JP3586084B2 - 周波数制御装置及び受信装置ならびに通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直交周波数分割多重された多重化信号に周波数同期するための周波数制御装置および受信装置ならびに通信装置に係り、特に、サブキャリヤーの周波数間隔の半分以上の偏移を有する多重化信号に周波数同期することに好適な、周波数制御装置および受信装置ならびに通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディジタル通信の変調方式として、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;OFDM。以下、OFDMという。)方式の実用化が進められている。
【0003】
OFDMが適用される方式として、例えば、EUREKA−147 SYSTEMが挙げられる。これは、一般に、DAB(Digital Audio Broadcasting)、ユーレカ147DABシステムなどと呼ばれている。以下、ユーレカ147DABシステムという。ユーレカ147DABシステムは、1994年11月にITU−RでSystem−Aとして認められ、国際規格になっている。この規格は、「ETS 300401」として発行されている。
【0004】
OFDM方式では、互いに直交する複数のサブキャリヤーに分割多重化してデーターが伝送される。各サブキャリヤーの周波数は、ベースバンドにおいて、ある基本周波数の整数倍となるように選ばれる。基本周波数の1周期を有効シンボル期間とすると、相異なるサブキャリヤー同士の積は、有効シンボル期間における積分が0となる。これをサブキャリヤー同士が直交するという。
【0005】
OFDM方式では、送信側と受信側とに周波数差が生じると、復調に際して、他のサブキャリヤーとの直交性が崩れる。これは、干渉により復調されるデーターに誤りが生じる原因となる。上記周波数差が生じる原因としては、例えば、送信側、受信側のそれぞれにおける基準発振器の発振周波数の誤差や変動、送信側と受信側との相対運動によるドップラーシフトなどが挙げられる。
【0006】
周波数差が生じた場合でも誤りが少ない復調データーを得るために、周波数同期方式が検討されている。例えば、「OFDMにおけるガード期間を利用した新しい周波数同期方式の検討」(テレビジョン学会技術報告 Vol.19,No.38,pp.13〜18 )に記載される周波数同期方式がある。この周波数同期方式は、有効シンボル期間の信号波形が巡回的に繰り返される、ガード期間(Guard Interval)を利用している。
【0007】
すなわち、受信信号を直交検波回路によりベースバンドに変換し、さらにFFT回路により各キャリヤー成分を復調する。図8の(1)は、直交検波器の同相軸出力を示す。ここで、n番目のOFDMシンボルは、ガード部Gn(サンプル数Ng)と、有効シンボル部Sn(サンプル数Ns)とで構成され、ガード期間の信号Gnには、有効シンボルの一部であるGn’が複写されている。図8の(2)は、図8の(1)の信号を有効シンボル期間だけ遅延したものである。図8の(3)は、(1)と(2)との信号を乗算して、ガード期間幅(Ngサンプル)の移動平均を求めることにより、2つの信号の相関をもとめた結果である。GnとGn’とは同じ信号波形であるので、図8の(3)に示すように相関出力は、シンボルの境界でピークを示す。
【0008】
同相軸データーと、有効シンボル期間だけ遅延された同相軸データーとの相関のピーク値をSiiとし、同相軸データーと、有効シンボル期間だけ遅延された直交軸データーとの相関のピーク値をSiqとすると、
周波数誤差δは、
【0009】
【数1】
【0010】
により求めることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した逆正接関数を用いて周波数誤差を求める方法では、サブキャリヤー間隔で正規化された周波数オフセットと、上述のようにして求められた誤差信号δとの関係は、図9に示すようにサブキャリヤー間隔を1周期とする周期を有している。このため、誤差信号δに対応する周波数オフセットが、どの周期にあるかは区別されない。例えば、図9において、δ1の誤差信号が得られた場合、点Aの他に、点B、点Cなども対応する。従って、真の正規化周波数オフセットが、OAであっても、これを、オフセットOB、OCなどと区別することはできない。このため、サブキャリヤー間隔の1/2以上の偏差が生じ得る場合には、その周波数オフセットを特定することは困難であり、オフセットの向きを逆向きに誤ることもあり得る。
