JP3582685B2 - ヒップ形状を整える衣類 - Google Patents

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  • Undergarments, Swaddling Clothes, Handkerchiefs Or Underwear Materials (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒップの形状を美しく整えるためのヒップ形状を整える衣類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりガードル、ショーツ、スパッツ、ボディスーツ、水着、レオタードなどの少なくともヒップ部をカバーし、股部を有する衣類は、女性の少なくとも下半身の体型を美しく補整する機能を付したものなどが広く用いられている。そして特に人体後側では、ヒップの形状を美しく整えヒップ造型効果を付与する目的の衣類が広く普及している。その代表的な一例として、以下、ガードルを例に挙げて説明する。従来のガードルの代表的な典型的な一例を図9、図10に示す。
【0003】
図9は従来のガードルの前側から見た正面図であり、図10はその後ろ側から見た背面図である。71が後身頃、72が脇身頃、75が前部中央身頃、76が腹部押さえ布、77がクロッチ部、78が前裾充当部片、74が後中心の接ぎライン、73が臀部の膨らみの頂点近傍を通る後身頃71と脇身頃72とのヒップ部接ぎライン(縫製ライン)を示している。このように従来のガードルの典型的な例としては、ヒップ部の膨らみの頂点近傍を通るヒップ部接ぎライン73で切り替えることにより臀部の山の膨らみを出現させている。また、多くの場合には、ヒップアップ機能を付与するため、ガードル本体のヒップ部接ぎライン73の下側の臀部回りを裏打ち布を当てがって二重構成としている。尚、この例では、脇身頃72はヒップ部の脇側の一部と前脇側をカバーしており、また、前部中央身頃75の表側には伸びがほとんどないか、緊迫力の強い伸縮性の布が当て布である腹部押さえ布76が設けられている。この例では腹部押さえ布76は、前部中央身頃75の表側に設けられている例を示しているが、腹部押さえ布は、前部中央身頃75の裏側に設けられている場合もある。
【0004】
ところで、このような従来のガードルにおいては、ヒップ部接ぎライン73が臀部の膨らみの頂点部近傍を通ることにより、このヒップ部接ぎライン73で立体形状を付与し、ヒップの膨らみに対応させるようにしている。しかしこのヒップ部接ぎライン73が臀部の膨らみの頂点部近傍を通るため、接ぎライン73がガードルの上に重ねて着用したアウターウエアーにライン状に反映し、着用者の外観を低下させるなどの問題が発生する欠点がある。また、接ぎライン73で立体形状を付与しようとするので、ヒップ部の膨らみの自然な美しい丸みが表現できないという問題もある。更には、後中心の臀裂を境にしてヒップ左右の2つの膨らみがきれいに表現されず、ヒップ部の後中心近傍をカバーしている布が臀裂部分で余り人体側に切れ込んで入り込んでこないので、極端な表現をすればヒップ左右の2つの膨らみの頂点部に接する平行な平面、すなわちヒップ左右の2つの膨らみの頂点部間に平板をのせたようになり、ヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部が現れてこない。そのため、後中心の臀裂を境にしてヒップ左右の2つの膨らみがきれいに表現されないという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、実開平6−51204号に示されるように、また、図11にそのガードルの正面図、図12にその背面図、図13にこのガードルを構成する各身頃の展開図を示したように、ガードルの後部において、臀部の膨らみの頂点部を避けるように後中心方向に細幅になっていて、伸びが少ないかまたは横方向に伸びがあるが縦方向にはほとんど伸びがない後中心身頃80が、縦、横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地からなる脇身頃72に縫製されているガードルが提案されている。尚、このガードルの図9〜図10に示したガードルとほぼ同じ部分は同じ符号を付して詳細説明を省略した。尚、81は後中心身頃80と脇身頃72との接ぎラインであり、82はこの接ぎラインに沿って設けられたギャザーを示している。この図11〜図13に示したガードルにおいては、伸びが少ないかまたは横方向に伸びがあるが縦方向にはほとんど伸びがない後中心身頃80がガードルのヒップ部が縦方向に伸びすぎてヒップ下がるのを防止し左右のヒップの膨らみの丸みを表現できるガードルであることが示されている。
しかし、かかるガードルにおいても、後中心身頃80は、後中心で接ぎ合わされた左右2枚の布からなるものではなく、少なくとも縦方向に伸びのない1枚の布を用いている。従って、図13の後中心身頃80において、矢印83−84の方向には伸びが少ないが、現実の図12で示した接ぎライン81に沿った方向、すなわち、図13の後中心身頃80の矢印85−86の方向や矢印87−88の方向は現実の接ぎラインが後中心身頃80の地の目のバイアス方向となり、伸びが出てしまうという問題があり、左右のヒップの膨らみの下がりを十分に防止するにはまだ不完全であると共に、接ぎラインの伸びにより皺が発生しやすいという問題がある。また後中心身頃80自体は後中心で左右2枚の布が接ぎ合わされた立体裁断の技術が採用された布からなるのではなく一枚の偏平な布からなっているので、後中心身頃80の断面形状はガードルに取り付けられた状態でもその断面はほぼ偏平であり、少なくとも臀裂近傍において後中心を頂点としてその断面形状が人体肌側に向かって凸の略逆V字状の立体形状を有するものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のこれらのヒップ形状を整える衣類の問題点を解決し、臀部後中心近傍で皺などの発生がなく、ヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部がきれいにすっきりと現れ、ヒップ部の膨らみの自然な美しい丸みが表現でき、ヒップ部接ぎラインがアウターウエアーにライン状に反映するなどの問題が発生する恐れがなく桃の割れ目のように美しいすっきりしたヒップの形状に造型できる、少なくともヒップ部をカバーし、股部を有するヒップ形状を整える衣類を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の好ましい態様においては、上記目的に加えて更にヒップアップ機能を強化したヒップ形状を整える衣類を提供することを目的とする。