JP3585425B2 - 列車走行を模擬した起振装置及びその起振方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、列車走行を模擬した起振装置及びその起振方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の高速化においては既存設備の活用が前提となるため、速度向上による軌道から地盤までの影響を十分検討する必要がある。このような軌道から地盤への影響の検討項目として、最終的には列車走行に伴う地盤振動の評価を行い、地盤振動を悪化させないように車両側や軌道側に工夫を施すことが考えられる。車両側の工夫としては、軸重を軽減した車両を走行する等がある。一方、軌道側の工夫としては、軌道ばね係数を柔らかくした軌道を敷設する等して実車両を走行させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、列車走行に伴う地盤振動の評価は、実車両を用いた営業線における走行試験により行っていたため、次のような問題点があった。即ち、第1に、気象変化に伴う土質条件や軌道条件などの条件を揃えるのが容易ではなく、再現性が良くないため、評価の確度が低くなる。第2に、試験間隔を短くしたり多数回試験を行うには、営業線を使って行っていることから制限がかかる他、経済的にも効率的にも困難であり、開発期間が長くなる。第3に、営業線を使っていることから、軌道等の性能や特性などの条件を変更することが容易でない上、安全が保障されていない条件では試験できない。第4に、実車両では地盤振動に影響があると考えられる車両ばね下質量を容易に変えることができないため、車両ばね下質量が軌道及び地盤振動に及ぼす影響を定量的に把握することができない。
【0004】
本発明は上記問題点を解決することを課題とするものであり、列車走行を模擬した起振が可能であり、車両ばね下質量が軌道及び地盤振動に及ぼす影響を定量的に把握できる列車走行模擬起振装置を提供することを目的とする。また、その起振装置を用いた起振方法を提供することを別の目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するため、本発明の列車走行模擬起振装置は、
列車走行を模擬したレールの起振を行うことができる実車両と同様のばねマス系を実現可能な列車走行模擬起振装置であって、
試験用に設けられた試験軌道と、
前記試験軌道のレールに当接する載荷治具と、
前記載荷治具に接触又は固定してこの載荷治具を起振させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを支持し、質量の調節が可能な慣性マスと、
前記慣性マスの上側に軸ばねを介して配置された台車枠と、
前記台車枠の上側に空気ばねを介して配置された車体部と、
前記アクチュエータにより前記載荷治具を介して前記レールを起振させたときに前記試験軌道側に発生する振動を検出する検出手段と、
を備え、
前記慣性マスの質量の調節により、車両ばね下質量を調節することができることを特徴とする。
【0006】
本発明の列車走行模擬起振装置では、レール凹凸や軌道狂い等によって実車両に発生する振動を模擬するようにアクチュエータを作動させて載荷治具を起振させる。そして、そのときに発生する試験軌道側の振動(例えば、試験軌道を構成する各要素(レール、マクラギ、道床バラストなど)の振動や、路盤の振動や、地盤の振動など)を検出手段が応答値として出力する。
【0007】
本発明の列車走行模擬起振装置によれば、営業線ではなく試験軌道を用いているため、軌道条件の再現性が高く評価の確度が高いうえ、多数回試験を行うことも容易である。また、上から順に車体部、空気ばね、台車枠、軸ばね、慣性マスを備えているため、実車両と同様のばねマス系を実現可能である。更に、慣性マスの質量を調節することにより車両ばね下質量(軸ばねよりも下の質量)を調節できるため、車両ばね下質量が軌道や地盤に及ぼす影響を定量的に把握できる。更にまた、アクチュエータが直接レールを加振するのではなく、載荷治具を介してレールを起振するため、実車両に近似した状態でレールを起振できる。
【0008】
本発明の列車走行模擬起振装置において、載荷治具は、フランジ付き鉄道車輪の一部を切り出した形状を有し、レールの踏頂面と接触し、踏側面と接触又は隣接していることが好ましい。この場合、実車両と同様、フランジ付き鉄道車輪がレールに振動を与えることになるため、現実に即した模擬試験が可能となり、評価の確度も高くなる。
【0009】
