JP3584280B2 - 表面プラズモン共鳴分光を用いた表面光反応の検出、測定方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己組織化膜に生じる光異性化の測定を有機溶媒中で表面プラズモン共鳴分光により行うことにより、光異性化を高感度で、かつ、実時間(リアルタイム)で測定しうるようにした表面光反応の検出、測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金をはじめとする金属表面に含硫黄有機分子を化学吸着させて作製する単分子膜は、自己組織化膜(Self−Assembled Monolayers、以下、SAM膜という)と呼ばれ、高度に分子配列し、かつ、安定した単分子膜であることなどから近年注目されている。このSAM膜のうち、アゾベンゼン基を有する非対称構造の化合物で形成させたものは、紫外線照射によりアゾベンゼン基がトランス体からシス体に光異性化する特徴を有し、光によって表面の濡れ性や接着性、摩擦などを制御することが可能であり、本発明者らはSAM膜中において光異性化反応しうる新規なアゾベンゼンジスルフィド化合物を合成した(特願平11−72906号)。
このようなSAM膜の表面における光異性化反応の評価は、金属薄膜上にSAM膜を形成させたのち大気中で光異性化反応を行わせ、表面プラズモン共鳴分光法を用いて膜の誘電率の変化(=屈折率、膜厚の変化)を測定することにより行われている(S.D. Evans, S.R. Johnson, H. Ringsdorf, L.M. Williams, H. Wolf: Langmiur 4, 6436 (1998), Z. Sekkat, J. Wood, Y. Geerts, W. Knoll: Langmiur 12, 2976 (1996))。
金属と誘電体との境界面に発生する電子の疎密波である表面プラズモンをレーザー光で励起させ、その結果減衰した反射光強度とそのときの光の入射角をモニターし、最も減衰したときの入射角(共鳴角)と誘電体の誘電率との相関関係から各種反応の速度やサンプルの濃度、温度などを測定する、表面プラズモン共鳴分光法は、表面の反応等を高感度に測定できるものとしてバイオセンサをはじめとする種々の用途で広く利用されている測定方法である。
しかし従来の表面プラズモン共鳴分光を利用した表面光反応の測定は、感度が十分でなく、光異性化が生起してもその反応を検出することができない場合があり、また、反応が検出されても測定の確度が低いため、異なる化合物から形成させた膜同士の光異性化反応において比較が行えるようなデータが得られないなどの問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、SAM膜に生じる光異性化を高感度で、かつ、実時間で、検出、測定することのできる、表面プラズモン共鳴分光を用いた表面光反応の検出、測定方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意研究した結果、SAM膜の光異性化反応を有機溶媒(良溶媒)中で行わせ、有機溶媒中での表面プラズモン共鳴分光を利用して測定すると、光異性化反応が促進されるとともにプラズモンピーク(共鳴角)シフトが増幅され、高感度で表面光反応を検出しうることを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、自己組織化膜に、該膜に対し良溶媒である有機溶媒を接触させ、該有機溶媒中で該自己組織化膜に生じる光異性化を表面プラズモン共鳴分光により測定する方法であって、前記自己組織化膜が、直鎖アルキルを分子末端とする化合物から形成されていて、前記良溶媒が炭素数5〜12の直鎖アルカンから選ばれるか、又は前記自己組織化膜が、芳香環を分子末端とする化合物から形成されており、前記良溶媒が芳香族系溶媒であることを特徴とする表面光反応の検出、測定方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明における光異性化反応の測定方法を図面を参照して説明する。
図1は本発明方法に用いることのできる表面プラズモン共鳴分光装置の一例の概略を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。図中、1は高屈折率ガラス基板2上の金薄膜3の上に形成されたSAM膜、4は高屈折率プリズム、5はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のO−リング、6はPTFEのフローセルである。ガラス基板2はプリズム4と同じ材質であり、マッチングオイルで光学的に接合されている。本発明においてSAM膜1の光異性化反応の測定の際には、セル9を有機溶媒で満たし、矢印10の方向から紫外光又は可視光を照射する。このとき、SAM膜1と金薄膜3の間で表面プラズモンの発生する入射角でレーザー光11を照射し、出射光12の光エネルギーを測定して表面プラズモン共鳴分光測定を行う。7は有機溶媒等の供給口、8は排出口である。
