JP3582986B2 - 脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体又は揮発性物質が溶解した液体あるいは液状物質から、該気体又は揮発性物質を効率良く分離して除去、又は回収するために適用される脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から液体あるいは液状物質を使用する上で、該液体あるいは液状物質中に溶解している種々の気体や揮発性物質を分離して除去、又は回収する、いわゆる脱気する必要のある分野は極めて多岐にわたっている。
【0003】
例えば、配管や容器、冷却装置等の腐蝕防止を目的とするものでは、ボイラーやタービン、原子力発電用等の真水や海水等の供給水の脱酸素や脱炭酸ガス、上・中水の赤水防止の脱酸素等の分野がある。
【0004】
更に、貯蔵水の微生物繁殖防止を目的とした水道水等の脱酸素、酒やビール、ジュースあるいは食用油等の液状食品の変質防止を目的とした脱酸素、人工透析液等の医療用脱酸素液の製造、あるいは、写真現像液等に代表される液体や液状物質中の気泡の除去及び発生防止、逆浸透膜への供給液の脱酸素、陰イオン交換樹脂の効果を持続させるためのイオン交換水プロセスの脱酸素や脱炭酸ガス、生菌の発生とシリコンウエハーの酸化防止のための半導体洗浄用の超純水の脱酸素、電気部品や金属部品の洗浄用水の脱酸素、分析精度向上のための分析機器関連の液体あるいは液状物質の脱気や揮発性物質の分離等の分野が上げられる。
【0005】
特に、半導体洗浄用に使用される超純水は、生菌の発生を抑えかつシリコンウエハーの酸化を防ぐため、溶存酸素濃度が厳しく規制されてきたが、昨今の超LSI製造用の超純水には、溶存酸素濃度が10ppb以下に超脱気することが必要とされている。
【0006】
その上、地球環境面からも洗浄用フロンの代替として大量の超純水が使われるようになり、更に、前記半導体製造関係では超純水だけでなく、レジスト液のようなウェットプロセシングで用いられるあらゆる液体からの脱気についても厳しい要求が出されており、ますます効率の良い脱気技術、とりわけ脱酸素の技術が要求されている。
【0007】
このような各種分野における液体あるいは液状物質からの脱気には、従来から各種物理的脱気法や化学的脱気法が採用されており、物理的脱気法としては加熱脱気法や真空脱気法、あるいは膜式脱気法が、又、化学的脱気法としては脱酸素剤注入法やイオン交換樹脂法等が良く知られている。
【0008】
しかしながら、前記加熱脱気法は高温操作のために危険性が高く、一方、真空脱気法は真空系から液体を引き出すポンプが必要になる等、いずれも装置が大規模になるという欠点があり、又、前記脱酸素剤注入法は、機械的脱気により処理後の残存酸素をヒドラジンや亜硫酸ナトリウム等の脱酸素剤の化学反応を利用して除去するものであるが、毒性の問題もあって主に中高圧ボイラー用に用途が限定されており、更に、前記イオン交換樹脂法は、再生処理が必要であるという問題がある。
【0009】
又、他に高純度の窒素やアルゴンガス等の不活性ガスで酸素を置換する不活性ガス置換法があるが、これは実験室規模で適用されるに過ぎないものである。
【0010】
従って、工業的には前記物理的脱気法である気体分離機能を有する膜を介して気液界面を大きくして減圧側に気体を分離する膜式脱気法が、装置が小型で処理工程が簡便であること等の優れた特徴から有望視されている。
【0011】
かかる膜式脱気法としては、例えば、ポリ−4−メチルペンテン−1系の高分子材料から成る多孔質中空糸膜を用いて脱気する方法(特開平2−107317号公報参照)や、機械的強度や耐熱性、寸法安定性等が容易に得られる高分子材料から成る多孔質支持膜上に、透過選択性に優れた同じく高分子材料から成る非多孔質活性層を形成した中空糸形状、又はスパイラル形状の複合膜を用いて脱気する方法等が提案されている(特開平6−335623号公報、特開平3−139304公報参照)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記多孔質中空糸膜を用いた脱気法では、一般に、気体又は揮発性物質の透過速度は速いものの、液体あるいは液状物質の成分の透過速度に対する気体又は揮発性物質の透過速度の比、即ち選択率が悪く、液体あるいは液状物質の成分が膜表面に浸み出してきて操作性が悪くなることから脱気のための減圧度を上げることができず、他方、非多孔質活性層を有する複合膜では前記選択率は高いものの、液体あるいは液状物質中に溶解した気体又は揮発性物質の透過速度が遅いため脱気効率が悪いという課題があった。
【0013】
特に、前記半導体製造関係においては、ウェットプロセシングで使用する各種液体から効率的に、かつ経時的に安定して溶存気体を除去することが可能な、より高精度な脱気用の膜が望まれており、前記高分子材料から成る膜では、分離対象物は高分子鎖間隙、いわゆる自由体積孔を透過することになるが、高分子鎖のゆらぎ等により自由体積孔のサイズに分布があるため、分離対象物に対する分画サイズの制御には限界がある。
【0014】
そのために従来の有機高分子膜では、それが多孔質膜であっても、あるいは非多孔質活性層を有する膜であっても、液体あるいは液状物質をほとんど通さず、かつ高いガス透過率を維持した状態で効率的に、前記液体あるいは液状物質に溶解した気体又は揮発性物質を分離して脱気することは困難であるという課題があった。
【0015】
また、かかる脱気は液体あるいは液状物質が膜と接触する部分で行われるが、膜から離れて流れる液体あるいは液状物質は層流状態で流れるため、液体あるいは液状物質が膜と接触しない部分の脱気は行われ難いことから、脱気を十分に行うために膜の長さを長くしたり、膜面積を大きくしたり、あるいは膜をらせん状にする等により液体あるいは液状物質の流れを乱流状態にしなければならず、膜自体が大きくなり、装置が大型になるという課題があった。
