JP3582491B2 - クラッチ温度推定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4輪駆動車に適用されるトルク配分クラッチや左右駆動輪間に設けられる差動制限クラッチ等の駆動系クラッチのクラッチ温度を推定するクラッチ温度推定装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、前後輪に伝達されるトルク配分を制御する電子制御クラッチを有する4輪駆動車で、駆動輪から従動輪に駆動トルクが伝達される場合、一定値以上のトルクが一定時間以上連続すると、クラッチ温度が過熱状態となるため、通常の制御に代え、クラッチ解放等によりクラッチ温度を低下させる保護制御が作動するものが知られている。特に、小型・軽量の4WDシステムをスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)等に採用して砂漠や雪道等の低μ路を走破しようとする場合は、クラッチの限界トルクでの駆動伝達を頻繁に行う必要があり、クラッチの温度保証による保護を考慮した制御が必要となる。
【0003】
このクラッチ保護制御の入力情報であるクラッチ温度情報は、電子制御クラッチに設けられた温度センサにより得たり、一定値以上のトルクが一定時間以上連続することでクラッチ温度を推定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、クラッチ保護制御で必要なクラッチ温度情報を、電子制御クラッチに設けられた温度センサにより得る場合は、温度や振動等の面で過酷なクラッチ環境の下でも耐え得る温度センサを要し、しかも、断線やショート等の故障対策も必要であるため、コスト増になってしまうという問題がある。
【0005】
一方、一定値以上のトルクが一定時間以上連続することでクラッチ温度を推定し、クラッチ保護制御を行う場合、下記に述べる問題がある。
(1) 一定値以上のトルクが一定時間以上連続すると保護制御が作動される制御となっていたため、図10(a)に示すように、しきい値以上の小さいトルクが一定時間(t0〜t2)以上連続する場合は((イ)の特性)、図10(b)に示すように、保護制御が不要であるにもかかわらずt2の時点で保護制御される。よって、温度保証による保護に対し過剰制御となることで駆動トルクを十分に伝達できない。
【0006】
また、図10(a)に示すように、しきい値以上の大きいトルクが一定時間(t0〜t2)以上連続する場合は((ロ)の特性)、t2の時点で保護制御されるが、図10(b)に示すように、t1の時点で既に保護制御すべき実クラッチ温度を超えているため、保護制御に入るタイミングが遅れる。
(2) 指令トルクがある一定値を下回る場合、クラッチの推定温度がリセットされる制御となっていたため、図11に示すように、指令トルクがしきい値を下回る場合にはクラッチ推定温度はリセットされるが、実クラッチ温度はすぐに低下せず、その直後に指令トルクがしきい値を超え、その直後に指令トルクがしきい値を下回るような状況が繰り返されると、実クラッチ温度とクラッチ推定温度との間に大きな乖離(かいり)が生じてしまう。
【0007】
すなわち、一定値以上のトルクが一定時間以上連続することでクラッチ温度を推定する場合、クラッチ推定温度の信頼度が非常に低いといえる。
【0008】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、温度センサを用いることなく低コストでありながら、実クラッチ温度に近いクラッチ温度情報を得ることができるクラッチ温度推定装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1,2,3に記載された発明の共通手段について説明する。
駆動系に設けられ、滑り締結を含む締結制御が行われる駆動系クラッチの温度を推定するクラッチ温度推定装置において、
前記駆動系クラッチの入出力軸間の相対回転速度差を検出するクラッチ回転速度差検出手段と、
前記駆動系クラッチを介して伝達される駆動トルクを推定するクラッチ伝達トルク推定手段と、
前記クラッチ回転速度差とクラッチ伝達トルクにより前記駆動系クラッチに加わる入力エネルギを算出する入力エネルギ算出手段と、
算出された入力エネルギの大きさに応じ、時間の経過と共に上昇したり下降したりするクラッチ温度の変動を予測し、この温度変動予測に基づいてクラッチ推定温度を算出するクラッチ推定温度算出手段とを備え、
入力エネルギの判断しきい値を加算判断基準値として設定し、前記入力エネルギ算出手段により算出された入力エネルギが設定された加算判断基準値以上かどうかを判断するクラッチ温度加減判断手段を設け、
前記クラッチ推定温度算出手段を、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度上昇量を加算し、また、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度下降量を減算することでクラッチ推定温度を算出する手段とした。
【0010】
請求項1記載のクラッチ温度推定装置では、上記共通手段に加え、前記温度上昇量は、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合に、加算判断基準値に対する入力エネルギの増加量に比例して決定され、前記温度下降量は、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合に、入力エネルギの減少量に関係なく決定される。
請求項2記載のクラッチ温度推定装置では、上記共通手段に加え、その時のクラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数と実温度勾配よりも急な温度下降係数とし、その時のクラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数と実温度勾配よりも緩い温度下降係数とする温度勾配係数設定手段を設け、
前記クラッチ推定温度算出手段を、その時のクラッチ推定温度に加算する温度上昇量を、前記温度上昇係数に基づいて算出する温度上昇量算出部と、その時のクラッチ推定温度に減算する温度下降量を、前記温度下降係数に基づいて算出する温度下降量算出部を有する手段とした。
請求項3記載のクラッチ温度推定装置では、上記共通手段に加え、車速を検出する車速検出手段を設け、
クラッチ温度の推定を許容する上限車速値を設定車速としたとき、検出される車速が設定車速以上であるときには、前記クラッチ推定温度算出手段によるクラッチ推定温度の算出を中止して初期状態にリセットするクラッチ温度推定制御中止手段を設けた。
【0011】
請求項4記載の発明では、請求項2又は請求項3に記載のクラッチ温度推定装置において、
前記温度上昇量は、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合に、加算判断基準値に対する入力エネルギの増加量に比例して決定され、前記温度下降量は、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合に、入力エネルギの減少量に関係なく決定されることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明では、請求項1又は請求項3に記載のクラッチ温度推定装置において、
その時のクラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数と実温度勾配よりも急な温度下降係数とし、その時のクラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数と実温度勾配よりも緩い温度下降係数とする温度勾配係数設定手段を設け、
