JP3588400B2 - 導電性樹脂組成物および導電体の形成方法 - Google Patents

導電性樹脂組成物および導電体の形成方法 Download PDF

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  • Conductive Materials (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクリーン印刷に適し、作業環境に悪影響を及ぼさない導電性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、熱硬化によって導電体を形成しうる上記の組成物に関する。また本発明は、このような組成物を用いる導電体の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電子回路や電極の形成に用いられている導電ペースト、および電気部品接着に用いられている導電接着剤は、いずれも油溶性樹脂を有機溶媒に溶解させて得たビヒクルに導電性粒子を分散させたもので、有機溶媒としては、上記の油溶性樹脂の良溶媒であるジエチレングリコールモノブチルエーテル、テルピオネールなどが用いられている。しかし、これらの溶媒は、毒性および臭気があるので、このような導電ペーストや導電接着剤を用いる際の作業環境を阻害し、換気などの対策が必要になる。
【0003】
そこで、水溶性樹脂の水溶液をビヒクルとして用いる水性ペーストにより、電子回路のパターンのような導電体を形成させることが検討されたが、スクリーン印刷によってパターンを形成する際に、乾燥が速すぎて作業の途中でペーストが乾燥してしまい、スクリーン用マスクが目詰まりを起こす。また、乾燥を遅らせるために、グリセリンまたはトリエチレングリコールのような吸湿性の高沸点溶媒を併用すると、該溶媒が塗膜の乾燥工程で完全には揮散せず、塗膜が高い湿気にさらされると吸湿してべとつく。したがって、前述の用途に対して実用性のある水性の導電性樹脂ペーストは得られない。
【0004】
また、ポリビニルアルコールのような水溶性樹脂を、水およびプロピレングリコールのような溶媒と組み合わせて用いると、樹脂が析出して、やはり実用性のある水性の導電ペーストは得られない。
【0005】
本発明者らによる特開平6−32248号公報には、水溶性樹脂、導電粒子および該樹脂を溶解させる有機溶媒を含む導電性組成物;ならびにこれを用いて仮電極を形成させ、使用後の仮電極を水で洗浄して除去する、ろ波器の製造方法が開示されているが、恒久的に使用する導電体の形成についてではない。
【0006】
一方、特開平6−346006号公報には、平均粒子径が200nm以下のポリウレタン樹脂を分散させた水性エマルジョン塗料に、親油性の表面処理をした電解銅粉を分散させた水性導電塗料が開示されている。しかし、このような導電塗料は、溶媒の大部分が水であるために、スクリーン用マスクが目詰まりを起こし、微細なパターンの電子回路や電極の形成には適さない。また、樹脂が非水溶性なので、使用後の装置、治具および/または容器に付着したエマルジョン塗料が分離または乾燥した後の樹脂の洗浄、除去に有機溶媒を用いる必要があり、作業環境の改善効果が十分ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、スクリーン印刷などの方法で導電体を形成するのに適し、使用の際の作業環境に悪影響を及ぼすことなく、使用後に装置、治具および容器を水で洗浄できる、熱硬化性の導電性樹脂組成物を提供することである。本発明の他の目的は、上記の導電性樹脂組成物を用いて、熱硬化により、導電体を形成する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決するために検討を重ねた結果、有機溶媒として水と相溶性の二価アルコール溶媒を用い、樹脂として、水にも該二価アルコール溶媒にも溶解する熱硬化性樹脂を選択してこれを該有機溶媒に溶解させ、これに導電粒子を混合、分散させて得られる導電性樹脂組成物を導電ペーストとして用いることにより、これらの課題を解決しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)水溶性の熱硬化性樹脂;
(B)平均粒子寸法が0.05〜50μm の導電性粒子;および
(C)上記の熱硬化性樹脂を溶解する、水と相溶性の二価アルコール溶媒
