JP3583056B2 - 指の訓練用手袋および訓練用装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、いわゆる「寝たきり」状態が続いている人や、脳梗塞などの後遺症が起きている人などの指を強制的に屈曲させて、機能回復訓練の補助を果たし、また、脳の機能を高め活性化を促す指の訓練用手袋および訓練用装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長期にわたっていわゆる「寝たきり」状態が続いている人や、脳梗塞などの後遺症が起きている人など(以下、「患者」という)の機能回復訓練(リハビリテーション)の一つとして、手や足の指を強制的に屈曲させることがある。
【0003】
この機能回復訓練は、作業療法士や介護人など(以下、「補助者」という)がその患者の手や足の指をマッサージする要領で、全部の指を一度に閉じたり開いたり(ジャンケンのグー、パーの繰り返し)あるいは指を一本ずつ順次折り曲げたり伸ばしたりすることを補助することで行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような機能回復訓練には補助者がいなくてはならず、患者一人で自らこの機能回復訓練を容易に行うことのできる、手や足の指の機能回復訓練用補助具の開発が望まれていた。
【0005】
この発明は、前記の実情を背景として創作されたもので、補助者を必要とせずに、患者一人で自ら機能回復訓練を行うことを可能にする指の訓練用手袋および訓練用装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は前記の目的を達成するために、以下の構成を採用した。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、または足の指を覆うように装着される装着部と、それぞれの指に対応して前記装着部内に設けられ、温度に応じて各指を個別に屈曲させる屈曲手段とを備え、前記各屈曲手段は、指の表側および裏側の少なくとも一方に設けられると共に、各指に沿うように設けられた棒状の形状記憶材料であり、前記形状記憶材料は、1つの指に対して少なくとも1つ配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、手または足の指を覆うように装着される装着部と、それぞれの指に対応して前記装着部内に設けられ、温度に応じて各指を個別に屈曲させる屈曲手段とを備え、前記各屈曲手段は、指の表側および裏側の少なくとも一方に設けられると共に、各指に沿うように設けられた板状の形状記憶材料であることを特徴とする
【0009】
請求項1、2に記載の発明によれば、指の伸張状態と屈曲状態との間での屈曲運動を起こす屈曲手段が装着部に設けられているので、装着部に温度変化が与えられると、指の訓練用手袋が患者の指を強制的に屈曲、伸張させ、補助者がいなくても患者一人で自ら機能回復訓練を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の指の訓練用手袋において、前記各屈曲手段の厚さは親指に位置するものから順に厚くなっていることを特徴とする。請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の指の訓練用手袋において、前記各屈曲手段の周りには熱伝導部がそれぞれ設けられ、前記各熱伝導部の厚さは親指に位置するものから順に厚くなっていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載の指の訓練用手袋を用いた指の訓練用装置であって、前記各屈曲手段の前記形状記憶材料に通電するために、これらの屈曲手段に接続された通電手段と、前記通電手段を経て前記各屈曲手段にパルス状の電気を加える駆動手段とを備え、前記各屈曲手段の形状記憶材料は、加えられたパルス状の電気によって発熱して屈曲することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、たとえば、前記装着部のうちの一つが屈曲または伸張したのち、順次その装着部の隣に位置する別の装着部が屈曲または伸張するように、各装着部の形状記憶材料へ電気を順次供給するので、第1指から第5指へ順に屈曲運動を行わせるといった、より高度な回復訓練を行うことができる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の指の訓練用装置において、前記駆動手段は、それぞれ異なるタイミングでパルス状の電気を前記通電手段に加えることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1を示す構成図である。