JP3594395B2 - 補機トルク検出システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車エンジンの補機、例えば、エアコンディショナの圧縮機、パワーステアリングの油圧ポンプ、オルタネータ、ラジエータ用冷却ファン等の負荷トルクを検出するシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両に搭載された内燃機関においては、その補機、例えば、空調装置の冷媒圧縮機、パワーステアリングの油圧ポンプ、オルタネータ、ラジエータ用冷却ファン等を、機関のクランク軸に取り付けられたクランク軸プーリによって一連のベルトを介して同時に駆動するが、それらの補機の負荷トルク(補機トルク)を正確に測定することができれば、アイドル回転数をより高い精度をもって制御することができるので、アイドル回転数を更に低く抑えることが可能になり、しかも、オートマティック・トランスミッションの制御をよりきめ細かなものとして、シフト・チェンジをより円滑なものとすることができる。また、空調装置の冷媒圧縮機が万一にもロックした場合にそれを検出して対応したり、パワーステアリングシステムにおいて、運転者によって無理な据え切りが行われた場合にそれを検出して警告を発するというようなことも可能になる。
【0003】
従来、回転軸(駆動軸)によって伝達されるトルク量を検出する一般的な方法としては、伝達されるトルク量の大きさに応じて、トルクを伝達している回転軸が弾性的に捻れるねじれ変形を起こすのを利用して、回転軸の一部に歪みゲージの電気抵抗値を計測し、その変化から回転軸の微少なねじれ量を測定することにより伝達されるトルク量を検出している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、以下のような問題点が存在する。
1.歪み量を測定するのに歪みゲージを用いるが、これは歪みゲージの貼り方により出力特性が大きく変化する。従って、一定のトルク量に対する測定値にばらつきが生じやすいので計測精度が低い。
2.文字通り回転している回転軸に歪みゲージを接着してから出力信号(電気信号)を外部へ取り出すものであるから、その信号を取り出すのに通電される電気回路にはスリップリング等を用いる必要があり、それがシステムの信頼性、耐久性を低下させている。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルトの弾性変形(伸び)を利用し、補機の負荷トルク量を検出することにより、アイドルスピードを低速にでき、オートマチックトランスミッションのシフトチェンジを円滑にでき、エアコンディショナの圧縮機のロック検出やパワーステアリングのすえ切り検出も付加でき、更に、高い測定精度や信頼性、耐久性を得ることのできる補機トルク検出システムを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1記載の手段を採用することができる。
この手段によると、駆動軸プーリ、少なくとも一個の補機プーリ、少なくとも一個のアイドラプーリのうち、ベルトの最も緩み側にあるプーリの回転速度を常時リアルタイムで計測し、そのうち二つの回転速度の比と、ベルトの弾性係数とに応じ、補機類全体の負荷トルク量を算出することができる。
そして、本発明の補機トルク検出システムは、エンジンへの取り付け方によって出力特性が変化することがない。また、計測手段はスリップリング等を使用しない非接触の計測なので高い測定精度や信頼性、耐久性を得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図3に示すように、自動車に搭載される内燃機関1においては各種の補機を駆動するためのベルトプーリ、例えば、空調装置の冷媒圧縮機プーリ2、パワーステアリングの油圧ポンプ用プーリ3、オルタネータ即ち発電用プーリ4、ラジエータの冷却ファン用プーリ5というような補機用の多くのプーリが、動力源である内燃機関のクランク軸21のプーリ6(一般的に言えば駆動軸プーリ)によって一連のベルト7を介して同時に駆動されるようになっている。多くのプーリに蛇行状に一本のベルト7を巻き掛けるためにアイドラプーリが用いられる場合もあり、図3の例ではアイドラプーリ8が用いられている他、ベルト7の張力が一定値になるように自動的に調整するオートテンショナ9も、一個のアイドラプーリ10を伴ってベルト7の最も緩み側に設けられている。