【0006】
本発明におけるSAM膜は、光異性化反応を生起する自己組織化膜であれば特に制限はなく、非対称構造のジスルフィドもしくはチオール化合物より形成させることができる。例えばジスルフィド化合物として以下の構造のアゾベンゼンジスルフィド化合物があげられる。
【0007】
【化1】
【0008】
上記化合物は金薄膜に吸着させた場合にジスルフィド部位が選択的に吸着するため、上記構造式に示したような形でそれぞれ高度に分子配列して並び、単分子膜を形成する。
【0009】
本発明において用いることのできる有機溶媒は、SAM膜を形成する化合物の分子末端に対して良溶媒であればよい。例えば上記のアゾベンゼンジスルフィド化合物のうち、ヘキシルアゾベンゼンを末端とする化合物(直鎖アルキル末端の化合物)については直鎖アルカンが用いられ、アゾベンゼンを末端とする化合物(芳香環末端の化合物)については芳香族系溶媒が用いられる。直鎖アルカン、芳香族系溶媒のいずれも、汎用溶媒として用いられる程度の沸点範囲、粘度範囲のものであれば問題なく使用することができる。直鎖アルカンについては炭素数5〜12のものが用いられる、具体的には例えばヘキサン、ヘプタン、ペンタン、オクタン、ノナン、デカンなどがあげられる。芳香族系溶媒としては、具体的には例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどがあげられる。
なお、水をはじめとする極性溶媒は上記のような非極性分子に対して貧溶媒なので、水中や水溶液中での表面プラズモン共鳴分光では高感度の測定を行うことができない。
本発明の光異性化反応の検出、測定方法は、SAM膜に良溶媒である有機溶媒を接触させ、有機溶媒中で光異性化を生起させて、それを表面プラズモン共鳴分光によって測定する以外は特に制限はない。他の条件や測定装置等は、通常の表面プラズモン共鳴分光法の測定と同様のものを用いることができる。
【0010】
本発明において有機溶媒中での光異性化反応の表面プラズモン共鳴分光法により、その測定感度が向上する理由としては、以下のようなことが考えられる。
(1)良溶媒との接触により、SAM膜形成化合物の分子末端が自由に動ける状態(液体膜状態)になり、光異性化反応自体を起こりやすくすることができる。
(2)大気中などで光異性化反応を行わせた場合に比べ、SAM膜の膜厚の変化が大きくなる。
図2の説明図に示すように、(a)の大気中での光異性化反応におけるSAM膜の膜厚の変化に比べ、(b)に示す溶媒中での反応による膜厚の変化は、溶媒分子の取り込み/放出の影響によって大きくなることが実験的に確認されている。(図中、20はSAM膜、21はフリーの溶媒分子、22はSAM膜に取り込まれた溶媒分子を示す。)これによって反応量が同じであってもプラズモンピークシフトを増大させることができ、測定の感度を上げることができる。
(3)プラズモン吸収位置のシフト幅は、膜(サンプル)と接する媒体の屈折率の影響を受け変化する。
【0011】
例えば金薄膜上に膜形成を行わせて膜形成前の裸の金の吸収位置と膜形成後の吸収位置の差をとった場合、そのシフト幅と媒体の誘電率(E、屈折率の二乗)との相関関係は図3に示すようになる(膜の厚みd=36Å、屈折率n=1.40として計算した)。図3中に○で示したのは、左から大気中(E〜1.0)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンを媒体とした場合であり、大気中近傍ではシフトの変化が小さいのと比較して、ペンタン等の溶媒を媒体とすると溶媒の種類によってプラズモンのシフトが大きく変化するのがわかる。したがって屈折率の異なる複数種の有機溶媒を使用して測定を行うことにより、多点測定の大きな効果を得ることができ、測定の確度を上げることができる。
また、膜と溶媒相の屈折率のバランスから計算して、光異性化反応によるプラズモンピークシフトがより大きくなる屈折率を有する有機溶媒を選択し、より確度の高い測定を行うことができる。
【0012】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
参考例1(12−[4−(4−ヘキシルフェニルアゾ)フェノキシ]ドデシルドデシルジスルフィド(12−[4−(4−hexylphenylazo)phenoxy]dodecyl dodecyl disulfide)の合成)
4−(12−ブロモドデシルオキシ)−4’−ヘキシルアゾベンゼン 0.94gを60℃のDMF 40mlに溶かし、Na2S2O3・5H2O 0.56gの5ml水溶液をゆっくりと加えた。この溶液を60℃に保ち、4時間撹拌した。反応溶液に水を注ぎ、析出物を濾過した。さらに濾物をアセトンに懸濁させて濾過し未反応の原料を取り除いた。次に1mlのNaOH(0.080g)水溶液にAr雰囲気下でドデカンチオール0.40gのメタノール(2ml)溶液を加え1時間撹拌した。この溶液に、先ほどの濾物(アゾベンゼンのbunte塩)のDMF(40ml)溶液をゆっくりと滴下した。滴下途中で析出物がみられた。この溶液をAr雰囲気下で6時間撹拌し、その後水を加え析出物を濾別した。濾物をTHFと混合し、溶け残りを濾過して取り除いた。濾液を濃縮してヘキサンと酢酸エチル(20対1)の混合溶媒を展開溶媒にして、カラムクロマト分離を行った。その後アセトン、ヘキサンでそれぞれ再結晶を行い、黄白色の固体を320mg単離した。