図1において、符号100は患者の左手を示している。符号1は、この左手100の手指100a(第1指)、100b、100c、100d、100e(第5指)の屈曲、伸張機能を回復させる指の訓練用装置である。指の訓練用装置1は、すべての手指100a〜100eに装着される袋状の装着部11と、駆動手段として電源回路12および制御回路13と、通電手段として接続線14とを備えている。
【0016】
装着部11は、図2に示すように、表裏2枚のシート材111、112を貼り合わせて構成されている。つまり、シート材111が左手100の表側(手の甲)側に位置し、シート材112が左手100の裏側(手のひら)に位置する。表側のシート材111は、ポリウレタンなどの断熱性材料を芯材とする表面材11Aと、この表面材11Aに包み込まれている屈曲手段としてのスマート材料(インテリジェント材料)11Bとから構成されている。
【0017】
スマート材料11Bは、絶縁材として、たとえば、カーボン/エポキシの母材(繊維強化複合材)11C中に、形状記憶合金アクチュエータとしてのTi−Niファイバー11Dを埋め込んだものである。Ti−Niファイバー11Dは、細長い棒状のTi−Ni合金で作られている。Ti−Niファイバー11Dは、手指100a〜100eに沿うように、母材11C中に多数配置されている。Ti−Niファイバー11Dは、通電によって電気抵抗によるジュール熱を発生する。この熱は、Ti−Niファイバー11D自身を加熱するが、表面材11Aが断熱性材料を芯材としているので、熱が手100に伝わることを防ぐ。
【0018】
Ti−Niファイバー11Dは、手指100a〜100eの伸張状態(直線状態)と屈曲状態との間で変形を繰り返すもので、所定温度のもとで伸張状態あるいは屈曲状態が記憶させられている。そして、通電によってジュール熱がTi−Niファイバー11Dに発生し、Ti−Niファイバー11Dが所定温度より高くなると、Ti−Niファイバー11Dは、もとの形状から屈曲運動を起こし、通電の停止によって、Ti−Niファイバー11Dが所定温度より低くなると、再びもとの形状に戻るようになっている。通電のために、Ti−Niファイバー11Dの両端には、図示を省略しているが、通電用の配線が施されている。そして、その配線が接続線14に接続されている。さらに、各Ti−Niファイバー11Dは、接続線14によって、電気的に直列または並列に接続されている。Ti−Niファイバー11Dは、図3に示すように、通電をするかしないかによって、矢印200に示す屈曲運動をする。
【0019】
裏側のシート材112は、表側のシート材111と同じであるので、シート材112の説明を省略する。
【0020】
電源回路12は、バッテリーや商用電源から所定電圧の直流電源を生成し、この直流電源を制御回路13に供給する。
【0021】
制御回路13は、装着部11に接続されている接続線14に対して電気的に着脱が可能である。制御回路13は、電源回路12からの直流電源で動作し、図4に示す駆動信号aを生成する。駆動信号aは、時間T1を1つのサイクルとしている。駆動信号aは、パルスP1とゼロ電圧部分とで構成されている。制御回路13は、シート材111およびシート材112のTi−Niファイバー11Dに対して、生成した駆動信号aを加える。
【0022】
これらの装着部11と制御回路13とによれば、制御回路13からの通電をする、しないを繰り返すことによって、装着部11が屈曲運動を繰り返すことになる。駆動信号aがパルス状であるので、駆動信号aのパルスP1では、装着部11のTi−Niファイバー11Dに通電が行われ、たとえば、Ti−Niファイバー11Dが屈曲状態になる。Ti−Niファイバー11Dは、手指100a〜100eに沿って配置されているので、手指100a〜100eは、Ti−Niファイバー11Dによって強制的に屈曲状態になる。この後、駆動信号aのゼロ電圧部分では、Ti−Niファイバー11Dに通電がされないので、Ti−Niファイバー11Dが伸張状態になり、同じく、手指100a〜100eが強制的に伸張状態になる。