【0008】
本発明の補機トルク検出システムは各プーリに取付けることもできるが、図1及び図2に示す第1の実施形態は、オートテンショナー9を利用した補機トルク検出システムの機構を示したものである。
オートテンショナー9のアイドラプーリ10の円環状内面11には磁性体からなる多数の歯12が等間隔に設けられる。実際には、アイドラプーリ10全体を磁性のある鋳鉄或いは鋼材のような素材によって形成し、その円環状内面11に内歯車状に多数の歯12を切削成形する。或いは、アイドラプーリ10を鋳造等の方法で型成形する場合には、円環状内面11の歯12も同じ鋳型によって同時に成形されるようにすると工程が簡単になって有利である。
【0009】
オートテンショナー9のアーム13は、その基部14が、図示しない軸によって限られた角度範囲内で回動することができるように支持されており、やはり図示していない発条或いは油圧シリンダのような付勢手段によって、ベルト7を緊張させる回動方向に付勢されている。また、アーム13の自由端に一体的に取り付けられた軸15には軸受16が設けられて、それによってアイドラプーリ10が回転自在に軸支されている。
【0010】
アーム13に形成された突起17には回転数センサとしての電磁ピックアップ18が取り付けられており、電磁ピックアップ18の先端(検出端)は磁性体からなる多数の歯12のいずれかに対して所定の間隙を残して対向し得る位置に突出している。電磁ピックアップ18は永久磁石又は磁気的にそれに接続している磁性体のコア(その一端が検出端)にコイルを巻いたものであって、コイルの両端を可撓性のあるリード線19,20によって直接に外部の固定端子へ接続するか、又は、コイルの一端をアーム13に接続すると共に、コイルの他端を可撓性のある一本のリード線によって外部へ引き出して外部の固定端子へ接続する。アーム13の移動(回動)範囲は狭い角度内に限られているから、従来技術におけるスリップリングのような摺動機構を用いなくても、このように可撓性のあるリード線の先端を直接に対象の固定端子へ接続して出力信号を外部へ取り出すことができる。
【0011】
駆動側のプーリであるクランク軸21のプーリ6は張り側のベルト速度で回転し、従動側のプーリであるオートテンショナー9のアイドラプーリ10は緩み側のベルト速度で回転する。
前述したように本発明の補機トルク検出システムは各プーリに取り付けることもできるが、該補機トルク検出システムの電磁ピックアップ18により該システムが取り付けられたプーリの回転速度が検出される。そして、駆動側であるクランク軸21のプーリ6の回転速度をW1、従動側であるアイドラプーリ10の回転速度をW2とする。
【0012】
次に、図1及び図2に示された本発明の第1の実施形態の作動について、図3を参照しながら説明する。図1において内燃機関1のクランク軸21が回転することによって、クランク軸プーリ6に対して一連のベルト7によって係合している空調装置の冷媒圧縮機用プーリ2、パワーステアリングの油圧ポンプ用プーリ3、発電機用プーリ4、冷却ファン用プーリ5、アイドラプーリ8、及びオートテンショナー9のアイドラプーリ10等は一斉に回転駆動されるが、これらの補機プーリを駆動するためにクランク軸21に作用するトルク(補機トルク)は、クランク軸21自体の回転速度W1の変動に伴って変化するだけでなく、補機の中にはプーリ2に連結された冷媒圧縮機のように断続運転されるものがあるために、補機トルクは一定ではあり得ず、内燃機関1の運転中は常に変動していると言ってよい。
【0013】
そこで、変動する補機トルクを常時リアルタイムで正確に検出することができれば、内燃機関1の運転状態についてきめ細かな制御を行うことができるが、本実施形態においては、クランク軸21のプーリ6に併設した電磁ピックアップ18によって駆動側プーリの回転速度W1ばかりでなくオートテンショナー9に併設した電磁ピックアップ18によって従動側プーリであるアイドラプーリ10の回転速度W2を常時リアルタイムで検出している。