前記クラッチ推定温度算出手段を、その時のクラッチ推定温度に加算する温度上昇量を、前記温度上昇係数に基づいて算出する温度上昇量算出部と、その時のクラッチ推定温度に減算する温度下降量を、前記温度下降係数に基づいて算出する温度下降量算出部を有する手段としたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載のクラッチ温度推定装置において、
車速を検出する車速検出手段を設け、
クラッチ温度の推定を許容する上限車速値を設定車速としたとき、検出される車速が設定車速以上であるときには、前記クラッチ推定温度算出手段によるクラッチ推定温度の算出を中止して初期状態にリセットするクラッチ温度推定制御中止手段を設けたことを特徴とする。
請求項7記載の発明では、請求項1乃至6の何れか1項に記載のクラッチ温度推定装置において、
前記加算判断基準値は、クラッチ温度がほぼ一定の温度となる入力エネルギにより設定されることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明では、請求項1乃至7の何れか1項に記載のクラッチ温度推定装置において、
前記駆動系クラッチは、前輪または後輪へ伝達されるエンジン駆動トルクの一部を、後輪または前輪に配分する位置に設けられ、算出されたクラッチ推定温度を、クラッチ過熱を防止するクラッチ保護制御の入力情報として用いる制御型の前後輪トルク配分クラッチであることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明では、請求項8に記載のクラッチ温度推定装置において、
前記クラッチ回転速度差検出手段を、各輪にそれぞれ車輪速センサを設け、左右前輪速センサからの左右前輪速検出値の平均値と、左右後輪速センサからの左右後輪速検出値の平均値との差により、駆動系クラッチの入出力軸間のクラッチ回転速度差を算出する手段とし、
前記入力エネルギ算出手段を、算出されたクラッチ回転速度差と車輪速センサの検出限界値に基づき設定されたクラッチ回転速度差下限値とを比較し、算出されたクラッチ回転速度差がクラッチ回転速度差下限値を超える場合は、算出されたクラッチ回転速度差をそのまま用いて入力エネルギを算出し、算出されたクラッチ回転速度差がクラッチ回転速度差下限値以下の場合には、クラッチ回転速度差をゼロとして入力エネルギを算出する手段としたことを特徴とする。
【0016】
【発明の作用および効果】
請求項1,2,3に記載された発明の共通作用および共通効果について説明する。
クラッチ温度を推定するとき、クラッチ回転速度差検出手段において、駆動系クラッチの入出力軸間の相対回転速度差が検出され、クラッチ伝達トルク推定手段において、駆動系クラッチを介して伝達される駆動トルクが推定され、入力エネルギ算出手段において、クラッチ回転速度差とクラッチ伝達トルクにより駆動系クラッチに加わる入力エネルギが算出され、クラッチ推定温度算出手段において、算出された入力エネルギの大きさに応じ、時間の経過と共に上昇したり下降したりするクラッチ温度の変動が予測され、この温度変動予測に基づいてクラッチ推定温度が算出される。
すなわち、駆動系クラッチに加わる入力エネルギをクラッチの相対滑り(相対回転速度差)とクラッチ伝達トルクにより算出し、入力エネルギの大きさによるクラッチ温度の変動予測に基づいてクラッチ推定温度が算出される。つまり、入力エネルギが大きく変動するような場合、指令トルクが低くなる毎にクラッチ推定温度がリセットされることなく、入力エネルギの大きさにより推定温度を上昇させたり下降させたりというように、実クラッチ温度の変化推移に追従する推定動作により精度の高いクラッチ温度推定が行われる。
よって、温度センサを用いることなく低コストでありながら、実クラッチ温度に近いクラッチ温度情報を得ることができる。
【0017】
また、入力エネルギの判断しきい値が加算判断基準値として設定され、クラッチ温度加減判断手段において、入力エネルギ算出手段により算出された入力エネルギが設定された加算判断基準値以上かどうかが判断される。そして、クラッチ推定温度算出手段において、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度上昇量が加算され、また、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度下降量が減算されることでクラッチ推定温度が算出される。
すなわち、入力エネルギが加算判断基準値以上であると推定温度を上げ、入力エネルギが加算判断基準値未満であると推定温度を下げるというように、入力エネルギの大小を比較することでクラッチ推定温度が算出される。
よって、加算判断基準値に対し入力エネルギの大小比較によりクラッチ温度を推定する手法を採用しているため、熱収支の細かな影響を無視することができる。
【0018】
請求項1記載のクラッチ温度推定装置にあっては、上記共通作用および共通効果に加え、温度上昇量は、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合に、加算判断基準値に対する入力エネルギの増加量に比例して決定され、温度下降量は、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合に、入力エネルギの減少量に関係なく決定される。
よって、温度上昇量は、入力エネルギの増加量に対する簡単な比例計算で算出することができ、温度下降量は、入力エネルギの減少量に関係なく一定値から求められるため、短時間での温度推定が可能となる。
請求項2記載のクラッチ温度推定装置にあっては、上記共通作用および共通効果に加え、温度勾配係数設定手段において、その時のクラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数と実温度勾配よりも急な温度下降係数とされ、その時のクラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数と実温度勾配よりも緩い温度下降係数とされる。そして、クラッチ推定温度算出手段の温度上昇量算出部において、その時のクラッチ推定温度に加算する温度上昇量が、設定された温度上昇係数に基づいて算出され、クラッチ推定温度算出手段の温度下降量算出部において、その時のクラッチ推定温度に減算する温度下降量が、設定された温度下降係数に基づいて算出される。
すなわち、砂路や深雪路等の走行時で、クラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数により高めの推定温度となり、また、実温度勾配よりも緩い温度下降係数とすることで推定温度の低下が小さく抑えられるため、限界使用域付近では、実際よりも厳しめにクラッチ温度が見積もられることになる。一方、通常走行時等でクラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数により推定温度を高負荷温度域の推定温度に連続させており、また、実温度勾配よりも急な温度下降係数とすることで推定温度が早期にリセット方向に低下させられるため、推定温度と実温度との誤差が広がることで発生する実用走行温度域でのクラッチ保護制御の誤作動を防止することができる。
よって、実用走行温度域および高負荷温度域において、それぞれの走行シーンを考慮したクラッチ温度の推定を行うことができる。
請求項3記載のクラッチ温度推定装置にあっては、上記共通作用および共通効果に加え、クラッチ温度の推定を許容する上限車速値を設定車速としたとき、クラッチ温度推定制御中止手段において、車速検出手段により検出される車速が設定車速以上であるときには、クラッチ推定温度算出手段によるクラッチ推定温度の算出が中止され初期状態にリセットされる。
よって、連続温度推定による誤差の積み上げを防止でき、クラッチ推定温度の推定精度を向上させることができる。
【0019】