【0023】
こうして、制御回路13による通電状態に応じて、装着部11が患者の手指100a等を強制的に屈曲、伸張させるので、補助者がいなくても、患者一人で高度な機能回復訓練を行うことができる。
【0024】
また、形状記憶合金であるTi−Niファイバー11Dが通電によって屈曲運動を繰り返すので、駆動モータや複雑な動力伝達機構などのように、複雑な構造とする必要がなく、単純な構成の指の訓練用装置1となっている。
【0025】
また、指の訓練用装置1が装着部11、電源回路12および制御回路13で構成されるので、指の訓練用装置1の持ち運びや保管などが便利である。
【0026】
さらに、装着部11が袋の形をしているので、手にかぶせるだけで、装着部11を簡単に手に装着することができる。特に、手に障害等を持つ人に対して、極めて簡単に、Ti−Niファイバー11Dを手指100a〜100eに配置することができる。
【0027】
なお、実施の形態1では、装着部11の表側と裏側の両方にTi−Niファイバー11Dを配置したが、片方だけにTi−Niファイバー11Dを配置してもよい。
【0028】
[実施の形態2]
図5は、この発明の実施の形態2を示す構成図である。なお、図5では、図1および図2と同じ要素に同じ符号を付加して、その説明を省略する。実施の形態2では、実施の形態1の装着部11のTi−Niファイバー11Dに対する配線を次のようにしている。つまり、左手100の手指100aに位置するTi−Niファイバー11Dを1組としている。そして、1組のTi−Niファイバー11Dが電気的に直列または並列に接続され、駆動信号が1組目のTi−Niファイバー11Dに同時に加えられる。
【0029】
同じようにして、手指100b〜100eにそれぞれ位置するTi−Niファイバー11Dは、それぞれ1組として駆動信号が個別に加えられる。これら5つの組みのTi−Niファイバー11Dには、接続線16がそれぞれ接続されている。5つの組みに分けられたTi−Niファイバー11Dは、制御回路15によって個別に制御される。
【0030】
制御回路15は、図6に示す5つの駆動信号b1〜b5を生成する。駆動信号b1〜b5は、時間T2を1つのサイクルとしている。各サイクルでは、駆動信号b1のパルスP11、駆動信号b2のパルスP12、駆動信号b3のパルスP13、駆動信号b4のパルスP14、駆動信号b5のパルスP15が所定時間後に、つまり異なるタイミングで順に現れる。そして、パルスP11がゼロ電圧になると、各パルスP12〜P15も同時にゼロ電圧になる。
【0031】
制御回路15は、生成した駆動信号b1を左手100の手指100aに位置するTi−Niファイバー11Dの組みに接続線16を経由して加える。同じように、制御回路15は、駆動信号b2を手指100bに位置するTi−Niファイバー11Dの組みに加え、駆動信号b3を手指100cに位置するTi−Niファイバー11Dの組みに加える。制御回路15は、駆動信号b4を手指100dに位置するTi−Niファイバー11Dの組みに加え、駆動信号b5を手指100eに位置するTi−Niファイバー11Dの組みに加える。
【0032】
実施の形態2によって、制御回路15が駆動信号b1〜b5を装着部11に加えるので、手指100aから手指100eまで順に屈曲する。手指100a〜100eがすべて屈曲した後、駆動信号b1〜b5のゼロ電圧によって、手指100aから手指100eが同時に伸張する。この結果、高度なリハビリが患者1人で可能になる。
【0033】
[実施の形態3]
実施の形態3では、図5の制御回路15の替わりに、次の制御回路が用いられている。つまり、実施の形態3の制御回路は、図7に示す駆動信号c1〜c5を生成する。駆動信号c1〜c5は、時間T3を1つのサイクルとしている。各サイクルでは、駆動信号c1のパルスP21、駆動信号c2のパルスP22、駆動信号c3のパルスP23、駆動信号c4のパルスP24、駆動信号c5のパルスP25が所定時間後に順に現れる。この後、駆動信号c5のレベルがゼロ電圧になると、駆動信号c4、駆動信号c3、駆動信号c2、駆動信号c1の順で所定時間後にレベルがゼロ電圧になる。
【0034】
実施の形態3によって、制御回路が駆動信号c1〜c5を装着部11に加えるので、手指100aから手指100eまで順に屈曲した後、逆に手指100eから順に伸張させることができる。これによって、高度なリハビリが患者1人で可能になる。
