JP3584344B2 - 多糖類の製造装置および製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多糖類の製造装置および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微生物によって生産される多糖類は、エキソ多糖類(exopolysaccharides)として知られ、好気的環境下で発酵生産されることが知られている。
このような多糖類としては、代表的なものとして、キトサン、デキストラン、キサンタンガム、ゲランガム、ウエランガム、ラムザンガム、プルラン、カードラン、シゾフィラン、スクレログルカン、レバン、及びスフィンガン等がある。以下において、これらのうちで特に知られているキサンタンガム及びプルランを中心として、本発明を説明する。しかし、本発明は、キサンタンガム、プルランのみならず、生産中にこれらと同様の挙動を示す他の多糖類に適用することが可能である。
【0003】
例えば、キサンタンガムは、良く知られた発酵方法により得られる。すなわち、キサンタンガムを生産する例えばキサントモナス (Xanthomonas)属に属する細菌のキサントモナス カンペストリス (X.campestris) (この化合物とその製造方法は、米国特許第3,659,026号明細書、第4欄に記載されている)によって生産された発酵液から、イソプロパノールを混合することにより析出、回収され製造される。
【0004】
キサンタンガム発酵においては、生成物であるキサンタンガムが培地に可溶性であるために発酵液の粘度がキサンタンガムの生産とともに増大する。この粘度の増大は、攪拌効果を低下させ槽内の物質移動を悪化させるため、発酵後半ではキサンタンガムの生産性が低下する。高粘度なキサンタンガム発酵における通気及び混合を改良するために、特開昭61−173795号公報,61−173796号公報ではガムが生成するとともに、これを沈澱させてそれにより粘度を減少させることが提案されている。しかしながら、沈澱剤による微生物細胞の被害を生じたり、あるいは、それらがガムとともに反応物から除去される可能性がある。さらに、上記従来の技術では、通常生成物からの沈澱剤の除去が必要であり、これは相当にコストを増加させる。
【0005】
また、特開昭58−60997号公報では、エマルジョン発酵により発酵液粘度を減少させることが提案されている。しかし、これも生成物からの油の除去が必要となりコストを増加させる。
また、キサンタンガムの発酵、粘性水溶液の攪拌混合については各種の攪拌方法が検討されている。特に、タービン翼は、その高い酸素可溶性のため通常の発酵槽に頻繁に使用されており、キサンタンガムの発酵、またキサンタンガム水溶液においてもその効果が報告されている(J.Ferment.Technol.Vol.66,No.1第103−109 頁,1988/Chemical Engineering Science Vol.35,第2175−2163 頁,1980)。しかし、タービン翼は、槽内に放射状の発酵液流が生じるのみであり、槽内の混合状態としては好ましくない。
【0006】
また、他の攪拌翼としてマリンプロペラ翼、ヘリカルプロペラ翼、傾斜翼が検討されている。これらは、翼が傾斜しているため上下流を起こすことができることが報告されている(Applied Biochemistry and Biotechnology Vol.28/29 第667 以降 1991/Biotechnology and Bioengineering Vol.34第1393−1397 頁 1989/Chemical Engineering Progress 1990) 。しかし、タービン翼とこれらの攪拌翼を組み合わせて使用した場合は、動力的に不利であることも報告されている(Process Biochemistry Vol.27第351−365 頁 1992)。
【0007】
また、特開昭63−56296号公報ではポンプ装置を用いた循環流による槽内の物質移動改善を提案している。しかし、この技術では、装置が複雑となり発酵装置において重要な殺菌の問題が生じ、好ましくない。
また、攪拌翼を使用しない発酵方法として、ジェット水流、バブリングカラム発酵槽、エアーリフト発酵槽を使用して発酵した結果が報告されている。しかし、これらはいずれも生産性が十分ではなかった(Biotechnology and Bioengeneering Vol.39第85−94 頁 1992/Appl.Microbiol. Biotechnol.Vol.35 第330−333 頁 1991)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のようなことは、キサンタンガム以外にも、プルラン等の他の多糖類において同様に指摘されており、改善が望まれたいた。
したがって、本発明の目的は、培養後期の高粘度時期でも良好な通気、及び混合状態を実現し、高粘度時期でも生産性良く多糖類を製造することのできる装置および方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記目的達成のため、請求項1の発明は、多糖類の製造装置であって、炭水化物源及び窒素源を少なくとも含む水性培地を内蔵する発酵槽と、該発酵槽内に設けた上部のラセン翼および下部のタービン翼と、上記ラセン翼およびタービン翼の攪拌軸とを備え、攪拌軸に関して互い逆方向に延長する一対のアームを互いにねじれの位置において上下に少なくとも一組設けるとともにこれら上下のアーム間を少なくとも一のせん断パドルで架橋することによって上記ラセン翼を構成し、回転円盤に少なくとも一のタービン翼板を上記回転円盤に固定することによって上記タービン翼を構成してなることを特徴とする。
【0010】
本発明は、その一つの特徴として、ラセン翼とタービン翼とを組み合わせて発酵槽内を攪拌することにより、発酵後期でも生産速度を低下させることなく発酵生産することを可能とした。
【0011】
本発明で使用されるラセン翼は、後述する実施例より了解されるように、好適には、攪拌軸に対して垂直な対生の円柱状のアームを有しているものであり、さらに、上と下の両アーム間に棒状のせん断パドルがセットされており、かつ上のアームと下のアームが上方よりみた時に両アーム間のねじれ角度が20度以上である形状をしている。なお、このラセン翼は、一以上の複数を設けることができる。後述する実施例では、段数が2のものを使用しているが、これに限定されるものではない。
【0012】
本発明では、上記炭水化物源及び窒素源を少なくとも含む水性培地を内蔵する発酵槽内に、ラセン翼とタービン翼(一般的には同軸でかつ同一の攪拌軸に固定する)とを配設して用いる。発酵槽としては、従来使用されている当業者にとって公知の各種のタイプのものを使用することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
キサンタンガムを生産する場合の条件等
本発明において、キサンタンガムを生産する場合の条件等について説明する。
本発明の実施に好適なキサンタンガム生産菌としては、キサントモナス(Xanthomonas) 属の細菌を使用することができる。
例えば、上述のキサントモナス・カンペストリスの他、キサントモナス カロタテ(X.carotate)、キサントモナス インカナエ(X.incanae) 、キサントモナスベゴニアエ(X.begoniae)、キサントモナス パパベリコラ(X.papavericola)、キサントモナス トランセルセンス(X.translucens) 、キサントモナス バスクロルム(X.vasculorum)、及びキサントモナス ヘデラエ(X.hederae) を使用し、キサンタンガムの生産を行うことができる。
上記のうち、好適なものは、ATCC 55298,ATCC 55258,NRRL B−1459等の番号で国際寄託されたキサントモナス・カンペストリスである。
【0014】
本発明に用いられる培地は、キサンタンガム発酵に通常用いられる窒素源、炭素源が使用可能である。