【0014】
従って、クランク軸プーリ6からベルト7を介してオートテンショナーのアイドラプーリ10が回転駆動されると、アーム13に対して固定されて実質的に移動しない電磁ピックアップ18の検出端の直前を、磁性体からなる多数の歯12が微小な時間間隔をおいて間欠的に通過することになるので、その通過の前後において、電磁ピックアップ18のコイルを通過している永久磁石の磁束密度が急激に増減変化する結果、電磁ピックアップ18のコイルには電圧波形として略等間隔のピークを有するパルス電流が発生する。このパルス電流が回転速度W1,W2に対応する出力信号としてリード線19,20等を介して直接に外部の固定端子へ取り出されて、演算装置を備えた図示しない制御装置に入力される。
【0015】
制御装置においては、電磁ピックアップ18の出力信号であるパルス電流について単位時間当たりのピークの数をカウントすることによって、クランク軸21のプーリ6の回転速度W1とオートテンショナーのアイドラプーリ10の回転速度W2を検知する。
そこで、検出された回転速度W1及びW2によってクランク軸プーリ6とアイドラプーリ10との間の回転速度比W1/W2を計算することによって補機トルクの大きさを算定することができる。
即ち、記号W1,W2,K,R1,R2を、
W1:クランク軸21のプーリ6の回転速度
W2:オートテンショナーのアイドラプーリ10の回転速度
K:ベルトの弾性係数
R1:駆動側であるプーリ6の半径
R2:従動側であるアイドラプーリ10の半径
のように定義した場合、補機の負荷トルクTrqは次の計算式によって求められる。
Trq≒R1・K((R1/R2)・(W1/W2)−1)…(1)
該(1)式から、負荷トルクTrqと回転速度比W1/W2は直線関係となることが判る。
【0016】
回転数W1及びW2を常時検出し、その出力信号によって前述のような計算を電子式制御装置内の演算装置によって自動的に行うようにすれば、補機トルクの大きさを絶えずリアルタイムに高精度で検知して、迅速に必要な対応措置を講じることができるようになる。
【0017】
第1の実施形態では回転数センサとして電磁誘導式のピックアップ18を使用したが、第2の実施形態として回転数センサに光を使ったものを説明する。図4及び図5において、22は発光ダイオードのような発光素子を、23はフォトダイオードのような受光素子を示している。発光素子22と受光素子23は、例えば第1の実施形態におけるものと同様なオートテンショナー9のアイドラプーリ10の縁部において、対向するようにアーム13上に取り付けられる。そのために、発光素子22と受光素子23のいずれか一方を支持する突起24のようなものをアーム13と一体に形成してもよい。
【0018】
発光素子22と受光素子23の間にはアイドラプーリ10の縁部に環状に形成された回転スリット25が介入するように、発光素子22と受光素子23が位置決めされる。回転スリット25は、図5から明らかなように、環状の板26に光を透過する放射方向の細かな開口27を円周方向に見て等間隔に形成したものであって、アイドラプーリ10のスカート部28に直接に穿孔形成してもよいが、回転スリット25をアイドラプーリ10とは別体のものとして形成して、それをスカート部28に取り付けてもよい。また、受光素子23の受光面にはマスクとしての板状の固定スリット29が固定されており、固定スリット29には幾つかの開口30が形成されている。
【0019】
本発明の第2の実施形態はこのように構成されているので、オートテンショナーのアイドラプーリ10がベルト7によって駆動されて回転すると、回転スリット25が共に回転し、発光素子22の光軸が、回転スリット25の環状の板26に形成された開口27と、固定スリット29に形成された開口30に合致した時だけ、発光素子22の発する光が受光素子23に到達してパルス電流が受光素子23から出力される。従って、これは第1の実施形態における電磁ピックアップ18の出力信号と同様に、アイドラプーリ10の回転速度W2を表すものであり、別に計測されるクランク軸21の回転速度W1と共に演算装置により処理されて、前記(1)式よりクランク軸21に作用する負荷トルクTrqを知ることができる。
【0020】
