JP3589493B2 - 溶融加工装置および溶融加工の制御方法および溶融加工の監視方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は溶融用エネルギを投与して材料を溶融する溶融加工装置、溶融加工の制御方法および溶融加工の監視方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
材料の溶融による例えば溶接やろう付けなどのような所望の加工を行う方法では、材料の溶融進行状態が品質に大きく影響を与える。例えば溶接やろう付けのような接合加工方法は、被接合部にある被接合材と同種あるいは異種の材料を外部から投与する溶融用エネルギで溶融した後、その溶融された材料への溶融用エネルギ投与停止で凝固させ、複数の被接合材を互いに接合するものである。
【0003】
溶融用エネルギとしては、例えばトーチ、発熱体から材料への伝熱、電気抵抗発熱、レーザのような光ビーム、アーク放電などがある。図40には例えば溶融用エネルギとしてアーク放電を用いた従来の溶接を示す。この図40において、溶接加工を施すための被接合材5aと被接合材5bを重ね合わせ、被接合材5a,5bを接地し、その被接合材5a,5bの上部に溶接電極1を所定距離だけ離間して配置する。溶接電源2から溶接電極1に電流を供給し、溶接電極1と被接合材5a,5bとの間にアークを発生させ、被接合材5a,5bの目標とする溶融許容部分を溶融池13に形成する。この溶融池13が形成されたところで、上記溶接電極1への電流供給を停止すると、溶接池13内の溶融成分が凝固し、この凝固にて被接合材5a,5b同士が溶接された重ね継手を形成する。
【0004】
この場合、被接合材5a,5bの接合部は溶融・凝固に伴って接合が進んでいくため、接合加工部の品質は材料の溶融進行状態に大きく左右される。
【0005】
また、図41には例えば二つの被接合材をその間にこれら被接合材よりも低い融点温度を有するろう材を介して、このろう材を溶融することによって被接合材同士を接合するろう付け工程の構成が示される。このろう付け工程においては、図41に示すように被接合材5a,5bをろう材6を介して配置し、エネルギ発生源15より加熱器14にエネルギを投与して加熱する。ろう材6は溶融した後、被接合材5a,5b間に広がり、被接合材5aの周囲および被接合材5bの側面部に排出される。このようなろう付け工程においては、従来、後工程としてろう付け部の外観検査を行い、ろう材6の被接合材5a,5b間での広がり具合や過剰な排出状態の不具合などといった不良を判定する方法がとられていた。
【0006】
このような外観検査方法としては従来一つ一つ作業者の目視による検査が行われていたが、このような場合、膨大な時間および人手を要するため量産製造技術の高効率化といった点からは問題となっていた。
【0007】
このような問題に対処する方法として例えば特開昭60−133968号公報に記載された検査方法が知られている。図42にはその構成、図43には検査の原理図が示される。図42において、30はレーザ発振器、31は半透鏡、32は光ファイバ、33,34は集光レンズ、35は半田、36は受光部、37は半田付け検査部である。このような構成において、レーザ発振器30から発振された検査用のレーザ光は半透鏡31によって曲げられ、光ファイバ32、集光レンズ33を介して半田35に照射され、反射する。反射したレーザ光は再び光ファイバ32、集光レンズ34を介して受光部36にて受光される。受光部36での受光量を図43のごとき電気信号に変換し、この電気信号の半田溶融状態による変化を出力する。図44には各半田付け状態における乱反射の状態が示される。半田付け状態による乱反射の度合によって電気信号が異なり、図44のa図に示すような良好な半田付けの場合は、図44のb図に示すいも半田付けと比較して乱反射の度合いが小さいので受光量は大きく、良好な半田付けの場合の電気信号は図43中のV0Aのように、いも半田付けの場合の電気信号V0Bよりも大きくなる。また、半田のない場合には図44のc図に示すように乱反射方向の度合いがさらに小さくなり、電気信号は図43中のV0Cのごとくさらに大きくなる。このような良否判定をあらかじめ設定した閾値との比較によって行い、例えば図43のごとく出力が閾値V1とV2の間にあるV0Aの場合には良好な半田付けであり、閾値V1より小さい電気信号V0Bの場合には不良ないも半田付け、閾値V2より大きい電気信号V0Cのような場合には半田なし不良と判断する。このようにして、半田付けの良否を判定することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなアーク溶接をはじめとする各種溶接においては、溶接材料の溶け込みが継手強度などの品質を左右する重要な因子となるが、溶け込みはアークを発生させる電極の形状や電極と被接合材との距離などによってばらつくため、加工材料毎に溶け込みがばらつき、溶け込み不良が発生するといった問題点があった。
【0009】
また、ろう付けの検査方法として上記のような方法によって、いもろう付け、ろう無しといった不具合を判定することはできるが、ろう材の広がり形状を特定するのは困難であり、特に、ろう材の溶融中において、溶融ろう材が過剰な範囲に流れた場合に、その範囲を判別することが難しく、また、品質の判定にとって重要なフィレットの形成状態について詳細に判別することができないという問題点があった。
【0010】
また、ろう付けをはじめとする溶融加工においては、従来ろう材などの溶融状態を作業者が目視によって判断しつつ加工条件などを変更しているため、加工の不良率低減といった点においても限界があり、問題であった。
【0011】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、溶融用エネルギを投与して材料を溶融する溶融加工において、溶融加工の進行に伴って材料の特定の部位が溶融状態に達したか否かを判定し、品質の良否を大きく反映する溶融後の材料の溶融領域の広がり量および流動量さらには形状といった溶融状態を加工中にリアルタイムで監視する方法、および材料の溶融状態を制御することによって加工品質を安定にする溶融加工装置、およびその制御方法を提供することを目的とする。
また、照射点の表面状態の変化やフラックスをはじめとする表面活性剤の蒸発、飛散といった光ビームの散乱の影響を受けることなく安定に溶融状態を監視することを目的とする。
また、材料の溶融範囲を一定基準範囲に安定性よく抑性することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る溶融加工の監視方法は、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射し、材料の監視用光ビーム照射部分の溶融に伴う反射光の反射方向の変化を受光素子で検出して表示器に表示したことを特徴とする。
請求項2では、上記受光素子として反射光の検出部を列状または格子状に配置した受光素子を用い、材料の監視用光ビーム照射部分の溶融される以前において反射光による受光量の最大となる上記検出部での受光量の変化を表示器に表示した。
請求項3では、上記受光素子を、材料の監視用光ビーム照射部分の溶融される以前における監視用光ビームの反射光路から特定の距離だけ離すとともに監視用光ビーム照射部分の溶融後の反射光を受光する位置に配置した。
請求項4では、上記受光素子として反射光の受光位置の位置情報を出力する受光素子を用い、受光素子の受光位置の位置情報により反射光の反射方向の変化を表示器に表示した。
請求項5に係る溶融加工装置は、エネルギ発生源とエネルギ制御部と光ビーム源と受光器と比較判定回路と制御回路とを備え、エネルギ発生源が溶融用エネルギを発生し、エネルギ制御部がエネルギ発生源から出力される溶融用エネルギを制御し、光ビーム源が目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射し、受光器が光ビームの材料表面からの反射光の受光量を検出し、比較判定回路が受光器での受光量と予め設定された閾値とを比較し、制御回路が比較判定回路からの比較結果に応答してエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてエネルギ発生源によるエネルギ投与を制御する。
請求項6では、上記受光器を、監視用光ビームの照射部分が溶融される以前における監視用光ビームの反射光路からは特定の距離だけ離し、さらに溶融後の反射光が投光されるような位置に配置した。
請求項7に係る溶融加工装置は、エネルギ発生源とエネルギ制御部と光ビーム源と受光器と距離算定回路と比較判定回路と制御回路とを備え、エネルギ発生源が溶融用エネルギを発生し、エネルギ制御部がエネルギ発生源から出力される溶融用エネルギを制御し、光ビーム源が目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射し、受光器が光ビームの材料表面からの反射光の受光位置を検出して受光位置に応じた位置座標情報を出力し、距離算定回路が受光器からの位置座標情報に基づき受光位置の変位距離を算定し、比較判定回路が距離算定回路からの変位距離と予め設定された閾値とを比較し、制御回路が比較判定回路からの比較結果に応答して上記エネルギ発生源を制御するための信号を上記エネルギ制御部にフィードバックして上記エネルギ発生源によるエネルギ投与を制御することを特徴とする。
請求項8では、上記比較判定回路の出力に従って材料の溶融部分の温度を低下させる冷却手段を備えた。
請求項9では、上記エネルギ発生源がパルス通電によって溶融用エネルギを発生する手段を備えた。
請求項10では、エネルギ発生源がパルス通電によって溶融用エネルギを発生する手段を備え、上記光ビーム源が上記エネルギ発生源のパルス通電の周波数以上の周波数で走査する手段を備えた。
請求項11に係る溶融加工の制御方法は、材料を溶融する溶融加工において、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射し、その監視用光ビームの材料表面からの反射光を受光素子で受光して受光量を電気信号に変換し、この電気信号が予め設定された閾値より小さく、かつ、加工開始からの時間が適正な加熱速度によってろう付け部の全体にわたって均一に加熱されるのに必要な時間を経過していない場合であって、加工開始からの時間が通電量を低下させることによって均熱をはかり均一なろう付け形成のできる最低必要時間以上経過して いる場合には、材料への通電量を所定量低下して材料への通電を所定時間継続した後に材料への通電を停止し、加工開始からの時間が上記最低必要時間を経過していない場合には、材料への通電を所定時間停止した後に材料への通電を所定時間継続してから材料への通電を停止した。
請求項12に係る溶融加工の制御方法は、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に複数の監視用光ビームを照射し、複数の監視用光ビームの材料表面からのそれぞれの反射光を複数の受光素子で別々に受光してそれぞれの受光量をそれぞれ電気信号に変換し、複数の受光素子の受光開始後にそれぞれの電気信号が予め設定された閾値より小さくなるまでの時間を計測し、この時間のうち短い方の時間を記憶し、この閾値より小さくなるまでの時間が長い受光素子で光量を継続して検出するとともに当該受光素子が受光を開始してから現在までの時間を計測し、この現在までの時間と上記短い方の時間との差分を求め、当該受光素子の現在の受光量を変換した電気信号が上記閾値以上であり、かつ、上記差分が差分の基準最大値以上となった場合には、電気信号が上記閾値より小さくなるまで材料への通電量を所定量低下させ、また、当該受光素子の現在の受光量を変換した電気信号が上記閾値より小さくなり、かつ、上記差分が差分の基準最小値以上となった場合には、材料への通電量を所定量低下して材料への通電を所定時間継続した後に材料への通電を停止した。
請求項13に係る溶融加工の制御方法は、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射し、その監視用光ビームの材料表面からの反射光を受光位置を検出する受光素子で受光し、この受光器からの座標に基づいて受光位置の変位距離を算定し、この算定した変位距離を予め設定された閾値と比較し、この変位距離が閾値より大きくなった場合に受光位置の変位方向を算出し、この変位方向を予め設定された所定変位方向と比較し、この比較結果に基づき溶融用エネルギの出力条件を決定し、この決定に応答して上記溶融用エネルギの材料への投与を制御する。
【0025】
【作用】
請求項1では、材料の監視用光ビーム照射部分の溶融に伴う反射光の反射方向の変化を受光素子で検出して表示器に表示することによって、監視用光ビーム照射部分における材料の固相から溶融状態への変化を監視する。
請求項2では、監視用光ビーム照射部分における材料の固相から溶融状態への変化を、反射光の検出部を列状または格子状に配置した受光素子で検出する。
請求項3では、監視用光ビーム照射部分における材料の固相から溶融状態への変化を、監視用光ビーム照射部分の溶融後の反射光を受光する位置に配置された受光素子で検出する。
請求項4では、監視用光ビーム照射部分における材料の固相から溶融状態への変化を、反射光の受光位置の位置情報を出力する受光素子からの位置情報により検出する。
請求項5では、受光量と閾値との比較によって、材料に投与される溶融用エネルギの投与を制御する。例えば制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから所定時間後に、溶融用エネルギの投与を停止するか、または制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから溶融用エネルギの投与量を低下し、その溶融用エネルギの投与量低下から所定時間後に溶融用エネルギの投与を停止する。
請求項6では、受光量と閾値との比較によって、材料に投与される溶融用エネルギの投与を制御する。例えば、制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから所定時間後に溶融エネルギの投与を停止するか、または制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから溶融用エネルギの投与量を低下し、その溶融用エネルギの投与量低下から所定時間後に溶融用エネルギの投与を停止する。
請求項7では、受光位置の変位距離と閾値との比較によって、材料に投与される溶融用エネルギの投与を制御する。例えば制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから所定時間後に、溶融用エネルギの投与を停止するか、または制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから溶融用エネルギの投与量を低下し、その溶融用エネルギの投与量低下から所定時間後に溶融用エネルギの投与を停止する。
請求項8では、冷却手段が溶融部分の流動を抑制する。
請求項9では、エネルギ発生源からのパルス通電加熱による溶融用エネルギが材料に電磁ピンチ効果を誘発する。
請求項10では、エネルギ発生源からのパルス通電加熱による溶融用エネルギが走査するので、走査半周期分での受光量変化を、溶融材料の流動1周期分以内でとらえる。
請求項11では、受光位置の変位距離と閾値との比較結果を所定設定時間と比較して、溶融用エネルギの投入量と投入時間とを制御し、材料の均熱化を図る。
請求項12では、溶融加工の経過時間が所定設定時間以内である場合に、溶融用エネルギの出力条件を制御し、材料の均熱化の精度を高める。
請求項13では、受光位置の変位方向と変位位置とで溶融用エネルギの出力条件を制御し、容易な構成で材料の均熱化の精度を高める。
【0038】
【実施例】
以下、この発明の各実施例を図1乃至図39を用い、前述の従来例と同一部分に同一符号を付して説明する。
実施例1.
