JP3580945B2 - 内燃機関の排気管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関の排気管に関するものである。
【0002】
【従来の技術および課題】
従来のエンジンのエキゾーストマニホールドは、例えば4気筒エンジンの場合、第1気筒から第4気筒の爆発に同期した排気脈動により6k〜20kHzの高周波音がパイプ全体から発生しエンジン騒音における高周波異音の発生原因となっている。
【0003】
そこで、この発明の目的は、高周波音の発生を低減することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、内燃機関の排気管の曲がり部におけるパイプの外側での表面に、パイプの延設方向に延びる補強材が固設されており、排気管の曲がり部において排気ガスが補強材設置部に当たり、補強材設置部が排気脈動により振動する。この振動は補強材設置部においてマス効果および高剛性化により制振、即ち、減衰される。このように振動が減衰し、曲がり部の上流側および下流側においては排気脈動による振動は弱いものとなり、高周波異音の発生が抑制される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、内燃機関の排気管の曲がり部を排気ガスによる振動の腹としたときの曲がり部から所定間隔を隔てた振動の腹に相当する箇所でのパイプの表面に、ウェイトが固設されており、排気管の曲がり部において排気ガスが当たり、曲がり部が排気脈動により振動する。この振動はウェイト設置部においてマス効果により制振、即ち、減衰される。このように振動が減衰し、高周波異音の発生が抑制される。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、排気管の曲がり部において排気ガスが鋳鉄製パイプ部に当たり、鋳鉄製パイプ部が排気脈動により振動する。この振動は鋳鉄製パイプ部において黒鉛により制振、即ち、減衰される。このように振動が減衰し、曲がり部の上流側および下流側においては排気脈動による振動は弱いものとなり、高周波異音の発生が抑制される。
【0011】
【発明の実施の形態】
(参考例)
以下、この発明の参考例を図面に従って説明する。
【0012】
図1には参考例におけるエキゾーストマニホールドの平面図を、図2には、エキゾーストマニホールドの正面図を示す。
4気筒ガソリンエンジンEnには、エキゾーストマニホールド1が取り付けられている。ステンレス製エキゾーストマニホールド1は4つの分岐管2,3,4,5と1本の集合管6とを有している。即ち、第1気筒の排気ガスを排出するための第1気筒用分岐管2と、第2気筒の排気ガスを排出するための第2気筒用分岐管3と、第3気筒の排気ガスを排出するための第3気筒用分岐管4と、第4気筒の排気ガスを排出するための第4気筒用分岐管5とを備え、各分岐管が集合して集合管6と連通している。集合管6にはフロントパイプ7が接続されている。
エキゾーストマニホールド1は取付けフランジ8,9によりエンジンEnおよびフロントパイプ7に取り付けられる。
【0013】
そして、エンジンEnの第1気筒〜第4気筒までの排気ガスは各気筒に対応した分岐管2〜5へ排出され、集合管6において全気筒の排気ガスが集合してフロントパイプ7に流れ、図示しないマフラーを通して大気に放出される。
【0014】
エキゾーストマニホールド1の曲がり部(図2中のA部)においては、図3に示すように、防振のための厚肉管構造となっている。つまり、ステンレス製のパイプ上流部10と、ステンレス製のパイプ下流部11と、ステンレス製のエルボ型厚肉パイプ部12とを備えている。パイプ上流部10はエンジンの排気系における上流側となり、パイプ上流部10にエンジンの排気ガスが供給される。パイプ下流部11はエンジンの排気系における下流側となり、パイプ下流部11からエンジンの排気ガスが排出される。厚肉パイプ部12は、パイプ上流部10とパイプ下流部11とを連結するように配置されている。又、厚肉パイプ部12は、上流側端面12aがパイプ上流部10と気密状態にて接合されるとともに下流側端面12bがパイプ下流部11と気密状態にて接合されている。より具体的には、全周溶接(外周溶接)により気密状態にて接合されている。図3においては溶接部を符号13,14にて示す。
