JP3590098B2 - ヒト肺癌細胞に対する抗体及びそれを利用するヒト肺癌検査法 - Google Patents

ヒト肺癌細胞に対する抗体及びそれを利用するヒト肺癌検査法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ヒト肺癌細胞と特異的に反応する抗体、及び該抗体が特異的に反応する抗原蛋白質を利用して作製された抗体を用いるヒト肺癌の検査方法並びに該抗原蛋白質をコードするmRNAを測定することから成るヒト肺癌検査方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
日本国民の疾患別死亡原因の第一位は悪性新生物(ガン)であり、その割合は年々増加の一途を辿っている。特に、近年著しい増加を示す肺癌は、男性における癌死者の第一位を占め、女性における肺癌死亡率も着実に増加している。肺癌は早期に発見し適切な治療が施されれば高い治癒率が得られることから、その早期発見の為の診断法が求められている。
従来、肺癌の診断は、▲1▼胸部レントゲン検査法、▲2▼癌細胞から血中に放出されたCEA、SCC抗原及びNSE抗原等の腫瘍マーカーによる血清診断法、▲3▼喀痰染色による病理学的細胞診断法(パパニコロウ染色法)などにより行われてきたが、これらの従来法には数々の問題点が指摘されている。例えば、▲1▼胸部レントゲン検査法はX線を取り扱う為の施設・設備・技師が必要な上、胸骨の背後の癌病巣の発見が困難であること、▲2▼血清診断法では全ての肺癌(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、小細胞癌)を網羅するような特異的マーカーが確立されておらず、一部の肺癌のマーカーであるSCC抗原やNSE抗原のような従来のマーカーは癌の早期段階では検出が難しいこと、▲3▼病理学的細胞診断法では癌細胞の判定に熟練した技術者が必要な上、判定が手作業のため多検体の処理が難しいことなどが挙げられる。
【0003】
特に、肺癌の40〜60%を占める扁平上皮癌は、その多発部位である気管支周辺部が胸骨の背後に位置するため明瞭なX線像を得ることが難しく、胸部レントゲン検査では十分な発見が出来なかった。一方、扁平上皮癌は癌病巣が気管支周辺部に集中するため癌細胞が喀痰中に排出されやすい特徴を持つ。このような理由により喀痰細胞診が扁平上皮癌の重要な診断法となっており、その集団検診への応用による肺癌の早期発見を可能とする方法の開発が求められていた。
従前から、免疫染色法による喀痰細胞診が可能となれば、肺癌の早期診断に大いに役立つと考えられ、種々のマウスモノクローナル抗体を用いた喀痰細胞診の研究が試みられてきた。
マウスモノクローナル抗体はKoehlerとMilstein(Nature,256(1975)459)によるハイブリドーマ技術を利用して生産され、診断分野に広く利用されている。これらのマウスモノクローナル抗体が認識する癌関連抗原としては、癌胎児性抗原・消化管癌抗原(GICA)・α−フェトプロテイン・CA19−9等の消化器癌に対する腫瘍マーカーの他、特に肺癌関連の腫瘍マーカーとしてSCC抗原やNSE抗原などがよく知られている。しかしこれらの腫瘍マーカーは総じて特異性・検出率の点で必ずしも満足のいくものとは言いがたく、よりよい癌の検出方法が望まれていた。
【0004】
これまでに、癌特異的マーカーを得るべく、正常組織と癌組織間の微細な抗原差を検出出来る診断用モノクローナル抗体を得る為の多くの試みがなされてきた。しかしマウスをヒトの癌抗原を含有する混合物で免疫しても、マウスは主としてマウスとヒトの種間で差異のある物質を免疫原として認識するため、ヒト正常組織と癌組織の間の微妙な差異を認識するモノクローナル抗体を得ることは難しい(Haspel等、Cancer Res.,45(1985)3951)。このような理由より、ヒトモノクローナル抗体がこの問題を解決する有効な方法として近年脚光を浴びてきた。