図1はこの発明の実施例1に係る溶融加工の監視方法を採用する溶融加工装置の構成を示すブロック図、図2はこの実施例1の被接合材の溶融池の表面状態と溶融用エネルギの照射部分を拡大して示す断面図、図3はこの実施例1の受光量の変化を示す図である。材料を溶融するための溶融用エネルギとしては、例えばトーチ、発熱体から材料への伝熱、電気抵抗発熱、レーザのような光ビーム、アーク放電が一般にはあるが、この実施例1ではアーク加熱を利用したスポット溶接を例に挙げて説明する。図1において、被接合材5aと被接合材5bを重ね合わせるとともに接地し、その被接合材5a,5bの上部に離間配置した溶接電極1に電流を溶接電源2から供給し、溶接電極1と被接合材5a,5bとの間にアークを発生させ、被接合材5a,5bの目標とする溶融許容部分を溶融池13に形成する。この溶融池13の深さと表面積とは比例の関係にある。
【0039】
具体的には、被接合材5a,5bの材質と溶融用エネルギの強さとがわかり、溶融池13の表面積の直径が何ミリメートルならば、溶融池13の深さは被接合材5aの表面から何ミリメートルであるというように、溶融池13の表面積の直径から溶融池13の深さを正確に予測することができる。よって、この実施例1の監視方法では、上記のようなアークスポット溶接において、光発生源3と集光レンズ4からなる光ビーム源340を溶接電極1の側方に離間配置し、光発生源3で発生した監視用光ビーム9を集光レンズ4で集光し、その集光された監視用光ビーム9のスポットを目標とする材料溶融許容部分の外周部表面に設定された照射点12に照射するようにする。そして、照射点12での監視用光ビーム9の反射光10を受光するように受光素子7を配置する。この照射点12は被接合材5a,5bを適切に接合するための溶融許容部分としの溶融池13の深さから溶融池13の表面積の直径を算出し、その算出された溶融池13の外周部となる被接合材5aの表面に設定されていることから、溶融加工の初期において照射点12は被接合材5aの固体表面にあり、溶融加工の進行によって溶融池13の深さが深くなるとともに表面積が広がり、その溶融池13の深さが設定深さとなる時期において照射点12が溶融池13の外周部表面に位置することになる。上記受光素子7は、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタなどのような光量を検出する検出部8がアレイ状(列状または格子状)に配置された受光素子であり、このような受光素子7としては市販されているフォトダイオードやCCDなどが用いられる。この受光素子7の各検出部8の受光量を光電変換回路101で電圧値あるいは電流値などの電気信号Vに変換する。この受光素子7の出力端に接続された最大受光部判定回路102は、溶接加工開始前もしくは溶接加工開始後における特定の加工経過時間後の被接合材5aの固体状態になったままの溶接許容部分の外周部表面に位置する照射点12からの監視用光ビーム9の反射光10の受光量が最も大きくなる検出部8を判定し、その検出部8の出力を表示回路103に出力する。表示回路103は最大受光部判定回路102から出力に応じ受光量が最も大きくなる検出部8の受光量に相当する電気信号Vの内容を表示器104に表示させる。
【0040】
溶融加工において、一般的には、材料保持治具の寸法精度、がたつき、あるいは光ビーム源および受光素子の位置決め誤差および材料自身の寸法精度などによって、材料に照射される監視用光ビームの反射光の受光位置にはずれを生じ、受光範囲の狭い単体の検出部のみ有するような受光素子では受光量が変わり、安定して溶融加工を監視することが困難になる。これに対して、この実施例1のごとく受光素子として光量を検出する検出部8をアレイ状に配置した受光素子7を用いれば、上記受光位置のずれに左右されず、受光素子7がほぼ一定の光量を検出することができる。しかも、この実施例1では溶融加工の初期において照射点12は被接合材5aの固体表面にあり、溶融加工の進行によって溶融池13の深さが深くなるとともに表面積が広がり、その溶融池13の深さが設定深さとなる時期において照射点12が溶融池13の外周部表面に位置するというように、照射点12を溶接許容部分の外周部表面に設定し、この照射点12からの反射光10を受光素子7で受光し、この受光素子7の溶融加工中での出力の変化を検出して、溶接加工中の被接合材5a,5bの溶融状態を監視するので、溶融池13の深さが被接合材5a,5bの溶接加工に適切な設定深さに到達したことを正確にリアルタイムで監視できる。つまり、アーク圧力と溶融池13内の溶融物の表面張力および対流によって表面形状にゆらぎが発生する。そして、溶融加工が進行し、溶融池13の深さが設定深さに到達し、溶融池13の表面積が広がり、その溶融加工の進行に伴う溶融池13の表面積の外周部が図2に示すように照射点12に達すると、図2に点線で示すそれまでの監視用光ビーム9の反射光10は溶融池13の外周部の山形を描くゆらぎに応じ実線で示す反射光11へと反射方向が不規則に変化し、照射点12からの反射光は実線示の反射光10と仮想線示の反射光11との間を往復するため、それまで受光量が最大であった検出部8での受光量は激しく変化し、その変化の様子が表示器104に表示される。よって、この表示器104の表示を視認することによって、溶融池13の深さが図1に示すように被接合材5aから被接合材5bにわたって形成され、被接合材5a,5bの溶接加工に適切な設定深さに到達したことを正確にリアルタイムで監視できる。
【0041】
上記照射点12からの反射光の変化の様子について図3を用い説明する。溶接加工開始初期で照射点12における被接合材5a,5bが溶融する前において、反射光10の受光量が最も大きくなる検出部8の電気信号Vに対応する表示器104に表示される光量の変化は、照射点12まわりの被接合材5a表面が加熱に伴い徐々に表面状態が変化する状態変化によって、ラインA〜Bのように振幅の少ない時間幅の大きな緩やか変化となる。この後、溶接加工の進行で溶融池13の深さと表面積とが広がり、溶融池13の表面積の外周部が照射点12に達すると、監視用光ビーム9の反射光は図2に点線で示す反射光10と実線で示す反射光1との間で不規則に変化するため、検出部8からの電気信号Vに対応する表示器104に表示される光量の変化は、ラインB〜Cのごとく振幅の大きい時間幅の小さな激しい変化となり、結果として、照射点12が溶融したことを瞬時に的確に判定することができる。特に、レーザ加熱やアーク加熱の場合には、溶融用エネルギが溶融物を押圧する方向の力が溶融池13の中央部に働くため、図2に示すように、溶融池13の表面中央部は凹状になり、溶融池13の表面外周部は凸状になり、結果として、反射光10,11というように、監視用光ビーム9の反射光の反射方向に変化が生じるため、より感度よく溶融加工を監視することができる。
【0042】
監視用光ビーム9としては白色光、キセノンランプ光およびレーザ光などがあるが、集光性に優れたレーザ光を用いるのが好ましく、また、装置構成上、発振器が小さく光軸合わせの容易な可視レーザ光を発振する半導体レーザ、He−Neレーザが好ましい。また監視用光ビーム9のスポット径としては小さいほど材料溶融状態の平均的情報ではなく局部的情報が得られる。すなわち、加熱中心部が溶融を開始して溶融する領域が広がり、監視用光ビーム9の照射点が固体から溶融状態に変化する現象を瞬時にとらえることができるため、感度よく溶融加工を監視でき、概ねφ0.5mm以下であることが好ましい。また、照射点への入射角は大きい方が良く、具体的には半導体レーザを用いた場合、出力1mW以上のものであれば、入射角が概ね40°以上であれば拡散反射成分が抑制されて効率良く受光できる。
【0043】
ここで良好な溶接継手性能を得るためには、適正な溶け込み深さが必要となるが、溶け込み深さ(溶融池13の深さ)と溶融幅(溶融池13の表面積)の関係は投与するエネルギの種類や投与量によって決定することができるので、所望の溶け込み深さが得られる溶融幅をあらかじめ求めておき、その溶融幅の外周部表面に監視用光ビーム9を照射し、照射点12が溶融したかどうかを判定することにより、溶接品質を適切に監視することができる。
【0044】
実施例2.