窒素源としてはアンモニウム塩等の水溶性無機窒素成分、ポリペプトン等の水溶性有機窒素成分、大豆粉末等の水不溶性有機窒素成分等が使用でき、その添加量は、窒素量として0.1〜2.5g/lである。
炭素源としてはグルコース,シュークロース,キシロース,糖蜜,澱粉,マルトース,デキストリン等の糖類および/あるいはグリセリン,ソルビトール等の多価アルコールの1種または2種以上を用いることができ、その添加量は、5〜70g/Lである。
その他、無機塩としてはリン酸塩,マグネシウム塩,微量成分が利用できる。
リン酸塩としては、リン酸1カリウム,リン酸2カリウム,リン酸1ナトリウム,リン酸2ナトリウム等から選ばれる1種または2種以上を使用でき、その添加量は1〜5g/Lである。
マグネシウム塩としてはリン酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,硝酸マグネシウム等から選ばれる1種または2種以上を使用することができ、その添加量は0.1〜1g/Lである。
微量成分としては、塩化第1鉄、塩化第2鉄、硝酸第1鉄、硝酸第2鉄、リン酸第1鉄、リン酸第2鉄、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛の中から選ばれた1種または2種以上を使用することができ、その添加量は0.02〜0.08g/Lである。
発酵時のpHは、希アルカリ溶液で6〜8に調整させることが好ましい。pH6以下、またはpH8以上ではキサンタンガム生産性が低下するため好ましくない。
発酵時の温度は25℃〜35℃に調整されることが好ましい。25℃以下では発酵速度が低下し、35℃以上では菌の一部が死滅し生産性が低下するため好ましくない。
発酵槽内への通気量は0.2〜1.0vvmが好ましく、0.2vvm以下では菌体の成育のための十分な酸素が供給されない。また、1.0vvm以上ではそれ以上通気による生産性向上効果がないためコスト的に不利となる。
【0015】
本発明における本培養培地中への前培養液の植菌量は、5容積%以上となるように実施する。植菌量が5容積%以下では、本培養液中の初期菌体量が少なく、菌体増殖が遅延し、結果としてキサンタンガムの生産性が低下する場合があり好ましくない。
キサンタンガムの発酵生産時の発酵槽内のラセン翼とタービン翼の攪拌回転数(一般的には攪拌軸の回転数)は、培養初期には低回転数で行い、ガムの生成による粘度増加に伴い攪拌回転数を上げていく方法で実施される。培養初期に高速攪拌を行うことは攪拌動力の点で不利であり好ましくない。
発酵後は殺菌処理(加熱処理)した後、キサンタンガムを溶解しない親水性有機溶剤を混合し、キサンタンガムを晶出する。このような親水性有機溶剤としては、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等、またはこれらの水溶液を挙げることができる。
その後、乾燥を行う。乾燥は送風乾燥機あるいは真空乾燥機で40℃〜100℃、2時間以上行われる。
【0016】
プルランを生産する場合の条件等
本発明において、プルランを生産する場合の条件等について説明する。
プルランは、不完全菌の一種であるオーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans) と呼ばれる黒酵母を、単糖類や澱粉分解物等の炭素源と適当な窒素源とを組み合わせた水性培地中で培養した時に、培養液中に産生される水溶性多糖類である。その化学構造は、グルコースのα−1,4結合の三量体であるマルトトリオースを単位として、この三量体がα−1,6結合により反復結合した線状重合体である。
プルランは工業的に分子量80,000〜300,000程度のものが製造、販売され水溶性、接着性、造膜性等の優れた性質が食品工業、化学工業に広く利用されている。また、水溶性高分子の分子量測定用の標準物質として、化学の分野において利用されている。
プルラン発酵生産においては、生成物であるプルランが培地に可溶性であるために発酵液の粘度がプルランの蓄積とともに増加する。この粘度の増加は、攪拌効果を低下させ、槽内の物質移動を悪化させるため、発酵後半ではプルランの生産性が低下する。特に分子量200万以上の高分子プルランの発酵生産においてはこの傾向は顕著である。本発明によれば、かかる点について改善がされる。
【0017】
本発明の実施に好適な高分子プルラン生産菌としては、オーレオバシディウム・プルランスに属するものであればよく、類似する変異株でもよい。例えば、財団法人 発酵研究所に委託されたIFO 6353、IFO 4464あるいはATCC 9348 、ATCC 74100、ATCC 74101、ATCC 74102、ATCC 74103、ATCC 74104、ATCC 74105等およびこれらの変異株を使用できる。特にATCC 74100、ATCC 74101、ATCC 74102、ATCC 74103、ATCC 74104、ATCC 74105は分子量200万以上の高分子量のプルランを生産する菌株として好適である(米国特許第5,268,460 号に記載されている)。
【0018】
本発明に用いられる培地は、高分子プルラン発酵に通常用いられる窒素源、炭素源が使用可能である。
窒素源としてはアンモニウム塩等の水溶性無機窒素成分、ポリペプトン等の水溶性有機窒素成分、大豆粉末等の水不溶性有機窒素成分等が使用でき、その添加量は、窒素量として0.1〜2.5g/lである。
炭素源としてはグルコース,シュークロース,糖蜜,澱粉分解物,セルロース分解物,マルトース等の糖類を用いることができ、その添加量は、5〜150g/Lである。
その他に無機塩を使用することができ、例えば、マグネシウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム等の金属イオンの塩類を挙げることができる。具体的には、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸マンガン、塩化カリウム、硫酸亜鉛、塩化コバルト、モリブデン酸アンモニウム等を挙げることができる。
【0019】
初期pHは6.0〜8.0程度が適当であるが、培養中は必ずしもこの範囲に調整する必要はなく、培養の進行に伴い、pH低下が進行するのが一般的である。温度は25〜35℃が適当で培養時間は2〜7日程度である。
さらに、菌体が酵母様の形態で増殖する条件がより好ましい。
通気量は0.1〜1.0vvmが好ましく0.1vvm以下では菌体の成育のための十分な酸素が供給されない。また、1.0vvm以上ではそれ以上通気による生産性向上効果がないためコスト的に不利となる。
本発明における本培養培地中への前培養液の植菌量は、2容積%以上となるように実施する。植菌量が2容積%以下では、本培養液中の初期菌体量が少なく、菌体増殖が遅延し、結果として高分子プルランの生産性が低下する場合があり好ましくない。
【0020】
高分子プルランの発酵生産時の発酵槽内のラセン翼とタービン翼の攪拌回転数(一般的には攪拌軸の回転数)は、培養初期には低回転数で行い、プルランの生成による粘度増加に伴い攪拌回転数を上げていく方法で実施される。培養初期に高速攪拌を行うことは攪拌動力の点で不利であり好ましくない。
発酵後は殺菌処理(加熱処理)(特開昭5−328988号公報に記載の方法)した後、ろ過または遠心分離により除菌し、プルランを溶解しない親水性有機溶剤と混合し、高分子プルランを晶出する。このような親水性有機溶剤としては、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等、またはこれらの水溶液を挙げることができる。
その後、乾燥を行う。乾燥は送風乾燥機あるいは真空乾燥機で40℃〜100℃、2時間以上行われる。なお、晶出せず直接乾燥してもプルランを回収することができる。
【0021】
他の多糖類を生産する場合の条件等
