JP3583865B2 - 触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法および自動車排気系接合部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種内燃機関の排気ガス系に設置される排気ガス浄化用触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法およびこの接合で一体化した排気系接合部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種内燃機関の排気ガス浄化用触媒コンバータの担体には、ステンレス鋼等の耐熱鋼製のメタルケースに、ステンレス製平箔と波箔を巻回或いは積層して形成したハニカム体を挿入したメタル担体、またはセラミック製ハニカム体を挿入したセラミック担体が使用されている。そして、これらの担体に触媒を担持して触媒コンバータとした後、排気ガス系に取り付けられる。
【0003】
自動車用エンジンには、複数のシリンダーからの排気ガスを集合させる部材(以後、エキゾーストマニホールドと記す)が取り付けられ、この下流に触媒コンバータが取り付けられる態様がある。(なお、エキゾーストマニホールドの形状により、エキゾーストマニホールドと触媒コンバータの排気管サイズを合わせるために、テーパ部を有するロウト状のレジューサを介して両者を取り付ける態様もある。以下、このレジューサも触媒コンバータの一部として、本発明を説明する。)
従来、エキゾーストマニホールド3と触媒コンバータ1は、図9に示すように、それぞれの会合面にフランジ4,5を形成し、これらをボルトナットを用いて機械的に固着させていた。しかしながら最近では、コストダウンのため部品点数を削減するために、フランジレスの態様を採り、両者を接合構造で一体化する方向にある。
この接合方法としてアーク溶接が用いられる。アーク溶接としては、主に炭酸ガスを用いる炭酸ガスアーク溶接、アルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスを用いるMAGアーク溶接、そして、アルゴンガスとタングステン電極を用いるTIGアーク溶接が適用されている。しかしながら、これらの溶接コストは、触媒コンバータの価格に対してかなり高い。
【0004】
特に、エキゾーストマニホールドが炭素を多量に含有する鋳鉄製の場合には、鋳鉄(エキゾーストマニホールド)とステンレス(メタルケースもしくはレジューサ)の異種材料接合となる。このとき、アーク溶接のごとき溶融溶接では、極めて脆い化合物が形成されるため、従来、接合が不可能とされていた。これに対し、Niワイヤ等を溶接材料に用いることで、脆い化合物の生成を抑えようとする取り組みがなされているが、Niワイヤは極めて高価であり、この方法は工業的に意味をなさない。
【0005】
たとえば鋳鉄とステンレス鋼の異種接合については、摩擦圧接による方法(溶接学会論文集 第14巻 第2号 p248〜p254)等がある。しかしながら、すべて試験片ベースの検討であり、実ワークへの適用については不十分である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決するものであって、自動車排気ガス浄化用の触媒コンバータのメタルケースとエキゾーストマニホールドを、精度良く低コストで接合する方法と該接合方法で一体化した自動車用排気系部材を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を要旨とする。
すなわち、触媒コンバータのメタルケースとエキゾーストマニホールドの接合において、
(1)メタルケースの接合面が、またレジューサを用いる場合にはその接合面も、板厚1.0 mm 〜2.0 mm 、外径60 mm 〜200 mm 、外径のバラツキが真円の±0.5%以内であり、該メタルケース内にハニカム体を挿入固定して担体を構成し、排気ガス浄化用の触媒を担持して触媒コンバータとした後、該触媒コンバータのメタルケースと、エキゾーストマニホールドを、或いはレジューサを介して摩擦圧接で接合することを特徴とする。
(2)メタルケースの接合面が、またレジューサを用いる場合にはその接合面も、板厚1.0 mm 〜2.0 mm 、外径60 mm 〜200 mm 、外径のバラツキが真円の±0.5%以内であり、該メタルケース内にハニカム体を挿入固定して担体を構成し、排気ガス浄化用の触媒を担持し触媒コンバータとした後、該触媒コンバータのメタルケースとエキゾーストマニホールドを、異形断面のレジューサを介して摩擦圧接で接合することを特徴とする。