図4はこの発明の実施例2に係る溶融加工の監視方法を採用した溶融加工装置の構成を示すブロック図であり、上記実施例1の図1と同じものには同一の符号を用い、その説明を省略する。図5はこの実施例2の被接合材の溶融したろう材の状態と溶融用エネルギの照射部分を拡大して示す断面図、図6はこの実施例2の受光量の変化を示す図である。この実施例2の溶融加工としては、図5に示すように被接合材5a,5bの間に被接合材よりも低い溶融温度を有するろう材6を介在させて加熱し、ろう材6を溶融することによって接合するろう付けを例として図示して説明する。ろう材6は被接合材の材質に応じて選定され、例えば、はんだ、銀ろう、りん銅ろう、銅ろう、ニッケルろう、金ろうなどである。
【0045】
実施例1の溶接加工の監視方法は監視用光ビーム9を照射した材料自身が溶融するものであったが、この実施例2のろう付け加工の監視方法は、図5に示すように、ろう材6が溶融して被接合材5a,5b間から流出し、その流出したろう材6の表面が被接合材5aの角部と被接合材5bに対する監視用光ビーム9の照射点12とを結ぶ傾斜面を呈し、ろう材6の流動先端部が照射点12に達すると、図4に示すように、照射点12における監視用光ビーム9の反射光10の反射方向の変化をアレイ状の受光素子7,光電変換回路101,最大受光部判定回路102,表示回路103および表示器104でとらえることによって、ろう材6が照射点12に流動してきたことを監視することができる。
【0046】
具体的には、この実施例2の溶融加工の監視方法によれば、ろう材6が溶融する前の監視用光ビーム9の反射光10の受光量が最も大きくなる検出部8の光量に対応する電気信号Vは、照射点12まわりの被接合材5aの表面状態の加熱に伴う変化によって、図6に示すラインA〜Bのように振幅の少ない時間幅の大きな緩やか変化であり、その後、ろう材6が溶融して被接合材5a,5b間から流出して照射点12に達すると、それまでの監視用光ビーム9の反射光10はろう材の流動形状によって反射光11へと反射方向が変化するため、それまで受光量が最大であった検出部8の受光量は著しく低下し、その結果、電気信号Vは図6に示すラインB〜Cのごとく急激に低下したままとなるので、ろう材6が流動してきたことを判定することができる。この実施例2では電気信号を表示したが、最大受光部判定回路102の次に、この出力と閾値Vth1との比較を行なう比較判定回路を設け、電気信号がVth1以下になった場合に表示回路103を通して例えばLEDなどを点灯するようにして、ろうが流動してきたことを表示してもよい。
【0047】
また、照射点12に入射するレーザのスポット径としては、ろう材6として銀ろう、りん銅ろうを用いた場合に概ねφ0.5mm以下であれば、流動形状に対して瞬時に方向が変化して感度良く溶融加工を監視することができる。照射点12への入射角は大きい方が良い。監視用光ビーム9として半導体レーザ光を用いた場合、出力1mW以上のものであれば、入射角は概ね40°以上であれば拡散反射成分が抑制されて効率良く受光できる。また、ろう材6の流動方向に対して垂直方向ないし流動方向に対向する方向から照射すると、ろう材6の流動先端部の形状変化に対して正確に溶融加工を監視することができる。
【0048】
以上のような溶融加工の監視方法を用いて、4mm×6mm×2mmの銀系合金からなる電気接点と3mm×50mm×6mmの銅材からなる台座を、銀ろうあるいはりん銅ろうを用いてろう付けし、波長680nm〜780nmの半導体レーザ光をろう付け面にほぼ平行に照射して、照射点12のスポット径をφ0.5mmとして、ろう付け部の長手方向のほぼ中央付近で接合部から3mm程度離れた所に照射し、受光素子7として、5mm×5mmのフォトダイオードからなる検出部8が0.5mmのギャップをもって縦横4素子ずつ配置した受光素子を用いて監視し、ろう付けの良否をLED点灯の有無によって判定したところ、ろう材6が流動してきたか否かを監視することができ、ろう流れ不足、ろう流れ過大といった不良品を正確に判定することができた。
【0049】
実施例3.
この実施例3では受光素子7は、監視用光ビーム9の照射部分が溶融される以前における監視用光ビーム9の反射光路からは特定の距離だけ離し、さらに溶融後の反射光11が投光されるような位置に配置した場合の別の実施例を示す。またこの実施例は上記実施例1及び実施例2と比べて受光素子7はろう材6の流動する向きと同じ向きにずらして配置した例である。図7はこの実施例3はこの実施例3における溶融加工装置の構成を示すブロック図であり、上記実施例1の図1および実施例2の図4と同じものには同一の符号を用い、その説明を省略する。図7はこの実施例3での監視用光ビーム9の照射部分が溶融状態になる前後の監視用光ビーム9の反射光の受光素子7を含む面上での変化を示すものであり、図8はこの実施例3における受光量の変化を示す図である。この実施例3における溶融加工としては実施例2と同様にろう付けを例として図示して説明する。
【0050】
監視用光ビーム9の照射点はろう材6の流動先端部が達する前に、被接合材5a,5bの表面状態の加熱に伴う変化、特に酸化によって光ビームの反射率が変化する。さらに、被接合材5a,5bの表面を活性化して、ろう材6の流動を確保するためフラックスをはじめとする表面活性剤を使用する場合、加熱によって蒸発、飛散するため、反射光が散乱されることにより、受光量の変化が不規則になり、反射方向の変化による受光量の低下が顕著に検出できない場合がある。
【0051】
この実施例3における反射光の変化と受光量の変化を図8を用いて説明する。図7において、材料溶融前においては材料溶融前の光ビームの反射光10の受光位置が受光素子上から離れた位置になるように、さらに、照射点の材料溶融後の反射光路(方向変化した反射光11)と受光素子7の位置関係を設定する。このような設定にすることによる受光量の変化を図8によって説明する。まず、材料溶融前の光ビーム反射光10は受光素子7には入らないため、受光量はラインE〜Fのごとくバックグラウンドレベルでほぼ一定である。次に、ろう材6が溶融して反射方向が変化すると、少なくとも瞬間的には受光素子7は監視用光ビーム9の反射光を検出するために、受光量はラインF〜Gのごとく急峻に立ち上がり、ろうが流出してきたことを判定することができる。例えば、この受光量とあらかじめ設定した閾値との比較を行う比較判定回路107を設け、受光量が閾値以上になった場合に表示回路103を通して、例えばLEDなどを点灯するようにしてろうが流動してきたことを表示器104で表示してもよい。
【0052】
以上のような溶融加工の監視方法を用いることによって、被接合材5a,5b表面の加熱に伴う光ビームの反射率の変化や、例えばフラックスをはじめとする表面活性剤の蒸発、飛散による反射光の散乱の影響を受けることなく、反射方向の変化による受光量の変化が安定に検出することができる。
【0053】
例えば、4mm×6mm×2mmの銀系合金からなる電気接点と3mm×50mm×6mmの銅材からなる台座を、銀ろうあるいはりん銅ろうを用いてろう付けし、波長680nm〜780nmの半導体レーザ光をろう付け面にほぼ並行に照射して、照射点のスポット径を¢0.5mmとして、ろう付け部の長手方向のほぼ中央付近で接合から下方に3mm程度離れた所に照射し、受光素子として30mm×5mmのろう付け部の長手方向に長い寸法を有するフォトダイオードを用いて、材料溶融前においてフォトダイオードの上方5mm程度離れたところに反射光の受光位置がくるようにしてろう付けの良否をLED点灯の有無によって判定したところ、ろう材が流動してきたか否かを監視することができ、ろう流れ不足、ろう流れ課題といった不良品を正確に判定することができた。
【0054】
実施例4.
図9は、この発明の実施例4に係る溶融加工の監視方法を採用した溶融加工装置の構成を示すブロック図、図10はこの実施例4の位置検出素子にて構成した受光素子上の光ビームの反射光の受光位置変化を示す概略図、図11はこの実施例4の受光位置の変位距離rの変化を示す図である。この実施例4の溶融加工の監視方法は、図9に示すように、溶融加工として実施例2と同様なろう付け加工を例として掲げ、受光素子として受光位置を検出するための受光素子16を用いた溶融加工の監視方法を例として図示してある。受光素子16としては例えばフォトダイオードの表面抵抗を利用した非分割型位置センサ(PSD)を用いる。図9において、ろう材6が溶融して被接合材5a,5b間から流出し、ろう材6の流動先端部が照射点12に達すると、照射点12における監視用光ビーム9の反射光10の反射方向の変化を受光素子16および座標演算回路105によって位置座標情報として変換して距離算定回路106に出力し、距離算定回路106によって受光位置の変位距離rを算定し、変位距離rを表示回路103を経て表示器104に表示することによって、ろう材6が照射点12に流動してきたことを監視することができる。
【0055】
具体的には、この実施例4の溶融加工の監視方法によれば、ろう材6が溶融する前には照射点12で監視用光ビーム9の反射光10の方向は変化しないため、受光素子16上での受光位置17aは図10に示すように変化せず、変位距離rは図11に示すようにラインA〜Bのようにほぼ0で一定である(変位距離r=r0 )。その後、ろう材6が溶融して照射点12に流動してくると、監視用光ビーム9の反射光10の方向が反射光11(図5参照)のように変化するため、受光素子16上の受光位置17aが図10に示す位置18aへと変化し、表示曲線は図11に示すように0から変化した変位距離分だけラインB〜Cのごとく急峻に立ち上がり、ろう材6が照射点12に流出してきたことを判定することができる。例えば、距離算定回路106において閾値rthを設定して、変位距離rと閾値rthを比較することによって、ろう材6が照射点12に流出してきたことを判定してもよい。
【0056】
この実施例4では、例えば受光素子16としてPSDを用いた例を示したが、フォトダイオード、フォトトランジスタのような光量を検出する検出部がアレイ状に配置された受光素子6として、市販されているフォトダイオードアレイ、CCDを用いてもよく、この場合には受光素子からの出力を受けて、反射光強度分布の重心もしくは最大部を検出する検出部の位置を座標情報として出力する演算回路を設ければよい。
【0057】
この実施例4では、光ビームの照射点が固体状態である場合と溶融状態になる場合での形状変化が大きければ感度良く監視することができる。このため、ろう付け以外においても、実施例1で示した図2のごとくアーク圧力や溶融によって蒸発反力などの外圧が働き、溶融先端形状が特定の形状に大きく変化するレーザ加熱もしくはアーク加熱といったエネルギ投与による溶融加工の場合にも同様の効果が得られる。
【0058】
以上のように構成された本実施例4の溶融加工装置において、加工中の受光位置は反射方向の変化によってのみ変位し、材質や材料の表面状態の影響を考慮することなく、ろう流れ不足、ろう流れ過大といった不良を正確に判定することができる。
【0059】
実施例5.
