JP3587464B2 - 磁気ディスクの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハードディスク装置やフロッピーディスク装置に用いられる磁気ディスクの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、代表的な磁気ディスク装置であるハードディスクドライブは、すでに面記録密度が1Gbit/sqinを越える装置が商品化され、数年後には10Gbit/sqinの実用化が議論されるほどの急激な技術進歩が認められる。
【0003】
このような高記録密度を可能とした技術的背景には、線記録密度の向上もさることながら、わずか数μmのトラック幅の信号をSN良く再生できる磁気抵抗素子型ヘッドに依るところが大である。また、高記録密度に伴い磁気記録媒体に対する浮動磁気スライダの浮上量の低減化も要求されてきており、浮上中も何らかの要因でディスク/スライダの接触が発生する可能性が増大している。このような状況下において、記録媒体にはより平滑性が要求されてきている。
【0004】
さて、ヘッドが狭トラックを正確に走査するためにはヘッドのトラッキングサーボ技術が重要な役割を果たしている。このようなトラッキングサーボ技術を用いた現在のハードディスクドライブでは、ディスクの一周中、一定の角度間隔でトラッキング用のサーボ信号やアドレス情報信号、再生クロック信号等が記録されている。そして、ドライブ装置においては、ヘッドから一定時間間隔で再生されるこれらの信号によりヘッドの位置を検出するとともに修正することにより、ヘッドが正確にトラック上を走査するように制御している。
【0005】
上述したサーボ信号やアドレス情報信号、再生クロック信号等は、ヘッドが正確にトラック上を走査するための基準信号となるものであり、このためその書き込み(以下、フォーマティングと記す)には高い位置決め精度が必要である。現在のハードディスクドライブでは、光干渉を利用した高精度位置検出装置を組み込んだ専用のサーボ装置(以下サーボライタと記す)を用い、記録ヘッドを位置決めしてフォーマティングを行っている。
【0006】
しかしながら、上記サーボライタによるフォーマティングには以下の課題が存在する。すなわち、ヘッドを高精度に位置決めしながら多数のトラックにわたって信号を書き込むためには、多くの時間がかかり、生産性を上げるには多くのサーボライタを同時に稼働させなければならない。また、多くのサーボライタの導入、維持管理には多額のコストがかかってしまい、これらの課題はトラック密度が向上し、トラック数が多くなるほど深刻である。
【0007】
そこで、フォーマティングをサーボライタではなく、予め全てのサーボ情報が書き込まれたマスタと呼ばれるディスクとフォーマティングすべき磁気ディスクを重ね合わせ、外部から転写用のエネルギーを与えることによりマスタの情報を磁気ディスクに一括転写する方式が提案されている。
【0008】
その一例として、特開平10−40544号公報に示す例があるが、この例では、磁気記録媒体とマスタ情報担体の凸部とを密着させ、外部磁界を加えることによって磁気転写を行うものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の磁気転写装置においては、磁気記録媒体とマスタ情報担体の凸部との間に異常突起が存在する場合、両者が接触することによって磁気記録媒体の表面に陥没部が発生する。また、この陥没部において、50nm程度窪んだ陥没部のまわりには20nm程度の微小突起が存在してしまう。図16にこのような突起を光学的な測定方法で測定した結果を示しており、上記接触によって磁気ディスク表面に20nm程度の微小突起が多く存在することがわかる。
【0010】
