JP3583584B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

芳香族ポリカーボネートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルの原料の供給量を制御しつつ、複数の重合槽を用いて芳香族ポリカーボネートを連続的に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは各種強度に優れている上、透明性に優れた樹脂であり、幅広い分野で利用されている。このポリカーボネートの工業的製法としては、ビスフェノールAとホスゲンとを塩化メチレン溶媒中で反応させる界面重合法が一般的であるが、この方法は工業的に取扱いの難しいホスゲンや塩化メチレンを用いる必要があることから、近年、これら化合物を用いず、ジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとビスフェノールAなどの芳香族ジオール化合物とを、無溶媒下、溶融状態でエステル交換反応させてポリカーボネートを製造する方法が提案され、一部実用化されている。
【0003】
ジフェニルカーボネートとビスフェノールAとの反応においては、生成するポリマー(芳香族ポリカーボネート)の分子量増加に従い反応混合物の粘度が上昇していくので、通常、この反応は多段の重合槽を用いて実施する必要がある(特開平2−153925号、同6−157739号)。ところが、各重合槽では、エステル交換反応により副生するフェノールを系外に排出しながら反応を行う必要があるので、この際に、反応原料(モノマー)の一部も微量ながら一緒に排出されるおそれがある。したがって、通常、損失量の多い側の成分となるジフェニルカーボネートを反応量論比よりも過剰になるように第1重合槽に供給する。しかしながら、触媒量、温度、圧力、翼回転数などの反応条件により、あるいは同一反応条件での連続運転を実施しても、副生するフェノールの排出部の仕様条件によって原料モノマーの損失量が変動するため、最終的に得られるポリマーの物性が変動する結果となる。特に、ジフェニルカーボネートの比率が低下した場合には、ポリマー末端の水酸基濃度が高くなり、耐熱老化性の良好なポリマーが得られにくい。
【0004】
また、色相、耐熱老化性などの物性に優れる芳香族ポリカーボネートを製造する方法として、いくつかの提案もあるが必ずしも充分な手法とは言えない。
例えば、特開平6−157739号公報では、末端封止剤を反応器入口でのポリマーの極限粘度[η]が0.2dl/g(粘度平均分子量7,400に相当)以上である反応器の少なくとも一つに添加する方法が開示されているが、この方法では反応が実質上高温、高真空の条件下で行われるため、添加した停止剤のうち実際にポリマー末端の反応に寄与する比率が変動しやすく、安定して末端水酸基量を制御することに問題があり、後述する比較例2に示すように、高い末端水酸基濃度のポリカーボネートしか得られない。
特開平7−82368号公報では、ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルの少なくとも一方のモノマーを逐次添加する方法が開示されているが、生成ポリマーの分子量を上げるに留まり、末端基量を最適に制御するには到らず品質的に満足できるものは得られていない。
【0005】
特開平3−252421号公報においては、末端基量、分子量を制御する目的で反応途中において芳香族ポリカーボネートの数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000に達したところで、該芳香族ポリカーボネートの重量(Wa)、数平均分子量(Mn)、全末端基中に占めるヒドロキシル基末端の割合(OH%)とアリールカーボネート末端の割合(Ph%)を測定し、OH%が所望の値より高い場合には所定量のジアリールカーボネートを加え、また、OH%が所望の値より低い場合には、所定量のジヒドロキシジアリール化合物を追加して重合することにより、所望のOH%とMnとを有するポリカーボネートを得る製造方法が提案されている。しかし、この方法では反応途中で生成するポリマーの分析を行いながら重合を制御する必要があり、プロセス操作上の何らかの変動で重合条件が変動した場合に臨機応変に対応することができず、安定的に末端基量と分子量とを制御するには難がある。
【0006】
また、特開平8−109251号公報でも同様、中間的に生成するオリゴカーボネート中のOH基と炭酸アリール末端基との比を適時に測定し、続いて更なる芳香族ジヒドロキシ化合物又は炭酸ジアリールエステルを導入して、末端OH基が25%より大きく50%未満の範囲で、OH末端基と炭酸アリール末端基のある比を経験的に確立せしめ、更に縮合させる製造法が提案されている。しかし、この方法でも反応途中でポリマーの分析をする必要があり、該特許公報で示されているようなオンラインでの赤外線スペクトル分析測定によるモニタリングでは精度に欠け、充分な制御ができない。
【0007】
