7を延在させ、これらでハイクラッチH/Cを構成する。
リングギヤ3は、図示せざるリヤプラネタリギヤのキャリア14に結合し、フロントプラネタリギヤ1のキャリア5はハイクラッチH/Cのクラッチハブ7と一体的に回転させる。
【0005】
ここで、サンギヤ2と板材8との間における結着構造を説明するに、図2に明示するごとく板材8の内周をサンギヤ2の端部外周に嵌合し、この板材8をサンギヤ2の歯2aの端面に衝接させて軸線方向に位置決めする。
そして、サンギヤ2と板材8との嵌合部をサンギヤ歯2aから遠い側より溶接し(15で示す)、該溶接による溶け込み深さLを板材8の板厚dよりも深くして、サンギヤ2および板材8間の溶着長aを、サンギヤ2および板材8間の結着強度が最大になるよう板材8の板厚dと同じ長さにする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、遊星歯車組が大きなトルクを伝達する必要がある場合においてこれに耐え得るようサンギヤ2および板材8間の結着強度を高めるに際しては、従来の結着構造による限り、
▲1▼溶接径Dを大きくして溶接周長を稼ぐか、▲2▼板材8の板厚dを厚くして溶着長aを稼ぐしかない。
しかし、これら何れの対策を実行するにしてもこれらは、遊星歯車組はもとより周辺部品の設計変更をも伴うもので、遊星歯車組がコスト上の制約もあって上記文献に記載の自動変速機に見られる如くぎりぎりのスペース内に配置されていることから、装置全体の設計変更さえ生じかねず、実現が困難である。
【0007】
一方で、従来の溶接15によるとサンギヤ2および板材8間にスラストが作用した時の応力集中部αが、板材8とサンギヤ歯2aとの間の衝接面に存在し、サンギヤ2および板材8間の嵌合部から径方向にオフセットしているため、上記スラストの作用時に応力集中部αが引っ張り応力を受けることとなり、応力集中係数が大きくなるのを免れないという問題もあった。
【0008】
請求項1に記載の第1発明は、従来のように周辺部品の設計変更を全く要することなくサンギヤ(またはリングギヤ、或いはこれら双方)および板材間の結着強度を高め得る遊星歯車組を提案することを目的とする。
【0009】
第1発明は同時に、サンギヤ(またはリングギヤ、或いはこれら双方)および板材間にスラストが発生した時の応力集中部の応力集中係数を低下させた遊星歯車組を提案することを目的とする。
【0010】
請求項2に記載の第2発明は、第1発明の作用効果を安価に達成し得るようにした遊星歯車組を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
これら目的のため、先ず第1発明は、
サンギヤと、リングギヤと、これらサンギヤおよびリングギヤ間に噛合させたプラネタリピニオンを回転自在に支持するキャリアとよりなり、
前記サンギヤおよびリングギヤの一方または両方を、これらギヤの端部に歯端面との衝接により軸線方向に位置決めして嵌合されると共に、該嵌合部を溶接された板材により、対応するメンバと一体的に回転する遊星歯車組を要旨構成の基礎前提とする。
【0012】
第1発明は上記の遊星歯車組において、前記板材が衝接する歯の端部を不要長さ分だけ除去して前記サンギヤおよびリングギヤの一方または両方に、元々ある円筒面と連なる拡大円筒面を形成し、
この拡大円筒面に嵌合して対応する歯の端面に接するボス部を前記板材に一体に設け、
該ボス部から遠い前記嵌合部の側から前記溶接を行い、
前記溶接による溶け込み深さを、前記板材の板厚を超えて前記ボス部の嵌合部を越えない範囲とし、
この溶け込み深さと、前記ボス部および板材の一体化とにより、前記サンギヤおよびリングギヤの一方または両方と前記板材との間にスラストが作用した時の応力集中部が該ギヤと板材との嵌合面内のみに位置して該応力集中部が前記スラストの発生時に引っ張り応力ではなく剪断応力を受けるよう構成したことを特徴とするものである。
【0013】
第2発明による遊星歯車組は、第1発明において、