しかし、実際にヒトモノクローナル抗体を作製するにおいては、倫理上の問題から積極的にヒトに癌抗原を免疫することは困難である為、目的とするヒトモノクローナル抗体の作製は極めて限られた範囲のものに限定されていた。従って、これまでのところ、喀痰細胞診等の肺癌細胞診に適するヒトモノクローナル抗体は得られていない。
本発明は、従来の肺癌診断法における上記問題点を解決し、自動化集団検診による肺癌の早期発見と診断率の向上、及び抗体を使った肺癌の治療を目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、肺癌に対して高い特異性を有するヒトモノクローナル抗体を産生する種々のハイブリドーマを作製することに成功し、それに基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、例えば、自ら開発したインターロイキン−2等の各種の因子を添加した免疫賦活培地(特開平4−281799号)を用いるヒトBリンパ球の効率的な生体外免疫法、自ら樹立した融合効率の高いヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ作製用融合パートナー(特開昭60−141285 号、特開昭63−185374 号、特開平3−183477号、特開平3−297382号、特開平4−281799号)を用いること等により、喀痰細胞診に適したヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製に成功した。
【0006】
本発明は、肺癌に対して特異的に反応する抗体、特に、ヒトモノクローナル抗体を利用した肺癌細胞診用試薬及び肺癌検査法に関するものである。また本発明は他の様態として、本発明のヒトモノクローナル抗体が認識する肺癌関連抗原蛋白質を利用して作製されたポリクローナル又はモノクローナル抗体を用いる肺癌細胞診用試薬及び肺癌の検査法に関する。
更に本発明は、該肺癌関連抗原蛋白質をコードするmRNAを測定することから成るヒト肺癌検査方法に関するものである。
即ち、本発明は、下記のアミノ酸配列:
Lys−Ala−Val−Thr−Glu−Gln−Gly−Ala−Glu−Leu
及び該アミノ酸配列の一つ又は複数の位置において、アミノ酸残基が欠損、置換又は挿入されているアミノ酸配列を有する蛋白質を抗原として認識する抗体を提供するものである。
このような蛋白質の代表例として、14−3−3蛋白質と総称される蛋白質ファミリーがある。この蛋白質ファミリーにはMartin等(Martin等,FEBS Lett.,331,296(1993))やAitken等(Aitken等,Trends Biochem.Sci.,17,498(1992))が示す蛋白質がある。その中で現在は未だ、細胞質ホスフォリパーゼA2(EC3.1.1.4)がこの14−3−3蛋白質ファミリーに帰属するかどうかが明らかとなっていない。
【0007】
14−3−3蛋白質及び細胞質ホスフォリパーゼA2を抗原として認識するモノクローナル抗体の一例としては、
▲1▼ヒト肺癌細胞株、ヒト肺癌組織及び喀痰中のヒト肺癌細胞と反応し、
▲2▼ヒト正常細胞と反応せず、
▲3▼免疫グロブリンクラスがIgMである、
ことを特徴とするハイブリドーマAE−6から産生されるヒトモノクローナル抗体がある。
これは平成5年11月25日付で生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターに寄託されている(FERM P−13981)。
これらのモノクローナル抗体は、ヒト肺癌に対して高い特異性を示すために、これらを有効成分として含有するヒト肺癌細胞診用試薬、特に喀痰細胞診用試薬を提供することができる。
更に、上述のAE−6由来の抗体に加えて、HB4C5,BD9D12,H48−G11及びH9−F7由来の抗体もヒト肺癌細胞に対し高い特異性を示す。従って、本発明は、これらのモノクローナル抗体の一種又は二種以上を組み合わせて有効成分として含有するヒト肺癌細胞診用試薬を提供するものである。