本発明において、他の多糖類を生産する場合の条件等については、上記したキサンタンガム及びプルランとほぼ同様である。ただし、生産される多糖類に応じて、適切な菌株を用い、かかる菌株に応じて生産効率の良い培地を選択する。
【0022】
次に、添付図面を参照しながら、本発明にかかる多糖類の製造装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態にかかる多糖類の製造装置の概要を示す。
図に示すように、多糖類の製造装置1は、発酵槽2と、発酵槽2内に設けた上部の上下二段のラセン翼3および下部のタービン翼4と、上記ラセン翼3およびタービン翼4の攪拌軸5とを備えている。
上記発酵槽2内は、炭水化物源及び窒素源を少なくとも含む水性培地6を内蔵する。
本実施の形態では、上部のラセン翼3および下部のタービン翼4は、共通の攪拌軸5に固定されている。
なお、図1において、7は攪拌軸5の駆動手段であるモータ、8はメカニカルシールを示す。また、図中Dとして示したのは、翼間の距離である。
【0023】
図2,3に示すように、ラセン翼3の各段は、攪拌軸5に関して互い逆方向に延長する一対の円柱状のアーム9,10を互いにねじれの位置において上下に一組設けるとともに、これら上下のアーム9,10間を8のせん断パドル11で架橋することによって構成されている。12は、アーム9,10の取付部を示し、この中心の貫通孔13に攪拌軸5を挿通することによって、ラセン翼3が攪拌軸5に固定される。
このラセン翼の翼径/胴径(発酵槽の)の比は0.77である。また、翼長/翼径の比(L/W)は0.40である。
上下のアームのねじれ角度θは65.5度である。
図4,5は、タービン翼4を示す。タービン翼4は、回転円盤14に6のタービン翼板15を固定することによって構成される。16は、回転円盤14の取付部を示し、この中心の貫通孔17に攪拌軸5を挿通することによって、タービン翼4が攪拌軸5に固定される。
タービン翼は、翼径/胴径(発酵槽の)の比が0.50である。
【0024】
以上の構成の本実施の形態にかかる多糖類の製造装置では、攪拌軸5の回転によって、ラセン翼3およびタービン翼4を回転させ、発酵槽2内の攪拌を行う。この際、ラセン翼3のせん断パドルによりブロスがせん断され、これにより高粘度ブロスの見かけ粘度が低下し、さらに、せん断パドルが傾斜しているため発酵槽内に効率よく上下流を生じることで発酵槽内の物質移動を良好な状態に維持することが可能となる。
【0025】
上記ラセン翼3は、諸元を変更することによって種々の変形が可能であり、また2段だけでなく、1段のものもまたより多段のものとすることもできる。図6ないし図13にその変形例を示す。これらは、後述する実施例において使用される。ちなみに、図6,7は、取付部12を上下に分割したタイプのものである。
なお、図14から図21に示した攪拌翼は、比較例に、用いたものである。図20,21に示したものは傾斜翼を用いており、図20の攪拌翼18の傾斜角度θ2 が45度である。
上下のラセン翼3を接合する構造としては、公知の種々のものが考えられる。図22、23にその一例を示す。ラセン翼3’は、下方の相対するアーム3’a及び3’bを備え、下方のラセン翼3”は、上方の相対するアーム3”c及び3”dを備える。ラセン翼3’の下方と、ラセン翼3”の上方とは互いにはまり合うように図示のような形状に構成されており、アーム3’a及び3’bと、アーム3”c及び3”dとが互いに直角の位置となるように接合される。この状態を図23に示す(θ3 は直角である)。図22、23よりアーム3’c,3’d,3”a,及び3”bの相対的位置関係も了解される。
【0026】
本発明にかかる多糖類の製造装置は、上記した実施の形態の他にも、この他種々の変形が可能であり、本発明の技術的思想の範囲における全ての変更・修飾等は全て本発明に含まれる。
例えば、ラセン翼とタービン翼の回転数を公知の手段によって異ならせるといったことも可能である。
もっとも、以下の条件に従うことが好ましい。
ラセン翼の翼径/胴径(発酵槽の)の比は0.5以上であることが好ましい。0.5未満では発酵槽内に不流動域が生じ発酵生産性を低下させるので好ましくない。
ラセン翼の翼長/翼径の比は0.2以上であることが好ましい。0.2未満では同等の攪拌を得るために翼段数を増やす必要がありこのため動力が高くなり、好ましくない。
また、上下のアームのねじれ角度は20度以上であることが好ましい。20度未満では十分な上下流動が得られず生産性が低下する。また、180度以下である。これを越えると攪拌時にパドルの形状を維持することができない。
せん断パドルは4本以上セットされることが好ましい。4本未満では十分なせん断力が得られない。せん断パドルの幅は特に限定されない。
せん断パドルの断面形状は、上記実施の形態では、円形状としているが、だ円、正方形、長方形、正三角形、二等辺三角形等種々のものが考えられる。
【0027】
本発明で使用されるタービン翼は、翼径/胴径(発酵槽の)の比が0.3以上であることが好ましい。0.3未満ではスパージャーより放出される酸素の可溶性が低く生産性が低下するため好ましくない。
タービン翼は、翼間(図1中のD)/翼径の比が1以下であることが好ましい。1を越えると翼間隔が広すぎるため不流動域が生じ発酵生産性を低下させるため好ましくない。
タービン翼板15の回転円盤14の円周の接線方向に対する設定角度は、図24に示すように30ないし90度とするのが好適である。30度以下では、タービン翼のせん断力が弱く、気泡拡散効果が低いため好ましくない。
また、タービン翼板15の回転円盤14のデイスク面に対する設定角度は、図25に示すように30ないし150度とするのが好適である。30度以下では、タービン翼のせん断力が弱く、気泡拡散効果が低いため好ましくない。
タービン翼板15の形状は、本実施の形態のような四角形の他、三角形、五角形を用いることができる。
【0028】
【実施例】
上記実施の形態について説明した攪拌翼を用いて、キサンタンガムの生産を行った結果(実施例1〜6)を以下に示す。また、従来技術との相違を明確にするための比較例1〜6についての結果も示す。
【0029】
実施例1〜6
以下のIの培地成分を含む発酵槽中でXanthomonas campestrisを24時間培養後、以下のIIの培地成分を含む30L発酵槽中に植菌した。攪拌翼としては、上記実施例について説明した形状の攪拌翼を使用して発酵を行った。表1に攪拌翼のパラメーター及び取付方法を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
上記条件で2日間発酵後に70℃で1時間殺菌処理した。その後ミキサーを使用して1.5重量倍の85%IPA水溶液で晶出し、送風乾燥機で60℃、3時間乾燥した。乾燥後にキサンタンガム重量を測定した。
表2は、各発酵条件での最終発酵液粘度、残グルコース濃度、キサンタンガム濃度、最終動力を示す。粘度は20℃、BL型粘度計(株式会社 トキメック)ローターNo. 4,30rpmを使用して測定した。
残グルコース濃度はEnzyme Electrode Analyzer M−100(旭化成工業株式会社)により測定した。
【0032】
【表2】
【0033】
後述する比較例5と同等の低速攪拌回転数でも良好なキサンタンガム生産が達成されることが確認でき、ラセン翼は物質移動が良好なことが判明した。
【0034】
実施例7
実施例1と同条件で発酵を行い2日間発酵後にさらに414gのグルコースを含む水溶液500mlを殺菌し発酵槽に添加しさらに発酵を続けた。3日後の結果を表3に示す。
ラセン翼では30000cPでも良好な生産が行われていることを確認した。
【表3】
【0035】
比較例1〜6
実施例と同じ培地を使用し表4に示した攪拌翼を使用して発酵を行った。
条件を表4に示す。結果を表5に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
以上の実施例と比較例を対照することにより、本発明のほうが著しく生産性が高いことが了解される。
【0039】
