JP3591995B2 - 微細砥粒砥石を用いた加工方法および微細砥粒砥石加工用研削液 - Google Patents

微細砥粒砥石を用いた加工方法および微細砥粒砥石加工用研削液 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、研削加工,ホーニング加工,超仕上げ加工等、平均粒径が32μm以下の砥粒をバインダで固めて成る微細砥粒砥石と被加工物とを接触状態に保ちつつ互いに相対移動させることにより被加工物を加工する加工方法およびこれら加工方法の実施に使用される水溶性の微細砥粒砥石加工用研削液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、平均粒径が32μm以下の微細砥粒砥石を用いた加工においては油性の研削液が使用されていた。しかし、油性の研削液が使用されると、作業環境が悪くなったり、引火のおそれがあるため、水溶性の研削液の使用が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
それに対して、昭和61年10月15日コロナ社発行 精密工作便覧 第594頁ないし第599頁には、水溶性の研削液についての記載がある。この水溶性の研削液には、加工時における砥石の目詰まりを防止するために無機塩類(亜硝酸塩)が含まれている。そのため、酸化アルミニウム等の砥粒の表面が無機塩類の陽イオンで覆われ、鋼等の被加工物(切りくず)の表面が陰イオンで覆われることになり、切りくず(鉄イオン)が砥粒(陰イオン)にイオン結合して溶着することが抑制される。しかし、この水溶性の研削液は人体に対する安全性に問題があるものであるため、実用には適さないものであった。亜硝酸塩が塩基性物質(アミン類物質)と反応して、発ガン性物質であるN−ニトロソアミンが生成されるのである。
そこで、第一、第九の発明の課題は、人体に対する害を回避し得る微細砥粒砥石加工用研削液を得ることであり、具体的には被加工物が鉄を含むものである場合において砥石の目詰まりを良好に防止し得る水溶性研削液を得ることである。また、第二の発明の課題は、微細砥粒砥石に水溶性の研削液を供給しつつ行う加工方法において、研削液の人体に対する害を回避することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段,作用および発明の効果】
上記課題は、請求項1の発明においては、微細砥粒砥石と被加工物との間に、アルカリ性で、前記被加工物の表面に形成された水酸化第一鉄に被覆層を形成することにより、前記水酸化第一鉄の多核錯体への変化を抑制する多核錯体化抑制成分を含み、無機塩類を含まない水溶性の研削液(エマルジョンタイプの研削液を除く)を供給しつつ加工することによって解決される。
【0009】
上記課題は、請求項の発明において、平均粒径が32μm以下の砥粒をバインダで固めて成る微細砥粒砥石と鋼を含む被加工物とを接触状態に保ちつつ互いに相対移動させて被加工物を加工する微細砥粒砥石加工用の水溶性研削液(エマルジョンタイプの研削液を除く)であって、アルカリ性で、前記被加工物の表面に形成された水酸化第一鉄に被覆層を形成することによりその水酸化第一鉄の多核錯体への変化を抑制する多核錯体化抑制成分を含み、無機塩類を含まないものとすることによって解決される。
水酸化第一鉄は多段階の反応を経て多核錯体に変化させられるため、多核錯体化抑制成分はいずれかの段階の反応を抑制するものであればよい。例えば、水酸化第一鉄が水酸化第二鉄に変化する反応を抑制するものであっても、水酸化第二鉄が多核錯体に変化する反応を抑制するものであってもよいのである。前者の多核錯体化抑制成分には、水酸化第一鉄の酸化を防止する成分等が含まれ、後者の多核錯体化抑制成分には、第二鉄の錯体を安定させて多核錯体に変化することを抑制するキレート剤等の成分が含まれる。いずれにしても、多核錯体の生成が抑制されれば、切りくずの微細砥粒砥石への付着が抑制されるため、目詰まりが良好に防止される。
微細砥粒砥石用水溶性研削液は、請求項に記載のように、微細砥粒砥石を1つ以上の円形穴を有する前記被加工物の円形穴の内周面に接触させた状態を保ち、かつ、それら被加工物と微細砥粒砥石とを円形穴の軸方向に相対移動させつつ相対回転させる加工に使用されるものとしたり、請求項に記載のように、前記微細砥粒砥石と前記被加工物とを接触状態に保って相対移動させつつ、少なくとも微細砥粒砥石を被加工物との相対移動方向と交差する方向に振動させる超仕上げ加工使用されるものとしたりすることができる。