第2の実施形態においても、発光素子22及び受光素子23はいずれも僅かな回動範囲のみにおいて移動可能なアーム13上に取り付けられているので、発光素子22の端子31及び受光素子23の端子32に一端が接続される可撓性のリード線の他端は、いずれもスリップリングのような摺動部分を介することなく直接に対象の端子に接続されるので、この場合もスリップリングを用いることによる信頼性や耐久性の低下を招く恐れがない。
【0021】
以上の説明では、スリップを含む回転数W2を検出するための回転数センサとして、オートテンショナー9のアイドラプーリ10に対して電磁ピックアップ18とか、それに代わる光センサを設ける例を挙げたが、本発明においては、これらの回転数センサをオートテンショナー9に設けることは必須の要件ではなく、ベルト7のガイドとして設けられたアイドラプーリ8のように、実質的に負荷が作用していない他のプーリに回転数センサを設けてもよい。また、本発明は、クランク軸21のプーリ6の回転速度と、ベルトの最も緩み側にある補機プーリ4の回転速度を測定することにより補機類全体の負荷トルク量を検出することができる。
また、車両の回転駆動源は内燃機関に限らないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の要部を示す断面図である。
【図2】図1に示されたアイドラプーリの下面図である。
【図3】実施形態の全体構成を示す正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の要部を示す断面図である。
【図5】図6に示された回転数センサの要部の概念的斜視図である。
【符号の説明】
1…内燃機関
2,3,4,5…補機プーリ
6…クランク軸プーリ
7…ベルト
8…アイドラプーリ
9…オートテンショナー
10…オートテンショナーのアイドラプーリ
11…円環状内面
12…磁性体からなる多数の歯
13…アーム
18…電磁ピックアップ
19,20…リード線
21…クランク軸
22…発光素子
23…受光素子
25…回転スリット
29…固定スリット

Claims (6)

  1. 回転駆動源と、
    補機を駆動するために前記回転駆動源に取り付けられた駆動軸プーリと、
    少なくとも一個の補機に取り付けられた補機プーリと、
    少なくとも一個のアイドラプーリと、
    前記駆動軸プーリ、補機プーリ、及びアイドラプーリに共通に巻き掛けられたベルトからなる補機駆動装置に使用され、
    前記駆動軸プーリと、前記補機プーリと前記アイドラプーリのうち、前記ベルトの最も緩み側にあるプーリの回転速度を夫々計測する回転速度手段と、
    前記回転速度計測手段のうち二つの計測手段によって計測された回転速度の比を算出し、該回転速度比と、前記ベルトの弾性係数とに応じ、補機類全体の負荷トルク量を算出する演算手段とを備えている補機トルク検出システム。
  2. 前記回転駆動源が内燃機関である請求項1に記載の補機トルク検出システム。
  3. 前記回転速度計測手段によって回転速度を計測されるアイドラプーリがオートテンショナーに付設されている請求項1又は2に記載の補機トルク検出システム。
  4. 前記回転速度検出手段が電磁ピックアップを含んでいる請求項1乃至3のいずれか一つに記載の補機トルク検出システム。
  5. 前記回転速度検出手段が発光素子、受光素子、及び回転するスリット板を含んでいる請求項1乃至3のいずれか一つに記載の補機トルク検出システム。
  6. 前記演算手段は、Trq≒R1・K((R1/R2)・(W1/W2)−1)
    W1:駆動軸プーリの回転速度、W2:アイドラプーリの回転速度
    R1:駆動軸プーリの半径、 R2:アイドラプーリの半径
    K:ベルトの弾性係数
    によって求められる請求項1乃至5のいずれか一つに記載の補機トルク検出システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016205932A (ja) * 2015-04-20 2016-12-08 三ツ星ベルト株式会社 補機トルクの測定方法

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