【0016】
【発明の目的】
本発明は前記課題に鑑み成されたもので、その目的は、気体又は揮発性物質が溶解した液体あるいは液状物質から、過度に液体あるいは液状成分を流出させることなく、前記気体又は揮発性物質のみを高いガス透過率を維持したまま、効率的に分離するのに最適な気体分離機能を有する、装置の小型化が実現できる脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、多孔質支持体に微細な細孔を有するセラミック層を被着形成したセラミック複合体では、セラミック複合体を構成するセラミック層の全細孔容積中に占める微細な細孔径の細孔容積が、液体あるいは液状物質に溶解した気体又は揮発性物質の透過に大きく関与することを知見した。
【0018】
そこで、要所で効果的な乱流を発生させ、かつ優れた脱気特性、即ち、液体あるいは液状成分をほとんど通さずかつ高いガス透過率を維持した状態で、工業的に大量処理できる効率的で装置の小型化が実現できる脱気用セラミック複合部材とそれを用いた脱気処理法を実現すべく、前記セラミック層の細孔径分布と液体あるいは液状物質に溶解した気体又は揮発性物質の分離性能と共に、効果的に膜と接触させるための液体あるいは液状物質の流れの関係について検討し、本発明に至った。
【0019】
即ち、本発明の脱気用セラミック複合部材は、多孔質支持体と全細孔容積の内、1nm以下の細孔径が占める細孔容積が80%以上であるセラミック層で構成される複数のセラミック複合体が、乱流発生部材を介して接続されて形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の脱気用セラミック複合部材は、前記セラミック複合体を構成する多孔質支持体が管状体であること、前記乱流発生部材が該多孔質支持体より小さい径を有する管状セラミック体の集合体であることが、脱気効率上、より好ましいものである。
【0021】
又、本発明の脱気方法は、多孔質支持体と1nm以下の細孔径が全細孔容積の80%以上の細孔容積を占めるセラミック層で構成された複数のセラミック複合体が乱流発生部材を介して接続された脱気用セラミック複合部材を用い、該脱気用セラミック複合部材に液体あるいは液状物質を接触させ、該液体あるいは液状物質に溶解している気体又は揮発性物質を選択的に前記セラミック複合体を透過させてこれを分離することを特徴とするものである。
【0022】
特に、本発明の脱気方法に用いるセラミック複合体を構成する多孔質支持体が管状体であること、又、乱流発生部材が前記多孔質支持体の管径よりも小さい径を有する管状セラミック体の集合体であることがより望ましいものである。
【0023】
【作用】
本発明の脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法は、脱気用セラミック複合部材を構成するセラミック層が、1nm以下の細孔径の細孔容積が全細孔容積中の80%以上を占めていることから、気体分子は細孔内を自由拡散できず、細孔の壁面と相互作用を持ちながら移動する表面拡散、及び気体分子の大きさによる分離、いわゆる分子篩い機構による透過速度の違いも出てくる。
【0024】
従って、気体又は揮発性物質が溶解した液体あるいは液状物質を脱気用セラミック複合部材により隔てて反対側を減圧すると、その液体あるいは液状物質に溶解していた気体又は揮発性物質の構成分子は、その分子サイズと表面拡散能によりセラミック層の細孔内を透過する。
【0025】
一方、液体あるいは液状物質の構成分子は、例えその温度で沸騰するのに十分な減圧下で処理したとしても、細孔内で沸騰せずに溶解している気体又は揮発性物質の構成分子と同様、その分子サイズと表面拡散能に従ってセラミック層の細孔内を透過するため、過度に液体あるいは液状物質の成分を流出させることなく、効率的に前記気体又は気化物質を透過させることができる。
【0026】
しかも、複数の前記セラミック複合体を乱流発生部材を介して接続することにより、脱気用セラミック複合部材の内部を流れる液体あるいは液状物質の流れを、乱流発生部材で容易に層流状態から乱流状態に変えて攪拌することができて効率良く脱気することが可能となり、その結果、液体あるいは液状物質から気体又は揮発性物質の分離に直接関与する前記セラミック層の面積あるいは長さを小さくすることができ、装置の小型化が実現できることになる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法について詳述する。
【0028】
本発明の脱気用セラミック複合部材は、全細孔容積中の80%以上の細孔容積が1nm以下の細孔径で占めるセラミック層と多孔質支持体とで構成される複数のセラミック複合体を乱流発生部材を介して接続したものであり、前記セラミック層の1nm以下の細孔径が占める細孔容積が、全細孔容積の80%未満であると、前記セラミック層の細孔内を透過する液体又は液状物質の分子の量が多くなることから脱気効率が低下し、時にはセラミック複合体表面に液体又は液状物質が凝縮してほとんど脱気されなくなる。
【0029】
本発明において、セラミック層は、アルミナやチタニア、ジルコニア、シリカ、分相ガラス、ゼオライト、シリカライトから成るもの、又はそれらの複合物から成るものであっても良い。
【0030】
なかでもアルミナを主成分とする金属酸化物は、作製条件によって十分の数nmから数nmオーダの細孔を形成することができるため、ガス分離膜として機能しかつ種々の添加剤と組み合わせることで表面拡散能を変化させることができることから特に好ましい。
【0031】
前記アルミナを主成分とする金属酸化物から成るセラミック層を形成する方法としては、ゾルゲルディッピング法による作製法が最適であり、例えば、直接、α−アルミナ多孔質支持体上に表面欠陥のないγ−アルミナ系のセラミック層を形成するには、該α−アルミナ多孔質支持体表面のα−アルミナ粒子が覆い隠されるまで繰り返しディップコートする必要があり、用いる金属酸化物のゾル濃度やコーティング条件により異なるが、通常、十数回のディッピングを必要とする。