【0012】
ところが、一般に、OFDMでは、サブキャリヤー同士の間隔は狭く設定されるため、周波数差をこの1/2以下に抑えることは困難である。
【0013】
例えば、ユーレカ147DABシステムのモードIでは、中心周波数は、230MHz、サブキャリヤー間隔は、1kHzと定められている。すなわち、サブキャリヤー間隔の1/2に相当する周波数は、500Hzであり、これは、約2.2PPMの周波数精度となる。しかし、送信周波数と受信周波数における周波数差を2.2PPM以内に抑えることは容易ではない。この精度を達成するには、例えば、発振器のコスト増を伴い、実際的ではない。
【0014】
また、送信側と受信側との相対距離が変化する場合、例えば、移動体に設置された受信装置における放送の受信などの場合は、ドップラー効果による周波数の偏移(ドップラーシフト)が生ずる。従って、送信側、受信側との相対速度が、上記ドップラーシフトが、サブキャリヤー間隔の1/2以内となる場合に制限されるという問題がある。
【0015】
また、上記の方法では、適用対象が、ガード期間を含むOFDM信号に限られ、ガード期間が設けられていない場合は、周波数偏移を検知することが困難であるという問題がある。
【0016】
本発明は、OFDM信号の周波数偏差が、サブキャリヤー間隔の1/2以上あっても、この偏移量を特定し、周波数同期することができる周波数制御装置を提供することを第1の目的とする。
【0017】
また、ガード期間が含まれないOFDM信号であっても、その周波数偏移を検知し、周波数同期することができる周波数制御装置を提供することを第2の目的とする。
【0018】
送信側と受信側とで相対距離が変化し、サブキャリヤー間隔の1/2以上のドップラーシフトが生ずる場合に好適な、受信装置、通信装置を提供することを第3の目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的および第2の目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、
複数のサブキャリアーに直交周波数分割多重された多重化信号に周波数同期するための周波数制御装置において、
多重化信号を入力し、再生キャリアーを生成し、該再生キャリアーを用いて前記多重化信号を直交検波して、互いに直交する第1の検波軸信号および第2の検波軸信号を得る直交検波手段と、
前記2つの検波軸信号のそれぞれの時間軸波形を予め定められた標本化周波数でそれぞれ標本化し、かつ、これら標本化されたデーターを離散フーリエ変換して、周波数領域に分布する複数のメトリックスを求める離散フーリエ変換手段と、
前記離散フーリエ変換手段が求めたメトリックスの分布に予め指定された周波数依存性を有するように、前記多重化信号のパワー分布を変換するパワー変換手段と、
前記パワー変換手段がパワー分布を変換した多重化信号について、予め定められた基準周波数より高い周波数のメトリックスについてのパワーの総和と前記基準周波数より低い周波数のメトリックスについてのパワーの総和の差を演算し当該差が小さくなるよう前記再生キャリアーの周波数を変えるよう前記直交検波手段を制御する演算制御手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
上記第3の目的を達成するために、本発明の第2の態様によれば、
直交周波数分割多重された多重化信号を受信するための受信装置において、
多重化信号を含む高周波信号を入力し、当該高周波信号から予め定められた周波数帯域を選択するバンドパスフィルター部と、
前記バンドパスフィルター部により周波数帯域を選択した信号を中間周波数に変換する周波数変換部と、
前記周波数変換部により周波数変換された信号を再生キャリアーを用いて直交検波し、離散フーリエ変換すると共に、前記再生キャリアーの周波数を制御して前記多重化信号に周波数同期させる周波数制御部と、
前記周波数制御部により離散フーリエ変換されたデーターを復調する復調部と、
前記復調部により復調された信号を出力する出力部とを有し、
前記周波数制御部は、第1の態様における周波数制御装置を用いて構成されることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、
直交周波数分割多重された多重化信号を用いて通信するための通信装置において、
入力される信号が示すデーターで、搬送波を直交周波数分割多重変調して多重化信号を送出する送信部と、
受け付けた信号を直交周波数分割多重復調して変調データーを検出し、変調データーが示す信号を出力する受信部を有し、
