JP3584227B2 - 吸音部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大きいものとしては工事現場や造船所で使用される吸音パネル、一般向けとしては家屋やビルの室内側壁面や間仕切り又はカーテンなどに共通して使用される吸音部材の吸音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
無反響室の壁面構造としてよく知られているように、壁面の表面に整然と並んだ凹凸を設けることにより、壁面に衝突した音は前記凹凸によって互いに打ち消し合い、反響音を大幅に軽減することができる。しかしながらこのような凹凸はどこにでも設けることができるというものでなく、通常はスタジオなどの録音現場の内壁に使用されている程度であり、工事現場や造船所或いは通常のビルや家庭の内壁に使用するというのことはコスト面から考えて通って不可能であった。ましてや、カーテンのような折り畳み・伸展を必要とするような部材については到底、吸音構造を付与するというようなことは不可能と考えられていた。
【0003】
一般的に工事現場や造船所では、比重が大きく吸音効果の高い鉛を内部に埋設したパネルが吸音壁として用いられるが、このようなパネルは、非常に重く取り扱いに不便である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無反響室の壁面構造の吸音効果に或る程度近い吸音効果を簡易に奏することができ、工場現場や造船所は勿論、一般のビルや家屋の内壁、間仕切り、カーテンなどあらゆる部署に簡易に適用することのできる吸音部材を開発することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
「請求項1」は、本発明にかかる吸音部材(A1)の基本的構成である。即ち、「非多孔質底面部材(2)と、該底面部材(2)上に繰り返し整列配置された多孔質中空四角錐連続体の吸音表面部材(1)とで構成されている吸音部材(A1)であって、
1つの中空四角錐(1a)の底面(2a)は、正方形或いは菱形の正四辺形であり、
隣接する中空四角錐(1a)は、その正四辺形底面(2a)の一つの角部(4)を共有し、
隣接する中空四角錐(1a)間に位置する中空四角錐(1b)は、前記隣接する中空四角錐(1a)の正四辺形底面(2a)の1斜辺(5)を共有している」ことを特徴とする。
【0006】
吸音部材(A)の実施例としては、吸音壁面(実施例1(A1);図3に示す)を形成する場合と、吸音カーテン(実施例2(A2);図5、6に示す)のようなものを形成する場合とに分かれる。「請求項1」は前者(A1)の場合で、底面部材(2)を構成する非多孔質板材上に、多孔質板材を図7に示すようなジグザグの斜線(6a)に沿って折曲した折曲体(或る角度を持って隣接する二つの合同三角形(9)で3角錐(10)が順次逆向きに形成されている3角錐集合体(3))を複数段にわたって貼り付け、上下の3角錐(10)を接合することによって正方形或いは菱形の正四辺形底面(2a)を有する中空四角錐(1a)が多数繰り返し整列配置された構造の吸音部材(A1)が構成される。
【0007】
このように構成された吸音部材(A1)を、図1に示す騒音発生現場(20)を取り囲む壁面(21)に張り付けて壁面(21)に吸音機能を付与し、或いは吸音部材(A1)そのものにて吸音壁面を構成する。騒音源(20)から発生した騒音が図9のように中空四角錐(1a)の形成面にぶつかると、その一部は中空四角錐(1a)の通孔(7)を通って中空四角錐(1a)内に入り込み、中空四角錐(1a)内で反射して互いに打ち消し合い吸音する。中空四角錐(1a)は、その頂点(11)からその角部(4)に向かって次第にその内寸が縮小しているので、高音から低音まで吸音する事が出来る。吸音メカニズムは後述する。なお、中空四角錐(1a)に形成された通孔(7)は、理解を容易にするために大きく記載しているが、微細気孔でもよい事は言うまでもない。この事は本発明全体に共通して言える事である。
【0008】
