JP3589003B2 - 光スイッチング素子及び画像表示装置 - Google Patents

光スイッチング素子及び画像表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信、光演算、光記憶装置、光プリンター、画像表示装置等に使用される光スイッチング素子(ライトバルブ)に関するものであり、特に画像表示装置に適した光スイッチング素子および画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の光スイッチング素子は液晶を用いたものが知られている。図9にその概略構成を示すように、従来の光スイッチング素子900は、偏光板901および908、ガラス板902および903、透明電極904および905、液晶906および907より構成され、透明電極間に電圧を印加することにより液晶分子の方向を変えて偏光面を回転させ光スイッチングを行うものであった。そして、従来の画像表示装置は、このような光スイッチング素子(液晶セル)を二次元に並べた液晶パネルを用い、階調表現は印加電圧を調整することにより液晶分子の向く方向をコントロールするものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、液晶は高速応答特性が悪く、たかだか数ミリ秒程度の応答速度でしか動作しない。このため高速応答を要求される、光通信、光演算、ホログラムメモリー等の光記憶装置、光プリンター等へ液晶を用いた光スイッチング素子を適用することは難しかった。また、液晶を用いた光スイッチング素子では、偏光板により光の利用効率が低下してしまうという問題もあった。
【0004】
また、画像表示装置においては、近年、いっそう高品位な画像品質が要求されており、液晶を用いた光スイッチング素子よりさらに明るく階調表現が正確な表示を行える光スイッチング素子が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、光のロスが少なく、高速応答が可能な光スイッチング素子を提供することを目的としている。さらに、高いコントラストが得られ、画質の良い表示が得られる光スイッチング素子を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明においては、光を全反射して伝達可能な導光部に対し光スイッチング部の透光性の抽出面を接触させてエバネセント光を抽出し、光スイッチング部の1波長程度あるいはそれ以下の微小な動きによって、光を高速でオンオフ制御可能な光スイッチング素子を用い、さらに、光スイッチング部で抽出した光を反射し、導光部を通して全反射面に対しほぼ垂直に角度の揃った光を出射できるようにしている。そのため、本発明の光スイッチング素子は、導入光を全反射して伝達可能な全反射面を備えた導光部と、全反射面に対しエバネセント光が漏出する抽出距離以下に接近する第1の位置および抽出距離以上に離れる第2の位置に移動可能な透光性の抽出面を備えた光スイッチング部とを有し、この光スイッチング部は、抽出面で抽出した光を導光部の方向に反射するマイクロプリズムを備えており、このマイクロプリズムの頂角ψが導入光の全反射面に対する入射角θに対し次の式(1)を満たすようにしている。
【0007】
ψ = 180度 − θ ・・・ (1)
プリズム頂角ψが上記の式(1)を満たすプリズムを用いると、頂角に対峙する抽出面から角度θで入射した光は、抽出面に対し垂直に反射される。したがって、上記の式(1)を満たす頂角のプリズムを備えた光スイッチング部を用いることにより、抽出面が第1の位置になり、光スイッチング素子がオンのときに導光部から出射される光は全反射面に対し垂直な方向に揃う。導光部の全反射面と対峙する出射面も導入光を全反射するように全反射面と平行になっており、導光部から出射される光は出射面に対し垂直になる。従って、導光部の出射面の屈折することなく光密度が高く、また、導光部における損失の少ない出射光を得ることができる。
【0008】
このような本発明の光スイッチング素子は、それを1画素とし、複数の光スイッチング素子を2次元的に配置して導光部は白色または3原色の光が伝達可能なように接続することにより画像表示装置を構成することができ、高速で高解像度の画像表示が可能な画像表示装置を提供することができる。特に、本発明の光スイッチング素子を用いると、出射面に対し垂直に照射される光によって画像が形成されるので、投射像の歪みがなく、画質の良い表示を得ることができる。
【0009】