前記受信部は、上記第2の態様における受信装置を用いて構成されることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
先ず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0024】
図1において、周波数制御装置1000は、直交検波部1100と、離散フーリエ変換部1200と、周波数偏差検知部1300とを有して構成される。
【0025】
上記直交検波部1100は、OFDM信号を受け付け、再生キャリヤーを用いて、互いに直交する2つの検波軸信号を得るためのものである。2つの検波軸は、例えば、受け付けた信号と同相の同相軸(I相軸)、および、受け付けた信号に直交する直交軸(Q相軸)に選ぶことができる。なお、2つの検波軸は、互いに直交する関係にあれば、これらの位相に限らない。例えば、受けた信号に対して、+45度の位相の検波軸、および、−45度の位相の検波軸に選んでもよい。
【0026】
直交検波部1100は、例えば、受け付けた信号を2つに分配するための分配器1150と、90度の位相差がある2つの再生キャリヤーX,Yを発振するための再生キャリヤー生成器1119と、上記分配された2つの信号に、上記再生キャリヤーXおよび信号Yをそれぞれ乗算するための2つの乗算器1107A,1107Bとを用いて構成することができる。
【0027】
上記再生キャリヤー生成器1119は、例えば、発振周波数を変更可能な周波数可変発振器1160と、発振された信号を2つに分配するための分岐回路1180と、分配された信号の一方に90度の位相遅延を与えるための移相器1170とを用いて構成することができる。このように構成された再生キャリヤー生成器1119を用いて、再生キャリヤーを生成することができる。また、上記周波数可変発振器1160は、上記周波数偏移検知部1300から与えられるAFC信号に従って、その発振周波数を変化させることができる。
【0028】
上記離散フーリエ変換部1200は、OFDM信号に含まれるサブキャリヤー数より多い数のサンプリングポイントで、上記I相信号およびQ相信号をそれぞれサンプリングし、これらを離散フーリエ変換するためのものである。上記離散フーリエ変換部1200は、例えば、2つのA/D(Analog to Digital)変換器1208A,1208Bと、離散フーリエ変換処理を実行するためのDFT(Discrete Fourier Transform;離散フーリエ変換)回路1209とを有して構成される。DFT回路1209において、離散フーリエ変換を実行するための計算のアルゴリズムとしては、例えば、DFTの定義式に従って計算を実行してもよいし、高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)などを用いてもよい。FFTを用いて計算することにより、DFTの計算を高速に行うことができる。DFT回路1209は、例えば、専用のハードロジックで構成される。なお、DFT処理を実行するためのプログラムを搭載した汎用の演算装置を用いて構成してもよい。
【0029】
上記周波数偏差検知部1300は、上記離散フーリエ変換部1200で得られたメトリックスを受け付け、受け付けたOFDM信号との周波数差を求め、求めた周波数差を小さくするように周波数同期を行うための演算制御を行うためのものである。上記周波数偏差検知部1300は、例えば、周波数差を求める演算処理を行うための演算処理部1322と、演算処理部1322が求めた周波数差に応じたAFC(automatic frequency control;自動周波数制御)信号を生成するための制御信号生成部1350とを有して構成される。
【0030】
上記制御信号生成部1350は、例えば、演算結果に応じた電圧を有する信号を生成するD/A(digital to analog)変換器を用いることができる。また、上記直交検波部1100における再生キャリヤー生成器1119として数値制御発振器が用いられている場合には、制御信号生成部1350を省略し演算結果に示す信号を直接与えてもよい。このようにして、上記演算結果に応じた周波数の変化量を指示するAFC信号を生成することができる。
【0031】
なお、AFC信号が示す変化量の大きさを一定値とし、変化の有無、および、その向きを上記演算結果に応じて変更してもよい。変化量の大きさを一定値とすることにより、信号生成部1350、および、直交検波部1100における再生キャリヤー生成器1119を簡易に構成することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、直交検波部1100における再生キャリヤーの周波数を変化させる態様について説明したが、周波数を変化させる態様はこれに限らない。例えば、受け付けられたOFDM信号を中間周波数に変換するための、周波数変換部3000が、直交検波部1100の前段に設けられる場合、AFC信号を周波数変換部に与え、周波数変換部で周波数が変換される変換量を変化させることができる。