前記ボス部を前記板材の周縁部における軸線方向折り曲げ加工により該板材に一体成形したことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の効果】
第1発明においては、上記板材が衝接するサンギヤおよびリングギヤの一方または両方の歯の端部を不要長さ分だけ除去して当該サンギヤおよびリングギヤの一方または両方に、元々ある円筒面と連なる拡大円筒面を形成し、この拡大円筒面に嵌合して対応する歯の端面に接するボス部を上記板材に一体に設け、当該ボス部から遠い上記嵌合部の側よりサンギヤおよびリングギヤの一方または両方と板材との間の溶接を行い、当該溶接による溶け込み深さを、前記板材の板厚を超えて前記ボス部の嵌合部を越えない範囲とし、
この溶け込み深さと、前記ボス部および板材の一体化とにより、前記サンギヤおよびリングギヤの一方または両方と前記板材との間にスラストが作用した時の応力集中部が該ギヤと板材との嵌合面内のみに位置して該応力集中部が前記スラストの発生時に引っ張り応力ではなく剪断応力を受けるよう構成したため、
新設した上記ボス部と上記拡大円筒面との間の嵌合部の分だけサンギヤおよびリングギヤの一方または両方と板材との間の嵌合代を増やすことができることとなり、その分、上記溶接による溶着長を稼いでサンギヤおよびリングギヤの一方または両方と板材との間の結着強度を、板材の板厚や溶接径の増大に頼ることなく、従って周辺部品の設計変更なしに向上させることができる。
【0015】
しかも第1発明においては上記拡大円筒面を、サンギヤおよびリングギヤの一方または両方の歯の端部を不要長さ分だけ除去して形成したから、この点でも上記の作用効果を何ら周辺部品の設計変更なしに達成することができる。
【0016】
また第1発明においては、前記溶接の溶け込み深さを上記板材の板厚を超えて上記拡大円筒面を超えない範囲としたから、この溶け込み深さと、前記ボス部および板材の一体化とにより、前記サンギヤおよびリングギヤの一方または両方と前記板材との間にスラストが作用した時の応力集中部が該ギヤと板材との嵌合面内のみに位置して該応力集中部が前記スラストの発生時に引っ張り応力ではなく剪断応力を受けるよう構成したため、
サンギヤおよびリングギヤの一方または両方と板材との間にスラストが作用する時に当該応力集中部における応力集中係数を小さくすることができる。
【0017】
第2発明においては、前記ボス部を前記板材の周縁部における軸線方向折り曲げ加工により該板材に一体成形したから、
板材にボス部が新設させてもこれが要因で大きなコスト高になることがなく、安価に第1発明の作用効果を達成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図3は、図1および図2に示すサンギヤ2と板材8との間における結着構造に対して適用した本発明の一実施の態様を示す。
本発明においては、サンギヤ2の歯2aが全幅に亘って使用されているのは稀で、実際上は図1にγで示すように大抵の場合、板材8に近い歯2aの端部が使用されていないことに着目し、
当該不使用領域の範囲内で板材8に近い歯2aの端部を除去してサンギヤ2に図3に示すごとく、元々ある円筒面2bに連なる拡大円筒面2cを形成する。
【0019】
更に、拡大円筒面2cに嵌合して歯2aの対応端面に衝接するボス部8aを板材8に一体に設け、このボス部8aを好ましくは、板材8の内周部における軸線方向折り曲げ加工により板材8に一体成形するのがコスト上有利である。
そして、サンギヤ2および板材8間の嵌合部をボス部8aから遠い側より溶接し(図2と同じく15で示す)、当該溶接15による溶け込み深さLを板材8の板厚dを超えてボス部8aの嵌合部を超えない範囲とする。
【0020】
かかる構成とした本実施の形態になる遊星歯車組によれば、新設したボス部8aと拡大円筒面2cとの間の嵌合部の分だけサンギヤ2と板材8との間の嵌合代を増やすことができることとなり、これがため、サンギヤ2および板材8間における要求結着強度に見合うよう溶接15による溶け込み深さLを上記のごとくに設定しても当該溶け込み深さLがボス部8aの嵌合部を超えることがない。
