JP3594871B2 - 金属製構成部材及び放電ランプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はをベースとする合金からなる支持体を有する放電ランプのための金属製構成部材並びに放電ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
このような構成部材は、刊行文献G8628310.3から公知である。該刊行文献は、ニオブを高圧ランプのためのリード線として使用する可能性を示唆している。この場合、ニオブを腐食、この場合殊に侵食性金属ハロゲン化物による腐食を保護するために、気密の溶封及び構造的に極めて高価な装置が使用される。
【0003】
GB2178230Aにおいては、この種の構成部材が放電ランプのためのリード線として使用される。このような放電ランプは、200〜300℃の温度範囲もしくは高い湿分を有する雰囲気内ではなかんずくリード線を酸化及び腐食から保護する外部カプセルと関連して使用することが推奨される。そのような1例は、ガラスからなる希ガスが充填され、気密に閉鎖された保護カプセル内部の放電ランプ及びリード線を示す。
【0004】
1981年11月08日にサンフランシスコで開催された会議(Proceedings of the International Symposium)を基礎とする刊行物H.Inouye著“Niobium in High Temperature Applications”から、既に約400℃からの低い温度でニオブ及びその合金の極端に低い酸化安定性の問題が公知である。さらに、ニオブに極く類縁の金属タンタルも類似した挙動を行う。この特性に基づき、これらの金属及びその合金の高温における使用範囲は、極めて制限される。そこで、酸化安定性を高める被覆が既に公知である。この場合には、通常高い費用を用いて被着できるに過ぎないにケイ化物又はアルミニウム化物被覆が使用される。さらに、この層の脆弱性は、層の亀裂の形成又は剥離と結び付いた熱衝撃安定性の劣化を生じる。それに伴い、被覆の意図された保護機能は失われかつ金属の酸化は欠陥位置から出発して層内に侵入する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、放電ランプ内又は放電ランプに配置された、ニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる支持体を有する金属構成部材の、酸化及び腐食に対する安定性を高めることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、前記課題は、本発明により、支持体が、少なくとも1種の貴金属及び/又は貴金属合金から形成された単数又は複数の単一層からなる被覆を有することにより解決される。このような被覆は、酸化及び腐食安定性を高めること、充分な延性及び熱衝撃安定性に対する要求を極めて良好に満足する。
【0007】
単数又は複数の単一層から構成された被覆のために、理想的には貴金属:金及び/又は白金及び/又はパラジウム、及び/又はこれらの元素の少なくとも2つから形成された合金を使用する。被覆のために使用されるこれらの貴金属は1000℃を越える融点を有する。従って、これらの被覆は還元又は不活性雰囲気内で放電ランプにおいて通常生じる使用温度よりも高い温度の作用を可能にするので、場合により使用前に例えば該被覆に対するはんだ付けのような必要な組立工程を実施することができる。例えば、放電ランプのためのニオブ合金からなるリード線をまず貴金属で被覆し、かつ引き続き被覆したリード線を放電管の開口にばんだ付けすることができ、その際被覆の保護作用ははんだ付け工程中の高い温度負荷により失われない。
【0008】
支持体上に金からなる第1の単一層、その上に白金及び/又はパラジウム、及び/又は貴金属:金、白金又はパラジウムの少なくとも2つから形成された合金からなる第2の単一層を被着するのが、特に有利であることが立証された。
【0009】
この場合、第1の単一層は好ましくは0.1μm〜5μmの厚さを有し、その上に被着された別の単一層はそれぞれ1μm〜5μmの厚さを有する。この際、単一層とは、1工程又は連続する製造工程において、また異なる製造方法で製造された貴金属又は貴金属合金からなる層を意味する。
【0010】
被覆材料は、使用中に存在する温度範囲に関してその融点に依存して前記の貴金属又は貴金属合金から選択すべきである。異なった貴金属を組み合わせれば、高温を作用させて拡散化合物を形成することができる。それによって、被覆は拡散により形成されかつ2つの単一層の間の移行部のみに存在するか又は被覆の全体を占有する貴金属混晶を有することができる。例えば、第1の単一層が金でありかつ第2の単一層がパラジウムである場合パラジウムがその下にある金層に拡散侵入すると、該層の融点は上昇する。この拡散化合物は例えば被覆された構成部材の製造直後、構成部材の組立の際のはんだ付け工程中或いはまた使用位置で及び使用条件化で温度処理により製造することができる。
【0011】
単一層は、物理的及び/又は化学的にニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルを基礎とする合金からなる支持体に被着することができる。理想的には、単一層の被着はスパッタリング及び/又は電気メッキにより行う。それというのも、この場合には複雑な形状を有する構成部材の面の選択的被覆が可能であるからである。さらに、両者の方法は簡単で、複雑化されていずかつ高温を使用しないで実施可能である。なかんずく第1の単一層は、好ましくはスパッタリング、又はスパッタリングとそれに引き続いた電気メッキ法で製造する。それというのも、スパッタリングされた貴金属は、支持体と良好な付着結合を起こしかつそうして付着媒体として作用するからである。
