JP3586339B2 - 光学部材検査装置及び光学部材検査方法 - Google Patents

光学部材検査装置及び光学部材検査方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、レンズ等の光学部材の屈折率異常等の光学的欠陥を検出するための光学部材検査装置及び光学部材検査方法に関し、特に、非球面レンズを検査する場合であっても光学的欠陥の判定を行うための閾値を有効に設定することができる光学部材検査装置及び光学部材検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レンズ等の光学部材は、入射した光束が規則正しく屈折して、平行に進行したり、一点又は線状に収束したり発散するように設計されている。しかしながら、光学部材の成形異常により屈折力(屈折率)が不規則に変化していたり、成形後の人的取り扱いによって光学部材の表面上にゴミ,キズ等が生じていると、入射した光束が乱れてしまうので、所望の性能を得ることができなくなる。特に、樹脂を金型に注入して成形する事によって作成されるレンズやプリズム等の光学部材では、上述した表面上のゴミ,キズ等の他、成形異常によってヒケ(樹脂が金型表面から離間して生じる陥没),ジェッティング(光学部材内において樹脂密度が部分的に変化している箇所),フローマーク(樹脂の収縮に伴って光学部材表面に生じるW字状の皺)が生じ易いので、このような欠陥を効率良く検出することが必要となっている。
【0003】
そのため、本発明者は、セットされた光学部材の光学的欠陥を自動的に検出することができる光学部材検査装置を、特願平7−229242号として出願した。この光学部材検査装置は、光学部材の焦点位置において回転自在に配置されたナイフエッジと、ナイフエッジの背後に配置されて照明光を発散するための拡散板と、光学部材を透過した光を撮像するための撮像装置とにより、構成される。このような構成の光学部材検査装置によると、光学部材表面又は内部における屈折力(屈折率)異常箇所が、撮像された画像中において明暗濃度の急激な変化部位として表れる。また、光学部材の表面に生じたキズや微細なごみ等は、それ自体が撮像装置によって撮像されるので、同様に、明暗濃度の変化部位として表れる。そして、これらの明暗濃度の急激な変化部位が抽出されて、その形状又は面積が数値化されて、合否判断に用いられるのである。
【0004】
ところで、ガラス成形の光学部材の表面には、加工時において、ダイヤモンドバイト等による切削の跡が生じてしまうことが避けられない。また、樹脂成形の光学部材の表面にも、成形型の作成の際にこの成形型の表面に刻まれた切削の痕が転写されてしまうことが避けられない。このような加工痕はレンズの性能には影響しない程度の微少な凸凹であるが、上述した光学部材検査装置は、これら加工痕をもヒケやキズ等の光学的欠陥要因と一緒に抽出してしまうので、正確な検査ができなかった。
【0005】
この場合、検査対象光学部材が球面レンズであれば、上述した光学部材検査装置は、ナイフエッジの位置を検査対象光学部材の焦点位置から意図的に外すことによって、光学的欠陥の抽出感度を落とし、これら加工痕が光学的欠陥要因として抽出されるのを防止することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、検査対象光学部材が非球面レンズである場合には、レンズの各部分に対応する焦点位置がその光軸上に沿って一定範囲にわたって分布しているので、検査対象光学部材の全体に対する抽出感度を均等に落とすことはできなかった。即ち、焦点位置の分布範囲内においては、ナイフエッジが何処に配置されようと、検査対象光学部材の何れかの一部分に対応する焦点位置には合致してしまうので、その一部分における加工痕が抽出されてしまうからである。また、ナイフエッジが焦点位置の分布範囲外に配置されると、そこから最も遠い焦点位置に対応する部分に対しては抽出感度が低くなり過ぎてしまうので、本来抽出すべき光学的欠陥要因を抽出し損なってしまうからである。
【0007】
このように、ナイフエッジの配置位置を調整するだけでは、あらゆる種類の光学部材に関してその加工痕の抽出を防止しつつその光学的欠陥のみを抽出することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、以上の問題に鑑み、検査対象光学部材を撮像することによって得られた画像に対して画像処理を施すことにより、加工痕に起因する情報を除去して光学的欠陥に起因する情報のみを抽出して、この情報に基づいた正確な良否判定を行うことができる光学部材検査装置及び光学部材検査方法を、提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
各請求項記載の発明は、上記課題を解決するためになされたものである。
請求項1記載の発明は、光学部材の光学的欠陥を検出する光学部材検査装置であって、照明光によって照明される拡散板と、前記光学部材を含む光学系の焦点位置に配置されるとともに、前記拡散板によって拡散された光を部分的に透過させるように前記拡散板に接している遮光手段と、前記光学系を透過した光を撮像する撮像手段と、この撮像手段によって撮像された画像に基づいて、その画像中の輝度変化量分布を示す輝度変化量分布データを算出する輝度変化量分布データ算出手段と、この輝度変化量分布データ算出手段によって算出された輝度変化量分布データに対して高周波成分を除去する平滑化を行う第1の平滑化手段と、前記輝度変化量分布データ算出手段によって算出された輝度変化量分布データに対して低周波成分を抽出する平滑化を行う第2の平滑化手段と、前記第1の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データと前記第2の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データとを比較し、前者が後者よりも所定量以上上回っている部位のみを抽出する抽出手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
光学部材とは、正レンズ及び負レンズ,球面レンズ及び非球面レンズ,ガラス成形レンズ及び樹脂成形レンズを含む。光学部材の光学的欠陥とは、屈折率や屈折力の部分的異常や光学部材の表面の欠陥を言う。屈折率や屈折力の異常としては、樹脂成形の光学部材におけるヒケやジェッティングやフローマーク,ガラスからなる光学部材における面加工の不良,等が例示される。また、光学部材の表面の欠陥としては、表面のキズや汚れやゴミ,等が列挙される。但し、加工痕のように光学的性能に影響を及ぼさない微細な凸凹は、ここで言う光学的欠陥からは除外される。
【0011】
拡散板は、背後から照明される透光部材であっても良いし、表面側から照明される反射部材であっても良い。