また、微細砥粒砥石用水溶性研削液は、請求項に記載のように、前記多核錯体化抑制成分として直鎖状の脂肪酸を含むものとしたり、請求項に記載のように、前記多核錯体化抑制成分として炭素数が12である脂肪酸を含むものとしたりすることができる。
さらに、微細砥粒砥石用水溶性研削液は、請求項に記載のように、前記脂肪酸の塩基性塩を0.5%〜10%含むものとしたり、請求項に記載のように、前記脂肪酸の塩基性塩を0.1%〜30%含むものとしたりすることができる。
ここで、脂肪酸の塩基性塩には、オクタン酸,デカン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,ドコサン酸,オレイン酸,リノール酸等の飽和,不飽和脂肪酸の、ナトリウム塩,カリウム塩等のアルカリ金属塩,第一アミン塩,第二アミン塩等のアミン塩等が含まれ、上記水溶性の研削液にはこれらのうちの1つ以上が含まれる。脂肪酸は直鎖状のものであっても、分枝状のものであってもよいが、潤滑性を向上させるためには、直鎖状のものとすることが望ましい。また、脂肪酸に含まれる炭素の数は、6以上22以下であることが望ましい。
炭素数を6以上としたのは、後に詳述するように、脂肪酸の塩基性塩により鋼を含む被加工物の表面に被覆層が形成される場合においてその被覆層の厚みがある程度厚いことが望ましいからであり、22以下としたのは、それより大きくすると加工時に泡が立ち易くなり、作業性が低下するからである。また、潤滑性,吸着性を良好にするためには、炭素数を6以上22以下とすることが望ましい。さらに、吸着力を大きく、摩擦係数を小さくするためには、炭素数を18とすることが望ましく、被膜強度(防錆力)を大きくするためには、炭素数を12とすることが望ましい。
さらに、脂肪酸は、上述のように、カルボン酸を1つ含むもの(モノカルボン酸)であってもよいが、セバシン酸等のカルボン酸を2つ含むもの(ジカルボン酸)等であってもよい。
また、脂肪酸の塩基性塩(RCOOA)は、水溶性の研削液中で、RCOO - とA + とに電離し、RCOO - が鋼を含む被加工物の表面に吸着し、被覆層が形成される。図4には、脂肪酸がステアリン酸で被加工物の吸着の状態が示されている。電離したRCOO - には鋼との親和部であるカルボキシラートイオンCOO - と、非親和部である炭化水素Rとが含まれるため、カルボキシラートイオンCOO - が鉄イオンFe + に化学吸着し、炭化水素Rが鉄イオンFe + から離間することにより、被加工物の表面に適度な厚さの被覆 層が形成されるのである。なお、炭化水素Rは直鎖状のものとした方が、分枝状のものとする場合より、被覆層が良好に形成される。炭化水素Rが被加工物の表面から垂直に近い形で配列されるため、隣接する分子間にも横方向に大きさ吸引力が作用し,強固で破損し難い層が形成されるのである。したがって、微細砥粒砥石と被加工物とを接触状態に保ちつつ互いに相対移動させることにより鋼を含む被加工物を加工する場合において、これらの間の潤滑性を向上させ得る。
脂肪酸の塩基性塩(RCOOA)を含む水溶性の研削液はアルカリ性となる。したがって、水酸化第一鉄の酸化を抑制し得、砥石の目詰まりを良好に抑制し得る。すなわち、被加工物中の鉄が水溶性の研削液中の水と反応すると、水酸化第一鉄{Fe(OH) 2 }が生成されるが、この水酸化第一鉄が酸化されて水酸化第二鉄{Fe(OH) 3 }となる。この水酸化第二鉄は、還元性が強いため、Fe−O−Feのような複合錯体が生成され、さらに縮合して多核錯体が生成されるのであるが、この多核錯体はコロイド状のゲル化物であるため、切りくずがそれの表面に形成されたゲル化物により微細砥粒の間に付着して砥石の目詰まりの原因となるのである。それに対し、研削液をアルカリ性のものとすれば、水酸化第一鉄の酸化が抑制されるため、多核錯体の生成が抑制されるのである。
また、鋼を含む被加工物の表面において被覆層が形成されれば、水酸化第一鉄が空気中の酸素と反応し難くなることも酸化が抑制されることの原因の1つである。
このように、研削加工,ホーニング加工,超仕上げ加工等において、微細砥粒砥石と被加工物との間に脂肪酸の塩基性塩を含む水溶性研削液を供給されれば、潤滑性を向上させ、砥石の目詰まりを良好に回避し得る。また、本研削液は無機塩類を含まないものであるため、人体に対する害を回避し得る。