請求項4記載の発明にあっては、温度上昇量は、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合に、加算判断基準値に対する入力エネルギの増加量に比例して決定され、温度下降量は、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合に、入力エネルギの減少量に関係なく決定される。
よって、温度上昇量は、入力エネルギの増加量に対する簡単な比例計算で算出することができ、温度下降量は、入力エネルギの減少量に関係なく一定値から求められるため、短時間での温度推定が可能となる。
【0020】
請求項5記載の発明にあっては、温度勾配係数設定手段において、その時のクラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数と実温度勾配よりも急な温度下降係数とされ、その時のクラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数と実温度勾配よりも緩い温度下降係数とされる。そして、クラッチ推定温度算出手段の温度上昇量算出部において、その時のクラッチ推定温度に加算する温度上昇量が、設定された温度上昇係数に基づいて算出され、クラッチ推定温度算出手段の温度下降量算出部において、その時のクラッチ推定温度に減算する温度下降量が、設定された温度下降係数に基づいて算出される。
すなわち、砂路や深雪路等の走行時で、クラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数により高めの推定温度となり、また、実温度勾配よりも緩い温度下降係数とすることで推定温度の低下が小さく抑えられるため、限界使用域付近では、実際よりも厳しめにクラッチ温度が見積もられることになる。一方、通常走行時等でクラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数により推定温度を高負荷温度域の推定温度に連続させており、また、実温度勾配よりも急な温度下降係数とすることで推定温度が早期にリセット方向に低下させられるため、推定温度と実温度との誤差が広がることで発生する実用走行温度域でのクラッチ保護制御の誤作動を防止することができる。
よって、実用走行温度域および高負荷温度域において、それぞれの走行シーンを考慮したクラッチ温度の推定を行うことができる。
【0021】
請求項6記載の発明にあっては、クラッチ温度の推定を許容する上限車速値を設定車速としたとき、クラッチ温度推定制御中止手段において、車速検出手段により検出される車速が設定車速以上であるときには、クラッチ推定温度算出手段によるクラッチ推定温度の算出が中止され初期状態にリセットされる。
よって、連続温度推定による誤差の積み上げを防止でき、クラッチ推定温度の推定精度を向上させることができる。
請求項7記載の発明にあっては、加算判断基準値が、クラッチ温度がほぼ一定の温度となる入力エネルギによって設定される。
よって、加算判断基準値をクラッチ固有の温度特性から設定することができる。
【0022】
請求項8記載の発明にあっては、駆動系クラッチが、前輪または後輪へ伝達されるエンジン駆動トルクの一部を、後輪または前輪に配分する位置に設けられ、算出されたクラッチ推定温度が、クラッチ過熱を防止するクラッチ保護制御の入力情報として用いられる制御型の前後輪トルク配分クラッチとされる。
よって、温度センサを用いることのない低コストによるシステムとしながら、実クラッチ温度に近いクラッチ推定温度をクラッチ温度情報としてクラッチ保護制御が行われるため、クラッチ限界トルク域での駆動伝達を頻繁に行うような場合でも確実に前後輪トルク配分クラッチの温度保証を行うことができる。
【0023】
請求項9記載の発明にあっては、クラッチ回転速度差検出手段において、各輪にそれぞれ設けられた車輪速センサのうち、左右前輪速センサからの左右前輪速検出値の平均値と、左右後輪速センサからの左右後輪速検出値の平均値との差により、駆動系クラッチの入出力軸間のクラッチ回転速度差が算出される。そして、入力エネルギ算出手段において、算出されたクラッチ回転速度差と車輪速センサの検出限界値に基づき設定されたクラッチ回転速度差下限値とが比較され、算出されたクラッチ回転速度差がクラッチ回転速度差下限値を超える場合は、算出されたクラッチ回転速度差をそのまま用いて入力エネルギが算出され、算出されたクラッチ回転速度差がクラッチ回転速度差下限値以下の場合には、クラッチ回転速度差をゼロとして入力エネルギが算出される。
すなわち、例えば、磁束を出すセンサ本体と、車輪と共に回転するセンサロータにより構成され、センサ本体により磁束の変化を正弦波電圧に変え、正弦波電圧をパルス波形に変換してパルス数のカウントにより車輪速を検出する車輪速センサを用いた場合、車輪と共に回転するセンサロータの回転数が極低回転域である場合には、1回の検出周期を短くするほどパルスカウント数が少なくなり、この結果、車輪速検出値にバラツキが生じる。この車輪速センサで検出されるバラツキのない最小車輪速検出値が検出限界値であり、車輪速が検出限界値以下である場合は、車輪速ゼロであろうとも検出限界値が車輪速検出値とされる。
このため、例えば、前後輪のうち1輪だけで穴等にはまってロックされ、他の3輪は空転状態である場合、実際にはクラッチ回転速度差がゼロであるにもかかわらず、ロックされた車輪の車輪速が検出限界値とされることで、クラッチ回転速度差が生じているとみなされ、クラッチ推定温度が上昇することで、実クラッチ温度に対して乖離が生じる。
これに対し、算出されたクラッチ回転速度差がクラッチ回転速度差下限値以下の場合には、クラッチ回転速度差をゼロとして入力エネルギを算出するようにしているため、車輪速センサの検出限界によるクラッチ推定温度と実クラッチ温度との乖離が解消され、クラッチ温度の推定精度を向上させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明におけるクラッチ温度推定装置を実現する実施の形態を、請求項1〜請求項8に対応する第1実施例と、請求項9に対応する第2実施例に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例におけるクラッチ温度推定装置が適用された4輪駆動車の前後輪トルク配分制御装置を示す全体システム図であり、1はエンジン、2はトランスミッション、3はフロントディファレンシャル、4,5はフロント側ドライブシャフト、6,7は左右の前輪、8はトランスファー、9はプロペラシャフト、10は電子制御クラッチ(駆動系クラッチ)、11はリアディファレンシャル、12,13はリア側ドライブシャフト、14,15は左右の後輪である。
【0026】
すなわち、エンジン及びトランスミッション2を経過した駆動トルクを、前輪6,7側に伝達するFF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)をベースとし、電子制御クラッチ10を介して後輪14,15にエンジン駆動トルクの一部を伝達する4輪駆動車であり、駆動力配分比(%)は、電子制御クラッチ10が締結解放状態では、前輪:後輪=100:0(%)の前輪駆動配分比であり、電子制御クラッチ10が完全締結状態では、前輪:後輪=50:50(%)の前後輪等配分比であり、電子制御クラッチ10の締結度合いに応じて後輪配分比が0%〜50%まで無段階に制御される。
【0027】
前記電子制御クラッチ10は、4WDコントローラ16からの駆動電流により制御され、4WDコントローラ16には、モード切替スイッチ17からのモードスイッチ信号と、エンジン回転数センサ18からのエンジン回転数信号と、アクセル開度センサ19からのアクセル開度信号と、左前輪速センサ20からの左前輪速信号と、右前輪速センサ21からの右前輪速信号と、左後輪速センサ22からの左後輪速信号と、右後輪速センサ23からの右後輪速信号が入力され、4WDコントローラ16からは、電子制御クラッチ10の電磁ソレノイド24に対し駆動電流が出力されると共に、インジケータ25に対し表示指令が出力され、警告灯&警報26に対し点灯警報指令が出力される。