全反射面に対する導入光の入射角θは約60度から70度の範囲が望ましい。入射角が60度より小さく50度に近い角度で抽出面に入射すると、エバネセント光が漏光しないオフ状態とするために光スイッチング部を移動する距離が長くなるので、駆動力が大きくなる。例えば、静電気力を用いる場合は駆動電圧が高くなり、電力消費が増大する。また、移動距離が長くなるので、光スイッチング素子の駆動速度が低下してしまう。一方、入射角が70度より大きく80度に近い角度で抽出面に入射すると、エバネセント光が漏光するオン状態となる間隔が非常に短くなり、全反射面あるいは抽出面の面粗さ、あるいは、駆動系統の精度によってコントラストが大きく変化してしまう。従って、均質な階調性を保持することが難しい。
【0010】
入射角θは上記の範囲の中で、特に、60度とすることが望ましい。入射角θが60度で入射した導入光を垂直方向に反射するには、マイクロプリズムの頂角ψが120度となり、このようなマイクロプリズムの反射面は導入光と平行になる。従って、マイクロプリズムに抽出された光が、その光を垂直方向に反射するプリズムの面と異なる面で反射されたり、あるいは抽出された光が当たらない面が生ずるのを避けることができ、全反射面に対し明るく垂直な方向に揃った出射光を得ることができる。従って、導入光をマイクロプリズムで効率の良く反射することが可能であり、損失のない明るい光を得ることができ、高いコントラストが得られる光スイッチング素子を提供できる。
【0011】
さらに、導光部の方向に突出した頂部が抽出面の端より内側、すなわち、マイクロプリズムの中央よりに配置されると、マイクロプリズムに抽出面で抽出された光が当たらない領域が発生するので、光スイッチング素子から出射される光量が減少する。また、これらの光スイッチング素子で画像表示装置を構成したときに、画素が小さくなるので画素同士の間隔が開いてしまう。従って、光スイッチング部に導入光が入射される抽出面の端にマイクロプリズムの導光部の方向に突出した頂部を配置することが望ましく、これにより、明るくコントラストの高い光スイッチング素子を得ることができ、また画素間の境界のないシームレスな画像を表示できる画像表示装置を提供することができる。
【0012】
さらに、抽出面で抽出された導入光をロスなく反射するためは、マイクロプリズムの頂部は、抽出面の近傍に位置することが望ましい。すなわち、マイクロプリズムの頂点を抽出面に近い位置に設けることで、一定の角度範囲を持って入射される光を、漏れなく反射して出射することができ、出射効率が良く、光量の大きな光スイッチング素子および画像表示装置を提供できる。
【0013】
さらに、マイクロプリズムのピッチによって出射光の回折角度が変わるので、強度の高い1次回折光を投射レンズに取り込んで画像を形成できるようにするには、マイクロプリズムのピッチの範囲は3μm以上が望ましく、さらに、製造公差、経時変化などを考慮すると、マイクロプリズムのピッチは約4μm以上がいっそう望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。本発明の光スイッチング素子は、全反射により光を伝えているガラス板等の導光体に対向し、透明な、あるいは透光性の抽出面を備えた出射体を設置して光スイッチング部とし、抽出面を以下で詳述するような漏出したエバネセント光を抽出できる距離以下まで静電気力や電歪効果などを利用して近接あるいは接触させることによりエバネセント光を取り出し、スイッチングする素子である。
【0015】
図1に、本発明による光スイッチング素子の1例の概略構成を示してある。本例のスイッチング素子1は、ガラス製あるいは透明プラスチック製などの使用する光の透過率の高い光ガイドとなる導光部20を有している。この導光部20は、入射光(導入光)10が全反射により伝達されるように、入射光10の入射角に対して適当な角度となる全反射面22と、この全反射面22と平行な出射面21を備えている。
【0016】
本例のスイッチング素子1は、この導光部20の下方(全反射面22の側)に、導光部20から光を抽出して上方の導光部20に反射する光スイッチング部30の層、この光スイッチング部を動かす駆動部40の層、および駆動部40を制御する駆動用ICが構成されたシリコン基盤70の層が順番に積層されており、それぞれの機能部分が階層構造を成している。
【0017】
本例の光スイッチング部30には、導光部20の全反射面22に、ほぼ密着可能な平坦な抽出面32を備えたマイクロプリズム34が出射体として採用されている。本例のマイクロプリズム34は、抽出面32が底面となった三角形のプリズムになっており、全反射面22から抽出面32で抽出した光を抽出面32に対峙する頂点33の両側の反射面35で反射し、全反射面22および出射面(投写面)21にほぼ垂直な角度で出射できるようになっている。
【0018】