Yield: 26%
mp: 68.5−69.5℃
1H−NMR(CDCl3): d=0.88 (3H, t, −CH3), 0.89 (3H, t, −CH3), 1.4−1.6 (40H, m, CH2−CH 2−CH2), 1.65 (4H, t, t, S−S−CH2−CH 2), 1.67 (2H, t, t, Ar−CH2−CH 2), 1.82 (2H, t, t, Ar−O−CH2−CH 2), 2.68 (2H, t, Ar−CH 2), 2.68 (4H, t, S−S−CH 2), 4.03 (2H, t, Ar−O−CH 2), 6.99 (2H, d, Ar−H), 7.29 (2H, d, Ar−H), 7.79 (2H, d, Ar−H), 7.89 (2H, d, Ar−H)
【0013】
参考例2(12−[4−(4−ヘキシルフェニルアゾ)フェノキシ]ドデシルオクタデシルジスルフィド(12−[4−(4−hexylphenylazo)phenoxy]dodecyl octadecyl disulfide)の合成)
4−(12−ブロモドデシルオキシ)−4’−ヘキシルアゾベンゼン 1.03gを60℃のDMF 40mlに溶かし、Na2S2O3・5H2O 0.56gの5ml水溶液をゆっくりと加えた。この溶液を60℃に保ち、4時間撹拌した。反応溶液に水を注ぎ、析出物を濾過した。さらに濾物をアセトンに懸濁させて濾過し、未反応の原料を取り除いた。次に、オクタデカンチオール0.572gをTHFとメタノール(14ml:6ml)の混合溶媒に溶かしAr雰囲気下で1mlのNaOH(0.80g)水溶液に加え1時間撹拌した。この溶液に、先ほどの濾物(アゾベンゼンのbunte塩)をジメチルアセトアミドとメタノール(28ml:12ml)の混合溶液に溶かしたものを滴下した。滴下途中で析出物がみられた。この溶液をAr雰囲気下で6時間撹拌した後、水を加え析出物を濾別した。濾物をTHFと混合し、溶け残りを濾過して取り除いた。濾液を濃縮してエタノールとTHFの混合溶媒で再結晶したのち、ヘキサンで再結晶した。得られた粗精製物をヘキサンとクロロホルム(3:1)の混合溶媒を展開溶媒にして、カラムクロマト分離を行った。黄白色のアモルファス固体を490mg得た。融点測定から液晶性を示す化合物であることが分かった。
Yield: 32%
mp: 77.0−78.0℃
TNI: 79.5℃
1H−NMR(CDCl3): d=0.89 (3H, t, −CH3), 0.90 (3H, t, −CH3), 1.4−1.6 (52H, m, CH2−CH 2−CH2), 1.66 (4H, t, t, S−S−CH2−CH 2), 1.68 (2H, t, t, Ar−CH2−CH 2), 1.82 (2H, t, t, Ar−O−CH2−CH 2), 2.69 (2H, t, Ar−CH 2), 2.69 (4H, t, S−S−CH 2), 4.04 (2H, t, Ar−O−CH 2), 7.01 (2H, d, Ar−H), 7.30 (2H, d, Ar−H), 7.80 (2H, d, Ar−H), 7.90 (2H, d, Ar−H)
【0014】
実施例1
図1に示した装置を用い、以下の手順で参考例1で合成したジスルフィド化合物(以下、C6AzC12SSC12という)のSAM膜の光異性化の検出、測定を行った。レーザー光はHe−Neレーザーを使用した。
▲1▼まず、SAM膜を形成させる前にヘキサンを供給口7から入れて、ヘキサン中で金基板3のみのプラズモン測定(角度分散モード:入射角−反射率プロット)を行い、金(bare gold)の厚み(d(Au))と屈折率(ε’、ε”)を実験的に決定した。
▲2▼次にC6AzC12SSC12の0.25mmol/L ヘキサン溶液で溶液セル9内を置換し、SAM膜1を形成させた(分子鎖長:36Å)。この時、プラズモン吸収変化の大きく観察された角度(60°)に入射角を固定して、膜形成による反射率変化をその場観察した(キネテクスモード:時間−反射率プロット)。この結果から膜形成の終了を確認した。
▲3▼その後、供給口7からヘキサンを供給し、溶液セル9内を再度置換(リンス)し、セル9内をヘキサンで満たした。
▲4▼セル裏面のガラスを通して紫外光(364nm)と可視光(440nm)を交互に入射し、その反射率変化をモニターした(キネテクスモード:時間−反射率プロット)。
▲5▼紫外光及び可視光照射による反応が完了したそれぞれの時点で、プラズモンの角度分散測定を行い、プラズモン吸収位置のシフト幅からシス体(紫外光照射)及びトランス体(可視光照射)のそれぞれの有効膜厚を求めた。