この実施例5では受光素子として受光位置を検出するための受光素子16を用いた場合の溶融加工の監視方法の別の実施例を示す。位置検出素子としては、例えばフォトダイオードの表面抵抗を利用した非分割型位置センサ(PSD)を用い、図9の距離算定回路106の他に位置の変位方向θを算定する方向算定回路(図示せず)を有する。このような構成で、受光位置の変位距離rを閾値rthと比較して照射点へのろうの流動を判定し、受光位置の変位方向θを算定して表示することによって、ろう材がどのような形状で流動してきたか知ることができる。図13および図15には、ろう材の流動形状と反射光受光位置の変位方向算定値θとの関係を示す。図12は接合部全体にろう材6が広がった良好なろう付け状態を示したものであり、このような流動形状においては受光素子(PSD)16上の受光位置17bは位置18bへと変化し、変位方向算定値は図13のθ1のごとく小さくなる。一方、図14のごとく未ろう付け部24が発生するような場合には受光位置は位置18cへと変化し、変位方向算定値θは図15のθ2のごとく大きくなる。このような良否の判定を閾値θthを設定して変位方向算定値θと閾値θthを比較することにより、ろう付けの良否を判定することができる。閾値θthは被接合材の形状、ろう付け部と光ビーム9の照射点12との距離などに応じて設定するが、概ね30°〜60°の範囲に設定するのがよい。
【0060】
この実施例5においては、ろう材6が溶融して被接合材5a,5bから流出して被接合材5a,5bの表面もしくは側面を流動してくる場合について、照射点12へのろう材6の流出による反射方向の変化を検出するものであり、特に電気接点と台座とのろう付けのように、ろう材6の流出形状と未ろう接発生の有無との相関性が大きい場合において有効である。
【0061】
このような溶融加工の監視方法を用いて例えば、4mm×6mm×2mmの銀系合金からなる電気接点と3mm×50mm×6mmの銅材からなる台座を、銀ろうあるいはりん銅ろうを用いてろう付けし、半導体レーザ光をろう付け面にほぼ平行に照射して、照射点12のスポット径をφ0.5mmとしてろう付け部の長手方向のほぼ中央付近で接合部から3mm程度離れた所に照射し、受光素子16として13mm×13mmのPSDを用いてろう付けの良否をLED点灯の有無によって判定したところ、ろう材6が流動してきたか否かを監視することができ、さらに閾値θを45°に設定することによってろう流れ不足、ろう流れ過大および未ろう接の発生といった不良を正確に判定することができた。
【0062】
実施例6.
図16はこの発明の実施例6に係る溶融加工装置の構成を示すブロック図、図17はこの実施例6の受光器の受光素子が検出した受光量を電気信号に変換した波形を示す図である。この実施例6では溶融用エネルギとして、例えば誘導加熱、光ビーム加熱、トーチ加熱などを用いたろう付けを例に挙げて説明する。図16において、エネルギ制御部110からの制御信号によってエネルギ発生源111から材料へ溶融用エネルギを投与する。この投与された溶融用エネルギによってろう材6が溶融して被接合材5a,5b同士を接合する。監視用光ビーム9を発生する光ビーム源340は光発生源3と集光レンズ4とから構成され、ろう材6の流動してくる被接合材5a,5bの表面に監視用光ビーム9を照射する。受光器108aは監視用光ビーム9の反射光10の光量を検出する受光素子20と受光量を電気信号Vに変換する光電変換回路101によって構成され、受光素子20としては、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池などが用いられる。107は電気信号Vを閾値Vthと比較判定する比較判定回路、109は比較判定回路107aからの信号を受けてエネルギ発生源111の通電電流の低下量を設定もしくは通電停止を設定するための信号をエネルギ制御部110にフィードバックしてエネルギ発生源111によるエネルギ投与を制御する制御回路である。また、112は冷却器制御回路113および冷却器114から構成された冷却手段である。
【0063】
上記のように構成された溶融加工装置の動作を以下に説明する。ろう材6が溶融する前は加熱に伴う材料表面状態の影響を受けて図17に示すラインA〜Bのごとく振幅の少ない時間幅の大きな緩やかに変化する。さらに溶融加工が進行し、ろう材6が溶融して照射点12に流動してくると、その形状によって反射光10が反射光11となるように、監視用光ビーム9の反射方向が変化し、反射方向が変化した反射光11が受光素子20の検出部から外れるため、受光素子20の受光量は図17に示すラインB〜Cのごとく急峻に低下する。電気信号Vはあらかじめ設定された閾値Vthと比較判定回路107aにおいて随時比較判定され、ろう材6の流動によって電気信号VがラインB〜CのごとくVthより小さくなった時点で制御回路109に比較判定結果を送り制御回路109から信号をエネルギ制御部110にフィードバックして所定設定時間経過した後にエネルギ投与を停止する、もしくは投与量を低下して所定時間投与後エネルギ投与を停止する。
【0064】
以上のような溶融加工装置において、材料の光ビーム照射点への流動を検出して材料へのエネルギ投与を制御することにより、材料の溶融範囲を一定基準範囲に抑制することができる。
【0065】
溶融加工による材料の溶融凝固過程は、主として材料の温度によって支配されるため、溶融形成領域は加工する材料の加熱状態によって決まる。すなわち、比熱、熱伝導率といった溶融される材料の物性、溶融される材料の形状、治具配置といった奪熱構造によってはエネルギ投与を停止してから、温度が低下して溶融物の流動が停止して凝固するまでに時間差が生じる。また、誘導加熱、光ビーム加熱、トーチ加熱、といった傍熱による溶融加工の場合には、エネルギ投与の制御よりも温度低下が遅れを持つ場合がある。このような場合には、エネルギ投与量を低下するもしくは投与停止するとともに、比較判定回路107の出力を冷却手段112の冷却器制御回路113に送って冷却器114を作動し、溶融物の温度を強制的に低下させ、溶融の広がり、もしくは流動を抑制することによって精度良く溶融加工の制御を行うことができる。
【0066】
このような溶融加工装置の冷却手段112としては例えば、ガス、液体のごとく流体を冷媒として冷却する手段、あるいは固体状の冷却器を溶融部近傍に押し付けることによって冷却する手段があり、この実施例6では流体を冷媒にした冷却手段を例として図16に図示してある。冷却手段112は冷却器制御回路113と冷却器114から構成され、冷却器制御回路113は比較判定回路107によって電気信号Vが閾値Vthよりも小さくなった場合に比較判定回路107からの出力信号によって冷却器114を作動させる。冷却器114はガスあるいは液体を冷媒とする場合には、冷媒貯蔵部、冷媒圧力、流量調節部、開閉弁などより構成され、冷却制御回路113の出力によって開閉弁を開いて材料の溶融部に冷媒を供給して冷却する。冷媒ガスは材料の溶融部の酸化を防止するために例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素といった不活性ガスが好ましい。また、冷媒が液体である場合には例えば水、液化窒素などが比較的安価に入手でき工業的利用価値が高い。
【0067】
溶融される材料の熱伝導、比熱、形状に応じて冷却媒体の供給量を設定し、溶融された材料を冷却することにより、エネルギ投与手段に関わらず、溶融部の流動を抑制することができ、溶融加工の制御をより安定に行うことができる。
【0068】
実施例7.
図18はこの発明の実施例7に係る溶融加工装置の構成を示すブロック図、図19および図20はこの実施例7のろう材6の流動先端部の形状を示す断面図、図21はこの交流パルス通電とろう材の流動との関係を示す図である。この実施例7は溶融加工として特に電気抵抗発熱を用いたろう付けの場合の実施例である。図18において、溶融加工装置は、光発生源3と集光レンズ4とから構成される光ビーム源340、被接合材5a,5b、ろう材6、監視用光ビーム9、反射光10、反射光11、照射点12、受光素子20、光電変換回路101、比較判定回路107、受光器108a、制御回路109、通電制御回路115およびエネルギ発生源196を備える。受光器108aは監視用光ビーム9の反射光10の光量を検出する受光素子20と受光量を電気信号Vに変換する光電変換回路101によって構成され、受光素子20としては例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池などが用いられる。エネルギ発生源196は、一対の電極19a,19bと、これらの電極19a,19bにリード線21を介して接続された電源116とで構成される。一対の電極19a,19b間には被接合材5a,5bが介在され、被接合材5a,5b間にはろう材6が介在され、一対の電極19a,19bはろう材6を被接合材5a,5bを介して挟持する。電源116はリード線21を介して電極19a,19bから被接合材5a,5bを経てろう材6に電流を供給する。ろう材6は供給された電流によってジュール熱を生じて加熱され溶融して被接合材5a,5b同士を接合する。通電制御回路115は制御回路109からの信号を受けて通電電流を制御する信号を電源116に出力する。つまり、この通電制御回路115は溶融用エネルギ発生源としての電源16がパルス通電によって溶融用エネルギを発生する手段を構成する。
【0069】
この実施例7の電気抵抗発熱を用いたろう付けにおいては、被接合材5a,5bおよびろう材6に電磁ピンチ効果が生まれる。すなわち、導体中を流れる電流によって電磁力がはたらき、例えば導体が溶融金属のような液体である場合にはこの力が導体内部への圧縮力(ピンチ力F)となって働く。ピンチ力Fの大きさは通電電流値Iの2乗に比例する。このようなピンチ力Fによってろう材の流動先端部の形状は変形し、通電電流値Iが大きければ変形量が増加するため、監視用光ビーム9を照射した照射点12へのろう材6の流動によって、監視用光ビーム6の反射方向の変化は大きくなるため、この実施例7はろう材6の流動を感度よくとらえることができる。図19に示すろう材6の流動先端部の形状は通電パルス周波数60Hz、電流値6.5kA(実効値)の交流通電電流条件によるものであり、図20に示すろう材6の流動先端部の形状は電流値3.5kAの直流の通電電流条件によるものである。交流通電パルスの場合のピンチ力は電流値3.5kAの直流通電の場合よりも約3倍以上になり、そのピンチ力がピーク値に達した場合には図19のようにろう材6の流動先端部の角度が大きくなり、監視用光ビーム9の反射方向の変化を瞬時にとらえることができる。
【0070】
このような大きな通電電流値Iを供給するためには、直流では実効電力値が極めて大きくなり、実用的には不可能であり、パルス状の通電電流を供給することによって可能となる。
【0071】
例えば、実施例6における受光素子20上では上記パルス通電の通電条件において、1msec以下の短時間で反射方向が変化し、ろう材6の流れを極めて高精度に抑制することができた。
【0072】
さらに、特に電気接点の台座とのろう付けすなわち接点の抵抗発熱によるろう付けにおいては、電極などへの熱伝導によって熱の逃げが大きく、ろう材6の流動は通電を停止することによって瞬時に停止する。例えば、4mm×6mm×2mmの銀系合金からなる電気接点と3mm×50mm×6mmの銅材からなる台座を銀ろうを用いて交流パルス通電によってろう付けした場合には、通電中にはろうは約900℃の到達温度で約30mm/secの速度で流動し、通電停止後は通電直後は5mm/sec以下となり、電極による冷却効果によってほぼ50msec程度で停止する。このため、通電停止の時間制御を行うことによってろう材6の流動量を高精度に制御することができる。
【0073】
図21に示すように、例えば4mm×6mm×2mmの銀系合金からなる電気接点と3mm×50mm×6mmの銅材からなる台座を実効値6.5kA、60Hzの交流パルス通電によってろう付けした場合、ろう材6は電磁ピンチ力の影響を受けて、パルス周波数の2倍の周波数で脈動しながら流動し、通電の停止直後には流動は停止し、ろう材6の流動量を的確に制御することができた。
【0074】
また、この実施例7では一つの光ビーム源と、光ビームの反射光の受光する一つの受光素子を用いた例を図示して説明したが、複数の光ビーム源と各光ビーム源による光ビームの反射光を受光する受光素子を用いてもよく、その場合にはろう材が流動する領域をより正確に検出することができるので、ろう材6の流動量を高精度に制御することができる。
【0075】
実施例8.