【0032】
次に、本発明の多孔質支持体は、素材としてはα−アルミナや安定化ジルコニア、分相ガラス等が適用可能であり、前記素材から成る多孔質支持体は、ガス透過の圧力損失を可能な限り低くするためには20%以上の気孔率を、又、セラミック複合体の集合体を組み立てる際に破損したり、脱気操作中に多孔質支持体構成粒子の脱粒が起こらないよう支持体の強度を確保するためには40%以下の気孔率を有するものであることが望ましい。
【0033】
また、本発明の多孔質支持体の形状形態は、特に限定されるものではなく、平板状や中空状の構造体、管状体等のいずれでも良いが、脱気効率や前記集合体としての取り扱い易さからは管状体が最も望ましく、又、かかる管状体は押し出し成形法等により、比較的、簡単に作製できるというメリットもある。
【0034】
更に、前記多孔質支持体を管状体で構成する場合には、管状体を数十本から数百本束ねて集合体に組み立てた時に膜面積が十分大きくなるようにするため、該管状体の外径は可能な限り小さい方が良いが、強度との兼ね合いからは2〜5mmが好適である。
【0035】
又、本発明のセラミック複合体は、多孔質支持体が平板状や中空状の構造体、あるいは管状体等を成す形状でセラミック層がそれらの表面に形成されておれば、それが内側や外側、あるいは多層構造であっても何ら問題はなく、多孔質支持体側からセラミック層側にかけてそれぞれの平均細孔径が順次、小さくなるように配置されておれば、前記同様な脱気を行うことができる。
【0036】
次に、前記多孔質支持体に被着形成された所定の細孔径が所定の細孔容積を占めるセラミック層から成る複数のセラミック複合体を接続する乱流発生部材は、該セラミック複合体の内部を層流状態で流れる液体あるいは液状物質を、攪乱することにより一時乱流状態に変化させ得るもので、かつ前記液体あるいは液状物質と反応しないものであればいかなる材質、形状、形態でも脱気効率の向上効果に何ら変化はなく、例えば、アルミナやジルコニア等から成るセラミックボール、あるいは各種樹脂製ボール、ガラスビーズ等の球状の集合体がある。
【0037】
又、前記乱流発生部材は、多孔質支持体より小径であると層流の流体が通過時に線速度が向上することにより乱流に変化することになる。
【0038】
即ち、多孔質支持体の線速度u1 と乱流発生部材の線速度u2 との関係は、多孔質支持体の内径D1 と乱流発生部材の内径D2 から、u2 =(D1 /D2 )2 ×u1 で表されることから、乱流発生部材の内径D2 を小さくすると乱流発生部材の線速度u2 は大となるが、背圧の向上を考慮すると乱流発生部材の内径は、0.3〜0.6mmが好ましい。
【0039】
とりわけセラミック複合体との接続のし易さの面からは、前記管状セラミック焼結体の集合体をフレキシブル性の高いシリコンチューブ等の部材に挿入して乱流発生部材としたものが最適である。
【0040】
又、前記セラミック複合体は、直管状の乱流発生部材を複数用いて2ヵ所以上接続したり、U字状の乱流発生部材を用いて曲管状のセラミック複合体を接続することにより全体形状をU字状あるいは2ヵ所以上接続してスパイラル状に形成することも可能である。
【0041】
更に、前記セラミック複合体と乱流発生部材の接続は、樹脂による接着やバンド締め、あるいはフランジを設けてボルト締め等、各種公知の締結方法が採用し得る。
【0042】
特に、前記接続部分からの漏出を考慮すると、樹脂による接着が簡便かつ確実な方法であり、最も望ましいものである。
【0043】
かくして得られた脱気用セラミック複合部材は、例えば、50本束ねてケース内に熱硬化性樹脂で固定し、特に、前記セラミック複合体のセラミック層側に液体あるいは液状物質を流しながら、反対側の多孔質支持体側を減圧することにより、該液体あるいは液状物質に溶解している気体又は揮発性物質の脱気を行うのが最適なものである。
【0044】
本発明の脱気方法は、全細孔容積中の80%以上の細孔容積が1nm以下の細孔径で占めるセラミック層と多孔質支持体とで構成されるセラミック複合体を乱流発生部材で接続した脱気用セラミック複合部材により、液体又は液状物質に溶解している気体又は揮発性物質を脱気する方法であって、脱気する液体又は液状物質を前記セラミック複合体の内側に接触させ、セラミック複合体の外周側に気体又は揮発性物質を選択的に透過させて分離することを特徴とするものである。
【0045】
従って、本発明の脱気方法では、脱気用セラミック複合部材の内側に液体又は液状物質を接触させ、外周側を減圧したり、脱気する気体又は揮発性物質以外のものを流したり、更には脱気する気体又は揮発性物質を溶解していない液体又は液状物質を流したり、あるいは脱気する気体又は揮発性物質の吸着剤を充填したりする各種方法を採用し得る。
【0046】
即ち、本発明の脱気用セラミック複合部材では、乱流発生部材を間に接続していることから、脱気する液体あるいは液状物質は、前記乱流発生部材を通過する時に効果的に攪拌され、流速の制御により脱気された液体あるいは液状物質を再び粒子間に拡散させることが容易となり、一方を減圧しても脱気された液体あるいは液状物質が速やかに未処理の液体あるいは液状物質と交換されるため、前記脱気する液体あるいは液状物質は、多孔質支持体側からでも微細孔を有するセラミック層側からのいずれでも接触させて良い。
【0047】
しかし、前記脱気する液体あるいは液状物質の圧力損失を少なくして、大量の溶液を脱気処理するためには、該液体あるいは液状物質は微細孔を有するセラミック層側に流し、多孔質支持体側から減圧する方が、より効率的である。
【0048】
従って、前記液体あるいは液状物質は、セラミック層を内側に設けた多孔質支持体から成るセラミック複合体の内側で接触させることがより望ましく、更に、この構成では隣合う脱気用セラミック複合部材の間隔はより密に配設することができることから、装置の小型化に大いに寄与する。