ところで、ハードディスクドライブ装置において、スライダの磁気ディスク表面からの浮上量としては20〜30nm程度であり、磁気ディスク上に20nm程度の突起が存在すれば、データ記録再生時に、磁気ヘッドと磁気ディスクとが接触することになり、このような場合には接触した瞬間に磁気ヘッドと磁気ディスクのクリアランスが大となって、信号の記録再生性能が低下し、また磁気ヘッドが磁気ディスクと物理的に接触することにより磁気ヘッドの寿命が低下してしまう原因となる。このように従来の磁気転写方法によれば、磁気ディスク上に多数の突起が存在することとなり、記録再生性能および磁気ヘッド寿命の低下という課題を有していた。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、信号の記録再生の性能が低下させたり、磁気ヘッドの寿命を低下させることのない信頼性の高い磁気ディスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明の磁気ディスク製造方法は、磁性部を所定の情報信号に対応する配列パターン形状になるように形成してなる磁気転写用マスタを磁気ディスクの表面に重ね合わせるとともに、前記磁気転写用マスタの磁性部を磁化することにより、前記磁気転写用マスタの情報信号の配列パターンを情報信号の磁化パターンとして前記磁気ディスクに転写記録し、その後前記磁気ディスクにバーニッシュ処理を施すことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の磁気ディスクの製造方法おいては、まず、磁性部を所定の情報信号に対応する配列パターン形状になるように形成した磁気転写用マスタを、磁気ディスクの表面に重ね合わせるとともに、磁気転写用マスタの磁性部を磁化する。それにより、磁気転写用マスタの情報信号の配列パターンを情報信号の磁化パターンとして磁気ディスクに転写記録する。その後磁気ディスクにバーニッシュ処理を行う。磁気転写を行った後の磁気ディスクの表面にバーニッシュ処理を施すことにより、磁気転写によって磁気ディスク表面の平滑性が損なわれても表面の凸部が削られることになり、磁気ヘッドと磁気ディスク上の微小突起部との物理的接触を未然に防ぐことができる。
【0014】
また好ましくは、磁気ディスクにバーニッシュ処理を施した後、磁性部を所定の情報信号に対応する配列パターン形状になるように形成してなる磁気転写用マスタを磁気ディスクの表面に重ね合わせるとともに、磁気転写用マスタの磁性部を磁化することにより、磁気転写用マスタの情報信号の配列パターンを情報信号の磁化パターンとして磁気ディスクに転写記録し、その後さらに磁気ディスクにバーニッシュ処理を行う。磁気ディスクにバーニッシュ処理を施した後に磁気転写を行うことにより、スレーブに付着している異物を磁気転写前に確実に除去できるため、磁気転写時に異常突起が発生するのを未然に防ぐことが可能となる。
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1〜図13を用いて本実施の形態における磁気記録媒体を製造する方法について説明する。
【0017】
図1に本実施の形態の工程図を示しており、図1に示すように、アルミニウムなどのディスク基板に強磁性層を形成して磁気ディスク本体とし、その磁気ディスク本体に潤滑剤層を形成した後、磁気転写を行い、その後バーニッシュ処理を行う。
【0018】
ここで、ディスク基板に強磁性層を形成する工程や潤滑剤層を形成する工程については、従来から磁気ディスクの製造工程で知られている技術をそのまま利用することができる。例えば、強磁性層の形成については、アルミニウム製の基板上に蒸着やスパッタ手段のような乾式めっき手段により磁性層を設ける方法がある。また、通常は磁性層上に蒸着やスパッタ手段のような乾式めっき手段あるいはディッピングやスピンコート法により保護層を設ける工程を行うことによって、磁性層を保護する方法が採られている。
【0019】
また、潤滑剤層の形成工程では、潤滑剤溶液中に磁気ディスクを浸漬した後、所定の速度で引き上げることによって磁気ディスク表面全体に潤滑剤を塗布する。潤滑剤層の厚みは、15〜20オングストローム(1.5〜2.0nm)で、構成物質としては、炭素(C),水素(H),酸素(O),フッ素(F)が望ましい。
