JP3581488B2 - 圧電昇圧モジュール - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置のバックライト用冷陰極管の電源等に使用するのに好適な、圧電トランス素子を用いた圧電昇圧モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
持ち運び可能なノート型パーソナルコンピュータ等に用いられている液晶表示装置用のバックライトには通常冷陰極管が発光源として用いられている。この冷陰極管を点灯させるためには1kV以上の高電圧が必要であり、発光を維持するためには数百Vの電圧が必要である。
【0003】
上記のようなノート型パーソナルコンピュータ等の製品ではその性質上、バックライト点灯用の昇圧モジュールに対しても小型化、省電力化の要請が高く、このような要請に答えるためにローゼン型の圧電トランス素子を使用した昇圧モジュール(以下「圧電昇圧モジュール」という)が使われている。圧電昇圧モジュールは同出力の巻線トランスを用いた昇圧モジュールに比べてモジュール全体の厚みを薄くできるというメリットがある。
【0004】
従来の圧電昇圧モジュールは、厚さ約0.8 mm〜 1.5 mm程度のガラス繊維強化エポキシ樹脂基板等の上に、外部入出力用の端子部、発振回路や制御回路を組み込んだIC、調整用の抵抗や可変コンデンサ等を配置し、さらに圧電トランス素子を厚み方向に重ねて配置したものであった。圧電トランス素子は基板表面から離れた状態で支持されなければならないため、スプリング等の部材を用いて支持するか、圧電トランスを収納したケースが面実装されていた。
【0005】
このような圧電昇圧モジュールにおいて全体の厚みを小さくするため、基板に圧電トランスより大きい収容孔を設けてこれに圧電トランスを収容し、収容した圧電トランスを両端部を基板に固定した一以上の支持部材により支持して圧電トランスの厚みの範囲内に基板の厚みが位置するようにした圧電トランスモジュールの構造が提案されている(特開平7−202288号)。このような構造によれば、圧電昇圧モジュールの厚みを薄くできることに加えて支持部材の個数が減り、部品点数を削減することができる。
【0006】
しかしながら上記のような構造では、基板平面内部に圧電トランスより大きい収納孔を開ける必要があることから、基板の大きさを一定以上に小さくすることが制約される。即ち、基板に圧電トランス素子より大きい収容孔を設けるということは、少なくとも圧電トランス素子の寸法+収容孔のクリアランス+支持具を固定し圧電トランス素子を支持するために必要な強度を得るために必要な基板の幅だけの寸法を長さ及び幅において有する基板が必要となる。このため本来の圧電昇圧回路自体を設けるために必要な基板面積に加えて圧電トランス素子を支持するための基板面積が必要となり、モジュールの小型化という観点からは好ましくない。また圧電トランス素子を配置する位置も基板面内部に限定され、圧電昇圧モジュールの設計の自由度が制約されてしまう。
【0007】
上記従来技術において、圧電トランス素子と圧電昇圧回路基板を薄型化するために両者を厚み方向に重ねるのではなく幅(あるいは長さ)方向に並列に配置する際に、基板面内部にトランス収容孔を設けたのは、以下のような理由によるものと考えられる。即ち、圧電トランス素子自体はその機能上振動の節(ノード点)でしか支持できないが、上記のような圧電トランス素子を振動の節で支持する部材で直接基板に固定する構造では、圧電トランス素子の重量と強い振動に耐え得る強固な支持を確保するためには素子を両側から支持する必要があり、素子の両側に基板が存在していることを必要としていたのである。
【0008】
さらに上記の従来技術の構造では、トランス支持部材は圧電トランス素子に対して圧力のみにより接触を保持してトランスを支持しており、またトランス支持部材に設けた導電体により圧電トランス素子を押えて接触のみで素子との電気的接続を取っている。しかし、このように圧力による接触のみで圧電トランス素子の支持と電気的結合を得ると、素子の固定が不安定なため圧電トランス素子と支持部材あるいは導電体との接触箇所で発熱が起こりやすく、長時間の使用には耐えられないものであった。さらに、長時間の使用により接触が緩んで両者の間隔があいてしまい、使用時にさらに発熱しやすくなってしまうという欠点を有していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、圧電昇圧モジュールを薄型化すると同時に平面寸法を小さくしてモジュール全体の小型化を図ることができ、また設計の自由度が大きく、圧電トランス素子の発熱を起こしにくい構造を有する圧電昇圧モジュールを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的に鑑み、圧電トランス素子と圧電昇圧回路基板を含む圧電昇圧モジュールにおいて、圧電トランス素子が圧電トランス素子を収納するための圧電トランス素子用ケースに収納され、圧電トランス素子を収納した前記ケース及び圧電昇圧回路基板のそれぞれの厚みの範囲の少なくとも一部がモジュール全体の厚みの範囲内で重複するように前記ケースが前記基板の辺縁端部に固定されており、前記圧電トランス素子に入出力用のリード線が接合されていることを特徴とする圧電昇圧モジュールを提供するものである。
【0011】
本発明の圧電昇圧モジュールの好ましい態様においては、圧電トランス素子を収納したケースと圧電昇圧回路基板とのいずれかの厚みの大きい方の厚みの範囲内に他方の厚みの小さい方の厚みの範囲が位置するように前記ケースが前記基板の辺縁端部に固定されている。
【0012】
また本発明の圧電昇圧モジュールの別の態様においては、前記圧電トランス素子用ケースが、圧電昇圧回路基板の辺縁部分に設けられた切り欠き中に固定されている。
【0013】
【作用】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、圧電トランス素子を圧電トランス素子用ケースに収納して固定し、ケースを介して基板に固定しているので、固定するための手段を設ける位置が圧電トランス素子の振動の節に限定されない。従って、ケースの1つの側面においても十分な保持力を得るだけの固定手段を設けることができ、ケースを圧電昇圧回路基板周囲の辺縁端部の任意の部分に固定することができる。これにより基板の面内部に圧電トランス素子用の収納孔を設ける必要がなくなり、圧電昇圧モジュールの平面寸法をより小さいものとできる。
【0014】
さらに本発明の圧電昇圧モジュールでは、圧電トランス素子を収納したケースと圧電昇圧回路基板とをそれぞれの厚みの範囲の少なくとも一部がモジュール全体の厚みの範囲内で重複するように接続するので、モジュールは圧電トランス素子用ケースと圧電昇圧回路基板のいずれかの最大の厚みにまで薄型化することができる。
【0015】
従って、本発明の圧電昇圧モジュールは平面寸法の小型化と厚みの薄型化を同時に実現することができ、モジュール全体の寸法を著しく小型化することを可能とするものである。
【0016】
また、圧電トランス素子を圧電昇圧回路基板の平面内部に設けた孔に収容する必要がなく、基板周縁部の任意の場所に固定できるので圧電昇圧モジュールの設計の自由度が増し、用途に合わせた両者の配置を容易に採用することができる。孔を設ける工程を必要としないことから製造コストも低減される。
【0017】
さらに本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、圧電トランス素子の入出力は圧電トランス素子に接合されたリード線により行うので、接触により電気的接続を得る構造と比較して使用時に発熱しにくく、長時間の使用に耐えることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明で使用される圧電トランス素子は、従来公知の任意の形状のものを使用することができるが、λモードで振動するローゼン型の圧電トランス素子が製造方法の簡便さや効率などの点で最も好ましい。
【0020】
図2はローゼン型の圧電トランス素子の概略図である。ローゼン型の圧電トランス素子4は、矩形板状のセラミック圧電素子を含み、図2において左側半分の入力部分と右側半分の出力部分からなる。入力部分はその上面及び下面に入力電極5を有し、圧電素子は厚み方向に分極されている。出力部分の右側端部面には出力電極6が設けられ、圧電素子は長さ方向(図2において左右方向)に分極されている。
【0021】