本例の光スイッチング部30に採用されているプリズムは高分子あるいは無機物の透明なマイクロプリズム34であって、断面が2等辺三角形のプリズムユニット34aが導光部20の側が底面となるように所定のピッチpで並べて配置されている。このため、マイクロプリズム34に導かれた入射光10は、それぞれのプリズムユニット34aで全反射面とは角度の異なる側面35に反射され、抽出された光が全て全反射面32に対してほぼ垂直に、導光部20の表面から垂直方向に放射分布が整えられた出射光12となり、図面上の上方に出射される。
【0019】
このような光スイッチング部30を駆動するために、光スイッチング部30の下層に設けられた駆動部40は、マイクロプリズム34を支持する断面がほぼT字型となったスペーサ42と、このスペーサ42を介して光スイッチング部30の抽出面32を導光部20の全反射面22に接する第1の位置に設定し、さらに、導光部20に向かって加圧可能な板状のバネ部材50と、静電力を用いて抽出面32を全反射面22から離れた第2の位置に移動する電極60および62を備えている。本例の光スイッチング素子1においては、バネ部材50とスペーサ42に取り付けられた電極62がボロンドープされたシリコン薄膜49により一体で構成されている。
【0020】
このような駆動部40を備えた本例の光スイッチング素子1においては、電極60および62に駆動電圧が供給されないときにバネ部材50によって抽出面32が全反射面22に接近(第1の位置)し、導光部20から光が抽出されて投射面21から光が出射されるオン状態となる。一方、電極60および62に駆動電圧が供給されると、抽出面32が第2の位置へ離れるので、光は導光部20から抽出および出射されないオフ状態となる。
【0021】
本例の画像表示装置2は、このような構成の光スイッチング素子1が、図1の横方向と同様に紙面に垂直な方向にも2次元的に配置されており、これら光スイッチング素子1がひとつの画素5として、画像を表示できるようになっている。また、この画像表示装置2は、駆動部40を制御する回路が構成されたシリコン基板70の表面に形成されおり、画像駆動用のICと一体となった画像表示装置2が実現されている。
【0022】
図2に、光スイッチング素子1を光スイッチング30を中心に拡大して示してある。本図に示した左側の光スイッチング素子1aは、上述したオン状態を示してあり、右側の光スイッチング素子1bは、上述したオフ状態を示してある。光スイッチング素子1aに示すように、本例の光スイッチング素子1は、導光部20の全反射面22に抽出面32が接して、全反射面22から漏出しているエバネセント光を捉える。そして、その捉えた光を光スイッチング部30のプリズム34で導光部20の方向に反射することによって画素などとして利用し、画像を形成することができる。
【0023】
図3に、さらに、本例のマイクロプリズム34によって入射光10が反射される様子を拡大して示してある。本例の光スイッチング部30は、三角柱状に図面と垂直な方向に延びたマイクロプリズムユニット34aがピッチpで3つ並べて配置されたマイクロプリズム34を備えている。導光部20より全反射面22に入射角θで入射された入射光10は、抽出面32で抽出されてマイクロプリズムユニット34aに入る。マイクロプリズムユニット34aでは、入射光10がプリズムユニット34aの側面35に当たって反射され、再び抽出面32および全反射面22を通って導光部20に入り、さらに、導光部20の出射面21を経て外界に放出される。マイクロプリズムユニット34aで反射された光(出射光)12は、入射光10と角度が異なるので全反射面22あるいは出射面21で反射されることなく外界に放出される。
【0024】
本例の光スイッチング素子1においては、光スイッチング部30で全反射面22および出射面21に対し垂直な方向に出射光12の向きを設定し、出射光12の向きを揃えてコントラストを高くできるようにしている。さらに、垂直な方向に出射することにより、これらの面21および22で出射光12が屈折しないようにして、光スイッチング素子1を用いて画像表示装置2を構成した際に歪みのない画像が得られるようにしている。全反射面22および出射面21に対し垂直な方向に出射光12の向きを設定するために、まず、マイクロプリズムユニット34aの2つの側面35がなす頂点33の頂角をψとし、側面35と抽出面(底面)32となす角をφとすると、マイクロプリズム34の断面は、頂角ψの二等辺三角形となる。マイクロプリズムの側面35に対する法線39によって入射角θが1/2に分割されるので、入射角θと底角φは次のような関係になる。
【0025】
φ=θ/2 ・・・(2)
従って、頂角ψは、次のように表される。
【0026】
Figure 0003589003
このように、頂角ψが入射角θに対し、上記の式(1)を満たすマイクロプリズムユニット34aを用いると、プリズムの反射面35で反射された出射光12の出射方向を抽出面32、全反射面22および出射面21に対して垂直にすることができる。