【0049】
又、本発明の脱気用セラミック複合部材は、従来の有機高分子膜に比べて高い強度と耐薬品性に優れているが故に、種々の条件下での脱気が可能となり、例えば、純水からの脱気は勿論のこと、酸や塩基性水溶液、あるいはイソプロピルアルコール等の有機溶媒からの脱気や、水に溶解した微量のアルコールや芳香族化合物の除去に対しても、特性劣化することなく安定して用いることができ、更に、高粘性の各種溶液に対しても、該溶液を加圧することで効率的な脱気が可能である。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法について、その一例を詳述する。
【0051】
(実施例)
本発明を評価するに際し、先ず、アルミニウムセカンダリーブトキシド1molに対して水100molの割合で、該アルミニウムセカンダリーブトキシドを80℃の熱水に添加して加水分解する。
【0052】
その後、前記アルミニウムセカンダリーブトキシド1molに対して0.07molの割合で硝酸を添加し、85℃以上の温度に保ったまま解膠し、引き続き16時間還流してAlOOHゾルを調製する。
【0053】
次に、外径3mm、内径2mm、気孔率が39%、細孔径が0.3μmのα−アルミナ多孔質管を前記AlOOHゾルに浸漬して付着させ、室温で乾燥してから500℃の温度で焼成して管状のセラミック複合体を作製した。
【0054】
かくして得られた長さ100mmのセラミック複合体2本を、外径1mm、内径0.4mm、長さ15mmのα−アルミナ管を6〜8本、内径3mmのシリコン製チューブに挿入して作製した乱流発生部材で接続し、管状の脱気用セラミック複合部材を作製した。
【0055】
次に、前記乱流発生部材で接続したセラミック複合体から成る管状の脱気用セラミック複合部材を50本用意し、その両端をポリウレタン樹脂で束ねて図1に示すような試験装置のケース内に装着すると共に、アルミナ多孔質管にアルミナ層を被着形成したセラミック複合体2を乱流発生部材3で接続した管状の脱気用セラミック複合部材1を樹脂封止部4、5でポリウレタン樹脂を用いて封止し、評価用の脱気装置6を作製した。
【0056】
尚、前記セラミック複合体と同様にしてAlOOHゾルから作製したアルミナ(Al2 O3 )粉体について、アルゴン吸着法による細孔径分布を測定したところ、図2に示すように1nm以下の細孔径が全細孔容積中、80%の細孔容積を占めていることを確認した。
【0057】
一方、前記管状のセラミック複合体の集合体の有効膜面積は、0.06m2 であった。
【0058】
評価は、前記脱気装置6の原液導入口7より溶存酸素濃度が8ppmの純水を1.5リットル/分の流速で流し、脱気用セラミック複合部材1の外側に通じる吸引口8を真空ポンプで150torrに減圧して脱気した。
【0059】
この時、処理液排出口9より排出された純水の溶存酸素量を測定したところ2.0ppmであり、更に、100時間連続運転しても特性及び脱気用セラミック複合部材の外観に変化は認められなかった。
【0060】
(比較例)
一方、ポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とする外径が350μm、内径が260μm、平均細孔径が0.06μmの多孔質中空糸を脱気用部材として前記実施例と同様の評価用の脱気装置を組立てた。
【0061】
尚、前記多孔質中空糸の有効長さは220mmで、その集合体の有効膜面積は0.12m2 であった。
【0062】
前記実施例と同様にして溶存酸素濃度が8ppmの純水を0.5リットル/分の流速で流し、多孔質中空糸の内側に通じる吸引口を真空ポンプで150torrに減圧して処理液排出口より排出された純水の溶存酸素量を測定したが、測定値は5.5ppmを示し、更に、5時間連続運転した時点で吸引口に水滴が認められた。
【0063】
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の形態に適用可能なものである。
【0064】
【発明の効果】
叙上の如く、本発明の脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法は、脱気用セラミック複合部材として、多孔質支持体と1nm以下の細孔径が全細孔容積の80%以上の細孔容積を占めるセラミック層とから成る複数の脱気用セラミック複合部材を乱流発生部材で接続したことから、かかる脱気用セラミック複合部材中を層流状態で流れる液体あるいは液状物質を乱流発生部材で乱流化し、液体あるいは液状物質を撹乱させることにより、目的とする気体又は揮発性物質のみを高いガス透過率を維持したまま選択的に、かつ効率的に分離できる脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の脱気用セラミック複合部材を組み込んだ評価用の脱気装置の概要を示す断面図である。
【図2】アルゴン吸着法で測定したセラミック層を形成する一例のアルミナ粉体の細孔径分布を示す図である。
【符号の説明】
1 脱気用セラミック複合部材
2 セラミック複合体
3 乱流発生部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体又は揮発性物質が溶解した液体あるいは液状物質から、該気体又は揮発性物質を効率良く分離して除去、又は回収するために適用される脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から液体あるいは液状物質を使用する上で、該液体あるいは液状物質中に溶解している種々の気体や揮発性物質を分離して除去、又は回収する、いわゆる脱気する必要のある分野は極めて多岐にわたっている。
【0003】
例えば、配管や容器、冷却装置等の腐蝕防止を目的とするものでは、ボイラーやタービン、原子力発電用等の真水や海水等の供給水の脱酸素や脱炭酸ガス、上・中水の赤水防止の脱酸素等の分野がある。
