JP3582234B2 - IgA腎症特異的フィブロネクチン断片、その検出方法およびキット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、IgA腎症患者に優位に観察されるフィブロネクチン断片に関し、さらにそのフィブロネクチン断片の、結合アッセイ法を用いた検出方法および検出用キットに関する。さらにIgA腎症の診断方法および診断用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
IgA腎症とは慢性糸球体腎炎のうち、糸球体メサンギウム領域、ときに糸球体毛細血管壁にかけてのIgAを主体とする沈着物を認めるものをいう。またIgA腎症はメサンギウム増殖性糸球体腎炎のひとつであり、メサンギウムの病変が主体となる。初期ないし軽症ではメサンギウム細胞および基質の軽度の増殖が見られる。病状が進行してくるとこれらの変化が増強し、それと同時に分節状の小半月体形成、係蹄癒着が生じ、メサンギウム基質の増加が進み、硬化性変化が増強される。この糸球体病変の程度に応じて、尿細管萎縮、間質の細胞浸潤と繊維化、細動脈の硬化が進む。
【0003】
IgA腎症は慢性糸球体腎炎のうち最大頻度を占めており、長期的には末期腎不全へ至る症例が少なくないことから、早期に的確な診断と予後判定を行い、個々の症例に適した治療を実施することが望まれるが、症状は大部分が無症候であるため、早期に的確な判断を行うことが困難である。
【0004】
従来、IgA腎症の診断方法は光顕的、免疫蛍光抗体法または電顕的検索といった腎生検による糸球体の観察が唯一の方法であった。しかも、この腎生検でIgA腎症が検出できるのは病状がかなり進行してからである。
近年報告された方法にセデルホルムらの“IgA腎臓病の診断のための方法およびキット”(特表平2−503714)がある。セデルホルムらは、IgA腎症において血清IgAが特異的にコラーゲンと親和性を持ち、その結合にフィブロネクチンが介していること、IgA腎症患者らにIgA−フィブロネクチン複合体が存在することを見いだし、診断方法およびキットを提供したが、検出率および、測定値の再現性に問題が残るものであり、依然としてIgA腎症を早期に的確に診断しうる診断方法が望まれていた。
【0005】
フィブロネクチンは線維芽細胞や内皮細胞の表面、生体の基底膜面、血液中等に存在する粘着性の糖タンパク質で、サブユニットαおよびβが2個のジスルフィド結合を介して結合している分子量約40万の高分子物質である。コラーゲン、ヘパリン、フィブリンに親和性を示し、細胞間の接着、損傷組織の修復、更に免疫応答の環境作りに関与する性質を有する等、数多くの生物学的機能を有している。また近年フィブロネクチン自体の研究が急速に進み、種々のプロテアーゼによるフィブロネクチン断片化の解析が行われている。フィブロネクチンは断片化されることによりマトリックス形成に関わる多くの生物活性を示すことが知られているが、フィブロネクチンの断片化が生体内でどの様な機能に対応しているのかは殆ど明確にされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
的確な予後判定および個々の症例に適した治療を実施するために、IgA腎症を早期に、的確に診断できることが望まれるが、本発明の目的はIgA腎症の患者に優位に観察されるフィブロネクチン断片の提供、およびそれを検出する方法ならびに検出用キット、さらにはIgA腎症患者に優位に観察されるフィブロネクチン断片を検出することによるIgA腎症の診断方法およびIgA腎症の診断用キットを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本発明者らが鋭意研究を行なった結果、IgA腎症の患者に優位に観察されるフィブロネクチン断片を見い出し、本発明を完成するに至った。以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は下記の通りである。
(1) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片。
(2) IgA腎症患者に優位に観察される上記(1)記載のフィブロネクチン断片。
(3) 分子量が25KDa〜40KDaである上記(1)記載のフィブロネクチン断片。
(4) フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以内の部分に存在する上記(1)記載のフィブロネクチン断片。
(5) フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降の部分を認識する物質および、FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を用いる結合アッセイ法により試料中のFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を検出する方法。
(6) 次の工程からなる上記(5)記載の検出方法。
a)フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降の部分を認識する物質を試料と接触させて、該試料中に存在するフィブロネクチンを該物質に結合させ、試料中のフィブロネクチンを除去した後、
b)FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を試料と接触させて、該試料中に存在するフィブロネクチン断片を該物質に結合させ、
c)そして、こうして生じたフィブロネクチン断片とFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質との複合体を検出することにより試料中のフィブロネクチン断片の存在を測定する。
(7) a)試料をヘパリンアフィニティ処理により前処理し、
b)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付した後、FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を用いてウエスタンブロットを行なうことにより、