【0020】
次に、図2〜図5を用いて、図1に示す磁気転写工程の内容について詳細に説明する。
【0021】
図2は本実施の形態における磁気転写工程を行うための装置の一部を断面で示す斜視図である。図2において、1はドーナツ円盤状の磁気ディスクであり、2はこの磁気ディスク1に情報信号を磁化パターンとして転写記録するための円盤状の磁気転写用のマスタで、表面には強磁性薄膜からなる磁性部が形成され、またこのマスタ2は磁気ディスク1を上下から挟み込むように配置される構成となっている。3はマスタ2の転写面、4はマスタ2の転写面3と反対側の面に固着されている位置決めリング、5は2枚のマスタ2の一方を保持するための上フランジ、6は同じく2枚のマスタ2の他方を保持するための下フランジ、7はマスタ2と上フランジ5または下フランジ6を連結する可撓性膜である。
【0022】
8は磁気ディスク2の中心透孔と2枚のマスタ2の中心透孔に貫挿される弾性体からなるスピンドル、9はスピンドル8を押しつぶし変形させるためのキャップで、前記スピンドル8は円筒形状であり、中心部にはキャップ9の心棒9aが挿入されている。また、このスピンドル8と心棒9aとの間には、所定の隙間が設けられている。10はスピンドル8とマスタ2の一方を支えるためのマスタ台座、11はマスタ2と磁気ディスク1の間の空気を排出するための空気通路、12は空気通路から空気を排出するための空気排出口、13は空気排出口に接続された吸引ポンプ、14は下フランジを支えるフランジ台座、15は磁気ディスク1にマスタ2の磁気パターンを転写するためのマグネットである。
【0023】
次に、本発明の方法に使用するマスタの一例について説明する。
【0024】
図3にマスタ2の一例の平面を模式的に示しており、図3に示すように、マスタ2の一主面、すなわち磁気ディスク1の強磁性層表面に接触する側の表面には、略放射状に信号領域2aが形成されている。
【0025】
図3の点線で囲んだ部分Aの拡大図を、図4に模式的に示す。図4に示すように、信号領域2aには、磁気記録媒体に記録されるディジタル情報信号、例えばプリフォーマット記録に対応する位置に、上記情報信号に対応したパターン形状で強磁性薄膜からなる磁性部による情報パターンが形成されている。図4において、ハッチングを施した部分が強磁性薄膜によって構成された磁性部である。この図4に示す情報パターンは、クロック信号、トラッキング用サーボ信号、アドレス情報信号等の各々の領域をトラック長さ方向に順次配列したものである。なお、図4に示す情報パターンは一例であり、磁気記録媒体に記録されるディジタル情報信号に応じて、情報パターンの構成や配置等を適宜決定することとなる。
【0026】
例えば、ハードディスクドライブのように、ハードディスクの磁性膜に、まずリファレンス信号を記録し、そのリファレンス信号に基づきトラッキング用サーボ信号などのプリフォーマット記録を行う場合には、本発明によるマスタを用いてハードディスクの磁性膜に、あらかじめプリフォーマット記録に用いるリファレンス信号のみを転写記録し、そしてそのハードディスクをドライブの筐体内に組み込み、トラッキング用サーボ信号などのプリフォーマット記録は、ハードディスクドライブの磁気ヘッドを使用して行うようにしてもよい。
【0027】
図5にマスタの主要部を拡大して示しており、図5において、16は磁気ディスク1に磁化パターンを転写記録するための強磁性薄膜からなる磁性部、17はマスタ2の磁性部16が設けられている転写面3に放射状に設けられた溝である。
【0028】
また、図6に図3、図4に示した信号領域の断面を示しており、図6に示すように、マスタ2は、Si基板、ガラス基板、プラスチック基板などの非磁性材料からなる円盤状の基体2bの一主面、すなわち磁気ディスク1の表面が接触する側の表面に、情報信号に対応する複数の微細な配列パターン形状で凹部2cを形成し、その基体2bの凹部2cに磁性部16である強磁性薄膜を埋め込む形態で形成することにより構成されている。