【0035】
[実施の形態4]
実施の形態4では、図5の制御回路15の替わりに、次の制御回路が用いられている。つまり、実施の形態4の制御回路は、図8に示す駆動信号d1〜d5を生成する。駆動信号d1〜d5は、時間T4を1つのサイクルとしている。各サイクルでは、駆動信号d1のパルスP31が現れて所定時間の経過後に、駆動信号d2のパルスP32が現れる。同じように、パルスP32が現れた後、駆動信号d3のパルスP33、駆動信号d4のパルスP34、駆動信号d5のパルスP35が順に現れる。
【0036】
実施の形態4によって、制御回路が駆動信号d1〜d5を装着部11に加えるので、手指100aの屈曲・伸張の後、手指100b〜100eの屈曲・伸張が順に行われる。これによって、左手100の高度なリハビリが患者1人で可能になる。
【0037】
[実施の形態5]
実施の形態5では、実施の形態1〜4の装着部11の替わりに、図9に示す装着部21が用いられている。装着部21は、親指である手指100aだけに装着される装着部分21Aと、他の4本の手指100b〜100eすべてに装着される装着部分21Bとの二つを備えている。つまり、実施の形態5では、実施の形態1〜4に用いられている装着部11の手指100aと手指100bとの間に、切れ目が入れられている。
【0038】
このような構成とすることによって、手指100aの屈曲の方向が他の手指100b〜100eと異なっている場合でも、装着後の手指の負担を軽減することができる。
【0039】
[実施の形態6]
実施の形態6では、実施の形態1〜4の装着部11の替わりに、図10に示す装着部22が用いられている。装着部22は、装着部分22A、22B、22C、22D、22Eが各手指100a、100b、100c、100d、100eごとに独立して設けられて、全体形状が手袋形状とされている。
【0040】
このような構成とすることによって、各手指100a〜100eが開いている場合でも、装着後の手指の負担を軽減することができる。
【0041】
[実施の形態7]
実施の形態7では、実施の形態1〜6のTi−Niファイバー11Dの替わりに、図11および図12に示すTi−Niプレート31が用いられている。なお、図11では、図1および図2と同じ要素には同じ符号を付加して、その説明を省略する。また、図11では、電源回路と制御回路との図示を省略している。
【0042】
実施の形態7では、Ti−Niプレート31が、手指100a〜100eに沿うように、母材11C中に配置されている。Ti−Niプレート31は、薄板状のTi−Ni合金で作られている。しかも、各Ti−Niプレート31は、2枚1組になって、手指100a〜100eの両側にそれぞれ配置されている。
【0043】
Ti−Niプレート31は、手指100a〜100eの伸張状態(直線状態)と屈曲状態との間で変形を繰り返すもので、所定温度のもとで伸張状態あるいは屈曲状態が記憶させられている。そして、通電によってジュール熱がTi−Niプレート31に発生し、Ti−Niプレート31が所定温度より高くなると、Ti−Niプレート31は、もとの形状から屈曲運動を起こし、通電の停止によって、Ti−Niプレート31が所定温度より低くなると、再びもとの形状に戻るようになっている。
【0044】
この構造の装着部11によって、実施の形態1〜6と同じように、手指100a〜100eの伸張と屈曲とを可能にする。
【0045】
なお、実施の形態7では、装着部11の表側と裏側の両方にTi−Niプレート31を配置したが、片方だけにTi−Niプレート31を配置してもよい。
【0046】
[実施の形態8]
実施の形態8では、実施の形態6のTi−Niファイバー11Dの替わりに、図13に示すTi−Niコイル41が用いられている。実施の形態6では、Ti−Niファイバー11Dが手袋形状の装着部22の中に設けられている。Ti−Niコイル41は、線状のTi−Ni合金で作られている。そして、線状のTi−Ni合金が、手指100a〜100eの周囲に沿うように巻かれて、各Ti−Niコイル41が形成されている。なお、図13では、手指100a用のTi−Niコイル41が示されているが、他の手指100b〜100e用のTi−Niコイル41も同様である。
【0047】