上記実施例について説明した攪拌翼を用いて、高分子プルランの生産を行った結果(実施例8〜13)を以下に示す。また、従来技術との相違を明確にするための比較例の結果についても示す。
【0040】
実施例8〜13
以下のIの培地成分を含む発酵槽中でAureobasidium pullulans(ATCC 74105) を24時間培養後、以下のIIの培地成分を含む30L発酵槽中に植菌した。攪拌翼としては図に示される形状の攪拌翼を使用して発酵を行った。表6に攪拌翼のパラメーター及び取付方法を示す。
I.前培養培地成分組成
シュークロース 10.0g/L
酵母エキスF 2.0g/L
(NH4)2SO4 0.5g/L
K2HPO4 3.0g/L
MgSO4 ・7H2 O 0.2g/L
FeSO4 ・7H2 O 0.01/L
MnSO4 ・7H2 O 0.01g/L
ZnSO4 ・7H2 O 0.01g/L
水 2.5L
pH 7.0
II. 本培養培地成分組成
シュークロース 100g/L
(NH4)2SO4 1.0g/L
K2HPO4 2.0g/L
FeSO4 ・7H2 O 0.01g/L
MnSO4 ・7H2 O 0.01g/L
ZnSO4 ・7H2 O 0.01g/L
水 16.2L
pH 7.0
【0041】
【表6】
【0042】
上記条件で5日間発酵後、攪拌しながら60℃で30分間殺菌処理した。その後遠心分離により菌体を除去した。このプルラン液を1.5重量倍の86%IPAと混合しプルランを回収した。
表7は、各発酵条件での最終発酵液粘度、残シュークロース濃度、プルラン濃度、プルラン分子量、最終動力を示す。粘度は20℃、BL型粘度計(株式会社トキメック)ローターNo.4,30rpmを使用して測定した。
残シュークロース濃度はEnzyme Electrode Analyzer M−100(旭化成工業株式会社)により測定した。
プルラン分子量は固有粘度を測定しBuligaらの固有粘度と分子量の関係式
(Int.J.Biol.Macromol.,Vol 9, 71−76(1987) )
〔η〕=0.000258×Mw−0646
より算出した。
【0043】
【表7】
【0044】
後述する比較例11と同等の低速攪拌回転数でも良好な高分子プルラン生産が達成されることが確認でき、ラセン翼は物質移動が良好なことが判明した。
【0045】
比較例7〜12
実施例と同じ培地を使用しラセン翼以外の攪拌翼を使用して発酵を行った。条件を表8、結果を表9に示す。
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
以上の実施例と比較例を対照することにより、本発明のほうが著しく生産性が高いことが了解される。
【0049】
【発明の効果】
上記したところから明かなように、本発明によれば、培養後期の高粘度時期でも良好な通気、及び混合状態を実現し、高粘度時期でも生産性良く多糖類を製造することのできる装置および方法が提供される。
【0050】
すなわち、本発明では、ラセン型攪拌翼とタービン翼を組み合わせて使用することにより発酵初期には、タービン翼の高いせん断力により菌体成育に必要な溶存酸素レベルを維持し、多糖類生成による粘度増加後でもラセン翼により高粘度発酵液を有効に混合する事が可能となり、発酵後期での、多糖類生産速度を低下させることなく発酵生産を行うことを可能となる。また、従来のタービン翼のみ、タービン翼と傾斜翼とを組み合わせて使用した場合と比較してより低消費動力で良好な生産性を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる多糖類の製造装置の実施例について概要を説明する概念図である。
【図2】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例1,8に使用したものの側面図である。
【図3】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例1,8に使用したものの底面図である。
【図4】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するタービン翼のうち各実施例、比較例に使用したものの側面図である。
【図5】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するタービン翼のうち各実施例、比較例に使用したものの底面図である。
【図6】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例2,4,9,11に使用したものの側面図である。
【図7】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例2,4,9,11に使用したものの底面図である。
【図8】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例3,10に使用したものの側面図である。
【図9】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例3,10に使用したものの底面図である。
【図10】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例5,12に使用したものの側面図である。
【図11】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例5,12に使用したものの底面図である。
【図12】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例6,13に使用したものの側面図である。
【図13】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例6,13に使用したものの底面図である。
【図14】ラセン翼のうち比較例1,7に使用したものの側面図である。
【図15】ラセン翼のうち比較例1,7に使用したものの底面図である。
【図16】ラセン翼のうち比較例2,8に使用したものの側面図である。
【図17】ラセン翼のうち比較例2,8に使用したものの底面図である。
【図18】ラセン翼のうち比較例3,9に使用したものの側面図である。
【図19】ラセン翼のうち比較例3,9に使用したものの底面図である。
【図20】傾斜翼のうち比較例4,5,10,11に使用したものの側面図である。
【図21】傾斜翼のうち比較例4,5,10,11に使用したものの底面図である。
【図22】上下二段のラセン翼を接合する様式を説明する側面図である。
【図23】図22のラセン翼を接合した状態を説明する上方からの平面図である。この図は、図1の上下二段のラセン翼を上方から見た状態に相当する。
【図24】本発明で使用することのできるタービン翼のタービン翼板の円周に対する傾斜角度を説明する上方からの平面図である。
【図25】本発明で使用することのできるタービン翼のタービン翼板の回転円盤に対する傾斜角度を説明する上方からの斜視図である。
【符合の説明】
1 多糖類の製造装置
2 発酵槽
3 ラセン翼
4 タービン翼
5 攪拌軸
6 水性培地
7 モータ
8 メカニカルシール
9 アーム
10 アーム
11 せん断パドル
12 取付部
13 貫通孔
14 回転円盤
15 タービン翼板
16 取付部
17 貫通孔
18 攪拌翼
【発明の属する技術分野】
本発明は、多糖類の製造装置および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微生物によって生産される多糖類は、エキソ多糖類(exopolysaccharides)として知られ、好気的環境下で発酵生産されることが知られている。
このような多糖類としては、代表的なものとして、キトサン、デキストラン、キサンタンガム、ゲランガム、ウエランガム、ラムザンガム、プルラン、カードラン、シゾフィラン、スクレログルカン、レバン、及びスフィンガン等がある。以下において、これらのうちで特に知られているキサンタンガム及びプルランを中心として、本発明を説明する。しかし、本発明は、キサンタンガム、プルランのみならず、生産中にこれらと同様の挙動を示す他の多糖類に適用することが可能である。