一方、吸音表面部材(1)にて反射した残りの音は、中空四角錐(1a)の谷間で互いにうち消し合い吸音する。その結果、騒音源から発生した騒音は、本発明の吸音部材(A)にて効果的に吸音される。
【0009】
「請求項2」は吸音カーテン(実施例2(A2);図5、6に示す)のようなものの1例で「非多孔質且つ屈伸可能な底面部材(2)と、該底面部材(2)の両側にて繰り返し整列配置された多孔質中空四角錐連続体の表・裏側吸音表面部材(1イ)(1ロ)とで構成されている吸音部材(A2)であって、
1つの中空四角錐(1a)の底面(2a)は、正方形或いは菱形の正四辺形であり、
隣接する中空四角錐(1a)は、その正四辺形底面(2a)の一つの角部(4)を共有し、
隣接する中空四角錐(1a)間に位置する中空四角錐(1b)は、前記隣接する中空四角錐(1a)の正四辺形底面(2a)の1斜辺(5)を共有し、
表・裏側吸音表面部材(1イ)(1ロ)が中空四角錐(1a)の斜辺(5)及び稜線(6)にて屈伸可能となっている」ことを特徴とする。
【0010】
請求項2のようにすることで吸音部材(A)を斜辺(5)及び稜線(6)から折り畳み・展開可能にする事が出来、吸音機能を有するカーテンや間仕切りを形成する事が出来る。
【0011】
「請求項3」は多孔質中空四角錐(1a)(1b)の気孔率に関し、「前記気孔率が40〜60%」の場合、優れた吸音効果を発揮する。即ち、気孔率が小さ過ぎると、多孔質中空四角錐(1a)(1b)内部への騒音の導入が困難になり、逆に大きすぎると一旦多孔質中空四角錐(1a)(1b)内に入り込んだ騒音が漏れ出すことになる。45%前後(プラス・マイナス5%程度)の気孔率が最も吸音効果が高い。
【0012】
「請求項4」は本発明の更なる改良で「多孔質中空四角錐(1a)(1b)に消臭材を担持させた」ことを特徴とするものであり、これにより消臭機能が付加され、例えば病院のように静謐さと薬品臭の消臭とが要求される用途には好適な部材となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。実施例1の吸音部材(A1)は、正方形或いは菱形の正四辺形底面(2a)を有する中空四角錐(1a)が多数繰り返し整列配置されている吸音表面部材(1)と、正四辺形底面(2a)の連続体で構成された底面部材(2)とで構成されている。
【0014】
前記吸音表面部材(1)は、気孔率40〜60%(最も好ましくは45%前後。以下、同じ。)の多孔質体、例えばステンレスやNiの線材又は粒状体の焼結体、パンチングメタル、多孔質板材、含浸させたフェノールで硬化した厚紙、織布、不織布、多孔質無機材、多孔質有機材などで構成されている。
【0015】
折り曲げ可能な部材、例えば、焼結体、織布、不織布、パンチングメタルや厚紙にて吸音表面部材(1)が構成される場合は、図7に示すように多孔質板材をジグザグの斜線(6a)に沿って折曲し、この折曲体(隣接する二つの三角形で立体3角錐(10)が順次逆向きに形成されている立体3角錐の集合体(3))を複数段にわたって貼り付け、上下の変形立体3角錐を接合することによって正方形或いは菱形の正四辺形底面(2a)を有する中空四角錐(1a)が多数繰り返し整列配置された構造の吸音部材(A)とする。(勿論、中空四角錐(1a)が多数繰り返し整列配置された構造の吸音表面部材(1)を一体成形にて形成してもよい。)
【0016】
底面部材(2)は非多孔質の板材が用いられる。これにより、中空四角錐(1a)の内部は中空四角錐(1a)の微細通孔(7)を介して外界と連通しており、背面の底面部材(2)は遮断される事になる。
【0017】
折り曲げ不可能な部材、例えば石膏ボードや軽量発泡コンクリートのような多孔質無機材や木質繊維板のような多孔質有機材で吸音表面部材(1)が形成される場合には、成形型を用いた成形によって四角錐(1a)の集合体からなる吸音表面部材(1)が形成され、背面に前述同様の非多孔性板状の底面部材(2)が裏打ちされ、四角錐(1a)の内部が中空で四角錐(1a)に形成されている微細通孔(7)を通して外界と連通している吸音部材(A)が形成される。前記吸音表面部材(1)の気孔率は40〜60%(最も好ましくは45%前後)である。