▲6▼その後、ペンタン、ヘプタン、オクタンのそれぞれを用い、上記▲3▼〜▲5▼の操作を繰返した。ペンタン、ヘプタン、オクタンについては金基板のみのプラズモン曲線の実測は行わず、ヘキサンの測定で求めたε’、ε”及びd(Au)から計算してプラズモン曲線を書き、それぞれの溶媒中での金のみのピーク位置を決定して、プラズモンシフト(Δ)を求めた。
【0015】
図4に、ヘキサン溶液中での金表面(実線)及びSAM膜作製後可視光照射(○:トランス体)と紫外光照射(▲:シス体)のプラズモン曲線を示す。SAM膜形成によりプラズモンピークが右にシフトし、トランス体はシス体よりもさらに右にシフトしている。
図5はヘキサン中で生じた光異性化を経時的に反射率によってリアルタイムで測定した結果を示すグラフである。「UV」が紫外光照射時、「Vis」が可視光照射時であり、比較として大気中での測定結果(入射角25.2°)も示した。大気中での測定では反射率の変化が小さく、シス体−トランス体の変化が明確に読み取れないのに対し、ヘキサン中での測定結果は紫外線照射時と可視光照射時とで反射率が大きく変化して、リアルタイムで光異性化反応の様子が明瞭に示されている。
ペンタン、ヘプタン、オクタン中で行った測定の結果をそれぞれ図6(a)〜(c)に示した。いずれも光異性化反応により反射率が大きく変化している。
【0016】
実施例2
C6AzC12SSC12に代えて参考例2で合成したジスルフィド化合物(以下、C6AzC12SSC18という)を用いた以外は実施例1と同様にしてSAM膜の光異性化の検出、測定を行った。ヘキサン中での測定の結果を、大気中での測定結果と併せて図7に示す。実施例1と同様、大気中では検知された反射率の変化が小さく光異性化反応がほとんど検出できないのに対し、ヘキサン中で行った測定ではシス体−トランス体の変化がはっきり示されているのがわかる。
【0017】
実施例3
実施例1、2と同様にしてアゾベンゼンチオールのSAM膜の光異性化反応による誘電率変化(膜厚を36Åと固定した時の屈折率変化)を、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン中で測定した。
得られたシス体及びトランス体のSAM膜の誘電率を、各溶媒の誘電率に対しプロットしたグラフを図8に示す。C6AzC12SSC12及びC6AzC12SSC18のグラフも併せて示した。
図8よりジスルフィド化合物のほうがアゾベンゼンチオールに比べて異性化による屈折率変化が大きいことがわかる。
なお、大気中での測定では図5、図7に示したように異性化による変化が小さいため、このような膜間での比較を行えるようなデータは得られなかった。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、表面プラズモン共鳴分光を利用して、SAM膜の光異性化による屈折率の変化を高感度で、かつ、実時間で、検出、測定することができる。したがって反応過程を反射率変化として、その場(in situ)観察することが可能である(反応の速度論に関するデータも得られる)。また、屈折率の異なる複数種の有機溶媒を使用して測定を行うことにより、さらに確度の高いデータを得ることができ、異なる化合物から形成されたSAM膜同士の光異性化について比較することなども可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面プラズモン共鳴分光装置の一例の概略を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図2】SAM膜の光異性化による膜厚変化を模式的に示す説明図であり、(a)は大気中、(b)は有機溶媒中での光異性化反応を示す。
【図3】膜形成において膜に接触する媒体の誘電率に対するプラズモンピーク(共鳴角)シフトの関係を示すグラフである。
【図4】実施例1においてヘキサン中で測定を行ったときのプラズモン曲線(入射角−反射率プロット)である。
【図5】実施例1においてC6AzC12SSC12のSAM膜の光異性化をヘキサン中で測定したときの時間−反射率プロットである。
【図6】実施例1において他の溶媒中で測定したときの時間−反射率プロットであり、(a)はペンタン、(b)はヘプタン、(c)はオクタン中で測定を行った結果を示す。
【図7】実施例2においてC6AzC12SSC18のSAM膜の光異性化をヘキサン中で測定したときの時間−反射率プロットである。
【図8】アゾベンゼンチオール、C6AzC12SSC12、C6AzC12SSC18それぞれのSAM膜のシス体とトランス体の誘電率を溶媒の誘電率に対してプロットしたグラフである。
【符号の説明】
1 SAM膜
2 高屈折率ガラス基板
3 金薄膜
4 高屈折率プリズム
5 PTFE O−リング
6 PTFE フローセル
7 供給口
8 排出口
9 セル
10 紫外光又は可視光照射方向
11 レーザー光
12 反射光
20 SAM膜
21 フリーの溶媒分子
22 取り込まれた溶媒分子