また、本発明の更に別の好ましい態様においては、上記目的に加えて更に腹部の膨出を抑え、腹部形状を整える機能も加味したヒップ形状を整える衣類を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)上記の課題を解決するために、本発明のヒップ形状を整える衣類は、少なくともヒップ部をカバーし、股部を有する衣類であって、ヒップの膨らみの頂点を避けて比較的細幅になっていて臀部の後中心に沿って少なくともウェスト近傍から臀裂部を経てクロッチ部までカバーし後中心で接ぎ合わされている左右2枚の後中心身頃(1、1´)が、ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する身頃(2、2´)に接ぎ合わされており、前記後中心身頃(1、1´)は、左右2枚のそれぞれの縫製前の形状が、前記身頃(2、2´)と接ぎ合わされる側の縁のラインの形状がほぼ直線状であり且つこのラインに沿った方向に伸びがないかまたは伸びが少なく、後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであ、前記身頃(2、2´)は、その縫製前の臀部近傍の後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凸状の曲線ラインであ、少なくとも臀裂近傍において左右の前記後中心身頃(1、1´)は後中心を頂点としてその断面形状が人体肌側に向かって凸の略逆V字状の立体形状を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のヒップ形状を整える衣類においては、後中心で接ぎ合わされている左右2枚の前記後中心身頃(1、1´)が、ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する前記身頃(2、2´)に接ぎ合わされており、前記後中心身頃(1、1´)は、前記身頃(2、2´)との接ぎラインに沿った方向に伸びがないかまたは伸びが少ないので、前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との接ぎライン部分での接ぎライン方向への伸びが止められ、前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との間に不自然な皺が発生することなく、ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する前記身頃(2、2´)がヒップの膨らみの自然な美しい丸みを造型し、前記接ぎライン方向に伸びの少ないまたは伸びのない前記後中心身頃(1、1´)により前記身頃(2、2´)でのヒップ部の膨らみが下がるのを防止すると共に、前記後中心身頃(1、1´)の伸びがないかまたは伸びの少ない方向に沿って前記身頃(2、2´)の縫製前の臀部近傍の後中心側の縁でその縁のラインの形状が後中心側に向かって凸状の曲線ラインを有する前記身頃(2、2´)が縫製されることによりヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部がきれいに現れ、従って、ヒップの左右の2つの膨らみの自然な美しい丸みがより一層強調されると共に、ヒップ部接ぎラインがヒップの膨らみの頂点近傍を通っていないのでかかる接ぎラインがアウターウエアーにライン状に反映するなどの問題が発生する恐れがない。更に左右の前記後中心身頃(1、1´)のそれぞれの後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであり、かかる左右の前記後中心身頃(1、1´)が互いに前記後中心側の縁で接ぎ合わされてこの接ぎラインが後中心となるので、この左右の後中心身頃(1、1´)が互いに接ぎ合わされたときにその断面形状が、後中心を頂点として人体肌側に向かって凸の略逆V字状の立体形状を有する形に容易に仕上げることができ、臀部中央を立体的にすっきりと切れ込んだ形に仕上げることができるヒップ形状を整える衣類を提供できる。
【0010】
前記、本発明のヒップ形状を整える衣類の好ましい態様は次の様である。
(2)前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との接ぎラインに沿ってヒップの膨らみの頂点よりほぼ下側の前記身頃(2、2´)の部分にギャザーが設けられている前記(1)項に記載のヒップ形状を整える衣類。
【0011】
前記、本発明の好ましい態様に於いては、前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との接ぎラインに沿ってヒップの膨らみの頂点よりほぼ下側の前記身頃(2、2´)の部分にギャザーが設けられているので、左右2つのヒップの膨らみの丸みがより立体的に美しく表現でき好ましい。
【0012】
(3)左右2枚の前記後中心身頃(1、1´が、そのそれぞれの縫製前の形状の後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであって、特に臀裂近傍の曲率が大きい後中心身頃である前記(1)項または(2)項のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
【0013】
この、本発明の好ましい態様に於いては、前記後中心身頃(1、1´)の縦方向に伸びがないかまたは伸びが少ない布を、その伸びがないかまたは伸びの少ない方向に沿って前記身頃(2、2´)の縫製前の臀部近傍の後中心側の縁でその縁のラインの形状が後中心側に向かって凸状の曲線ラインを有する前記身頃(2、2´)に縫製されることにより、この両者の接ぎラインに沿った方向には伸びが止められまたは伸びが抑制されるので、前記身頃(2、2´)でのヒップ部の膨らみが下がるのを防止すると共に、ヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部がきれいに現れ、従って、ヒップの左右の2つの膨らみの自然な美しい丸みがより一層強調されると共に、左右2枚の前記後中心身頃(1、1´が、そのそれぞれの後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであって特に臀裂近傍の曲率が大きい後中心身頃であり、かかる左右の前記後中心身頃(1、1´)が前記後中心側の縁で互いに接ぎ合わされてこの接ぎラインが後中心となるので、この後中心身頃(1、1´)の曲率が大きい部分ほど互いに接ぎ合わされたときにその断面形状が、後中心を頂点として人体肌側に向かってより角度の小さい凸の略逆V字状の立体形状を有する形に容易に仕上げることができ、臀部中央を立体的にすっきりと切れ込んだ形を容易に実現できるヒップ形状を整える衣類を提供でき好ましい。
【0014】
(4)ヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲にヒップアップ用の当て布が設けられてなる前記(1)項〜(3)項のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