試料中のFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を検出する方法。
(8) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を用いる、FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を検出する方法。
(9) 次の工程よりなる上記(8)記載の検出方法。
a)FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を試料と接触させて、該試料中に存在するフィブロネクチン断片を該物質に結合させ、
b)そして、こうして生じた、フィブロネクチン断片とFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質との複合体を検出することにより試料中のフィブロネクチン断片の存在を測定する。
(10) a)フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降の部分を認識する物質を含む第1成分、および
b)FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を含む第2成分、
から構成されるFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片の検出用キット。
(11) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質に結合したフィブロネクチン断片の測定を可能にする第3成分を含む上記(10)記載のフィブロネクチン断片の検出用キット。
(12) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を含む成分からなる検出用キット。
(13) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質に結合したフィブロネクチン断片の測定を可能にする第2の成分を含む上記(12)記載の検出用キット。(14) フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降の部分を認識する物質と、FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を用いた結合アッセイ法により、被検者から採取した体液試料中のFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を検出することを特徴とするIgA腎症の診断方法。
(15) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を用いた結合アッセイ法により被検者から採取した体液試料中のFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を検出することを特徴とするIgA腎症の診断方法。
(16) a)フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降の部分を認識する物質を含む第1成分、および
b)FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を含む第2成分、
から構成されるIgA腎症診断用キット。
(17) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質に結合したフィブロネクチン断片の測定を可能にする第3成分を含む上記(16)記載のIgA腎症診断用キット。
(18) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を含む成分から構成されるIgA腎症診断用キット。
(19) FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質に結合したフィブロネクチン断片の測定を可能にする第2の成分を含む上記(18)記載のIgA腎症診断用キット。
【0008】
本発明者らは、FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を得ることに成功し、当該断片がIgA腎症患者に優位に観察されるという新知見を得た。さらにこのフィブロネクチン断片がIgAと結合し、メサンギウムにおけるIgAの沈着を来しIgA腎症が発症することが予想される。
【0009】
本発明の断片はFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するものであり、さらに次の特徴を有する。
a)IgA腎症患者に優位に観察される。
b)分子量が25KDa〜40KDaである。
c)フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以内の部分に存在する。
【0010】
本発明のフィブロネクチン断片はFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合する断片であるが、FNH3−8抗体はフィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降に位置するカルボキシル末端側ヘパリン結合ドメインの部分を、FN1−1抗体はフィブロネクチンのカルボキシル末端のジスルフィド結合の部分を、FN8−12抗体はフィブロネクチンのカルボキシル末端側から40KDa以内に位置するフィブリン結合ドメインを、それぞれ特異的に認識することが知られている。これらの抗体は、例えば、フィブロネクチンをサーモリシンによって限定分解した時に得られる、各部分を含む断片を抗原としてマウスに免疫し、常法に従ってモノクローナル抗体を作成することにより得られる。これらの抗体はそれぞれ宝酒造株式会社より入手できる。
【0011】