【0028】
図2は電子制御クラッチ10を示す概略図であり、図3は電子制御クラッチ10のカム機構を示す斜視図及び作用説明図である。
図2及び図3において、24は電磁ソレノイド、27はクラッチ入力軸、28はクラッチ出力軸、29はクラッチハウジング、30はアーマチュア、31はコントロールクラッチ、32はコントロールカム、33はメインカム、34はボール、35はメインクラッチ、36はカム溝である。
【0029】
前記クラッチ入力軸27は、一端部が前記プロペラシャフト9に連結され、他端部がクラッチハウジング29に固定され、前記クラッチ出力軸28は、前記リアディファレンシャル11の入力ギアに固定されている。
【0030】
前記コントロールクラッチ31は、クラッチハウジング29とコントロールカム32との間に介装されたクラッチで、前記メインクラッチ35は、クラッチハウジング29とクラッチ出力軸28との間に介装されたクラッチである。
【0031】
前記コントロールカム32と、メインカム33と、両カム32,33に形成されたカム溝36,36の間に挟持されたボール34により、図3に示すようにカム機構が構成される。
【0032】
ここで、電子制御クラッチ10の締結作動について説明する。
まず、4WDコントローラ16からの指令により、電磁ソレノイド24に電流が流されると、電磁ソレノイド24の回りに磁界が発生し、アーマチュア30をコントロールクラッチ31側に引き寄せる。この引き寄せられたアーマチュア30に押され、コントロールクラッチ31で摩擦トルクが発生し、コントロールクラッチ31で発生した摩擦トルクは、カム機構のコントロールカム32に伝達される。コントロールカム32に伝達されたトルクは、カム溝36,36及びボール34を介して軸方向のトルクに増幅・変換され、メインカム33をフロント方向に押し付ける。メインカム33がメインクラッチ35を押し、メインクラッチ35に電流値に比例した摩擦トルクが発生する。メインクラッチ35で発生したトルクは、クラッチ出力軸28を経過し、駆動トルクとしてリアディファレンシャル11へと伝達される。
【0033】
次に、作用を説明する。
【0034】
[クラッチ推定温度の算出処理]
図4は4WDコントローラ16で実行されるクラッチ推定温度の算出処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(クラッチ温度想定装置に相当)。
【0035】
ステップ40では、左前輪速センサ20からの左前輪速VFLと、右前輪速センサ21からの右前輪速VFRと、左後輪速センサ22からの左後輪速VRLと、右後輪速センサ23からの右後輪速VRRと、4WDコントローラ16から電磁ソレノイド24に対して出力される駆動電流Aが20msec毎に読み込まれる。
【0036】
ステップ41では、単位入力エネルギEnが、クラッチ伝達トルクTEと前後輪回転速度差△V(クラッチ回転速度差)を掛け合わせることで算出される。ここで、クラッチ伝達トルクTEは駆動電流Aに基づいて算出され、また、前後輪回転速度差△Vは、左右前輪速平均値と左右後輪速平均値との差により算出される。
【0037】
ステップ42では、ステップ41で算出された単位入力エネルギEnがメモリ(RAM)に書き込まれる。
【0038】
ステップ43では、カウント値Nに1が加算されてN+1とされる。
【0039】
ステップ44では、カウント値Nが設定カウント値N0(例えば、32)以上かどうかが判断され、NOの場合はステップ40へ戻り、YESの場合はステップ45へ進む。
【0040】
ステップ45では、カウント値NがN=0にクリアされる。
【0041】
ステップ46では、入力エネルギEがメモリされている単位入力エネルギEnの平均値演算により算出される。すなわち、設定カウント値N0が32の場合には、入力エネルギEは、640msec(=20msec×32)間の単位入力エネルギEnの平均値となる(図7参照)。
【0042】
ステップ50では、左右後輪速平均値により車速Vが算出される。
【0043】
ステップ51では、車速Vが設定車速V0以上かどうかが判断され、YESの場合にはステップ52へ進み、クラッチ推定温度T1を初期温度T0に設定してクラッチ推定温度T1の算出が中止され初期状態にリセットされる。ここで、設定車速V0は、クラッチ温度の推定を許容する上限車速値により決められる。また、ステップ51でNOの場合はステップ53以降の流れに進む。
【0044】
ステップ53では、入力エネルギEが加算判断基準値E0以上かどうかが判断され、YESの場合はステップ54〜ステップ57の温度上昇側推定処理に進み、NOの場合はステップ57〜ステップ61の温度下降側推定処理に進む。ここで、加算判断基準値E0は、発熱量と放熱量とがほぼ同じであり、クラッチ温度がほぼ一定の温度となる入力エネルギEの判断しきい値として設定されるもので、クラッチ固有の固定値として与えるものとする。
【0045】
ステップ54では、加算判断基準値E0に対する入力エネルギEの増加量(=E−E0)を温度上昇量に換算した暫定温度上昇量△T1upを、クラッチ推定温度T1(最初の推定時は初期温度T0)に加算して、その時の暫定クラッチ推定温度T1zが算出される。
【0046】
ステップ55では、その時の暫定クラッチ推定温度T1zにより温度上昇係数Kupが設定される。つまり、図6に示すように、その時の暫定クラッチ推定温度T1zが実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数Kup1とされ、その時のクラッチ推定温度T1が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数Kup2とされる。
【0047】
ステップ56では、ステップ55で設定された温度上昇係数Kupと暫定温度上昇量△T1upとの積により温度上昇量△Tupが算出される。
【0048】
ステップ57では、今回のクラッチ推定温度T1nが、前回のクラッチ推定温度T1に温度上昇量△Tupを加算することで算出される。
【0049】
ステップ58では、加算判断基準値E0に対する入力エネルギEの減少量を一定値とし、その一定値を温度下降量に換算した暫定温度下降量△T1dnを、クラッチ推定温度T1(最初の推定時は初期温度T0)から減算して、その時の暫定クラッチ推定温度T1zが算出される。
【0050】
ステップ59では、その時の暫定クラッチ推定温度T1zにより温度下降係数Kdnが設定される。つまり、図6に示すように、その時の暫定クラッチ推定温度T1zが実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度下降係数Kdn1とされ、その時のクラッチ推定温度T1が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度下降係数Kdn2とされる。
【0051】
ステップ60では、ステップ59で設定された温度下降係数Kdnと暫定温度下降量△T1dn(一定値)との積により温度下降量△Tdnが算出される。
【0052】
ステップ61では、今回のクラッチ推定温度T1nが、前回のクラッチ推定温度T1に温度下降量△Tdnを減算することで算出される。
【0053】
[クラッチ保護制御処理]
図5は4WDコントローラ16で実行されるクラッチ保護制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、640msec/ルーチンで実行される。
【0054】
ステップ69では、図4のフローチャートにより算出されたクラッチ推定温度T1nが読み込まれる。
【0055】