【0008】
例えば、ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマAE−6の作製法は以下のとおりである。その他のヒトモノクローナル抗体についても基本的に同様の方法で作製することができる。
1.ヒト健常人末梢血からリンパ球を分離し、L−ロイシル─L−ロイシンメチルエステルで処理して、細胞障害性あるいはサプレッサーT細胞のみを特異的に除去したリンパ球を調製する。
2.このリンパ球を、抗原として用いたヒト肺癌細胞株A549と共に、インターロイキン−2、インターロイキン−6及びムラミルジペプチドを含む5%牛胎児血清含有培地で4日間培養し、生体外免疫を行う。
3.生体外免疫したリンパ球とヒト融合パートナー細胞株A4H12とを通常のポリエチレングリコールによる方法により融合し、ハイブリドーマを作製する。
【0009】
本発明者らは、こうして得られるハイブリドーマから、肺扁平上皮癌細胞と特に反応性が高く、また、その他の組織型の肺癌細胞とも広く反応し、しかも正常細胞とは反応しないヒトモノクローナル抗体を作製し、これらのヒトモノクローナル抗体を用いることにより、本発明の喀痰細胞診用試薬を完成したのである。
本発明のヒトモノクローナル抗体は各種標識物質、特にビオチンで標識されていることが好ましい。尚、ヒトモノクローナル抗体の試薬中の濃度は、通常約0.1μg/ml〜約10μg/mlの範囲である。二種以上のヒトモノクローナル抗体を使用するときの各抗体の比は当業者が適宜選択し得る。
【0010】
本発明における喀痰細胞診の手順についての一例を以下に示す。
1.サコマノ変法固定液(例えば、武藤化学薬品株式会社製)中に被検者の痰を喀出させ混合する。
2.痰をスライドガラス上に塗抹し、1時間自然乾燥する。
3.エタノール(95%)で30分間固定する。
4.抗体の非特異的吸着を迎えるため、正常ヤギ血清(2%)及びヒトIgM(100μg/ml)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で30分間処理する。
5.液を捨てる。
6.喀痰細胞診用試薬と3時間反応させる。
7.PBSで30分間洗う。
8.アビジン・ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体(例えば、ベクター社製)と45分間反応する。
9.PBSで30分間洗う。
10.DAB(0.5mg/ml)、過酸化水素(0.01%)及びトリス−塩酸緩衝液,pH7.4(50mM)から成る基質溶液を添加し、染色を行う。
11.染色度を調べる。
【0011】
喀痰細胞診用試薬についての一例を以下に示す。
5μg/mlのビオチン標識ヒトモノクローナル抗体AE−6及び
10%牛胎児血清を含むPBS溶液
尚、ヒトモノクローナル抗体のビオチン標識は、通常の方法により行うことができる。又、本発明試薬は、上記成分の他に、牛血清アルブミン、ゼラチン等を適宜含有することができ、そのpHはPBS、バルビタール緩衝液等の緩衝剤で約6.5〜約8.5の範囲とするのが好ましい。
尚、同名のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、HB4C5、BD9D12、H48−G11及びH9−F7は、工業技術院微生物工業研究所に、夫々昭和63年5月12日(FERM BP−1879)、平成4年10月30日(FERM P−13235)、平成3年3月6日(FERM P−12089)及び平成3年3月6日(FERM P−12090)付で寄託されている。