【0003】
例えば、キサンタンガムは、良く知られた発酵方法により得られる。すなわち、キサンタンガムを生産する例えばキサントモナス (Xanthomonas)属に属する細菌のキサントモナス カンペストリス (X.campestris) (この化合物とその製造方法は、米国特許第3,659,026号明細書、第4欄に記載されている)によって生産された発酵液から、イソプロパノールを混合することにより析出、回収され製造される。
【0004】
キサンタンガム発酵においては、生成物であるキサンタンガムが培地に可溶性であるために発酵液の粘度がキサンタンガムの生産とともに増大する。この粘度の増大は、攪拌効果を低下させ槽内の物質移動を悪化させるため、発酵後半ではキサンタンガムの生産性が低下する。高粘度なキサンタンガム発酵における通気及び混合を改良するために、特開昭61−173795号公報,61−173796号公報ではガムが生成するとともに、これを沈澱させてそれにより粘度を減少させることが提案されている。しかしながら、沈澱剤による微生物細胞の被害を生じたり、あるいは、それらがガムとともに反応物から除去される可能性がある。さらに、上記従来の技術では、通常生成物からの沈澱剤の除去が必要であり、これは相当にコストを増加させる。
【0005】
また、特開昭58−60997号公報では、エマルジョン発酵により発酵液粘度を減少させることが提案されている。しかし、これも生成物からの油の除去が必要となりコストを増加させる。
また、キサンタンガムの発酵、粘性水溶液の攪拌混合については各種の攪拌方法が検討されている。特に、タービン翼は、その高い酸素可溶性のため通常の発酵槽に頻繁に使用されており、キサンタンガムの発酵、またキサンタンガム水溶液においてもその効果が報告されている(J.Ferment.Technol.Vol.66,No.1第103−109 頁,1988/Chemical Engineering Science Vol.35,第2175−2163 頁,1980)。しかし、タービン翼は、槽内に放射状の発酵液流が生じるのみであり、槽内の混合状態としては好ましくない。
【0006】
また、他の攪拌翼としてマリンプロペラ翼、ヘリカルプロペラ翼、傾斜翼が検討されている。これらは、翼が傾斜しているため上下流を起こすことができることが報告されている(Applied Biochemistry and Biotechnology Vol.28/29 第667 以降 1991/Biotechnology and Bioengineering Vol.34第1393−1397 頁 1989/Chemical Engineering Progress 1990) 。しかし、タービン翼とこれらの攪拌翼を組み合わせて使用した場合は、動力的に不利であることも報告されている(Process Biochemistry Vol.27第351−365 頁 1992)。
【0007】
また、特開昭63−56296号公報ではポンプ装置を用いた循環流による槽内の物質移動改善を提案している。しかし、この技術では、装置が複雑となり発酵装置において重要な殺菌の問題が生じ、好ましくない。
また、攪拌翼を使用しない発酵方法として、ジェット水流、バブリングカラム発酵槽、エアーリフト発酵槽を使用して発酵した結果が報告されている。しかし、これらはいずれも生産性が十分ではなかった(Biotechnology and Bioengeneering Vol.39第85−94 頁 1992/Appl.Microbiol. Biotechnol.Vol.35 第330−333 頁 1991)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のようなことは、キサンタンガム以外にも、プルラン等の他の多糖類において同様に指摘されており、改善が望まれたいた。
したがって、本発明の目的は、培養後期の高粘度時期でも良好な通気、及び混合状態を実現し、高粘度時期でも生産性良く多糖類を製造することのできる装置および方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記目的達成のため、請求項1の発明は、多糖類の製造装置であって、炭水化物源及び窒素源を少なくとも含む水性培地を内蔵する発酵槽と、該発酵槽内に設けた上部のラセン翼および下部のタービン翼と、上記ラセン翼およびタービン翼の攪拌軸とを備え、攪拌軸に関して互い逆方向に延長する一対のアームを互いにねじれの位置において上下に少なくとも一組設けるとともにこれら上下のアーム間を少なくとも一のせん断パドルで架橋することによって上記ラセン翼を構成し、回転円盤に少なくとも一のタービン翼板を上記回転円盤に固定することによって上記タービン翼を構成してなることを特徴とする。
【0010】
本発明は、その一つの特徴として、ラセン翼とタービン翼とを組み合わせて発酵槽内を攪拌することにより、発酵後期でも生産速度を低下させることなく発酵生産することを可能とした。
【0011】
本発明で使用されるラセン翼は、後述する実施例より了解されるように、好適には、攪拌軸に対して垂直な対生の円柱状のアームを有しているものであり、さらに、上と下の両アーム間に棒状のせん断パドルがセットされており、かつ上のアームと下のアームが上方よりみた時に両アーム間のねじれ角度が20度以上である形状をしている。なお、このラセン翼は、一以上の複数を設けることができる。後述する実施例では、段数が2のものを使用しているが、これに限定されるものではない。
【0012】
本発明では、上記炭水化物源及び窒素源を少なくとも含む水性培地を内蔵する発酵槽内に、ラセン翼とタービン翼(一般的には同軸でかつ同一の攪拌軸に固定する)とを配設して用いる。発酵槽としては、従来使用されている当業者にとって公知の各種のタイプのものを使用することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
キサンタンガムを生産する場合の条件等
本発明において、キサンタンガムを生産する場合の条件等について説明する。
本発明の実施に好適なキサンタンガム生産菌としては、キサントモナス(Xanthomonas) 属の細菌を使用することができる。
例えば、上述のキサントモナス・カンペストリスの他、キサントモナス カロタテ(X.carotate)、キサントモナス インカナエ(X.incanae) 、キサントモナスベゴニアエ(X.begoniae)、キサントモナス パパベリコラ(X.papavericola)、キサントモナス トランセルセンス(X.translucens) 、キサントモナス バスクロルム(X.vasculorum)、及びキサントモナス ヘデラエ(X.hederae) を使用し、キサンタンガムの生産を行うことができる。
上記のうち、好適なものは、ATCC 55298,ATCC 55258,NRRL B−1459等の番号で国際寄託されたキサントモナス・カンペストリスである。
【0014】
本発明に用いられる培地は、キサンタンガム発酵に通常用いられる窒素源、炭素源が使用可能である。
窒素源としてはアンモニウム塩等の水溶性無機窒素成分、ポリペプトン等の水溶性有機窒素成分、大豆粉末等の水不溶性有機窒素成分等が使用でき、その添加量は、窒素量として0.1〜2.5g/lである。
炭素源としてはグルコース,シュークロース,キシロース,糖蜜,澱粉,マルトース,デキストリン等の糖類および/あるいはグリセリン,ソルビトール等の多価アルコールの1種または2種以上を用いることができ、その添加量は、5〜70g/Lである。
その他、無機塩としてはリン酸塩,マグネシウム塩,微量成分が利用できる。
リン酸塩としては、リン酸1カリウム,リン酸2カリウム,リン酸1ナトリウム,リン酸2ナトリウム等から選ばれる1種または2種以上を使用でき、その添加量は1〜5g/Lである。