【0033】
次に、図1および図2を参照して、上述のように構成される周波数制御装置の動作について説明する。
【0034】
まず、図2を参照して、周波数制御装置に与えられるOFDM信号について説明する。
【0035】
図2の(a)に示すように、OFDM信号のベースバンドは、互いに周波数が異なる複数のサブキャリヤーが重畳された時間軸波形となる。図2の(a)には、24のサブキャリヤーに分離多重化されたOFDM信号が描かれているが、サブキャリヤーの数がこれに限らないことは勿論である。
【0036】
上記OFDM信号のベースバンドは、周波数領域で示すと、図2の(b)に示すスペクトルとなる。これは、図2の(a)に示す時間軸波形のフーリエ変換に相当する。図2の(b)において、複数のサブキャリヤーが周波数軸上に並び、各サブキャリヤーは、変調による側波帯成分を含んでいる。
【0037】
次に、図1を参照して、本実施の形態の周波数制御装置の動作について説明する。
【0038】
先ず、直交検波部1100において、OFDM信号が受け付けられ、互いに直交するI相軸信号およびQ相軸信号が取得される。
【0039】
そして、離散フーリエ変換部1200において、上記2つの検波軸の信号(I相軸信号、Q相軸信号)が、それぞれ時間軸波形をサンプリング(標本化)される。本実施の形態における離散フーリエ変換部1200(図1参照)では、サブキャリヤー数より多いサンプリングポイントでサンプリングし、サンプリングされたデーターについて離散フーリエ変換の計算を行っている。
【0040】
すなわち、サンプリングされたI相軸データーおよびQ相軸データーが、複素量として(例えば、I相軸信号の標本値を実部、Q相軸信号の標本値を虚部として)離散フーリエ変換される。離散フーリエ変換により、メトリックス(複素計量)Zが、サンプリングポイント(標本化点)の数NSに相当する数の周波数スロットのそれぞれに対応して求められる。上記NS個のメトリックスZのうちには、サブキャリヤーの数NCに相当する有効メトリックスに加えて、サブキャリヤーの数をサンプリングポイント数が超過した数NOS(=NS−NC)に相当する無効メトリックスが含まれている。無効メトリックスは、ノイズ、および、各サブキャリヤーからの漏れなどによる成分である。離散フーリエ変換の結果得られるメトリックス分布としては、例えば、NC個の有効メトリックスが連続して並び、この両側に、(NOS/2)個の無効メトリックスが並ぶ場合がある。
【0041】
ここで、虚数単位をj、メトリックスが得られる周波数スロットを示すサフィックスをiとすると、各メトリックスZiは、(ai+jbi)と表され、上記離散フーリエ変換の演算の結果、サンプリングポイント数NSのメトリックス{Zi}(i=1,2,3,…,NS)を示す、2系列のデーター{ai}、{bi}が得られる。
【0042】
例えば、上記ユーレカ147DABシステムにおけるモードIのOFDM信号は、1536のサブキャリヤーを有する。このような信号について、本実施の形態における周波数制御装置1000では、上記1536よりも多い2048(2の10乗)のサンプリングポイントでサンプリングを行っている。この場合、1536の有効メトリックスおよび512の無効メトリックスが得られる。
【0043】
なお、2のべき乗の数でサンプリングを行うことにより、FFTによるDFT演算の高速化の効果を向上させることができる。
【0044】
次に、周波数偏差検知部1300において、上記離散フーリエ変換部1200で取得されたメトリックスの分布{ai+jbi}と、予め定められた分布との差を求める演算処理が行われ、この演算処理の結果に応じてAFC信号が生成される。
【0045】
上記差を求める演算処理としては、例えば、メトリックス分布{Zi}から、そのパワー分布{Pi}を求め、このパワー分布{Pi}の分布中心に相当する周波数と、予め定められた基準周波数との差を求めることができる。パワーPは、例えば、Zの複素共役をZ*として、
と定義することができる。すなわち、メトリックスZが、
Z=(a+jb)
であるとき、このメトリックスのパワーは、
と与えられる。
【0046】
次に、上記周波数偏差検知部1300で行われる演算処理の詳細について説明する。
【0047】