更に、特開平8−113637号公報では生成する副生物のフェノール類又はアルコール類の量を連続的に測定し、温度が100〜280℃、圧力が10Torr〜5kg/cmGの範囲で温度及び圧力を制御して、ポリカーボネートプレポリマーを製造した後、これを更に反応させポリカーボネートを製造する方法が開示されているが、ここでは品質的に満足できる末端基量と分子量に制御する方法が明らかにされていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ジフェニルカーボネートとビスフェノールAとを多段の重合槽を用いて芳香族ポリカーボネートを合成する際に、重合条件を簡便な指標で制御して、色相、耐熱老化性などの品質の優れた芳香族ポリカーボネートを得る方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記実状に鑑み種々の検討を行った結果、副生するフェノールの排出の際に同伴損失するジフェニルカーボネートの量が予想以上に変動することに着目し、第1重合槽への原料モノマーの供給量ならびに各重合槽でのジフェニルカーボネートの損失量とポリマー末端の水酸基濃度の関係を確認検討したところ、生成ポリカーボネートプレポリマーの粘度平均分子量が10,000に到達する重合槽の反応段階で、該重合槽以前(当該重合槽を含む)の重合槽における反応で消費された各モノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計のモル比を制御することにより、安定した品質のポリマーが得られる条件を見い出し本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
反応原料のモノマーとしての芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換触媒の存在下、直列に配列した複数の重合槽を用いて反応させることにより粘度平均分子量が15,000以上の芳香族ポリカーボネートを連続的に製造する方法において、
生成ポリカーボネートプレポリマーの粘度平均分子量が10,000に到達する重合槽の反応段階で、該重合槽以前の重合槽における反応で消費された各モノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計のモル比(炭酸ジエステル/芳香族ジオール化合物)が、1.010〜1.050であるように制御して反応させることを特徴とする、芳香族ポリカーボネートの製造方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の芳香族ポリカーボネートの製造方法について、さらに具体的に説明する。
本発明では、芳香族ポリカーボネートを製造する原料(モノマー)として、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとが用いられる。
芳香族ジオール化合物:
本発明の製造において用いられる芳香族ジオール化合物は、一般式(1)で示される化合物である。
【0012】
【化1】
Figure 0003583584
【0013】
(式中、Aは単結合、炭素数1〜10の置換又は未置換の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基、及び−O−、−S−、−CO−、−SO−で示される2価の基からなる群から選ばれるものであり、XおよびYは同一又は相互に異なるものであって、ハロゲン又は炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれるものであり、pおよびqは0又は1〜2の整数である。)
【0014】
いくつかの代表例を挙げれば、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類;4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3′,5,5′−テトラメチルビフェニル等のビフェノール類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどである。これらの中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0015】
これらの化合物を2種以上併用すること(共重合体)もできるし、又、分岐状芳香族ポリカーボネートを製造しようとする場合は、少量の3価以上の多価フェノールを共重合させることもできる。
【0016】
炭酸ジエステル;
炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(4−クロルフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロルフェニル)カーボネートなどがある。
【0017】
エステル交換触媒;
芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとの溶融重合反応においては、通常、エステル交換触媒が使用される。かかるエステル交換触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩が用いられ、このようなアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩、無機酸塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコラートなどが好ましく挙げられる。
【0018】