【0029】
ここで、強磁性薄膜としては、硬質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料を問わず、多くの種類の磁性材料を用いることができ、磁気ディスクにディジタル情報信号を転写記録できるものであればよい。例えば、Fe、Co、Fe−Co合金などを用いることができる。なお、情報信号が記録される磁気ディスクの種類によらずに十分な記録磁界を発生させるためには、磁性材料の飽和磁束密度が大きいほどよい。特に、2000エルステッドを超える高保磁力の磁気ディスクや磁性層の厚みの大きいフレキシブルディスクに対しては、飽和磁束密度が0.8テスラ以下になると十分な記録を行うことができない場合があるので、一般的には、0.8テスラ以上、好ましくは1.0テスラ以上の飽和磁束密度を有する磁性材料が用いられる。また、強磁性薄膜の厚さは、ビット長や磁気ディスクの飽和磁化や磁性層の膜厚によるが、例えばビット長約1μm、磁気ディスクの飽和磁化約500emu/cc、磁気ディスクの強磁性層の厚さが約20nmの場合では、50nm〜500nm程度あればよい。
【0030】
図7、図8は本実施の形態における磁気転写工程を行うための装置の動作を説明する図であり、以下この工程における動作を説明する。まず、図2に示すように、磁気ディスク1は2つのマスタ2に挟まれ、位置決めリング4と磁気ディスク1の中心透孔はともにスピンドル8に貫挿される。また、位置決めリング4と磁気ディスク1の中心透孔がスピンドル8に貫挿されるとき、上フランジ5と下フランジ6は接合する。この時、位置決めリング4と磁気ディスク1の接合部は、図7(a)に示す状態である。すなわち、マスタ2の内径はスピンドル8の外径より大きく、またマスタ2と磁気ディスク1間には微少ながら厚み方向にクリアランスが存在している。
【0031】
次に、芯棒9aを図2に示す矢印Pの方向に引っ張ることにより、弾性体からなるスピンドル8は、キャップ9により圧縮変形し、厚み方向に圧縮されると同時に、その外径は大きくなり、図7(b)に示すように位置決めリング4や磁気ディスク1の中心透孔の内側からそれらを内張状態にして位置決めする。スピンドル8により磁気ディスク1とマスタ2の位置決めが終了したら、スピンドル8は変形状態のままで、吸引ポンプ13により空気排出口12から空気を排出する。
この時、位置決めリング4は弾性を有する材質からなっており、吸引ポンプ13の排気により位置決めリング4が変形し、図7(c)に示すように、磁気ディスク1とマスタ2間のクリアランスはゼロとなり、完全な密着状態となる。
【0032】
すなわち、図2に示すように、磁気ディスク1は、上フランジ5、下フランジ6、2つの可撓性リング7、2枚のマスタ2、2つの位置決めリング4、スピンドル8に囲まれた閉空間を形成しており、空気排出口12から空気が排出されると、その中の圧力は大気圧より低くなる。その結果、2枚のマスタ2は大気圧により磁気ディスク1を挟む方向に力を受け、マスタ2の転写面3と磁気ディスク1の表面が強く密着されることとなる。この時、磁気ディスク1とマスタ2との間に突起等の異物が存在すると、陥没部のまわりには突起部が存在することになる。
【0033】
磁気ディスク1とマスタ2の密着が完了したら、図8に示すようにマグネット15をマスタ2に接近させ、転写に必要な磁界を印加するとともに、マグネット15を磁気ディスク1の円周方向、すなわち図8の矢印B方向に回転させることにより、磁気ディスク1の全円周方向にわたって転写を行うことができる。
【0034】
ここで、マスタに形成したパターン形状に対応した情報信号を磁気ディスクに転写記録する手順について、図9〜図11を用いてさらに詳しく説明する。
【0035】