(3)メタルケースの接合面が、またレジューサを用いる場合にはその接合面も、板厚1.0 mm 〜2.0 mm 、外径60 mm 〜200 mm 、外径のバラツキが真円の±0.5%以内であり、該メタルケース内に排気ガス浄化用の触媒を担持したハニカム体を挿入固定して触媒コンバータとした後、該触媒コンバータのメタルケースと、エキゾーストマニホールドを摩擦圧接で接合することを特徴とする。
(4)メタルケースの接合面が、またレジューサを用いる場合にはその接合面も、板厚1.0 mm 〜2.0 mm 、外径60 mm 〜200 mm 、外径のバラツキが真円の±0.5%以内であり、該メタルケース内に排気ガス浄化用の触媒を担持したハニカム体を挿入固定して触媒コンバータとした後、該触媒コンバータのメタルケースとエキゾーストマニホールドを、異形断面のレジューサを介して摩擦圧接で接合することを特徴とする。
(5)前記(1),(2),(3)或いは(4)記載のエキゾーストマニホールドとして鋳鉄製のエキゾーストマニホールドを用いることを特徴とする触媒コンバータとエキゾーストマニホールドの接合方法である。
(6)エキゾーストマニホールドとして球状黒鉛鋳鉄製のエキゾーストマニホールドを用いることを特徴とする前記(1),(2),(3)或いは(4)の何れか1項に記載の触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法である。
(7)メタルケースおよびレジューサの接合面の外径のバラツキが真円の±0.2%以内であることを特徴とする前記(1),(2),(3)或いは(4)の何れか1項に記載の触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法である。
(8)エキゾーストマニホールド、レジューサ、ハニカム体を内装した触媒コンバータのメタルケース、パイプおよびフランジを少なくとも1箇所以上摩擦圧接で接合したことを特徴とする自動車排気系接合部材である。
(9)エキゾーストマニホールドとして鋳鉄製のものを用いることを特徴とする前記(8)記載の自動車用排気系接合部材である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、自動車排気ガス浄化用の触媒コンバータのメタルケースと、エキゾーストマニホールドを摩擦圧接で接合する、そして、両者のサイズに差異があるときには、異形断面のレジューサを介して、両者を摩擦圧接で接合する。
【0009】
従来用いられてきたフランジによるボルトナット機械接合では、エキゾーストマニホールドとメタルケースにそれぞれフランジを形成する必要があった。これは、設計上制約を与えるだけでなく、コストアップにつながる。さらに、ボルトナットによる機械接合は、生産性が低い。
また、アーク溶接による接合は、ランニングコストがかなり高いし、鋳鉄製エキゾーストマニホールドとステンレス製メタルケースのアーク溶接は溶接品質上好ましくない。
そのため本発明は、アーク以外の熱源を用いることにより、安定に、かつ比較的低コストで、エキゾーストマニホールドとメタルケース、そして両者のサイズに差異があるときには、異形断面のレジューサを介して両者を摩擦圧接する。
【0010】
以下に本発明を具体的に説明する。
図1は、エキゾーストマニホールド3とメタルケース1を接合する態様を模式的に示し、図2は、エキゾーストマニホールド3とメタルケース1を異形断面のレジューサ2を介して接合する態様を模式的に示す。また図3は、摩擦圧接方法の原理を示す。
【0011】
すなわち、一方の被接合材6(エキゾーストマニホールドに相当)は水平方向左右に移動可能なチャック8にクランプされ、他方の被接合材7(メタルケース或いはレジューサに相当)は回転軸9に連結されたチャック10にクランプされ、各被接合材6,7の端面を押圧しながら他方の被接合材7を回転することにより、被接合材6,7の接触面を発熱、圧接する。
【0012】
この摩擦圧接は固相接合であり、溶融接合とは全く異なる。すなわち、液相が出現しないため、異材接合が可能である。特に、鋳鉄とステンレス鋼の接合においては、溶融接合で脆弱な化合物が生成されるのに対し、固相接合である摩擦圧接ではそれがない。したがって、鋳鉄製のエキゾーストマニホールド3とステンレス製のメタルケース1もしくはレジューサ2を接合するときには最適の接合方法である。
【0013】
メタルケース1もしくはレジューサ2とエキゾーストマニホールド3の端面はこのような摩擦圧接によって接合できるが、この際、メタルケース1もしくはレジューサ2としては板厚を1.0〜2.0mm、外径を60〜200mmとする薄肉大径のものを使用できる。この摩擦圧接には被接合材の径のバラツキは少ない方が好ましく、外径のバラツキは真円に対して±0.5%以内、好ましくは±0.2%以内におさめるのがよい。このように高い真円度のメタルケースもしくはレジューサを得るためには、メタルケースもしくはレジューサに真円化処理等の手段をとるのが好ましく、これにより健全な接合部を有する継手を効率よく得ることが出来る。