図22はこの発明の実施例8に係る溶融加工装置の構成を示すブロック図であって、反射光を受光する素子を光量を検出する検出部がアレイ状に配置された受光素子とした場合の実施例を示す。図22において、溶融加工装置は、光発生源3と集光レンズ4とから構成される光ビーム源340、被接合材5a,5b、ろう材6、監視用光ビーム9、反射光10、反射光11、照射点12、一対の電極19a,19b、受光素子20、リード線21、比較判定回路107、受光器108b、制御回路109、通電制御回路115、電源116およびエネルギ発生源196を備える。受光器108bは、光量を検出する検出部8がアレイ状に配置された受光素子7と、受光量を電気信号に変換する光電変換回路101と、監視用光ビーム9の反射光10の受光量が最も大きくなる検出部8の電気信号Vを出力する最大受光部判定回路102とから構成される。エネルギ発生源196は、一対の電極19a,19bと、これらの電極19a,19bにリード線21を介して接続された電源116とで構成される。
【0076】
このように構成された溶融加工装置において、受光素子7の加工開始前もしくは特定の加工経過時間後の反射光10の受光量が最大となる検出部8を最大受光部判定回路102で判定する。この検出部8からの電気信号Vを比較判定回路107によって閾値Vthと比較し、電気信号Vに応じた受光量が閾値Vthより小さくなった時点で、比較判定回路107が比較判定結果を制御回路109に送り、制御回路109から信号を通電制御部115にフィードバックし、通電制御部115が制御回路109からの信号のフィードバックを受けてから所定設定時間経過した後に電源116を通電停止とするか、もしくは通電制御部115が制御回路109からの信号のフィードバックを受けてから所定設定時間経過した後に電源116の電極19a,19bへの通電電流量を低下して所定時間通電後に、電源116を通電停止とする。
【0077】
この実施例8では監視用光ビーム9の反射光10の光量を検出する検出部8がアレイ状に配置された受光素子7における受光量が最も大きくなる検出部8を判定してから、その検出部8における受光量の変化を検出するので、被接合材5a,5bの位置決め誤差によって生じる受光位置のずれによる影響を受けず、常に安定した制御を行うことができ、結果として、ろう付け加工の工業的な量産への利用価値が高くなる。
【0078】
以上のように構成された溶融加工装置を用いて、例えば4mm×6mm×2mmの銀系合金からなる電気接点と3mm×50mm×6mmの銅材からなる台座を、銀ろうあるいはりん銅ろうを用いてろう付けした。波長680nm〜780nmの半導体レーザ光をろう付け面にほぼ平行に照射して、照射点12のスポット径をφ0.5mmとしてろう付け部の長手方向のほぼ中央付近で接合部から3mm程度離れた所に照射した。その反射光を5mm×5mmのフォトダイオードからなる検出部が0.5mmのギャップをもって縦横4素子ずつ配置した受光素子を用いたところ、ろう流れ不足および過剰なろう流れが生じることがなくろう材6の流動量を一定にすることができ、ろう付け品質を安定にすることができた。
【0079】
実施例9.
図23は、この発明による溶融加工装置の一実施例を示したものである。これは、受光器(受光素子20)を含む面上において、監視用光ビーム9の照射部分が溶融される以前における監視用光ビーム9の反射光照射位置からは特定の距離だけ離し、さらに溶融後の反射光11が投光されるような位置に配置したものである。すなわち、受光器(受光素子20)として、光ビームの照射点12が溶融状態になった後に上記受光素子20に反射光11が投光されるように、光ビームの照射部が溶融する前の光ビームの反射光10の受光位置が受光素子20外のところに位置するような構成になっている。また、この実施例は、実施例6と比べて受光素子20は、ろうの流動する向きと同じ向きにずらして配置した例である。他の部分は実施例6と同一のもの、もしくは相当するものであり、同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0080】
上記のように構成された溶融加工装置の動作を以下に説明する。ろう材6が溶融する前には、受光量は照射点12の表面状態の変化や反射光を遮るように蒸発、飛散する。例えば、フラックスのような表面活性剤の影響を受けることがないので、受光量を変換した電気信号Vは図24に示すラインE〜Fのごとくバックグラウンドレベルを維持する。さらに加工が進行してろう材6が溶融し、かつ照射点12に流動してくると、その形状によって反射方向が変化して受光素子20に投光されるため、電気信号VはラインF〜Gのごとく急峻に増加する。電気信号Vはあらかじめ設定された閾値Vthと比較判定回路107において随時比較判定され、ろうの流動によって電気信号VがラインF〜GのごとくVth2より大きくなった時点で出力回路109に比較判定結果を送り、出力回路109から信号を制御部110にフィードバックして所定設定時間経過した後にエネルギ投与を停止する、もしくは投与量を低下して所定時間投与後エネルギ投与を停止する。
【0081】
以上のような溶融加工装置において、照射点12の表面状態やフラックス等の表面活性剤の影響を受けずに、材料の光ビーム照射点12への流動を安定に検出して材料へのエネルギ投与を制御することができるので、材料の溶融範囲を一定基準範囲に抑制することができる。
【0082】
実施例10.
図25は、この発明による溶融加工装置の他の実施例について示したものである。本実施例は溶融加工として、特に電気抵抗発熱を用いたろう付けの場合の実施例である。図25中の符号3〜6、9〜11、20、101、107、108a、109、340は上記実施例7の図18と同一のもの、もしくは相当するものである。エネルギ発生源196を構成する19a,19bは被接合材5a,5bおよびその間に介在したろう材6を挟持するように構成された一対の電極、21は上記電極19a,19bに通電するリード線、116は上記電極19a,19bおよび5a,5bとその間に介在するろう材6とに電流を供給する電源である。115は出力回路109からの信号を受けて通電電流を制御する通電制御部である。また、この実施例では、実施例7と比べて受光素子は、ろうの流動する向きと同じ方向にずらして配置した例である。
【0083】
本実施例で示す抵抗発熱を用いたろう付けにおいては、電源116から供給された電流によってジュール熱を生じさせて加熱し、ろう材6を溶融して被接合材5aと5bとを接合する。この時、ピンチ力によってろう材6の流動先端形状は変形し、通電電流値Iが大きければ変形量が増加するため、光ビームを照射した照射点12へのろうの流動による反射方向の変化はより大きくなって、ろうの流動を感度良くとらえることができる。
【0084】
さらに、特に電気接点の台座とのろう付け、すなわち接点の抵抗発熱によるろう付けにおいては、電極等への熱伝導によって熱の逃げが大きく、ろうの流動は通電を停止することによって瞬時に停止する。例えば、4mm×6mm×2mmの銀系合金からなる電気接点と3mm×50mm×6mmの銅材からなる台座を、銀ろうを用いてパルス通電によってろう付けした場合には、通電中にろうは約900℃の到達温度で約30mm/secの速度で流動し、通電停止後は通電直後に5mm/sec以下となり、電極による冷却効果によってほぼ50msec程度で停止する。このため、通電停止の時間を制御することによって、ろうの流動量を高精度にコントロールすることができる。
【0085】
図26は上記実施例7で説明した図19のごとく、ろうが電磁ピンチ力の影響を受けて、パルス通電の周波数の2倍の周波数で脈動しながら流動してきた場合の電気信号Vの変化を示す。脈動変形に同期して受光量も脈動するため、電気信号Vは図26に示すラインF〜Gのような波形となる。電気信号Vが閾値Vthよりも大きくなった時点で出力回路109に比較判定結果を送り、出力回路109から信号を制御部110にフィードバックして所定設定時間経過した後に通電を停止すると流動も停止するので、流動量を高精度に制御することができた。
【0086】
また、本実施例では一つの光ビーム源と光ビームの反射光を受光する一つの受光素子を用いた場合について示したが、上記実施例7と同様に光ビーム源と各光ビームの反射光を受光する受光素子を用いてもよく、その場合にはろうが流動する領域をより正確に検出することができるので、流動量を高精度に制御することができる。
【0087】
実施例11.