【0004】
更に、貯蔵水の微生物繁殖防止を目的とした水道水等の脱酸素、酒やビール、ジュースあるいは食用油等の液状食品の変質防止を目的とした脱酸素、人工透析液等の医療用脱酸素液の製造、あるいは、写真現像液等に代表される液体や液状物質中の気泡の除去及び発生防止、逆浸透膜への供給液の脱酸素、陰イオン交換樹脂の効果を持続させるためのイオン交換水プロセスの脱酸素や脱炭酸ガス、生菌の発生とシリコンウエハーの酸化防止のための半導体洗浄用の超純水の脱酸素、電気部品や金属部品の洗浄用水の脱酸素、分析精度向上のための分析機器関連の液体あるいは液状物質の脱気や揮発性物質の分離等の分野が上げられる。
【0005】
特に、半導体洗浄用に使用される超純水は、生菌の発生を抑えかつシリコンウエハーの酸化を防ぐため、溶存酸素濃度が厳しく規制されてきたが、昨今の超LSI製造用の超純水には、溶存酸素濃度が10ppb以下に超脱気することが必要とされている。
【0006】
その上、地球環境面からも洗浄用フロンの代替として大量の超純水が使われるようになり、更に、前記半導体製造関係では超純水だけでなく、レジスト液のようなウェットプロセシングで用いられるあらゆる液体からの脱気についても厳しい要求が出されており、ますます効率の良い脱気技術、とりわけ脱酸素の技術が要求されている。
【0007】
このような各種分野における液体あるいは液状物質からの脱気には、従来から各種物理的脱気法や化学的脱気法が採用されており、物理的脱気法としては加熱脱気法や真空脱気法、あるいは膜式脱気法が、又、化学的脱気法としては脱酸素剤注入法やイオン交換樹脂法等が良く知られている。
【0008】
しかしながら、前記加熱脱気法は高温操作のために危険性が高く、一方、真空脱気法は真空系から液体を引き出すポンプが必要になる等、いずれも装置が大規模になるという欠点があり、又、前記脱酸素剤注入法は、機械的脱気により処理後の残存酸素をヒドラジンや亜硫酸ナトリウム等の脱酸素剤の化学反応を利用して除去するものであるが、毒性の問題もあって主に中高圧ボイラー用に用途が限定されており、更に、前記イオン交換樹脂法は、再生処理が必要であるという問題がある。
【0009】
又、他に高純度の窒素やアルゴンガス等の不活性ガスで酸素を置換する不活性ガス置換法があるが、これは実験室規模で適用されるに過ぎないものである。
【0010】
従って、工業的には前記物理的脱気法である気体分離機能を有する膜を介して気液界面を大きくして減圧側に気体を分離する膜式脱気法が、装置が小型で処理工程が簡便であること等の優れた特徴から有望視されている。
【0011】
かかる膜式脱気法としては、例えば、ポリ−4−メチルペンテン−1系の高分子材料から成る多孔質中空糸膜を用いて脱気する方法(特開平2−107317号公報参照)や、機械的強度や耐熱性、寸法安定性等が容易に得られる高分子材料から成る多孔質支持膜上に、透過選択性に優れた同じく高分子材料から成る非多孔質活性層を形成した中空糸形状、又はスパイラル形状の複合膜を用いて脱気する方法等が提案されている(特開平6−335623号公報、特開平3−139304公報参照)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記多孔質中空糸膜を用いた脱気法では、一般に、気体又は揮発性物質の透過速度は速いものの、液体あるいは液状物質の成分の透過速度に対する気体又は揮発性物質の透過速度の比、即ち選択率が悪く、液体あるいは液状物質の成分が膜表面に浸み出してきて操作性が悪くなることから脱気のための減圧度を上げることができず、他方、非多孔質活性層を有する複合膜では前記選択率は高いものの、液体あるいは液状物質中に溶解した気体又は揮発性物質の透過速度が遅いため脱気効率が悪いという課題があった。
【0013】
特に、前記半導体製造関係においては、ウェットプロセシングで使用する各種液体から効率的に、かつ経時的に安定して溶存気体を除去することが可能な、より高精度な脱気用の膜が望まれており、前記高分子材料から成る膜では、分離対象物は高分子鎖間隙、いわゆる自由体積孔を透過することになるが、高分子鎖のゆらぎ等により自由体積孔のサイズに分布があるため、分離対象物に対する分画サイズの制御には限界がある。
【0014】
そのために従来の有機高分子膜では、それが多孔質膜であっても、あるいは非多孔質活性層を有する膜であっても、液体あるいは液状物質をほとんど通さず、かつ高いガス透過率を維持した状態で効率的に、前記液体あるいは液状物質に溶解した気体又は揮発性物質を分離して脱気することは困難であるという課題があった。
【0015】
また、かかる脱気は液体あるいは液状物質が膜と接触する部分で行われるが、膜から離れて流れる液体あるいは液状物質は層流状態で流れるため、液体あるいは液状物質が膜と接触しない部分の脱気は行われ難いことから、脱気を十分に行うために膜の長さを長くしたり、膜面積を大きくしたり、あるいは膜をらせん状にする等により液体あるいは液状物質の流れを乱流状態にしなければならず、膜自体が大きくなり、装置が大型になるという課題があった。
【0016】
【発明の目的】
本発明は前記課題に鑑み成されたもので、その目的は、気体又は揮発性物質が溶解した液体あるいは液状物質から、過度に液体あるいは液状成分を流出させることなく、前記気体又は揮発性物質のみを高いガス透過率を維持したまま、効率的に分離するのに最適な気体分離機能を有する、装置の小型化が実現できる脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、多孔質支持体に微細な細孔を有するセラミック層を被着形成したセラミック複合体では、セラミック複合体を構成するセラミック層の全細孔容積中に占める微細な細孔径の細孔容積が、液体あるいは液状物質に溶解した気体又は揮発性物質の透過に大きく関与することを知見した。
【0018】