このような圧電トランス素子において、2つの入力電極5の間に素子の材質及び振動方向の長さから求められる共振周波数に対応する周波数の交流電圧を印加すると、逆圧電効果によって前記共振周波数で圧電トランス素子全体が機械的に振動し、定在波が形成される。λモードで振動する場合、定在波の振動の節(ノード点)7は素子の両端部から素子の長さLの4分の1の距離(L/4)の位置に存在する。そして上記の定在波による圧電効果により、入力電極5と出力電極6との間に電位差が生じる。圧電トランス素子は、入力電極間の距離よりも入力電極及び出力電極間の距離の方が長くなるように形成されているので、入力電極と出力電極との間に生じる電圧は入力電極間に印加された電圧から昇圧されたものとなる。
【0022】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、上記のような圧電トランス素子の入出力は圧電トランス素子に固定されたリード線によって行う。上記従来技術のように導電体を圧接等することにより圧電トランス素子との接触のみで電気的接続を得るようにすると、振動により接触部分が発熱しやすくなるからである。
【0023】
リード線を圧電トランス素子へ固定する手段は、リード線が圧電トランス素子に一体に接合され、接触のみで電気的に結合するものでなければ特に限定されないが、通常はハンダ付け、導電性接着剤等が適している。ハンダ付けや導電性接着剤は従来知られているものでよいが、できるだけ少量でかつ堅固な接続が得られる材料、接合方法を選択することが好ましい。
【0024】
導電性接着剤とは、「導電性を有する接着剤」または「接着機能を有する導電体」を意味するものであり、例えばアラルダイト等の商品名で市販される2液性のエポキシ樹脂接着剤にアルミニウム等の金属微粉を混合したもの等を使用することができる。
【0025】
リード線の材質や形状も特に限定されるものではなく、入出力する電流及び圧電トランス素子の振動を妨げず、かつ振動を吸収できるもの、即ちリード線を介して振動を伝えることのない程度の断面横または太さ、硬さ、材料のものであればよい。
【0026】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、上記のように圧電トランス素子の入出力をリード線により行い、圧電トランス素子の振動をリード線により吸収するようにするので、上記のような素子端部に設けられた電極でも直接リード線を接続することができ、支持部材の部分で電気的接続が得られるように振動の節の部分まで出力電極を延ばしたような電極構造(特開平7−79027号、特開平7−202288号、特開平7−326805号等)は特に必要としない。
【0027】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、上記のような圧電トランス素子を圧電トランス素子用ケースに収納する。圧電トランス素子用ケースは圧電トランス素子を物理的に支持し、圧電昇圧回路基板に固定するために使用するものである。圧電トランス素子のケースへの固定は、最も振動の小さい部分、即ち振動の節の部分で行う。
【0028】
圧電トランス素子を圧電トランス素子用ケースに固定する際、上記と同様に支持部材等を圧接させるだけで固定すると発熱しやすくなるので、接着剤等により固定する。使用する接着剤は振動を吸収できるようにある程度弾性を有するものであることが素子の発熱を抑えるという点から好ましいが、硬い接着剤を用いて固定しても実用上は差し支えない。
【0029】
ケースの形状は上記ケースの目的を達成できる限り特に限定されるものではないが、圧電昇圧モジュールの小型化、薄型化という目的から、できるだけ厚みが小さく小型であるもの、即ち必要なクリアランスのみを残して圧電トランス素子を収容できるようなものであることが好ましい。
【0030】
例えば図3に示すような、偏平な箱型の形状であって、圧電トランス素子を必要なクリアランスのみを残して収容できる内部形状を有するケース8とすることができる。図3に示したケース8はさらに、内部に圧電トランス素子の振動の節の部分で圧電トランス素子を固定するための支持部材9を有し、ケースを圧電昇圧回路基板に固定するための爪3を有している。
【0031】
支持部材9の形状は図3に示した板状のものに限定されるものではなく、十分な固定が可能であれば、ケース内部底面に設けられた突起状の部分等であってもよい。図3に示した左側の支持部材9の切り欠き10は入力電極に振動の節の部分でリード線を接続する空間を与えるために設けられたものである。
【0032】
爪3は上下2個で1組となり、その間に基板を挟持し、必要により接着剤等で固定してケースを基板に固定する。この場合、爪と基板との間に電気的接触が得られるように爪の対抗面側と挟持される基板の面上に電極を設け、基板の電極と圧電昇圧回路とを、また爪の電極と圧電トランス素子に接続されたリード線とを電気的に接続しておけば、上記の爪によりケースの基板への機械的な固定と圧電トランス素子の圧電昇圧回路への電気的接続が同時に得られる。但し、ケースの基板への機械的な固定と圧電トランス素子の圧電昇圧回路への電気的接続の方法はこれに限定されるものではない。
【0033】
図3の圧電トランス素子ケースは箱型の形状を有し、上面を有しないが、特に圧電トランス素子を密閉しなければならないような用途のためには蓋体を設けてもよい。但し、圧電トランス素子ケースの薄型化の観点からは特に必要がない限り蓋体を設けない方が好ましい。
【0034】
さらに、圧電トランス素子ケースの薄型化という観点から、ケースは、上下の面がないもの、即ち圧電トランス素子を側面において囲む枠のような形態のものであってもよい。この場合、圧電トランス素子はその側面においてケースに固定すればよく、振動の節の部分の側面で圧電トランス素子をケースに接着剤等により固定する。
【0035】
枠の形態のケースに収納、固定した圧電トランス素子の平面図を図4(a)に、そのAA’における断面図を図4(b)に示す。図4(a)及び(b)においては、枠の形状の圧電トランス素子ケース8に圧電トランス素子4が収納されており、圧電トランス素子4はその側面とケース8との間に適当なクリアランスを残してその節の部分の側面部分において接着剤11によりケース8に固定されている。また枠状のケース8は、図3に示したケースと同様の基板への固定用の爪3を有している。枠状のケース8の厚さは特に限定されないが、圧電トランス素子自体の厚さにハンダ付け等により素子にリード線を接続するための厚さを加えた程度の大きさとすることが適当である。
【0036】
圧電トランス素子用ケースの材質は、上記のようなケースの目的に支障を生じない限り任意のものとすることができ、例えば従来より公知の絶縁樹脂から選択することができるが、密度が高い圧電トランス素子を支持及び固定するためにはできるだけ高硬度で高強度であることが好ましい。そのような材料の例としては、例えばABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン等を挙げることができる。
【0037】
本発明にいう圧電昇圧回路基板とは、圧電昇圧モジュールを構成する部品のうち、圧電トランス素子以外のモジュールを構成するのに必要な部品が実装され、圧電昇圧回路として配線された基板を意味する。
【0038】
圧電昇圧回路の構成は従来より公知のものでよく、基本的には例えば特公昭48−28620号に記載されたような回路構成を有する。さらに最近では、素子や周囲の温度変化によって変化する共振周波数を追随するために、発振回路および帰還回路、微調整のための回路等が圧電昇圧回路に加えられ、多くの回路部分がワンチップ化され、IC等の形態で使用されるのが通常である。
【0039】
必要な素子を配置する基板の材質も特に限定されるものではなく、公知の材料を使用できるが、より強度が高く小さい厚みで必要な強度が得られる材料が本発明の目的に好ましい。例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂板やべークライト板を用いることができる。
【0040】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、上記の圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケースを圧電昇圧回路基板に、ケース及び基板のそれぞれの厚みの範囲の少なくとも一部がモジュール全体の厚みの範囲内で重複するように固定する。これにより両者を厚み方向に重ねるよりもモジュールを薄型化することができる。好ましくは、圧電トランス素子を含む圧電トランス素子用ケースと圧電昇圧回路基板とのいずれかの厚みの大きい方の厚みの範囲内に他方の厚みの小さい方の厚みの範囲が位置するように配置固定する。このような配置においては、圧電トランス素子用ケースと圧電昇圧回路基板のいずれかの最大の厚みが圧電昇圧モジュール自体の最大の厚みとなり、圧電昇圧モジュールをさらに薄型化することができる。ケースと基板は、通常その両者の面方向が平行であるように結合され、そのようにすることがモジュール全体の厚みを小さくする上で好ましいが、平行でないように両者を固定されたものを本発明から排除するものではない。