【0027】
図4にエバネセント光の透過率の例をいくつか示してある。全反射されている面に透明体を近接すると、エバネセント光が透明体側に漏れ出て光が透過することが知られている。さらに、エバネセント光の透過率は、媒体の屈折率や入射角度などによって相違する。図4では、波長λが500nmの光に対して入射角を50度としたときに、エバネセント光の透過率(%)を全反射面22と抽出面(透明体)32との間隔(μm)に対して測定した透過曲線14を示してある。同様に、入射角60度のときの特性曲線15、入射角70度の特性曲線16、入射角80度の特性曲線17も示してある。
【0028】
本図から判るように、入射角θが50度のときは、全反射面22と抽出面32との距離を0.3μmあるいはそれ以上離さないと透過率が0%近傍にならない。従って、プリズム34の移動距離を大きくする必要があるので、電極60および62に印加する駆動電圧が高くなる。また、プリズム34の移動距離が大きくなるので光スイッチング素子1の作動速度も低下する。このため、入射角θは50度以上、さらに60度以上が望ましい。
【0029】
一方、入射角θが80度のときは、全反射面22と抽出面32との距離が0.05μm程度離れると透過率が10%程度まで低下してしまう。従って、全反射面22および抽出面32の面精度を非常に高くしないとオンオフのコントラストを得ることができない。また、駆動部40においても、オン時に全反射面22と抽出面32との間にわずかな隙間が開くと出射光の強度が大幅に低下するので、信頼性の高い機構を採用する必要がある。従って、安定した階調制御を行うことを考えると、入射角θは80度以下、さらに70度以下であることが望ましい。従って、駆動電圧、面精度、駆動部の構成などを考慮すると、適当なコストで安定して高いオンオフのコントラストが得られるようにするには、入射角θを約60〜70度程度の範囲に収めるようにすることが望ましい。
【0030】
さらに、入射角θは60度とすることが最も望ましい。入射角θが60度のときは、プリズムユニット34aに入射する光とプリズムの面35とが平行になる。従って、入射した光は、その光を垂直方向に反射する方向のプリズムの面35に均等に当たり、最も効率良く垂直方向に反射して明るい出射光12を得ることができる。これに対し、入射角θが60度を越えると、反射面35の一部が対峙する反射面の影となって光が出射されない領域が発生する。また、入射角θが60度を下回ると、入射した光の一部が垂直方向に反射する面35と反対側の面に当たり、垂直方向とは異なった方向に反射されてしまう。
【0031】
また、本例の光スイッチング素子においては、マイクロプリズムユニット34aは、底面(抽出面)32と対峙する頂点33とは異なる、導光部20の方向の突出した頂点36が抽出面32の端32aに位置するように配置することが最も望ましい。図5に示すように、頂点36が抽出面32の端32aから離れた内側に配置されると、プリズムユニット34aの反射面35の一部35cが抽出面32から入射した光では照らされない。従って、抽出面32の端32aの近傍の領域23から光が出射されず導光部20の出射面21から出射される光束の面積が小さくなってしまう。また、光スイッチング素子1を用いて画像表示装置2を構成したときに画素同士の境界が暗くなり、シームレスな画像が得られなくなる。これに対し、頂点36が抽出面32の端32aに位置するようにプリズムユニット34aを配置すると、抽出面32の端32aからも光が出射されるので明るい光スイッチング素子1を提供でき、これを用いてシームレスな画像を形成できる画像表示装置2を提供できる。
【0032】
さらに、図3に示すように、本例の光スイッチング素子1においては、頂点36が抽出面32とが一致していることが最も望ましい。図6に示すように、頂点36が抽出面32から後退した位置にあると、抽出面32の端部32aの近傍で導光部20から抽出された入射光10はプリズムの反射面35では反射されず、透過光あるいは迷光13として光スイッチング素子1から外部、例えば、隣接する光スイッチング素子1などに散乱されてしまう。従って、入射光10の利用効率が低下し、光量が減少する原因となる。さらに、画像表示装置2においては、透過した迷光13が隣接する光スイッチング素子1に影響を与え、クロストークなどの原因となる可能性がある。
【0033】
これに対し、図3に示した本例の光スイッチング素子1においては、頂点36が抽出面32にほぼ一致しているので、抽出面32の端部32aにおける光の漏れがなく、入射光10を出射光12として効率良く利用することができる。また、隣接する光スイッチング素子1に対する影響も防止することができる。
【0034】