【0015】
かかる本発明の好ましい態様とすることにより、前記後中心身頃(1、1´)による前記身頃(2、2´)でのヒップ部の膨らみの下がりを防止する作用と共に、ヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲にヒップアップ用の当て布が設けられていることにより、より一層ヒップを美しくアップでき、しかもヒップアップ用の当て布は、ヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲に設けられているので、この当て布の縁のラインがアウターウエアーにライン状に反映するなどの問題が発生する恐れもなく好ましい。
【0016】
(5)前記身頃(2、2´)の少なくともヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている部分が、縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地である前記(1)項〜(4)項のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
【0017】
かかる本発明の好ましい態様に於いては、前記身頃(2、2´)の少なくともヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている部分が、縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地とすることにより、ヒップの左右の2つの丸みをより自然な美しい丸みに仕上げる事ができると共に、ヒップをカバーするこの部分がより運動追従性に優れているので、ヒップの動きに伴う裾のずれ上がりなどを防止でき好ましい。
【0018】
(6)縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地がツーウェイラッセル編地である前記(5)項に記載のヒップ形状を整える衣類。
かかる本発明の好ましい態様に於いては、ツーウェイラッセル編地は衣類のヒップ部を適度の緊縮力で包み込むと共に、ヒップの左右の2つの自然な丸みをよりきれい実現できる、且つ、より運動追従性に優れているので、着崩れや裾のずれ上がりなどをより防止できる。
【0019】
(7)腹部をカバーする衣類本体布の前部中央身頃、または、この部分に当て布として用いられる腹部押さえ布が、伸びがほとんどない布か、または、緊迫力の強い伸縮性の布からなる前記(1)項〜(6)項のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
【0020】
かかる本発明の好ましい態様とすることにより、上記作用に加えて更に腹部の膨出を抑え、腹部形状を整える機能も加味したヒップ形状を整える衣類を提供することができ好ましい。
【0021】
(8)衣類が、ガードル、ショーツ、スパッツ、ボディスーツ、水着、レオタードから選ばれた衣類である前記(1)項〜(7)項のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
【0022】
かかる本発明の好ましい態様とすることにより、これらの衣類は、人体に直接接して着用されるか、あるいは、人体の肌側に近い位置にタイトに着用される衣類であるので、前述した機能が効率よく発揮され、人体のヒップの形状を容易に整える事ができ好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、少なくともヒップ部をカバーし、股部を有する衣類でヒップ形状を整える機能を付与したい衣類に適用でき、具体的にはガードル、ショーツ、スパッツ、ボディスーツ、水着、レオタードなどが挙げられる。本発明の衣類はこれらの具体例に限定されるものではないが、特に上記に具体的に例示した衣類は肌に直接触れるか、肌に近い部分に着用され、あるいは比較的タイトに設計されている衣類であり、したがって衣類からの作用が効率良く人体に作用し、本発明のヒップ形状を整える機能が有効にに発揮され、ヒップの形を美しく整える機能が効率よく発揮される衣類であり好ましい。
【0024】
以下、本発明の理解を容易にするために、図面を参照しながら、本発明の衣類の具体例を説明するが、本発明はこの具体例に限定されるものではない。図1は本発明の少なくともヒップ部をカバーし、股部を有し、ヒップ形状を整える衣類の一例のガードルの前側から見た斜視図、図2はその後側から見た斜視図、図3はこのガードルの主要構成部片の展開図である。尚、展開図に於いては縫い代を記載すると複雑になり理解しにくくなるので、縫い代は省略している。
【0025】
1、1´はヒップの膨らみの頂点を避けて比較的細幅になっていて臀部の後中心に沿って少なくともウェスト近傍から臀裂部を経てクロッチ部までカバーし、後中心で接ぎ合わされている左右それぞれの後中心身頃を示す。前記後中心身頃1、1´の生地としては、図3の展開図に示されているように下記身頃(2、2´)と接ぎ合わされる側の縁のライン(A−BないしA´−B´)の形状がほぼ直線状であり且つこのライン(A−BないしA´−B´)に沿った方向に伸びがないかまたは伸びが少なく、後中心側の縁のライン(D−E−F−GないしD´−E´−F´−G´)の形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであって特に臀裂近傍(E−FないしE´−F´)の曲率が大きくなっている。2、2´はヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する身頃を示しており、この例では前記頃2、2´の裏側にヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲にヒップアップ用の当て布3、3´が裏打ちされている。7、7´の鎖線はヒップアップ用の当て布3、3´の上側の縁のラインを示したものである。ヒップアップ用の当て布3、3´は必ずしも必要ないが、存在した方が、ヒップアップ効果をより好適に発揮でき好ましい。特にこの様なヒップアップ用の当て布としては、弾性繊維を実質上含有していない少なくとも略その長手方向に伸縮性の布を用いることが特に好ましく、更に好ましくはその略長手方向の限界伸度が120%〜250%より好ましくは150%〜220%の布を用いることがより一層好ましい。
【0026】
そして前記後中心身頃1、1´のA−BラインとA´−B´ラインが前記頃2、2´のH−IラインとH´−I´ラインとにそれぞれ接ぎ合わされ、接ぎライン12、12´が形成される。前記後中心身頃1、1´はそのA−BラインとA´−B´ラインの形状がほぼ直線状であり且つこのラインに沿った方向に伸びがないかまたは伸びが少ない生地を用いているので、これらが前記頃2、2´と縫合されて接ぎ合わされた場合でも、接ぎライン12、12´に沿った方向には伸びが止められまたは伸びが効果的に抑制されるので、前記後中心身頃1、1´でのヒップ部の膨らみが下がるのを防止すると共に、ヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部がきれいに現れ、従って、ヒップの左右の2つの膨らみの自然な美しい丸みがより一層強調される。