より具体的には、アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が挙げられる。また、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウムなどの無機セシウム塩、酢酸セシウム、ステアリン酸セシウム等の有機酸セシウム塩、セシウムメチレート、セシウムエチレート等のセシウムアルコラート、セシウムフェノレート、ビスフェノールAのジセシウム塩などのフェノール類のセシウム塩などが挙げられる。
【0019】
更にまた、アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムなどが挙げられる。これらの化合物は単独で、あるいは組み合わせて用いられる。
【0020】
本発明では、触媒として、上記のようなアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物とともに、塩基性化合物を用いることもできる。このような塩基性化合物としては、たとえば高温で易分解性あるいは揮発性であり、最終の芳香族ポリカーボネートに残留することが少なく、色相等の物性に悪影響を与えない含窒素塩基性化合物およびホスホニウムヒドロキシド化合物が挙げられ、具体的には、以下のような化合物が挙げられる。
【0021】
含窒素塩基性化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(MeNOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(EtNOH)などのアルキル、アリール、アルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの三級アミン類、RNH(式中Rはメチル、エチルなどのアルキル、フェニル、トルイルなどのアリール基などである)で示される二級アミン類、RNH(式中Rは上記と同じである)で示される一級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類、ニトリロ三酢酸ナトリウム等のイミノカルボン酸誘導体又はその塩、あるいはアンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド(MeNBH)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(BuNBH)などの塩基性塩があげられる。
【0022】
又、ホスホニウムヒドロキシド化合物としては、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、アリルトリフェニルホスホニウムヒドロキシドなどがあげられる。
【0023】
使用される触媒量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の場合には、芳香族ジオール化合物1モルに対して、通常1×10−8〜1×10−4モル、好ましくは1×10−7〜1×10−5モルの量で用いられ、また、塩基性化合物の場合には、芳香族ジオール化合物1モルに対して、通常1×10−7〜1×10−1モル、好ましくは1×10−6〜1×10−2モルの量で用いられる。
【0024】
次に、本発明に係わる芳香族ポリカーボネートの製造方法を説明する。
本発明では、ポリマーの反応に用いる反応装置は任意の装置を用いることができる。通常、タービン翼、パドル翼、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック(株)製)、サンメラー翼(三菱重工業(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼(日立製作所(株)製)等を具備した1または2以上の竪型重合槽に引き続き、円板型、かご型等の横型一軸タイプの重合槽やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業(株)製)、バイボラック(住友重機械工業(株)製)、あるいはメガネ翼、格子翼(日立製作所(株)製)等を具備した横型二軸タイプの重合槽を組み合わせて用いることができる。
【0025】
次に、図1に本発明の連続重合法に用いる装置の1例を示し、反応原料のモノマーとして、芳香族ジオールの例としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステル化合物の例としてジフェニルカーボネートを用いて説明する。
【0026】
図1には、5基の重合槽が直列に設置されている。図中、1は原料導入管、2はエステル交換触媒導入管、3は副生物排出管、4、4′、4″、および4’’’は竪型重合槽、5、5’、5”はマックスブレンド撹拌翼、6はダブルヘリカルリボン翼である。また、7は横型重合槽の水平断面略図を示し、8、9は格子翼(尚、格子翼8と9は直角に交差している)、10は第1プレポリマー抜出管、11は第2プレポリマー抜出管、12は第3プレポリマー抜出管、13は第4プレポリマー抜出管、14は最終製品ポリマー抜出管を示す。
【0027】
反応は不活性ガス、例えば窒素ガス雰囲気下、まず第1重合槽4に芳香族ジオール化合物としてのビスフェノールAと炭酸ジエステルとしてのジフェニルカーボネートとの溶融混合物を、原料導入管1を通して導入し、また、触媒としてのアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物及び/または塩基性化合物を、触媒導入管2を介して上記重合槽内に連続的に供給し、各重合槽においては、副生したフェノールを副生物排出管3から除去しながら、3〜7段の各重合槽(図1では5基)を用いて進められる。