さらに、図3に示した本例の光スイッチング素子1においては、マイクロプリズムユニット34aのピッチpを3μm以上にすることが望ましく、4μm以上にすることがさらに望ましい。図7に、マイクロプリズムユニット34aのピッチpと、これらのマイクロプリズムユニット34aによって反射される出射光12の回折角度を示してある。波長λが400nm〜700nmの可視光の範囲内において、プリズムユニット34aのピッチpを約3μm以上にすると回折角を10度以下にすることができ、後述する投写装置において画像表示装置2から出射される出射光12をほぼ全て投射レンズに取り込むことができる。また、マイクロプリズムユニット34aの製造公差あるいは経時変化などを考慮すると、マイクロプリズムユニット34aのピッチpは、4μm以上とすることがさらに好ましい。
【0035】
光スイッチング素子1を用いて画像表示装置2を構成する場合は、光スイッチング素子1の抽出面32の大きさは画素5に適当なサイズに設定され、15μm程度以下になる。従って、マイクロプリズムユニット34aのピッチpは最大で15μm程度に限定される。また、マイクロプリズムユニット34aのピッチpが大きくなれば、反射面35が広くなりプリズムユニット34aが高くなるので、マイクロプリズム34が大きくなってしまう。従って、光スイッチング部30を薄くコンパクトに形成するためにはマイクロプリズムユニット34aのピッチpは狭いほうが好ましい。これらの結果より、15μm中の山を2つ持つピッチpが7.5μmのもの、および、山を3つ持つピッチpが5μmのどちらも望ましい。図3に示したようなマイクロプリズム34を光スイッチング部30として採用することにより、光の利用効率が高く、オンオフのコントラストの大きな高速で動く光スイッチング素子を提供することができる。
【0036】
図8に、本発明に係る画像表示装置2を用いた投射装置6を示してある。本例の投写装置6は、導光部2の全反射面22に、駆動回路と共に光スイッチング部30および駆動部40が搭載されたICチップ3が取り付けられている。画像表示装置2の導光部20には、一方に入射用の面81が用意されており、この面に向かって光源から赤緑青(RGB)、またはシアン、マゼンダ、イエローなどの光の3原色が時分割で入射される。本例の光源80は、白色のメタルハライドランプ80aと、モータで回転される3色分割フィルタ80bとを備えており、3色分割フィルタ80bで色分割された光線がコリメータレンズ80cを通して並行光束化されて入射面81から導光部20に入射される。そして、全反射面22に到達した入射光10は、ICチップ3を用いて構成された個々の光スイッチング素子によって反射されて導光部20を透過して出射光12となり、出射面21に対し垂直に出射される。出射光12は、さらに、投射レンズ85を通ってスクリーンなどに投写されて所望の画像が形成される。一方、光スイッチング素子によって出射光に変換されなかった入射光10は、全反射によって導光部20の入射面81と反対側の反射面82に到達し、この面で反射されて再び導光部20内を伝達し、光スイッチング素子に到達する。
【0037】
このように、本例の画像表示装置2は、時分割され入射光に同期してICチップ3により構成された光スイッチング素子を操作することによりカラー画像を投射することができる。もちろん、白色光を入射光10として採用し、波長選択性のある光抽出部を用いた光スイッチング素子によってカラー画像を投射も可能である。
【0038】
また、本例の投写装置6においては、画像を形成する光が出射面21に対し垂直に出射されるので、像の歪みの少ない画像を得ることができる。さらに、個々の画素を構成する光スイッチング素子は光の利用効率が高く、オンオフのコントラストが高いので、正確な階調表現が可能であり、高画質の画像を得ることができる。また、出射光12の回折角も10度程度の範囲内に抑えられているので、出射光12のほぼ全てを投射レンズ85で捉えて画像を形成するために利用することができる。従って、この点でも本発明に係る光スイッチング素子を用いることにより、明るい画像が得られる画像表示装置を提供することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、高速動作が可能なエバネセント光を利用した光スイッチング素子において、漏出したエバネセント光を反射する光スイッチング部にプリズムを採用し、そのプリズムの各条件を最適化して光の利用効率が高く、安定した階調制御が行える光スイッチング素子を提供できるようにしている。さらに、駆動電圧が低く、低消費電力で高速動作が可能な光スイッチング素子も提供できるようにしている。このため、本発明の光スイッチング素子を用いることにより、高いコントラストが得られ、画質の良い表示が得られる画像表示装置を提供することが可能となる。