遮光手段は、拡散板の表面に直接印刷された遮光パターンであっても良いし、板状の不透明部材を適宜切り出して拡散板に貼り付けたものであっても良いし、拡散板とは別個の透明部材表面上に遮光パターンを印刷したものであっても良い。この遮光手段における光を部分的に透過させる部分と遮光させる部分との境界線は、直線状であっても良いし、曲線状であっても良い。また、境界線は一本のみであっても良いし、縞状に複数本あっても良い。さらに、境界線は、複数の方向を向いていても良い。この遮光手段は、境界線が複数の方向を向いている場合には固定されていても良いが、境界線が一本のみの場合又は境界線が全て同じ方向を向いている場合にはこの境界線に接する回転軸を中心に回転することが望ましい。なお、遮光手段が回転する際、拡散板が一体に回転しても良いし、拡散板が固定された状態で遮光手段のみが回転しても良い。
【0012】
「光学部材を含む光学系」とは、正レンズである光学部材そのもの,若しくは、負レンズである光学部材を含む正レンズ群のことである。この光学系の全体としての焦点位置が遮光手段の位置に一致するように、各部材が配置される。
【0013】
輝度変化量分布データは、撮像手段によって撮像された画像に対して微分処理を施すことによって算出されても良いし、所定距離だけ離れた画素同士の差分に基づいて算出されても良い。
【0014】
第1平滑化手段による平滑化において除去される高周波成分の周波数は、光学部材の表面に生じた加工痕に起因する成分の周波数以下且つ光学的欠陥に起因する成分の周波数よりも高く設定される。また、第2平滑化手段による平滑化において抽出される低周波成分の周波数は、光学部材の表面の形状に起因する成分の周波数以上且つ光学的欠陥に起因する成分の周波数よりも低く設定される。これら各平滑化手段は、平滑化のための演算を実行するプロセッサであっても良いが、フィルタ回路として構成されても良い。
【0015】
抽出手段は、前記第1の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データと前記第2の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データとを直接比較して前者が後者よりも所定量上回っている部分を探しても良いが、前記第2の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データを予めこの所定量だけシフトした後に、このようにシフトされた輝度変化量分布データと前記第1の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データとをと比較しても良い。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1の遮光手段が、直線状の境界線によって夫々分けられた前記光を部分的に透過させる部分と前記光を部分的に遮光する部分とからなることで、特定したものである。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項2において、前記遮光手段を前記拡散板との接触面の面内において前記直線状の境界線に接する回転軸を中心に回転させる回転手段を更に備えたことで、特定したものである。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3の光学部材を含む光学系の光軸が、前記遮光手段の回転軸と一致していることで、特定したものである。請求項5記載の発明は、請求項4の撮像手段が、前記回転手段により回転させられた前記遮光手段の各回転位置において前記撮像を行うとともに、前記遮光手段が一回転する間に前記撮像手段によって撮像された各画像に基づいて前記輝度変化量分布データ算出手段が夫々算出した複数の輝度変化量分布データを、前記各平滑化に先立って相互に合成する合成手段を更に備えたことで、特定したものである。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1又は5記載の輝度変化量分布データ算出手段が、前記撮像装置によって撮像された画像を多数の画素に分け、隣接する各画素の輝度同士を順次比較して微分処理し、この微分処理の結果得られたデータを前記輝度変化量分布データとすることで、特定したものである。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1の抽出手段が、前記第2の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データ全体を、輝度変化量が大きいことを示す方へシフトさせるシフト手段と、このシフト手段によってシフトされた輝度変化量分布データと前記第の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データとを比較する比較手段とを有することで、特定したものである。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1において、前記抽出手段によって抽出された部位数値化する数値化手段と、この数値化手段によって数値化された数値が所定の判定基準値を超えたか否かを判定する判定手段とを更に備えたことで、特定したものである。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項8の数値化手段が、前記光学部材の前記抽出手段によって抽出された部位の面積を計って前記数値とすることで、特定したものである。
【0023】
請求項10記載の発明は、光学部材の光学的欠陥を検出する光学部材検査方法であって、拡散板から発散され、遮光手段によってその一部が遮光され、その焦点位置が前記遮光手段の位置と略一致するように配置された前記光学部材を含む光学系を透過した光を撮像し、この撮像によって得られた画像に基づいて、その画像中の輝度変化量分布を示す輝度変化量分布データを算出し、算出された輝度変化量分布データに対して高周波ノイズを除去する第1の平滑化を行い、前記算出された輝度変化量分布データに対して低周波成分を抽出する第2の平滑化を行い、前記第1の平滑化がなされた輝度変化量分布データと前記第2の平滑化がなされた輝度変化量分布データとを比較し、前者が後者よりも所定量以上上回っている部位のみを抽出することで、特定したものである。
【0024】
請求項11記載の発明は、請求項10において、前記抽出された部位を数値化し、数値化された数値が所定の判定基準値を超えたか否かを判定することで、特定したものである。
【0025】
請求項12記載の発明は、請求項1における第1の平滑化手段が、前記輝度変化量分布データ算出手段によって算出された輝度変化量分布データから、光学部材表面の加工痕に対応する空間周波数以上の高周波成分を除去し、第2の平滑化手段が、前記輝度変化量分布データ算出手段によって算出された輝度変化量分布データから、光学部材の表面形状に対応する空間周波数以下の低周波成分のみを抽出することで、特定したものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
<光学部材検査装置の全体構成>
図1は、本発明による光学部材検査装置の実施の形態を示す概略構成図である。