更に本発明は、上記の特定蛋白質をコードするmRNAが肺癌細胞に於いて正常細胞よりも多量に発現されている事実の発見に基づき、かかるmRNAを測定することによるヒト肺癌細胞の検査方法を提供するものである。mRNAの測定は、ノーザンブロッティング法(T. Maniatis 等,“Molecular Cloning”, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory 1982) で行うことができる。
【0012】
【実施例】
〔実施例1〕
ハイブリドーマAE−6の樹立とモノクローナル抗体の製造
24穴マイクロプレートの各ウエルにヒト肺腺癌細胞株A549細胞1x10個を植えつけ、10%牛胎児血清を含むERDF培地中で36時間前培養を行なった後、前もって0.25mM L−ロイシル−L−ロイシンメチルエステルにより処理した末梢血リンパ球1x10個、を添加し、10μg/mlムラミルジペプチド、100U/mlインターロイキン−2、10U/mlインターロイキン−6及び5%牛胎児血清を含むERDF培地中で4日免疫感作を行った。免疫感作の検出はin situ免疫染色法(米特許第5,290,681 号明細書)にて行った。In situ免疫染色法で抗体を産生することが確認されたウエル中のリンパ球(1x10個)を集め、2x10個のA4H12パートナー細胞(ヒトT細胞白血病細胞株Molt4由来ヒポキサンチン・グアニン ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損株) と融合して不死化後、HAT(100mMヒポキサンチン、0.4mMアミノプテリン、16mMチミジン)−15%牛胎児血清−ERDF培地中でクローニングを行い、最終的にAE−6ハイブリドーマを得ることに成功した。このハイブリドーマを2mg/mlヒト血清アルブミン、5μg/mlウシインスリン、35μg/mlヒトトランスフェリン、20μMエタノールアミン、2.5nM亜セレン酸ナトリウムを含むRDF培地にて無血清培養を行った。AE−6ハイブリドーマより得られたIgM抗体の精製は培養上清6〜9Lに百分の一量の1Mリン酸緩衝液、pH7.5を加え、ハイドロオキシアパタイトカラム(4.1x28cm:10mMリン酸緩衝液、pH7.5に平衡化)にチャージ、3カラム容量の50mMリン酸緩衝液、pH7.5にてカラムを洗浄後、抗体を200mMのリン酸緩衝液、pH7.5にて溶出し、IgMを含む画分を集めた。プールされた画分を10、000xgで10分間遠心分離した上清を、リン酸緩衝生理食塩水にて平衡化しておいたバイオゲルA−15m(2.8x75cm)にてゲル濾過を行った。IgMを含む画分を20mMリン酸ナトリウム溶液、pH7.2にて3倍量に希釈し、20mMリン酸ナトリウム溶液、pH7.2にて平衡化しておいたDEAEセルロースカラム(2.4x8cm)に掛けた。カラムを3倍量の平衡化緩衝液にて洗浄後、抗体を300mM迄のNaCl濃度勾配にて溶出し、IgM画分をプールし、AE−6モノクローナル抗体を得た。
【0013】
〔実施例2〕
癌組織に対する種々のヒトモノクローナル抗体の反応性
実施例1により得られたAE−6モノクローナル抗体を含む種々のヒトモノクローナル抗体を使い、肺癌及び正常組織との反応性を二抗体法にて検証した。即ち、外科切除により得られた肺癌組織を、ホルマリン固定し、常法に従いパラフィン包埋後、組織切片を作製した。各切片をキシレンにてパラフィンを除去し、0.6%過酸化水素をふくむメタノール中で20分間放置し、内在性ペルオキシダーゼを不活化した。切片を95%、85%、75%エタノール、更にリン酸緩衝生理食塩水に浸した後、室温加湿下正常山羊血清とインキュベートした。更に、AE−6モノクローナル抗体と一時間インキュベートし、リン酸緩衝生理食塩水にて洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgM抗体と一時間反応させ、リン酸緩衝生理食塩水にて洗浄した後、最後にN,N’−ジアミノベンジジン(DAB)にて発色を行った。
【0014】
【表1】
Figure 0003590098
【0015】
表中の数字:陽性検体数/試験検体数