本実施の形態では、受け付けたOFDM信号から得られたメトリックスのパワースペクトルのエンベロープを、予め指定された周波数依存性を有するように、多重化信号のパワー分布を変化させるためのパワー変換をパワー変換手段によって行う。
このパワー変換は、パワースペクトルのエンベロープが、所定の基準周波数に近づくほどパワーが減少するM字状の形状となるように、各サブキャリヤーのパワーを変化させている。
【0048】
本実施の形態では、パワースペクトルのエンベロープが、所定の基準周波数に近づくほどパワーが減少するM字状の形状とするために、離散フーリエ変換手段で得ようとする周波数スロットに番号(i)を順番に付し、周波数スロットの並びの中心に位置するものを基準番号(c)として、離散フーリエ変換の結果各スロットに現れたサブキャリヤーのパワーに、そのスロット番号(i)と基準番号(c)の差の絶対値(|c−i|)を乗じて各サブキャリヤーのパワーを変化させる。
【0049】
このようにして得られたパワー分布における分布の重心となる周波数を求め、この重心の周波数と、予め定められた基準周波数とを比較する。そして、上記重心の周波数と上記基準周波数との周波数差を求め、これが小さくなるように再生キャリヤーの周波数を変化させる指示を上記直交検波部1100(図1参照)に与える。
【0050】
パワー変換手段によって多重化信号のパワー分布を所定の基準周波数に近づくほどパワーが減少するように変化させたので、パワー分布の分布の重心を求めたときの重心の周波数の精度を高めることができる。したがって、基準周波数との周波数差の精度が高まり、より精度の高いAFC信号を得ることができる。
【0051】
以下に、上記演算処理部1322(図1参照)で行われる演算処理の詳細について説明する。
【0052】
まず、離散フーリエ変換部1200(図1参照)で取得されたNS個のメトリックスの分布{Ai+jBi}(i|1,2,3,…,NS)について、予め定められた基準周波数に相当する周波数スロットCより低い周波数の周波数スロット(1〜C)に属するメトリックスのパワーの総和WLと、周波数スロットより高い周波数の周波数スロット(C〜NS)に属するメトリックスのパワーの総和WHとをそれぞれ求める。基準周波数は、例えば、標本化周波数に等しい周波数の信号が受け付けられたときに、理論的に予想される有効メトリックスのパワー分布の中心周波数を選ぶことができる。このとき、基準周波数は、C=NS/2となる。
【0053】
そして、上記求めた総和WL、総和WHとを比較し、これらの総和の差δWから周波数差を求める。総和の差δWは、例えば、次式に従って実行することができる。
【0054】
【数2】
【0055】
この式では、取得されたメトリックスの全てを用いてパワー分布の総和の差を求めているが、理論的に予想される有効メトリックスの範囲について計算を行ってもよい。また、基準周波数Cについては、同じ計算が重複して行われるのでこれを省略することができる。すなわち、理論的に予想される基準周波数Cについて、
【0056】
【数3】
【0057】
に従って、総和の差を求めることができる。この式に従って演算すると、C番目のスロットを境として、スペクトルパワーの分布がどちらに偏っているかが算出できる。基準周波数Cは、理論的な周波数の設定に従って選ぶことができる。例えば、標本化点が2048であるとき、C=2048/2=1024と選ぶことができる。
【0058】
また、パワー分布が既知である信号を用いて伝送路の影響を避けることができる。すなわち、ヌルシンボル期間に取得されるOFDM信号についてのメトリックス{Ani+jBni}と、信号シンボル期間のメトリックス{Asi+jBsi}とから、
【0059】
【数4】
【0060】
を求め、このメトリックスを計算に用いる。
【0061】
また、メトリックスのパワーの全周波数スロットについての総和Wtを求め、これによって上記総和の差δWを規格化することができる。すなわち、全周波数スロットについてのパワーの総和Wtは、
【0062】
【数5】
【0063】
によって求められ、これを用いて規格化された総和の差 δW/Wtを求めることができる。これを周波数のズレ量として制御信号生成部1350(図1参照)に与える。これによって、到来するOFDM信号のパワーが変動する場合であっても、この影響を低減することができる。
【0064】
次に、図3および図4を参照して、規格化されたメトリックスを用いる場合の計算手順の一例について説明する。
【0065】
先ず、ステップS21において、シンボル期間ごとの受け付けた信号についてFFTを用いて離散フーリエ変換を行う。
【0066】