【0027】
尚、前記後中心身頃1、1´は後中心側のラインD−E−F−GとD´−E´−F´−G´のラインが相互に接ぎ合わされる。接ぎ合わされてできた接ぎラインが接ぎライン4であり、後中心線とほぼ一致する位置になる。図3の展開図に示されているように後中心側のライン(D−E−F−GないしD´−E´−F´−G´)の形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであって特に臀裂近傍(E−FないしE´−F´)の曲率が大きくなっている。これを広げて相互に接ぎ合わせるので、この部分はその断面形状が、後中心を頂点として人体肌側に向かって凸の略逆V字状の立体形状を有する形になる。図2のX−X´断面の端面図を図4として示した。図4からも明らかなように、前記後中心身頃1、1´は後中心の接ぎライン4に於いて、上に凸の略逆V字状の立体形状を有する形になっていることがわかる。この後中心身頃1、1´の後中心側のライン(D−E−F−GないしD´−E´−F´−G´)の曲率が大きい部分ほど互いに接ぎ合わされたときにその断面形状が、後中心を頂点として人体肌側に向かってより角度の小さい凸の略逆V字状の立体形状を有する形に容易に形成できる。したがってこの例の場合では図3から判断してE−FとE´−F´のラインの曲率が大きいので、この部分が人体肌側に向かってより角度の小さい凸の略逆V字状の立体形状を有する形になる。一般に臀裂5の近傍に相当する部分に於いて角度の小さい凸の略逆V字状の立体形状を有する形にする事が好ましい。このように前記後中心身頃1、1´が互いに接ぎ合わされたときにその断面形状が、後中心を頂点として人体肌側に向かって凸の略逆V字状の立体形状を有する形に容易に仕上げることができ、臀部中央を立体的にすっきりと切れ込んだ形を容易に実現でき、美しいヒップ形状の優れた衣類が提供でき好ましい。尚、1a、1´aで示した部分はクロッチとなる部分である。また、図1と図2で示した11はウエストバンドであり、本発明の本質的な部分ではないので、図3の展開図に於いては図示を省略している。従って図3は単にガードルの構成部片の展開図とせずにガードルの“主要”構成部片の展開図としたのである。
【0028】
前記後中心身頃1、1´を構成する布地は、前述したA−BならびにA´−B´ライン方向に伸びないか伸びの少ない布が用いられ、従ってそれと直角方向には伸縮性であってもよく非伸縮性であってもよい。特に限定するものではないが具体的にはポリウレタン繊維などの弾性繊維を含んだ交編縦編物、例えばサテン調スパンデックス編物やサテン調パワーネット編物が好ましい素材の代表例であり、サテン調スパンデックス編物が特に好ましい。
【0029】
尚、図1〜3に示したガードルの場合には、ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する前記頃2、2´は、後部から脇部までをカバーしており、接ぎライン10、10´で前部中央身頃8に縫製されて接ぎ合わされている。前部中央身頃8も特に限定するものではないが、少なくとも衣類横方向に伸縮性の布地を用いることが、ガードルを着用したり、脱いだりする場合に容易に横に広げて着脱できるので好ましい。しかも着用中は横方向の伸縮性により、身体にフィツトさせて着用できるので好ましい。もちろん縦横両方向に伸縮性のツーウェイストレッチ性の生地を用いてもよい。この点は前記頃2、2´の生地についても同様である。この生地としては少なくとも衣類横方向に伸縮性を有する生地を用いる事が好ましいが、縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地を用いることがヒップの自然な丸みを出したり、裾のずり上がりを防止する上からもより好ましく、特に縦横両方向に非常に良く伸びる柔軟な伸縮性編地を用いることが好ましく、代表的にはツーウェイラッセル編地が最も好ましい。
【0030】
また、この例では前記頃2、2´と前部中央身頃8とが接ぎライン10、10´で接ぎ合わされている例を示しているが、接ぎライン10、10´は必ずしも必要でなく、身頃2、2´と前部中央身頃8とが接ぎラインのない一体の連続した身頃として用いてもよい。尚、図1〜3に示したガードルの具体例では前部中央身頃8の表側に少なくとも衣類横方向には伸縮性がないか伸縮性の小さい布または伸縮性ではあるが緊迫力の大きい布からなる腹部押さえ布9が設けられている。
【0031】
また、前記後中心身頃1、1´はヒップの膨らみの頂点を避けて臀部の後中心に沿って比較的細幅になっていればよく従ってウエストやや下側付近から上に於いてはヒップの膨らみを避ける必要がなくなるので広幅になっていてもよい。
【0032】
また、この例に於いては、前記後中心身頃1、1´と前記頃2、2´との接ぎライン12、12´に沿ってヒップの膨らみの頂点よりほぼ下側の前記頃2、2´部分にギャザー6、6´が設けられている。この様にギャザー6、6´が設けられる事により、左右2つのヒップをスッポリと包み、左右2つのヒップ膨らみの丸みがより立体的に美しく表現でき好ましい。
【0033】
本発明の衣類を構成する各部分の構成材料で本発明の本質部分と余り関係のない部分の生地は、本発明の目的、作用効果を阻害しない限り、通常使用されている素材など任意の素材が採用できる。
【0034】
通常、これらの生地としては、お腹おさえ機能が必要な場合の前部中央身頃の生地は通常少なくとも衣類横方向には伸びないか又は伸びの少ない生地や伸縮性ではあるが緊迫力の強い生地が用いられるか、前部中央身頃の生地として少なくとも衣類横方向に伸縮する生地を用いた場合には、その当て布として少なくとも衣類横方向には伸びないか又は伸びの少ない生地または緊迫力の強い生地が用いられる。お腹おさえ機能を必要としない場合には当て布を用いなくてもよいし、前部中央身頃の生地として少なくとも衣類横方向に伸縮性を有する生地を用いることが好ましい。そのほか、乳房カップの部分や、その他の部分についてはそれにふさわしい各種の生地が用いられているが、その他の主要部分の身頃を構成する生地は、ポリウレタンなどの弾性繊維を含有した少なくとも衣類横方向に伸縮性を有する生地が好ましく用いられる。こうすることにより、衣類の着脱時に衣類を容易に横方向に広げて着脱できるので着脱が容易であり、また、着用時は身体によくフィットし好ましい。
【0035】