【0028】
反応条件としては、温度:150〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr、平均滞留時間:5〜150分の範囲とし、各重合槽においては、反応の進行とともに副生するフェノールの排出をより効果的なものとするために、段階的に上記反応条件範囲内で、より高温、より高真空に設定する。なお、得られるポリカーボネートの色相などの品質低下を防止するためには、できるだけ低温、低滞留時間の設定が好ましい。
【0029】
第1重合槽に供給されるジフェニルカーボネートとビスフェノールAの割合は、特に限定されるものではないが、通常、1.010〜1.200の範囲である。本発明の方法においては、生成プレポリマーの粘度平均分子量が10,000に到達する重合槽の反応段階(実施例1〜5では4槽目)で、該重合槽以前の重合槽(実施例では1〜4槽)における反応で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計の比率(炭酸ジエステル/芳香族ジオール化合物)がモル比で1.010〜1.050の範囲内であればよく、好ましくは1.020〜1.050の範囲、より好ましくは、1.020〜1.045の範囲に制御されていることが必要である。
生成ポリカーボネートのプレポリマーの粘度平均分子量が10,000に到達する重合槽の反応段階で、該重合槽以前の重合槽における反応で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計のモル比が1.010未満であれば、粘度平均分子量が15,000以上の所定の分子量まで重合を進めても、生成芳香族ポリカーボネート末端の水酸基濃度が充分減少せず、耐熱老化性などの品質が劣る。また逆に、それら両成分のモル比が1.050より多いと反応が進みにくいため、所定の粘度平均分子量まで到達させるのに長時間を要したり、重合温度を高くしたりする必要が生じ、このため、得られる芳香族ポリカーボネートの色相もよくない。
【0030】
プレポリマーの粘度平均分子量を10,000まで到達させることは、通常、3段目以降の重合槽にて達成される。
生成プレポリマーの粘度平均分子量が10,000に到達する重合槽の反応段階で、該重合槽以前の重合槽における反応で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計のモル比(炭酸ジエステル/芳香族ジオール化合物)を前記範囲内に制御するためには、前記粘度平均分子量に到達するまでの反応に係わる重合エリア全体において、ジフェニルカーボネートならびにビスフェノールAそれぞれの全供給量〔計量仕込;ΣDPC(IN)およびΣBPA(IN)〕と、副生物排出管からフェノールに随伴して排出されるそれぞれの全損失量〔排出液量の測定とその組成分析による;ΣDPC(OUT)及びΣBPA(OUT)〕とを把握することにより、次式によりモノマー原単位のモル比を算出する:
【0031】
【数1】
Figure 0003583584
【0032】
そしてこのモル比が前記制御範囲外にある場合には、通常、第1重合槽において不足分の成分モノマーを追加供給するが、場合により、第1重合槽より後の移送配管または重合槽において一括あるいは分割供給し制御範囲内に安定するよう追加供給することにより調整する。
したがって、通常、副生フェノールの系外への排出部には、ジフェニルカーボネート等のフェノール以外の成分損失をできるだけ少なくするために、多管円筒式、二重管式、コイル式、スパイラル式等の熱交換器、あるいは棚段式、充填塔式等の凝縮器を付帯設備として配置してもよい。
【0033】
プレポリマーの粘度平均分子量を15,000以上の所定の分子量まで到達させるためには、さらに直列に配列した重合槽を用いて反応を進行せさることもありうるが、粘度平均分子量が10,000に到達した時点の重合槽よりも後段の重合槽では、モノマー損失量はほとんど無視できるほど少量であるので、前記制御範囲への配慮の必要性はない。
最終重合槽から排出される粘度平均分子量15,000以上の芳香族ポリカーボネートは、色相YIが1.8以下、末端水酸基濃度が1,500ppm以下、好ましくは10〜1,000ppm、の色相ならびに耐熱老化性等の品質に優れるポリマーである。
【0034】
本発明で得られる芳香族ポリカーボネートに、通常の耐熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤などの添加剤を添加してもよい。このような添加剤は、溶融状態にある芳香族ポリカーボネートに添加することもできるし、また一旦ペレタイズされた芳香族ポリカーボネートを再溶融して添加することもできる。なお、再溶融は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
なお、得られた芳香族ポリカーボネートの分析は下記の測定方法により行った。
(1) 粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ粘度計を用いて、塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し以下の式より粘度平均分子量(Mv)を求めた。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83