表1の結果から明らかなように、喀痰細胞診にとって特に重要な肺扁平上皮癌細胞に対して高い反応性を示すヒトモノクローナル抗体が多数得られた。また、他の組織型の肺癌についても高率に反応するヒトモノクローナル抗体が得られた。特に、AE−6抗体は癌組織検体の78%と反応することが判る。
【0016】
〔実施例3〕
ヒトモノクローナル抗体AE−6の癌組織スタンプ標本との反応性を調べた。癌組織スタンプ標本は、肺癌手術の際、切除した癌組織をスライドグラス上に捺印することにより調整した。
【0017】
【表2】
Figure 0003590098
【0018】
表2に示したように、AE−6抗体は、肺扁平上皮癌及び肺腺癌のスタンプ標本とも高率に反応した。
【0019】
〔実施例4〕
ヒトモノクローナル抗体AE−6の喀痰との反応性を調べた。癌患者の喀痰を用い、本発明の抗体による染色判定結果と、従来法であるパパニコロウ染色法で判定した結果との比較を行った。
【0020】
【表3】
Figure 0003590098
【0021】
表中の数字:癌細胞の検出された症例数/試験症例数
従来法(パパニコロウ染色)により、癌細胞が検出された症例については、本発明の喀痰細胞診法でも全て癌細胞が検出されており、本発明の喀痰細胞診法は、癌細胞の検出能力で従来法と同等となり、簡便さ、大量検体処理能力等の利点を考え合わせると、従来法より優れていると考えられる。
【0022】
〔実施例5〕
AE−6モノクローナル抗体が認識する分子量31kDaの抗原物質の特定
ハイブリドーマAE−6が産生するモノクローナル抗体の認識抗原を明らかにするために、該抗体が反応する肺腺癌細胞株A549細胞中の抗原検索を行った。A549細胞を10%FCSを含むERDF培地で培養後、その細胞を集め凍結して保存した。氷冷下、この細胞を等量(v/w)の1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と1mMα−トルエンスルフォニルフルオリド(PMSF)を含むリン酸緩衝化生理食塩水中で超音波破砕し、10、000Xgにて20分間遠心分離して、上清を得た。この上清を還元条件下SDS−ゲル電気泳動後、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に転写しAE−6モノクローナル抗体を反応させた。その後PVDF膜をペルオキシダーゼ標識した抗ヒトIgM抗体溶液に浸し、洗浄後DABにて発色を行った。その結果、31kDaと40kDaの位置に発色したバンドが検出された。平行して行ったAE−6抗体固定化カラムクロマトグラフィーにて特に強い結合力を示した、31kDaの蛋白質につき、更にその同定を行った。
【0023】
A549細胞を前記のごとく超音波破砕し、遠心分離した上清を更に100、000Xgで60分間超遠心分離を行い、上清を得た。この上清を150mMNaClを含む10mMリン酸緩衝液、pH7.5にて平衡化したスーパーデックス75カラムで流速2.2ml/minの流速にてクロマトグラフィーを行い、得られた各画分をAE−6モノクローナル抗体を用いたイムノブロッチングで分析して、31kDaの抗原を含む画分を集めた。この画分を20mMトリス・塩酸緩衝液,pH7.8で平衡化したモノQカラムクロマトグラフィーにチャージし、流速1ml/minで1M NaClまでの濃度勾配溶出を行ない、還元条件下SDS−ゲル電気泳動後、最終的に31kDaの蛋白質を単離した。この蛋白質のアミノ酸配列を決定してその同定を行おうとしたがN−末端がブロックされていたため、臭化シアン開裂を行い、その断片を還元状態下SDS−ゲル電気泳動後PVDF膜へ転写し、アミノ酸配列を調べた。その結果、既に述べたアミノ酸配列を得た。このアミノ酸配列は、前述のごとく14−3−3蛋白質及び細胞質ホスフォリパーゼA2のアミノ酸配列と良く一致し、14−3−3蛋白質ファミリーに属する9種類の蛋白質に於いて、N末端から27番目乃至36番目の位置に存在することが知られている(Martin等、FEBS Let.,331(1993)296)。14−3−3蛋白質は真核細胞生物間で進化論的にその構造が良く保存された蛋白質であり、特に脳中に高濃度で存在していることも知られている(Aitken等、Trends Biochem.Sci.,17(1992)498)。