図1に示すように、光学部材検査装置を構成する照明ユニット4と撮像装置7とは、同一の装置光軸l上に、互いに向き合って配置されている。
【0027】
この撮像手段としての撮像装置7は、全体として正レンズ系である撮像レンズ8と、この撮像レンズ8によって収束された光による像を撮像するCCDエリアセンサからなる撮像素子9とから、構成されている。この撮像素子9によって撮像された画像は、表示装置10及び画像処理部14に入力される。
【0028】
表示装置10は、この光学部材検査装置の初期調整時(即ち、後述する照明ユニット4の位置調整時)に用いられる画像表示装置である。
画像処理部14は、検査対象光学部材Aが良品であるか不良品であるかの判定を行うプロセッサであり、第1乃至第4のメモリ14a〜14dを内蔵している。そして、画像処理部14は、撮像素子9から入力された画像データに対して所定の画像処理を行い、検査対象光学部材Aの光学的欠陥の程度を数値化するとともに、この数値を一定の判定基準値(許容値)と比較し、この数値が判定基準値内に収まっているか超えているかの判定を行う。即ち、この画像処理部14は、第1の平滑化手段,第2の平滑化手段,抽出手段(シフト手段,比較手段),数値化手段,判定手段,及び合成手段に相当する。この画像処理部14は、また、上述した判定処理を行うのに伴い、ナイフエッジ回転制御部15に対してモータ13の回転指示を行う。
【0029】
ナイフエッジ回転制御部15は、画像処理部14からの回転指示に従い、モータ13を回転させる。
一方、照明ユニット4は、全体として、装置光軸l上を撮像装置7に向けて進退移動することができる。この照明ユニット4の内部には、その中心を装置光軸lと同軸にした円盤状の拡散板5が、装置光軸lに直交する面内において装置光軸lを中心に回転自在に保持されている。この拡散板5の撮像装置7側の面には、遮光手段としての遮光板6が一体に貼り付けられている。この遮光板6は、斜視図である図2に示すように、不透明部材からなる半円形の板であり、拡散板5の中心を通る径方向の直線を弦(ナイフエッジ)6aとするとともに、拡散板5と同一半径の円弧を有している。このような構成を備えた結果、拡散板5によって拡散された光は、この遮光板6により部分的に遮光されるとともに、遮光板6に覆われていない部分により部分的に透過される。
【0030】
拡散板5の周縁部には、この拡散板5と同軸の環状ギア11が固着されている。この環状ギア11は、ピニオンギア12と噛合しており、このピニオンギア12は、照明ユニット4内に固定されているモータ13の回転軸に取り付けられている。従って、モータ13がナイフエッジ回転制御部15によって回転駆動されると、遮光板6及び拡散板5は、両ギア12,11を介して回転駆動を受け、図2に示すように、装置光軸lに直交する面内(即ち、拡散板5と遮光板6との接触面の面内)において回転駆動される。なお、この場合の回転方向は、図2に示すように、撮像装置7側から見て時計方向である。この回転の結果、遮光板6のナイフエッジ(弦)6aも、装置光軸lを中心に回転することになる。即ち、これら画像処理部14,ナイフエッジ回転制御部15,モータ13,及びギア11,12により、回転手段が構成される。
【0031】
拡散板5の裏面側において、照明ユニット4には、光ファイバー束3の先端3aが固着されている。この光ファイバー束3の基端3bには、照明ランプ1と集光レンズ2とからなる光源装置が配置されている。そして、照明ランプ1から出射された照明光が、集光レンズ2によって集光されて、その基端3bからこの光ファイバー束3内に入射される。この照明光は、光ファイバー束3内を伝送され、その先端3aから拡散板5に向けて照射される。即ち、遮光板6のナイフエッジ6aが背後から照明されるのである。なお、光ファイバー束3の長さは、照明ユニット4の移動可能距離よりも十分長くとってある。従って、照明ユニット4が移動しても、この光ファイバー束3が追従して、常に遮光板6のナイフエッジ6aを照明することができる。
【0032】
検査対象光学部材Aは、装置光軸lと同軸に、撮像装置7と照明ユニット4との間に配置される。具体的に説明すると、図1に示すように検査対象光学部材Aが正レンズである場合には、その焦点位置が遮光板6のナイフエッジ6aの装置光軸l上の位置と一致する位置に、検査対象光学部材A(光学部材を含む光学系)が配置される。また、検査対象光学部材Aが負レンズである場合には、検査対象光学部材Aと照明ユニット4との間に、この検査対象光学部材Aよりも絶対値において大きい正のパワーを有する補正レンズが配置される。この検査対象光学部材(負レンズ)A及び補正レンズ(正レンズ)からなるレンズ群(光学部材を含む光学系)は、全体として正のパワーを持つレンズ群であり、その合成焦点位置が遮光板6のナイフエッジ6aの装置光軸l上の位置と一致するように、その検査対象光学部材(負レンズ)A及び補正レンズ(正レンズ)が夫々配置される。
<光学的欠陥表示の原理>
以上のように検査対象光学部材A(及び補正レンズ)が配置されると、拡散板5から発散して検査対象光学部材Aを透過した照明光は、この検査対象光学部材Aが良品である限り、平行光となる。従って、撮像装置7側から見ると、遮光板6のナイフエッジ6aが無限遠上に位置しているのと等価になる。
【0033】
ところで、仮に、検査対象光学部材Aの焦点位置(又は、検査対象光学部材Aと補正レンズとからなる光学系の合成焦点位置,以下同様とする)がナイフエッジ6aの装置光軸l上の位置よりも撮像装置7側にずれると、検査対象光学部材Aと撮像装置7の撮像レンズ8との間の空間に、ナイフエッジ6aの倒立像(実像)が形成される。このナイフエッジ6aの倒立像(実像)は、撮像レンズ8によってリレーされ、撮像レンズ8の撮像素子9側の空間に、ナイフエッジ6aの正立像(実像)が形成される。逆に、検査対象光学部材Aの焦点位置がナイフエッジ6aの装置光軸l上の位置よりも光ファイバー束3側にずれると、遮光板6の光ファイバー束3側の空間に、ナイフエッジ6aの正立像(虚像)が形成される。このナイフエッジ6aの正立像(虚像)は、撮像レンズ8によってリレーされ、撮像レンズ8の撮像素子9側の空間に、ナイフエッジ6aの倒立像(実像)が形成される。即ち、検査対象光学部材Aの焦点位置とは、この位置に存在する物体(ナイフエッジ6a)の像が、撮像レンズ8の撮像素子9側の空間において正立像として結像されるか倒立像として結像されるかの境界点であり、光学的に不安定な状態となる位置である。
【0034】
なお、検査対象光学部材Aと撮像レンズ8との間隔は、検査対象光学部材Aの焦点位置がナイフエッジ6aの装置光軸l上の位置よりも撮像装置7側に僅かにずれただけであってもそれらの間(正確には、両者の焦点位置同士の間)にナイフエッジ6aの倒立像(実像)が形成されるように、可能な限り長くとってある。また、撮像素子9は、撮像レンズ8によって正立像が形成されても倒立像が形成されてもこれらの像をある程度明瞭に撮像できるように、正立像の形成位置(平均位置)と倒立像の形成位置(平均位置)との中間点に配置される。この位置とは、撮像レンズ8に関して検査対象光学部材Aの表面と光学的に等価な位置である。