【0014】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。
▲1▼エキゾーストマニホールドとメタルケースの接合
厚さ50ミクロンの平箔および波箔を重ねて巻回しハニカム体を構成した。このハニカム体を下記メタルケースに挿入固定した後、下記エキゾーストマニホールドと下記条件で摩擦圧接した。
メタルケース接合部のサイズおよび材質
外 径 63.5mm
肉 厚 1.5mm
材 質 耐熱・耐食性鋼(19Cr−0.4Nb−0.4Cu)
外径のバラツキ ±0.5%
エキゾーストマニホールドのサイズおよび材質
接合面の外径 64.0mm
肉 厚 2.5mm
材 質 耐熱・耐食性鋼(17Cr−1.2Mo)
圧接条件
回転数 2400rpm
ヒーティング力 800kgf
アプセット力 800kgf
メタルケースの外径のバラツキは、真円に対して±0.5%であり、本発明の範囲であるために接合部分は良好であった。
試験体から8方向分割したサンプルを切り出して曲げ試験を実施したところ、結果はすべて良好であった。またエンジン試験機で900サイクルの冷熱耐久試験を負荷しても問題がなかった。
【0015】
▲2▼エキゾーストマニホールドとレジューサの接合
メタルケースとレジューサを接合したものを、下記エキゾーストマニホールドと下記条件で摩擦圧接した。
レジューサの外径のバラツキは、真円に対して±0.1%であり、本発明の範囲であるために接合部分は特に良好であった。
試験体から8方向分割したサンプルを切り出して曲げ試験を実施したところ、結果はすべて良好であった。またエンジン試験機で900サイクルの冷熱耐久試験を負荷しても問題がなかった。
【0016】
▲3▼エキゾーストマニホールドとメタルケースの接合
厚さ50ミクロンの平箔および波箔を重ねて巻回しハニカム体を構成した。このハニカム体を下記メタルケースに挿入固定した後、下記エキゾーストマニホールドと下記条件で摩擦圧接した。
メタルケース接合部のサイズおよび材質
外 径 63.5mm
肉 厚 1.5mm
材 質 耐熱・耐食性鋼(19Cr−0.4Nb−0.4Cu)
外径のバラツキ ±0.1%
エキゾーストマニホールドのサイズおよび材質
接合面の外径 64.0mm
肉 厚 2.5mm
材 質 ダクタイル鋳鉄(3.8C−2.5Si)
圧接条件
回転数 2400rpm
ヒーティング力 800kgf
アプセット力 800kgf
メタルケースの接合部外径のバラツキは、真円に対して±0.1%であり、本発明の範囲であるために接合部分は良好であった。
試験体から8方向分割したサンプルを切り出して曲げ試験を実施したところ、結果はすべて良好であった。またエンジン試験機で900サイクルの冷熱耐久試験を負荷しても問題がなかった。
【0017】
▲4▼エキゾーストマニホールド、メタルケース、レジューサ、フランジを摩擦圧接で接合した自動車排気系部材
(a)エキゾーストマニホールド
エキゾーストマニホールドの形状を図4に示す。
接合面の外径 90.0mm
肉 厚 4.0mm
材 質 ダクタイル鋳鉄(3.8C−2.5Si)
(b)メタルケース
メタルケースの形状を図5に示す。
外 径 89.0mm
肉 厚 1.5mm
材 質 耐熱・耐食性鋼(19Cr−0.4Nb−0.4Cu)
外径のバラツキ ±0.1%
厚さ50ミクロンの平箔および波箔を重ねて巻回しハニカム体を構成し、該メタルケースに挿入固定した。
(c)レジューサ
レジューサの形状を図6に示す。
外 径(メタルケース側) 89.0mm
外 径(フランジ側) 58.0mm
肉 厚 1.5mm
材 質 耐熱・耐食性鋼(19Cr−0.4Nb−0.4Cu)
外径のバラツキ ±0.1%
(d)フランジ
フランジの形状を図7に示す。
肉 厚 1.5mm
材 質 耐熱・耐食性鋼(19Cr−0.4Nb−0.4Cu)
【0018】
上記の部材(a),(b),(c),(d)をそれぞれ以下の圧接条件で一体化した。一体化した自動車排気系接合部材を図8に示す。図中1はメタルケース、2はレジューサ、3はエキゾーストマニホールド、4はフランジ、5はそれぞれの接合部である。
周速度 8.0m/sec
ヒーティング加圧力密度 6.8kgf/mm2
アプセット力加圧力密度 6.8kgf/mm2
試験体から8方向分割したサンプルを切り出して曲げ試験を実施したところ、結果はすべて良好であった。またエンジン試験機で900サイクルの冷熱耐久試験を負荷しても問題がなかった。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、自動車排気ガス浄化用の触媒コンバータのメタルケースもしくはレジューサとエキゾーストマニホールドを、摩擦圧接を用いて、精度良く接合し、かつ健全な接合部を有する継手を生産性良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の触媒コンバータのメタルケースとエキゾーストマニホールドの接合方法を示す図。