マグネシウム塩としてはリン酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,硝酸マグネシウム等から選ばれる1種または2種以上を使用することができ、その添加量は0.1〜1g/Lである。
微量成分としては、塩化第1鉄、塩化第2鉄、硝酸第1鉄、硝酸第2鉄、リン酸第1鉄、リン酸第2鉄、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛の中から選ばれた1種または2種以上を使用することができ、その添加量は0.02〜0.08g/Lである。
発酵時のpHは、希アルカリ溶液で6〜8に調整させることが好ましい。pH6以下、またはpH8以上ではキサンタンガム生産性が低下するため好ましくない。
発酵時の温度は25℃〜35℃に調整されることが好ましい。25℃以下では発酵速度が低下し、35℃以上では菌の一部が死滅し生産性が低下するため好ましくない。
発酵槽内への通気量は0.2〜1.0vvmが好ましく、0.2vvm以下では菌体の成育のための十分な酸素が供給されない。また、1.0vvm以上ではそれ以上通気による生産性向上効果がないためコスト的に不利となる。
【0015】
本発明における本培養培地中への前培養液の植菌量は、5容積%以上となるように実施する。植菌量が5容積%以下では、本培養液中の初期菌体量が少なく、菌体増殖が遅延し、結果としてキサンタンガムの生産性が低下する場合があり好ましくない。
キサンタンガムの発酵生産時の発酵槽内のラセン翼とタービン翼の攪拌回転数(一般的には攪拌軸の回転数)は、培養初期には低回転数で行い、ガムの生成による粘度増加に伴い攪拌回転数を上げていく方法で実施される。培養初期に高速攪拌を行うことは攪拌動力の点で不利であり好ましくない。
発酵後は殺菌処理(加熱処理)した後、キサンタンガムを溶解しない親水性有機溶剤を混合し、キサンタンガムを晶出する。このような親水性有機溶剤としては、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等、またはこれらの水溶液を挙げることができる。
その後、乾燥を行う。乾燥は送風乾燥機あるいは真空乾燥機で40℃〜100℃、2時間以上行われる。
【0016】
プルランを生産する場合の条件等
本発明において、プルランを生産する場合の条件等について説明する。
プルランは、不完全菌の一種であるオーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans) と呼ばれる黒酵母を、単糖類や澱粉分解物等の炭素源と適当な窒素源とを組み合わせた水性培地中で培養した時に、培養液中に産生される水溶性多糖類である。その化学構造は、グルコースのα−1,4結合の三量体であるマルトトリオースを単位として、この三量体がα−1,6結合により反復結合した線状重合体である。
プルランは工業的に分子量80,000〜300,000程度のものが製造、販売され水溶性、接着性、造膜性等の優れた性質が食品工業、化学工業に広く利用されている。また、水溶性高分子の分子量測定用の標準物質として、化学の分野において利用されている。
プルラン発酵生産においては、生成物であるプルランが培地に可溶性であるために発酵液の粘度がプルランの蓄積とともに増加する。この粘度の増加は、攪拌効果を低下させ、槽内の物質移動を悪化させるため、発酵後半ではプルランの生産性が低下する。特に分子量200万以上の高分子プルランの発酵生産においてはこの傾向は顕著である。本発明によれば、かかる点について改善がされる。
【0017】
本発明の実施に好適な高分子プルラン生産菌としては、オーレオバシディウム・プルランスに属するものであればよく、類似する変異株でもよい。例えば、財団法人 発酵研究所に委託されたIFO 6353、IFO 4464あるいはATCC 9348 、ATCC 74100、ATCC 74101、ATCC 74102、ATCC 74103、ATCC 74104、ATCC 74105等およびこれらの変異株を使用できる。特にATCC 74100、ATCC 74101、ATCC 74102、ATCC 74103、ATCC 74104、ATCC 74105は分子量200万以上の高分子量のプルランを生産する菌株として好適である(米国特許第5,268,460 号に記載されている)。
【0018】
本発明に用いられる培地は、高分子プルラン発酵に通常用いられる窒素源、炭素源が使用可能である。
窒素源としてはアンモニウム塩等の水溶性無機窒素成分、ポリペプトン等の水溶性有機窒素成分、大豆粉末等の水不溶性有機窒素成分等が使用でき、その添加量は、窒素量として0.1〜2.5g/lである。
炭素源としてはグルコース,シュークロース,糖蜜,澱粉分解物,セルロース分解物,マルトース等の糖類を用いることができ、その添加量は、5〜150g/Lである。
その他に無機塩を使用することができ、例えば、マグネシウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム等の金属イオンの塩類を挙げることができる。具体的には、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸マンガン、塩化カリウム、硫酸亜鉛、塩化コバルト、モリブデン酸アンモニウム等を挙げることができる。
【0019】
初期pHは6.0〜8.0程度が適当であるが、培養中は必ずしもこの範囲に調整する必要はなく、培養の進行に伴い、pH低下が進行するのが一般的である。温度は25〜35℃が適当で培養時間は2〜7日程度である。
さらに、菌体が酵母様の形態で増殖する条件がより好ましい。
通気量は0.1〜1.0vvmが好ましく0.1vvm以下では菌体の成育のための十分な酸素が供給されない。また、1.0vvm以上ではそれ以上通気による生産性向上効果がないためコスト的に不利となる。
本発明における本培養培地中への前培養液の植菌量は、2容積%以上となるように実施する。植菌量が2容積%以下では、本培養液中の初期菌体量が少なく、菌体増殖が遅延し、結果として高分子プルランの生産性が低下する場合があり好ましくない。
【0020】
高分子プルランの発酵生産時の発酵槽内のラセン翼とタービン翼の攪拌回転数(一般的には攪拌軸の回転数)は、培養初期には低回転数で行い、プルランの生成による粘度増加に伴い攪拌回転数を上げていく方法で実施される。培養初期に高速攪拌を行うことは攪拌動力の点で不利であり好ましくない。
発酵後は殺菌処理(加熱処理)(特開昭5−328988号公報に記載の方法)した後、ろ過または遠心分離により除菌し、プルランを溶解しない親水性有機溶剤と混合し、高分子プルランを晶出する。このような親水性有機溶剤としては、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等、またはこれらの水溶液を挙げることができる。
その後、乾燥を行う。乾燥は送風乾燥機あるいは真空乾燥機で40℃〜100℃、2時間以上行われる。なお、晶出せず直接乾燥してもプルランを回収することができる。
【0021】
他の多糖類を生産する場合の条件等
本発明において、他の多糖類を生産する場合の条件等については、上記したキサンタンガム及びプルランとほぼ同様である。ただし、生産される多糖類に応じて、適切な菌株を用い、かかる菌株に応じて生産効率の良い培地を選択する。
【0022】
次に、添付図面を参照しながら、本発明にかかる多糖類の製造装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態にかかる多糖類の製造装置の概要を示す。
図に示すように、多糖類の製造装置1は、発酵槽2と、発酵槽2内に設けた上部の上下二段のラセン翼3および下部のタービン翼4と、上記ラセン翼3およびタービン翼4の攪拌軸5とを備えている。
上記発酵槽2内は、炭水化物源及び窒素源を少なくとも含む水性培地6を内蔵する。
本実施の形態では、上部のラセン翼3および下部のタービン翼4は、共通の攪拌軸5に固定されている。