上記課題は、請求項の発明において、上述の微細砥粒砥石加工用の水溶性研削液をアルカリ性で、無機塩類を含まず、かつ、直鎖状の脂肪酸のアミン塩と、前記被加工物の表面に形成された水酸化第一鉄の多核錯体への変化を抑制する多核錯体化抑制成分としてのキレート剤とを含むものとすることによって解決される。
【0011】
【発明の補足説明】
本発明は、上記請求項に記載された態様の他、以下の態様でも実施することができる。実施の態様は、便宜上、請求項と同じ形式の実施態様項として記載する。
(1)平均粒径が32μm以下の砥粒をバインダで固めて成る微細砥粒砥石と鉄を含む被加工物とを接触状態に保ちつつ相対移動させる加工用の水溶性研削液であって、(a) 前記被加工物との親和性を有する親和部と親和性を有しない非親和部とを有する親和・非親和成分と、(b) 水酸化第一鉄の多核錯体への変化を抑制する多核錯体化抑制成分との少なくとも一方を含む微細砥粒砥石加工用研削液。
親和・非親和成分と多核錯体化抑制成分とが同一の成分である場合もあるが、異なる成分の場合もある。例えば、脂肪酸の塩基性塩は、親和・非親和成分と多核錯体化抑制成分とを兼ねるものである。
親和・非親和成分は、1つの物質から成る場合もあるが、複数の物質を含む場合もある。親和部が被加工部の表面と結合したり、吸着したりする一方、非親和部が被加工物の表面から離間するため、被加工物の表面に適度な厚さの被覆層が形成される。このような親和・非親和成分には、例えば、界面活性剤、脂肪酸の塩基性塩が含まれ、無機塩類は含まれない。したがって、本発明の水溶性研削液を微細砥粒砥石加工に使用すれば、人体への害を回避しつつ潤滑性等を向上させることができる。
(2)さらに、研削液の表面張力を38以下とした請求項ないし、実施態様項1のいずれか1つに記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
上述の研削液に、界面活性剤等を添加すれば表面張力を低下させることができる。界面活性剤は、非イオン系,アニオン系のいずれであってもよいが、非イオン系の界面活性剤の方が、洗浄性に優れているため望ましい。なお、表面張力は、35以下とすることが望ましく、さらに、33以下とすることが望ましい。
(3)平均粒径が32μm以下の砥粒をバインダで固めて成る微細砥粒砥石と被加工物とを接触状態に保ちつつ相対移動させる加工用の水溶性研削液であって、脂肪酸の塩基性塩を含む微細砥粒砥石加工用研削液。
(4)前記脂肪酸CH3(CH2)n COOHの全炭素数が6以上22以下、望ましくは8以上18以下である請求項ないし、実施態様項1〜3のいずれか1つに記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
CH3(CH2)n COO- の被加工物の表面への吸着力を良好にすることにより良好な被覆層を形成し、作業性を向上させるには、炭素数を12前後とすることが望ましい。また、研削液に含まれる脂肪酸塩基性塩は、1種類であっても複数種類であってもよいが、炭素数12前後のものと、炭素数6〜22のものとの両方を含ませることが望ましい。1種類のみ含ませる場合には、炭素数8〜18のものとすることが望ましい。
さらに、前記脂肪酸の塩基性塩の濃度は0.1%〜30%,さらには0.5%〜10%とすることが望ましい。
(5)前記脂肪酸の塩基性塩が脂肪酸のアミン塩である請求項ないし、実施態様項1ないし4のいずれか1つに記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
研削液を脂肪酸アミン塩を含むものとすれば、被加工物に対する吸着性が2良好となる。
(6)前記砥粒の平均粒径が、25μm以下(1000番)、あるいは13μm以下(2000番)、あるいは8μm以下(3000番)である請求項1記載の微細砥粒砥石を用いた加工方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である超仕上げ加工方法について説明するが、まず、超仕上げ加工装置について説明する。この超仕上げ加工装置においては、本発明の一実施形態である研削液が供給される。図1ないし図3において、超仕上げ加工装置の架台10の上面には、主軸14を備えた主軸台16、主軸14と共に鉄を含む被加工物としての軸受のインナリング18を保持するクランプ装置20等が設けられており、架台10の側方にはクーラントタンク22が設けられている。