本発明の列車走行模擬起振装置を用いて列車走行を模擬して起振させるには、慣性マスの質量、試験軌道の軌道ばね係数、レールの質量、レールの曲げ剛性、軸ばねのばね係数及び空気ばねのばね係数からなるパラメータ群のうち特定のパラメータ以外のパラメータを一定にし、その特定のパラメータのみを変更させながら、アクチュエータにより載荷治具を起振させることが好ましい。この場合、ある特定のパラメータを変数とし、残りのパラメータを固定した上で列車走行を模擬する起振を行うことにより、その特定のパラメータがどのように軌道や地盤の振動に影響を及ぼすのかを定量的に把握できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の列車走行模擬起振装置の全体を表す概略図(円内は部分拡大図)、図2は、図1のA視図である。
【0011】
本実施形態の列車走行模擬起振装置1は、試験軌道10、載荷治具20、アクチュエータ30、慣性マス40、台車枠50、車体部60、コントローラ70及び出力装置80を備えている。
試験軌道10は、営業線とは別に試験用に敷設された軌道であり、路盤に敷き詰めた道床バラストの上にマクラギを並べてそのマクラギを架け渡すようにレール11を敷設したものである。なお、図2では試験軌道10のうちレール11以外の部分を便宜上ばねで表したが、これはマクラギや道床バラスト等は機能上弾性を有しているからである。
【0012】
載荷治具20は、フランジ付き鉄道車輪25の一部を切り出した形状を有し、レール11の踏頂面11aと接触し、踏側面11bと接触又は隣接している。
アクチュエータ30は、載荷治具20に接触又は固定してこの載荷治具20を起振させるものであり、例えば油圧サーボアクチュエータにより構成されている。
【0013】
慣性マス40は、アクチュエータ30を支持し、質量の調節が可能なものである。慣性マス40の質量は、慣性マス40に載せる錘の質量によって調節可能である。また、台車枠50は慣性マス40の上側に軸ばね51を介して配置され、車体部60は台車枠50の上側に空気ばね61を介して配置されている。
【0014】
コントローラ70は、入力されるデータに基づいてアクチュエータ30を作動させ、載荷治具20を介してレール11に振動を与える役割を果たす。また、出力装置80は、レール11に貼り付けたセンサ11cの信号や、地盤上に設置した振動計81の信号を受けて、図示しないディスプレイにその出力値を表示するものである。なお、センサ11cや振動計81が本発明の検出手段に相当する。
【0015】
次に、本実施形態の列車走行模擬起振装置1の使用例について説明する。
まず、パラメータの設定を行う。パラメータとしては、大きく分けて、車両側パラメータと、軌道側パラメータがある。
車両側のパラメータとしては、車両ばね下質量、台車のばね系などがある。車両ばね下質量の設定は、慣性マス40に載せる錘を調節することにより行う。また、台車のばね系の設定は、軸ばね51や空気ばね61のばね係数を変化させることにより行う。つまり、所望のばね係数をもつ軸ばね51に交換したり、所望のばね係数をもつように空気ばね61の空気量を調整したりする。
【0016】
一方、軌道側のパラメータとしては、軌道ばね係数、レールの質量、レールの曲げ剛性、マクラギ質量などがある。一般に、レールは、マクラギの上面に設けた溝にゴムパッドを介して戴置された状態で、ばね特性を有する締結金具によりマクラギに締結されている。このことから、軌道ばね係数の設定は、所望の厚みを持つゴムパッドに交換したり、所望のばね特性を持つ締結金具に交換したりすることにより行うが、バラスト自体の性質を変更してもよい。レールの質量や曲げ剛性の設定は、所望の質量、曲げ剛性を持つレールに交換することにより行う。マクラギの質量についても同様である。
【0017】
次に、コントローラ70を操作して、レール凹凸や軌道狂い等によって実車両に発生する振動を模擬するようにアクチュエータ30を作動させて載荷治具20を介してレール11を起振させる。例えば、図3(a)に示すように、周波数の増加に伴い、変位量が小さくなるようにアクチュエータ30を作動させる。
【0018】
すると、出力装置80は、そのときに発生するレール11の歪みや地盤振動を、センサ11cや振動計81の信号に基づいて図示しないディスプレイに表示する。例えば、図3(b)に示すように、周波数に対する応答倍率(出力値/入力値)が表示される。なお、この図におけるパラメータ▲1▼〜▲3▼は、ある特定のパラメータを変数として選択し、残りのパラメータを固定した上で、その特定のパラメータを▲1▼、▲2▼、▲3▼と変化させたときの出力値のグラフである。その後、実験者は、各パラメータに対する、周波数毎の出力値などの応答特性を把握する。