まず、マグネット15を磁気ディスク1に近づけた状態で、磁気ディスク1の中心軸を回転軸として磁気ディスク1と平行に回転させることにより、図9の矢印で示すように磁気ディスク1を予め一方向に磁化する(初期磁化)。次に、上述したように、磁気ディスク1にマスタ2を位置決めして重ね合わせた状態で、マスタ2と磁気ディスク1とを均一に密着させ、その後図8に示すように、初期磁化とは逆方向に磁界を印加することにより、マスタ2の磁性部16が磁化され、そしてマスタ2に重ね合わせた磁気ディスク1の所定の領域1bに、図10に示すように磁性部16のパターン形状に対応した情報信号が記録される。なお、図10に示す矢印は、この時磁気ディスク1に転写記録される磁化パターンの磁界の方向を示している。
【0036】
図11にその磁化処理時の様子を示しており、図11に示すように、マスタ2を磁気ディスク1に密着させた状態で、マスタ2に外部から磁界を印加して磁性部16を磁化することによって、磁気ディスク1の強磁性層1cに情報信号を記録することができる。すなわち、非磁性の基体2bに所定の情報信号に対応する配列パターン形状で強磁性薄膜からなる磁性部11を形成して構成したマスタ2を用いることにより、その情報信号に対応した磁化パターンとして磁気ディスク1に磁気的に転写記録することができる。
【0037】
なお、マスタ2のパターンを磁気ディスク1に転写記録する際の方法として、上述のようにマスタ2を磁気ディスク1に接触させた状態で外部磁界を印加する方法以外に、マスタ2の磁性部16をあらかじめ磁化させておき、その状態でマスタ2を磁気ディスク1に密着するように接触させる方法であっても情報信号を記録することができる。
【0038】
次に、本発明においては、図1に示すようにバーニッシュ処理の工程を行うのであるが、そのバーニッシュ処理工程の内容について、図12を用いて詳細に説明する。
【0039】
図12は本実施の形態におけるバーニッシュ処理工程を行うための装置を説明する斜視図である。図12に示すようにバーニッシュ処理を行う装置は、上記磁気転写工程を行った後の磁気ディスク1を保持して回転させるスピンドル21と、磁気ディスク1をスピンドル21に固定するクランプ機構22と、バーニッシュ用のバーニッシュヘッド20を備えるヘッド支持機構23と、ヘッド支持機構23をその根元で片持ち支持するガイドアーム24と、バーニッシュヘッド20をヘッド支持機構23及びガイドアーム24を介して磁気ディスク1の記録面上で動かして位置決めするバーニッシュヘッド位置決め部25と、バーニッシュヘッド位置決め部25の動作を制御する位置決め制御部26と、スピンドル21の動作を制御するスピンドル制御部27と、位置決め制御部26とスピンドル制御部27を制御するコントローラ28とから構成されている。
【0040】
まず、コントローラ28によって、スピンドル制御部27によって磁気ディスク1を定速回転させる。次に、バーニッシュヘッド位置決め部25を図12のA方向に移動させるように位置決め制御部26で制御し、磁気ディスク1とバーニッシュヘッド20との間が所定の間隔、例えば15nmになった位置で停止させる。この位置の設定方法を以下に示す。
【0041】
予めバーニッシュヘッド位置決め部25がある任意の位置に位置している時の磁気ディスク1とバーニッシュヘッド20との間の距離を測定しておく。そして、磁気ディスク1とバーニッシュヘッド20との間の間隔を所定の間隔、例えば15nmとするために移動させるべき距離を算出し、コントローラ28に記憶させる。コントローラ28は位置決め制御部26を介してバーニッシュヘッド位置決め部2を移動させ、磁気ディスク1とバーニッシュヘッド20との間の間隔を15nmに設定する。ここで、磁気ディスク1とバーニッシュヘッド20との間の間隔、すなわち15nmは、実際のハードディスクドライブ装置で記録再生を行う時のヘッドの浮上量よりも小さい値に設定する。
【0042】
その後、磁気ディスク1を回転させた状態で図12のB方向、すなわち磁気ディスク1の半径方向にバーニッシュヘッド20を移動させるように位置決め制御部27によって制御し、磁気転写を行う際にマスタ2と接触した面に対してバーニッシュ処理を行う。これによって、磁気ディスク1の表面に存在する異常突起、特に記録再生途中における磁気ディスクと磁気ヘッドとのクリアランス以上の突起を衝突エネルギーによって除去することができる。