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己組織化膜に生じる光異性化の測定を有機溶媒中で表面プラズモン共鳴分光により行うことにより、光異性化を高感度で、かつ、実時間(リアルタイム)で測定しうるようにした表面光反応の検出、測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金をはじめとする金属表面に含硫黄有機分子を化学吸着させて作製する単分子膜は、自己組織化膜(Self−Assembled Monolayers、以下、SAM膜という)と呼ばれ、高度に分子配列し、かつ、安定した単分子膜であることなどから近年注目されている。このSAM膜のうち、アゾベンゼン基を有する非対称構造の化合物で形成させたものは、紫外線照射によりアゾベンゼン基がトランス体からシス体に光異性化する特徴を有し、光によって表面の濡れ性や接着性、摩擦などを制御することが可能であり、本発明者らはSAM膜中において光異性化反応しうる新規なアゾベンゼンジスルフィド化合物を合成した(特願平11−72906号)。
このようなSAM膜の表面における光異性化反応の評価は、金属薄膜上にSAM膜を形成させたのち大気中で光異性化反応を行わせ、表面プラズモン共鳴分光法を用いて膜の誘電率の変化(=屈折率、膜厚の変化)を測定することにより行われている(S.D. Evans, S.R. Johnson, H. Ringsdorf, L.M. Williams, H. Wolf: Langmiur 4, 6436 (1998), Z. Sekkat, J. Wood, Y. Geerts, W. Knoll: Langmiur 12, 2976 (1996))。
金属と誘電体との境界面に発生する電子の疎密波である表面プラズモンをレーザー光で励起させ、その結果減衰した反射光強度とそのときの光の入射角をモニターし、最も減衰したときの入射角(共鳴角)と誘電体の誘電率との相関関係から各種反応の速度やサンプルの濃度、温度などを測定する、表面プラズモン共鳴分光法は、表面の反応等を高感度に測定できるものとしてバイオセンサをはじめとする種々の用途で広く利用されている測定方法である。
しかし従来の表面プラズモン共鳴分光を利用した表面光反応の測定は、感度が十分でなく、光異性化が生起してもその反応を検出することができない場合があり、また、反応が検出されても測定の確度が低いため、異なる化合物から形成させた膜同士の光異性化反応において比較が行えるようなデータが得られないなどの問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、SAM膜に生じる光異性化を高感度で、かつ、実時間で、検出、測定することのできる、表面プラズモン共鳴分光を用いた表面光反応の検出、測定方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意研究した結果、SAM膜の光異性化反応を有機溶媒(良溶媒)中で行わせ、有機溶媒中での表面プラズモン共鳴分光を利用して測定すると、光異性化反応が促進されるとともにプラズモンピーク(共鳴角)シフトが増幅され、高感度で表面光反応を検出しうることを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、自己組織化膜に、該膜に対し良溶媒である有機溶媒を接触させ、該有機溶媒中で該自己組織化膜に生じる光異性化を表面プラズモン共鳴分光により測定する方法であって、前記自己組織化膜が、直鎖アルキルを分子末端とする化合物から形成されていて、前記良溶媒が炭素数5〜12の直鎖アルカンから選ばれるか、又は前記自己組織化膜が、芳香環を分子末端とする化合物から形成されており、前記良溶媒が芳香族系溶媒であることを特徴とする表面光反応の検出、測定方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明における光異性化反応の測定方法を図面を参照して説明する。
図1は本発明方法に用いることのできる表面プラズモン共鳴分光装置の一例の概略を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。図中、1は高屈折率ガラス基板2上の金薄膜3の上に形成されたSAM膜、4は高屈折率プリズム、5はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のO−リング、6はPTFEのフローセルである。ガラス基板2はプリズム4と同じ材質であり、マッチングオイルで光学的に接合されている。本発明においてSAM膜1の光異性化反応の測定の際には、セル9を有機溶媒で満たし、矢印10の方向から紫外光又は可視光を照射する。このとき、SAM膜1と金薄膜3の間で表面プラズモンの発生する入射角でレーザー光11を照射し、出射光12の光エネルギーを測定して表面プラズモン共鳴分光測定を行う。7は有機溶媒等の供給口、8は排出口である。
【0006】
本発明におけるSAM膜は、光異性化反応を生起する自己組織化膜であれば特に制限はなく、非対称構造のジスルフィドもしくはチオール化合物より形成させることができる。例えばジスルフィド化合物として以下の構造のアゾベンゼンジスルフィド化合物があげられる。
【0007】
【化1】
【0008】