そこで14−3−3蛋白質の精製方法(Grasso等、Brain Res.,124(1977)497)に従って、牛脳より14−3−3蛋白質を精製し、還元条件下SDSゲル電気泳動して、PVDF膜へ転写後、AE−6モノクローナル抗体を用いて免疫染色を行った。その結果、牛脳由来14−3−3蛋白質はA549細胞由来の抗原物質と同様にAE−6モノクローナル抗体とよく反応することが検証された(図1)。
【0024】
〔実施例6〕
レコンビナント細胞質由来ホスフォリパーゼA2の発現とそのAE−6モノクローナル抗体との反応
アミノ酸配列より特定された蛋白質、即ち14−3−3蛋白質及びそのファミリー蛋白質とされている細胞質ホスフォリパーゼA2が、確かにAE−6モノクローナル抗体と反応することを更に検証するためA549細胞よりチオシアン酸グアニジン・CsCl法(Glisin等:Biochemistry,13(1974)2633)によりRNAを抽出し、14−3−3蛋白質ファミリーにてよく保存されている塩基配列のプライマーを用いて、PCR法にて666塩基対のcDNAを得た。DNA配列を検証したところ、このcDNAはZupan等(J.Biol.Chem.,267(1992)8707)の報告した細胞質ホスフォリパーゼA2と完全に一致した。プライマーに工夫を加えることにより同様の方法にて754塩基対の完全な長さの細胞質ホスフォリパーゼA2のcDNAを得ることが出来たので、該遺伝子を哺乳動物細胞発現ベクターpcDL−SRα296に挿入し猿由来のCOS細胞に遺伝子導入し培養を行った。得られたCOS細胞を破壊し、上清を還元条件下SDSゲル電気泳動後、ニトロセルロース膜に転写し、AE−6抗体を用いて二抗体法による免疫染色を行った。図2に示すように発現された細胞質ホスフォリパーゼA2が31kDaの位置で、AE−6モノクローナル抗体と反応することが明らかとなり、14−3−3蛋白質ファミリーがAE−6モノクローナル抗体の抗原であることが確認された。
【0025】
〔実施例7〕
癌及び正常細胞における14−3−3蛋白質ファミリーmRNAの発現
癌及び正常細胞における14−3−3蛋白質ファミリーのmRNAの発現を検証するために、754塩基対の細胞質ホスフォリパーゼA2cDNAをもとにランダムプライミング法(T. Maniatis 等,“Molecular Cloning”, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory 1982) により32P標識プローブを作製した。種々の細胞株よりチオシアン酸グアニジン・CsCl法にてRNAを抽出、アガロースゲル電気泳動を行い、RNAを分離した後ナイロン膜へ転写した。この膜上のRNAを32Pでラベルした細胞質ホスフォリパーゼA2に対するプローブとハイブリダイズし、オートラジオグラフィーを行った(図3)。その結果A549肺腺癌細胞株、MCF−7乳癌細胞株、MKN−45胃癌細胞株、Huh−6肝癌細胞株から得られたmRNAにては、細胞質ホスフォリパーゼA2のmRNAが著しく発現されているのに対し、正常肺繊維芽細胞であるFlow2000細胞では殆ど発現されていなかった。この結果は、ヒト組織中の14−3−3蛋白質ファミリーのmRNAを測定することにより癌の診断が可能であることを示すものである。
【0026】
〔実施例8〕
各種癌組織及び正常組織中のAE−6モノクローナル抗体と反応する分子量31kDaの抗原量の比較