【0041】
また、例えば上記のような圧電トランス素子用ケースに備えられた爪によりケースを基板に固定する場合は、両者が上記のような配置になるような位置に爪を設けておくことが必要である。
【0042】
尚、上記において圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケースの厚みとは、圧電トランス素子に設けられるリード線の接続部分等を含めた最大の厚さであり、即ち、圧電トランス素子をケースに収納した場合にリード線の接続部分等がケースから厚み方向に突出しているような場合はその突出した高さを加えた厚みである。また圧電昇圧回路基板の厚みは、基板自体の厚みに加え、基板上に配置された回路素子の最大の厚み、即ち最も背の高い素子の高さ及び基板裏面のハンダ付け等に要する厚みを含む厚みである。またいずれの要素の厚みも、長さ及び幅方向を含む面に垂直な方向の寸法を意味する。
【0043】
前記のように圧電昇圧回路に必要な素子は最近ではIC等の形態で得られ、また素子自体の小型化も進んでいるため、圧電昇圧モジュールにおいては圧電トランス素子、本発明においては圧電トランス素子を収納したケースの方が大きい厚みを有するのが通常である。従って、本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、通常、圧電トランス素子を収納したケースの厚みの範囲内に圧電昇圧回路基板の厚みの範囲の大部分、好ましくは全てが位置するようにケースを基板の辺縁端部に固定する。
【0044】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、圧電トランス素子を圧電トランス素子用ケースに収納して固定し、ケースを介して基板に固定しているので、固定するための手段を設ける位置が圧電トランス素子の振動の節に限定されず、ケースの1つの側面においても十分な保持力が得られる。従って、ケースを圧電昇圧回路基板周囲の辺縁端部のいずれの部分にも固定することができる。
【0045】
例えば、図1に斜視図を、図5(a)及び(b)に平面図及び正面図を示したように、圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケース1と圧電昇圧回路基板2の幅を同じものとした場合、両者をその長さ方向の端部同士で互いに固定し、長方形の平面形状を有するモジュールとすることができる。尚、図1及び図5においては簡略化のために収納された圧電トランス素子、リード線、基板上に配置された素子等を記載していないが、圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケースの厚みが圧電昇圧回路基板の厚みより大きく、前者の厚みの範囲内に後者の厚みの範囲が位置するように両者が固定されている(後出の図6においても同じ)。
【0046】
また例えば、図6(a)及び(b)に平面図及び正面図を示したように、基板の辺縁部分に設けられた、圧電トランス素子用ケースの平面形状と同じ形状の切り欠き中にケースを固定してもよい。図6(a)及び(b)に示した例においては、ケースは圧電昇圧回路に固定するための4組の爪を備えており、ケースの幅方向の辺を含む2つの側面の中央部にそれぞれ1組ずつ、長さ方向の辺を含む1つの側面に2組設けられ、切り欠きを形成する基板の辺縁部分に取り付けられている。
【0047】
いうまでもなく、本発明の圧電昇圧モジュールにおいてケースを圧電昇圧回路基板周囲の辺縁端部に固定する形態は、上記に説明したものに限定されるものではない。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を非限定的な実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。
【0049】
実施例1
PZT系の圧電体粉末を用いて略々所望の圧電トランス素子の形状が得られるように成形し、焼成後、研削及び切断によって長さ48 mm 、幅8 mm、厚さ2.3 mmの板状圧電体素子を得た。この素子の長さ方向において一方の半分の部分の上面と下面(長さ及び幅方向の辺を含む面)にAgペーストを印刷し、700℃で焼きつけて両面に入力電極を形成した(以下、これらの電極を「1次側電極」という)。さらにAgを焼きつけた素子の片側半分から遠い方の端部面(幅及び厚み方向の辺を含む面)にもAgペーストを印刷し、700℃で焼きつけて出力電極を形成した(以下、この電極を「2次側電極」という)。
【0050】
1次側電極の一方をグラウンドとし、他方を正極として直流高電圧発生装置に接続し、200℃のシリコンオイル中、6kVの電圧を1時間印加して分極した。さらに1次側の2つの電極を短絡してグラウンドとし、2次側電極を正極として直流高電圧発生装置に接続し、200℃のシリコンオイル中、30kVの電圧を30分印加して分極した。
【0051】
そして直径0.2 mmのAg線を上記3つの電極にハンダ付けした。ハンダ付け位置はいずれも電極の中心とした。ハンダ付け後のハンダ高さは各々0.4 mm以下になるようにした。
【0052】
図3に示したものと同様の偏平な箱型の形状の圧電トランス素子用ケースをABS樹脂を使用して成形した。ケースは、外側が長さ49.6 mm 、幅9.2 mm、高さ3.5 mm、内部が長さ49 mm 、幅8.6 mm、深さ3.2 mmの寸法を有し、内部の長手方向に端から13.0 mm の位置、及びその位置からさらに24.0 mm(逆の端から12.0 mm)の位置に、底面から0.5 mm、内側面から0.3 mm突出する厚さ0.3 mmの圧電トランス素子支持部分をそれぞれ幅方向に設けた。ケースの底面部分の厚みは0.3 mmである。収納される圧電トランス素子の1次電極側の圧電トランス素子支持部分の中央部には、ハンダ付け部分との接触を避けるためにV字型の切り欠きを設けた。また、ケースの外側には基板に固定するための爪を設けた。爪は長さ5.0 mm、幅3.0 mm、厚さ0.2 mmの寸法を有し、圧電トランス素子の1次電極側が収納される側のケースの幅方向の辺を含む側面に、爪の外側側面がケースの長さ方向の辺を含む2つの側面とそれぞれ同一平面となるように2組設けた。各組の爪の対抗する面の間隔は約1 mmであり、爪のケース厚み方向の取り付け位置は、基板を固定したときに、ハンダ付け部分を含む基板最底面がケース底面と同一の平面となるようなものとした。
【0053】
上記のケースの中に前記で製造した圧電トランス素子を収納し、ケース内面の圧電トランス素子支持部先端と圧電トランス素子をエポキシ樹脂接着剤で接着した。圧電トランス素子を収納したケース全体の厚みは約3.5 mmであった。
【0054】
一方、圧電昇圧回路を構成する部品(ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ等)を、あらかじめ配線を形成した長さ130 mm、幅9.2 mm、厚さ1 mmのガラス繊維強化エポキシ樹脂基板にハンダ付けした。用いた部品のなかで最も高さの大きい部品の高さは2.2 mmであり、これらを実装した基板全体の厚みは3.4 mmであった(0.2 mmの厚みを裏面でのハンダ付けに要した)。
【0055】
この基板の幅方向の辺を含む端部に、上記の圧電トランスを収納し固定したケースを、ケースに設けられた爪で前記端部を挟持させることにより取り付け、エポキシ樹脂接着剤で固定し、さらに圧電トランス素子のリード線を基板内の回路や端子と接続し、圧電昇圧モジュールを製造した。
【0056】
上記で製造した本発明の圧電昇圧モジュールの圧電トランス素子用ケースと基板の配置の概略は図1及び図5に示したものと同様である。
【0057】
実施例2
圧電トランス素子は実施例1で使用したものと同様のものを使用した。
【0058】
圧電トランス素子用ケースも実施例1で使用したものと同様のものであるが、但しケースを圧電昇圧回路に固定するための4組の爪を備えたものを使用した。固定用の爪はケースの幅方向の辺を含む2つの側面の中央部にそれぞれ1組づつ、長さ方向の辺を含む1つの側面に2組設けた。爪のケース厚み方向の取り付け位置は実施例1と同様であった。
【0059】