Ti−Niコイル41は、手指100a〜100eの伸張状態(直線状態)と屈曲状態との間で変形を繰り返すもので、所定温度のもとで伸張状態あるいは屈曲状態が記憶させられている。そして、通電によってジュール熱がTi−Niコイル41に発生し、Ti−Niコイル41が所定温度より高くなると、Ti−Niコイル41は、もとの形状から屈曲運動を起こし、通電の停止によって、Ti−Niコイル41が所定温度より低くなると、再びもとの形状に戻るようになっている。
【0048】
この構造のTi−Niコイル41によって、実施の形態1〜7と同じように、手指100a〜100eの伸張と屈曲とを可能にする。
【0049】
[実施の形態9]
実施の形態1〜8では、手指100a〜100eの屈曲運動のために、電源回路と制御回路とを用いるが、実施の形態9では、装着部から電源回路と制御回路と除く。また、シート材11Aとして断熱性材料の替わりに、熱を伝える熱伝導性材料を用い、Ti−Niファイバー11DやTi−Niコイル41の変形する所定温度を40度前後にする。こうした構造の装着部を指の訓練用手袋として用いる。
【0050】
この指の訓練用手袋を用いる場合、装着部に対して外部から加熱と冷却とを繰り返す。たとえば、湯と冷水とを用いたり、ドライヤーの温風と冷風とを用いたりすることによって、装着部の加熱と冷却とをする。それによって、Ti−Niファイバー11DやTi−Niコイル41が伸張と屈曲とを行う。
【0051】
このようにして、実施の形態1〜8と同じように、実施の形態9によって、手指100a〜100eの伸張と屈曲とが可能になる。
【0052】
[実施の形態10]
実施の形態10では、実施の形態9と同じように、外部からの加熱と冷却とによって、手指100a〜100eの屈曲運動が行われる。このために、実施の形態10では、図14に示す指の訓練用手袋を用いる。なお、図14では、図1および図2と同じ要素には同じ符号を付けてその説明を省略する。
【0053】
図14の指の訓練用手袋では、表面材11Eとして、熱を伝える熱伝導性材料が用いられている。表面材11Eの内側には、Ti−Niプレート51〜55が屈曲手段として設けられている。
【0054】
Ti−Niプレート51〜55は、板状のTi−Ni合金で作られている。Ti−Niプレート51〜55は、手指100a〜100eの伸張状態と屈曲状態との間で変形を繰り返すもので、所定温度のもとで伸張状態あるいは屈曲状態が記憶させられている。つまり、Ti−Niプレート51〜55は、加熱によって所定温度より高くなると、もとの形状から屈曲運動を起こし、冷却によって所定温度より低くなると、再びもとの形状に戻るようになっている。この場合、40度前後が所定温度として最適である。
【0055】
Ti−Niプレート51〜55は、さらに、次のように加工されている。Ti−Niプレート51〜55は、手指の並ぶ順で厚さが異なっている。つまり、手指100aに位置するTi−Niプレート51が、5枚のTi−Niプレートの中で一番薄く、手指100eに位置するTi−Niプレート55が一番厚くなっている。これは、熱がTi−Niプレート51〜55に加えられたとき、Ti−Niプレート51〜55が所定温度に到達する時間が異なるようにするためである。
【0056】
このような構造の指の訓練用手袋は、次のようにして患者に用いられる。つまり、指の機能回復訓練をする場合、患者が指の訓練用手袋を手にはめる。この後、患者は、指の訓練用手袋を湯に浸ける。これによって、湯の熱が表面材11Aを経て、Ti−Niプレート51〜55に伝わる。この結果、Ti−Niプレート51〜55の温度が上昇する。
【0057】
このとき、5枚の中で厚さの一番薄いTi−Niプレート51が最初に曲がる。これは、Ti−Niプレート51の体積が一番小さく、Ti−Niプレート51が最初に所定温度に到達するためである。Ti−Niプレート51が曲がると、親指である手指100aが最初に屈曲する。この後、Ti−Niプレート52から順に曲がり、Ti−Niプレート55が最後に屈曲する。つまり、実施の形態10の指の訓練用手袋は、実施の形態2の指の訓練用装置と同じように、手指100aから手指100eまで順に屈曲させる。
【0058】
この結果、実施の形態10によれば、患者が指の訓練用手袋をはめた手を湯に出し入れすれば、手指100a〜100eが屈曲する。このために、補助者を必要としないで、実施の形態2と同様に高度なリハビリをすることが可能になる。
【0059】