【0019】
以上詳述した本実施形態の列車走行模擬起振装置1によれば、営業線ではなく試験軌道10を用いているため、軌道条件の再現性が高く評価の確度が高いうえ、多数回試験を行うことも容易である。
また、上から順に車体部60、空気ばね61、台車枠50、軸ばね51、慣性マス40を備えているため、実車両と同様のばねマス系を実現可能である。
【0020】
更に、慣性マス40の質量を調節することにより車両ばね下質量を調節できるため、車両ばね下質量が軌道や地盤に及ぼす影響を定量的に把握できる。
更にまた、アクチュエータ30が直接レール11を加振するのではなく、載荷治具20を介してレール11を加振するため、実車両に近似した状態でレールを加振できる。ここで、載荷治具20は、フランジ付き鉄道車輪25の一部を切り出した形状を有し、レール11の踏頂面11aと接触し、踏側面11bに接触又は隣接しているため、実車両と同様、フランジ付き鉄道車輪25がレール11に振動を与えることになる。このため、現実に即した模擬試験が可能となり、評価の確度も高くなる。
【0021】
そしてまた、ある特定のパラメータを変数とし、残りのパラメータを固定した上で列車走行を模擬する起振を行うことにより、その特定のパラメータがどのように軌道や地盤の振動に影響を及ぼすのかを定量的に把握できる。
尚、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0022】
例えば、上記実施形態では、アクチュエータ30として油圧サーボアクチュエータを例示したが、特にこれに限定されるものではなく、上下起振可能なものであればどのようなアクチュエータであっても使用可能である。
また、図1上段の車体部60の中央には、載荷台車91が設けられ、この載荷台車91には車軸を起振させる軸重用アクチュエータ(図示せず)が備えられている。このため、アクチュエータ30で再現が不可能な低周波域や高周波域での大きな載荷力を要する条件の場合には、この軸重アクチュエータを使うことで補うように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の列車走行模擬起振装置の全体を表す概略図(円内は部分拡大図)である。
【図2】図1のA視図である。
【図3】入出力データの説明図であり、(a)は入力データの説明図、(b)は出力データの説明図である。
【符号の説明】
1・・・列車走行模擬起振装置、10・・・試験軌道、11・・・レール、11a・・・踏頂面、11b・・・踏側面、11c・・・センサ、20・・・載荷治具、25・・・フランジ付き鉄道車輪、30・・・アクチュエータ、40・・・慣性マス、50・・・台車枠、60・・・車体部、70・・・コントローラ、80・・・出力装置、81・・・振動計、91・・・載荷台車。

Claims (3)

  1. 列車走行を模擬したレールの起振を行うことができる実車両と同様のばねマス系を実現可能な列車走行模擬起振装置であって、
    試験用に設けられた試験軌道と、
    前記試験軌道のレールに当接する載荷治具と、
    前記載荷治具に接触又は固定してこの載荷治具を起振させるアクチュエータと、
    前記アクチュエータを支持し、質量の調節が可能な慣性マスと、
    前記慣性マスの上側に軸ばねを介して配置された台車枠と、
    前記台車枠の上側に空気ばねを介して配置された車体部と、
    前記アクチュエータにより前記載荷治具を介して前記レールを起振させたときに前記試験軌道側に発生する振動を検出する検出手段と、
    を備え、
    前記慣性マスの質量の調節により、車両ばね下質量を調節することができることを特徴とする列車走行模擬起振装置。
  2. 前記載荷治具は、フランジ付き鉄道車輪の一部を切り出した形状を有し、前記レールの踏頂面と接触し、踏側面と接触又は隣接することを特徴とする請求項1記載の列車走行模擬起振装置。
  3. 請求項1又は2記載の列車走行模擬起振装置を用いて列車走行を模擬して起振させる方法であって、
    前記慣性マスの質量、前記試験軌道の軌道ばね係数、前記レールの質量、前記レールの曲げ剛性、前記軸ばねのばね係数及び前記空気ばねのばね係数からなるパラメータ群のうち特定のパラメータ以外のパラメータを一定にし、その特定のパラメータのみを変更させながら、前記アクチュエータにより前記載荷治具を起振させることを特徴とする起振方法。
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