そこで、要所で効果的な乱流を発生させ、かつ優れた脱気特性、即ち、液体あるいは液状成分をほとんど通さずかつ高いガス透過率を維持した状態で、工業的に大量処理できる効率的で装置の小型化が実現できる脱気用セラミック複合部材とそれを用いた脱気処理法を実現すべく、前記セラミック層の細孔径分布と液体あるいは液状物質に溶解した気体又は揮発性物質の分離性能と共に、効果的に膜と接触させるための液体あるいは液状物質の流れの関係について検討し、本発明に至った。
【0019】
即ち、本発明の脱気用セラミック複合部材は、多孔質支持体と全細孔容積の内、1nm以下の細孔径が占める細孔容積が80%以上であるセラミック層で構成される複数のセラミック複合体が、乱流発生部材を介して接続されて形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の脱気用セラミック複合部材は、前記セラミック複合体を構成する多孔質支持体が管状体であること、前記乱流発生部材が該多孔質支持体より小さい径を有する管状セラミック体の集合体であることが、脱気効率上、より好ましいものである。
【0021】
又、本発明の脱気方法は、多孔質支持体と1nm以下の細孔径が全細孔容積の80%以上の細孔容積を占めるセラミック層で構成された複数のセラミック複合体が乱流発生部材を介して接続された脱気用セラミック複合部材を用い、該脱気用セラミック複合部材に液体あるいは液状物質を接触させ、該液体あるいは液状物質に溶解している気体又は揮発性物質を選択的に前記セラミック複合体を透過させてこれを分離することを特徴とするものである。
【0022】
特に、本発明の脱気方法に用いるセラミック複合体を構成する多孔質支持体が管状体であること、又、乱流発生部材が前記多孔質支持体の管径よりも小さい径を有する管状セラミック体の集合体であることがより望ましいものである。
【0023】
【作用】
本発明の脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法は、脱気用セラミック複合部材を構成するセラミック層が、1nm以下の細孔径の細孔容積が全細孔容積中の80%以上を占めていることから、気体分子は細孔内を自由拡散できず、細孔の壁面と相互作用を持ちながら移動する表面拡散、及び気体分子の大きさによる分離、いわゆる分子篩い機構による透過速度の違いも出てくる。
【0024】
従って、気体又は揮発性物質が溶解した液体あるいは液状物質を脱気用セラミック複合部材により隔てて反対側を減圧すると、その液体あるいは液状物質に溶解していた気体又は揮発性物質の構成分子は、その分子サイズと表面拡散能によりセラミック層の細孔内を透過する。
【0025】
一方、液体あるいは液状物質の構成分子は、例えその温度で沸騰するのに十分な減圧下で処理したとしても、細孔内で沸騰せずに溶解している気体又は揮発性物質の構成分子と同様、その分子サイズと表面拡散能に従ってセラミック層の細孔内を透過するため、過度に液体あるいは液状物質の成分を流出させることなく、効率的に前記気体又は気化物質を透過させることができる。
【0026】
しかも、複数の前記セラミック複合体を乱流発生部材を介して接続することにより、脱気用セラミック複合部材の内部を流れる液体あるいは液状物質の流れを、乱流発生部材で容易に層流状態から乱流状態に変えて攪拌することができて効率良く脱気することが可能となり、その結果、液体あるいは液状物質から気体又は揮発性物質の分離に直接関与する前記セラミック層の面積あるいは長さを小さくすることができ、装置の小型化が実現できることになる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法について詳述する。
【0028】
本発明の脱気用セラミック複合部材は、全細孔容積中の80%以上の細孔容積が1nm以下の細孔径で占めるセラミック層と多孔質支持体とで構成される複数のセラミック複合体を乱流発生部材を介して接続したものであり、前記セラミック層の1nm以下の細孔径が占める細孔容積が、全細孔容積の80%未満であると、前記セラミック層の細孔内を透過する液体又は液状物質の分子の量が多くなることから脱気効率が低下し、時にはセラミック複合体表面に液体又は液状物質が凝縮してほとんど脱気されなくなる。
【0029】
本発明において、セラミック層は、アルミナやチタニア、ジルコニア、シリカ、分相ガラス、ゼオライト、シリカライトから成るもの、又はそれらの複合物から成るものであっても良い。
【0030】
なかでもアルミナを主成分とする金属酸化物は、作製条件によって十分の数nmから数nmオーダの細孔を形成することができるため、ガス分離膜として機能しかつ種々の添加剤と組み合わせることで表面拡散能を変化させることができることから特に好ましい。
【0031】
前記アルミナを主成分とする金属酸化物から成るセラミック層を形成する方法としては、ゾルゲルディッピング法による作製法が最適であり、例えば、直接、α−アルミナ多孔質支持体上に表面欠陥のないγ−アルミナ系のセラミック層を形成するには、該α−アルミナ多孔質支持体表面のα−アルミナ粒子が覆い隠されるまで繰り返しディップコートする必要があり、用いる金属酸化物のゾル濃度やコーティング条件により異なるが、通常、十数回のディッピングを必要とする。
【0032】
次に、本発明の多孔質支持体は、素材としてはα−アルミナや安定化ジルコニア、分相ガラス等が適用可能であり、前記素材から成る多孔質支持体は、ガス透過の圧力損失を可能な限り低くするためには20%以上の気孔率を、又、セラミック複合体の集合体を組み立てる際に破損したり、脱気操作中に多孔質支持体構成粒子の脱粒が起こらないよう支持体の強度を確保するためには40%以下の気孔率を有するものであることが望ましい。
【0033】
また、本発明の多孔質支持体の形状形態は、特に限定されるものではなく、平板状や中空状の構造体、管状体等のいずれでも良いが、脱気効率や前記集合体としての取り扱い易さからは管状体が最も望ましく、又、かかる管状体は押し出し成形法等により、比較的、簡単に作製できるというメリットもある。