なお、図1において、7は攪拌軸5の駆動手段であるモータ、8はメカニカルシールを示す。また、図中Dとして示したのは、翼間の距離である。
【0023】
図2,3に示すように、ラセン翼3の各段は、攪拌軸5に関して互い逆方向に延長する一対の円柱状のアーム9,10を互いにねじれの位置において上下に一組設けるとともに、これら上下のアーム9,10間を8のせん断パドル11で架橋することによって構成されている。12は、アーム9,10の取付部を示し、この中心の貫通孔13に攪拌軸5を挿通することによって、ラセン翼3が攪拌軸5に固定される。
このラセン翼の翼径/胴径(発酵槽の)の比は0.77である。また、翼長/翼径の比(L/W)は0.40である。
上下のアームのねじれ角度θは65.5度である。
図4,5は、タービン翼4を示す。タービン翼4は、回転円盤14に6のタービン翼板15を固定することによって構成される。16は、回転円盤14の取付部を示し、この中心の貫通孔17に攪拌軸5を挿通することによって、タービン翼4が攪拌軸5に固定される。
タービン翼は、翼径/胴径(発酵槽の)の比が0.50である。
【0024】
以上の構成の本実施の形態にかかる多糖類の製造装置では、攪拌軸5の回転によって、ラセン翼3およびタービン翼4を回転させ、発酵槽2内の攪拌を行う。この際、ラセン翼3のせん断パドルによりブロスがせん断され、これにより高粘度ブロスの見かけ粘度が低下し、さらに、せん断パドルが傾斜しているため発酵槽内に効率よく上下流を生じることで発酵槽内の物質移動を良好な状態に維持することが可能となる。
【0025】
上記ラセン翼3は、諸元を変更することによって種々の変形が可能であり、また2段だけでなく、1段のものもまたより多段のものとすることもできる。図6ないし図13にその変形例を示す。これらは、後述する実施例において使用される。ちなみに、図6,7は、取付部12を上下に分割したタイプのものである。
なお、図14から図21に示した攪拌翼は、比較例に、用いたものである。図20,21に示したものは傾斜翼を用いており、図20の攪拌翼18の傾斜角度θ2 が45度である。
上下のラセン翼3を接合する構造としては、公知の種々のものが考えられる。図22、23にその一例を示す。ラセン翼3’は、下方の相対するアーム3’a及び3’bを備え、下方のラセン翼3”は、上方の相対するアーム3”c及び3”dを備える。ラセン翼3’の下方と、ラセン翼3”の上方とは互いにはまり合うように図示のような形状に構成されており、アーム3’a及び3’bと、アーム3”c及び3”dとが互いに直角の位置となるように接合される。この状態を図23に示す(θ3 は直角である)。図22、23よりアーム3’c,3’d,3”a,及び3”bの相対的位置関係も了解される。
【0026】
本発明にかかる多糖類の製造装置は、上記した実施の形態の他にも、この他種々の変形が可能であり、本発明の技術的思想の範囲における全ての変更・修飾等は全て本発明に含まれる。
例えば、ラセン翼とタービン翼の回転数を公知の手段によって異ならせるといったことも可能である。
もっとも、以下の条件に従うことが好ましい。
ラセン翼の翼径/胴径(発酵槽の)の比は0.5以上であることが好ましい。0.5未満では発酵槽内に不流動域が生じ発酵生産性を低下させるので好ましくない。
ラセン翼の翼長/翼径の比は0.2以上であることが好ましい。0.2未満では同等の攪拌を得るために翼段数を増やす必要がありこのため動力が高くなり、好ましくない。
また、上下のアームのねじれ角度は20度以上であることが好ましい。20度未満では十分な上下流動が得られず生産性が低下する。また、180度以下である。これを越えると攪拌時にパドルの形状を維持することができない。
せん断パドルは4本以上セットされることが好ましい。4本未満では十分なせん断力が得られない。せん断パドルの幅は特に限定されない。
せん断パドルの断面形状は、上記実施の形態では、円形状としているが、だ円、正方形、長方形、正三角形、二等辺三角形等種々のものが考えられる。
【0027】
本発明で使用されるタービン翼は、翼径/胴径(発酵槽の)の比が0.3以上であることが好ましい。0.3未満ではスパージャーより放出される酸素の可溶性が低く生産性が低下するため好ましくない。
タービン翼は、翼間(図1中のD)/翼径の比が1以下であることが好ましい。1を越えると翼間隔が広すぎるため不流動域が生じ発酵生産性を低下させるため好ましくない。
タービン翼板15の回転円盤14の円周の接線方向に対する設定角度は、図24に示すように30ないし90度とするのが好適である。30度以下では、タービン翼のせん断力が弱く、気泡拡散効果が低いため好ましくない。
また、タービン翼板15の回転円盤14のデイスク面に対する設定角度は、図25に示すように30ないし150度とするのが好適である。30度以下では、タービン翼のせん断力が弱く、気泡拡散効果が低いため好ましくない。
タービン翼板15の形状は、本実施の形態のような四角形の他、三角形、五角形を用いることができる。
【0028】
【実施例】
上記実施の形態について説明した攪拌翼を用いて、キサンタンガムの生産を行った結果(実施例1〜6)を以下に示す。また、従来技術との相違を明確にするための比較例1〜6についての結果も示す。
【0029】
実施例1〜6
以下のIの培地成分を含む発酵槽中でXanthomonas campestrisを24時間培養後、以下のIIの培地成分を含む30L発酵槽中に植菌した。攪拌翼としては、上記実施例について説明した形状の攪拌翼を使用して発酵を行った。表1に攪拌翼のパラメーター及び取付方法を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
上記条件で2日間発酵後に70℃で1時間殺菌処理した。その後ミキサーを使用して1.5重量倍の85%IPA水溶液で晶出し、送風乾燥機で60℃、3時間乾燥した。乾燥後にキサンタンガム重量を測定した。
表2は、各発酵条件での最終発酵液粘度、残グルコース濃度、キサンタンガム濃度、最終動力を示す。粘度は20℃、BL型粘度計(株式会社 トキメック)ローターNo. 4,30rpmを使用して測定した。
残グルコース濃度はEnzyme Electrode Analyzer M−100(旭化成工業株式会社)により測定した。
【0032】
【表2】
【0033】
後述する比較例5と同等の低速攪拌回転数でも良好なキサンタンガム生産が達成されることが確認でき、ラセン翼は物質移動が良好なことが判明した。
【0034】
実施例7
実施例1と同条件で発酵を行い2日間発酵後にさらに414gのグルコースを含む水溶液500mlを殺菌し発酵槽に添加しさらに発酵を続けた。3日後の結果を表3に示す。
ラセン翼では30000cPでも良好な生産が行われていることを確認した。
【表3】
【0035】
比較例1〜6
実施例と同じ培地を使用し表4に示した攪拌翼を使用して発酵を行った。
条件を表4に示す。結果を表5に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
以上の実施例と比較例を対照することにより、本発明のほうが著しく生産性が高いことが了解される。
【0039】
上記実施例について説明した攪拌翼を用いて、高分子プルランの生産を行った結果(実施例8〜13)を以下に示す。また、従来技術との相違を明確にするための比較例の結果についても示す。
【0040】
実施例8〜13
以下のIの培地成分を含む発酵槽中でAureobasidium pullulans(ATCC 74105) を24時間培養後、以下のIIの培地成分を含む30L発酵槽中に植菌した。攪拌翼としては図に示される形状の攪拌翼を使用して発酵を行った。表6に攪拌翼のパラメーター及び取付方法を示す。
I.前培養培地成分組成
シュークロース 10.0g/L
酵母エキスF 2.0g/L
(NH4)2SO4 0.5g/L
K2HPO4 3.0g/L
MgSO4 ・7H2 O 0.2g/L
FeSO4 ・7H2 O 0.01/L
MnSO4 ・7H2 O 0.01g/L
ZnSO4 ・7H2 O 0.01g/L