ヌルシンボルから得られるメトリックスで、シンボル期間のメトリックスを規格化する(S22)。
【0067】
ステップS23において、上記S22で規格化されたメトリックスを、基準周波数を境に2つの領域に分割し、それぞれにおけるパワーの総和を計算する。このとき、周波数差がない場合には、分割された2つの領域は、図3の(a)に示すように対称となる。また、周波数差がある場合、例えば、低周波数にずれた信号が受信された場合には、図3の(b)に示すように、2つの領域が非対称となる。そして、上記2つの領域によるパワーの総和の差を求める。
【0068】
また、受信された信号がフェージングなどの影響を受けている場合は、ステップS24において周波数のずれを補正する。詳細には、ステップS23で得たパワーの総和の差をスペクトルパワーの総和で除し(規格化し)、得た値を周波数のずれ量として制御(補正)に用いる。
【0069】
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施形態で説明した演算処理をもちいて周波数同期を行う、OFDM受信装置である。
【0070】
図5において、受信装置200は、入力端子1と、バンドパスフィルター2と、増幅器3と、乗算器4と、SAWフィルター5と、中間周波増幅器6と、乗算器7A,7Bと、A/D変換器8A,8Bと、FFT回路9と、AGC回路10と、同期検出回路11と、差動復調回路12と、第1局部発振器18と、第2局部発振器19と、第1基準発振器20Aと、第2基準発振器20Bと、タイミング回路21と、周波数誤差演算回路22と、時間軸検出回路23と、位相誤差検出回路24とを有して構成される。上記乗算器7A,7Bと、第2局部発振器19とは、直交検波回路を構成している。
【0071】
上記受信装置200において、入力端子1に加えられたRF信号は、バンドパスフィルター2により、所定の帯域外の雑音が除去された後、増幅器3で増幅され、乗算器4で第1局部発振器18からの局部発振信号と乗算され中間周波信号に変換される。変換された中間周波信号は、SAWフィルター5により帯域制限され、次に、中間周波増幅器6により、所定のレベルまで増幅された後、2系統の乗算器7A、7Bに導かれる。
【0072】
乗算器7A、7Bは、第2局部発振回路19から、90度の位相差を有する2相の局発信号を入力し、もう一方の入力である中間周波信号とそれぞれ乗算することにより直交検波回路を構成している。乗算器7A、7Bの出力は、A/D変換器8A、8Bによりディジタルデーターに変換された後、ガード期間を除き、有効データー期間をFFT回路9に取り込みFFT処理を行う。
【0073】
FFT処理後、差動復調されて、最終的に音声信号へ変換される。この処理の詳細については説明を省略する。
【0074】
一方、FFT回路9の出力はそのメトリックスを周波数誤差演算回路22へ入力し、ここで先に説明した演算を行い周波数差成分をAFC信号として第1基準発振器20Aへ供給する。また、差動復調回路12の出力信号からは、位相誤差検出回路24で検出した位相誤差からサブキャリヤー間隔の±1/2以内の制御を行うAFC信号も併せて第1基準発振器20Aへ供給される。
【0075】
本実施の形態によれば、サブキャリヤー間隔の1/2以上の周波数差が生じても、周波数同期を行うことができる。この受信装置200は例えば、ユーレカ147DABシステムにおけるディジタル音声放送の受信に用いることができる。
【0076】
次に、図6を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、OFDM信号を用いて通信を行うための通信装置の例である。
【0077】
図6において、通信装置9001は、到来するOFDM信号を受け付け、OFDM信号が示す情報を出力するための受信部9002と、送信すべき情報を受け付けこれをOFDM信号として送出するための送信部4とを有して構成される。
【0078】
上記受信部9002は、到来する電磁波から予め定められた帯域の信号を選択するためのフィルター部2000と、帯域を選択した信号を中間周波数に変換するための周波数変換部3000と、検波および周波数同期を行うための周波数制御部1000と、検波された信号を復調するための復調部4000と、復調された信号が示す情報を出力するための出力部5000とを有して構成される。
【0079】
上記周波数制御部3000は、例えば、上記第1の実施の形態における周波数制御装置と同様に構成することができる。例えば、同相検波軸信号(I相軸信号)および直交検波軸信号(Q相軸信号)を取得するための直交検波部1100と、I相信号およびQ相信号を離散フーリエ変換するための離散フーリエ変換部1200と、離散フーリエ変換された信号を用いて周波数偏差を検知するための周波数偏差検知部1300とを有する構成とすることができる。