上述した様な少なくとも衣類横方向に伸縮性を有する生地は、衣類の種類や用いる部位によっても異なり、特に限定するものではないが、例えばポリウレタン繊維などの弾性繊維含有ラッセル編物であるポリウレタン繊維含有パワーネットや、ポリウレタン繊維などの弾性繊維含有トリコット編物であるポリウレタン繊維含有ツーウェイトリコット編物、あるいはポリウレタン繊維などの弾性繊維含有ベアー天竺、ポリウレタン繊維などの弾性繊維含有ストレッチレースなどが好ましく用いられる。パワーネットの種類としては例えばプレーンパワーネット、サテンパワーネット、ツーウェイラッセル、トリコネット、“トリスキン”(ト部株式会社の商標)などが挙げられる。
【0036】
次に図5、図6を用いて本発明の少なくともヒップ部をカバーし、股部を有し、ヒップ形状を整える衣類の一例のロングタイプのガードルへの応用について説明する。図5はロングタイプのガードルの前側から見た斜視図、図6はその後側から見た斜視図である。図1〜3で説明したガードルに比べて脚部が長くなっただけで、本質的な部分は図1〜3で説明したガードルと実質的に同一の技術思想が適用されている。すなわちヒップの膨らみの頂点を避けて比較的細幅になっており臀部の後中心に沿って少なくともウェスト近傍から臀裂部を経てクロッチ部までカバーし後中心で接ぎ合わされている左右それぞれの後中心身頃1、1´の少なくともヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する身頃2、2´への接ぎ構造などは実質的に図1〜3に示したガードルの場合と同様である。左右それぞれの前記後中心身頃1、1´の展開図も図3に示された展開図と本質的には同一であるし、臀裂近傍の断面の端面図の形も実質的に図4とほぼ同様となる。尚、図5、図6に於いては前記身頃2、2´が図1〜3の如く前記頃2、2´と前部中央身頃8とが接ぎライン10、10´で接ぎ合わされているタイプではなく、いわば前記身頃2、2´と前部中央身頃8とが接ぎラインのない一体の連続した身頃として前部中央身頃も兼ねている場合の例を示した。この場合の接ぎラインは左右それぞれ通常太ももの内側に太もも長さ方向に沿って設けられ(図示せず)、筒状になって左右の脚部18、18´を形成すると同時に前中心ラインに沿って腹部中央で接ぎ合わされている。(この接ぎラインは腹部押さえ布9の裏側に隠れて見えないので、図示されていない。)。この身頃2、2´の生地についは図1〜3に示した例と同様に少なくとも衣類横方向に伸縮性を有する生地を用いる事が好ましいが、縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地を用いることがヒップの自然な丸みを出したり、裾のずり上がりを防止する上からもより好ましく、特に縦横両方向に非常に良く伸びる柔軟な伸縮性編地を用いることが好ましい。この例では図1〜3に示したガードルの例と同様に前記頃2、2´の裏側にヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲にヒップアップ用の当て布3、3´が裏打ちされている。7、7´の鎖線はヒップアップ用の当て布3、3´の上側の縁のライン、17、17´の鎖線はヒップアップ用の当て布3、3´の下側の縁のラインを示したものである。特にこの様なヒップアップ用の当て布としては、弾性繊維を実質上含有していない少なくとも略その長手方向に伸縮性の布を用いることが特に好ましく、更に好ましくはその略長手方向の限界伸度が120%〜250%より好ましくは150%〜220%の布を用いることがより一層好ましい。
【0037】
また、この例に於いては、前記後中心身頃1、1´と前記頃2、2´との接ぎライン12、12´に沿ってヒップの膨らみの頂点よりほぼ下側の前記頃2、2´部分にギャザーが設けられていないが、ギャザーを設けてもよいことは前述した通りである。このロングタイプのガードルに於いても、後中心近傍で皺などの発生がなく、ヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部がきれいにすっきりと現れ、ヒップ部の膨らみの自然な美しい丸みが表現でき、ヒップ部接ぎラインがアウターウエアーにライン状に反映するなどの問題が発生する恐れがなく桃の割れ目のように美しいすっきりしたヒップの形状に造型できるヒップ形状を整える衣類を提供することができる。
【0038】
次に図7、図8を用いて本発明の少なくともヒップ部をカバーし、股部を有し、ヒップ形状を整える衣類の一例のボディスーツへの応用について説明する。図7はボディスーツの前側から見た斜視図、図8はその後側から見た斜視図である。いずれも本質的ではない部分は一部の図示を省略している。図1〜3で説明したガードルに比べて上半身部が上に延長して設けられているだけで、本質的な部分は図1〜3で説明したガードルと実質的に同一の技術思想が適用されている。すなわちこのボディスーツに於いては、ヒップの膨らみの頂点を避けて比較的細幅になっており臀部の後中心に沿って少なくともウェスト近傍から臀裂部を経てクロッチ部までカバーし、後中心で接ぎ合わされている左右それぞれの後中心身頃1、1´が更にウェストより上部に広がって背中部30、30´を形成する身頃と一体となっているが、ウェスト近傍から下の部分は図1〜3に示した前記後中心身頃1、1´と本質的に同様である。また少なくともヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する身頃2、2´への接ぎ構造などは実質的に図1〜3に示したガードルの場合と同様である。左右それぞれの前記後中心身頃1、1´の臀裂近傍の断面の端面図の形も実質的に図4とほぼ同様となる。尚、図1〜図3に於いては前記頃2、2´がやや前側の脇まで伸びていたが、図7〜図8の場合には前記頃2、2´は余り前側まで伸びておらず脇をカバーする程度である点が異なるが、ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する身頃であることは本質的に同様である。そして図7〜図8のボディスーツの場合の前部中央身頃8は、図1〜図3のガードルの前部中央身頃8に比べてより広く前部ほぼ全体をカバーし、乳房カップ部20、20´の下に達するところまで広くカバーしており、また、この例では腹部押さえ布が設けられていない点が異なるが、腹部押さえ布が設けられていてもよいことは前述の通りである。
【0039】
この身頃2、2´の生地についは図1〜3に示した例と同様に少なくとも衣類横方向に伸縮性を有する生地を用いる事が好ましいが、縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地を用いることがヒップの自然な丸みを出したり、裾のずり上がりを防止する上からもより好ましく、特に縦横両方向に非常に良く伸びる柔軟な伸縮性編地を用いることが好ましい。この例では図1〜3に示したガードルの例と同様に前記頃2、2´の裏側にヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲にヒップアップ用の当て布3、3´が裏打ちされている。7、7´の鎖線はヒップアップ用の当て布3、3´の上側の縁のラインを示したものである。特にこの様なヒップアップ用の当て布としては、弾性繊維を実質上含有していない少なくとも略その長手方向に伸縮性の布を用いることが特に好ましく、更に好ましくはその略長手方向の限界伸度が120%〜250%より好ましくは150%〜220%の布を用いることがより一層好ましい。
