JP3594641B2 - 高度不飽和脂肪酸またはその誘導体のエポキシ化物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本件発明は、個以上のエポキシ環を含有する高度不飽和脂肪酸またはその誘導体のエポキシ化物およびその硬化物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は硬化性樹脂であり、用途に応じた硬化剤と組み合わせ、硬化(橋かけ)することで、さまざまな特性をもった硬化樹脂を得ることができる。特に、耐熱性と機械的強さのバランスや電気的特性、接着特性、耐食性などに優れることや、成形の容易なことから、塗料、電気・電子、土木建築、接着剤、複合材料などの分野に幅広く用いられ、各分野で重要な役割を果たしている。なかでも、電気・電子や複合材料などの先端技術分野では、なくてはならない素材の一つとなっていて、今後ともその重要性は増していくものと考えられている。
【0003】
エポキシ樹脂とは、通常、1分子中に2個以上のエポキシ基(オキシラン環)をもつ化合物の総称であり、一部の例外を除いては、アミン類や、酸無水物類などの硬化剤と反応して、三次元網目構造をもつ硬化物を形成する。
エポキシ樹脂には多くの種類があるが、製造原料の種類から、▲1▼グリシジルエーテル型、▲2▼グリシジルエステル型、▲3▼グリシジルアミン型、▲4▼脂環型に分類される。
【0004】
これまでに開発されたエポキシ樹脂のほとんどは、グリシジルエーテル型のものである。上記の分類以外に、エポキシ化合物としては、鎖状化合物の炭素二重結合を酸化して得られるエポキシ化大豆油や、エポキシ化ポリブタジエンなどがあるが、これらは通常エポキシ樹脂の範疇に入れないことが多い。この鎖状化合物の炭素二重結合を酸化して得られるタイプのものはエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油などで一分子の炭素数18、炭素二重結合数2〜3の脂肪酸のエポキシ化物であり、反応性の添加剤として塗料などに利用されている。
【0005】
天然油脂、特にサバ、イワシ、タラ等の水産物油脂中にそれ自体として、あるいはそのグリセライド等の誘導体として含まれているエイコサペンタエン酸(EPAと略すこともある。)、ドコサヘキサエン酸(以下、「DHA」と略すこともある。)は、最近高純度品のものが生産されるようになった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、1分子中に個以上のエポキシ基を有する高度不飽和脂肪酸またはその誘導体のエポキシ化物およびその硬化物の提供を目的とする。本発明はこれまで開発されたエポキシ樹脂にはないタイプの新規エポキシ化合物の提供を目的とする。さらに、これまで適当な用途のなかった魚油高度不飽和脂肪酸の有効な活用方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
一般式(I)
COOR (1)
(式中、Rは9〜25個の炭素原子からなり不飽和結合を4〜6個含む炭化水素鎖を示し、RはH、炭素原子1〜8個からなるアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される高度不飽和脂肪酸またはその誘導体の分子中の、不飽和結合を個以上エポキシ化してなるエポキシ化合物。
【0008】
このエポキシ化合物は、例えばDHAを原料としたものであり、DHAを種々の試薬を用いて(例えば過酸)二重結合を酸化してエポキシ基とする。この時、試薬の量を変える事により、エポキシ基の数をコントロールすることができ、反応性の高い二重結合を残すこともできる。また、このエポキシ化合物は、種々の硬化触媒(例えばルイス酸)を用いてそのエポキシ基を開環重合させるとエポキシ化合物の硬化物とすることができる。またエポキシ樹脂に使用される硬化触媒或いは硬化剤を用いて、その種類、反応時間等を変えることにより、さまざまな性質を持ったエポキシ樹脂の硬化体とすることができる。
【0009】
硬化触媒には、アニオン重合型またはカチオン重合型の触媒が使用される。アニオン重合型触媒としては、DMP30:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾールが例示される。カチオン重合型としては、BF・MEA:BFモノエチルアミン錯体が例示される。
【0010】
硬化剤には、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタンなどが使用される。ポリアミンとしては、DETA:ジエチレントリアミン、TETA:トリエチレンテトラミン、MDA:メンセンジアミン、IPDA:イソホロンジアミン、m−XDA:m−キシレンジアミン、DDM:ジアミノジフェニルメタンが例示される。酸無水物としては、PA:無水フタル酸、THPA:テトラヒドロ無水フタル酸、HHPA:ヘキサヒドロ無水フタル酸、PMDA:無水ピロメリット酸、BTDA:ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、TMA:無水トリメリット酸が例示される。ポリフェノールとしては、PN:フェノールノボラックが例示される。ポリメルカプタンとしては、PM:ポリメルカプタン、PS:ポリサルファイドが例示される。
【0011】
一般式(I)
COOR (1)
(式中、Rは9〜25個の炭素原子からなり不飽和結合を3〜6個含む炭化水素鎖を示し、RはH、炭素原子1〜8個からなるアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