【0013】
主軸台16には電動モータ30が設けられており、この電動モータ30により主軸14が回転させられる。また、主軸14の一端には、主軸14と共に回転するバッキングプレート32が取り付けられ、主軸14の一端部が保護されている。このバッキングプレート32の先端には、超硬合金製のプレート34が固定され、インナリング18の一端面の位置決めの基準面とされる。このプレート34によりバッキングプレート32の磨耗が防止される。主軸台16にはまた、ブラケット36を介して微細砥粒砥石40を揺動可能に保持する砥石保持装置42が設けられている。砥石保持装置42は、電動モータ50,揺動機構52,砥石ホルダ54等を備えたもので、揺動機構52は,電動モータ50により回転させられるカム60と,そのカム60の偏心した位置に設けられた揺動リンク62と、揺動リンク62に相対回動可能に取り付けられ、先端に砥石ホルダ54を有する揺動クランク64とを備えたものである。電動モータ50が回転させられると、カム60が回転させられ、それに伴って揺動クランク64が揺動させられて微細砥粒砥石40を揺動させる。微細砥粒砥石40は、平均粒径が約25μmの砥粒がバインダにより固定されて形成されたものであり、砥石ホルダ54には、棒状の微細砥粒砥石40がはめ込まれ、図示しない固定部材により固定されている。
【0014】
前記クランプ装置20は、油圧シリンダ70を備えたものであり、油圧シリンダ70の図示しないピストンには一体的に軸方向に移動可能な位置決めロッド72が固定され、位置決めロッド72の端部には、プッシャベアリング74および縮径・拡径可能な4点パッド76が設けられている。4点パッド76が拡径させられてインナリング18の内周面に当接させられることにより芯出しが行われる。その状態で、インナリング18がプッシャベアリング74によりプレート34に押し付けられ、その後4点パッド76が縮径させられる。プッシャベアリング74は、インナリング18の回転を許容しつつプレート34に押し付けるものであるため、インナリング18は、プレート34とプッシャベアリング74とにより回転可能に保持されることになる。
【0015】
クーラントタンク22には、そこに収容された研削液をくみ上げるポンプ80と、ポンプ80を回転させるモータ82とが取り付けられており、ポンプ80から延び出させられた管84の先端が、インナリング18および微細砥粒砥石40の近傍に位置するように図示しない保持装置により保持されている。クーラントタンク22,ポンプ80,モータ82,管84および図示しない管保持装置等によりクーラント供給装置86が構成されているのである。
【0016】
以上のように構成された超仕上げ加工装置において、本実施形態における研削液を微細砥粒砥石40およびインナリング18の近傍に供給しつつ、インナリング18の転動面に超仕上げ加工を行う場合について説明する。
インナリング18は、主軸14のプレート34とプッシャベアリング74との間において保持され、主軸14の回転に伴って回転させられる。一方、微細砥粒砥石40はインナリング18の転動面と接触状態を保ちつつ揺動クランク64の揺動に伴って揺動させられる。そして、それらインナリング18と微細砥粒砥石40との間に水溶性研削液が供給される。
【0017】
この水溶性研削液は脂肪酸の塩基性塩を含むものである。脂肪酸の塩基性塩(RCOOA)は、水溶性の研削液中で、RCOOとAとに電離し、RCOOが被加工物の表面に吸着し、適度な厚さの被覆層が形成される。図4には、脂肪酸がステアリン酸である場合における吸着の状態が示されている。電離したRCOOには被加工物との親和部であるアルボキシラートイオンCOOと、非親和部である炭化水素Rとが含まれるため、カルボキシラートイオンCOOが鉄イオンFeに化学吸着し、炭化水素Rが鉄イオンFeから離間させられることにより、インナリング18の表面に被覆層が形成されるのである。したがって、微細砥粒砥石40とインナリング18とを接触状態に保ちつつ互いに相対移動させることによりインナリング18を加工する場合において、これらの間の潤滑性が向上する。
【0018】