【0040】
また、このボディスーツの例に於いては、図1〜2に示したガードルと同様に、前記後中心身頃1、1´と前記頃2、2´との接ぎライン12、12´に沿ってヒップの膨らみの頂点よりほぼ下側の前記頃2、2´部分にギャザー6、6´が設けられている。尚、図7〜8に於いて31、31´はストラップ(肩紐)を示している。
【0041】
このボディスーツに於いても、臀部の後中心近傍で皺などの発生がなく、ヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部がきれいにすっきりと現れ、ヒップ部の膨らみの自然な美しい丸みが表現でき、ヒップ部接ぎラインがアウターウエアーにライン状に反映するなどの問題が発生する恐れがなく桃の割れ目のように美しいすっきりしたヒップの形状に造型できるヒップ形状を整える衣類を提供することができる。
【0042】
本発明のヒップ形状を整える衣類においては、前述した様にヒップアップ用の当て布を設けることが好ましく、特にこの様なヒップアップ用の当て布としては、弾性繊維を実質上含有していない少なくとも略その長手方向に伸縮性の布を用いることが特に好ましく、更に好ましくはその略長手方向の限界伸度が120%〜250%より好ましくは150%〜220%の布を用いることがより一層好ましい。
【0043】
ヒップアップ用の当て布として、前述した様な弾性繊維を実質上含有していない少なくとも略その長手方向に伸縮性の布からなっている場合には、当て布は衣類本体生地の伸縮性の布によるヒップアップ機能を補助しサポートするが、弾性繊維を実質上含有していないので緊締力が強すぎることがなく、従って人体の動きにも容易に追従しやすく、適度の伸縮パワーを有するので型崩れを生じにくく、抵抗感や窮屈感が小さく着用感が良好で、しかも容易に伸ばす事が出来るので着用時は容易に着用することができる。そして、好ましくは、その略長手方向の限界伸度が120%〜250%より好ましくは150%〜220%の布を用いることが、衣類の脱着時に無理なく伸ばして脱着できるので衣類の脱着が容易で、しかも着用状態に於いてほど良い伸縮パワーが発現されるので、抵抗感や窮屈感が小さく従って着用感が良好で、人体の動きにも容易に追従しやすく、型崩れを生じにくいなどの点が好適に発揮されより好ましい。また、前記当て布は好ましくは、その両端と上側の縁は衣類本体生地に縫製されているが、その下側の縁が衣類本体生地に縫製されていないかまたはその下側の縁は衣類本体生地の裾端を折り返した折り返し部のみに縫製されている構造を有することが好ましく、かかる態様とすることにより、当て布の下側の縁がかなりの自由度を持つことになるので、当て布の全周囲が本体生地にしっかりと縫製により固定されている場合に比べて、着用時に本体生地との伸度差などにより歪みが生じやすい点を緩和でき、本体生地に皺などが生じる恐れがなく着用時の外観もより良好に保持できるヒップアップ機能を有する衣類を提供できる。更に、この態様の場合においても前記当て布は少なくともその両端と上側の縁は本体生地に縫製されているので、当て布の上側の縁と下側の縁を本体生地に縫製せずに両端部のみ縫製して取り付けたタイプに比べて着用時に当て布が捩れたり、所定の位置からずれたりする恐れがなく着用が容易なヒップアップ機能を有する衣類を提供し得るので好ましい。
前述の略帯状で弾性繊維を実質上含有しておらず、その少なくとも略長手方向に伸縮性を有する本発明で用いるに好ましいヒップアップ用の当て布は、弾性繊維を実質上含有していないので、編組織または織組織によって生地の伸縮性を付与している編物あるいは織物が用いられる。弾性繊維を含有している伸縮性の編物または織物は、少なくとも弾性繊維の素材自体の伸縮性をかなり利用しているので、本体生地と当て布の両方に用いると伸縮パワーはかなり強くなるが、上記好ましい当て布は、弾性繊維を実質上含有しておらず、編組織または織組織によって生地の伸縮性を付与しているので、その組織が伸びきるまでは比較的抵抗感が少なく容易に伸びる。かかる編物や織物の特色として編組織または織組織によって伸縮性を付与しているので、編組織または織組織が伸びきると、突然それ以上は伸びなくなる性質を有している。このように伸びなくなるまでの限度一杯の伸度を限界伸度と称している。したがって本発明で上述したかかる当て布は、限界伸度に達するまでは抵抗感が少なく容易に伸びるが限界伸度に達した時点でそれ以上伸びなくなる性質を有している。したがってこの様な当て布では、その限界伸度に達する前の状態の伸縮性を活用していることになる。ここで少なくとも略長手方向に伸縮性とは、少なくとも略長手方向に伸縮性を有していれば他の方向にも伸縮性を有していてもいなくてもよいと言う意味であり、また、弾性繊維を実質上含有していないとは、弾性繊維の本来有する素材の伸縮性を利用出来る程度には弾性繊維が含有されていないという事であり、通常は弾性繊維が全く含まれていない伸縮性の布を用いるが、弾性繊維の本来有する素材の伸縮性が発揮されるほどでなく、弾性繊維を含有していない布とほぼ同等程度の挙動を示す範囲までは弾性繊維が少量含まれていても実質上弾性繊維を含んでいない布と同等程度に扱えるので差支えないという意味である。
【0044】
この様な当て布として用いる限界伸度を有する生地の素材としては特に限定するものではないが、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ビニロン繊維、木綿その他の各種天然繊維など、その他繊維自体に大きな弾性を持たない各種の繊維から製造される少なくとも一方向に伸縮性の編物または織物が挙げられ、具体的には弾性繊維を実質上含有していないトリコット、チュールネット、ダブルトリコット、スムース(丸編の一種)などの編物が好ましい当て布である。
【0045】
限界伸度が120%〜250%とは、当該当て布に応力をかけていない状態での当該当て布の長さ(原長A)に対し、当該当て布に応力をかけて伸ばし、当該当て布が限界伸度に達した時の長さ(伸長時長さB)が、原長Aの120%〜250%になることを意味している。数式で示すと、限界伸度%=(B/A)×100で示される。
【0046】
限界伸度を有する生地かどうかは、伸ばす目的方向にその生地を引張り、ある長さまでは容易に伸ばすことができるが、ある長さに達すると突然伸ばすことができなくなるので、容易に調べることができる。
【0047】