【0012】
ニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる被覆すべき支持体の表面品質は、被覆の保護作用の持続のために決定的な影響要因である。支持体の表面に例えば孔、引掻傷又は加工痕のような多くの欠陥箇所が存在する場合、これらの箇所での被覆は完全には密封することができないという確立が高まる。被覆内に穴又は薄い箇所の形で継続することがある前記の欠陥箇所から出発して、支持体は酸化又は腐食により侵食される。良好な層付着のためには、ニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる支持体を被覆の被着前に表面の化学的浄化及び活性化により処理すれば、有利であることが立証された。例えば、該部分の酸洗いが可能である、それによりなかんずく、特に酸化物層にも数えられる無機堆積物が排除される。
【0013】
本発明による放電ランプは放電管を包含し、該放電管の壁を貫通してリード線としての金属構成部材が、例えば高圧ランプにおけるように、案内されている。この場合、リード線は、ニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる支持体を有し、該支持体は、少なくとも1種の貴金属及び/又は貴金属合金から形成された単数又は複数の単一層からなる被覆を有する。このように被覆されたリード線を有する放電ランプの大きな利点は、例えばガラスからなる付加的な外部保護カプセルを無しで作動することができることにある。リード線の被覆のために有利に使用される貴金属は、金及び/又は白金及び/又はパラジウム、及び/又はこれらの貴金属の少なくとも2つから形成された合金である。
【0014】
リード線の支持体上に、金からなる第1の単一層及びその上に白金及び/又はパラジウム、及び/又は貴金属:金、白金又はパラジウムの少なくとも2つから形成された合金が被着されている場合が特に有利であることが立証された。この場合には、第1の単一層は0.1μm〜5μmの厚さ、かつその上に被着された別の単一層はそれぞれ1μm〜5μmの厚さを有することができる。被覆はリード線の支持体を部分的にのみ覆うこともできる。さらに、被覆は拡散により形成された金属混晶を有することができる。
【0015】
【実施例】
以下の例1〜9及び図1により、本発明を詳細に説明する。全ての例のためには、直径1mm及び長さ15mmを有する合金NbZr1からなるワイヤピンの形の構成部材を使用した。
【0016】
例1(比較実験):
実験:ワイヤピンを空気に接触させて500℃の温度で10時間処理した。
【0017】
結果:該ワイヤピンは分解して、ニオブ−ジルコニウム−酸化物からなる白色のダストになった。
【0018】
例2:
前処理:ワイヤピンを希硫酸及びフッ化水素酸からなる混合物中で酸洗いすることにより浄化した。ワイヤピンの酸洗いした表面に、この例では付着媒体として役立つ約0.2μmの厚さを有する金をスパッタリングした。スパッタリングした金を、市販のアルカリ浴を用いて厚さ約4μmの電気メッキで堆積した純金で被覆した。
【0019】
実験:従ってスパッタリング及び電気メッキ堆積により被着した金からなる約4.2μmの厚さの単一層を有するワイヤピンを空気に接触させて500℃の温度で10時間処理した。
【0020】
結果:金で被覆したワイヤピンには酸化侵食の徴候は確認されなかった。
【0021】
例3:
前処理:例2におけると同じ前処理
実験:従ってスパッタリング及び電気メッキ堆積により被着した金からなる約4.2μmの厚さの単一層を有するワイヤピンを空気に接触させて900℃の温度で10時間処理した。
【0022】
結果:金で被覆したワイヤピンには酸化侵食の徴候は確認されなかった。
【0023】
例4:
前処理:例2におけると同じ前処理
実験:従ってスパッタリング及び電気メッキ堆積により被着した金からなる約4.2μmの厚さの単一層を有するワイヤピンを空気に接触させて900℃の温度で5分間、引き続き500℃の温度で10時間処理した。
【0024】
結果:金で被覆したワイヤピンに極めて僅かな酸化侵食が確認された。金相学的研磨によれば、NbZr1合金と金層の間に拡散化合物が生じたことが判明した。
【0025】
例5:
前処理:例2におけると同じ前処理
実験:従ってスパッタリング及び電気メッキ堆積により被着した金からなる約4.2μmの厚さの単一層を有するワイヤピンを空気に接触させて1100℃の温度で5分間処理した。
【0026】
結果:該実験で設定した1100℃の温度は金の融点よりも高いので、金被覆に溶融現象が観察された。それにもかかわらず、視覚的には金で被覆されたワイヤピンには酸化侵食は確認されなかった。
【0027】
例6:
前処理:例2におけると同じ前処理
実験:従ってスパッタリング及び電気メッキ堆積により被着した金からなる約4.2μmの厚さの単一層を有するワイヤピンを空気に接触させて1100℃の温度で5分間保管し、引き続き500℃の温度で10時間処理した。
【0028】
結果:被覆の溶融現象及び金で被覆されたワイヤピンの極めて僅かな酸化侵食が確認された。
【0029】
例7:
前処理:ワイヤピンを希硫酸及びフッ化水素酸からなる混合物中で酸洗いすることにより浄化した。ワイヤピンの酸洗いした表面に、この例では付着媒体として役立つ約0.2μmの厚さを有する金をスパッタリングした。スパッタリングした金を、市販のアルカリ浴を用いて厚さ約4μmの電気メッキで堆積した純金で被覆した。引き続き、この金からなる全部で厚さ4.2μmの単一層を中性浴(pH7.8)中で電気メッキでパラジウムからなる厚さ約3μmの単一層で被覆した。
【0030】
実験:金及びパラジウムからなる2つの単一層を有するワイヤピンを空気に接触させて1100℃の温度で5分間、引き続き500℃の温度で10時間処理した。
【0031】
結果:被覆の溶融現象もまた金及びパラジウムで被覆したワイヤピンには酸化侵食の徴候も確認されなかった。
【0032】
例8:
前処理:例7におけると同じ前処理
実験:金及びパラジウムからなる2つの単一層を有するワイヤピンを空気に接触させて500℃の温度で10時間処理した。
【0033】
結果:金及びパラジウムで被覆されたワイヤピンの酸化侵食が確認されなかった。金相学的研磨によれば、若干のワイヤピンにおいて被覆内に完全な金−パラジウム混晶が生成したことが判明した。被覆はワイヤピンとの良好な付着結合を形成した。
【0034】
例9:
前処理:ワイヤピンを希硫酸及びフッ化水素酸からなる混合物中で酸洗いすることにより浄化した。ワイヤピンの酸洗いした表面に、この例では付着媒体として役立つ約0.4μmの厚さを有するパラジウムをスパッタリングした。スパッタリングしたパラジウムを、市販のアルカリ浴を用いて厚さ約4μmの電気メッキで堆積したパラジウムで被覆した。
【0035】
実験:従ってスパッタリング及び電気メッキ堆積により被着したパラジウムからなる約4.4μmの厚さの単一層を有するワイヤピンを空気に接触させて1100℃の温度で5分間、引き続き500℃の温度で10時間処理した。
【0036】
結果:パラジウムで被覆したワイヤピンには酸化侵食の徴候は確認されなかった。
【0037】
図1は、放電ランプの両者の接続領域の一方を例示する。この例では、セラミックからなる放電管1及びニオブからなるリード線2を有する放電ランプが製造されており、前記リード線の表面は部分的に貴金属からなる本発明による被覆3で覆われている。リード線2はガラスろう4で放電管1の管開口内に気密にはんだ付けされかつ被覆されていない端部が放電管1内に突入している。被覆3を有するリード線2の他方の端部は、放電管1の外部で周囲空気と接触している。その際、ガラスろう4は、被覆3が終わるリード線2の領域をも覆っているので、リード線2は放電管1の外部領域では完全に被覆3で覆われておりかつ周囲空気からの酸素による酸化から保護されている。この場合には、リード線2の被覆されていない端部は、例えばタングステン電極5を支持する。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電ランプの両者の接続領域の一方を例示する略示図である。
【符号の説明】
1 放電管、 2 リード線2、 3 被覆、 4 ガラスろう、 5 タングステン電極

Claims (9)

  1. ニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる支持体を有する放電ランプのためのリード線部材において、支持体が、少なくとも1種の貴金属及び/又は貴金属合金から形成された複数の単一層からなる被覆を有し、その際第1の単一層が0.1〜5μmの厚さを有しかつその上に被着された別の単一層が1μm〜5μmの厚さを有することを特徴とするリード線部材。
  2. 前記被覆は金及び/又は白金及び/又はパラジウム、及び/又はこれらの貴金属の少なくとも2つから形成された合金である、請求項1記載のリード線部材。
  3. 支持体の上に金からなる第1の単一層、その上に、白金及び/又はパラジウム、及び/又は貴金属:金、白金又はパラジウムの少なくとも2つから形成された合金からなる第2の単一層が被着されている、請求項1又は2記載のリード線部材。
  4. 前記被覆は支持体を部分的にだけ覆っている、請求項1から3までのいずれか1項記載のリード線部材。
  5. 前記被覆は拡散により形成された貴金属混晶を有する、請求項1記載のリード線部材。
  6. 放電管を有し、該放電管の壁を貫通してリード線部材としての金属構成部材が案内されており、リード線部材がガラスろうによって気密に放電管と結合されており、かつ、リード線部材がニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる支持体を有し、該支持体が、少なくとも放電管から突出しかつガラスろう不在である支持体の領域内に、少なくとも1種の貴金属及び/又は貴金属合金から形成された複数の単一層からなる被覆を有し、その際第1の単一層は0.1μm〜5μmの厚さを有し、かつその上に被着された別の単一層はそれぞれ1μm〜5μmの厚さを有することを特徴とする放電ランプ。
  7. 前記被覆は金及び/又は白金及び/又はパラジウム及び/又はこれらの貴金属の少なくとも2つから形成された合金である、請求項6記載の放電ランプ。
  8. 支持体上に金からなる第1の単一層、及びその上に白金及び/又はパラジウム、及び/又は貴金属:金、白金又はパラジウムの少なくとも2つから形成された合金からなる第2の単一層が被着されている、請求項6又は7記載の放電ランプ。
  9. 前記被覆は拡散によって形成された貴金属混晶を有する、請求項6記載の放電ランプ。
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