本発明のフィブロネクチン断片は、例えば次の様にして得ることができる。即ち、原料を適当な精製手段に付すことによって調製することができる。かかる精製手段としては、例えば、分別沈澱、限外濾過、結晶化等の操作や、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよび免疫アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法が例示される。さらに、これらの方法を組み合わせることにより、より純粋に得ることができる。より具体的には、例えば次の方法によって調製することができる。 FNH3−8抗体を吸着体として用いたカラムにヘパリン処理した血清を流し、非吸着物質をFN1−1抗体またはFN8−12抗体を吸着体としたカラムにかけて、このカラムに吸着した物質を溶出することにより得られる。ヘパリン処理には、例えばヘパリンカラムに吸着させる方法が挙げられる。
微量のフィブロネクチン断片を得るためには、例えば原料をヘパリンアフィニティ処理した後、変性処理等の操作を行ない、常法通りSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、分離することによって行なわれる。当該分離方法には例えば、得られたポリアクリルアミドゲルを細切し、物理的な破砕により抽出する方法、電気的手段により抽出する方法が挙げられる。抽出に用いられる緩衝液としてはリン酸緩衝液、トリス塩緩衝液等が用いられる。これらの緩衝液には界面活性剤を含んだものも使用できる。
原料としては当該フィブロネクチン断片を含む溶液、例えばIgA腎症患者の血液、血清、血漿又は唾液等が使用できる。
変性処理には2−メルカプトエタノールやDTT等の還元剤による処理が挙げられる。
【0012】
本発明におけるフィブロネクチン断片を検出する方法は、前記のようにして行なわれる。
また、当該フィブロネクチン断片の検出方法に用いる物質を前記のようにキットとしておくことで試料中のフィブロネクチン断片を簡便に測定することができる。
【0013】
本発明の検出方法における試料としては、フィブロネクチン断片の存在の可能性のあるものであれば特に制限はなく、例えばヒトの血液、血清、血漿、唾液等が使用される。
【0014】
本発明の検出方法および検出用キットで用いられるフィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降の部分を認識する物質としては、例えばFNH3−8抗体が挙げられる。FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質としては、例えばFN1−1抗体、FN8−12抗体等が挙げられる。
これらの抗体は完全な形の抗体のままで用い得ることは勿論のこと、その本質的結合能が維持される抗体断片、例えば、Fab、Fab’、(Fab’)2等として用いることもできる。さらに、適宜抗体希釈用の緩衝液に希釈されていてもよい。
【0015】
本発明においてFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を単独で用いる場合、例えば、当該フィブロネクチン断片に対する特異抗体の使用が好適である。
【0016】
また、本発明のフィブロネクチン断片の検出方法および検出用キットにおいて用いられる第1の結合物質であるフィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降の部分を認識する物質およびFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質は不溶性担体に結合しておくことが好ましい。用いられる不溶性担体としては例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、フッ素樹脂、ガラス、金属およびこれらの組み合わせ等を例示することができる。また不溶性担体の形状としては、例えばトレー状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、試験管等の種々の形状で本発明を実施することができる。多数の試料を同時に測定できる点では、96穴マイクロタイタープレート等が好ましい。不溶性担体への結合は公知の方法が使用できる。
キット化する場合、不溶性担体に結合させた状態で構成されることにより簡便に測定を行うことができる。
【0017】
本発明の第2の結合物質であるFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を、直接酵素や放射性同位元素或いはFITC等の蛍光物質で標識してもよい。或いはかかる第2の結合物質と、FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片との複合体を検出するために第2の結合物質とは異なる認識部位を持つFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を標識したものを第3の結合物質として用いてもよい。
【0018】
標識にはビオチン等のマーカー化合物、酵素、蛍光色素、放射性同位元素等が用いられる。
【0019】
酵素を用いる方法では、酵素としては、β−D−ガラクトシダーゼ(β−Gal)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)等があり、それぞれの酵素に対応する比色基質、或いは蛍光基質を加え、比色計または蛍光光度計を用いて生成物を定量する。上記酵素の代表的な基質としては、β−Galの基質としては、o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド(比色基質)、4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシド(蛍光基質)等、HRPの基質としては、o−フェニレンジアミン(比色基質)等、APの基質としては、p−ニトロフェニルリン酸(比色基質)等を挙げることができる。
放射性同位元素を用いる方法では、125Iで標識しγ−カウンター等を用いて放射活性を測定する方法が挙げられる。
また、ビオチンで標識した場合、更にアビジン或いはストレプトアビジンを酵素等で標識したものと結合させて検出することも可能である。
また、蛍光物質を用いる方法では、蛍光物質として、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)等を例示することができる。
【0020】