上記の圧電トランス素子用ケースに圧電トランス素子を実施例1と同様に収納し固定した。
【0060】
一方、実施例1と同様の圧電昇圧回路を構成する部品を、あらかじめ配線を形成した長さ90 mm 、幅20 mm 、厚さ1 mmで、長さ方向の辺を含む一方の側面部分の中央に上記圧電トランス素子用ケースの圧電トランス素子収納部分の平面寸法と同じ長さ49.2 mm 、幅9.2 mmの長方形の切り欠きを有するガラス繊維強化エポキシ樹脂基板にハンダ付けした。基板全体の厚みは実施例1と同様に3.4 mmとなった。
【0061】
この基板の上記切り欠き部分に、上記の圧電トランス素子を収納し固定したケースを、ケースに設けられた爪で切り欠き部分の基板端部が挟持されるように切り欠きに嵌め込んで取り付け、実施例1と同様に固定し、電気的接続を形成して圧電昇圧モジュールを製造した。
【0062】
上記で製造した本発明の圧電昇圧モジュールの圧電トランス素子用ケースと基板の配置の概略は図6に示したものと同様である。
【0063】
比較例
前記に挙げた特開平7−202288号に開示された構造により圧電トランス素子を圧電昇圧回路に取り付けた圧電昇圧モジュールを製造した。
【0064】
本比較例で使用した圧電トランス素子は実施例1及び2と同様のものであるが、本比較例においては以下に説明するように圧電トランス素子の振動の節に装着されるトランス支持部材に電極接続導体を設けて圧電トランス素子との電気的接続を得るため、使用した圧電トランス素子は、図7に示した上部平面図に見られるように、2次側電極を圧電トランス素子の振動の節の部分まで延長したものとした。この2次側電極の延長部分12は導電性接着剤を塗布することにより形成した。
【0065】
本比較例に使用したトランス支持部材の形状の概略を図8に示す。トランス支持部材13は、中央部にトランスの幅及び厚み方向を含む面の断面形状とほぼ同じ断面形状のトランス支持孔14を有し、両側部に基板に係止するための凹部15を有し、トランス支持孔14に圧電トランス素子を圧入したときに電気的接続を取るためのトランス支持孔上部及び下部の内面からトランス支持部材外側の上面及び下面に至る接続導体16を有し、高さ3.3 mmを有するものであった。
【0066】
上記のトランス支持部材2個を使用し、圧電トランス素子を圧入して素子の振動の節の部分に位置させた。トランス支持部材外側の上面及び下面に露出した接続導体に実施例と同様のリード線をハンダ付けにより接続した。
【0067】
一方、実施例と同様の圧電昇圧回路を構成する部品を、あらかじめ配線を形成した長さ95 mm 、幅28 mm 、厚さ1 mmの基板であって、長さ及び幅方向のそれぞれの一方の端部から約5 mmの距離を置いて長さ49.5 mm 、幅9.0 mmの長方形のトランス収容孔を設けたガラス繊維強化エポキシ樹脂基板にハンダ付けした。基板全体の厚みは実施例と同様に3.4 mmであった。
【0068】
この基板の上記トランス収容孔の長さ方向の辺を形成する基板の内側端部に上記トランス支持部材の両側の凹部15をそれぞれ係合させて圧電トランス素子を基板に取り付け、エポキシ樹脂接着剤で固定し、さらに前記リード線を基板内の回路や端子と接続し、圧電昇圧モジュールを製造した。このモジュールの最大の厚み、即ち基板下部に突出したトランス支持部材の底面から基板上に配置された回路素子の最も背の高いものの頂部までの高さは4.8 mmであった。
【0069】
図9に上記で製造した圧電昇圧モジュールの圧電トランス素子用ケースと基板の配置の概略を示す。
【0070】
試験例
実施例1、2及び比較例で製造したそれぞれの圧電昇圧モジュールの出力端に50kΩの負荷抵抗を接続し、出力が4Wで一定になるように通電試験を行なった。1時間連続で駆動して充分安定させた後、非接触式の温度計にて素子表面の温度を計測した。その結果、実施例1及び2の素子では、最も温度が高い部分で駆動前と比較して2.5℃上昇していた。一方、比較例の圧電昇圧モジュールにおいては、最も温度が高い部分で駆動前より7.3 ℃上昇していた。
【0071】
さらに実施例2及び比較例の圧電昇圧モジュールをそれぞれ、圧電トランス素子の厚み方向が振動方向と一致するようにバイブレータに固定し、最大振幅1mmの振動を10Hzの周期で10分間かけ、さらに素子長手方向が振動方向と一致するように固定し直して同様に振動をかけた後に上述した方法で通電試験を行い素子の温度上昇を測定した。実施例2の圧電昇圧モジュールでは駆動前と比較して最も温度が高い部分で2.5℃上昇しただけであったが、比較例の圧電昇圧モジュールでは駆動前と比較して12.8℃も上昇していた。
【0072】
上記の結果から、本発明の圧電昇圧モジュールでは、比較例のような圧接されたトランス支持部材及び導体によりトランスの支持と電気的接続を得る圧電昇圧モジュールと比較して温度上昇が極めて小さく長時間の使用に適しており、また振動を加えると比較例のような構造ではさらに温度が上昇しやすくなるのに対して、本発明の圧電昇圧モジュールでは特性が変化しないことが判る。
【0073】
【発明の効果】
本発明の圧電昇圧モジュールによれば、圧電トランス素子を基板面内の孔ではなく基板の周縁の任意の位置に固定することができるので、例えば、圧電昇圧モジュールにおいて圧電トランス内蔵ケースがモジュール中で最も幅が広い部品であっても、小型化された圧電昇圧回路基板と自由に接続することができる。従って本発明の圧電昇圧モジュールにおいてはモジュールの薄型化が可能であると同時にモジュールの平面形状も小さくすることができ、圧電昇圧モジュール全体の小型化を図ることが可能である。
【0074】
また、圧電昇圧モジュールの設計の自由度が増し、用途に合わせた両者の配置を容易に採用することができ、製造コストも低減できる。
【0075】
さらに本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、圧電トランス素子の入出力は圧電トランス素子に接合されたリード線により行い、圧電トランス素子自体の支持は接着剤等によりケースと一体化することにより行われるので、圧電トランス素子の支持及び電気的接続を接触のみで行う構造と比較して使用時に発熱しにくく、長時間の使用に適している。そしてこのような本発明の圧電昇圧モジュールの特性は、振動を加えた後にも失われることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電昇圧モジュールの一実施例の概略斜視図である。
【図2】本発明の圧電昇圧モジュールに使用されるローゼン型の圧電トランス素子の概略斜視図である。
【図3】本発明の圧電昇圧モジュールに使用される圧電トランス素子用ケースの一実施例の概略斜視図である。
【図4】(a) は本発明の圧電昇圧モジュールに使用される圧電トランス素子用ケースの一実施例を、そこに収納された圧電トランス素子とともに示す概略平面図であり、(b) はそのAA’における概略断面図である。
【図5】(a) は本発明の圧電昇圧モジュールの一実施例の概略平面図であり、(b) はその概略正面図である。
【図6】(a) は本発明の圧電昇圧モジュールの一実施例の概略平面図であり、(b) はその概略正面図である。
【図7】比較例の圧電昇圧モジュールに使用したローゼン型の圧電トランス素子の概略平面図である。
【図8】比較例の圧電昇圧モジュールに使用したトランス支持部材の概略斜視図である。
【図9】比較例の圧電昇圧モジュールの概略斜視図である。
【符号の説明】
1...圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケース、
2...圧電昇圧回路基板、
3...基板固定用爪、
4...圧電トランス素子、
5...入力電極、
6...出力電極、
7...圧電トランス素子の振動の節、
8...圧電トランス素子用ケース、
9...圧電トランス素子固定用支持部材、
10..圧電トランス素子固定用支持部材の切り欠き、
11..接着剤、
12..2次側電極(出力電極)の延長部分、
13..トランス支持部材、
14..トランス支持孔、
15..トランス支持部材の凹部、
16..接続導体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置のバックライト用冷陰極管の電源等に使用するのに好適な、圧電トランス素子を用いた圧電昇圧モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
持ち運び可能なノート型パーソナルコンピュータ等に用いられている液晶表示装置用のバックライトには通常冷陰極管が発光源として用いられている。この冷陰極管を点灯させるためには1kV以上の高電圧が必要であり、発光を維持するためには数百Vの電圧が必要である。