【0080】
上記出力部5000としては、例えば、音声情報を出力するための音声出力装置、画像を表示するための画像出力装置、データーを出力するためのデーター出力装置などが挙げられる。
【0081】
上記音声出力装置は、例えば、アンプ、スピーカなどを用いて構成することができる。
【0082】
上記画像出力装置は、例えば、画像表示回路、および、ディスプレイ装置を用いて構成することができる。
【0083】
上記データー出力装置は、例えば、インタフェース回路、バッファ回路、信号変換回路などを用いて構成することができる。
【0084】
また、上記受信部9002において、フィルター部2000と、周波数変換部3000と、周波数制御部1000と、復調部4000とを1つの筐体に構成し、これをチューナー部9003としてもよい。これにより、情報が出力される態様に対応して、出力装置の組み合わせを変更したり、情報を表示する品質の好みに対応することなどができる。
【0085】
上記送信部9004は、情報を受け付け、これを信号に変換するための入力部6000と、上記変換された信号で、搬送波を変調するための変調部7000と、変調された搬送波を送出するためのRF送出部8000とを有して構成される。
【0086】
また、通信装置9001は、OFDM信号を送受するためのインタフェース部9005に接続された他の機器と通信を行う。インタフェース部9005は、例えば、通信装置9001が接続される形態に応じて例えば、アンテナ、光/電気変換器、電気信号コネクタなどを用いることができる。なお、インタフェース部9005は、図示される例のように、外付けされる態様であってもよいし、通信装置9001に内蔵される態様であってもよい。
【0087】
本実施の形態によれば、送信側と受信側とで周波数差が生じる状態であっても、周波数同期して通信することができる。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、受け付けたOFDM信号を復調するための同期検波周波数が、受信信号を離散フーリエ処理して得た多重キャリヤーの周波数間隔の数倍にもおよぶ周波数差が生じても、周波数差を精度良く検出して周波数同期を行うことができる周波数制御装置が提供される。
【0089】
これによって、送信側と受信側との基準周波数にズレが生じている場合であっても、情報を伝送することができる。また、送信側と受信側との相対運動によりドップラーシフトが生じても、ドップラーシフトを精度良く検出して周波数同期を行うことができる周波数制御装置が提供される。
【0090】
また、上記周波数制御装置が搭載された受信装置を構成することができ、安定してOFD号による放送を受信することができる受信装置を提供することができる。このような放送としては、例えば、ユーレカ145システムDABの放送などが挙げられる。
【0091】
また、上記周波数制御装置が搭載された通信装置を構成することができる。これによって、ディジタル電話などにおける周波数同期をより安定なものにすることができる。OFDM方式の適用が容易になり、このため、画像信号を含む信号を通信を行うテレビ電話などのように、伝送情報量が大きい通信に対応することができる。また、周波数同期可能な周波数差が大きくとれるため、各機器における基準周波数の管理が容易になる。さらに、移動体による通信において、ドップラーシフトによる周波数差が生じる場合であっても、周波数同期した状態で通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した周波数制御装置を示すブロック図である。
【図2】OFDM信号を示す説明図であって、(a)時間領域の構造を示す波形図、(b)周波数領域の構造を示すスペクトル図である。
【図3】2つの領域に分割されたメトリックスのパワー分布を模式的に示す説明図であって、(a)周波数差がないときの分布、(b)周波数差があるときの分布である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における演算手順を示すフロー図である。
【図5】本発明を適用した受信装置を示すブロック図である。
【図6】本発明を適用した通信装置を示すブロック図である。
【図7】本発明を適用した通信装置の他の態様を示すブロック図である。
【図8】従来の周波数制御方法で周波数差検出に用いられる信号の相関を示す説明図である。