限界伸度の測定方法としては、試験片を幅5cm、周の長さ20cmの輪状に縫製(2本針オーバーの縫製法、縫製幅:5mm幅、縫製した運針数:20針)し、輪状試験片の周囲のある1点(X)とそれと直径方向反対側の点(Y)の両端で折り畳んで半分の長さ10cmの2重の試験片にする。インストロン型定速伸長型引張試験機(島津製作所製“オートグラフ”AG−500D)を用い、その試験片装着のための試験片引っ張り用の治具棒に取り付け(試験片の輪の中に2本の引っ張り用の治具棒を差し込んでX点とY点で輪を引っ掛けて治具棒をそれぞれ反対向きに引っ張る)、引張り速度30±2cm/minにて引張試験機を操作し、伸びが限界に達するまで荷重をかけて、限界伸度を測定する。
【0048】
【発明の効果】
(1)本発明のヒップ形状を整える衣類においては、後中心で接ぎ合わされている左右2枚の後中心身頃(1、1´)が、ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する身頃(2、2´)に接ぎ合わされており、前記後中心身頃(1、1´)は、前記身頃(2、2´)との接ぎラインに沿った方向に伸びがないかまたは伸びが少ないので、前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との接ぎライン部分での接ぎライン方向への伸びが止められ、前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との間に不自然な皺が発生することなく、ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する前記身頃(2、2´)がヒップの膨らみの自然な美しい丸みを造型し、前記接ぎライン方向に伸びの少ないまたは伸びのない前記後中心身頃(1、1´)により前記身頃(2、2´)でのヒップ部の膨らみが下がるのを防止すると共に、前記後中心身頃(1、1´)の伸びがないかまたは伸びの少ない方向に沿って前記身頃(2、2´)の縫製前の臀部近傍の後中心側の縁でその縁のラインの形状が後中心側に向かって凸状の曲線ラインを有する前記身頃(2、2´)が縫製されることによりヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部がきれいに現れ、従って、ヒップの左右の2つの膨らみの自然な美しい丸みがより一層強調されると共に、ヒップ部接ぎラインがヒップの膨らみの頂点近傍を通っていないのでかかる接ぎラインがアウターウエアーにライン状に反映するなどの問題が発生する恐れがない。更に左右2枚の前記後中心身頃(1、1´)のそれぞれの縫製前の後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであり、かかる左右の後中心身頃(1、1´)が前記後中心側の縁で互いに接ぎ合わされてこの接ぎラインが後中心となるので、この左右の後中心身頃(1、1´)が互いに接ぎ合わされたときにその断面形状が、後中心を頂点として人体肌側に向かって凸の略逆V字状の立体形状を有する形に容易に仕上げることができ、臀部中央を立体的にすっきりと切れ込んだ形に仕上げることができるヒップ形状を整える衣類を提供できる。
【0049】
(2)また、本発明のヒップ形状を整える衣類に於いて、前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との接ぎラインに沿ってヒップの膨らみの頂点よりほぼ下側の前記身頃(2、2´)の部分にギャザーが設けられている本発明の好ましい態様とすることにより、前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との接ぎラインに沿ってヒップの膨らみの頂点よりほぼ下側の前記身頃(2、2´)の部分にギャザーが設けられているので、左右2つのヒップの膨らみの丸みがより立体的に美しく表現できるヒップ形状を整える衣類を提供でき好ましい。
【0050】
(3)また、本発明のヒップ形状を整える衣類に於いて、左右2枚の前記後中心身頃(1、1´が、そのそれぞれの縫製前の形状の後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであって、特に臀裂近傍の曲率が大きい後中心身頃である本発明の好ましい態様とすることにより、前記後中心身頃(1、1´)の縦方向に伸びがないかまたは伸びが少ない布を、その伸びがないかまたは伸びの少ない方向に沿って前記身頃(2、2´)の縫製前の臀部近傍の後中心側の縁でその縁のラインの形状が後中心側に向かって凸状の曲線ラインを有する前記身頃(2、2´)に縫製されることにより、この両者の接ぎラインに沿った方向には伸びが止められまたは伸びが抑制されるので、前記身頃(2、2´)でのヒップ部の膨らみが下がるのを防止すると共に、ヒップ左右の2つの膨らみの間の谷部がきれいに現れ、従って、ヒップの左右の2つの膨らみの自然な美しい丸みがより一層強調されると共に、左右2枚の前記後中心身頃(1、1´が、そのそれぞれの縫製前の後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであって特に臀裂近傍の曲率が大きい後中心身頃であり、かかる左右の後中心身頃(1、1´)が前記後中心側の縁で互いに接ぎ合わされてこの接ぎラインが後中心となるので、この後中心身頃(1、1´)の曲率が大きい部分ほど互いに接ぎ合わされたときにその断面形状が、後中心を頂点として人体肌側に向かってより角度の小さい凸の略逆V字状の立体形状を有する形に容易に仕上げることができ、臀部中央を立体的にすっきりと切れ込んだ形を容易に実現できるヒップ形状を整える衣類を提供でき好ましい。
【0051】
(4)また、本発明のヒップ形状を整える衣類に於いて、ヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲にヒップアップ用の当て布が設けられてなる本発明の好ましい態様とすることにより、前記後中心身頃(1、1´)による前記身頃(2、2´)でのヒップ部の膨らみの下がりを防止する作用と共に、ヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲にヒップアップ用の当て布が設けられていることにより、より一層ヒップを美しくアップでき、しかもヒップアップ用の当て布は、ヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲に設けられているので、この当て布の縁のラインがアウターウエアーにライン状に反映するなどの問題が発生する恐れもなく好ましい。
【0052】
(5)また、本発明のヒップ形状を整える衣類に於いて、前記身頃(2、2´)の少なくともヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている部分が縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地である本発明の好ましい態様とすることにより、ヒップの左右の2つの丸みをより自然な美しい丸みに仕上げる事ができると共に、ヒップをカバーするこの部分がより運動追従性に優れているので、ヒップの動きに伴う裾のずれ上がりなどを防止でき好ましい。