【0015】
パイプの曲がり部である厚肉パイプ部12が排気脈動により振動する部位(加振源)となるとともに、当該領域がマス効果による制振部となる。
パイプ上流部10の厚さ(肉厚)は2.0mmであり、パイプ下流部11の厚さ(肉厚)は2.0mmであり、厚肉パイプ部12の厚さ(肉厚)は4.0mmである。各パイプ部10,11,12の内径は等しくなっており、パイプ内壁において段差が無い構造となっている。よって、各パイプ部10,11,12内を排気ガスが円滑に流れる。
【0016】
この構造(厚肉管構造)は、エキゾーストマニホールド1の全ての曲がり部に採用されている。
次に、作用について述べる。
【0017】
一本のステンレス製分岐パイプを数箇所曲げることにより集合部に各分岐パイプを集合させた構造を採った場合にはパイプの曲がり部において排気により発生する圧力波が曲がり箇所においてパイプの管内壁に衝突し、そこで発生する高周波の振動がパイプ全体に伝わりエキゾーストマニホールド全体から同時にエンジン排気に同期した高周波異音が発生する。これに対し、参考例においては以下の動作により高周波異音が低減する。
【0018】
エンジンからの排気ガスがエキゾーストマニホールド1に入り、さらに、パイプ上流部10〜厚肉パイプ部12〜パイプ下流部11を経由してエキゾーストマニホールド1を通過していく。この排気ガスの排出過程において、排気ガスがエキゾーストマニホールド1の曲がり部において厚肉パイプ部12の内壁に衝突し、その衝突により振動が発生する。この振動が厚肉パイプ部12からパイプ上流部10とパイプ下流部11に伝達する。この際、厚肉パイプ部12においてマス効果により制振、即ち、減衰する。その結果、振動の伝達が低減でき放射音が低減する。
【0019】
図4には、放射音低減効果についての騒音測定結果(実験結果)を示す。実験に用いたサンプルを図5に示す。図5において、パイプ上流部10とパイプ下流部11と厚肉パイプ部12とは、全て、SUS304材を用い、パイプ上流部10とパイプ下流部11の厚さは1mmであり、厚肉パイプ部12には90°エルボを用い厚肉パイプ部12の厚さは4mmである。パイプ寸法は、パイプ部10,11の外径が36.1mm、厚肉パイプ部12の外径が42.1mmである。さらに、厚肉パイプ部12はR70(曲げ半径70mm)である。その他の寸法は図5に示すとおりである。
【0020】
又、エンジンには2000cc直列4気筒ガソリン噴射エンジンを用い、実験時のエンジン条件は1500rpm、負荷トルクは15kgfmである。これは特に高周波音の異音感を感じる条件である。さらに、マイクは管中心から20cmの位置に設置した。
【0021】
図4において、実線にて図5における構造(厚肉管構造)を採用した場合を示し、二点鎖線にて外径が36.1mmで、R70のステンレスパイプ(単なる曲げパイプ)を用いた場合を示す。
【0022】
この図4から厚肉管構造を採用したものの方が騒音低減効果があることが分かる。より正確には、高周波異音の周波数帯域である6k〜20kHzのO.A値(オーバーオール値)で2.5dBの低減効果があることが分かった。
【0023】
このように、加振源となる箇所において加振力が同じであっても厚肉パイプ部12にて振動を減衰させることができ、これにより、聴感で差ができる程度に放射音低減効果がある。
【0024】
図6には、厚肉パイプ部12の厚さを変えた時の放射音低減効果についての騒音測定結果(実験結果)を示す。つまり、横軸に、パイプ上流部10とパイプ下流部11の厚さを1mmとしたときにおける厚肉パイプ部12の厚さをとり、縦軸に放射音低減レベルをとっている。
【0025】
この図6から、厚肉パイプ部12の厚みが厚くなるほど、放射音低減効果があることが分かる。又、厚肉パイプ部12(曲がり部におけるパイプ)の厚さを、1mm〜4mmとしたときにおいて高い放射音低減効果があり、4mm〜8mmとしたときにおいても放射音低減効果がある。さらに、厚肉パイプ部12(曲がり部におけるパイプ)の厚さを、8mm以上としたときにおいては放射音低減レベルは厚さに無関係に一定となることが分かった。
【0026】
このように参考例は、下記の(イ)〜(ハ)の特徴を有する。