低温下、凍結した肺癌、正常肺及び肝臓の各組織を裁断後、組織重量当たり3倍容量の1mM EDTAと1mM PMSFを含むリン酸緩衝化生理食塩水を加えてホモゲナイズし、10、000xgにて遠心分離して上清を得た。各組織の上清を還元条件下でSDS−ゲル電気泳動後、PVDF膜へ転写してイムノブロッチング法により各臓器中に含まれる抗原量を比較した。即ち、PVDF膜にAE−6モノクローナル抗体を反応後、ペルオキシダーゼを標識した抗ヒトIgM抗体と反応し、DABを基質として用い発色を行った。その結果、AE−6モノクローナル抗体によって認識される31kDa抗原は、正常な肺及び肝臓組織では極めて少量しか検出されないが、肺癌組織では著しくその量が増加していた(図4)。この結果は実施例7の結果とともに、AE−6モノクローナル抗体を用いるヒト肺癌の免疫学的な診断及び治療の可能性に根拠を与えるものである。
【0027】
〔実施例9〕
14−3−3蛋白質に対するマウスモノクローナル抗体の癌組織への反応性
牛脳より作製した14−3−3蛋白質を免疫原として用い、常法に従いマウスモノクローナル抗体を作製した。得られたマウスモノクローナル抗体の肺癌及び正常組織との反応性を二抗体法にて検証した。外科切除後ホルマリン固定しパラフィン包埋した組織切片を用いて、マウスモノクローナル抗体による免疫染色を実施例2と同様に行った。その結果、表4に示すごとく肺癌組織検体の全てが該抗体により特異的に染色され、該マウスモノクローナル抗体の肺癌診断における有用性が示された。
【0028】
【表4】
Figure 0003590098
【0029】
【発明の効果】
本発明のモノクローナル抗体及びmRNAを使用することによって、肺癌、特に扁平上皮癌を喀痰細胞診等により簡便かつ客観的に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】牛脳由来14−3−3蛋白質とAE−6モノクローナル抗体との反応を示す電気泳動の写真である。
レーン1: プレステインバイオラッド社製分子量マーカー(低分子)
レーン2: A549肺腺癌細胞由来31kDa蛋白質
レーン3: 牛脳由来14─3─3蛋白質
【図2】細胞質ホスフォリパーゼA2とAE−6モノクローナル抗体との反応を示す電気泳動の写真である。
レーン1: 遺伝子未導入COS細胞破砕物
レーン2: A549細胞由来31kDa蛋白質
レーン3: レコンビナント細胞質ホスフォリパーゼA2遺伝子導入COS細胞破砕物
【図3】細胞質ホスフォリパーゼA2のmRNAの発現を示すオートラジオグラフィの写真である。
レーン1: A549肺腺癌細胞株由来RNA
レーン2: MCF−7乳癌細胞株由来RNA
レーン3: MKN−45胃癌細胞株由来RNA
レーン4: Huh−6肝臓癌細胞株由来RNA
レーン5: Flow2000正常肺繊維芽細胞株由来RNA
【図4】分子量31KDaの抗原蛋白質とAE−6モノクローナル抗体との反応を示す電気泳動の写真である。
レーン1: 牛脳由来14─3─3蛋白質
レーン2: 扁平上皮癌組織
レーン3: 肺癌組織
レーン4: 正常肺組織
レーン5: 肺癌組織
レーン6: 正常肺組織
レーン7: 正常肝臓組織

Claims (5)

  1. (a) 分子量31kDaの牛脳由来14−3−3蛋白質又は細胞質ホスフォリパーゼA2を抗原として認識し、(b) ヒト肺癌細胞株、ヒト肺癌組織及び喀痰中のヒト肺癌細胞と反応し、(c) ヒト正常細胞と反応せず、(d) 免疫グロブリンクラスがIgMであることを特徴とする、ヒトモノクローナル抗体。
  2. ハイブリドーマAE−6(FERM P−13981号)由来である、請求項1記載のヒトモノクローナル抗体。
  3. 請求項1又は2記載のヒトモノクローナル抗体を有効成分として含有するヒト肺癌細胞診用試薬。
  4. 請求項3記載の試薬を用いたヒト肺癌検査方法。
  5. 細胞質ホスフォリパーゼA2をコードするmRNAを測定することから成るヒト肺癌検査方法。
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