【0040】
本発明の画像表示装置は、上述したような投写装置に限らず、フラットタイプのディスプレイあるいはヘッドマウントディスプレイなどの様々な表示機器に応用することができる。また、本発明の光スイッチング素子も画像表示装置に限らず、光プリンターのライン状ライトバルブ、三次元ホログラムメモリ用の光空間変調器などその応用範囲は非常に広く、従来の液晶を用いた光スイッチング素子が適用されている分野はもちろん、液晶を用いた光スイッチング素子では動作速度や光強度が不足する分野および応用機器に対して、本発明の光スイッチング素子は特に適している。さらに、本発明の光スイッチング素子は微細加工が可能であるので、従来の液晶の光スイッチング素子よりも小型化、薄型化を図ることができ、高集積化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る光スイッチング素子の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示した光スイッチング素子の一部を拡大して示す図である。
【図3】図1に示した光スイッチング素子のマイクロプリズムの部分をさらに拡大して示す図である。
【図4】エバネセント光の透過率を距離に対して示すグラフである。
【図5】図3に示すマイクロプリズムユニットの頂点の抽出面の端に対する位置の効果を説明する図である。
【図6】図3に示すマイクロプリズムユニットの頂点の抽出面からの距離の効果を説明する図である。
【図7】プリズムピッチpと回折角度の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の画像表示装置を用いた投写装置の例を模式的に示す図である。
【図9】従来の液晶を用いた光スイッチング素子を示す図である。
【符号の説明】
1・・光スイッチング素子
2・・画像表示装置
5・・画素
6・・投写装置
10・・入射光
12・・出射光
13・・迷光
20・・導光部
21・・出射面
22・・全反射面
30・・光スイッチング部
32・・抽出面
33・・マイクロプリズムの抽出面に対峙する頂点
34・・マイクロプリズム
34・・マイクロプリズムユニット
35・・マイクロプリズムの側面(反射面)
36・・マイクロプリズムの導光部側の頂点
40・・駆動部
42・・スペーサ
44・・支柱
50・・バネ部材
60、62・・電極部
70・・IC部
80・・光源
80a・・メタルハイランドランプ
80b・・3色分割フィルター
81・・入射用の面
82・・反射面
85・・投射レンズ
908・・偏光板
903・・ガラス板
904、905・・透明電極
906、907・・液晶

Claims (8)

  1. 導入光を全反射して伝達可能な全反射面を備えた導光部と、前記全反射面に対しエバネセント光が漏出する抽出距離以下に接近する第1の位置、および前記抽出距離以上に離れる第2の位置に移動可能な透光性の抽出面を備えた光スイッチング部とを有し、
    この光スイッチング部は、前記抽出面で抽出した光を前記導光部の方向に反射するマイクロプリズムを備えており、このマイクロプリズムの頂角ψが前記導入光の前記全反射面に対する入射角θに対し次の式を満たすことを特徴とする光スイッチング素子。
    ψ = 180度 − θ ・・・ (A)
  2. 請求項1において、前記入射角θが約60度から70度であることを特徴とする光スイッチング素子。
  3. 請求項1において、前記入射角θが60度であることを特徴とする光スイッチング素子。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記抽出面の端に前記マイクロプリズムの前記導光部の方向に突出した頂部が位置していることを特徴とする光スイッチング素子。
  5. 請求項4において、前記頂部が前記抽出面の近傍に位置していることを特徴とする光スイッチング素子。
  6. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記光スイッチング部により1画素が構成され、前記マイクロプリズムのピッチが約3μm以上であることを特徴とする光スイッチング素子。
  7. 請求項6において、前記マイクロプリズムのピッチが約4μm以上であることを特徴とする光スイッチング素子。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の光スイッチング素子を複数有し、これらの光スイッチング素子が2次元的に配置され、前記導光部へは白色または3原色の前記導入光が前記入射角θで入射されていることを特徴とする画像表示装置。
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