また、上記水溶性研削液はアルカリ性である。したがって、例えば、水酸化第一鉄の酸化を抑制し得、砥石の目詰まりを良好に抑制し得る。すなわち、前述のように、インナリング18は鉄を含む材料で形成されたものであるため、式に示すように、鉄が水溶性の研削液中の水と反応すると水酸化第一鉄{Fe(OH) }が生成され、その水酸化第一鉄が酸化されれば水酸化第二鉄{Fe(OH) }となる。そして、この水酸化第二鉄は還元性が強いため、Fe−O−Feのような複合錯体が生成され、さらに縮合して多核錯体が生成される。この多核錯体はコロイド状のゲル化物であるため、切りくずがそれ自身の表面に形成されたゲル化物により微細砥粒の間に付着して砥石の目詰まりの原因となるのである。しかし、上記水溶性研削液はアルカリ性であるため、水酸化第一鉄の酸化が抑制され、多核錯体の生成が抑制されることになる。
【0019】
【化1】
Figure 0003591995
【0020】
さらに、被加工物の表面に被覆層が形成されれば、水酸化第一鉄が空気中の酸素と反応し難くなることも酸化が抑制されることの原因の1つである。
また、本実施形態における水溶性研削液は無機塩類を含まないものであるため、人体への害を回避し得る。
さらに、本実施形態における水溶性研削液は、油性の研削液やエマルジョンタイプの研削液に比べて安定なものであるため、腐敗し難く、長期保存が可能となる。また、超仕上げ加工後の被加工物の表面は吸着層で覆われているため、防錆性を有し、一時保管が可能となる。さらに、脂肪酸塩基性塩が洗浄剤と同様の構造を有するものであるため、優れた洗浄効果を有する。そのため,洗浄工程における作業を軽減し得る。
また、表面張力が小さいため、超仕上げ加工において、砥石40と転動面との間等に水溶性研削液を浸透させることができ、加工性を向上させることができる。砥石40に含まれる微細砥粒間、転動面上に生じたクラック内、研削屑,切粉等の微細粉間、その他1μ以下の非常に狭い隙間の細部にまで浸透することが可能となるのである。
【0021】
なお、上記実施形態においては、本発明が超仕上げに適用された場合について説明したが、ホーニング加工、研削加工等にも適用することができる。また、砥粒の大きさは、20μm以下、10μm以下等であってもよい。その他、いちいち例示することはしないが、特許請求の範囲を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を実施することができる。
【0022】
【実施例】
図5に示すように、上記超仕上げ加工に使用される水溶性研削液を、オレイン酸アミン塩,リノール酸アミン塩,セバシン酸アミン塩等の脂肪酸アミン塩を25%,オクチルフェノキシポリエトキシエタノール,ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの非イオン系の界面活性剤を10%,水55%を含むものを10倍程度に希釈したものとした。ここで、本実施例における水溶性研削液の表面張力は約33であった。
【0023】
本実施例における研削液は、非イオン系の界面活性剤を含むため、表面張力が小さく、浸透性に優れている。また、アニオン系の界面活性剤を含む場合より、高い洗浄効果を得ることができる。さらに、オレイン酸アミン塩,リノール酸アミン塩,セバシン酸アミン塩等は、界面活性剤としての機能と、インナリング18の転動面に被覆層を形成する機能と、水酸化第一鉄の水酸化第二鉄への酸化を抑制する機能とを備えたものである。したがって、インナリング18の転動面に破損し難い被覆層が形成されることになり、微細砥粒砥石40とインナリング18とを接触状態に保ちつつ互いに相対移動させることにより超仕上げ加工する場合において、これらの間の潤滑性が向上する。
【0024】
また、本研削液中はアルカリ性となるため、水酸化第一鉄の酸化が抑制され、多核錯体の生成が抑制される。さらに、インナリング18の転動面に適度の厚さの被覆層が形成されるため、水酸化第一鉄が空気中の酸素と反応することも抑制し得る。したがって、超仕上げ加工において、砥石の目詰まりを良好に防止し得る。
さらに、本研削液は、脂肪酸のアミン塩を含むものであるため、インナリング18の転動面への吸着を良好にし得、摩擦係数を小さくし得る。
なお、本実施例においては、水溶性研削液を10倍に希釈したが、5倍〜50倍に希釈することもできる。
【0025】
〔比較例1〜