【0035】
従って、撮像素子9上には、常に、検査対象光学部材Aの外縁の実像(倒立像)αが結像されるとともに、この検査対象光学部材の外縁の実像αの周囲には、検査対象光学部材Aを通さずに直接見えるナイフエッジ6aの実像(倒立像)がややぼけて結像される(図4(a)〜(e)参照)。
【0036】
そして、この検査対象光学部材Aの外縁の実像αの内側には、検査対象光学部材Aの焦点位置(負レンズである検査対象光学部材Aと補正レンズとからなる光学系の合成焦点位置,以下同様とする)がナイフエッジ6aの装置光軸l上での位置よりも撮像装置7側にずれている場合には、ナイフエッジ6aの実像(正立像)が、ややぼけて結像される(図4(d),(e)参照)。このナイフエッジ6aの実像(正立像)は、焦点位置のずれ量が少なくなる程ぼけ量が大きくなり(図4(d)参照)、ずれ量が大きくなる程ぼけ量が少なくなって明確になる(図4(e)参照)。
【0037】
これとは逆に、検査対象光学部材Aの焦点位置がナイフエッジ6aの装置光軸l上での位置よりも光ファイバー束3側にずれている場合には、検査対象光学部材Aの外縁の実像αの内側には、ナイフエッジ6aの実像(倒立像)が、ややぼけて結像される(図4(b),(a)参照)。ナイフエッジ6aの実像(倒立像)は、焦点位置のずれ量が少なくなる程ぼけ量が大きくなり(図4(b)参照)、ずれ量が大きくなる程ぼけ量が少なくなって明確になる(図4(a)参照)。
【0038】
また、検査対象光学部材Aの焦点位置がナイフエッジ6aの装置光軸l上での位置と一致すると、検査対象光学部材Aの外縁の実像αの内側におけるぼけ量が最大となり、全体に均一な明度で光線が照射されるようになる(図4(c)参照)。
【0039】
表示装置10及び画像処理部14に入力される画像データ中において、検査対象光学部材Aの外縁αの内側部分は、検査対象光学部材Aの焦点位置が拡散板5の表面の位置と一致した時には、検査対象光学部材Aに光学的欠陥がない限り、ナイフエッジ6aの黒色部分(照明光が遮られている部分)と白色部分(照明光が透過する部分)とが完全に混合して、均一濃度の灰色の平面として表示される(球面レンズの場合)。なお、検査対象光学部材Aとして非球面レンズを検査する場合には、焦点位置が一点のみではなく緩やかに変化しているので、穏やかに(低い空間周波数で)輝度が変化している画像となる。
【0040】
これに対して、検査対象光学部材A内に屈折率異常が生じている部分や表面の形状欠陥によって屈折力異常が生じている部分がある場合には、その異常部分のみ、正常な部分の焦点距離と異なる焦点距離を有することと等価になっている。従って、図5に示すように、その異常部分にだけ、ナイフエッジの像γが現れる。この異常部分の屈折率(屈折力)異常の程度(焦点距離のずれ量)は、ナイフエッジの像γの現れ方に反映される。即ち、ナイフエッジの像の濃淡が明確に現れれば現れるほど、屈折率(屈折力)異常の程度(焦点距離のずれ量)が大きくなる。
【0041】
一方、検査対象光学部材Aの表面にゴミが付着していたりキズがついている場合には、これらゴミやキズは、照明ユニット4からの照明光を拡散させる。このようにしてゴミ又はキズによって拡散された照明光のうち、撮像装置7の撮像レンズ8に入射した光は、この撮像レンズ8によって収束されて、これらゴミ又はキズの像を撮像素子9上に結ぶ。
【0042】
このようにして撮像装置7によって撮像された画像データは、一旦画像処理部14の第1メモリ14aに格納された後に、微分処理によって輝度変化量の分布を示す画像データ(輝度変化量分布データ)に変換されて、第2メモリ14bへ移される。そして、ナイフエッジ6aが一回転するまでに、22.5度回転する毎に上述の撮像及び微分処理が行われ、その微分結果である画像データが順次第2メモリ14b内に蓄積されて合成される。
【0043】
このように、ナイフエッジ6aを若干量づつ回転させて得られた微分後の画像データを蓄積するようにしたのは、次の理由による。即ち、直線状のナイフエッジ6aを光路に挿入すると、ナイフエッジ6aの方向と平行な方向における屈折力(屈折率)異常成分は最も良く画像データ中に表れるが、ナイフエッジ6aの方向と直交する方向における屈折力(屈折率)異常成分はあまり良く表れない。そのため、ナイフエッジ6a自体を装置光軸lに直交する面内で回転させて、あらゆる方向における異常成分を全て検出して、同一の画像上に合成しているのである。また、この結果、次の効果も得られる。即ち、ナイフエッジ6aを停止させた場合の画像では、図5に示すように、屈折力(屈折率)異常部分の縁(図5中央の円弧部分)の他にナイフエッジ6aの縁(図5中央の左右に延びる白黒の境界線)も、濃淡が急激に変化している箇所として映し出される。このナイフエッジ6aの縁は、本来検出が求められている屈折力(屈折率)異常部分の縁自体ではないので、検出されないことが望ましい。そこで、ナイフエッジ6aを回転させると、屈折力(屈折率)異常部分の縁の位置が不動であるのに対して、ナイフエッジ6aの縁は回転する。従って、画像合成処理をすると、屈折力(屈折率)異常部分の縁が益々強調されるのに対して、ナイフエッジ6aの縁は屈折力(屈折率)異常部分の閉領域(縁によって囲まれている部分)内において面状に平均化されるので、境界線としては認識されなくなるのである。
【0044】
ナイフエッジ6aの一回転後において第2メモリ14bに格納されている画像データ例を、図6に示す。この図6の例は、非球面レンズである検査対象光学部材Aを撮像して得られた画像データであるので、その表面における面パワー(焦点距離)が変化している部分(中央部分δ,及び径方向における中間部分ε)が、輝度の高い環状に表されている。但し、この輝度の高い環状部分よりも細かいピッチで線状に表れている円形縞ηは、検査対象光学部材A表面に表れた加工痕であると考えられる。従って、図6の画像データが得られた場合には、中央部分δと径方向における中間部分εとの間に表れている粒状の領域θのみが、光学的欠陥要因(薄いジェッティング)であるとして抽出される。そして、抽出された領域θの面積が所定の判定基準値と比較されて、合否判定がなされるのである。
【0045】
なお、図6に示されている横軸は、撮像装置7によって撮像されるフィールドの中心位置を通ってX方向(水平方向)に伸びるX方向中心軸を示し、縦軸は、フィールドの中心位置を通ってY方向(垂直方向)に伸びるY方向中心軸を示す。
<加工痕除去及び光学的欠陥要因抽出の原理>
次に、上述のような微分処理及び合成処理がなされた画像データ(図6参照)に基づいて加工痕のみを除去して光学的欠陥要因のみを抽出するための原理を説明する。
【0046】