上記化合物は金薄膜に吸着させた場合にジスルフィド部位が選択的に吸着するため、上記構造式に示したような形でそれぞれ高度に分子配列して並び、単分子膜を形成する。
【0009】
本発明において用いることのできる有機溶媒は、SAM膜を形成する化合物の分子末端に対して良溶媒であればよい。例えば上記のアゾベンゼンジスルフィド化合物のうち、ヘキシルアゾベンゼンを末端とする化合物(直鎖アルキル末端の化合物)については直鎖アルカンが用いられ、アゾベンゼンを末端とする化合物(芳香環末端の化合物)については芳香族系溶媒が用いられる。直鎖アルカン、芳香族系溶媒のいずれも、汎用溶媒として用いられる程度の沸点範囲、粘度範囲のものであれば問題なく使用することができる。直鎖アルカンについては炭素数5〜12のものが用いられる、具体的には例えばヘキサン、ヘプタン、ペンタン、オクタン、ノナン、デカンなどがあげられる。芳香族系溶媒としては、具体的には例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどがあげられる。
なお、水をはじめとする極性溶媒は上記のような非極性分子に対して貧溶媒なので、水中や水溶液中での表面プラズモン共鳴分光では高感度の測定を行うことができない。
本発明の光異性化反応の検出、測定方法は、SAM膜に良溶媒である有機溶媒を接触させ、有機溶媒中で光異性化を生起させて、それを表面プラズモン共鳴分光によって測定する以外は特に制限はない。他の条件や測定装置等は、通常の表面プラズモン共鳴分光法の測定と同様のものを用いることができる。
【0010】
本発明において有機溶媒中での光異性化反応の表面プラズモン共鳴分光法により、その測定感度が向上する理由としては、以下のようなことが考えられる。
(1)良溶媒との接触により、SAM膜形成化合物の分子末端が自由に動ける状態(液体膜状態)になり、光異性化反応自体を起こりやすくすることができる。
(2)大気中などで光異性化反応を行わせた場合に比べ、SAM膜の膜厚の変化が大きくなる。
図2の説明図に示すように、(a)の大気中での光異性化反応におけるSAM膜の膜厚の変化に比べ、(b)に示す溶媒中での反応による膜厚の変化は、溶媒分子の取り込み/放出の影響によって大きくなることが実験的に確認されている。(図中、20はSAM膜、21はフリーの溶媒分子、22はSAM膜に取り込まれた溶媒分子を示す。)これによって反応量が同じであってもプラズモンピークシフトを増大させることができ、測定の感度を上げることができる。
(3)プラズモン吸収位置のシフト幅は、膜(サンプル)と接する媒体の屈折率の影響を受け変化する。
【0011】
例えば金薄膜上に膜形成を行わせて膜形成前の裸の金の吸収位置と膜形成後の吸収位置の差をとった場合、そのシフト幅と媒体の誘電率(E、屈折率の二乗)との相関関係は図3に示すようになる(膜の厚みd=36Å、屈折率n=1.40として計算した)。図3中に○で示したのは、左から大気中(E〜1.0)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンを媒体とした場合であり、大気中近傍ではシフトの変化が小さいのと比較して、ペンタン等の溶媒を媒体とすると溶媒の種類によってプラズモンのシフトが大きく変化するのがわかる。したがって屈折率の異なる複数種の有機溶媒を使用して測定を行うことにより、多点測定の大きな効果を得ることができ、測定の確度を上げることができる。
また、膜と溶媒相の屈折率のバランスから計算して、光異性化反応によるプラズモンピークシフトがより大きくなる屈折率を有する有機溶媒を選択し、より確度の高い測定を行うことができる。
【0012】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
参考例1(12−[4−(4−ヘキシルフェニルアゾ)フェノキシ]ドデシルドデシルジスルフィド(12−[4−(4−hexylphenylazo)phenoxy]dodecyl dodecyl disulfide)の合成)
4−(12−ブロモドデシルオキシ)−4’−ヘキシルアゾベンゼン 0.94gを60℃のDMF 40mlに溶かし、Na2S2O3・5H2O 0.56gの5ml水溶液をゆっくりと加えた。この溶液を60℃に保ち、4時間撹拌した。反応溶液に水を注ぎ、析出物を濾過した。さらに濾物をアセトンに懸濁させて濾過し未反応の原料を取り除いた。次に1mlのNaOH(0.080g)水溶液にAr雰囲気下でドデカンチオール0.40gのメタノール(2ml)溶液を加え1時間撹拌した。この溶液に、先ほどの濾物(アゾベンゼンのbunte塩)のDMF(40ml)溶液をゆっくりと滴下した。滴下途中で析出物がみられた。この溶液をAr雰囲気下で6時間撹拌し、その後水を加え析出物を濾別した。濾物をTHFと混合し、溶け残りを濾過して取り除いた。濾液を濃縮してヘキサンと酢酸エチル(20対1)の混合溶媒を展開溶媒にして、カラムクロマト分離を行った。その後アセトン、ヘキサンでそれぞれ再結晶を行い、黄白色の固体を320mg単離した。
Yield: 26%
mp: 68.5−69.5℃