図5に示す比較例1〜における研削液を供給しつつ超仕上げ加工を行った場合について説明する。比較例1における研削液はエマルジョンタイプであるため、浸透性や潤滑性を向上させることができない。比較例2における研削液には浸透性を向上させるために極圧添加剤を添加したが、極圧添加剤によりインナリング18の転動面が柔らかくなってしまい、切りくずの微細砥粒砥石40への溶着を防止することができない。比較例における研削液は、エマルジョンタンプのものであるが、潤滑性向上剤の効果により潤滑性を向上させ得るが砥石の目詰まりを防止することができない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である超仕上げ加工方法を実施するための超仕上げ加工装置における微細砥粒砥石および被加工物の近傍を示す図である。
【図2】上記超仕上げ加工装置の側面図である。
【図3】上記超仕上げ加工装置の正面図である。
【図4】上記超仕上げ加工装置において超仕上げ加工を行う場合において、ステアリン酸によって被加工物の表面に被覆層が形成された状態を示す図である。
【図5】上記超仕上げ加工方法において使用される水溶性研削液の成分を示す図である。
【符号の説明】
22 クーラントタンク
40 微細砥粒砥石

Claims (9)

  1. 平均粒径が32μm以下の砥粒をバインダで固めて成る微細砥粒砥石と鋼を含む被加工物とを接触状態に保ちつつ互いに相対移動させることにより被加工物を加工する加工方法において、
    これら微細砥粒砥石と被加工物との間に、アルカリ性で、前記被加工物の表面に形成された水酸化第一鉄に被覆層を形成することにより、前記水酸化第一鉄の多核錯体への変化を抑制する多核錯体化抑制成分を含み、無機塩類を含まない水溶性の研削液(エマルジョンタイプの研削液を除く)を供給しつつ加工することを特徴とする加工方法。
  2. 平均粒径が32μm以下の砥粒をバインダで固めて成る微細砥粒砥石と鋼を含む被加工物とを接触状態に保ちつつ互いに相対移動させて被加工物を加工する微細砥粒砥石加工用の水溶性研削液(エマルジョンタイプの研削液を除く)であって、
    アルカリ性で、前記被加工物の表面に形成された水酸化第一鉄に被覆層を形成することによりその水酸化第一鉄の多核錯体への変化を抑制する多核錯体化抑制成分を含み、無機塩類を含まないことを特徴とする微細砥粒砥石加工用研削液。
  3. 前記微細砥粒砥石を1つ以上の円形穴を有する前記被加工物の円形穴の内周面に接触させた状態を保ち、かつ、それら被加工物と微細砥粒砥石とを円形穴の軸方向に相対移動させつつ相対回転させる加工用である請求項に記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
  4. 前記微細砥粒砥石と前記被加工物とを接触状態に保って相対移動させつつ、少なくとも微細砥粒砥石を被加工物との相対移動方向と交差する方向に振動させる超仕上げ加工用である請求項またはに記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
  5. 前記多核錯体化抑制成分として直鎖状の脂肪酸を含む請求項ないしのいずれか1つに記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
  6. 前記多核錯体化抑制成分として炭素数が12である脂肪酸を含む請求項ないしのいずれか1つに記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
  7. 前記脂肪酸の塩基性塩を0.5%〜10%含む請求項またはに記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
  8. 前記脂肪酸の塩基性塩を0.1%〜30%含む請求項またはに記載の微細砥粒砥石加工用研削液。
  9. 平均粒径が32μm以下の砥粒をバインダで固めて成る微細砥粒砥石と鋼を含む被加工物とを接触状態に保ちつつ互いに相対移動させて被加工物を加工する微細砥粒砥石加工用の水溶性研削液(エマルジョンタイプの研削液を除く)であって、
    アルカリ性で、無機塩類を含まず、かつ、直鎖状の脂肪酸のアミン塩と、前記被加工物の表面に形成された水酸化第一鉄の多核錯体への変化を抑制する多核錯体化抑制成分としてのキレート剤とを含むことを特徴とする微細砥粒砥石加工用研削液。
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