【0036】
(2) 色相
射出成形機J100SS−2(日本製鋼所製)を用いて、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて、厚み3mm、縦100mm、横100mmの正方形シートを射出成形した。
この射出成形シートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)で、色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z)
このYI値が大きいほど着色していることを示す。
【0037】
(3) 末端水酸基濃度
四塩化チタン/酢酸法(Makromol. Chem. 88, 215(1965))により比色定量を行った。
(4) 耐熱老化性
射出成形シートについて空気雰囲気下、140℃に制御したギアオ−ブン(TABAI製)中に240時間保持した後の色相悪化の度合いを、△YI値(初期YI値との差)により評価した。
また、該重合槽以前の重合槽における重合で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計の比率、即ち、モノマー原単位のモル比(DPC/BPA)(モル比)は、以下の式に従い具体的に算出した。
【0038】
【数2】
Figure 0003583584
【0039】
なお、排出液中のDPCおよびBPAの組成分析は、ガスクロマトグラフ(HEWLETT PACKARD 5890 Series II)により分析定量した。
【0040】
実施例1
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを一定のモル比(DPC/BPAモル比=1.040)に混合調整した溶融混合物を合わせて401.064モル/時の流量で、原料導入管を介して、図1に示すマックスブレンド翼を具備し、常圧、窒素雰囲気下、210℃に制御した容量100Lの第1竪型撹拌重合槽4内に連続供給し、平均滞留時間が30分になるように槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ液面レベルを一定に保った。また、上記原料混合物の供給を開始すると同時に、触媒として2重量%の炭酸セシウム水溶液を3.2ml/時(ビスフェノールA1モルに対し、1×10−6モル)の流量で連続供給した。
槽底より排出された重合液は、引き続き第2、第3、第4(第2、第3槽:マックスブレンド翼、第4槽:ダブルヘリカルリボン翼)の容量100Lの竪型撹拌重合槽、ならびに、第5の格子翼を具備した容量150Lの横型重合槽に逐次連続供給され、第5重合槽底部のポリマー排出口から抜き出されたポリカーボネートは脱揮冷却後、ペレタイズ化した。
【0041】
反応の間は、第2〜第5各重合槽の平均滞留時間が60分となるように液面レベルの制御を行い、また、同時に副生するフェノールの留去も行った。この際に図1に示す3からのビスフェノールAとジフェニルカーボネートの排出液量を測定した。
第2〜第5各重合槽での反応条件は、それぞれ第2重合槽(210℃、100Torr、110rpm)、第3重合槽(240℃、15Torr、75rpm)、第4重合槽(270℃、0.5Torr、25rpm)、第5重合槽(280℃、0.5Torr、10rpm)で、反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度に条件設定した。
各槽が定常安定化した時点での、第3、第4、第5重合槽より抜き出した各ポリマーの粘度平均分子量は、それぞれ、4,800、12,000、20,400であった。
このとき、粘度平均分子量が10,000に到達した第4重合槽以前の重合槽における反応で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計のモル比率(DPC/BPA)は1.0251であり、また、粘度平均分子量が15,000以上となった第5重合槽より抜き出したポリカーボネートの色相YIは1.5、末端水酸基濃度は940ppmであった。
【0042】
実施例2
実施例1において、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートのモル比を1.060(DPC/BPA)に混合調整した溶融混合物を合わせて404.996モル/時の流量で第1重合槽に連続供給した以外は、実施例1と同様の反応条件で行い、ポリカーボネートを得た。
各槽が定常安定化した時点での、第3、第4、第5重合槽より抜き出したポリマーの粘度平均分子量は、それぞれ4,700、10,300、18,100であった。
このとき、粘度平均分子量が10,000に到達した第4重合槽以前の重合槽における反応で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計の比率(DPC/BPA)は1.0425であり、また、粘度平均分子量が15,000以上となった第5反応槽より抜き出したポリカーボネートの色相YIは1.4、末端水酸基濃度は410ppmであった。
【0043】
比較例1