【0018】
このように構成された吸音部材(A)は工事現場や造船所の製造現場(20)の周囲を取り囲むパネル材(21)の壁面に張り付け、或いは吸音部材(A)そのまま壁面構成部材として使用し、騒音源(20)の周囲を取り囲む。中空四角錐(1a)の形成面は騒音源(20)側に向けられている。騒音源(20)から発生した騒音は四方八方に拡散して行き、前記騒音が中空四角錐(1a)の形成面にぶつかる。ぶつかった騒音の一部は中空四角錐(1a)の通孔(7)を通って中空四角錐(1a)内に入り込み、中空四角錐(1a)内で反射して互いに打ち消し合い吸音する。中空四角錐(1a)は、その頂点(11)からその角部(4)に向かって次第にその内寸が縮小しているので、波長の短い高音から波長の長い低音まで広範囲の騒音を吸音する事が出来る。
【0019】
次に本発明の吸音メカニズムを図8に従って簡単に説明する。吸音機能を有する中空四角錐(1a)はスプリング(19)に対応し、音量は重量(m)の重錘(18)に対応する振動系として取り扱うことができる。重量(m)の重錘(18)に対応する騒音が中空四角錐(1a)の内部に入り込むと、スプリング(19)の伸縮にて表現されるように中空四角錐(1a)内部における減衰によって効果的に吸音されることになる。吸音の対象となる騒音は、低い周波数から高い周波数に至る様々な周波数にて構成されかつそのピーク値も様々である。多孔質中空四角錐(1a)の内部は、頂部(11)部分の空間が最大であり、角(4)に近づくにつれて次第にその空間は小さくなるので、通孔(7)を通って多孔質中空四角錐(1a)内に入った騒音は、減衰効果及び多孔質中空四角錐(1a)内で反響したこと同士が互いに干渉して打ち消し合い、幅広い周波数領域で吸音されることになる。
【0020】
一方、吸音表面部材(1)の表面にて反射した残りの音は、隣接する中空四角錐(1a)の谷間で互いに打ち消し合い吸音される。その結果、騒音源(20)から発生した騒音は、本発明の吸音部材(A1)にて効果的に吸音される。本発明の吸音部材(A1)は鉛のような重比重物を使用しておらず、例えばフェノール含浸硬化厚紙部材のような軽比重部材をその吸音表面部材(1)に使用しているので、取り扱いが非常に簡単である。なお、図9において吸音表面部材(1)に或る程度大きな通孔(7)が穿設されているように記載したが、図のような大きな通孔(7)でも良いが、微細な通孔が無数に穿設されたようなものでもよい。この点は図10の場合も同じである。
【0021】
本発明にかかる吸音部材(A2)の第2実施例は、吸音カーテン(実施例2;図5、6に示す)のようなものであって、室内の開口部(8)に折り畳み・展開可能に使用することができるようなものである。以下、第2実施例について説明する。この場合は前述のように、折り畳み・展開可能でなければならないので、第1実施例の場合と異なり、構成素材は可撓性が要求される。一般的には折り曲げ線での繰り返して行われる屈伸に十分耐えることができる樹脂シート部材、織布或いは不織布を使用することが好ましい。
【0022】
吸音カーテンのような吸音部材(A2)の場合には、図5に示すように、正方形或いは菱形の正四辺形底面(2a)の連続体である底面部材(2)と、その両側に中空四角錐(1a)が多数繰り返し整列配置された表・裏側吸音表面部材(1イ)(1ロ)で構成されることになる。両側の中空四角錐(1a)は底面部材(2)の両側に対称に配列される事になる。両側の中空四角錐(1a)は気孔率40〜60%(好ましくは45%プラス・マイナス5%程度)の多孔質体で形成される。表・裏側吸音表面部材(1イ)(1ロ)及び正四辺形底面(2a)は、その折り曲げ線(斜辺(5)、稜線(6))部分及び稜線(6)に対応した正四辺形底面(2a)の中央折曲線(2b)で屈伸可能となっており、展開した時は図5のように稜線(6)および斜辺(5)部分の角度が開き、閉じたときは図6のように前記角度が小さくなる。これにより図1、2に示すように開口部(8)に配設された場合、簡単に開口部(8)の開閉が行われると同時に前記開口部(8)における吸音を達成することができる。吸音メカニズムは前述と同じである。