【0034】
更に、前記多孔質支持体を管状体で構成する場合には、管状体を数十本から数百本束ねて集合体に組み立てた時に膜面積が十分大きくなるようにするため、該管状体の外径は可能な限り小さい方が良いが、強度との兼ね合いからは2〜5mmが好適である。
【0035】
又、本発明のセラミック複合体は、多孔質支持体が平板状や中空状の構造体、あるいは管状体等を成す形状でセラミック層がそれらの表面に形成されておれば、それが内側や外側、あるいは多層構造であっても何ら問題はなく、多孔質支持体側からセラミック層側にかけてそれぞれの平均細孔径が順次、小さくなるように配置されておれば、前記同様な脱気を行うことができる。
【0036】
次に、前記多孔質支持体に被着形成された所定の細孔径が所定の細孔容積を占めるセラミック層から成る複数のセラミック複合体を接続する乱流発生部材は、該セラミック複合体の内部を層流状態で流れる液体あるいは液状物質を、攪乱することにより一時乱流状態に変化させ得るもので、かつ前記液体あるいは液状物質と反応しないものであればいかなる材質、形状、形態でも脱気効率の向上効果に何ら変化はなく、例えば、アルミナやジルコニア等から成るセラミックボール、あるいは各種樹脂製ボール、ガラスビーズ等の球状の集合体がある。
【0037】
又、前記乱流発生部材は、多孔質支持体より小径であると層流の流体が通過時に線速度が向上することにより乱流に変化することになる。
【0038】
即ち、多孔質支持体の線速度u1 と乱流発生部材の線速度u2 との関係は、多孔質支持体の内径D1 と乱流発生部材の内径D2 から、u2 =(D1 /D2 )2 ×u1 で表されることから、乱流発生部材の内径D2 を小さくすると乱流発生部材の線速度u2 は大となるが、背圧の向上を考慮すると乱流発生部材の内径は、0.3〜0.6mmが好ましい。
【0039】
とりわけセラミック複合体との接続のし易さの面からは、前記管状セラミック焼結体の集合体をフレキシブル性の高いシリコンチューブ等の部材に挿入して乱流発生部材としたものが最適である。
【0040】
又、前記セラミック複合体は、直管状の乱流発生部材を複数用いて2ヵ所以上接続したり、U字状の乱流発生部材を用いて曲管状のセラミック複合体を接続することにより全体形状をU字状あるいは2ヵ所以上接続してスパイラル状に形成することも可能である。
【0041】
更に、前記セラミック複合体と乱流発生部材の接続は、樹脂による接着やバンド締め、あるいはフランジを設けてボルト締め等、各種公知の締結方法が採用し得る。
【0042】
特に、前記接続部分からの漏出を考慮すると、樹脂による接着が簡便かつ確実な方法であり、最も望ましいものである。
【0043】
かくして得られた脱気用セラミック複合部材は、例えば、50本束ねてケース内に熱硬化性樹脂で固定し、特に、前記セラミック複合体のセラミック層側に液体あるいは液状物質を流しながら、反対側の多孔質支持体側を減圧することにより、該液体あるいは液状物質に溶解している気体又は揮発性物質の脱気を行うのが最適なものである。
【0044】
本発明の脱気方法は、全細孔容積中の80%以上の細孔容積が1nm以下の細孔径で占めるセラミック層と多孔質支持体とで構成されるセラミック複合体を乱流発生部材で接続した脱気用セラミック複合部材により、液体又は液状物質に溶解している気体又は揮発性物質を脱気する方法であって、脱気する液体又は液状物質を前記セラミック複合体の内側に接触させ、セラミック複合体の外周側に気体又は揮発性物質を選択的に透過させて分離することを特徴とするものである。
【0045】
従って、本発明の脱気方法では、脱気用セラミック複合部材の内側に液体又は液状物質を接触させ、外周側を減圧したり、脱気する気体又は揮発性物質以外のものを流したり、更には脱気する気体又は揮発性物質を溶解していない液体又は液状物質を流したり、あるいは脱気する気体又は揮発性物質の吸着剤を充填したりする各種方法を採用し得る。
【0046】
即ち、本発明の脱気用セラミック複合部材では、乱流発生部材を間に接続していることから、脱気する液体あるいは液状物質は、前記乱流発生部材を通過する時に効果的に攪拌され、流速の制御により脱気された液体あるいは液状物質を再び粒子間に拡散させることが容易となり、一方を減圧しても脱気された液体あるいは液状物質が速やかに未処理の液体あるいは液状物質と交換されるため、前記脱気する液体あるいは液状物質は、多孔質支持体側からでも微細孔を有するセラミック層側からのいずれでも接触させて良い。
【0047】
しかし、前記脱気する液体あるいは液状物質の圧力損失を少なくして、大量の溶液を脱気処理するためには、該液体あるいは液状物質は微細孔を有するセラミック層側に流し、多孔質支持体側から減圧する方が、より効率的である。
【0048】
従って、前記液体あるいは液状物質は、セラミック層を内側に設けた多孔質支持体から成るセラミック複合体の内側で接触させることがより望ましく、更に、この構成では隣合う脱気用セラミック複合部材の間隔はより密に配設することができることから、装置の小型化に大いに寄与する。
【0049】
又、本発明の脱気用セラミック複合部材は、従来の有機高分子膜に比べて高い強度と耐薬品性に優れているが故に、種々の条件下での脱気が可能となり、例えば、純水からの脱気は勿論のこと、酸や塩基性水溶液、あるいはイソプロピルアルコール等の有機溶媒からの脱気や、水に溶解した微量のアルコールや芳香族化合物の除去に対しても、特性劣化することなく安定して用いることができ、更に、高粘性の各種溶液に対しても、該溶液を加圧することで効率的な脱気が可能である。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法について、その一例を詳述する。
【0051】
(実施例)