1H−NMR(CDCl3): d=0.88 (3H, t, −CH3), 0.89 (3H, t, −CH3), 1.4−1.6 (40H, m, CH2−CH 2−CH2), 1.65 (4H, t, t, S−S−CH2−CH 2), 1.67 (2H, t, t, Ar−CH2−CH 2), 1.82 (2H, t, t, Ar−O−CH2−CH 2), 2.68 (2H, t, Ar−CH 2), 2.68 (4H, t, S−S−CH 2), 4.03 (2H, t, Ar−O−CH 2), 6.99 (2H, d, Ar−H), 7.29 (2H, d, Ar−H), 7.79 (2H, d, Ar−H), 7.89 (2H, d, Ar−H)
【0013】
参考例2(12−[4−(4−ヘキシルフェニルアゾ)フェノキシ]ドデシルオクタデシルジスルフィド(12−[4−(4−hexylphenylazo)phenoxy]dodecyl octadecyl disulfide)の合成)
4−(12−ブロモドデシルオキシ)−4’−ヘキシルアゾベンゼン 1.03gを60℃のDMF 40mlに溶かし、Na2S2O3・5H2O 0.56gの5ml水溶液をゆっくりと加えた。この溶液を60℃に保ち、4時間撹拌した。反応溶液に水を注ぎ、析出物を濾過した。さらに濾物をアセトンに懸濁させて濾過し、未反応の原料を取り除いた。次に、オクタデカンチオール0.572gをTHFとメタノール(14ml:6ml)の混合溶媒に溶かしAr雰囲気下で1mlのNaOH(0.80g)水溶液に加え1時間撹拌した。この溶液に、先ほどの濾物(アゾベンゼンのbunte塩)をジメチルアセトアミドとメタノール(28ml:12ml)の混合溶液に溶かしたものを滴下した。滴下途中で析出物がみられた。この溶液をAr雰囲気下で6時間撹拌した後、水を加え析出物を濾別した。濾物をTHFと混合し、溶け残りを濾過して取り除いた。濾液を濃縮してエタノールとTHFの混合溶媒で再結晶したのち、ヘキサンで再結晶した。得られた粗精製物をヘキサンとクロロホルム(3:1)の混合溶媒を展開溶媒にして、カラムクロマト分離を行った。黄白色のアモルファス固体を490mg得た。融点測定から液晶性を示す化合物であることが分かった。
Yield: 32%
mp: 77.0−78.0℃
TNI: 79.5℃
1H−NMR(CDCl3): d=0.89 (3H, t, −CH3), 0.90 (3H, t, −CH3), 1.4−1.6 (52H, m, CH2−CH 2−CH2), 1.66 (4H, t, t, S−S−CH2−CH 2), 1.68 (2H, t, t, Ar−CH2−CH 2), 1.82 (2H, t, t, Ar−O−CH2−CH 2), 2.69 (2H, t, Ar−CH 2), 2.69 (4H, t, S−S−CH 2), 4.04 (2H, t, Ar−O−CH 2), 7.01 (2H, d, Ar−H), 7.30 (2H, d, Ar−H), 7.80 (2H, d, Ar−H), 7.90 (2H, d, Ar−H)
【0014】
実施例1
図1に示した装置を用い、以下の手順で参考例1で合成したジスルフィド化合物(以下、C6AzC12SSC12という)のSAM膜の光異性化の検出、測定を行った。レーザー光はHe−Neレーザーを使用した。
▲1▼まず、SAM膜を形成させる前にヘキサンを供給口7から入れて、ヘキサン中で金基板3のみのプラズモン測定(角度分散モード:入射角−反射率プロット)を行い、金(bare gold)の厚み(d(Au))と屈折率(ε’、ε”)を実験的に決定した。
▲2▼次にC6AzC12SSC12の0.25mmol/L ヘキサン溶液で溶液セル9内を置換し、SAM膜1を形成させた(分子鎖長:36Å)。この時、プラズモン吸収変化の大きく観察された角度(60°)に入射角を固定して、膜形成による反射率変化をその場観察した(キネテクスモード:時間−反射率プロット)。この結果から膜形成の終了を確認した。
▲3▼その後、供給口7からヘキサンを供給し、溶液セル9内を再度置換(リンス)し、セル9内をヘキサンで満たした。
▲4▼セル裏面のガラスを通して紫外光(364nm)と可視光(440nm)を交互に入射し、その反射率変化をモニターした(キネテクスモード:時間−反射率プロット)。
▲5▼紫外光及び可視光照射による反応が完了したそれぞれの時点で、プラズモンの角度分散測定を行い、プラズモン吸収位置のシフト幅からシス体(紫外光照射)及びトランス体(可視光照射)のそれぞれの有効膜厚を求めた。
▲6▼その後、ペンタン、ヘプタン、オクタンのそれぞれを用い、上記▲3▼〜▲5▼の操作を繰返した。ペンタン、ヘプタン、オクタンについては金基板のみのプラズモン曲線の実測は行わず、ヘキサンの測定で求めたε’、ε”及びd(Au)から計算してプラズモン曲線を書き、それぞれの溶媒中での金のみのピーク位置を決定して、プラズモンシフト(Δ)を求めた。
【0015】
図4に、ヘキサン溶液中での金表面(実線)及びSAM膜作製後可視光照射(○:トランス体)と紫外光照射(▲:シス体)のプラズモン曲線を示す。SAM膜形成によりプラズモンピークが右にシフトし、トランス体はシス体よりもさらに右にシフトしている。