【0023】
なお、吸音カーテンのような吸音部材(A2)の表・裏側吸音表面部材(1イ)(1ロ)に酸化チタンのような消臭機能を有する可視光線反応型光触媒を塗着しておけば、吸音効果と消臭効果と同時に得ることができる。この点は実施例1の非伸縮型吸音部材(A2)の場合にも適用することができる。吸音効果と消臭効果と同時に得ることができるような吸音部材(A2)は、特に病院のような吸音による静寂さと薬品臭の消臭が要求されるような部署において有効である。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、吸音部材の表面が多数の多孔質中空四角錐連続体で構成されているので、これを騒音発生現場を取り囲む壁面に張り付けるか或いは吸音部材そのものにて吸音壁面を構成すると、壁面に吸音機能が付与されることになり、騒音源から発生した騒音を中空四角錐内に取り込んで効果的に吸音する事が出来る。また、吸音表面部材にて反射した残りの音も中空四角錐の谷間で互いにうち消し合い吸音するので、騒音源から発生した全ての騒音は効果的に吸音されることになる。
【0025】
また、屈伸可能な底面部材の両側に中空四角錐を対称にて多数繰り返して整列配置し、その斜辺及び稜線にて屈伸可能とする事で、吸音機能を有するカーテンや間仕切りのようなものにも適用する事が出来る。更に、気孔率を40〜60%とする事で高い吸音効果を達成する事が出来るし、消臭材を担持させる事で消臭機能を付加する事が出来、例えば病院のように静謐さと薬品臭の消臭とが要求される用途にも使用する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例における使用例の斜視図
【図2】本発明の第1,2実施例の使用例の正面図
【図3】図2の使用例において、第2実施例の吸音部材を折り畳んだ状態の正面図
【図4】本発明の第1実施例の拡大斜視図
【図5】本発明の第2実施例の拡大斜視図
【図6】図5の使用例において、吸音部材を折り畳んだ状態の正面図
【図7】本発明に使用する三角錘連続体の斜視図
【図8】本発明における吸音メカニズムの模式図
【図9】本発明の第1実施例の拡大断面図
【図10】本発明の第2実施例の拡大断面図
【符号の説明】
(A) 吸音部材
(1) 吸音表面部材
(1a) 中空四角錐
(1b) 中空四角錐
(2) 底面部材
(2a) 正四辺形底面
(3) 3角錐連続体
(4) 角部
(5) 1斜辺

Claims (4)

  1. 非多孔質底面部材と、該底面部材上に繰り返し整列配置された多孔質中空四角錐連続体の吸音表面部材とで構成されている吸音部材であって、
    1つの中空四角錐の底面は、正方形或いは菱形の正四辺形であり、
    隣接する中空四角錐は、その正四辺形底面の一つの角部を共有し、
    隣接する中空四角錐間に位置する中空四角錐は、前記隣接する中空四角錐の正四辺形底面の1斜辺を共有していることを特徴とする吸音部材。
  2. 非多孔質且つ屈伸可能な底面部材と、該底面部材の両側にて繰り返し整列配置された多孔質中空四角錐連続体の表・裏側吸音表面部材とで構成されている吸音部材であって、
    1つの中空四角錐の底面は、正方形或いは菱形の正四辺形であり、
    隣接する中空四角錐は、その正四辺形底面の一つの角部を共有し、
    隣接する中空四角錐間に位置する中空四角錐は、前記隣接する中空四角錐の正四辺形底面の1斜辺を共有し、
    表・裏側吸音表面部材が中空四角錐の斜辺及び稜線にて屈伸可能となっていることを特徴とする吸音部材。
  3. 多孔質中空四角錐の気孔率40〜60%であることを特徴とする請求項1〜2に記載の吸音部材。
  4. 多孔質中空四角錐に消臭材を担持させたことを特徴とする請求項1〜3に記載の吸音部材。
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