本発明を評価するに際し、先ず、アルミニウムセカンダリーブトキシド1molに対して水100molの割合で、該アルミニウムセカンダリーブトキシドを80℃の熱水に添加して加水分解する。
【0052】
その後、前記アルミニウムセカンダリーブトキシド1molに対して0.07molの割合で硝酸を添加し、85℃以上の温度に保ったまま解膠し、引き続き16時間還流してAlOOHゾルを調製する。
【0053】
次に、外径3mm、内径2mm、気孔率が39%、細孔径が0.3μmのα−アルミナ多孔質管を前記AlOOHゾルに浸漬して付着させ、室温で乾燥してから500℃の温度で焼成して管状のセラミック複合体を作製した。
【0054】
かくして得られた長さ100mmのセラミック複合体2本を、外径1mm、内径0.4mm、長さ15mmのα−アルミナ管を6〜8本、内径3mmのシリコン製チューブに挿入して作製した乱流発生部材で接続し、管状の脱気用セラミック複合部材を作製した。
【0055】
次に、前記乱流発生部材で接続したセラミック複合体から成る管状の脱気用セラミック複合部材を50本用意し、その両端をポリウレタン樹脂で束ねて図1に示すような試験装置のケース内に装着すると共に、アルミナ多孔質管にアルミナ層を被着形成したセラミック複合体2を乱流発生部材3で接続した管状の脱気用セラミック複合部材1を樹脂封止部4、5でポリウレタン樹脂を用いて封止し、評価用の脱気装置6を作製した。
【0056】
尚、前記セラミック複合体と同様にしてAlOOHゾルから作製したアルミナ(Al2 O3 )粉体について、アルゴン吸着法による細孔径分布を測定したところ、図2に示すように1nm以下の細孔径が全細孔容積中、80%の細孔容積を占めていることを確認した。
【0057】
一方、前記管状のセラミック複合体の集合体の有効膜面積は、0.06m2 であった。
【0058】
評価は、前記脱気装置6の原液導入口7より溶存酸素濃度が8ppmの純水を1.5リットル/分の流速で流し、脱気用セラミック複合部材1の外側に通じる吸引口8を真空ポンプで150torrに減圧して脱気した。
【0059】
この時、処理液排出口9より排出された純水の溶存酸素量を測定したところ2.0ppmであり、更に、100時間連続運転しても特性及び脱気用セラミック複合部材の外観に変化は認められなかった。
【0060】
(比較例)
一方、ポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とする外径が350μm、内径が260μm、平均細孔径が0.06μmの多孔質中空糸を脱気用部材として前記実施例と同様の評価用の脱気装置を組立てた。
【0061】
尚、前記多孔質中空糸の有効長さは220mmで、その集合体の有効膜面積は0.12m2 であった。
【0062】
前記実施例と同様にして溶存酸素濃度が8ppmの純水を0.5リットル/分の流速で流し、多孔質中空糸の内側に通じる吸引口を真空ポンプで150torrに減圧して処理液排出口より排出された純水の溶存酸素量を測定したが、測定値は5.5ppmを示し、更に、5時間連続運転した時点で吸引口に水滴が認められた。
【0063】
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の形態に適用可能なものである。
【0064】
【発明の効果】
叙上の如く、本発明の脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法は、脱気用セラミック複合部材として、多孔質支持体と1nm以下の細孔径が全細孔容積の80%以上の細孔容積を占めるセラミック層とから成る複数の脱気用セラミック複合部材を乱流発生部材で接続したことから、かかる脱気用セラミック複合部材中を層流状態で流れる液体あるいは液状物質を乱流発生部材で乱流化し、液体あるいは液状物質を撹乱させることにより、目的とする気体又は揮発性物質のみを高いガス透過率を維持したまま選択的に、かつ効率的に分離できる脱気用セラミック複合部材並びにそれを用いた脱気方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の脱気用セラミック複合部材を組み込んだ評価用の脱気装置の概要を示す断面図である。
【図2】アルゴン吸着法で測定したセラミック層を形成する一例のアルミナ粉体の細孔径分布を示す図である。
【符号の説明】
1 脱気用セラミック複合部材
2 セラミック複合体
3 乱流発生部材
Claims (6)
- 1nm以下の細孔径が全細孔容積の80%以上の細孔容積を占めるセラミック層を多孔質支持体に被着形成した複数のセラミック複合体を、乱流発生部材を介して接続して成ることを特徴とする脱気用セラミック複合部材。
- 前記多孔質支持体が、管状体であることを特徴とする請求項1に記載の脱気用セラミック複合部材。
- 前記乱流発生部材が、多孔質支持体より小径の管状セラミック体の集合体であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の脱気用セラミック複合部材。
- 1nm以下の細孔径が全細孔容積の80%以上の細孔容積を占めるセラミック層を多孔質支持体に被着形成した複数のセラミック複合体を、乱流発生部材を介して接続して成る脱気用セラミック複合部材に、液体あるいは液状物質を接触させ、該液体あるいは液状物質に溶解している気体又は揮発性物質を選択的に前記セラミック複合体を透過させ、前記気体又は揮発性物質を分離することを特徴とする脱気方法。
- 前記多孔質支持体が、管状体であることを特徴とする請求項4に記載の脱気方法。
- 前記乱流発生部材が、多孔質支持体より小径の管状セラミック体の集合体であることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の脱気方法。
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