【0003】
上記のようなノート型パーソナルコンピュータ等の製品ではその性質上、バックライト点灯用の昇圧モジュールに対しても小型化、省電力化の要請が高く、このような要請に答えるためにローゼン型の圧電トランス素子を使用した昇圧モジュール(以下「圧電昇圧モジュール」という)が使われている。圧電昇圧モジュールは同出力の巻線トランスを用いた昇圧モジュールに比べてモジュール全体の厚みを薄くできるというメリットがある。
【0004】
従来の圧電昇圧モジュールは、厚さ約0.8 mm〜 1.5 mm程度のガラス繊維強化エポキシ樹脂基板等の上に、外部入出力用の端子部、発振回路や制御回路を組み込んだIC、調整用の抵抗や可変コンデンサ等を配置し、さらに圧電トランス素子を厚み方向に重ねて配置したものであった。圧電トランス素子は基板表面から離れた状態で支持されなければならないため、スプリング等の部材を用いて支持するか、圧電トランスを収納したケースが面実装されていた。
【0005】
このような圧電昇圧モジュールにおいて全体の厚みを小さくするため、基板に圧電トランスより大きい収容孔を設けてこれに圧電トランスを収容し、収容した圧電トランスを両端部を基板に固定した一以上の支持部材により支持して圧電トランスの厚みの範囲内に基板の厚みが位置するようにした圧電トランスモジュールの構造が提案されている(特開平7−202288号)。このような構造によれば、圧電昇圧モジュールの厚みを薄くできることに加えて支持部材の個数が減り、部品点数を削減することができる。
【0006】
しかしながら上記のような構造では、基板平面内部に圧電トランスより大きい収納孔を開ける必要があることから、基板の大きさを一定以上に小さくすることが制約される。即ち、基板に圧電トランス素子より大きい収容孔を設けるということは、少なくとも圧電トランス素子の寸法+収容孔のクリアランス+支持具を固定し圧電トランス素子を支持するために必要な強度を得るために必要な基板の幅だけの寸法を長さ及び幅において有する基板が必要となる。このため本来の圧電昇圧回路自体を設けるために必要な基板面積に加えて圧電トランス素子を支持するための基板面積が必要となり、モジュールの小型化という観点からは好ましくない。また圧電トランス素子を配置する位置も基板面内部に限定され、圧電昇圧モジュールの設計の自由度が制約されてしまう。
【0007】
上記従来技術において、圧電トランス素子と圧電昇圧回路基板を薄型化するために両者を厚み方向に重ねるのではなく幅(あるいは長さ)方向に並列に配置する際に、基板面内部にトランス収容孔を設けたのは、以下のような理由によるものと考えられる。即ち、圧電トランス素子自体はその機能上振動の節(ノード点)でしか支持できないが、上記のような圧電トランス素子を振動の節で支持する部材で直接基板に固定する構造では、圧電トランス素子の重量と強い振動に耐え得る強固な支持を確保するためには素子を両側から支持する必要があり、素子の両側に基板が存在していることを必要としていたのである。
【0008】
さらに上記の従来技術の構造では、トランス支持部材は圧電トランス素子に対して圧力のみにより接触を保持してトランスを支持しており、またトランス支持部材に設けた導電体により圧電トランス素子を押えて接触のみで素子との電気的接続を取っている。しかし、このように圧力による接触のみで圧電トランス素子の支持と電気的結合を得ると、素子の固定が不安定なため圧電トランス素子と支持部材あるいは導電体との接触箇所で発熱が起こりやすく、長時間の使用には耐えられないものであった。さらに、長時間の使用により接触が緩んで両者の間隔があいてしまい、使用時にさらに発熱しやすくなってしまうという欠点を有していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、圧電昇圧モジュールを薄型化すると同時に平面寸法を小さくしてモジュール全体の小型化を図ることができ、また設計の自由度が大きく、圧電トランス素子の発熱を起こしにくい構造を有する圧電昇圧モジュールを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的に鑑み、圧電トランス素子と圧電昇圧回路基板を含む圧電昇圧モジュールにおいて、圧電トランス素子が圧電トランス素子を収納するための圧電トランス素子用ケースに収納され、圧電トランス素子を収納した前記ケース及び圧電昇圧回路基板のそれぞれの厚みの範囲の少なくとも一部がモジュール全体の厚みの範囲内で重複するように前記ケースが前記基板の辺縁端部に固定されており、前記圧電トランス素子に入出力用のリード線が接合されていることを特徴とする圧電昇圧モジュールを提供するものである。
【0011】
本発明の圧電昇圧モジュールの好ましい態様においては、圧電トランス素子を収納したケースと圧電昇圧回路基板とのいずれかの厚みの大きい方の厚みの範囲内に他方の厚みの小さい方の厚みの範囲が位置するように前記ケースが前記基板の辺縁端部に固定されている。
【0012】
また本発明の圧電昇圧モジュールの別の態様においては、前記圧電トランス素子用ケースが、圧電昇圧回路基板の辺縁部分に設けられた切り欠き中に固定されている。
【0013】
【作用】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、圧電トランス素子を圧電トランス素子用ケースに収納して固定し、ケースを介して基板に固定しているので、固定するための手段を設ける位置が圧電トランス素子の振動の節に限定されない。従って、ケースの1つの側面においても十分な保持力を得るだけの固定手段を設けることができ、ケースを圧電昇圧回路基板周囲の辺縁端部の任意の部分に固定することができる。これにより基板の面内部に圧電トランス素子用の収納孔を設ける必要がなくなり、圧電昇圧モジュールの平面寸法をより小さいものとできる。
【0014】
さらに本発明の圧電昇圧モジュールでは、圧電トランス素子を収納したケースと圧電昇圧回路基板とをそれぞれの厚みの範囲の少なくとも一部がモジュール全体の厚みの範囲内で重複するように接続するので、モジュールは圧電トランス素子用ケースと圧電昇圧回路基板のいずれかの最大の厚みにまで薄型化することができる。
【0015】
従って、本発明の圧電昇圧モジュールは平面寸法の小型化と厚みの薄型化を同時に実現することができ、モジュール全体の寸法を著しく小型化することを可能とするものである。
【0016】
また、圧電トランス素子を圧電昇圧回路基板の平面内部に設けた孔に収容する必要がなく、基板周縁部の任意の場所に固定できるので圧電昇圧モジュールの設計の自由度が増し、用途に合わせた両者の配置を容易に採用することができる。孔を設ける工程を必要としないことから製造コストも低減される。
【0017】
さらに本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、圧電トランス素子の入出力は圧電トランス素子に接合されたリード線により行うので、接触により電気的接続を得る構造と比較して使用時に発熱しにくく、長時間の使用に耐えることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明で使用される圧電トランス素子は、従来公知の任意の形状のものを使用することができるが、λモードで振動するローゼン型の圧電トランス素子が製造方法の簡便さや効率などの点で最も好ましい。
【0020】
図2はローゼン型の圧電トランス素子の概略図である。ローゼン型の圧電トランス素子4は、矩形板状のセラミック圧電素子を含み、図2において左側半分の入力部分と右側半分の出力部分からなる。入力部分はその上面及び下面に入力電極5を有し、圧電素子は厚み方向に分極されている。出力部分の右側端部面には出力電極6が設けられ、圧電素子は長さ方向(図2において左右方向)に分極されている。
【0021】
このような圧電トランス素子において、2つの入力電極5の間に素子の材質及び振動方向の長さから求められる共振周波数に対応する周波数の交流電圧を印加すると、逆圧電効果によって前記共振周波数で圧電トランス素子全体が機械的に振動し、定在波が形成される。λモードで振動する場合、定在波の振動の節(ノード点)7は素子の両端部から素子の長さLの4分の1の距離(L/4)の位置に存在する。そして上記の定在波による圧電効果により、入力電極5と出力電極6との間に電位差が生じる。圧電トランス素子は、入力電極間の距離よりも入力電極及び出力電極間の距離の方が長くなるように形成されているので、入力電極と出力電極との間に生じる電圧は入力電極間に印加された電圧から昇圧されたものとなる。