を含むことを特徴とする導電性樹脂組成物に関し、また、このような導電性樹脂組成物によって塗膜を形成させ、加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる、導電体の形成方法に関する。
【0010】
本発明で用いられる(A)成分は、水溶性であって、後述の(C)成分である二価アルコール溶媒にも溶解し、かつ溶媒を除去した後に塗膜を形成しうる熱硬化性樹脂である。このような樹脂としては、いずれも水溶性のレゾール型、ノボラック型のような水溶性フェノール樹脂;変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような水溶性エポキシ樹脂;水溶性メラミン樹脂のような水溶性アミノ樹脂;水溶性マレイン酸樹脂などが例示され、単独で用いても、2種以上を併用しても差し支えない。(C)成分への溶解性と硬化性が優れ、硬化により比抵抗の低い被膜が得られることから、水溶性フェノール樹脂もしくは水溶性メラミン樹脂を単独で用い、または両者を併用することが好ましく、これらにさらに水溶性エポキシ樹脂を組み合わせることは、耐熱性が必要な用途に特に好ましい。なお、上記の水溶性フェノール樹脂単独、または水溶性フェノール樹脂と水溶性エポキシ樹脂の併用は、少量の(C)成分を用いて作業上の良好な導電性ペーストが得られることからも好ましい。
【0011】
(A)成分の構成比は、組成物中、1〜30重量%が好ましく、2〜20重量%がさらに好ましい。1重量%未満では乾燥被膜の強度が弱く、30重量%を越えると比抵抗が高くなるからである。
【0012】
本発明で用いられる(B)成分は、本発明の樹脂組成物に導電性を与える導電粒子である。導電粒子の形状は、球状、りん片状、針状など、どのような形状でも差し支えない。平均粒子寸法は0.05〜50μm であり、好ましくは0.1〜25μm である。なお、ここに平均粒子寸法とは、球状の場合は粒子径、りん片状の場合は粒子薄片の長径、針状の場合は長さの、それぞれ平均をいう。平均粒子寸法が0.05μm 未満では接触抵抗が大きく、50μm を越えると、導電ペーストとして用いるときの印刷適性が劣り、また印刷によって得られる塗膜の均一性が劣る。
【0013】
このような導電粒子としては、銀、銅、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、パラジウムなどの金属粒子;これらを含む合金粒子;およびカーボン粒子が例示され、単独で用いても、2種以上を併用しても差し支えない。
【0014】
(B)成分の構成比は、組成物中、30〜90重量%が好ましく、45〜80重量%がさらに好ましい。30重量%未満では比抵抗が高く、90重量%を越えると見掛け粘度が高くて、印刷適性が劣るからである。
【0015】
本発明で用いられる(C)成分は、(A)成分を溶解させるとともに(B)成分を分散させて、印刷に適する流動性を本発明の樹脂組成物に与えるための有機溶媒である。(C)成分は、本発明の導電性樹脂組成物を使用する際の作業環境に悪影響を及ぼすことがないよう、毒性が低くて無臭またはそれに近い微臭であり、しかも(A)成分の良溶媒である必要性があり、さらに、(A)成分が水溶液として配合されるときの水との相溶性、ならびに使用後の装置、治具および容器の水による洗浄が容易であることから、水と相溶する溶媒であることが必要である。以上のことを考慮して、水と相溶性の二価アルコール溶媒が選択される。該(C)成分は、組成物を導電ペーストとして磁器などの基材に印刷する際の優れた作業性を組成物に与えることが望ましい。特にスクリーン印刷においては、連続印刷に適した適度の乾燥性を有し、スクリーン用マスクの目詰まりがなく、一方では塗膜中に残存する(C)成分による吸湿や、それによるべとつきがないことから、沸点が150℃以上であることが好ましく、180〜250℃であることがさらに好ましい。
【0016】
このような(C)成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのような、一般式:HOR OH(式中、R は直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す)で示される二価アルコール;ならびにジエチレングリコール、ジプロピレングリコールのような、一般式:HOR OR OH(式中、R およびR はそれぞれ直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す)で示される二価アルコールが例示され、1種でも、2種以上を併用しても差し支えない。また、場合によっては、1,4−ブタンジオールや2,3−ブタンジオールを(C)成分の一部として用いてもよい。これらのうち、(A)成分の溶解性、適度の沸点、低毒性、およびスクリーン印刷の作業性から、一般式:HOR OH(式中、R が炭素数3〜6の、直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す)で示される二価アルコールが好ましく、プロピレングリコールが特に好ましい。