【0053】
(6)また、本発明のヒップ形状を整える衣類に於いて、縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地がツーウェイラッセル編地である本発明の好ましい態様とすることにより、ツーウェイラッセル編地は衣類のヒップ部を適度の緊縮力で包み込むと共に、ヒップの左右の2つの自然な丸みをよりきれい実現でき、且つ、より運動追従性に優れているので、着崩れや裾のずれ上がりなどをより防止でき好ましい。
【0054】
(7)また、本発明のヒップ形状を整える衣類に於いて、腹部をカバーする衣類本体布の前部中央身頃、または、この部分に当て布として用いられる腹部押さえ布が、伸びがほとんどない布か、または、緊迫力の強い伸縮性の布からなる本発明の好ましい態様とすることにより、上記作用に加えて更に腹部の膨出を抑え、腹部形状を整える機能も加味したヒップ形状を整える衣類を提供することができ好ましい。
【0055】
(8)また、本発明のヒップ形状を整える衣類に於いて、衣類が、ガードル、ショーツ、スパッツ、ボディスーツ、水着、レオタードから選ばれた衣類である本発明の好ましい態様とすることにより、これらの衣類は、人体に直接接して着用されるか、あるいは、人体の肌側に近い位置にタイトに着用される衣類であるので、前述した機能が効率よく発揮され、人体のヒップの形状を容易に整える事ができ好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヒップ形状を整える衣類の一例のガードルの前側から見た斜視図。
【図2】図1に示したガードルの後側から見た斜視図。
【図3】図1〜図2に示したガードルの主要構成部片の展開図。
【図4】図2のX−X´断面の端面図。
【図5】本発明のヒップ形状を整える衣類の一例のロングタイプのガードルの前側から見た斜視図。
【図6】図5に示したロングタイプのガードルの後側から見た斜視図。
【図7】本発明のヒップ形状を整える衣類の一例のボディスーツの前側から見た斜視図。
【図8】図7に示したボディスーツの後側から見た斜視図。
【図9】従来のガードルの前側から見た正面図。
【図10】図9に示した従来のガードルの後ろ側から見た背面図。
【図11】別の従来のガードルの前側から見た正面図。
【図12】図11に示した従来のガードルの後ろ側から見た背面図。
【図13】図11、図12に示した従来のガードルを構成する各身頃の展開図。
【符号の説明】
1、1´ 後中心身
1a、1´a 後中心身頃(1、1´)のクロッチ部分
2、2´ ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する身
3、3´ ヒップアップ用の当て布
4 後中心の接ぎライン
5 臀裂
6、6´ ギャザー
7、7´ ヒップアップ用の当て布3、3´の上側の縁のライン
8 前部中央身頃
9 腹部押さえ布
10、10´ 接ぎライン
11 ウエストバンド
12、12´ 接ぎライン
17、17´ ヒップアップ用の当て布3、3´の下側の縁のライン
18、18´ 脚部
20、20´ 乳房カップ部
30、30´ 背中部
31、31´ ストラップ(肩紐)
71 後身頃
72 脇身頃
73 後身頃71と脇身頃72とのヒップ部接ぎライン
74 後中心の接ぎライン
75 前部中央身頃
76 腹部押さえ布
77 クロッチ部
78 前裾充当部片
80 後中心身頃
81 後中心身頃80と脇身頃72との接ぎライン
82 ギャザー
83−84 矢印
85−86 矢印
87−88 矢印

Claims (8)

  1. 少なくともヒップ部をカバーし、股部を有する衣類であって、ヒップの膨らみの頂点を避けて比較的細幅になっていて臀部の後中心に沿って少なくともウェスト近傍から臀裂部を経てクロッチ部までカバーし後中心で接ぎ合わされている左右2枚の後中心身頃(1、1´)が、ヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている少なくとも横方向に伸縮性を有する身頃(2、2´)に接ぎ合わされており、前記後中心身頃(1、1´)は、左右2枚のそれぞれの縫製前の形状が、前記身頃(2、2´)と接ぎ合わされる側の縁のラインの形状がほぼ直線状であり且つこのラインに沿った方向に伸びがないかまたは伸びが少なく、後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであ、前記前記身頃(2、2´)は、その縫製前の臀部近傍の後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凸状の曲線ラインであ、少なくとも臀裂近傍において左右の前記後中心身頃(1、1´)は後中心を頂点としてその断面形状が人体肌側に向かって凸の略逆V字状の立体形状を有することを特徴とするヒップ形状を整える衣類。
  2. 前記後中心身頃(1、1´)と前記身頃(2、2´)との接ぎラインに沿ってヒップの膨らみの頂点よりほぼ下側の前記身頃(2、2´)の部分にギャザーが設けられている請求項1に記載のヒップ形状を整える衣類。
  3. 左右2枚の前記後中心身頃(1、1´が、そのそれぞれの縫製前の形状の後中心側の縁のラインの形状が後中心側に向かって凹状の曲線ラインであって、特に臀裂近傍の曲率が大きい後中心身頃である請求項1または2のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
  4. ヒップの膨らみの頂点を避けて、ヒップ部外側周囲にヒップアップ用の当て布が設けられてなる請求項1〜3のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
  5. 前記身頃(2、2´)の少なくともヒップの膨らみの頂点をカバーし且つヒップの主要部分をカバーしている部分が縦、横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地である請求項1〜4のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
  6. 縦横両方向に伸縮性のあるツーウェイ編地がツーウェイラッセル編地である請求項5に記載のヒップ形状を整える衣類。
  7. 腹部をカバーする衣類本体布の前部中央身頃、または、この部分に当て布として用いられる腹部押さえ布が、伸びがほとんどない布か、または、緊迫力の強い伸縮性の布からなる請求項1〜6のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
  8. 衣類が、ガードル、ショーツ、スパッツ、ボディスーツ、水着、レオタードから選ばれた衣類である請求項1〜7のいずれかに記載のヒップ形状を整える衣類。
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