本発明のフィブロネクチン断片はウエスタンブロットによっても検出できる。例えば前記のヘパリンアフィニティ処理により前処理した試料をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付した後、タンパク質を膜に転写し、FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を認識する物質を用いて常法に従いウエスタンブロットを行なう。ここで用いる膜はニトロセルロース紙、ナイロン膜、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)膜等が一般的である。転写後、膜をブロッキング緩衝液で処理し非特異的な結合を防止する。ブロッキング緩衝液としては、BSA、スキムミルク等が含まれたものが使用できる。
該フィブロネクチン断片と前記物質の複合体の検出系には、前記の系が使用できる。当該フィブロネクチン断片の分子量はウエスタンブロットの結果、分子量25KDa〜40KDaであることが確認される。
FNH3−8抗体、FN1−1抗体、およびFN8−12抗体との結合性およびその分子量から当該フィブロネクチン断片はフィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以内に存在することが示される。
【0021】
キット化する場合これらの検出系に用いる試薬、洗浄液、ブロッキング用の緩衝液および希釈用の緩衝液等を付属品とすることが好適である。
【0022】
IgA腎症患者に優位に観察されるFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を前記の様に検出することにより、IgA腎症を早期に診断することが可能となる。さらに該検出用キットはIgA腎症診断用キットとしても使用できる。
【0023】
【実施例】
以下に本発明の実施例をもって説明するが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
実施例1 (ウエスタンブロットにより検出されるフィブロネクチン断片)
1)血清のカラム処理
原発性IgA腎症の患者の血清、対照として健康な血液供与者の血清を使用した。血清を0.45μmのフィルターに通し、あらかじめ0.15M塩化ナトリウムを含む10mMトリス緩衝液(pH7.4)にて平衡化しておいたヘパリンカラム(HiTrap ヘパリン、ファルマシア社製)に添加する。非吸着物質を除去した後、0.5M塩化ナトリウムを含む10mMトリス緩衝液(pH7.4)にてカラム吸着物質を溶出する。
2)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による血清中タンパク質の分離ヘパリンカラムで処理した原発性IgA腎症の患者の血清および健康な血液供与者の血清を試料とした。各試料に2−メルカプトエタノールを0.2(V/V)%になるように添加し5分間煮沸することにより試料を還元した。各試料について7.5%ゲルを用いてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行なった。
3)免疫ブロットによるフィブロネクチンおよびフィブロネクチン断片の検出タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて分離し、0.2A、30分間かけて電気泳動的にニトロセルロース膜(バイオ・ラッド社製)に転写した。2%スキムミルクを含むブロッキング緩衝液を用いて25℃で1時間インキュベートすることにより非特異的な結合を防止した。続いてマウス抗ヒトフィブロネクチン抗体であるFNH3−8抗体、FN1−1抗体、FN8−12抗体(全て宝酒造社製)を1次抗体として用い、各々25℃で1時間インキュベートし反応させた。さらに2次抗体としてアルカリホスファターゼで標識された抗マウスIgG抗体(シグマ社製)を用い、25℃で1時間インキュベートし反応させた。反応後、発色基質であるp−ニトロフェニルリン酸を用い酵素反応を行い、発色させ、試料中のフィブロネクチンおよびフィブロネクチン断片を検出した。
FNH3−8抗体、FN1−1抗体およびFN8−12抗体を各々1次抗体として用いた場合のウエスタンブロット像を図1に示す。
分子量25KDa〜40KDaの位置にIgA腎症の患者の血清に優位に、FNH3−8抗体で認識されず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体で認識されるフィブロネクチン断片が存在している。
さらに、FNH3−8抗体、FN1−1抗体、およびFN8−12抗体との結合性およびその分子量から当該フィブロネクチン断片はフィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以内に存在することが示される。
【0024】
実施例2 (ELISA法によるフィブロネクチン断片の検出)
0.02%アジ化ナトリウムを含む0.05M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中で、FN1−1抗体(宝酒造社製)をポリスチレン製の96穴のマイクロタイタープレート(ヌンク社製)に非変性条件下で一夜被覆した。これに続いて非特異的な結合を防止するために0.2%の血清アルブミンを含む同じ緩衝液で25℃で1時間インキュベートし、FN1−1抗体固定化マイクロタイタープレートを作成した。同様にして別のポリスチレン製の96穴のマイクロタイタープレートにFNH3−8抗体を固定化したものを作成した。
検体には原発性IgA腎症の患者の血清(N=40)、対照として健康な血液供与者の血清(N=32)を使用した。
各血清をリン酸緩衝液(PBS)で25倍に希釈し、FNH3−8抗体が被覆されたマイクロタイタープレート中で25℃、1時間反応させた。反応後の液をFN1−1抗体が被覆されたマイクロタイタープレート中に移し25℃で1時間反応させた。次に、あらかじめビオチンを結合させたFN8−12抗体を反応液の入っているマイクロタイタープレート中に添加し、25℃、1時間反応させることでビオチン標識されたFN8−12抗体はマイクロタイタープレート上でFN1−1抗体に結合したフィブロネクチン断片に結合する。アルカリホスファターゼで標識されたストレプトアビジン(Leinco Technologies, Inc.製)を添加し25℃で1時間反応させた。発色基質としてp−ニトロフェニルリン酸を用い、反応後0分の吸光度および60分間、25℃で反応した後の吸光度を各々測定し、その差を測定することによりフィブロネクチン断片を検出、およびその量を測定した。