図5はヘキサン中で生じた光異性化を経時的に反射率によってリアルタイムで測定した結果を示すグラフである。「UV」が紫外光照射時、「Vis」が可視光照射時であり、比較として大気中での測定結果(入射角25.2°)も示した。大気中での測定では反射率の変化が小さく、シス体−トランス体の変化が明確に読み取れないのに対し、ヘキサン中での測定結果は紫外線照射時と可視光照射時とで反射率が大きく変化して、リアルタイムで光異性化反応の様子が明瞭に示されている。
ペンタン、ヘプタン、オクタン中で行った測定の結果をそれぞれ図6(a)〜(c)に示した。いずれも光異性化反応により反射率が大きく変化している。
【0016】
実施例2
C6AzC12SSC12に代えて参考例2で合成したジスルフィド化合物(以下、C6AzC12SSC18という)を用いた以外は実施例1と同様にしてSAM膜の光異性化の検出、測定を行った。ヘキサン中での測定の結果を、大気中での測定結果と併せて図7に示す。実施例1と同様、大気中では検知された反射率の変化が小さく光異性化反応がほとんど検出できないのに対し、ヘキサン中で行った測定ではシス体−トランス体の変化がはっきり示されているのがわかる。
【0017】
実施例3
実施例1、2と同様にしてアゾベンゼンチオールのSAM膜の光異性化反応による誘電率変化(膜厚を36Åと固定した時の屈折率変化)を、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン中で測定した。
得られたシス体及びトランス体のSAM膜の誘電率を、各溶媒の誘電率に対しプロットしたグラフを図8に示す。C6AzC12SSC12及びC6AzC12SSC18のグラフも併せて示した。
図8よりジスルフィド化合物のほうがアゾベンゼンチオールに比べて異性化による屈折率変化が大きいことがわかる。
なお、大気中での測定では図5、図7に示したように異性化による変化が小さいため、このような膜間での比較を行えるようなデータは得られなかった。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、表面プラズモン共鳴分光を利用して、SAM膜の光異性化による屈折率の変化を高感度で、かつ、実時間で、検出、測定することができる。したがって反応過程を反射率変化として、その場(in situ)観察することが可能である(反応の速度論に関するデータも得られる)。また、屈折率の異なる複数種の有機溶媒を使用して測定を行うことにより、さらに確度の高いデータを得ることができ、異なる化合物から形成されたSAM膜同士の光異性化について比較することなども可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面プラズモン共鳴分光装置の一例の概略を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図2】SAM膜の光異性化による膜厚変化を模式的に示す説明図であり、(a)は大気中、(b)は有機溶媒中での光異性化反応を示す。
【図3】膜形成において膜に接触する媒体の誘電率に対するプラズモンピーク(共鳴角)シフトの関係を示すグラフである。
【図4】実施例1においてヘキサン中で測定を行ったときのプラズモン曲線(入射角−反射率プロット)である。
【図5】実施例1においてC6AzC12SSC12のSAM膜の光異性化をヘキサン中で測定したときの時間−反射率プロットである。
【図6】実施例1において他の溶媒中で測定したときの時間−反射率プロットであり、(a)はペンタン、(b)はヘプタン、(c)はオクタン中で測定を行った結果を示す。
【図7】実施例2においてC6AzC12SSC18のSAM膜の光異性化をヘキサン中で測定したときの時間−反射率プロットである。
【図8】アゾベンゼンチオール、C6AzC12SSC12、C6AzC12SSC18それぞれのSAM膜のシス体とトランス体の誘電率を溶媒の誘電率に対してプロットしたグラフである。
【符号の説明】
1 SAM膜
2 高屈折率ガラス基板
3 金薄膜
4 高屈折率プリズム
5 PTFE O−リング
6 PTFE フローセル
7 供給口
8 排出口
9 セル
10 紫外光又は可視光照射方向
11 レーザー光
12 反射光
20 SAM膜
21 フリーの溶媒分子
22 取り込まれた溶媒分子
Claims (1)
- 自己組織化膜に、該膜に対し良溶媒である有機溶媒を接触させ、該有機溶媒中で該自己組織化膜に生じる光異性化を表面プラズモン共鳴分光により測定する方法であって、前記自己組織化膜が、直鎖アルキルを分子末端とする化合物から形成されていて、前記良溶媒が炭素数5〜12の直鎖アルカンから選ばれるか、又は前記自己組織化膜が、芳香環を分子末端とする化合物から形成されており、前記良溶媒が芳香族系溶媒であることを特徴とする表面光反応の検出、測定方法。
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