ステップ62では、ステップ69で読み込まれたクラッチ推定温度T1nがクラッチ保護判定温度Tp以上かどうかが判断される。
【0056】
ステップ62でT1n<TpでありNOと判断された場合は、ステップ63へ進み、ステップ63では、クラッチ推定温度T1nが初期温度T0を超えるかどうかが判断され、T1n>T0の場合は、ステップ64へ進み、今回のクラッチ推定温度T1nがそのままクラッチ推定温度T1とされ、ステップ70へ進む。ステップ63でT1n≦T0の場合は、ステップ65へ進み、ステップ65では、初期温度T0がクラッチ推定温度T1とされ、ステップ70へ進む。
【0057】
ステップ62でT1n≧TpでありYESと判断された場合は、ステップ66以降のクラッチ保護処理へ進む。
【0058】
ステップ66では、駆動電流AがA=0とされる。つまり、電子制御クラッチ10が解放状態とされる。
【0059】
ステップ67では、警告灯&警報26に対しランプ点滅および警報作動により保護制御モードであることがドライバに知らされる。
【0060】
ステップ68では、ステップ62でYESと判断された時点から開始されるタイマ値TIMが設定タイマ値TIM0(例えば、60sec)以上かどうかが判断され、設定タイマ値TIM0となるまで、ステップ66およびステップ67のクラッチ保護作動が継続され、設定タイマ値TIM0になるとステップ70へ進み、電子制御クラッチ10が解放状態から通常の締結トルク制御状態へと復帰し、AUTOモードによる前後輪トルク配分制御が再開される。
【0061】
[クラッチ温度推定の基本作用]
例えば、砂漠等を走破するときには、図4のステップ41において、電子制御クラッチ10の入出力軸間の相対回転速度差が前後輪回転速度差△Vにより算出され、電子制御クラッチ10を介して伝達されるクラッチ伝達トルクTEが駆動電流Aに基づいて推定され、電子制御クラッチ7に加わる単位入力エネルギEnが、クラッチ伝達トルクTEと前後輪回転速度差△Vを掛け合わせることで算出され、ステップ46において、入力エネルギEがメモリされている単位入力エネルギEnの平均値演算により算出される。すなわち、図7のエネルギ(ENERGY)に示すように、20msec毎の単位入力エネルギEnが32本算出され、640msec間の単位入力エネルギEnの平均値により入力エネルギEが計算される。
【0062】
そして、図4のフローチャートのステップ53〜ステップ61において、算出された入力エネルギEの大きさに応じ、時間の経過と共に上昇したり下降したりするクラッチ温度の変動が予測され、この温度変動予測に基づき、ステップ57またはステップ61において、今回のクラッチ推定温度T1nが算出される。
【0063】
よって、温度センサを用いることなく低コストでありながら、実クラッチ温度に近いクラッチ温度情報を得ることができる。
【0064】
[入力エネルギ基準によるクラッチ温度推定作用]
クラッチ温度を推定するにあたって、クラッチ温度がほぼ一定の温度となる入力エネルギの判断しきい値が加算判断基準値E0として設定され、ステップ53(クラッチ温度加減判断手段)において、図4のフローチャートのステップ40〜ステップ46(入力エネルギ算出手段)により算出された入力エネルギEが設定された加算判断基準値E0以上かどうかが判断される。そして、ステップ54〜ステップ61(クラッチ推定温度算出手段)において、入力エネルギEが加算判断基準値E0以上であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度T1に温度上昇量△Tupが加算され、また、入力エネルギEが加算判断基準値E0未満であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度T1に温度下降量△Tdnが減算されることで今回のクラッチ推定温度T1nが算出される。
【0065】
すなわち、図7の温度加減判断に示すように、入力エネルギEが加算判断基準値E0以上であると推定温度を上げ、入力エネルギEが加算判断基準値E0未満であると推定温度を下げるというように、入力エネルギEの大小を比較することでクラッチ推定温度が算出される。
【0066】
よって、クラッチ固有の温度特性により決められる加算判断基準値E0に対し入力エネルギEの大小比較によりクラッチ温度を推定する手法を採用しているため、熱収支の細かな影響を無視することができる。
【0067】
[温度勾配係数によるクラッチ温度推定作用]
クラッチ温度を推定するにあたって、図6(温度勾配係数設定手段)に示すように、その時の暫定クラッチ推定温度T1zが実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数Kup1と実温度勾配よりも急な温度下降係数Kdn1とされ、その時の暫定クラッチ推定温度T1zが高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数Kup2と実温度勾配よりも緩い温度下降係数Kdn2とされる。
【0068】
そして、図7の温度変動量の算出に示すように、ステップ55およびステップ56(温度上昇量算出部)において、その時のクラッチ推定温度T1に加算する温度上昇量△Tupが、設定された温度上昇係数Kup1またはKup2に基づいて算出され、ステップ59およびステップ60(温度下降量算出部)において、その時のクラッチ推定温度T1に減算する温度下降量△Tdnが、設定された温度下降係数Kdn1またはKdn2に基づいて算出される。
【0069】
すなわち、砂路や深雪路等の走行時で、暫定クラッチ推定温度T1zが高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数Kup2により高めの推定温度となり、また、実温度勾配よりも緩い温度下降係数Kdn2とすることで推定温度の低下が小さく抑えられるため、限界使用域付近では、実際よりも厳しめにクラッチ温度が見積もられることになり、確実に電子制御クラッチ10を保護することができる。
【0070】
一方、通常走行時等で暫定クラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数Kup1により推定温度を高負荷温度域の推定温度に連続させており、また、実温度勾配よりも急な温度下降係数Kdn1とすることで推定温度が早期にリセット方向に低下させられるため、推定温度と実温度との誤差が広がることで発生する実用走行温度域でのクラッチ保護制御の誤作動を防止することができる。
【0071】
よって、実用走行温度域および高負荷温度域において、それぞれの走行シーンを考慮したクラッチ温度の推定を行うことができる。
【0072】
[クラッチ温度推定の中止作用]
クラッチ温度の推定を許容する上限車速値を設定車速V0としたとき、図5のステップ51およびステップ52(クラッチ温度推定制御中止手段)において、車速Vが設定車速V0以上であるときには、ステップ53以降のクラッチ推定温度T1nの算出が中止され、クラッチ推定温度T1を初期値T0にし、初期状態にリセットされる。
【0073】
よって、連続温度推定による誤差の積み上げを防止でき、クラッチ推定温度の推定精度を向上させることができる。
【0074】
[クラッチ温度保証作用]
図5のフローチャートにおいて、読み込まれた今回のクラッチ推定温度T1nがクラッチ保護判定温度Tp以上になると、クラッチ温度を降下させるクラッチ保護制御として、電子制御クラッチ10を設定時間解放する制御が行われる。
【0075】
すなわち、電子制御クラッチ10に加わる入力エネルギEをクラッチ相対滑り(前後輪回転速度差△V)とクラッチ伝達トルクTEにより算出し、入力エネルギEの大きさによるクラッチ温度の変動予測に基づいて今回のクラッチ推定温度T1nが算出される。つまり、入力エネルギが大きく変動するような場合、従来技術のように、指令トルクが低くなる毎にクラッチ推定温度がリセットされることなく、図7の推定温度の算出に示すように、入力エネルギEの大きさによりクラッチ推定温度T1を上昇させたり下降させたりというように、実クラッチ温度の変化推移に追従する推定動作により精度の高いクラッチ温度推定が行われる。