なお、実施の形態10では、Ti−Niプレート51〜55を手指100a〜100eの一方の側に配置したが、Ti−Niプレート51〜55の位置はこれに限定されない。つまり、Ti−Niプレート51〜55を手指100a〜100eの他方の側に配置してもよく、また、両側に配置してもよい。
【0060】
また、実施の形態10では、装着部として、図9、10に示されるものを用いることが可能である。
【0061】
[実施の形態11]
実施の形態11では、実施の形態10のTi−Niプレート51〜55の替わりに、図15に示すTi−Niプレート部61〜65が用いられている。なお、図15では、図14と同じ要素には同じ符号を付けてその説明を省略する。図15のTi−Niプレート部61〜65は、図16に示すように、Ti−Niプレート61A〜65Aを内部に備える。なお、図16では、断面を示すハッチングの図示を省略している。
【0062】
Ti−Niプレート61A〜65Aは、薄板状のTi−Ni合金で作られている。Ti−Niプレート61A〜65Aは、手指100a〜100eの伸張状態と屈曲状態との間で変形を繰り返すもので、所定温度のもとで伸張状態あるいは屈曲状態が記憶させられている。つまり、Ti−Niプレート61A〜65Aは、加熱によって所定温度より高くなると、もとの形状から屈曲運動を起こし、冷却によって所定温度より低くなると、再びもとの形状に戻るようになっている。この場合、40度前後が所定温度として最適である。
【0063】
Ti−Niプレート61A〜65Aの周りには、熱伝導部分61B〜65B(図16)が設けられている。熱伝導部分61B〜65Bは、熱伝導性材料、たとえば、合成樹脂やシリコンゴム等の、Ti−Niプレート61A〜65Aと密着性の良い材料で作られている。しかも、熱伝導部分61B〜65Bは、手指の並ぶ順で厚さが異なっている。つまり、手指100aに位置する熱伝導部分61Bが、熱伝導部分61B〜65Bの中で一番薄く、手指100eに位置する熱伝導部分65Bが一番厚くなっている。これによって、熱がTi−Niプレート61A〜65Aに伝わる時間が異なるようにしている。
【0064】
このような構造の指の訓練用手袋は、実施の形態10と同じように、患者の手にはめられて、湯によって加熱される。これによって、湯の熱が表面材11Aを経て、熱伝導部分61B〜65Bに伝わる。
【0065】
このとき、熱伝導部分の中で厚さの一番薄い熱伝導部分61Bが一番先に熱をTi−Niプレート61Aに伝え、Ti−Niプレート61Aが最初に曲がる。Ti−Niプレート61Aが曲がると、親指である手指100aが最初に屈曲する。この後、熱は熱伝導部分62B、63B、64B、65Bの順で伝わり、Ti−Niプレート62Aから順に曲がり、Ti−Niプレート65Aが最後に屈曲する。
【0066】
この結果、実施の形態11によれば、患者が指の訓練用手袋をはめた手を湯に出し入れすれば、手指100a〜100eが屈曲する。このために、補助者を必要としないで、実施の形態10と同様に高度なリハビリを患者1人ですることが可能になる。
【0067】
なお、実施の形態11では、Ti−Niプレート部61〜65を手指100a〜100eの一方の側に配置したが、Ti−Niプレート部61〜65の位置はこれに限定されない。つまり、Ti−Niプレート部61〜65を手指100a〜100eの他方の側に配置してもよく、また、両側に配置してもよい。
【0068】
また、実施の形態11では、装着部として、図9、10に示されるものを用いることが可能である。
【0069】
以上、実施の形態1〜11について説明した。なお、実施の形態1〜11では、形状記憶合金としてTi−Ni合金を例に挙げたが、この他にCu−Zn−Al合金をはじめとして、Ag−Cd、Au−Cd、Cu−Zn、Cu−Al−Ni、Cu−Sn、Cu−Au−Zn、Ni−Al、Fe−Pt、In−Tl、In−Cd、Mn−Cu、Fe−Pdなどの各種の公知の形状記憶合金を適宜選択することができる。また、形状記憶材料としては前記の形状記憶合金に限らず、ポリエチレン系、ウレタン系、ポリアセタール系、ポリノルボルネンのような、熱的環境変化に伴って形状記憶効果を示す形状記憶高分子材料を用いることもできる。
【0070】