【図9】従来の周波数制御方法における、相関信号と周波数オフセットとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…入力端子、2…バンドパスフィルター、3…増幅器、4…乗算器、5…SAWフィルター、6…中間周波増幅器、7A,7B…乗算器、8A,8B…A/D変換器と、9…FFT回路、10…AGC回路、11…同期検出回路、12…差動復調回路、18…第1局部発振器、19…第2局部発振器、20A…第1基準発振器、20B…第2基準発振器、21…タイミング回路、22…周波数誤差演算回路、23…時間軸検出回路、24…位相誤差検出回路、200…受信装置、1000…周波数制御装置、1100…直交検波部、1107A,1107B…乗算器、1150…分配器、1119…再生キャリヤー生成器、1160…周波数可変発振器、1170…移相器、1180…分岐回路、1200…離散フーリエ変換部、1208A,1208B…A/D変換器、1209…DFT回路、1300…周波数偏差検知部、1322…演算処理部、1350…制御信号生成部、2000…フィルター部、3000…周波数変換部、3010…乗算器、3020…周波数可変発振器、4000…復調部、5000…出力部、6000…入力部、7000…変調部、8000…RF送出部、9001…通信装置、9002…受信部、9003…チューナー部、9004…送信部、9005…インタフェース部。
Claims (5)
- 複数のサブキャリアーに直交周波数分割多重された多重化信号に周波数同期するための周波数制御装置において、
多重化信号を入力し、再生キャリアーを生成し、該再生キャリアーを用いて前記多重化信号を直交検波して、互いに直交する第1の検波軸信号および第2の検波軸信号を得る直交検波手段と、
前記2つの検波軸信号のそれぞれの時間軸波形を予め定められた標本化周波数でそれぞれ標本化し、かつ、これら標本化されたデーターを離散フーリエ変換して、周波数領域に分布する複数のメトリックスを求める離散フーリエ変換手段と、
前記離散フーリエ変換手段が求めたメトリックスの分布に予め指定された周波数依存性を有するように、前記多重化信号のパワー分布を変換するパワー変換手段と、
前記パワー変換手段がパワー分布を変換した多重化信号について、予め定められた基準周波数より高い周波数のメトリックスについてのパワーの総和と前記基準周波数より低い周波数のメトリックスについてのパワーの総和の差を演算し当該差が小さくなるよう前記再生キャリアーの周波数を変えるよう前記直交検波手段を制御する演算制御手段とを備えることを特徴とする周波数制御装置。 - 請求項1記載の周波数制御装置において、前記パワー変換手段は、前記多重化信号のパワースペクトルのパワー分布が前記基準周波数に近づくほど減少するように、各サブキャリアーのパワーを変換することを特徴とする周波数制御装置。
- 請求項2記載の周波数制御装置において、前記パワー変換手段は、前記多重化信号のパワースペクトルの各サブキャリアーに番号を順番に付し、当該番号の並びの中心のサブキャリアーの番号を基準番号として、各サブキャリアーのパワーに各サブキャリアーに付した番号と前記基準番号の差の絶対値を乗じることにより、各サブキャリアーのパワーを変換することを特徴とする周波数制御装置。
- 直交周波数分割多重された多重化信号を受信するための受信装置において、
多重化信号を含む高周波信号を入力し、当該高周波信号から予め定められた周波数帯域を選択するバンドパスフィルター部と、
前記バンドパスフィルター部により周波数帯域を選択した信号を中間周波数に変換する周波数変換部と、
前記周波数変換部により周波数変換された信号を再生キャリアーを用いて直交検波し、離散フーリエ変換すると共に、前記再生キャリアーの周波数を制御して前記多重化信号に周波数同期させる周波数制御部と、
前記周波数制御部により離散フーリエ変換されたデーターを復調する復調部と、
前記復調部により復調された信号を出力する出力部とを有し、
前記周波数制御部は、請求項1から3のいずれか一項記載の周波数制御装置を用いて構成されることを特徴とする受信装置。 - 直交周波数分割多重された多重化信号を用いて通信するための通信装置において、
入力される信号が示すデーターで、搬送波を直交周波数分割多重変調して多重化信号を送出する送信部と、
受け付けた信号を直交周波数分割多重復調して変調データーを検出し、変調データーが示す信号を出力する受信部を有し、
前記受信部は、請求項4記載の受信装置を用いて構成されることを特徴とする通信装置。
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