【0076】
よって、温度センサを用いることなく低コストによるシステムとしながら、実クラッチ温度に近いクラッチ推定温度T1を得ることで、例えば、砂漠や雪道等を走破するときのように、クラッチ限界トルクでの駆動伝達を頻繁に行うような場合でも確実に電子制御クラッチ10の温度保証を行うことができる。
【0077】
次に、効果を説明する。
【0078】
(1) 電子制御クラッチ10に加わる入力エネルギEをクラッチ10の相対滑り(前後輪回転速度差△V)とクラッチ伝達トルクTEにより算出し、入力エネルギEの大きさによるクラッチ温度の変動予測に基づいてクラッチ推定温度T1を算出し、実クラッチ温度の変化推移に追従する推定動作により精度の高いクラッチ温度推定を行うようにしたため、温度センサを用いることなく低コストでありながら、実クラッチ温度に近いクラッチ温度情報を得ることができる。
【0079】
(2) 入力エネルギEが加算判断基準値E0以上であると推定温度を上げ、入力エネルギEが加算判断基準値E0未満であると推定温度を下げるというように、入力エネルギEの大小を比較することでクラッチ推定温度T1を算出するようにしたため、熱収支の細かな影響を無視することができる。
【0080】
(3) 砂路や深雪路等の走行時で、暫定クラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数Kup2により高めの推定温度となり、また、実温度勾配よりも緩い温度下降係数Kdn2とすることで推定温度の低下が小さく抑えられるため、限界使用域付近では、実際よりも厳しめにクラッチ温度が見積もられることになり、確実に電子制御クラッチ10を保護することができる。
【0081】
一方、通常走行時等で暫定クラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数Kup1により推定温度を高負荷温度域の推定温度に連続させており、また、実温度勾配よりも急な温度下降係数Kdn1とすることで推定温度が早期にリセット方向に低下させられるため、推定温度と実温度との誤差が広がることで発生する実用走行温度域でのクラッチ保護制御の誤作動を防止することができる。
【0082】
(4) クラッチ温度の推定を許容する上限車速値を設定車速V0としたとき、車速Vが設定車速V0以上であるときには、クラッチ推定温度の算出を中止し初期状態にリセットするようにしたため、連続温度推定による誤差の積み上げを防止でき、クラッチ推定温度の推定精度を向上させることができる。
【0083】
(5) 駆動系クラッチは、前輪へ伝達されるエンジン駆動トルクの一部を、後輪に配分する位置に設けられ、算出されたクラッチ推定温度T1を、クラッチ過熱を防止するクラッチ保護制御の入力情報として用いる制御型の電子制御クラッチ10としたため、温度センサを用いることなく低コストによるシステムとしながら、実クラッチ温度に近いクラッチ推定温度を得ることで、クラッチ限界トルクでの駆動伝達を頻繁に行うような場合でも確実に電子制御クラッチ10の温度保証を行うことができる。
【0084】
(第2実施例)
第2実施例は、各輪にそれぞれ設けられた車輪速センサ20,21,22,23のうち、左右前輪速センサ20,21からの左右前輪速VFL,VFRの平均値と、左後輪速センサ22,23からの左右後輪速VRL,VRRの平均値との差により、電子制御クラッチ10の前後輪回転速度差△V(クラッチ回転速度差)を算出する第1実施例に対し、算出された前後輪回転速度差△Vと車輪速センサ20,21,22,23の検出限界値に基づき設定された前後輪回転速度差下限値△VMINとを比較し、△V≦△VMINの場合には前後輪回転速度差△Vをゼロとする例である。
【0085】
尚、図1〜図3の構成は第1実施例と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0086】
次に、作用を説明する。
【0087】
[クラッチ推定温度の算出処理]
図8は第2実施例の4WDコントローラ16で実行されるクラッチ推定温度の算出処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
【0088】
ステップ40では、左前輪速センサ20からの左前輪速VFLと、右前輪速センサ21からの右前輪速VFRと、左後輪速センサ22からの左後輪速VRLと、右後輪速センサ23からの右後輪速VRRと、4WDコントローラ16から電磁ソレノイド24に対して出力される駆動電流Aが20msec毎に読み込まれる。
【0089】
ステップ71では、左右前輪速センサ20,21からの左右前輪速VFL,VFRの平均値と、左後輪速センサ22,23からの左右後輪速VRL,VRRの平均値との差により、電子制御クラッチ10の前後輪回転速度差△Vが算出される。
【0090】
ステップ72では、ステップ71で算出された前後輪回転速度差△Vが、車輪速センサ20,21,22,23の検出限界値に基づき設定された前後輪回転速度差下限値△VMINより大きいかどうかが判断される。△V>△VMINの場合には、ステップ41へそのまま進み、△V≦△VMINの場合には、ステップ73へ進む。なお、前後輪回転速度差下限値△VMINは、車輪速センサ20,21,22,23の検出限界値が、例えば、2.7km/hの場合、その1/2の値である1.35km/hに設定される。
【0091】
ステップ73では、前後輪回転速度差△Vが△V=0とされ、ステップ41へ進む。
【0092】
ステップ41では、単位入力エネルギEnが、クラッチ伝達トルクTEと、ステップ71算出された前後輪回転速度差△Vを掛け合わせることで算出される。ここで、ステップ73で前後輪回転速度差△V=0に設定された場合には、En=TE・0=0となる。ここで、クラッチ伝達トルクTEは駆動電流Aに基づいて算出される。
【0093】
なお、ステップ42〜ステップ46については、第1実施例の図4と同じであるので説明を省略する。
【0094】
さらに、ステップ74では、図4のステップ50〜ステップ61により、今回のクラッチ推定温度T1nが算出される。
【0095】
[入力エネルギ算出作用]
算出された前後輪回転速度差△Vが前後輪回転速度差下限値△VMINを超える場合は、図8のフローチャートにおいて、ステップ40→ステップ71→ステップ72→ステップ41へ進む流れとなり、ステップ71にて算出された前後輪回転速度差△Vをそのまま用いて単位入力エネルギEnが算出される。
【0096】
一方、算出された前後輪回転速度差△Vが前後輪回転速度差下限値△VMIN以下の場合には、図8のフローチャートにおいて、ステップ40→ステップ71→ステップ72→ステップ73→ステップ41へ進む流れとなり、ステップ73にて設定された△V=0として単位入力エネルギEn(=0)が算出される。
【0097】
すなわち、第2実施例では、磁束を出すセンサ本体と、車輪と共に回転するセンサロータにより構成され、センサ本体により磁束の変化を正弦波電圧に変え、正弦波電圧をパルス波形に変換してパルス数のカウントにより車輪速を検出する車輪速センサ20,21,22,23が用いられているが、この場合、車輪と共に回転するセンサロータの回転数が極低回転域である場合には、1回の検出周期を短くするほどパルスカウント数が少なくなり、この結果、車輪速検出値にバラツキが生じる。この車輪速センサ20,21,22,23で検出されるバラツキのない最小車輪速検出値が検出限界値であり、車輪速が検出限界値以下である場合は、車輪速ゼロであろうとも検出限界値が車輪速検出値とされる。
【0098】