実施例1において、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートのモル比を1.020(DPC/BPA)に混合調整した溶融混合物を合わせて397.132モル/時の流量で第1重合槽に連続供給した以外は、実施例1と同様の反応条件で行い、ポリカーボネートを得た。
各槽が定常安定化した時点での、第3、第4、第5重合槽より抜き出したポリマーの粘度平均分子量は、それぞれ4,900、13,400、22,100であった。
粘度平均分子量が10,000に到達した第4重合槽以前の重合槽における反応で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計のモル比(DPC/BPA)は1.0073であり、また、粘度平均分子量が15,000以上となった第5重合槽より抜き出したポリカーボネートの色相YIは1.6、末端水酸基濃度は1,760ppmであった。
粘度平均分子量は高いものの、末端水酸基濃度が充分低下したポリカーボネートは得られなかった。
【0044】
実施例3〜5、比較例2
比較例1において、粘度平均分子量が10,000に到達した第4重合槽以前の重合槽における反応で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計の比率(DPC/BPA)を制御範囲内に制御することを目的として、110℃で溶融させたジフェニルカーボネートを第2〜第4重合槽に表2に示す流量で追加供給した以外は比較例1と同様の反応条件で重合を行い、ポリカーボネートを得た。
重合条件及び結果を表2に示す。
【0045】
比較例3
実施例1において、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートのモル比を1.075(DPC/BPA)に混合調整した溶融混合物を合わせて305.959モル/時の流量で第1重合槽に連続供給し、平均滞留時間を第1重合槽40分、第2〜第5の各重合槽において80分とした以外は、実施例1と同様の反応条件で行い、ポリカーボネートを得た。
各槽が定常安定化した時点での、第3、第4、第5重合槽より抜き出したポリマーの粘度平均分子量は、それぞれ5,300、10,200、15,400であった。
このとき、粘度平均分子量が10,000に到達した第4重合槽以前の重合槽における反応で消費されたモノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計の比率(DPC/BPA)は1.0576であり、また、粘度平均分子量が15,000以上となった第5重合槽より抜き出したポリカーボネートの色相YIは2.3、末端水酸基濃度は140ppmであった。
末端水酸基濃度は低いものの、所定の粘度平均分子量に到達させるために反応に長時間を要したため色相YIが低下してしまった。
【0046】
実施例1〜5及び比較例1〜3のそれぞれの重合条件を表1に示し、同じくDPC/BPAモル比、プレポリマーの粘度平均分子量、生成ポリカーボネートの物性等を表2にまとめて示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003583584
【0048】
【表2】
Figure 0003583584
【0049】
【発明の効果】
本発明による芳香族ポリカーボネートの製造によれば、色相、耐熱老化性などの品質に優れた高分子量の芳香族ポリカーボネートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法のフローシート図である。
【符号の説明】
1 原料導入管
2 触媒導入管
3 副生物排出管
4 竪型重合槽
5 撹拌翼
7 横型重合槽
10 プレポリマー抜出管
14 最終製品ポリマー抜出管

Claims (4)

  1. 反応原料のモノマーとしての芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換触媒の存在下、直列に配列した複数の重合槽を用いて反応させることにより粘度平均分子量が15,000以上の芳香族ポリカーボネートを連続的に製造する方法において、
    生成ポリカーボネートプレポリマーの粘度平均分子量が10,000に到達する重合槽の反応段階で、該重合槽以前の重合槽における反応で消費された各モノマー及び該重合槽内のポリマーに含有される未反応モノマーそれぞれの合計のモル比(炭酸ジエステル/芳香族ジオール化合物)が、1.010〜1.050であるように制御して反応させることを特徴とする、芳香族ポリカーボネートの製造方法。
  2. 重合槽あるいは移送配管に供給される炭酸ジエステルと芳香族ジオール化合物の流量ならびに反応操作中の重合槽から排出される留出液中に含まれる炭酸ジエステルと芳香族ジオール化合物の排出量を測定して、モル比(炭酸ジエステル/芳香族ジオール化合物)を制御する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 重合槽の数が3〜7であることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 芳香族ジオール化合物がビスフェノールAであり、炭酸ジエステルがジフェニルカーボネートであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
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