(イ)エキゾーストマニホールド1の曲がり部におけるパイプ(厚肉パイプ部12)の厚さを他の領域(パイプ上流部10およびパイプ下流部11)よりも厚くし、当該領域を排気脈動の制振部とした。よって、排気ガスが厚肉パイプ部12に当たり、厚肉パイプ部12が排気脈動により振動するが、この振動は厚肉パイプ部12においてマス効果により制振、即ち、減衰される。このように振動が減衰し、曲がり部の上流側および下流側のパイプ部10,11においては排気脈動による振動は弱いものとなり、高周波異音の発生を抑制することができる。
【0027】
又、肉厚を厚くする箇所は加振源となる曲がり部のみであるので、パイプ全体の肉厚を上げるよりもコスト安で、重量の増加を極力抑制して放射音の低減を図ることができる。
(ロ)曲がり部におけるパイプ(12)の厚さを4mmとして、2mm以上を満たす範囲内としたので、図6から分かるように、高周波異音の発生を、より抑制することができる。
(ハ)曲がり部におけるパイプ(12)の厚さを4mmとして、2mm以上、8mm以下を満たす範囲内としたので、図6から分かるように、高周波異音の発生を、より抑制することができる。
(第1の実施の形態)
次に、この発明の第1の実施の形態を、上記参考例との相違点を中心に説明する。
【0028】
図7には本実施の形態におけるエキゾーストマニホールドの曲がり部の側面図を示すとともに、図8には、図7のB矢視方向から見たエキゾーストマニホールドの曲がり部を示す。
【0029】
パイプ20における曲がり部において、パイプ20の外側(図7においては右側)での表面には、補強材としてのリブプレート21が溶接により固設されている。リブプレート21は帯板状をなし、厚さが5mmで、高さが9mmであり、パイプ20の延設方向に延びている。このリブプレート21の設置領域においてはパイプ20はリブプレート21により剛性が向上しており、この領域が排気脈動の制振部となる。
【0030】
作用について説明すると、パイプ20の曲がり部において排気ガスがリブプレート設置部に当たり、リブプレート設置部が排気脈動により振動する。この振動はリブプレート設置部においてマス効果および高剛性化により制振、即ち、減衰される。このように振動が減衰し、曲がり部の上流側および下流側のパイプ部においては排気脈動による振動は弱いものとなり、高周波異音の発生が抑制される。
(第2の実施の形態)
次に、この発明の第2の実施の形態を、上記参考例との相違点を中心に説明する。
【0031】
図9には本実施の形態におけるエキゾーストマニホールドの曲がり部の側面図を示すとともに、図10には、図9のC視方向から見たエキゾーストマニホールドの曲がり部を示す。
【0032】
パイプ30の曲がり部に対し、上流側に所定間隔L1を隔てた振動の腹に相当する箇所でのパイプ30の表面に、ウェイト用鋼材31が溶接により固設されている。又、パイプ30の曲がり部に対し、下流側に所定間隔L2を隔てた振動の腹に相当する箇所でのパイプ30の表面に、ウェイト用鋼材32が溶接により固設されている。つまり、パイプ30の曲がり部を排気ガスによる振動の腹としたときの曲がり部から所定間隔L1,L2を隔てた振動の腹に相当する箇所でのパイプ30の表面に、ウェイト用鋼材31,32が固設されている。このウェイト用鋼材31,32の設置領域が排気脈動の制振部となる。このウェイト用鋼材31,32は、立方体をなしている。
【0033】
ウェイト用鋼材31,32の設置箇所の決定方法について言及すると、レーザドップラ面振動計により振動モードを測定して各周波数における振動の腹を決定する。
【0034】
又、パイプ30の曲げ部において、パイプ30の外側(図9においては右側)での表面には、ウェイト用鋼材33が溶接により固設されている。このウェイト用鋼材33は立方体をなしており、ウェイト用鋼材33によりマス効果による加振源における制振効果がある。
【0035】
作用について説明すると、パイプ30の曲がり部において排気ガスが当たり、曲がり部が排気脈動により振動する。この振動はウェイト用鋼材31,32の設置部においてマス効果により制振、即ち、減衰される。このように振動が減衰し、曲がり部の上流側および下流側のパイプ部においては排気脈動による振動は弱いものとなり、高周波異音の発生が抑制される。