このため、例えば、図9に示すように、右前輪の1輪だけで穴等にはまってロックされ、他の3輪は空転状態である場合、実際には前後輪回転速度差△Vがゼロであるにもかかわらず(下記の(1)式)、ロックされた右前輪の車輪速が検出限界値(2.7km/h)とされることで、前後輪回転速度差△Vが生じているとみなされる(下記の(2)式)。
Figure 0003582491
また、ある程度の凹凸のある路面を走行中に、駆動系の僅かなガタにより、電子制御クラッチ10は滑っていないのに前後輪回転速度差△Vが生じているとみなされることがある。
【0099】
このように電子制御クラッチ10は滑っていないのに前後輪回転速度差△Vが生じているとみなされる場合、入力エネルギEに基づいて推定されるクラッチ推定温度T1が上昇することで、実クラッチ温度に対して乖離が生じる。
【0100】
これに対し、算出された前後輪回転速度差△Vが前後輪回転速度差下限値△VMIN以下の場合には、前後輪回転速度差△Vをゼロとして入力エネルギEを算出するようにしているため、車輪速センサ20,21,22,23の検出限界によるクラッチ推定温度T1と実クラッチ温度との乖離が解消され、クラッチ温度の推定精度を向上させることができる。
【0101】
次に、効果を説明する。
【0102】
第2実施例のクラッチ温度推定装置にあっては、第1実施例装置の上記(1)〜(5)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0103】
(6) 単位入力エネルギEnの算出に際し、算出された前後輪回転速度差△Vが前後輪回転速度差下限値△VMIN以下の場合には、前後輪回転速度差△Vをゼロとして入力エネルギEを算出するようにしているため、車輪速センサ20,21,22,23の検出限界により、電子制御クラッチ10は滑っていないのに電子制御クラッチ10が滑っているとみなされることがなくなり、クラッチ推定温度T1と実クラッチ温度との乖離が解消され、クラッチ温度の推定精度を向上させることができる。
【0104】
(7) 前後輪回転速度差下限値△VMINが、車輪速センサ20,21,22,23の検出限界値(2.7km/h)の1/2の値(1.35km/h)に設定されているため、車輪速検出値の平均値により前後輪回転速度差△Vを算出する場合、前後輪回転速度差下限値△VMINが車輪速センサ20,21,22,23の検出限界値に相当する値となり、車輪速センサ20,21,22,23の検出限界によるクラッチ推定温度T1と実クラッチ温度との乖離が確実に解消される。
【0105】
(他の実施例)
第1実施例及び第2実施例では、駆動系クラッチとして、前輪駆動ベースによる前後輪トルク配分制御装置に適用された電子制御クラッチ10の例を示したが、後輪駆動ベースによる前後輪トルク配分制御装置に適用された電子制御クラッチや、前輪駆動系と後輪駆動系にそれぞれ設けられる電子制御クラッチにも適用することができる。さらに、左右の駆動輪間に設けられた電子制御差動制限クラッチのクラッチ温度推定装置としても適用することができる。
【0106】
さらに、第1実施例及び第2実施例では、電子制御クラッチとして、電磁ソレノイドにより作動するコントロールクラッチと、カム機構を介して増幅したトルクにより締結されるメインクラッチを用いたクラッチの例を示したが、特開平04−103433号公報に記載されているように、制御油圧により締結される多板クラッチを用いたものにも適用することができる。
【0107】
第1実施例では、車速が設定車速以上であるときにクラッチ推定温度の算出を中止し、初期状態にリセットする例を示したが、時間が設定時間を経過したらクラッチ推定温度の算出を中止し、初期状態にリセットするというように、タイマー管理によりクラッチ温度推定を中止するようにしても良い。
【0108】
第1実施例では、加算判断基準値を固定値で与える例を示したが、放熱量が多くなる低温雰囲気では加算判断基準値を高くするというように、外気温センサ等からの外気温情報に基づいて加算判断基準値を可変値により与えるようにしても良い。さらに、初期温度も同様に、外気温情報により可変値により与えるようにしても良い。
【0109】
第2実施例では、前後輪回転速度差下限値△VMINを設定する例を示したが、各輪にそれぞれ設けられている車輪速センサからの車輪速検出値が、車輪速センサの検出限界値以下の場合には車輪速検出値をゼロとしても、ほぼ同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例におけるクラッチ温度推定装置が適用された4輪駆動車の前後輪駆動トルク配分制御装置を示す全体システム図である。
【図2】4輪駆動車の駆動系に設けられた電子制御クラッチを示す概略図である。
【図3】4輪駆動車の駆動系に設けられた電子制御クラッチのカム機構を示す斜視図である。
【図4】第1実施例の4WDコントローラで行われるクラッチ推定温度算出処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施例の4WDコントローラで行われるクラッチ保護制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】温度上昇量や温度下降量の算出で用いられる温度勾配係数によるクラッチ推定温度と実クラッチ温度との比較特性を示す図である。
【図7】第1実施例でのクラッチ温度推定装置での入力エネルギ算出、温度加減判断、温度変動量の算出、推定温度の算出、クラッチ保護中フラグを示すタイムチャートである。
【図8】第2実施例の4WDコントローラで行われるクラッチ推定温度算出処理を示すフローチャートである。
【図9】第2実施例でのクラッチ滑りがあるとみなされる1輪ロックで3輪空転状態の4輪駆動車を示す図である。
【図10】従来の保護制御での制御開始条件を示すタイムチャートである。
【図11】従来の保護制御でのクラッチ温度推定処理を採用した場合の実温度と推定温度を示す比較特性図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 トランスミッション
3 フロントディファレンシャル
4,5 フロント側ドライブシャフト
6,7 左右の前輪
8 トランスファー
9 プロペラシャフト
10 電子制御クラッチ
11 リアディファレンシャル
12,13 リア側ドライブシャフト
14,15 左右の後輪
16 4WDコントローラ
17 モード切替スイッチ
18 エンジン回転数センサ
19 アクセル開度センサ
20 左前輪速センサ
21 右前輪速センサ
22 左後輪速センサ
23 右後輪速センサ
24 電磁ソレノイド
25 インジケータ
26 警告灯&警報
27 クラッチ入力軸
28 クラッチ出力軸
29 クラッチハウジング
30 アーマチュア
31 コントロールクラッチ
32 コントロールカム
33 メインカム
34 ボール
35 メインクラッチ
36 カム溝

Claims (9)

  1. 駆動系に設けられ、滑り締結を含む締結制御が行われる駆動系クラッチの温度を推定するクラッチ温度推定装置において、
    前記駆動系クラッチの入出力軸間の相対回転速度差を検出するクラッチ回転速度差検出手段と、
    前記駆動系クラッチを介して伝達される駆動トルクを推定するクラッチ伝達トルク推定手段と、
    前記クラッチ回転速度差とクラッチ伝達トルクにより前記駆動系クラッチに加わる入力エネルギを算出する入力エネルギ算出手段と、
    算出された入力エネルギの大きさに応じ、時間の経過と共に上昇したり下降したりするクラッチ温度の変動を予測し、この温度変動予測に基づいてクラッチ推定温度を算出するクラッチ推定温度算出手段とを備え、
    入力エネルギの判断しきい値を加算判断基準値として設定し、前記入力エネルギ算出手段により算出された入力エネルギが設定された加算判断基準値以上かどうかを判断するクラッチ温度加減判断手段を設け、