で表される高度不飽和脂肪酸として、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ヘキサデカテトラエン酸、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサテトラエン酸が例示される。天然油脂の蒸留残留物も使用できる。
【0012】
エポキシ樹脂の硬化物は、その優れた諸特性、およびその取り扱いの容易さなどから、電気、電子絶縁や封止材料、塗料複合材料のマトリックス樹脂、土木建築材料、接着剤など幅広い分野に使用されている。
さらにこれらの性質は、多量のエポキシ化合物および硬化剤の組合わせによって決まる。また、同じエポキシ化合物と硬化剤の組合わせの硬化物でも、その硬化時間によってその性質は異なり、加えて多くの種類の流動調整剤、物性改質剤およびその他の添加剤によっても異なる性質をもった硬化物となる。このようにエポキシ樹脂硬化物は硬化剤との組合わせ、添加剤、硬化時間によって、多種多様のすぐれた性質をあたえてくれるものと考えられている。
【0013】
例を上げると、もっとも一般的に使用されているビスフェノールAジグリシジルエーテルは、硬化剤として酸無水物、イミダソール化合物、BF錯体を用いて加熱、硬化すると電気絶縁材料となり、アミノ樹脂、フェノールレゾールと加熱硬化すると缶用塗料となり、また、脂肪族ポリアミン、ポリアミド脂肪族ポリアミン、変性ポリアミン、ポリメルカプタン等を用いて常温硬化すると、土木、建築用の接着剤や塗料、重防食用塗料、一般接着剤となる。
【0014】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0015】
Figure 0003594641
DHAのエチルエステル(DHA−Et98.3%)10g(28.05mmol)を塩化メチレン100mlに溶かし、これに、塩化メチレン1lに溶かしたm−クロロ過安息香酸(m−CPBA)168.3mmolを3時間かけて滴下する。次に反応液を30〜40℃に加熱し1時間撹拌する。その後、室温で一晩撹拌し、減圧濃縮し、析出した白色結晶(m−クロロ安息香酸)を濾過する。この濾液をシリカゲルカラムに負荷し、酢酸エチルにて展開し、m−クロロ安息香酸を取り除く。次に、m−クロロ安息香酸を取り除いた物を減圧濃縮し、再度シリカゲルカラムに負荷し、酢酸エチル・ヘキサン(1:1)にて展開し、薄層クロマトグラフィ上、単一スポットの溶出画分を得る。この溶出画分を減圧濃縮し、目的の、4,5−7,8−10,11−13,14−16,17−19,20−ヘキサエポキシドコサン酸エチルが得られる。
【0016】
目的化合物の▲1▼赤外線吸収スペクトルおよび▲2▼核磁気共鳴スペクトルの結果を以下に示す。
▲1▼ IR:(neat,cm−1
2978、2889、1732、1182、852、829
▲2▼ H−NMR(90MHz,CDClδ(ppm))
1.07(3H,t,J=7.3Hz), 1.27(3H,t,J=7.1Hz),1.45−2.20(14H,m),2.60(2H,t,J=7.3Hz),2.83−3.50(12H,m),4.15(2H,q,J=7.1Hz)
【0017】
実施例2
実施例1で得たモノマー574.0mg(1.268mmol)を塩化メチレン1.3mlに溶かし、窒素下、−78℃で4.7mol%のBFエチルエーテル錯体を加え、1時間撹拌する。次に室温で14時間撹拌し、その後アンモニア水(23%)、メタノール(1:1)を入れ反応を止め、架橋体を濾取し、メタノールでアンモニア水がとれるまで洗い、モノマーの架橋体423.0mgを得た。
【0018】
架橋体の▲1▼赤外線吸収スペクトル、▲2▼耐熱性(5%,10%損失温度)および▲3▼元素分析値(ポリマー DHA−Et 98.3%)の結果を以下に示す。
▲1▼ IR:(KBr,cm−1
2975,2936,1732,1186,1071,855,826
▲2▼ 5%重量損失温度 Td=269.5℃
10%重量損失温度 Td10=307.7℃
▲3▼ 元素分析
測定値 理論値
C:62.62% C:63.699%
H:7.96% H:8.018%
(O:29.39%) 0:28.283%
N:0.03%
【0019】
【発明の効果】
1分子中に個以上のエポキシ基を有する高度不飽和脂肪酸またはその誘導体のエポキシ化物およびその硬化物を提供することができる。これまで開発されたエポキシ樹脂にはないタイプの新規エポキシ化合物を提供することができる。さらに、これまで適当な用途のなかった魚油高度不飽和脂肪酸の有効な活用方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 一般式(I)
    COOR (1)
    (式中、Rは9〜25個の炭素原子からなり不飽和結合を4〜6個含む炭化水素鎖を示し、RはH、炭素原子1〜8個からなるアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される高度不飽和脂肪酸またはその誘導体の分子中の、不飽和結合を個以上エポキシ化してなるエポキシ化合物。
  2. 不飽和結合をすべてエポキシ化してなる請求項1記載のエポキシ化合物。
  3. 分子中の不飽和結合がすべてエポキシ化されているエポキシ化合物と二重結合を残しているエポキシ化合物の混合物である請求項1記載のエポキシ化合物。
  4. 一般式(I)で表される高度不飽和脂肪酸の誘導体がドコサヘキサエン酸またはそのエステルであり、分子中に5個以上エポキシ基を有する請求項1記載のエポキシ化合物。
  5. 一般式(I)で表される高度不飽和脂肪酸の誘導体がエイコサペンタエン酸またはそのエステルであり、分子中に個以上エポキシ基を有する請求項1記載のエポキシ化合物。
  6. 請求項1 、請求項2 、請求項3 、請求項4 、請求項5記載のエポキシ化合物の硬化物
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