図27はこの発明の実施例11に係る溶融加工装置の構成を示すブロック図、図28はこの実施例11の動作を説明するための受光位置の変位距離の変化の様子を示す図である。この実施例11は反射光を受光する受光素子として受光位置を検出する受光素子16を用いた場合の実施例を示したものである。図27において、溶融加工装置は、光発生源3と集光レンズ4とから構成される光ビーム源340、被接合材5a,5b、ろう材6、監視用光ビーム9、反射光10、反射光11、照射点12、一対の電極19a,19b、リード線21、距離算定回路106、比較判定回路107b、受光器108c、制御回路109、通電制御回路115、電源116およびエネルギ発生源196を備える。受光器108cは、例えばPSDのような受光位置を検出するための受光素子16と、受光位置の座標を出力する座標演算回路105とから構成される。距離算定回路106は座標演算回路105の出力を受けて受光位置の変位距離rを比較判定回路107bに出力する。比較判定回路107bは距離算定回路106から受け取った変位距離rをあらかじめ設定した閾値rthと比較判定する。エネルギ発生源196は、一対の電極19a,19bと、これらの電極19a,19bにリード線21を介して接続された電源116とで構成される。
【0088】
以上のように構成された溶融加工装置の動作について説明する。距離算定回路106によって出力される変位距離rは図28のように変化する。ろう材6が溶融する前は、加熱に伴う照射点12の材料表面状態が変化しても、監視用光ビーム9の反射方向は変化しないため、受光素子16の受光位置の変位距離rは図28に示すラインA〜Bのごとくほぼ0で一定である。そして、溶融加工が進行し、ろう材6が溶融して照射点12に流動してくると、その形状によって、監視用光ビーム9の反射方向が変化するため、受光素子16の受光位置の変化にともない変位距離rは図28に示すラインB〜Cのごとく急激に立ち上がるように変化する。よって、変位距離rをあらかじめ設定した閾値rthと比較判定回路107bで比較判定し、r>rthとなった時点で、制御回路109に比較判定結果を送り、通電制御部115に信号をフィードバックし、通電制御部115が制御回路109からの信号のフィードバックを受けてから所定設定時間経過した後に電源116の電極19a,19bへの通電電流量を低下して所定時間通電後に、電源116を通電停止とする。
【0089】
以上のように構成された溶融加工装置においては、加工中の受光位置は監視用光ビーム9の反射方向の変化によってのみ変位するので、材質や表面状態の影響を考慮することなく制御することができる。
【0090】
このような溶融加工装置を用いて前記した電気接点と台座を60Hzの交流通電パルスでろう付けした場合において、半導体レーザ光をろう付け面にほぼ平行に照射して、照射点のスポット径をφ0.5mmとしてろう付け部の長手方向のほぼ中央付近で接合部から3mm程度離れた所に照射し、受光素子16として13mm×13mmのPSDを用いてろう付けしたところ、ろう流れ不足、ろう流れ過大を抑制することができた。
【0091】
実施例12.
図29はこの発明の実施例12に係るエネルギ源としてパルス通電加熱を用いた溶融加工装置の構成を示すブロック図、図30〜図32はこの実施例12の動作を説明するための要部を示す図、図33はこの実施例12の動作を説明するための受光位置の変位距離の変化の様子を示す図である。この実施例12は監視用光ビーム9をパルス通電の周波数以上の周波数で走査(オシレート)する溶融加工装置の実施例について示したものである。図29において、溶融加工装置は、光発生源3と集光レンズ4とから構成される光ビーム源340、被接合材5a,5b、ろう材6、監視用光ビーム9、反射光10、反射光11、照射点12、一対の電極19a,19b、受光素子20、リード線21、光電変換回路101、距離算定回路106、比較判定回路107a、受光器108a、制御回路109、通電制御回路115、電源116、エネルギ発生源196およびビームオシレータ223を備える。受光器108aは監視用光ビーム9の反射光10の光量を検出する受光素子20と受光量を電気信号Vに変換する光電変換回路101によって構成され、受光素子20としては例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池などが用いられる。エネルギ発生源196は、一対の電極19a,19bと、これらの電極19a,19bにリード線21を介して接続された電源116とで構成される。ビームオシレータ223は光発生源3からの光ビーム9をパルス通電の周波数以上の周波数でオシレートするためのものであって、このビームオシレータ223は監視用光ビーム9を反射するミラー22と、ミラー22を振動させるガルバノメータなどの振動装置23とから構成される。この振動装置23でミラー22を振動するのに代替し、監視用光ビーム9をオシレートする構成として光発生源3自体を振動装置23で振動させてもよい。この実施例12の制御回路109は、比較判定回路107aで電気信号Vと閾値Vth3を比較する毎に時間を計数するカウンタ回路117と、電気信号Vが閾値Vth3より小さくなる時間をカウンタ回路117から受けて記憶して出力するメモリ回路118と、メモリ回路118の出力とカウンタ回路117の出力の差分を取る差分回路119と、差分Δtを閾値Δtthと比較判定する第2の比較判定回路107cと、第2の比較判定回路107cからの信号を受けて通電電流の低下量を設定して通電制御部115に制御信号をフィードバックする演算出力回路120とより構成される。
【0092】
上記のように構成されたパルス通電加熱による溶融加工装置の動作を図30〜図32に従って説明する。この実施例12では監視用光ビーム9はろう材6が溶融して流動してくる部位にろう付け部にほぼ平行にオシレートする。上記のごとくオシレートした監視用光ビーム9の反射光10を受光器108a中の受光素子20で受光する。ろう材6が溶融する前には図30のごとく監視用光ビーム9がオシレート照射されるので、その反射光10は受光素子20上でX−Yの軌跡を描き、出力する電気信号Vはほぼ一定の値をとる。次に図31に示すように、ろう材6が溶融してオシレート照射する監視用光ビーム9の照射点12に達すると、図31のA−Bでは監視用光ビーム9の反射方向が変化するために、反射光10の軌跡は受光素子20上でY−A−B−Xとなり、AとB間での受光量は減少する。さらに、ろう材6の流動が進むと、図32のC−Dのごとく監視用光ビーム9の反射方向が変化する部分が増加し、受光素子20上で受光する受光量が減少する時間が増加する。オシレート変位波形(照射点12の走査位置の変化を示す波形)と以上の経過に対する電気信号Vの出力は図27に示すような関係になる。図33中、a,b,cは図30,図31,図32の状態における出力波形にそれぞれ相当する。ろう材6が溶融して流動し、このろう材6が監視用光ビーム9のオシレートする照射点12に流動してくると、ろう材6の流動してきた部分だけ監視用光ビーム9の反射方向が変化するため、受光素子20の受光量が減少する。比較判定回路107aにおいてこの電気信号Vが図33に示す閾値Vth3よりも小さくなった時点でメモリ回路118に、その時間taを記憶する。さらに,引き続き電気信号Vと閾値Vth3を比較し、電気信号Vが再び閾値Vth3よりも大きくなった時間tbと時間taの差分Δtを差分回路119にて出力する。この差分Δtと閾値Δtthとを比較判定回路107cにおいて比較判定し、差分Δtが閾値Δtthよりも小さい場合には再び上記の流れを繰り返す。差分Δtが閾値Δtthより大きくなった時点で演算出力回路120から通電制御部115に信号をフィードバックして通電電流量を所定量低下して所定時間通電した後に通電を停止してろう付けを完了する。
【0093】
以上のように構成された溶融加工装置を用いることによって、一個の光源を用いて線上での、ろうの流動状態を判定して制御することができる。
【0094】
また、前記したようにパルス通電によるピンチ力の発生は通電パルスの絶対値の2乗に比例し、ろうはその影響を受けて図21のごとく通電パルスがピーク値に到達する付近で急激に流動する。このため、監視用光ビーム9を通電パルス周波数以上の周波数でオシレートすることによって、オシレート半周期分での受光量変化を、ろう材6の流動1周期分以内でとらえることができ、溶融加工を高精度に制御することができる。例えば50Hzまたは60Hzの商用交流波形を用いた場合には100Hzまたは120Hzの電磁ピンチ力の作用によってろう材6が脈動して流動するため、監視用光ビーム9を50Hzまたは60Hz以上でオシレートすれば溶融加工を高精度に制御できるので、商用交流の周波数を変換する必要もなく構造が簡単となる。
【0095】
また、時間差分Δtと閾値Δtthをオシレート周期Τで割算する割算回路を設け、Δt/Τと閾値Δtth/Τとを比較判定する構成にすることによって、オシレート周波数に依存することなく適応することができる。
【0096】
実施例13.
図34はこの発明の実施例13に係る制御方法を採用した溶融加工装置の構成を示すブロック図、図35はこの実施例13の制御方法の流れを示すフローチャートである。図34において、溶融加工装置は、光発生源3と集光レンズ4とから構成される光ビーム源340、被接合材5a,5b、ろう材6、監視用光ビーム9、反射光10、反射光11、照射点12、一対の電極19a,19b、受光素子20、リード線21、光電変換回路101、距離算定回路106、比較判定回路107a、受光器108a、制御回路109、通電制御回路115、電源116、およびエネルギ発生源196を備える。受光器108aは監視用光ビーム9の反射光10の光量を検出する受光素子20と受光量を電気信号Vに変換する光電変換回路101によって構成され、受光素子20としては例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池などが用いられる。エネルギ発生源196は、一対の電極19a,19bと、これらの電極19a,19bにリード線21を介して接続された電源116とで構成される。この実施例13における制御回路109は、受光量に対応する電気信号Vを閾値Vth2と比較判定する毎に加工開始からの時間(加工経過時間=溶融用エネルギの実際の投入時間)tを計数するカウンタ回路117、電気信号Vが閾値Vth2より小さくなったときという上記実施例7で説明した比較判定回路107からの比較信号によってそのときまでカウンタ回路117が計数した時間tを記憶する、メモリ回路118、メモリ回路118に記憶された時間tを予め設定された基準値(所定時間情報)と比較判定する比較判定回路107C、この比較判定回路107Cの出力を演算して通電制御部115に制御信号を送る演算出力回路120により構成される。よって、この実施例の制御方法は、図35のフローチャートに示すように、受光量に対応する電気信号Vを閾値Vth2と比較判定する毎にカウンタ回路117によって、加工開始からの時間tを計数する。このようにして電気信号Vが閾値Vth2より小さくなった場合に、その時間tをメモリ回路118に記憶し、比較判定回路107Cにおいて時間tを予め設定した基準値ta,tb(ta>tb)と比較判定する。ここで基準値taとは適正な加熱速度によってろう付け部の全体にわたって均一に加熱される下限値であり、基準値tbとは通電電流量を低下させることによって均熱をはかり、均一なろう付け形成ができる下限値である。t>taであれば適正なろう付け加工がなされたと判定して、制御回路から通電制御部に通電停止信号を送って通電を停止する。時間tがtb≦t≦taであれば、加熱速度が過大であると判定して、信号を通電制御部に送って、通電電流を所定量低下して所定時間通電後通電を停止する。t<tbであれば、信号を通電制御部に送って通電を所定設定時間停止して、再度所定設定時間通電する。要するに、この実施例13は反射光の受光量が閾値より小さいならば、溶融加工の継続時間の基準値との比較結果に応じ通電条件を制御する方法である。
【0097】
溶融加工においては加工部の品質を安定にするためには、材料の加熱状態を均一にすることが必要である。特に、この実施例13のように抵抗発熱を用いたろう付けのように、加熱時間が1秒前後と短く、エネルギ供給源である電極と被接合材の表面状態や接触状態等によって、材料の加熱状態に偏りが生じ、材料中に温度分布が生じ易いような場合には、均熱化を行う必要がある。また、材料の形状や非対称性によっても温度分布が生じる。このため、通電電流量を低下、もしくは一時的に停止、場合によっては増加することによって、材料への入熱を制御し、均熱化を図ることができる。
【0098】
さらに、ろうが流動してくるまでの検出時間tは材料の加熱状態によって変化するため、検出時間tに応じて通電を制御することによって、ろう流れ不足、ろう流れ過大、未ろう接の発生を抑制し、品質のばらつきを少なくすることができる。
【0099】
また、この実施例13では光量変化の電気信号Vを用いた制御方法について説明したが、実施例11で示したような受光位置の変位距離rを用いても同様の効果を得ることができる。
【0100】
実施例14.