【0036】
本実施の形態における応用例を説明すると、ウェイト用鋼材33は無くてもよい。又、振動の腹に相当する箇所に配置するウェイト用鋼材は、31と32の内の一方のみでもよい。
(第3の実施の形態)
次に、この発明の第3の実施の形態を、上記参考例との相違点を中心に説明する。
【0037】
図11には本実施の形態におけるエキゾーストマニホールドの曲がり部の断面図を示す。
エキゾーストマニホールドにおける曲がり部において、ステンレス製のパイプ上流部40と、ステンレス製のパイプ下流部41と、鋳鉄製の90°エルボ型パイプ部42とを備えている。直管であるパイプ上流部40はエンジンの排気系における上流側となり、パイプ上流部40にエンジンの排気ガスが供給される。直管であるパイプ下流部41はエンジンの排気系における下流側となり、パイプ下流部41からエンジンの排気ガスが排出される。鋳鉄製パイプ部42は、パイプ上流部40とパイプ下流部41とを連結するように配置され、鋳鉄製パイプ部42とパイプ上流部40とはフランジ40a,42aにより固定され、又、鋳鉄製パイプ部42とパイプ下流部41とはフランジ42b,41aにより固定されている。尚、図中、43,44はガスケットであり、ボルトの図示は省略した。
【0038】
パイプの曲がり部である鋳鉄製パイプ部42が排気脈動により振動する部位(加振源)となるとともに、当該領域が制振部となる。
又、パイプ上流部40とパイプ下流部41と鋳鉄製パイプ部42とは同じ内径で、かつ同じ厚さ(肉厚)である。
【0039】
作用について説明すると、パイプの曲がり部において排気ガスが鋳鉄製パイプ部42に当たり、鋳鉄製パイプ部42が排気脈動により振動する。この振動は鋳鉄製パイプ部42において黒鉛により制振、即ち、減衰される。このように振動が減衰し、曲がり部の上流側および下流側のパイプ部40,41においては排気脈動による振動は弱いものとなり、高周波異音の発生が抑制される。
【0040】
上述した各実施の形態ではエキゾーストマニホールドの曲がり部に適用したが、これに限ることなく、エキゾーストマニホールド以外の排気管(排気系)の曲がり部に適用して放射音を低減させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例におけるエキゾーストマニホールドの平面図。
【図2】参考例におけるエキゾーストマニホールドの正面図。
【図3】参考例におけるエキゾーストマニホールドの曲がり部の断面図。
【図4】参考例における騒音測定結果を示す周波数特性図。
【図5】実験に用いたサンプルの断面図。
【図6】参考例における騒音測定結果を示す図。
【図7】第1の実施の形態におけるエキゾーストマニホールドの曲がり部の側面図。
【図8】図7のB矢視方向から見たエキゾーストマニホールドの曲がり部を示す図。
【図9】第2の実施の形態におけるエキゾーストマニホールドの曲がり部の側面図。
【図10】図9のC矢視方向から見たエキゾーストマニホールドの曲がり部を示す図。
【図11】第3の実施の形態におけるエキゾーストマニホールドの曲がり部の断面図。
【符号の説明】
En…ガソリンエンジン、1…エキゾーストマニホールド、10…パイプ上流部、11…パイプ下流部、12…厚肉パイプ部、21…補強材としてのリブプレート、31…ウェイト用鋼材(ウェイト)、32…ウェイト用鋼材(ウェイト)、40…パイプ上流部、41…パイプ下流部、42…鋳鉄製パイプ部。
Claims (3)
- 内燃機関の排気管の曲がり部におけるパイプの外側での表面に、パイプの延設方向に延びる補強材を固設し、当該領域を排気脈動の制振部としたことを特徴とする内燃機関の排気管。
- 内燃機関の排気管の曲がり部を排気ガスによる振動の腹としたときの曲がり部から所定間隔を隔てた振動の腹に相当する箇所でのパイプの表面に、ウェイトを固設し、当該領域を排気脈動の制振部としたことを特徴とする内燃機関の排気管。
- 内燃機関の排気管の曲がり部におけるパイプを鋳鉄製とするとともに、曲がり部の下流および上流側のパイプをステンレス製とし、前記曲がり部を排気脈動の制振部としたことを特徴とする内燃機関の排気管。
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