吸光度測定はマイクロプレートリーダ MTP−120(コロナ電気社製)を用いて405nmで測定した。
抗体の被覆工程より以降の各工程の間、0.05% Tween20を含むPBSを用いてマイクロタイタープレートを洗浄した。
各工程を模式的に示した図を図2に示す。
各検体について2試料ずつ測定し、その平均値を計算し、試料中に含まれるFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片の量に対する分布図を図3に示した。
IgA腎症の患者の血清に優位にフィブロネクチン断片が検出された。
【0025】
実施例3 (IgA腎症特異的なフィブロネクチン断片を検出することによるIgA腎症診断用キット)
IgA腎症診断用キットには下記の成分が含まれる。
1)抗体固定化96穴マイクロタイタープレート 2種類
a)FNH3−8抗体(宝酒造社製)が固定化された96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製)
b)FN1−1抗体(宝酒造社製)が固定化された96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製)
両プレートともすでに2%スキムミルクを含有するブロッキング緩衝液で処理されている。
2)アルカリホスファターゼ標識抗体
FN8−12抗体(宝酒造社製)をアルカリホスファターゼで標識したもの。
3)発色試薬
アルカリホスファターゼの基質であるp−ニトロフェニルリン酸を含む。
4)反応停止液
水酸化ナトリウムを含む。
【0026】
【発明の効果】
本発明のFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片は、IgA腎症の発症機構の探索用として、また、当該断片にてその抗体を容易に調製することができ、当該抗体を使用することによって、より簡便なIgA腎症の診断が可能となる。さらに、本発明のフィブロネクチン断片の検出方法、検出用キット、さらに本発明のフィブロネクチン断片を検出することにより可能であるIgA腎症の診断方法、診断用キットを用いることによりIgA腎症の早期での的確な診断が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】IgA腎症の患者の血清および対照としての健康な血液供与者の血清の、FNH3−8抗体、FN1−1抗体およびFN8−12抗体を各々1次抗体として用いた場合の電気泳動写真像(ウエスタンブロット像)である。図中の矢印はIgA腎症の患者に優位に観察されるフィブロネクチン断片の位置を示している。
【図2】ELISA法によるフィブロネクチン断片の検出の方法を模式的に示した模式図である。
【図3】FNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片の量に対する、IgA腎症の患者および対照としての健康な血液供与者の分布図である。
Claims (5)
- フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降に位置するカルボキシル末端側ヘパリン結合ドメインの部分を認識するFNH3−8抗体、フィブロネクチンのカルボキシル末端のジスルフィド結合の部分を認識するFN1−1抗体およびフィブロネクチンのカルボキシル末端側から40KDa以内に位置するフィブリン結合ドメインを認識するFN8−12抗体を用いる結合アッセイ法により試料中のFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を検出する方法。
- 次の工程からなる請求項1記載の検出方法。
a)FNH3−8抗体を試料と接触させて、該試料中に存在するフィブロネクチンを該抗体に結合させ、試料中のフィブロネクチンを除去した後、
b)FN1−1抗体およびFN8−12抗体を試料と接触させて、該試料中に存在するフィブロネクチン断片を該FN1−1抗体およびFN8−12抗体に結合させ、
c)そして、こうして生じた、FN1−1抗体およびFN8−12抗体との複合体を検出することにより試料中のフィブロネクチン断片の存在を測定する。 - a)試料をヘパリンアフィニティ処理により前処理し、
b)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付した後、フィブロネクチンのカルボキシル末端のジスルフィド結合の部分を認識するFN1−1抗体およびフィブロネクチンのカルボキシル末端側から40KDa以内に位置するフィブリン結合ドメインを認識するFN8−12抗体を用いてウエスタンブロットを行なうことにより、
試料中の、フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降に位置するカルボキシル末端側ヘパリン結合ドメインの部分を認識するFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片を検出する方法。 - a)フィブロネクチンのカルボキシル末端から40KDa以降に位置するカルボキシル末端側ヘパリン結合ドメインの部分を認識するFNH3−8抗体を含む第1成分、および
b)フィブロネクチンのカルボキシル末端のジスルフィド結合の部分を認識するFN1−1抗体またはフィブロネクチンのカルボキシル末端側から40KDa以内に位置するフィブリン結合ドメインを認識するFN8−12抗体を含む第2成分、
から構成されるFNH3−8抗体と結合せず、FN1−1抗体およびFN8−12抗体と結合するフィブロネクチン断片の検出用キット。 - FN1−1抗体またはFN8−12抗体に結合したフィブロネクチン断片の測定を可能にする上記抗体のうち残る一方の抗体である第3成分を含む請求項4記載のフィブロネクチン断片の検出用キット。
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