図8の▲1▼は、図6の画像データ中におけるX方向中心軸上の輝度分布を示す。同様に、図9の▲1▼は、図6の画像データ中におけるY方向中心軸上の輝度分布を示す。これら各グラフから明らかなように、光学的欠陥要因として抽出をする必要がない非球面レンズ故の高輝度部分δ,εは、全体としての空間周波数が低い。また、光学的欠陥要因として抽出すべきジェティング等に起因する粒状の高輝度部分θは、上記高輝度部分δ,εよりも空間周波数が高い。また、光学的欠陥要因として抽出をする必要がない加工痕によるノイズ(以下、「引き目ノイズ」という)ηは、光学的欠陥要因に対応する上記高輝度部分θよりも空間周波数が更に高く、他の要因による高周波ノイズと同程度となっている(なお、この引き目ノイズηは、X方向よりもY方向において大きく強調される(振幅が大きくなる)傾向がある。)。そして、Y方向においては、引き目ノイズηの振幅は、ジェティング等に起因する上記粒状の高輝度部分θの振幅と同程度になる場合もある。
【0047】
ここで、非球面故の高輝度部分δ,εを光学的欠陥要因として抽出することなくジェティング等に起因する粒状高輝度部分θのみを抽出するためには、以下の手法によって行う。
【0048】
即ち、先ず、図6の輝度データに対して、ジェティング等に起因する粒状高輝度部分θの空間周波数よりも低い空間周波数のみを残すように平滑化を行う。この平滑化は、コンボリューションサイズ2の移動平均法によって行われる。
【0049】
この移動平均法による平滑化の概略を、以下に説明する。図7は、画像データを構成する各画素からなるデータマトリックス(m×n)を表す。このデータマトリックス上において、最初に、縦k個×横k個の画素からなる領域の輝度平均を算出して、この算出結果を当該領域の左上隅に位置する画素aの新たな輝度とし、次に、領域を画素一個分右にずらして新たに輝度平均を算出して、これを画素aに隣接する画素bの新たな輝度とするのである。上述したコンボリューションサイズとは、輝度平均算出対象の領域を構成する縦横の画素数kのことである。従って、図7のデータマトリックスに対してコンボリューションサイズ2の平滑化を、行う場合には、先ず、P32・132の256画素の輝度平均を算出して、画素P11の新たな輝度とし、次に、P32・233の256画素の輝度平均を算出して、画素P12の新たな輝度とし、以後、同様の演算を輝度平均算出対象領域がPmnに達するまで繰り返す。そして、最後に、画像の中心位置を調整するための補正を行う。このような平滑化を行うと、元の画像データから高周波成分が除去されて輝度分布が平滑化される。そして、この時除去される高周波成分の周波数の下限値は、コンボリューションサイズが大きくなる程低くなる。即ち、上述のコンボリューションサイズ2の場合には、非球面故の高輝度部分δ,εの空間周波数よりも高い成分が除去されるのである。
【0050】
図6の輝度データに対してコンボリューションサイズ2の平滑化を行った場合におけるX方向中心軸上の輝度分布を図8の▲2▼に示し、Y方向中心軸上の輝度分布を図9の▲2▼に示す。次に、この平滑化によって得られた画像データ全体を高輝度ノイズ成分の振幅分よりも大きく高輝度方向にシフトすることによって、閾値データを生成する。この閾値データにおけるX方向中心軸上の輝度分布を図8の▲3▼に示し、Y方向中心軸上の輝度分布を図9の▲3▼に示す。そして、図6の画像データを構成する各画素毎に、閾値データ中の対応する位置の画素よりも輝度が大きいか小さいかを比較し(動的2値化)、その輝度が閾値データの対応箇所よりも大きい画素のみを抽出する。これによって、非球面故の低周波成分に影響されることなく、光学的欠陥要因を抽出することができるのである(なお、図6の輝度データに対してそれ以上大きなコンボリューションサイズにて平滑化が行われると、非球面故の高輝度部分δ,εさえもが除去されてしまうので、動的2値化ができなくなってしまう。)。
【0051】
しかしながら、このような抽出手法によると、上述したように、ジェッティング等に起因する高輝度部分θと同振幅の引き目ノイズηが生じた場合には、引き目ノイズηから区別してジェティング等に起因する高輝度部分θのみを抽出することはできない。なお、引き目ノイズηの抽出を避けるために、閾値データを更に高輝度方向にシフトしてしまうと、ジェティング等に起因する高輝度部分θ自体が抽出できなくなってしまう。
【0052】
そのため、引き目ノイズη等の高周波ノイズを有効に除去することが必要となる。ここで、着目すべき事は、加工痕の画像は、光学的欠陥を示す画像よりも空間周波数が高いという特性である。そこで、この特性を利用して、微分処理及び合成処理がなされた画像データ(図6参照)そのものに対して、コンボリューションサイズ2よりも小さいコンボリューションサイズにて平滑化を行う。
【0053】
図10は、X方向中心軸上における図6の輝度データの輝度分布▲1▼,及び、これに対してコンボリューションサイズ2の平滑化がなされた場合における輝度分布▲4▼を、座標位置x150〜x380の範囲で示すグラフである。同様に、図11は、X方向中心軸上における図6の輝度データの輝度分布▲1▼,及び、これに対してコンボリューションサイズ2の平滑化がなされた場合における輝度分布▲5▼を、座標位置x150〜x380の範囲で示すグラフである。同様に、図12は、X方向中心軸上における図6の輝度データの輝度分布▲1▼,及び、これに対してコンボリューションサイズ2の平滑化がなされた場合における輝度分布▲6▼を、座標位置x150〜x380の範囲で示すグラフである。また、図13は、Y方向中心軸上における図6の輝度データの輝度分布▲1▼,及び、これに対してコンボリューションサイズ2の平滑化がなされた場合における輝度分布▲4▼を、座標位置y100〜x330の範囲で示すグラフである。同様に、図14は、Y方向中心軸上における図6の輝度データの輝度分布▲1▼,及び、これに対してコンボリューションサイズ2の平滑化がなされた場合における輝度分布▲5▼を、座標位置y100〜x330の範囲で示すグラフである。同様に、図15は、Y方向中心軸上における図6の輝度データの輝度分布▲1▼,及び、これに対してコンボリューションサイズ2の平滑化がなされた場合における輝度分布▲6▼を、座標位置y100〜x330の範囲で示すグラフである。
これらの各グラフから明らかなように、コンボリューションサイズが2までであれば、平滑化がなされても、光学的欠陥に起因する高輝度部分θの振幅は殆ど影響を受けない。但し、コンボリューションサイズ2の平滑化がなされた場合には、引き目ノイズηの振幅は半分程度にしか平滑化されない。一方、コンボリューションサイズ2の平滑化がなされた場合には、光学的欠陥に起因する高輝度部分θの振幅が殆ど影響を受けないのに対して、引き目ノイズηはほぼ完全に除去される。即ち、コンボリューションサイズ2の平滑化によると、光学的欠陥に起因する高輝度部分θの空間周波数よりも高い周波数成分を除去することができるのである。
【0054】
従って、X方向中心軸上の輝度分布を示す図16及びY方向中心軸上の輝度分布を示す図17に示されるように、微分処理及び合成処理がなされた画像データ▲1▼に対して、先ず、コンボリューションサイズ2にて平滑化を行って引き目ノイズη等の高周波ノイズを除去した抽出対象画像データ▲5▼を生成するとともに、コンボリューションサイズ2にて平滑化を行って非球面故の成分のみを残した画像データ▲2▼を生成する。次に、この画像データ▲2▼を、平滑化によって振幅がなまった分よりも多少余裕を含めた量(輝度30)だけ高輝度側(輝度変化量が大きいことを示す側)へシフトさせて、閾値データ▲3▼を生成する。そして、抽出対象画像データ▲5▼を構成する各画素の輝度について、閾値データ▲3▼中における同位置の画素の輝度と比較をし、それよりも大きい場合に限って抽出を行う。その結果、光学的欠陥に起因する高輝度部分θのみが抽出されるのである。