図36はこの発明の実施例14に係る制御方法を採用した複数の受光素子を備えた溶融加工装置の構成を示すブロック図、図37はこの実施例14の制御方法の流れを示すフローチャートである。図36において、溶融加工装置は、複数の光発生源3と光発生源3に対応する複数の集光レンズ4とから構成される光ビーム源340、被接合材5a,5b、ろう材6、光発生源3に対応する複数の監視用光ビーム9、複数の監視用光ビーム9に対応する複数の反射光10、複数の監視用光ビーム9に対応する複数の反射光11、複数の監視用光ビーム9に対応する複数の照射点12、一対の電極19a,19b、複数の受光素子20a,20b、リード線21、受光素子20a,20bそれぞれに接続された複数の光電変換回路101、受光素子20a,20bそれぞれに接続された複数の比較判定回路107a、制御回路109、通電制御回路115および電源116、およびエネルギ発生源196を備える。エネルギ発生源196は、一対の電極19a,19bと、これらの電極19a,19bにリード線21を介して接続された電源116とで構成される。この実施例14における制御回路109は、カウンタ回路117とメモリ回路118と差分回路119と比較判定回路107cと演算出力回路120とより構成される。よって、この実施例の制御方法は、図37のフローチャートに示すように、各受光素子20a,20bによって光量を検出し、各受光素子20a,20bによる受光量を光電変換回路101により電気信号Vに変換するとともに、時間tを計数する。そして、電気信号Vがより早く閾値Vth4よりも小さくなる時間t1をメモリ回路118により記憶する。例えば受光素子20aからの電気信号Vが早く閾値Vth4よりも小さくなった場合には、その時間t1を記憶し、受光素子20bは引き続き光量を検出するとともに、時間tを計数してt1との差分Δtをとる。電気信号VがVth4より小さくない場合には、Δtを比較回路にてあらかじめ設定した基準値Δtmaxと比較し、電気信号Vが閾値Vth4よりも小さくなる前にΔtがΔtmaxよりも大きくなれば、通電電流を所定量低下する。このようにして閾値Vth4よりも小さくなった時点で、Δtがあらかじめ設定した基準値Δtthと比較する。Δt<Δtthの場合には、通電制御部115に信号を送って通電を停止する。Δt≧Δtthの場合には通電制御信号を送って、通電を所定量低下して所定時間通電した後通電を停止する。
【0101】
加工部の温度が不均一になることによって溶融部の形成状態すなわちろう材6の流動状態が局部的に異なることがあることから、この実施例14のごとく複数の受光素子20a,20bからの検出時間の差に応じて通電を制御することによってろう付け部を均熱化してろう付け部全体のろうを溶融することができ、より精度よく未ろう接の発生を抑制することができる。
【0102】
実施例15.
図38はこの発明の実施例15に係る制御方法を採用した溶融加工装置の構成を示すブロック図、図39はこの実施例15の制御方法の流れを示すフローチャートである。図38において、溶融加工装置は、光発生源3と集光レンズ4とから構成される光ビーム源340、被接合材5a,5b、ろう材6、監視用光ビーム9、材料溶融前の光ビームの反射光10、方向変化した反射光11、照射点12、一対の電極19a,19b、受光素子16、リード線21、座標演算回路105、距離演算回路106、比較判定回路107a、変換器108、制御回路109、通電制御回路115および電源116、およびエネルギ発生源196を備える。変換器108は監視用光ビーム9の材料溶融前の光ビームの反射光10と方向変換した反射光11の受光位置を検出する受光素子16とこの受光位置による監視用光ビーム9の反射方向の変化を位置座標情報として変換する座標演算回路105によって構成され、受光素子16としては例えばフォトダイオードの表面抵抗を利用した非分割型位置センサ(PSD)が用いられる。エネルギ発生源196は、一対の電極19a,19bと、これらの電極19a,19bにリード線21を介して接続された電源116とで構成される。この実施例15における制御回路109は、比較判定回路107bの出力を受けて受光位置の変位方向を算定する方向算定回路121、変位方向を閾値θth1,θth2と比較判定する比較判定回路107d、および比較判定結果を演算して通電制御部115に制御信号を送る演算出力回路120より構成される。よってこの実施例の制御方法は、図39のフローチャートに示すように、受光素子16によって受光位置を検出し、座標演算を経て距離算定回路106によって位置の変位距離rを算定する。距離算定値rを閾値rthと比較判定し、r>rthとなった時点で比較判定回路107bからの出力をうけて位置の変位方向を算定する。この算定値θをあらかじめ設定した基準値θth1、θth2(θth1<θth2)と比較判定する。ここで基準値θth1とは適正な加熱速度によってろう付け全体にわたって均一に加熱される上限値であり、基準値θth2とは通電電流量を低下させることによって均熱をはかり、均一なろう付け形成ができる上限値である。θ≦θth1であれば適正なろう付け加工がなされたと判定して、演算出力回路120から通電制御部115に通電停止信号を送って通電を停止する。θth1<θ≦θth2であれば、加熱が不均一であると判定して、信号を通電制御部115に送って、通電電流を所定量低下して所定時間通電後通電を停止する。θ>θth2であれば、信号を通電制御部115に送って通電を所定設定時間停止して、再度所定設定時間通電する。要するに、この実施例15は受光位置の変位方向と変位位置とで通電条件を制御する方法である。
【0103】
以上のように受光位置の変位方向θの大きさによって、1個の光ビーム源と受光素子を用いるだけで光ビーム照射点へ流動したろうの流動形状を特定できるので、θに応じて通電を制御することによって、簡易な構成で確実に未ろう接の発生を抑制することができる。
【0104】
このような制御方法によって、4mm×6mm×2mmの銀系合金からなる電気接点と3mm×50mm×6mmの銅材からなる台座をろう付けした。ろう材6として銀ろうあるいはりん銅ろうを用い、波長680nm〜780nmの半導体レーザをろう付け面にほぼ平行に照射して、照射点のスポット径をφ0.5mmとしてろう付け部の長手方向のほぼ中央付近で接合部から3mm程度の所に入射角60°で照射した。その反射光を13mm×13mmのPSDを用いて受光して制御したところ、ろう流れ不足、および過大なろう流れが生じることなく、ろう材6の流動量を一定にすることができ、さらに、未ろう接部の発生を抑制することができた。
【0105】
【発明の効果】
請求項1によれば、材料の監視用光ビーム照射部分の溶融に伴う反射光の反射方向の変化を受光素子で検出して表示器に表示することによって、照射部分が溶融したことを報知でき、溶接品質を適切に監視できるようになる。
請求項2によれば、監視用光ビームの照射部分における材料の固相から溶融状態への変化を、反射光の検出部を列状または格子状に配置した受光素子で検出するので、請求項1の効果が得られ、また、例えば照射点の表面状態の変化やフラックスをはじめとする表面活性剤の蒸発、飛散といった光ビームの散乱の影響を受けることなく安定に監視することができる。
請求項3によれば、監視用光ビームの照射部分における材料の固相から溶融状態への変化を、監視用光ビーム照射部分の溶融後の反射光を受光する位置に配置された受光素子で検出することで、請求項1の効果が得られる。
請求項4によれば、監視用光ビームの照射部分における材料の固相から溶融状態への変化を、反射光の受光位置の位置情報を出力する受光素子からの位置情報により検出することで、請求項1の効果が得られる。
請求項5によれば、受光量と閾値との比較によって、材料に投与される溶融用エネルギの投与を制御する。例えば制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから所定時間後に、溶融用エネルギの投与を停止するか、または制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから溶融用エネルギの投与量を低下し、その溶融用エネルギの投与量低下から所定時間後に溶融用エネルギの投与を停止するように構成にしたので、光ビームの照射点の材料が固体状態から溶融状態に変化して反射光の受光量が変化するのを検出でき、その受光量に応じてエネルギ投与量を変化させることができる。したがって、溶融材料の広がり量、流動量および形状を制御することができ、溶融加工における加工品質を高精度に安定性良く制御することができるという効果が得られる。
請求項6によれば、受光器は、監視用光ビームの照射部分が溶融される以前における監視用光ビームの反射光路からは特定の距離だけ離し、さらに溶融後の反射光が投光されるような位置に配置した構成になっているので、照射点表面状態やフラックス等の表面活性剤の影響を受けずに、材料の光ビーム照射点への流動を安定に検出して材料へのエネルギ投与を制御することができるので、材料の溶融範囲を一定基準範囲に安定性よく抑制することができる。
請求項7によれば、受光位置の変位距離と閾値との比較によって、材料に投与される溶融用エネルギの投与を制御する。例えば制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから所定時間後に、溶融用エネルギの投与を停止するか、または制御回路がエネルギ発生源を制御するための信号をエネルギ制御部にフィードバックしてから溶融用エネルギの投与量を低下し、その溶融用エネルギの投与量低下から所定時間後に溶融用エネルギの投与を停止するように構成したので、光ビーム照射点での反射光の方向の変化を検出でき、これにより照射点における材料の固体から溶融状態への変化および溶融形状を検出できる。したがって、品質の良否を大きく反映する材料の溶融物の広がり量、流動量および形状を安定性良く制御することができるという効果が得られる。
請求項8によれば、溶融部分の流動を抑制する冷却手段を有するように構成したので、溶融物の溶融の広がりや流動を抑えることができ、加工品質の向上を図れるという効果が得られる。
請求項9によれば、エネルギ発生源からのパルス通電加熱による溶融用エネルギが材料に電磁ピンチ効果を誘発するように構成したので、材料の流動を精度良く制御できるという効果が得られる。
請求項10によれば、エネルギ発生源からのパルス通電の周波数以上の周波数で監視用光ビームを走査するように構成したので、走査半周期分での受光量変化を、溶融材料の流 動1周期分以内でとらえることができ、溶融加工を高精度に制御することができるという効果が得られる。
請求項11によれば、受光位置の変位距離と閾値との比較結果を所定設定時間と比較して、溶融用エネルギの投入量と投入時間とを制御するので、材料の均熱化を図ることができ、溶融加工における加工品質を高精度に安定性良く制御することができるという効果が得られる。
請求項12によれば、溶融加工の経過時間が所定設定時間以内である場合に、溶融用エネルギの出力条件を制御するので、材料の均熱化の精度を高めることができ、溶融加工における加工品質を高精度に安定性良く制御することができるという効果が得られる。
請求項13によれば、受光位置の変位方向と変位距離とで溶融用エネルギの出力条件を制御するので、容易な構成で材料の均熱化の精度を高めることができ、溶融加工における加工品質を高精度に安定性良く制御することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の監視方法に使用する溶融加工装置を示すブロック図である。