【0043】
図13に、バーニッシュ処理を行った後の磁気ディスク1の表面状態を光学的な測定方法で測定した結果を示す。従来の技術で説明した図12と比較すれば、磁気転写工程を行った後にバーニッシュ処理工程を実施することによって、磁気ディスク1の表面に存在する微小突起が激減していることがわかる。
【0044】
以上のように本実施の形態によれば、磁気転写工程の後にバーニッシュ処理を施すことにより、磁気転写が行われた磁気ディスクの表面平滑性が改善され、信号の記録再生性能および磁気ヘッドの寿命を低下させることのない信頼性の高い装置を実現することができる。
【0045】
(実施の形態2)
図14、図15を用いて本発明の実施の形態2における方法について説明する。
【0046】
図14に本実施の形態における工程図を示しており、各工程に関しては実施の形態1と同様な構成である。すなわち、本実施の形態においては、ディスク基板に強磁性層を形成した後、バーニッシュ処理を行い、その後磁気ディスクに潤滑剤を形成した後、磁気転写工程を行う方法である。
【0047】
まず、本実施の形態では、バーニッシュ処理工程の後に、磁気転写工程を実施しており、このことによって磁気ディスク1上に存在する異物を予め取り除くことができるため、磁気転写の時に、マスタ2と磁気ディスク1との間に異物が存在することを未然に防ぐことが可能となり、実施の形態1と同様に、信号の記録再生性能および磁気ヘッドの寿命を低下させることのない、信頼性の高い装置を実現することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、潤滑剤を塗布する工程の後に磁気転写の工程を実施していることにより、磁気転写時に発生するダメージを未然に防止できる。すなわち、磁気転写時に磁気ディスク1とマスタ2とが接触する際、接触を行う前に、炭素,水素,酸素またはフッ素等より構成される潤滑剤を1.5〜2.0nmの厚みで塗布させておくことにより、両者の接触時に発生する可能性のあるダメージを未然に防止することができる。
【0049】
図15に潤滑剤を塗布しない状態で磁気転写を行った時に発生した磁気ディスク表面の観察結果を示している。図15(a)は磁気転写後の磁気ディスク表面全体の様子を示したもので、同図より、磁気ディスク表面全体、特に中心部近傍に、同一方向に長手方向を有する微細傷が生じていることがわかる。図15(b)はかかる微細傷を拡大した図であり、3〜5μm程度の引っ掻き傷のような窪んだ形状のものであることがわかる。
【0050】
すなわち、これらの観察結果より、潤滑剤を塗布しない状態で磁気ディスク1とマスタ2とを接触させると、磁気ディスク1に方向性を同じくする微細な引っ掻き傷が、特にディスク中心部近傍に多く発生することがわかった。これは、図7(c)に示したように、磁気ディスク1とマスタ2が密着する際に、スピンドル8の変形により磁気ディスク1とマスタ2が位置ずれを起こし、潤滑材を塗布しない状態においては、このときに傷が発生するものと考えられる。逆に、磁気ディスク1とマスタ2との磁気転写に先立って磁気ディスク1に潤滑剤を塗布することにより、ダメージが発生しにくくなることも実験結果より明らかになった。これは、潤滑剤が接触時のダメージを防止するための保護膜の役割を果たすためである。
【0051】
以上のように本実施の形態によれば、バーニッシュ処理の工程の後に磁気転写の工程を実施することによって、磁気ディスク上に存在する異物を予め取り除くことができるため、マスタと磁気ディスクとの間に異物を存在させることを未然に防ぐことが可能となる。
【0052】
また、潤滑剤を塗布する工程の後に磁気転写の工程を実施したため、両者の接触時に発生する可能性のあるダメージを未然に防止することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、バーニッシュ処理工程の後に磁気転写工程を行ったが、実施の形態1との組合せ、すなわちバーニッシュ処理工程の後に磁気転写工程を行い、さらにバーニッシュ処理工程を行えば、磁気ディスク上に存在する異物を予め取り除いた状態で磁気転写が行え、そして磁気転写後の磁気ディスクの表面平滑性もさらに改善できることとなり、信号記録再生性能及び磁気ヘッドの耐久性がさらに向上し、信頼性の高い装置を実現することができる。