<画像処理>
次に、検査対象光学部材が良品であるか不良品であるかの判定を行うために画像処理部14において実行される画像処理の内容を、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
この画像処理は、画像処理部14に接続された図示せぬ検査開始ボタンを押下されることによりスタートする。そして、S01乃至S05のループ処理が実行される。
【0056】
このループ処理に入って最初のS01では、画像処理14は、撮像素子9から入力された画像データを構成する各画素(ピクセル)の輝度を256階調の数値情報に変換し、夫々第1メモリ14aに書き込む。
【0057】
次のS02では、画像処理部14は、第1メモリ14aに書き込まれた各数値情報を順番に走査して、微分処理を行う(輝度分布データ算出手段に相当)。即ち、画像中における左上の画素から右下の画素に向けて順番に各画素の数値をチェックする。そして、チェック対象画素の数値とこれの左隣の画素の数値及び上側に隣接する画素の数値とを比較し、それら数値の差の絶対値を、このチェック対象画素の微分値[0〜255]とする。このようにして微分値に変換された画像データ(画像中の輝度変化量分布を示す輝度変化量分布データ)においては、検査対象光学部材Aの光学的欠陥がある部分及び加工痕の輪郭,焦点距離が変化している部分,及びナイフエッジ6aの縁だけが濃度の高い画像となる。
【0058】
次のS03では、画像処理部14は、画像合成処理を実行する(合成手段に相当)。即ち、S02において得られた各微分値を、第2メモリ14bに書き込む。この際、前回のループ処理でのS03の結果として、前回の画像データに対する微分値が第2メモリ14bに書き込まれている場合には、画像処理部14は、第2メモリ14bに既に書き込まれている各微分値を取り出し、今回のループ処理でのS02において得られた各微分値を加算した後に、第2メモリ14bに上書きする。
【0059】
次のS04では、画像処理部14は、処理を開始した後に入力された画像データの数が16画像に達したか否かをチェックする。そして、未だ入力された画像データの数が16画像に達していない場合には、S05において、ナイフエッジ回転制御部15に対してナイフエッジ6aを22.5度回転させる命令をする(回転手段に相当)。この回転後の画像データが撮像素子9から入力された場合には、処理をS01に戻し、この新たな画像データに対する処理を実行する。
【0060】
以上のようにループ処理を繰り返した結果、入力された画像データの数が16画像に達すると、S04からこのループ処理を抜けて、処理はS06に進む。
S06では、画像処理部14は、その時点において第2メモリ14bに格納されている画像データ▲1▼(微分処理及び合成処理がなされた画像データ)を読み出し、この読み出した画像データに対してコンボリューションサイズ2の平滑化を行う(高周波成分を除去する第1の平滑化,第1の平滑化手段に相当)。
【0061】
次のS07では、画像処理部14は、S06の平滑化の結果得られた抽出対象画像データ▲5▼を第3メモリ14cに格納する。
次のS08では、画像処理部14は、その時点において第2メモリ14bに格納されている画像データ▲1▼(微分処理及び合成処理がなされた画像データ)を読み出し、この読み出した画像データに対してコンボリューションサイズ2の平滑化を行う(低周波成分を抽出する第2の平滑化,第2の平滑化手段に相当)。
【0062】
次のS09では、画像処理部14は、S08の平滑化の結果得られた画像データ(2)を第4メモリ14に格納する。次のS10では、画像処理部14は、S09の結果第4メモリ14に格納されている画像データ(2)の全画素の値を、夫々[+30]だけ増加させる。これにより閾値データ(3)が生成される(輝度変化量分布データ全体を輝度変化量が大きいことを示す側へシフトさせるシフト手段に相当)。
【0063】
次のS11では、画像処理部14は、画像間演算を実行する。即ち、第3メモリ14cに格納されている抽出対象画像データ(5)を構成する各画素の値から、第4メモリ14dに格納されている閾値データ(3)中の対応する(即ち、同じ位置に存する)画素の値を減算する(シフト手段によってシフトされた輝度変化量分布データと第の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データとを比較する比較手段に相当)。
【0064】
次のS12では、画像処理部14は、検査対象領域抽出処理を実行する。図18は、このS12において実行される検査対象領域抽出処理サブルーチンの内容を示すフローチャートである。このサブルーチンに入って最初のS21では、画像処理部14は、二値化処理を行う。この二値化処理とは、第3メモリ14c内の画像データの各画素に対応する数値情報が所定の閾値を超えていればその数値情報を255(白)に置き換え、超えていなければ0(黒)に置き換える処理である。この閾値は、検査対象レンズAの外縁αが途切れることなく白(255)の閉曲線として残し得るような値に、設定されている。
【0065】
次のS22では、画像処理部14は、閉領域抽出処理を実行する。この閉領域抽出処理とは、閉じた白線によって囲まれている領域のみを抽出する処理である。具体的には、S21により二値化された画像データを構成する黒い画素[0]のうち、白い画素[255]によって取り囲まれているものを閉領域内の画素とみなす。そして、この閉領域内のものと見なされた全画素の数値を255とし、それ以外の全画素の数値を0とする。
【0066】
次のS23では、画像処理部14は、穴埋め処理を実行する。この穴埋め処理とは、白い画素[255]の中に残された黒い画素[0]を消去するための処理である。具体的には、S21によって得られた画像データを構成する黒い画素[0]のうち、白い画素[255]によって取り囲まれているものの数値を255とする。
【0067】
次のS24では、画像処理部14は、領域選択処理を実行する。この領域選択処理とは、本来必要とされる領域のみを有効とするとともに、ゲートの一部等に基づいて抽出されたそれ以外の閉領域を削除するための処理である。具体的には、画像処理部14は、S23によって得られた画像データに含まれる各閉領域のうち、画面中央に位置する閉領域はそのままとし、それ以外の全閉領域を構成する全画素の数値を0とする。この領域選択処理の結果得られる画像データのことを、以下「マスク画像」という。
【0068】
次のS25では、画像処理部41は、抽出演算処理を実行する。即ち、マスク画像の輝度を反転させ(輝度[255]の画素を輝度[0]とし、輝度[0]の画素を輝度[255]とする。)、第3メモリ14c内の画像データの各画素の値(輝度)から、反転後のマスク画像中の対応する画素の値(輝度)を減算する。この抽出演算処理の結果、第3メモリ14c中の画像データのうち、元のマスク画像中の白い画素[255]の領域に対応する部分のみがそのまま残され、他の部分の画素の数値が全て[0]となる。