【図2】本発明の触媒コンバータのメタルケースおよびレジューサとエキゾーストマニホールドの接合方法を示す図。
【図3】摩擦圧接の原理を示す図。
【図4】エキゾーストマニホールドの形状の一例を示す図。
【図5】メタルケースの形状の一例を示す図。
【図6】レジューサの形状の一例を示す図。
【図7】フランジの形状の一例を示す図。
【図8】摩擦圧接で一体化した自動車排気系部材の一例を示す図。
【図9】従来方法による触媒コンバータのメタルケースとエキゾーストマニホールドの接合方法を示す図。
【符号の説明】
1 メタルケース
2 レジューサ
3 エキゾーストマニホールド
4 フランジ
5 フランジ
6 被接合材(エキゾーストマニホールド)
7 被接合材(メタルケース或いはレジューサ)
8 チャック
9 回転軸
10 チャック
11,12 接合部
Claims (9)
- メタルケースの接合面が、またレジューサを用いる場合にはその接合面も、板厚1.0 mm 〜2.0 mm 、外径60 mm 〜200 mm 、外径のバラツキが真円の±0.5%以内であり、該メタルケース内にハニカム体を挿入固定して担体を構成し、排気ガス浄化用の触媒を担持して触媒コンバータとした後、該触媒コンバータのメタルケースと、エキゾーストマニホールドを摩擦圧接で接合することを特徴とする触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法。
- メタルケースの接合面が、またレジューサを用いる場合にはその接合面も、板厚1.0 mm 〜2.0 mm 、外径60 mm 〜200 mm 、外径のバラツキが真円の±0.5%以内であり、該メタルケース内にハニカム体を挿入固定して担体を構成し、排気ガス浄化用の触媒を担持し触媒コンバータとした後、該触媒コンバータのメタルケースとエキゾーストマニホールドを、異形断面のレジューサを介して摩擦圧接で接合することを特徴とする触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法。
- メタルケースの接合面が、またレジューサを用いる場合にはその接合面も、板厚1.0 mm 〜2.0 mm 、外径60 mm 〜200 mm 、外径のバラツキが真円の±0.5%以内であり、該メタルケース内に排気ガス浄化用の触媒を担持したハニカム体を挿入固定して触媒コンバータとした後、該触媒コンバータのメタルケースと、エキゾーストマニホールドを摩擦圧接で接合することを特徴とする触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法。
- メタルケースの接合面が、またレジューサを用いる場合にはその接合面も、板厚1.0 mm 〜2.0 mm 、外径60 mm 〜200 mm 、外径のバラツキが真円の±0.5%以内であり、該メタルケース内に排気ガス浄化用の触媒を担持したハニカム体を挿入固定して触媒コンバータとした後、該触媒コンバータのメタルケースとエキゾーストマニホールドを、異形断面のレジューサを介して摩擦圧接で接合することを特徴とする触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法。
- エキゾーストマニホールドとして鋳鉄製のエキゾーストマニホールドを用いることを特徴とする請求項1,2,3或いは4の何れか1項に記載の触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法。
- エキゾーストマニホールドとして球状黒鉛鋳鉄製のエキゾーストマニホールドを用いることを特徴とする請求項1,2,3或いは4の何れか1項に記載の触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法。
- メタルケースおよびレジューサの接合面の外径のバラツキが真円の±0.2%以内であることを特徴とする請求項1,2,3,或いは4の何れか1項に記載の触媒コンバータと自動車排気系部材の接合方法。
- エキゾーストマニホールド、レジューサ、ハニカム体を内装した触媒コンバータのメタルケース、パイプおよびフランジを少なくとも1箇所以上摩擦圧接で接合したことを特徴とする自動車排気系接合部材。
- エキゾーストマニホールドとして鋳鉄製のものを用いることを特徴とする請求項8記載の自動車用排気系接合部材。
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