【図2】実施例1の監視用光ビームの照射点まわりを示す断面図である。
【図3】実施例1の受光量の変化を示す波形図である。
【図4】実施例2の監視方法に使用する溶融加工装置を示すブロック図である。
【図5】実施例2の監視用光ビームの照射点まわりを示す断面図である。
【図6】実施例2の受光量の変化を示す波形図である。
【図7】実施例3の監視方法に使用する溶融加工装置を示すブロック図である。
【図8】実施例3の受光量の変化を示す波形図である。
【図9】実施例4の監視方法に使用する溶融加工装置を示すブロック図である。
【図10】実施例4の受光位置変化を示す概略図である。
【図11】実施例4の受光位置の変位距離の変化を示す波形図である。
【図12】実施例5の監視方法による被接合材付近の構成図である。
【図13】実施例5の受光位置を示す図である。
【図14】実施例5の監視方法による異なる例を示す被接合材付近の構成図である。
【図15】実施例5の異なる例の受光位置を示す図である。
【図16】実施例6の溶融加工装置を示すブロック図である。
【図17】実施例6の受光量の変化を示す波形図である。
【図18】実施例7の溶融加工装置を示すブロック図である。
【図19】実施例7のろう材の流動先端部の形状の断面図である。
【図20】実施例7のろう材の流動先端部の形状の異なる例を示す断面図である。
【図21】実施例7のろう材の流動量と通電パルスとの関係図である。
【図22】実施例8の溶融加工装置を示すブロック図である。
【図23】実施例9の溶融加工装置を示すブロック図である。
【図24】実施例9の受光量の変化を示す波形図である。
【図25】実施例10の溶融加工装置を示すブロック図である。
【図26】実施例10の受光量の変化を示す波形図である。
【図27】実施例11の溶融加工装置を示すブロツク図である。
【図28】実施例11の受光位置の変位距離の変化を示す波形図である。
【図29】実施例12の溶融加工装置を示すブロック図である。
【図30】実施例12の照射点のオシレート動作の説明図である。
【図31】実施例12の照射点のオシレート動作の説明図である。
【図32】実施例12の照射点のオシレート動作の説明図である。
【図33】実施例12のオシレート変位と電気信号の出力波形との関係図である。
【図34】実施例13の溶融加工装置を示すブロック図である。
【図35】実施例13における制御方法を示すフローチャートである。
【図36】実施例14の制御方法に使用する溶融加工装置を示すブロック図である。
【図37】実施例14の制御方法を示すフローチャートである。
【図38】実施例15の制御方法に使用する溶融加工装置を示すブロック図である。
【図39】実施例15の制御方法を示すフローチャートである。
【図40】従来のアークスポット溶接を示す構成図である。
【図41】従来のろう付け工程を示す構成図である。
【図42】従来の半田付け検査方法を示す構成図である。
【図43】従来の半田付け検査方法における電気信号の波形図である。
【図44】従来の半田付け方法の半田付け状態と乱反射の度合いを示す模式図である。
【符号の説明】
1 溶接電極、2 溶接電源、3 光ビーム源、4 集光レンズ、
5a,5b 被接合材、6 ろう材、7 アレイ状の受光素子、8 光量検出部、9 監視用光ビーム、10 材料溶融前の光ビームの反射光、11 方向変化した反射光、12 照射点、13 溶融池、14 加熱器、15 エネルギ発生源、16 受光位置を検出するための受光素子、17a,17b,17c 加工開始前の受光素子上での受光位置、18a,18b,18c ろう流動後の受光素子上での受光位置、19a,19b 電極、20,20a,20b 光量を検出する受光素子、21 リード線、22 ミラー、23 振動装置、24 未ろう接部、30 レーザ発振器、31 半透鏡、32 光ファイバ、
33,34 集光レンズ、35 はんだ、36 受光部、37 半田付け検査部、101 光電変換回路、102 最大受光部判定回路、103 表示回路、
104 表示器、105 座標演算回路、106 距離算定回路、
107,107a,107b,107c,107d 比較判定回路、
108a 光量を検出する受光素子を含む受光器、108b 光量を検出する検出部がアレイ状に配置された受光素子を含む受光器、108c 受光位置を検出するための受光素子を含む受光器、109 制御回路、110 エネルギ制御部、111,196 エネルギ発生源、112 冷却手段、113 冷却器制御回路、114 冷却器、115 通電制御部、116 電源、117 カウンタ回路、118 メモリ回路、119 差分回路、120 演算出力回路、
121 方向算定回路、223 ビームオシレータ、340 光ビーム源。
Claims (13)
- 溶融用エネルギの投与にて材料を溶融する溶融加工において、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射し、材料の監視用光ビーム照射部分の溶融に伴う反射光の反射方向の変化を受光素子で検出して表示器に表示したことを特徴とする溶融加工の監視方法。
- 上記受光素子として反射光の検出部を列状または格子状に配置した受光素子を用い、材料の監視用光ビーム照射部分の溶融される以前において反射光による受光量の最大となる上記検出部での受光量の変化を表示器に表示したことを特徴とする請求項第1項記載の溶融加工の監視方法。
- 上記受光素子を、材料の監視用光ビーム照射部分の溶融される以前における監視用光ビームの反射光路から特定の距離だけ離すとともに監視用光ビーム照射部分の溶融後の反射光を受光する位置に配置したことを特徴とする請求項第1項記載の溶融加工の監視方法。
- 上記受光素子として反射光の受光位置の位置情報を出力する受光素子を用い、受光素子の受光位置の位置情報により反射光の反射方向の変化を表示器に表示したことを特徴とする請求項第1項記載の溶融加工の監視方法。
- 溶融用エネルギを発生するエネルギ発生源と、このエネルギ発生源から出力されるエネルギを制御するエネルギ制御部と、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射する光ビーム源と、この光ビームの材料表面からの反射光の受光量を検出する受光器と、この受光器による受光量と予め設定された閾値とを比較判定する比較判定回路と、この比較結果に応答して上記エネルギ発生源を制御するための信号を上記エネルギ制御部にフィードバックして上記エネルギ発生源によるエネルギ投与を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする溶融加工装置。
- 上記受光器は、監視用光ビームの照射部分が溶融される以前における監視用光ビームの反射光路からは特定の距離だけ離し、さらに溶融後の反射光が投光されるような位置に配置することを特徴とする請求項第5項記載の溶融加工装置。
- 溶融用エネルギを発生するエネルギ発生源と、このエネルギ発生源を制御するエネルギ制御部と、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射する光ビーム源と、この光ビームの材料表面からの反射光の受光位置を検出して受光位置の座標を出力する受光器と、この受光器からの座標に基づいて受光位置の変位距離を算定する距離算定回路と、この距離算定回路からの変位距離と予め設定された閾値とを比較判定する比較判定回路と、この比較結果に応答して上記エネルギ発生源を制御するための信号を上記エネルギ制御部にフィードバックして上記エネルギ発生源によるエネルギ投与を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする溶融加工装置。
- 上記比較判定回路の出力に従って材料の溶融部分の温度を低下させる冷却手段を備えたことを特徴とする請求項第5項ないし第7項のいずれかに記載の溶融加工装置。
- 上記エネルギ発生源がパルス通電によって溶融用エネルギを発生する手段を備えたことを特徴とする請求項第5項ないし第7項のいずれかに記載の溶融加工装置。
- 上記エネルギ発生源がパルス通電によって溶融用エネルギを発生する手段を備え、上記光ビーム源が上記エネルギ発生源のパルス通電の周波数以上の周波数で走査する手段を備えたことを特徴とする請求項第5項ないし第7項のいずれかに記載の溶融加工装置。
- 溶融用エネルギの投与にて材料を溶融する溶融加工において、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射し、その監視用光ビームの材料表面からの反射光を受光素子で受光して受光量を電気信号に変換し、この電気信号が予め設定された閾値より小さく、か つ、加工開始からの時間が適正な加熱速度によってろう付け部の全体にわたって均一に加熱されるのに必要な時間を経過していない場合であって、加工開始からの時間が通電量を低下させることによって均熱をはかり均一なろう付け形成のできる最低必要時間以上経過している場合には、材料への通電量を所定量低下して材料への通電を所定時間継続した後に材料への通電を停止し、加工開始からの時間が上記最低必要時間を経過していない場合には、材料への通電を所定時間停止した後に材料への通電を所定時間継続してから材料への通電を停止したことを特徴とする溶融加工の制御方法。
- 溶融用エネルギの投与にて材料を溶融する溶融加工において、目標とする材料溶融許容部分の外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に複数の監視用光ビームを照射し、複数の監視用光ビームの材料表面からのそれぞれの反射光を複数の受光素子で別々に受光してそれぞれの受光量をそれぞれ電気信号に変換し、複数の受光素子の受光開始後にそれぞれの電気信号が予め設定された閾値より小さくなるまでの時間を計測し、この時間のうち短い方の時間を記憶し、この閾値より小さくなるまでの時間が長い受光素子で光量を継続して検出するとともに当該受光素子が受光を開始してから現在までの時間を計測し、この現在までの時間と上記短い方の時間との差分を求め、当該受光素子の現在の受光量を変換した電気信号が上記閾値以上であり、かつ、上記差分が差分の基準最大値以上となった場合には、電気信号が上記閾値より小さくなるまで材料への通電量を所定量低下させ、また、当該受光素子の現在の受光量を変換した電気信号が上記閾値より小さくなり、かつ、上記差分が差分の基準最小値以上となった場合には、材料への通電量を所定量低下して材料への通電を所定時間継続した後に材料への通電を停止したことを特徴とする溶融加工の制御方法。
- 溶融用エネルギの投与にて材料を溶融する溶融加工において、材料の目標とする溶融許容部分における外周部表面または目標とする溶融材料流れ許容部分の外周部表面に監視用光ビームを照射し、その監視用光ビームの材料表面からの反射光を受光位置を検出する受光素子で受光し、この受光器からの座標に基づいて受光位置の変位距離を算定し、この算定した変位距離を予め設定された閾値と比較し、この変位距離が閾値より大きくなった場合に受光位置の変位方向を算出し、この変位方向を予め設定された所定変位方向と比較し、この比較結果に基づき溶融用エネルギの出力条件を決定し、この決定に応答して上記溶融用エネルギの材料への投与を制御する溶融加工の制御方法。
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