【0022】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、上記のような圧電トランス素子の入出力は圧電トランス素子に固定されたリード線によって行う。上記従来技術のように導電体を圧接等することにより圧電トランス素子との接触のみで電気的接続を得るようにすると、振動により接触部分が発熱しやすくなるからである。
【0023】
リード線を圧電トランス素子へ固定する手段は、リード線が圧電トランス素子に一体に接合され、接触のみで電気的に結合するものでなければ特に限定されないが、通常はハンダ付け、導電性接着剤等が適している。ハンダ付けや導電性接着剤は従来知られているものでよいが、できるだけ少量でかつ堅固な接続が得られる材料、接合方法を選択することが好ましい。
【0024】
導電性接着剤とは、「導電性を有する接着剤」または「接着機能を有する導電体」を意味するものであり、例えばアラルダイト等の商品名で市販される2液性のエポキシ樹脂接着剤にアルミニウム等の金属微粉を混合したもの等を使用することができる。
【0025】
リード線の材質や形状も特に限定されるものではなく、入出力する電流及び圧電トランス素子の振動を妨げず、かつ振動を吸収できるもの、即ちリード線を介して振動を伝えることのない程度の断面横または太さ、硬さ、材料のものであればよい。
【0026】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、上記のように圧電トランス素子の入出力をリード線により行い、圧電トランス素子の振動をリード線により吸収するようにするので、上記のような素子端部に設けられた電極でも直接リード線を接続することができ、支持部材の部分で電気的接続が得られるように振動の節の部分まで出力電極を延ばしたような電極構造(特開平7−79027号、特開平7−202288号、特開平7−326805号等)は特に必要としない。
【0027】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、上記のような圧電トランス素子を圧電トランス素子用ケースに収納する。圧電トランス素子用ケースは圧電トランス素子を物理的に支持し、圧電昇圧回路基板に固定するために使用するものである。圧電トランス素子のケースへの固定は、最も振動の小さい部分、即ち振動の節の部分で行う。
【0028】
圧電トランス素子を圧電トランス素子用ケースに固定する際、上記と同様に支持部材等を圧接させるだけで固定すると発熱しやすくなるので、接着剤等により固定する。使用する接着剤は振動を吸収できるようにある程度弾性を有するものであることが素子の発熱を抑えるという点から好ましいが、硬い接着剤を用いて固定しても実用上は差し支えない。
【0029】
ケースの形状は上記ケースの目的を達成できる限り特に限定されるものではないが、圧電昇圧モジュールの小型化、薄型化という目的から、できるだけ厚みが小さく小型であるもの、即ち必要なクリアランスのみを残して圧電トランス素子を収容できるようなものであることが好ましい。
【0030】
例えば図3に示すような、偏平な箱型の形状であって、圧電トランス素子を必要なクリアランスのみを残して収容できる内部形状を有するケース8とすることができる。図3に示したケース8はさらに、内部に圧電トランス素子の振動の節の部分で圧電トランス素子を固定するための支持部材9を有し、ケースを圧電昇圧回路基板に固定するための爪3を有している。
【0031】
支持部材9の形状は図3に示した板状のものに限定されるものではなく、十分な固定が可能であれば、ケース内部底面に設けられた突起状の部分等であってもよい。図3に示した左側の支持部材9の切り欠き10は入力電極に振動の節の部分でリード線を接続する空間を与えるために設けられたものである。
【0032】
爪3は上下2個で1組となり、その間に基板を挟持し、必要により接着剤等で固定してケースを基板に固定する。この場合、爪と基板との間に電気的接触が得られるように爪の対抗面側と挟持される基板の面上に電極を設け、基板の電極と圧電昇圧回路とを、また爪の電極と圧電トランス素子に接続されたリード線とを電気的に接続しておけば、上記の爪によりケースの基板への機械的な固定と圧電トランス素子の圧電昇圧回路への電気的接続が同時に得られる。但し、ケースの基板への機械的な固定と圧電トランス素子の圧電昇圧回路への電気的接続の方法はこれに限定されるものではない。
【0033】
図3の圧電トランス素子ケースは箱型の形状を有し、上面を有しないが、特に圧電トランス素子を密閉しなければならないような用途のためには蓋体を設けてもよい。但し、圧電トランス素子ケースの薄型化の観点からは特に必要がない限り蓋体を設けない方が好ましい。
【0034】
さらに、圧電トランス素子ケースの薄型化という観点から、ケースは、上下の面がないもの、即ち圧電トランス素子を側面において囲む枠のような形態のものであってもよい。この場合、圧電トランス素子はその側面においてケースに固定すればよく、振動の節の部分の側面で圧電トランス素子をケースに接着剤等により固定する。
【0035】
枠の形態のケースに収納、固定した圧電トランス素子の平面図を図4(a)に、そのAA’における断面図を図4(b)に示す。図4(a)及び(b)においては、枠の形状の圧電トランス素子ケース8に圧電トランス素子4が収納されており、圧電トランス素子4はその側面とケース8との間に適当なクリアランスを残してその節の部分の側面部分において接着剤11によりケース8に固定されている。また枠状のケース8は、図3に示したケースと同様の基板への固定用の爪3を有している。枠状のケース8の厚さは特に限定されないが、圧電トランス素子自体の厚さにハンダ付け等により素子にリード線を接続するための厚さを加えた程度の大きさとすることが適当である。
【0036】
圧電トランス素子用ケースの材質は、上記のようなケースの目的に支障を生じない限り任意のものとすることができ、例えば従来より公知の絶縁樹脂から選択することができるが、密度が高い圧電トランス素子を支持及び固定するためにはできるだけ高硬度で高強度であることが好ましい。そのような材料の例としては、例えばABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン等を挙げることができる。
【0037】
本発明にいう圧電昇圧回路基板とは、圧電昇圧モジュールを構成する部品のうち、圧電トランス素子以外のモジュールを構成するのに必要な部品が実装され、圧電昇圧回路として配線された基板を意味する。
【0038】
圧電昇圧回路の構成は従来より公知のものでよく、基本的には例えば特公昭48−28620号に記載されたような回路構成を有する。さらに最近では、素子や周囲の温度変化によって変化する共振周波数を追随するために、発振回路および帰還回路、微調整のための回路等が圧電昇圧回路に加えられ、多くの回路部分がワンチップ化され、IC等の形態で使用されるのが通常である。
【0039】
必要な素子を配置する基板の材質も特に限定されるものではなく、公知の材料を使用できるが、より強度が高く小さい厚みで必要な強度が得られる材料が本発明の目的に好ましい。例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂板やべークライト板を用いることができる。
【0040】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、上記の圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケースを圧電昇圧回路基板に、ケース及び基板のそれぞれの厚みの範囲の少なくとも一部がモジュール全体の厚みの範囲内で重複するように固定する。これにより両者を厚み方向に重ねるよりもモジュールを薄型化することができる。好ましくは、圧電トランス素子を含む圧電トランス素子用ケースと圧電昇圧回路基板とのいずれかの厚みの大きい方の厚みの範囲内に他方の厚みの小さい方の厚みの範囲が位置するように配置固定する。このような配置においては、圧電トランス素子用ケースと圧電昇圧回路基板のいずれかの最大の厚みが圧電昇圧モジュール自体の最大の厚みとなり、圧電昇圧モジュールをさらに薄型化することができる。ケースと基板は、通常その両者の面方向が平行であるように結合され、そのようにすることがモジュール全体の厚みを小さくする上で好ましいが、平行でないように両者を固定されたものを本発明から排除するものではない。
【0041】