【0017】
(C)成分の構成比は、組成物中、1〜30重量%が好ましく、2〜10重量%がさらに好ましい。1重量%未満では見掛け粘度が高く、30重量%を越えると見掛け粘度が低くなりすぎて、印刷適性が劣るからである。特に(A)成分として水溶性フェノール樹脂を単独で、または水溶性エポキシ樹脂とともに用いる場合、3〜5重量%の(C)成分でも、作業性の良好な導電ペーストが得られる。
【0018】
(C)成分のほかに、共溶媒として、本発明の特徴のひとつである作業環境への影響を損ねない範囲で、(C)成分と相溶性のある他の有機溶媒を少量併用しても差し支えない。
【0019】
また、本発明の特徴である乾燥性の調整を損ねない範囲で、水を併用しても差し支えない。この水は、(A)成分の水溶液の形で配合してもよく、別途添加してもよい。水の構成比は、組成物中の10重量%以下が好ましい。10重量%を越えると、導電ペーストの乾燥が速すぎて、印刷適性が劣るからである。
【0020】
本発明の組成物に、さらに(D)成分として、非導電粒子を含有してもよい。本発明に用いることのできる非導電粒子としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウムおよびその他の無機顔料;ブタジエン系ゴム、シリコーンゴムのようなゴム状弾性体粉末;およびポリメチルシルセスキオキサンのような樹脂粉末が例示される。非導電粒子の平均粒子寸法は、50μm 以下が好ましい。50μm を越えると印刷適性が劣り、スクリーン用マスクの目詰まりを起こしやすいからである。
【0021】
(D)成分の配合量は、組成物中の全固形分に対して30重量%以下が好ましい。(D)成分が多すぎると、硬化によって得られた被膜の比抵抗が高くなりすぎて、導電材料として必要な導電性が得られない。
【0022】
このほか、本発明の導電性樹脂組成物に、必要に応じて、分散助剤、表面処理剤、消泡剤などの添加剤を配合してもよい。
【0023】
本発明の導電性樹脂組成物は、たとえば、撹拌混合槽などを用いて(A)成分および必要に応じて任意に添加する他の成分を(C)成分に溶解し、得られた溶液に(B)成分および必要に応じて(D)成分を混合して、三本ロールまたはニーダーで分散させて、調製することができる。また、分散の際に、(C)成分の一部を添加しながら分散させたり、分散後にさらに(C)成分の一部および/または任意に添加する他の成分を追加して、均一に混合してもよい。このようにして、スクリーン印刷、浸漬など、所望の塗膜形成方法に適する見掛け粘度、たとえばスクリーン印刷の場合、常温で20〜500Pa・s、好ましくは20〜50Pa・sの導電性樹脂組成物を調製することができる。
【0024】
本発明の導電性樹脂組成物を導電ペーストとして用いて、アルミナ、磁器、ガラス、ガラス強化エポキシ樹脂、ポリイミドフィルムのような基材の表面の所定部位に印刷、塗布などの方法により塗膜を形成する。塗膜形成方法は、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリビニルアルコールのような通常のマスクを用いたスクリーン印刷のほか、転写、スタンプ、ディスペンス、浸漬など、任意の方法を用いることができ、スクリーン印刷が好ましい。ついで、(C)成分を完全に、または部分的に揮散させて、たとえばパターン状に塗膜を形成する。この場合、(C)成分の揮散を容易にするために、たとえば熱風乾燥器、赤外線乾燥器などにより、用いられる(C)成分の種類に応じて50〜200℃に加熱してもよい。
【0025】
このようにして塗膜を形成させた基材を、樹脂の種類に応じて、たとえば80〜180℃に加熱して(A)成分を熱硬化させ、基材表面に、電子回路や電極のような硬化塗膜を形成させることができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の導電性樹脂組成物は、基材表面にスクリーン印刷などの方法で導電体を形成させるのに適している。そのうえ、従来の同じ目的に使用される組成物に比べて、悪臭を発せず、吸気しても毒性の低い溶媒を用いているので、作業環境に悪影響を及ぼさず、引火点が比較的高いうえ、水による消火が可能なので、安全性が高い。さらに、作業後に装置、治具、容器などを水で洗浄できるという利点がある。