さらに、前記の実施の形態1〜11では、左手100用の指の訓練用装置1であったが、右手用や足用も同じようにして構成することができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の請求項1〜4による指の訓練用手袋によれば、補助者の補助を必要とせずに患者一人で自ら機能回復訓練や脳の機能を高めて活性化を促す訓練を行うことを可能にするという格別の効果を期待することができる。このとき、患者は、指の訓練用手袋を外部から加熱・冷却を繰り返すだけでよい。また、患者一人で自ら機能回復訓練や脳の機能を高めて活性化を促すので、患者自身の医療費や患者に対する医療費の負担を軽くすることに貢献することができる。
【0072】
この発明の請求項5、6による指の訓練用装置によれば、パルス状の電気を加えるタイミングに応じて、指の高度な訓練を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1を示す指の訓練用装置の構成図である。
【図2】図1中のI−I矢視断面図である。
【図3】Ti−Niファイバーの屈曲運動を説明するための説明図である。
【図4】実施の形態1の制御回路が供給するパルス電圧を示す波形図である。
【図5】この発明の実施の形態2を示す指の訓練用装置の構成図である。
【図6】実施の形態2の制御回路が供給するパルス電圧を示す波形図である。
【図7】実施の形態3の制御回路が供給するパルス電圧を示す波形図である。
【図8】実施の形態4の制御回路が供給するパルス電圧を示す波形図である。
【図9】実施の形態5に用いられる装着部を示す平面図である。
【図10】実施の形態6に用いられる装着部を示す平面図である。
【図11】この発明の実施の形態7を示す指の訓練用装置の構成図である。
【図12】図11中のII−II矢視断面図である。
【図13】この発明の実施の形態8に用いられるTi−Niコイルを示す正面図である。
【図14】この発明の実施の形態10に用いられる装着部の断面図である。
【図15】この発明の実施の形態11に用いられる装着部の断面図である。
【図16】図15の拡大図である。
【符号の説明】
1 指の訓練用装置
11、21、22 装着部
21A、21B、22A〜22E 装着部分
111、112 シート材
11A、11E 表面材
11B 屈曲手段(スマート材料)
11C 母材
11D 形状記憶材料(Ti−Niファイバー)
12 電源回路
13、15 制御回路
14、16 接続線
31、51〜55、61A〜65A Ti−Niプレート
41 Ti−Niコイル
61〜65 Ti−Niプレート部
61B〜65B 熱伝導部分
100 左手
100a〜100e 手指
200 矢印
T1〜T4 時間
P1、P11〜P15、P21〜P25、P31〜P35 パルス
a、b1〜b5、c1〜c5、d1〜d5 駆動信号
Claims (6)
- 手または足の指を覆うように装着される装着部と、
それぞれの指に対応して前記装着部内に設けられ、温度に応じて各指を個別に屈曲させる屈曲手段とを備え、
前記各屈曲手段は、指の表側および裏側の少なくとも一方に設けられると共に、各指に沿うように設けられた棒状の形状記憶材料であり、前記形状記憶材料は、1つの指に対して少なくとも1つ配置されていることを特徴とする指の訓練用手袋。 - 手または足の指を覆うように装着される装着部と、
それぞれの指に対応して前記装着部内に設けられ、温度に応じて各指を個別に屈曲させる屈曲手段とを備え、
前記各屈曲手段は、指の表側および裏側の少なくとも一方に設けられると共に、各指に沿うように設けられた板状の形状記憶材料であることを特徴とする指の訓練用手袋。 - 前記各屈曲手段の厚さは親指に位置するものから順に厚くなっていることを特徴とする請求項2に記載の指の訓練用手袋。
- 前記各屈曲手段の周りには熱伝導部がそれぞれ設けられ、前記各熱伝導部の厚さは親指に位置するものから順に厚くなっていることを特徴とする請求項2に記載の指の訓練用手袋。
- 請求項1または2に記載の指の訓練用手袋を用いた指の訓練用装置であって、
前記各屈曲手段の形状記憶材料に通電するために、これらの屈曲手段に接続された通電手段と、
前記通電手段を経て前記各屈曲手段にパルス状の電気を加える駆動手段とを備え、前記各屈曲手段の形状記憶材料は、加えられたパルス状の電気によって発熱して屈曲することを特徴とする指の訓練用装置。 - 前記駆動手段は、それぞれ異なるタイミングでパルス状の電気を前記通電手段に加えることを特徴とする請求項5に記載の指の訓練用装置。
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