【0054】
なお、上記例においては、バーニッシュ処理をバーニッシュヘッドを用いて行ったが、これに限定されるものではなく、例えばバーニッシュ用テープあるいはバフ研磨等を用いて、テープあるいはバフ研磨と微小突起との衝突エネルギーによって微小突起を除去するような構成としても同等の効果が得られる。
【0055】
また、磁気転写の方法についてもこれに限定されるものではなく、他の方式を用いて磁気ディスク1とマスタ2とを接触させる方法を採ってもよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、磁気転写によって磁気ディスク表面の平滑性が損なわれても、磁気転写の工程の後にバーニッシュ処理を施すことにより、磁気ディスクの表面平滑性が回復されるので、信号の記録再生の性能が低下することや、磁気ヘッドの寿命を低下させることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1による磁気ディスクの製造方法を示す工程図
【図2】本発明の実施の形態1において、磁気転写の工程を行うための装置を一部断面で示す斜視図
【図3】同磁気転写の工程を行うためのマスタの構成を説明する平面図
【図4】同マスタに形成する情報信号の構成を説明する説明図
【図5】同マスタの主要部を拡大して示す斜視図
【図6】同じく断面図
【図7】(a)〜(c)は同磁気転写の工程を行う時のディスク位置決めを説明する断面図
【図8】同磁気転写の工程を行う際の装置の動作を説明する斜視図
【図9】同磁気転写の工程において、初期磁化を行った磁気ディスクの状態を説明するための斜視図
【図10】同磁気転写の工程において、転写記録を行った磁気ディスクの状態を説明するための斜視図
【図11】同磁気転写の工程において、転写記録原理を説明するための断面図
【図12】同バーニッシュ工程を行うための装置を説明する斜視図
【図13】同バーニッシュ処理を行った後の磁気ディスク表面の状態を示す説明図
【図14】本発明の実施の形態2による磁気ディスクの製造方法を示す工程図
【図15】潤滑剤を塗布しないで磁気転写を行った時の磁気ディスク表面を説明するための説明図
【図16】従来の技術において、磁気ディスクとマスタとを接触させた後の磁気ディスク表面の状態を示す説明図
【符号の説明】
1 磁気ディスク
2 マスタ
2a 信号領域
2b 基体
15 マグネット
16 磁性部
20 バーニッシュヘッド
Claims (2)
- 磁性部を所定の情報信号に対応する配列パターン形状になるように形成してなる磁気転写用マスタを磁気ディスクの表面に重ね合わせるとともに、前記磁気転写用マスタの磁性部を磁化することにより、前記磁気転写用マスタの情報信号の配列パターンを情報信号の磁化パターンとして前記磁気ディスクに転写記録し、その後前記磁気ディスクにバーニッシュ処理を施すことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
- 磁気ディスクにバーニッシュ処理を施した後、磁性部を所定の情報信号に対応する配列パターン形状になるように形成してなる磁気転写用マスタを磁気ディスクの表面に重ね合わせるとともに、前記磁気転写用マスタの磁性部を磁化することにより、前記磁気転写用マスタの情報信号の配列パターンを情報信号の磁化パターンとして前記磁気ディスクに転写記録し、その後さらに前記磁気ディスクにバーニッシュ処理を施すことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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