また、例えば上記のような圧電トランス素子用ケースに備えられた爪によりケースを基板に固定する場合は、両者が上記のような配置になるような位置に爪を設けておくことが必要である。
【0042】
尚、上記において圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケースの厚みとは、圧電トランス素子に設けられるリード線の接続部分等を含めた最大の厚さであり、即ち、圧電トランス素子をケースに収納した場合にリード線の接続部分等がケースから厚み方向に突出しているような場合はその突出した高さを加えた厚みである。また圧電昇圧回路基板の厚みは、基板自体の厚みに加え、基板上に配置された回路素子の最大の厚み、即ち最も背の高い素子の高さ及び基板裏面のハンダ付け等に要する厚みを含む厚みである。またいずれの要素の厚みも、長さ及び幅方向を含む面に垂直な方向の寸法を意味する。
【0043】
前記のように圧電昇圧回路に必要な素子は最近ではIC等の形態で得られ、また素子自体の小型化も進んでいるため、圧電昇圧モジュールにおいては圧電トランス素子、本発明においては圧電トランス素子を収納したケースの方が大きい厚みを有するのが通常である。従って、本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、通常、圧電トランス素子を収納したケースの厚みの範囲内に圧電昇圧回路基板の厚みの範囲の大部分、好ましくは全てが位置するようにケースを基板の辺縁端部に固定する。
【0044】
本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、圧電トランス素子を圧電トランス素子用ケースに収納して固定し、ケースを介して基板に固定しているので、固定するための手段を設ける位置が圧電トランス素子の振動の節に限定されず、ケースの1つの側面においても十分な保持力が得られる。従って、ケースを圧電昇圧回路基板周囲の辺縁端部のいずれの部分にも固定することができる。
【0045】
例えば、図1に斜視図を、図5(a)及び(b)に平面図及び正面図を示したように、圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケース1と圧電昇圧回路基板2の幅を同じものとした場合、両者をその長さ方向の端部同士で互いに固定し、長方形の平面形状を有するモジュールとすることができる。尚、図1及び図5においては簡略化のために収納された圧電トランス素子、リード線、基板上に配置された素子等を記載していないが、圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケースの厚みが圧電昇圧回路基板の厚みより大きく、前者の厚みの範囲内に後者の厚みの範囲が位置するように両者が固定されている(後出の図6においても同じ)。
【0046】
また例えば、図6(a)及び(b)に平面図及び正面図を示したように、基板の辺縁部分に設けられた、圧電トランス素子用ケースの平面形状と同じ形状の切り欠き中にケースを固定してもよい。図6(a)及び(b)に示した例においては、ケースは圧電昇圧回路に固定するための4組の爪を備えており、ケースの幅方向の辺を含む2つの側面の中央部にそれぞれ1組ずつ、長さ方向の辺を含む1つの側面に2組設けられ、切り欠きを形成する基板の辺縁部分に取り付けられている。
【0047】
いうまでもなく、本発明の圧電昇圧モジュールにおいてケースを圧電昇圧回路基板周囲の辺縁端部に固定する形態は、上記に説明したものに限定されるものではない。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を非限定的な実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。
【0049】
実施例1
PZT系の圧電体粉末を用いて略々所望の圧電トランス素子の形状が得られるように成形し、焼成後、研削及び切断によって長さ48 mm 、幅8 mm、厚さ2.3 mmの板状圧電体素子を得た。この素子の長さ方向において一方の半分の部分の上面と下面(長さ及び幅方向の辺を含む面)にAgペーストを印刷し、700℃で焼きつけて両面に入力電極を形成した(以下、これらの電極を「1次側電極」という)。さらにAgを焼きつけた素子の片側半分から遠い方の端部面(幅及び厚み方向の辺を含む面)にもAgペーストを印刷し、700℃で焼きつけて出力電極を形成した(以下、この電極を「2次側電極」という)。
【0050】
1次側電極の一方をグラウンドとし、他方を正極として直流高電圧発生装置に接続し、200℃のシリコンオイル中、6kVの電圧を1時間印加して分極した。さらに1次側の2つの電極を短絡してグラウンドとし、2次側電極を正極として直流高電圧発生装置に接続し、200℃のシリコンオイル中、30kVの電圧を30分印加して分極した。
【0051】
そして直径0.2 mmのAg線を上記3つの電極にハンダ付けした。ハンダ付け位置はいずれも電極の中心とした。ハンダ付け後のハンダ高さは各々0.4 mm以下になるようにした。
【0052】
図3に示したものと同様の偏平な箱型の形状の圧電トランス素子用ケースをABS樹脂を使用して成形した。ケースは、外側が長さ49.6 mm 、幅9.2 mm、高さ3.5 mm、内部が長さ49 mm 、幅8.6 mm、深さ3.2 mmの寸法を有し、内部の長手方向に端から13.0 mm の位置、及びその位置からさらに24.0 mm(逆の端から12.0 mm)の位置に、底面から0.5 mm、内側面から0.3 mm突出する厚さ0.3 mmの圧電トランス素子支持部分をそれぞれ幅方向に設けた。ケースの底面部分の厚みは0.3 mmである。収納される圧電トランス素子の1次電極側の圧電トランス素子支持部分の中央部には、ハンダ付け部分との接触を避けるためにV字型の切り欠きを設けた。また、ケースの外側には基板に固定するための爪を設けた。爪は長さ5.0 mm、幅3.0 mm、厚さ0.2 mmの寸法を有し、圧電トランス素子の1次電極側が収納される側のケースの幅方向の辺を含む側面に、爪の外側側面がケースの長さ方向の辺を含む2つの側面とそれぞれ同一平面となるように2組設けた。各組の爪の対抗する面の間隔は約1 mmであり、爪のケース厚み方向の取り付け位置は、基板を固定したときに、ハンダ付け部分を含む基板最底面がケース底面と同一の平面となるようなものとした。
【0053】
上記のケースの中に前記で製造した圧電トランス素子を収納し、ケース内面の圧電トランス素子支持部先端と圧電トランス素子をエポキシ樹脂接着剤で接着した。圧電トランス素子を収納したケース全体の厚みは約3.5 mmであった。
【0054】
一方、圧電昇圧回路を構成する部品(ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ等)を、あらかじめ配線を形成した長さ130 mm、幅9.2 mm、厚さ1 mmのガラス繊維強化エポキシ樹脂基板にハンダ付けした。用いた部品のなかで最も高さの大きい部品の高さは2.2 mmであり、これらを実装した基板全体の厚みは3.4 mmであった(0.2 mmの厚みを裏面でのハンダ付けに要した)。
【0055】
この基板の幅方向の辺を含む端部に、上記の圧電トランスを収納し固定したケースを、ケースに設けられた爪で前記端部を挟持させることにより取り付け、エポキシ樹脂接着剤で固定し、さらに圧電トランス素子のリード線を基板内の回路や端子と接続し、圧電昇圧モジュールを製造した。
【0056】
上記で製造した本発明の圧電昇圧モジュールの圧電トランス素子用ケースと基板の配置の概略は図1及び図5に示したものと同様である。
【0057】
実施例2
圧電トランス素子は実施例1で使用したものと同様のものを使用した。
【0058】
圧電トランス素子用ケースも実施例1で使用したものと同様のものであるが、但しケースを圧電昇圧回路に固定するための4組の爪を備えたものを使用した。固定用の爪はケースの幅方向の辺を含む2つの側面の中央部にそれぞれ1組づつ、長さ方向の辺を含む1つの側面に2組設けた。爪のケース厚み方向の取り付け位置は実施例1と同様であった。
【0059】
上記の圧電トランス素子用ケースに圧電トランス素子を実施例1と同様に収納し固定した。
【0060】
一方、実施例1と同様の圧電昇圧回路を構成する部品を、あらかじめ配線を形成した長さ90 mm 、幅20 mm 、厚さ1 mmで、長さ方向の辺を含む一方の側面部分の中央に上記圧電トランス素子用ケースの圧電トランス素子収納部分の平面寸法と同じ長さ49.2 mm 、幅9.2 mmの長方形の切り欠きを有するガラス繊維強化エポキシ樹脂基板にハンダ付けした。基板全体の厚みは実施例1と同様に3.4 mmとなった。