従って、溶接15による溶着長bが溶け込み深さLと同じになり、溶着長bを稼いでサンギヤ2と板材8との間の結着強度を、板材8の板厚dや溶接径Dの増大に頼ることなく、従って周辺部品の設計変更なしに向上させることが可能になる。
【0021】
しかも拡大円筒面2cを、サンギヤ2の歯2aの端部を不要長さ分だけ除去して形成したから、この点でも上記の作用効果を何ら周辺部品の設計変更なしに達成することができる。
また溶け込み深さLを、拡大円筒面2cを超える深いものにすることなくサンギヤ2と板材8との間の結着強度を向上させることができるため、そして、前記した通りボス部8aを板材8に一体化することとも相まって、応力集中部がβで示すようにサンギヤ2と板材8(ボス部8a)との嵌合面内のみに位置することとなり、これがため、サンギヤ2と板材8との間にスラストが作用する時に当該応力集中部βが引っ張り応力でなく剪断応力を受けることになり、応力集中部βの応力集中係数を小さくすることができる。
【0022】
なお上記実施の形態では、サンギヤ2と板材8との間の結着構造に本発明の着想を適用したが、図1に示すリングギヤ3とキャリア14との間の結着構造についても同様の考え方により本発明の着想を適用することができるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の遊星歯車組を具えた自動変速機の遊星歯車組周辺部を示す要部拡大断面図である。
【図2】同遊星歯車組のサンギヤと板材との間における結着構造を示す詳細断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態になる遊星歯車組のサンギヤと板材との間における結着構造を示す、図2と同様な詳細断面図である。
【符号の説明】
1 フロントプラネタリギヤ(遊星歯車組)
2 サンギヤ
3 リングギヤ
4 プラネタリピニオン
5 キャリア
6 入力軸
7 ハイクラッチハブ
8 板材
9 ブレーキドラム
10 中空固定軸
11 リバースクラッチドラム
12 リバースクラッチハブ
13 ハイクラッチドラム
14 キャリア
15 溶接
L 溶け込み深さ
a 溶着長
b 溶着長
D 溶接径
α 応力集中部
β 応力集中部
Claims (2)
- サンギヤと、リングギヤと、これらサンギヤおよびリングギヤ間に噛合させたプラネタリピニオンを回転自在に支持するキャリアとよりなり、
前記サンギヤおよびリングギヤの一方または両方を、これらギヤの端部に歯端面との衝接により軸線方向に位置決めして嵌合されると共に、該嵌合部を溶接された板材により、対応するメンバと一体的に回転する遊星歯車組において、
前記板材が衝接する歯の端部を不要長さ分だけ除去して前記サンギヤおよびリングギヤの一方または両方に、元々ある円筒面と連なる拡大円筒面を形成し、
この拡大円筒面に嵌合して対応する歯の端面に接するボス部を前記板材に一体に設け、
該ボス部から遠い前記嵌合部の側より前記溶接を行い、
前記溶接による溶け込み深さを、前記板材の板厚を超えて前記ボス部の嵌合部を越えない範囲とし、
この溶け込み深さと、前記ボス部および板材の一体化とにより、前記サンギヤおよびリングギヤの一方または両方と前記板材との間にスラストが作用した時の応力集中部が該ギヤと板材との嵌合面内のみに位置して該応力集中部が前記スラストの発生時に引っ張り応力ではなく剪断応力を受けるよう構成したことを特徴とする遊星歯車組。 - 請求項1において、前記ボス部を前記板材の周縁部における軸線方向折り曲げ加工により該板材に一体成形したことを特徴とする遊星歯車組。
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CN109253055B (zh) * | 2018-10-22 | 2024-04-16 | 中车戚墅堰机车车辆工艺研究所股份有限公司 | 电缆空心轴连接结构及风机增速箱 |
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