水 2.5L
pH 7.0
II. 本培養培地成分組成
シュークロース 100g/L
(NH4)2SO4 1.0g/L
K2HPO4 2.0g/L
FeSO4 ・7H2 O 0.01g/L
MnSO4 ・7H2 O 0.01g/L
ZnSO4 ・7H2 O 0.01g/L
水 16.2L
pH 7.0
【0041】
【表6】
【0042】
上記条件で5日間発酵後、攪拌しながら60℃で30分間殺菌処理した。その後遠心分離により菌体を除去した。このプルラン液を1.5重量倍の86%IPAと混合しプルランを回収した。
表7は、各発酵条件での最終発酵液粘度、残シュークロース濃度、プルラン濃度、プルラン分子量、最終動力を示す。粘度は20℃、BL型粘度計(株式会社トキメック)ローターNo.4,30rpmを使用して測定した。
残シュークロース濃度はEnzyme Electrode Analyzer M−100(旭化成工業株式会社)により測定した。
プルラン分子量は固有粘度を測定しBuligaらの固有粘度と分子量の関係式
(Int.J.Biol.Macromol.,Vol 9, 71−76(1987) )
〔η〕=0.000258×Mw−0646
より算出した。
【0043】
【表7】
【0044】
後述する比較例11と同等の低速攪拌回転数でも良好な高分子プルラン生産が達成されることが確認でき、ラセン翼は物質移動が良好なことが判明した。
【0045】
比較例7〜12
実施例と同じ培地を使用しラセン翼以外の攪拌翼を使用して発酵を行った。条件を表8、結果を表9に示す。
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
以上の実施例と比較例を対照することにより、本発明のほうが著しく生産性が高いことが了解される。
【0049】
【発明の効果】
上記したところから明かなように、本発明によれば、培養後期の高粘度時期でも良好な通気、及び混合状態を実現し、高粘度時期でも生産性良く多糖類を製造することのできる装置および方法が提供される。
【0050】
すなわち、本発明では、ラセン型攪拌翼とタービン翼を組み合わせて使用することにより発酵初期には、タービン翼の高いせん断力により菌体成育に必要な溶存酸素レベルを維持し、多糖類生成による粘度増加後でもラセン翼により高粘度発酵液を有効に混合する事が可能となり、発酵後期での、多糖類生産速度を低下させることなく発酵生産を行うことを可能となる。また、従来のタービン翼のみ、タービン翼と傾斜翼とを組み合わせて使用した場合と比較してより低消費動力で良好な生産性を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる多糖類の製造装置の実施例について概要を説明する概念図である。
【図2】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例1,8に使用したものの側面図である。
【図3】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例1,8に使用したものの底面図である。
【図4】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するタービン翼のうち各実施例、比較例に使用したものの側面図である。
【図5】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するタービン翼のうち各実施例、比較例に使用したものの底面図である。
【図6】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例2,4,9,11に使用したものの側面図である。
【図7】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例2,4,9,11に使用したものの底面図である。
【図8】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例3,10に使用したものの側面図である。
【図9】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例3,10に使用したものの底面図である。
【図10】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例5,12に使用したものの側面図である。
【図11】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例5,12に使用したものの底面図である。
【図12】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例6,13に使用したものの側面図である。
【図13】本発明にかかる多糖類の製造装置に使用するラセン翼のうち実施例6,13に使用したものの底面図である。
【図14】ラセン翼のうち比較例1,7に使用したものの側面図である。
【図15】ラセン翼のうち比較例1,7に使用したものの底面図である。
【図16】ラセン翼のうち比較例2,8に使用したものの側面図である。
【図17】ラセン翼のうち比較例2,8に使用したものの底面図である。
【図18】ラセン翼のうち比較例3,9に使用したものの側面図である。
【図19】ラセン翼のうち比較例3,9に使用したものの底面図である。
【図20】傾斜翼のうち比較例4,5,10,11に使用したものの側面図である。
【図21】傾斜翼のうち比較例4,5,10,11に使用したものの底面図である。
【図22】上下二段のラセン翼を接合する様式を説明する側面図である。
【図23】図22のラセン翼を接合した状態を説明する上方からの平面図である。この図は、図1の上下二段のラセン翼を上方から見た状態に相当する。
【図24】本発明で使用することのできるタービン翼のタービン翼板の円周に対する傾斜角度を説明する上方からの平面図である。
【図25】本発明で使用することのできるタービン翼のタービン翼板の回転円盤に対する傾斜角度を説明する上方からの斜視図である。
【符合の説明】
1 多糖類の製造装置
2 発酵槽
3 ラセン翼
4 タービン翼
5 攪拌軸
6 水性培地
7 モータ
8 メカニカルシール
9 アーム
10 アーム
11 せん断パドル
12 取付部
13 貫通孔
14 回転円盤
15 タービン翼板
16 取付部
17 貫通孔
18 攪拌翼
Claims (5)
- 炭水化物源及び窒素源を少なくとも含む水性培地を内蔵する発酵槽と、該発酵槽内に設けた上部のラセン翼および下部のタービン翼と、上記ラセン翼およびタービン翼の攪拌軸とを備え、攪拌軸に関して互い逆方向に延長する一対のアームを互いにねじれの位置において上下に少なくとも一組設けるとともにこれら上下のアーム間を少なくとも一のせん断パドルで架橋することによって上記ラセン翼を構成し、回転円盤に少なくとも一のタービン翼板を上記回転円盤に固定することによって上記タービン翼を構成してなることを特徴とする多糖類の製造装置。
- 請求項1の多糖類の製造装置において、上記上下の位置にある一組のアームのねじれ角が20度以上であることを特徴とする多糖類の製造装置。
- 請求項1または2の多糖類の製造装置において、ラセン翼の翼径/発酵槽の胴径の比が0.5以上であることを特徴とする多糖類の製造装置。
- 請求項1ないし3のいずれか一の多糖類の製造装置において、タービン翼の翼径/発酵槽の胴径の比が0.3以上であることを特徴とする多糖類の製造装置。
- 請求項1ないし4のいずれか一の多糖類の製造装置を用い、炭水化物源及び窒素源を含んでなる水性培地に多糖類産生微生物を接種し、該培地をその発酵を行う条件下において機械的に攪拌し通気することにより発酵を行うことを特徴とする多糖類の製造方法。
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1995
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