【0061】
この基板の上記切り欠き部分に、上記の圧電トランス素子を収納し固定したケースを、ケースに設けられた爪で切り欠き部分の基板端部が挟持されるように切り欠きに嵌め込んで取り付け、実施例1と同様に固定し、電気的接続を形成して圧電昇圧モジュールを製造した。
【0062】
上記で製造した本発明の圧電昇圧モジュールの圧電トランス素子用ケースと基板の配置の概略は図6に示したものと同様である。
【0063】
比較例
前記に挙げた特開平7−202288号に開示された構造により圧電トランス素子を圧電昇圧回路に取り付けた圧電昇圧モジュールを製造した。
【0064】
本比較例で使用した圧電トランス素子は実施例1及び2と同様のものであるが、本比較例においては以下に説明するように圧電トランス素子の振動の節に装着されるトランス支持部材に電極接続導体を設けて圧電トランス素子との電気的接続を得るため、使用した圧電トランス素子は、図7に示した上部平面図に見られるように、2次側電極を圧電トランス素子の振動の節の部分まで延長したものとした。この2次側電極の延長部分12は導電性接着剤を塗布することにより形成した。
【0065】
本比較例に使用したトランス支持部材の形状の概略を図8に示す。トランス支持部材13は、中央部にトランスの幅及び厚み方向を含む面の断面形状とほぼ同じ断面形状のトランス支持孔14を有し、両側部に基板に係止するための凹部15を有し、トランス支持孔14に圧電トランス素子を圧入したときに電気的接続を取るためのトランス支持孔上部及び下部の内面からトランス支持部材外側の上面及び下面に至る接続導体16を有し、高さ3.3 mmを有するものであった。
【0066】
上記のトランス支持部材2個を使用し、圧電トランス素子を圧入して素子の振動の節の部分に位置させた。トランス支持部材外側の上面及び下面に露出した接続導体に実施例と同様のリード線をハンダ付けにより接続した。
【0067】
一方、実施例と同様の圧電昇圧回路を構成する部品を、あらかじめ配線を形成した長さ95 mm 、幅28 mm 、厚さ1 mmの基板であって、長さ及び幅方向のそれぞれの一方の端部から約5 mmの距離を置いて長さ49.5 mm 、幅9.0 mmの長方形のトランス収容孔を設けたガラス繊維強化エポキシ樹脂基板にハンダ付けした。基板全体の厚みは実施例と同様に3.4 mmであった。
【0068】
この基板の上記トランス収容孔の長さ方向の辺を形成する基板の内側端部に上記トランス支持部材の両側の凹部15をそれぞれ係合させて圧電トランス素子を基板に取り付け、エポキシ樹脂接着剤で固定し、さらに前記リード線を基板内の回路や端子と接続し、圧電昇圧モジュールを製造した。このモジュールの最大の厚み、即ち基板下部に突出したトランス支持部材の底面から基板上に配置された回路素子の最も背の高いものの頂部までの高さは4.8 mmであった。
【0069】
図9に上記で製造した圧電昇圧モジュールの圧電トランス素子用ケースと基板の配置の概略を示す。
【0070】
試験例
実施例1、2及び比較例で製造したそれぞれの圧電昇圧モジュールの出力端に50kΩの負荷抵抗を接続し、出力が4Wで一定になるように通電試験を行なった。1時間連続で駆動して充分安定させた後、非接触式の温度計にて素子表面の温度を計測した。その結果、実施例1及び2の素子では、最も温度が高い部分で駆動前と比較して2.5℃上昇していた。一方、比較例の圧電昇圧モジュールにおいては、最も温度が高い部分で駆動前より7.3 ℃上昇していた。
【0071】
さらに実施例2及び比較例の圧電昇圧モジュールをそれぞれ、圧電トランス素子の厚み方向が振動方向と一致するようにバイブレータに固定し、最大振幅1mmの振動を10Hzの周期で10分間かけ、さらに素子長手方向が振動方向と一致するように固定し直して同様に振動をかけた後に上述した方法で通電試験を行い素子の温度上昇を測定した。実施例2の圧電昇圧モジュールでは駆動前と比較して最も温度が高い部分で2.5℃上昇しただけであったが、比較例の圧電昇圧モジュールでは駆動前と比較して12.8℃も上昇していた。
【0072】
上記の結果から、本発明の圧電昇圧モジュールでは、比較例のような圧接されたトランス支持部材及び導体によりトランスの支持と電気的接続を得る圧電昇圧モジュールと比較して温度上昇が極めて小さく長時間の使用に適しており、また振動を加えると比較例のような構造ではさらに温度が上昇しやすくなるのに対して、本発明の圧電昇圧モジュールでは特性が変化しないことが判る。
【0073】
【発明の効果】
本発明の圧電昇圧モジュールによれば、圧電トランス素子を基板面内の孔ではなく基板の周縁の任意の位置に固定することができるので、例えば、圧電昇圧モジュールにおいて圧電トランス内蔵ケースがモジュール中で最も幅が広い部品であっても、小型化された圧電昇圧回路基板と自由に接続することができる。従って本発明の圧電昇圧モジュールにおいてはモジュールの薄型化が可能であると同時にモジュールの平面形状も小さくすることができ、圧電昇圧モジュール全体の小型化を図ることが可能である。
【0074】
また、圧電昇圧モジュールの設計の自由度が増し、用途に合わせた両者の配置を容易に採用することができ、製造コストも低減できる。
【0075】
さらに本発明の圧電昇圧モジュールにおいては、圧電トランス素子の入出力は圧電トランス素子に接合されたリード線により行い、圧電トランス素子自体の支持は接着剤等によりケースと一体化することにより行われるので、圧電トランス素子の支持及び電気的接続を接触のみで行う構造と比較して使用時に発熱しにくく、長時間の使用に適している。そしてこのような本発明の圧電昇圧モジュールの特性は、振動を加えた後にも失われることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電昇圧モジュールの一実施例の概略斜視図である。
【図2】本発明の圧電昇圧モジュールに使用されるローゼン型の圧電トランス素子の概略斜視図である。
【図3】本発明の圧電昇圧モジュールに使用される圧電トランス素子用ケースの一実施例の概略斜視図である。
【図4】(a) は本発明の圧電昇圧モジュールに使用される圧電トランス素子用ケースの一実施例を、そこに収納された圧電トランス素子とともに示す概略平面図であり、(b) はそのAA’における概略断面図である。
【図5】(a) は本発明の圧電昇圧モジュールの一実施例の概略平面図であり、(b) はその概略正面図である。
【図6】(a) は本発明の圧電昇圧モジュールの一実施例の概略平面図であり、(b) はその概略正面図である。
【図7】比較例の圧電昇圧モジュールに使用したローゼン型の圧電トランス素子の概略平面図である。
【図8】比較例の圧電昇圧モジュールに使用したトランス支持部材の概略斜視図である。
【図9】比較例の圧電昇圧モジュールの概略斜視図である。
【符号の説明】
1...圧電トランス素子を収納した圧電トランス素子用ケース、
2...圧電昇圧回路基板、
3...基板固定用爪、
4...圧電トランス素子、
5...入力電極、
6...出力電極、
7...圧電トランス素子の振動の節、
8...圧電トランス素子用ケース、
9...圧電トランス素子固定用支持部材、
10..圧電トランス素子固定用支持部材の切り欠き、
11..接着剤、
12..2次側電極(出力電極)の延長部分、
13..トランス支持部材、
14..トランス支持孔、
15..トランス支持部材の凹部、
16..接続導体。
Claims (3)
- 圧電トランス素子と圧電昇圧回路基板を含む圧電昇圧モジュールにおいて、圧電トランス素子が圧電トランス素子を収納するための圧電トランス素子用ケースに収納され、圧電トランス素子を収納した前記ケース及び圧電昇圧回路基板のそれぞれの厚みの範囲の少なくとも一部がモジュール全体の厚みの範囲内で重複するように前記ケースが前記基板の辺縁端部に固定されており、前記圧電トランス素子に入出力用のリード線が接合されていることを特徴とする圧電昇圧モジュール。
- 圧電トランス素子を収納したケースと圧電昇圧回路基板とのいずれかの厚みの大きい方の厚みの範囲内に他方の厚みの小さい方の厚みの範囲が位置するように前記ケースが前記基板の辺縁端部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電昇圧モジュール。
- 圧電トランス素子用ケースが、圧電昇圧回路基板の辺縁部分に設けられた切り欠き中に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電昇圧モジュール。
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