【0069】
以上により、良品又は不良品の判定に用いられる画像データが得られるので、このサブルーチンを終了して、図3のメインルーチンに処理が戻される。
次のS13では、画像処理部14は、S12での検査対象領域抽出処理結果に基づいて、動的2値化処理を行う。即ち、画像演算結果が正の極性をとる場合には、その画素の値を255に置き換え、画像演算結果が0又は負の極性をとる場合には、その画素の値を0に置き換える。
【0070】
次のS14では、画像処理部14は、合否判定処理を実行する。即ち、S13での2値化の結果得られた画素から構成される画像の図形的特徴量(白い部分[輝度値が255である部分]の面積,最大幅,重心,フィレ径,等)を算出する。例えば、白い[輝度値が255である]画素の数を数えて面積量とする(抽出手段によって抽出された部位を数値化する数値化手段に相当)。そして、算出された各図形的特徴量を、予め設定されている各合否判定基準値と比較し、対応する合否判定基準値を超過している図形的特徴量が一つでもあれば不合格(不良品)と判定、全ての図形的特徴量が夫々に対応する合否判定基準値内に収まっていれば合格(良品)と判定する(数値化手段によって数値化された数値が所定の判定基準値を超えたか否かを判定する判定手段に相当)。なお、判定に用いられる図形的特徴量のうちどれを合否判定に用いるかは、検査対象光学部材の種類に依って定まる。この合否判定処理が完了すると、この画像処理を終了する。
【0071】
なお、上述の画像処理におけるS03で実行される画像合成処理としては、MAX演算を行っても良い。上述の加算処理においては合成対象画像データ間の対応する画素の数値(輝度)同士を加算するのに対し、MAX演算では、合成対象画像データ間の対応する画素の数値(輝度)のうち、大きい方の値を演算結果として採用する。このようなMAX演算では、合成される各画像データの輝度が高い場合でも、合成された画像の輝度が飽和することがない。よって、このような場合でも正確な検査ができるという利点を生じる。
<光学部材検査装置による検査手順>
本実施形態による光学部材検査装置によって光学部材Aを検査する時には、検査者は、検査対象光学部材Aを、図示せぬホルダに固着して光軸lと同軸に配置する。なお、検査対象光学部材Aが負レンズである場合には、検査対象光学部材Aと照明ユニット4との間に、補正レンズを挿入する。
【0072】
検査者は、次に、照明ランプ1を点灯して、遮光板6のナイフエッジ6aを照明させる。すると、表示装置10上に、撮像素子9によって撮像された映像が映し出される。
【0073】
検査者は、表示装置10に映し出される映像を見ながら、照明ユニット4を移動させる。そして、図4(a)又は(b)のように、検査対象光学部材Aの外縁αの内側において、検査対象光学部材Aの外縁αの外側に見えるナイフエッジβと同じ方向にナイフエッジγが見える時には、照明ユニット4が検査対象光学部材Aに近過ぎる場合であるので、照明ユニット4を検査対象光学部材Aから遠ざける。逆に、図4(d)又は(e)のように、検査対象光学部材Aの外縁αの内側において、検査対象光学部材Aの外縁αの外側に見えるナイフエッジβと逆の方向にナイフエッジγが見える時には、照明ユニット4が検査対象光学部材Aから遠すぎる場合であるので、照明ユニット4を検査対象光学部材Aに近付ける。このような照明ユニット4の進退調整を行った結果、図4(c)のように、ナイフエッジγが検査対象光学部材Aの外縁α内の大部分において消えた時には、照明ユニット4が適正位置にある場合であるので、調整を停止する。
【0074】
次に、検査者は、図示せぬ検査開始ボタンを押下して、図3の画像処理を開始させる。すると、ナイフエッジ回転制御部15によってナイフエッジ6aが22.5度づつ回転駆動されるとともに(S05)、各回転位置において検査対象光学素子Aを通過した光によって形成される画像が、撮像装置7によって撮像される(S01)。画像処理部14は、撮像した各画像の濃淡変化箇所を微分処理によって強調し(S02)、一回転分にわたって加算する(S03,S04)。その結果、検査対象光学部材のいかなる方向における欠陥成分(屈折率[屈折力]異常,表面欠陥)に関しても、それらが一つの画像データにまとめ上げられる。
【0075】
画像処理部14は、この画像データに対してコンボリューションサイズ2の平滑化を行って、引き目ノイズ等の高周波ノイズを除去して抽出対象画像データを生成するとともに(S06)、コンボリューションサイズ2の平滑化を行った後に高輝度方向にシフトさせて、検査対象光学部材の面形状(球面又は非球面)に起因する成分のみを反映させた閾値データを作成する(S08,S10)。
【0076】
そして、画像処理部14は、抽出対象画像データから閾値データを減算するとともに(S11)、減算結果として得られた画像データから検査対象光学部材の画像に対応する部分のみを抽出し(S12)、動的二値化処理を実行することにより(S13)、光学的欠陥が生じている部分のみを抽出する。そして、光学的欠陥部分の面積や最大幅等が数値化され、一定の判断基準値と比較され、この比較結果に応じて良品であるか不良品であるかの判定が客観的になされるのである(S14)。
【0077】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明の光学部材検査装置及び光学部材検査方法によれば、検査対象の光学部材を撮像することによって得られた画像に対して画像処理を施すことにより、加工痕に起因する情報を除去して光学的欠陥に起因する情報のみを抽出して、この情報に基づいた正確な良否判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による光学部材検査装置の概略図
【図2】遮光板の回転状態を示す斜視図
【図3】図1の画像処理部において実行される画像処理の内容を示すフローチャート
【図4】図1におけるナイフエッジユニットの移動調整時における表示装置上の画像を示す図
【図5】ヒケを有する光学部材を検査した場合における表示装置上の画像を示す図
【図6】図1における第2メモリに書き込まれた微分処理及び合成処理がなされた画像データを示す図
【図7】移動平均法による平滑化の説明図