【0027】
したがって、本発明の導電性樹脂組成物は、電子回路や電極のような導電体、特に基材表面のパターン状の導電体を、有利に形成させることができる。そのほか、本発明の導電性樹脂組成物は、メッキ下地用導電ペースト、抵抗ペースト、導電性接着剤などとして用いることができる。
【0028】
本発明によって得られる導電体は、チップコンデンサ、チップ抵抗の端面下地電極、可変抵抗器、フィルム基板回路などとして有用である。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によって説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。実施例および比較例において、部はすべて重量部を表す。
【0030】
実施例1〜6
表1に示す組成により、各種の樹脂をプロピレングリコールに溶解し、導電性粒子を加えて混合し、ついで三本ロールに通して、25℃における見掛け粘度が約30Pa・sの、ペースト状の導電性樹脂組成物を調製した。これらの組成物をそれぞれ用いて、アルミナ基材の表面に、幅1mm、長さ71mmのパターンをスクリーン印刷し、150℃で30分加熱して残存した溶媒を揮散させるとともに樹脂を硬化させ、硬化被膜を得た。
【0031】
導電性樹脂組成物および硬化被膜の評価を、下記のように行った。
(1)連続印刷性:スクリーン印刷を連続して50回行い、その間に、組成物の見掛け粘度の上昇、スクリーン用マスクの乾き、目詰まり、印刷のかすれがないかどうかを観察した。
(2)臭気:加熱して樹脂を硬化させる段階の臭気を、五感によって評価した。
(3)治具の洗浄性:スクリーン印刷に使用したマスクやスキージーに付着した導電ペーストを、水により洗浄できるか否かを観察した。
(4)比抵抗:上記のようにして得られた硬化塗膜について、塗膜厚さを表面粗さ・形状測定器によって測定し、試料両端の間の抵抗値をLCRメーターで測定して、比抵抗を算出した。
【0032】
これらの結果を、表1に示す。
【0033】
比較例1、2
比較のために、表1に示す組成により、実施例1〜6と同様の方法で、非水溶性のフェノール樹脂およびエポキシ樹脂をジエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、導電性粒子を分散させて、比較例1の導電性樹脂組成物を調製した。また、ポリビニルアルコールを水に溶解して20%水溶液とし、実施例1〜6と同様の方法で導電性粒子を分散させた後、揮発した水分を補充して、表1に示す組成の導電性樹脂組成物を調製した。これらについて、実施例1〜6と同様の方法で評価を行った。それらの結果を、併せて表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003588400
【0035】
表1より明らかなように、本発明による実施例1〜6の組成物は、いずれも優れた連続印刷性を示し、作業中の臭気がなく、作業後に治具を水で洗浄できるなど、優れた作業性を示し、所定の比抵抗を有する硬化被膜が得られた。それに対して、比較例1の組成物は、悪臭を生ずるほか、治具を水で洗浄できなかった。また、比較例2の組成物は、良好な連続印刷性が得られなかった。

Claims (3)

  1. (A)水溶性の熱硬化性樹脂;
    (B)平均粒子寸法が0.05〜50μm の導電性粒子;および
    (C)上記の熱硬化性樹脂を溶解する、水と相溶性の二価アルコール溶媒
    を含むことを特徴とする導電性樹脂組成物。
  2. (C)が一般式:HOR OH(式中、R は炭素数3〜6の、直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す)で示される二価アルコールである、請求項1記載の導電性樹脂組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載の導電性樹脂組成物によって塗膜を形成させ、加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる、導電体の形成方法。
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