    前記クラッチ推定温度算出手段を、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度上昇量を加算し、また、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度下降量を減算することでクラッチ推定温度を算出する手段とし
    前記温度上昇量は、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合に、加算判断基準値に対する入力エネルギの増加量に比例して決定され、前記温度下降量は、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合に、入力エネルギの減少量に関係なく決定されることを特徴とするクラッチ温度推定装置。
  2. 駆動系に設けられ、滑り締結を含む締結制御が行われる駆動系クラッチの温度を推定するクラッチ温度推定装置において、
    前記駆動系クラッチの入出力軸間の相対回転速度差を検出するクラッチ回転速度差検出手段と、
    前記駆動系クラッチを介して伝達される駆動トルクを推定するクラッチ伝達トルク推定手段と、
    前記クラッチ回転速度差とクラッチ伝達トルクにより前記駆動系クラッチに加わる入力エネルギを算出する入力エネルギ算出手段と、
    算出された入力エネルギの大きさに応じ、時間の経過と共に上昇したり下降したりするクラッチ温度の変動を予測し、この温度変動予測に基づいてクラッチ推定温度を算出するクラッチ推定温度算出手段とを備え、
    入力エネルギの判断しきい値を加算判断基準値として設定し、前記入力エネルギ算出手段により算出された入力エネルギが設定された加算判断基準値以上かどうかを判断するクラッチ温度加減判断手段を設け、
    その時のクラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数と実温度勾配よりも急な温度下降係数とし、その時のクラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数と実温度勾配よりも緩い温度下降係数とする温度勾配係数設定手段を設け、
    前記クラッチ推定温度算出手段を、その時のクラッチ推定温度に加算する温度上昇量を、前記温度上昇係数に基づいて算出する温度上昇量算出部と、その時のクラッチ推定温度に減算する温度下降量を、前記温度下降係数に基づいて算出する温度下降量算出部を有し、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度上昇量を加算し、また、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度下降量を減算することでクラッチ推定温度を算出する手段としたことを特徴とするクラッチ温度推定装置。
  3. 駆動系に設けられ、滑り締結を含む締結制御が行われる駆動系クラッチの温度を推定するクラッチ温度推定装置において、
    前記駆動系クラッチの入出力軸間の相対回転速度差を検出するクラッチ回転速度差検出手段と、
    前記駆動系クラッチを介して伝達される駆動トルクを推定するクラッチ伝達トルク推定手段と、
    前記クラッチ回転速度差とクラッチ伝達トルクにより前記駆動系クラッチに加わる入力エネルギを算出する入力エネルギ算出手段と、
    算出された入力エネルギの大きさに応じ、時間の経過と共に上昇したり下降したりするクラッチ温度の変動を予測し、この温度変動予測に基づいてクラッチ推定温度を算出するクラッチ推定温度算出手段とを備え、
    入力エネルギの判断しきい値を加算判断基準値として設定し、前記入力エネルギ算出手段により算出された入力エネルギが設定された加算判断基準値以上かどうかを判断するクラッチ温度加減判断手段を設け、
    前記クラッチ推定温度算出手段を、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度上昇量を加算し、また、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合には、その時のクラッチ推定温度に温度下降量を減算することでクラッチ推定温度を算出する手段とし
    車速を検出する車速検出手段を設け、
    クラッチ温度の推定を許容する上限車速値を設定車速としたとき、検出される車速が設定車速以上であるときには、前記クラッチ推定温度算出手段によるクラッチ推定温度の算出を中止して初期状態にリセットするクラッチ温度推定制御中止手段を設けたことを特徴とするクラッチ温度推定装置。
  4. 請求項2又は請求項3に記載のクラッチ温度推定装置において、
    前記温度上昇量は、入力エネルギが加算判断基準値以上であると判断された場合に、加算判断基準値に対する入力エネルギの増加量に比例して決定され、前記温度下降量は、入力エネルギが加算判断基準値未満であると判断された場合に、入力エネルギの減少量に関係なく決定されることを特徴とするクラッチ温度推定装置。
  5. 請求項1又は請求項3に記載のクラッチ温度推定装置において、
    その時のクラッチ推定温度が実用走行温度域であるときには、実温度勾配よりも緩い温度上昇係数と実温度勾配よりも急な温度下降係数とし、その時のクラッチ推定温度が高負荷温度域であるときには、実温度勾配よりも急な温度上昇係数と実温度勾配よりも緩い温度下降係数とする温度勾配係数設定手段を設け、
    前記クラッチ推定温度算出手段を、その時のクラッチ推定温度に加算する温度上昇量を、前記温度上昇係数に基づいて算出する温度上昇量算出部と、その時のクラッチ推定温度に減算する温度下降量を、前記温度下降係数に基づいて算出する温度下降量算出部を有する手段としたことを特徴とするクラッチ温度推定装置。
  6. 請求項1又は請求項2に記載のクラッチ温度推定装置において、
    車速を検出する車速検出手段を設け、
    クラッチ温度の推定を許容する上限車速値を設定車速としたとき、検出される車速が設定車速以上であるときには、前記クラッチ推定温度算出手段によるクラッチ推定温度の算出を中止して初期状態にリセットするクラッチ温度推定制御中止手段を設けたことを特徴とするクラッチ温度推定装置。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載のクラッチ温度推定装置において、
    前記加算判断基準値は、クラッチ温度がほぼ一定の温度となる入力エネルギにより設定されることを特徴とするクラッチ温度推定装置。
  8. 請求項1乃至7の何れか1項に記載のクラッチ温度推定装置において、
    前記駆動系クラッチは、前輪または後輪へ伝達されるエンジン駆動トルクの一部を、後輪または前輪に配分する位置に設けられ、算出されたクラッチ推定温度を、クラッチ過熱を防止するクラッチ保護制御の入力情報として用いる制御型の前後輪トルク配分クラッチであることを特徴とするクラッチ温度推定装置。
  9. 請求項8に記載のクラッチ温度推定装置において、
    前記クラッチ回転速度差検出手段を、各輪にそれぞれ車輪速センサを設け、左右前輪速センサからの左右前輪速検出値の平均値と、左右後輪速センサからの左右後輪速検出値の平均値との差により、駆動系クラッチの入出力軸間のクラッチ回転速度差を算出する手段とし、
    前記入力エネルギ算出手段を、算出されたクラッチ回転速度差と車輪速センサの検出限界値に基づき設定されたクラッチ回転速度差下限値とを比較し、算出されたクラッチ回転速度差がクラッチ回転速度差下限値を超える場合は、算出されたクラッチ回転速度差をそのまま用いて入力エネルギを算出し、算出されたクラッチ回転速度差がクラッチ回転速度差下限値以下の場合には、クラッチ回転速度差をゼロとして入力エネルギを算出する手段としたことを特徴とするクラッチ温度推定装置。
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