【図8】図6の画像データ,コンボリューションサイズ2の平滑化によって得られた画像データ,及び閾値データのX方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図9】図6の画像データ,コンボリューションサイズ2の平滑化によって得られた画像データ,及び閾値データのY方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図10】図6の画像データ,及びコンボリューションサイズ2の平滑化によって得られた画像データのX方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図11】図6の画像データ,及びコンボリューションサイズ2の平滑化によって得られた画像データのX方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図12】図6の画像データ,及びコンボリューションサイズ2の平滑化によって得られた画像データのX方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図13】図6の画像データ,及びコンボリューションサイズ2の平滑化によって得られた画像データのY方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図14】図6の画像データ,及びコンボリューションサイズ2の平滑化によって得られた画像データのY方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図15】図6の画像データ,及びコンボリューションサイズ2の平滑化によって得られた画像データのY方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図16】図6の画像データ,抽出対象画像データ,及び閾値データのX方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図17】図6の画像データ,抽出対象画像データ,及び閾値データのY方向中心軸上における輝度分布を示すグラフ
【図18】図3のS12にて実行される検査対象領域抽出処理サブルーチンを示すフローチャート
【符号の説明】
4 照明ユニット
5 拡散板
6 遮光板
7 撮像装置
8 撮像レンズ
9 撮像素子
13 モータ
14 画像処理部
15 ナイフエッジ回転制御部
A 検査対象光学部材

Claims (12)

  1. 光学部材の光学的欠陥を検出する光学部材検査装置であって、
    照明光によって照明される拡散板と、
    前記光学部材を含む光学系の焦点位置に配置されるとともに、前記拡散板によって拡散された光を部分的に透過させるように前記拡散板に接している遮光手段と、
    前記光学系を透過した光を撮像する撮像手段と、
    この撮像手段によって撮像された画像に基づいて、その画像中の輝度変化量分布を示す輝度変化量分布データを算出する輝度変化量分布データ算出手段と、
    この輝度変化量分布データ算出手段によって算出された輝度変化量分布データに対して高周波成分を除去する平滑化を行う第1の平滑化手段と、
    前記輝度変化量分布データ算出手段によって算出された輝度変化量分布データに対して低周波成分のみを抽出する平滑化を行う第2の平滑化手段と、
    前記第1の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データと前記第2の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データとを比較し、前者が後者よりも所定量以上上回っている部位を抽出する抽出手段と
    を備えたことを特徴とする光学部材検査装置。
  2. 前記遮光手段は、直線状の境界線によって夫々分けられた前記光を部分的に透過させる部分と前記光を部分的に遮光する部分とからなることを特徴とする請求項1記載の光学部材検査装置。
  3. 前記遮光手段を前記拡散板との接触面の面内において前記直線状の境界線に接する回転軸を中心に回転させる回転手段を
    更に備えることを特徴とする請求項2記載の光学部材検査装置。
  4. 前記光学部材を含む光学系の光軸は、前記遮光手段の回転軸と一致していることを特徴とする請求項3記載の光学部材検査装置。
  5. 前記撮像手段は、前記回転手段により回転させられた前記遮光手段の各回転位置において前記撮像を行うとともに、
    前記遮光手段が一回転する間に前記撮像手段によって撮像された各画像に基づいて前記輝度変化量分布データ算出手段が夫々算出した複数の輝度変化量分布データを、前記各平滑化に先立って相互に合成する合成手段を更に備えたことを特徴する請求項4記載の光学部材検査装置。
  6. 前記輝度変化量分布データ算出手段は、前記撮像装置によって撮像された画像を多数の画素に分け、隣接する各画素の輝度同士を順次比較して微分処理し、この微分処理の結果得られたデータを前記輝度変化量分布データとする
    ことを特徴とする請求項1又は5記載の光学部材検査装置。
  7. 前記抽出手段は、
    前記第2の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データ全体を、輝度変化量が大きいことを示す側へシフトさせるシフト手段と、
    このシフト手段によってシフトされた輝度変化量分布データと前記第の平滑化手段によって平滑化された輝度変化量分布データとを比較する比較手段とを有することを特徴とする請求項1記載の光学部材検査装置。
  8. 記抽出手段によって抽出された部位数値化する数値化手段と
    この数値化手段によって数値化された数値が所定の判定基準値を超えたか否かを判定する判定手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の光学部材検査装置。
  9. 前記数値化手段は、前記光学部材の前記抽出手段によって抽出された部位の面積を計って前記数値とすることを特徴とする請求項記載の光学部材検査装置。
  10. 光学部材の光学的欠陥を検出する光学部材検査方法であって、
    拡散板から発散され、遮光手段によってその一部が遮光され、その焦点位置が前記遮光手段の位置と略一致するように配置された前記光学部材を含む光学系を透過した光を撮像し、
    この撮像によって得られた画像に基づいて、その画像中の輝度変化量分布を示す輝度変化量分布データを算出し、
    算出された輝度変化量分布データに対して高周波ノイズを除去する第1の平滑化を行い、
    前記算出された輝度変化量分布データに対して低周波成分を抽出する第2の平滑化を行い、
    前記第1の平滑化がなされた輝度変化量分布データと前記第2の平滑化がなされた輝度変化量分布データとを比較し、前者が後者よりも所定量以上上回っている部位を抽出する
    ことを特徴とする光学部材検査方法。
  11. 前記抽出された部位を数値化し、
    数値化された数値が所定の判定基準値を超えたか否かを判定する
    ことを特徴とする請求項10記載の光学部材検査方法。
  12. 前記第1の平滑化手段は、前記輝度変化量分布データ算出手段によって算出された輝度変化量分布データから、光学部材表面の加工痕に対応する空間周波数以上の高周波成分を除去し、
    前記第2の平滑化手段は、前記輝度変化量分布データ算出手段によって算出された輝度変化量分布データから、光学部材の表面形状に対応する空間周波数以下の低周波成分のみを抽出する
    ことを特徴とする請求項1記載の光学部材検査装置。
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