JP3580148B2 - 車両用ゲートウェイコンピュータ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両の多重通信システムにそなえて好適の、車両用ゲートウェイコンピュータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の車両のエレクトロニクス化に伴い、電子部品間を結ぶ配線が肥大化,複雑化し、コスト増大,重量増大といった課題が指摘されるようになった。このため、従来より、電子部品間をLANで結ぶことにより配線の共用化をはかり、上記課題を解決するようにした多重通信システムが実用化されている。
【0003】
しかしながら、LANによりデータ通信を行なう場合、ノード毎に要求されるデータ型,パケットのデータ長,通信速度には相違がある。したがって、全てのノード間で共用できるようなLANを構築しようとすると、システム全体の通信速度は高いものに設定せざるを得なくなりコストが増大してしまうことになる。一方、要求仕様に応じて複数のLANを構築した場合、データのやり取りはLAN内のみならずLAN間でも必要な場合があり、各LAN間でのプロトコルの相違は、相互接続によるデータ通信の妨げとなる。
【0004】
そこで、ノードの要求仕様に応じて、また、密接に関連するノード毎にLANを構成するとともに、各LANをゲートウェイにより統合して、相互にデータ転送を可能とした技術が開発されている(例えば、特開平3−283842号公報に開示された技術)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年では、技術革新に伴い、さまざまな車両制御システムが開発されている。例を挙げると、車間距離警報/制御システム,ヨーモーメント制御システム,覚醒度モニタシステム,車線逸脱防止/警報システム等がある。また、ナビゲーションシステム等の情報提供システムも広く普及している。
【0006】
ところが、これらのシステムは、それぞれの単体毎にドライバとのインターフェース、すなわち、HMI(ヒューマン−マシン−インターフェース)を有しており、それぞれのHMIから単独にドライバへの情報提供が行なわれている。このため、氾濫するように提供される情報がドライバの処理能力を越えてしまい、ドライバが混乱してしまうという課題があった。
【0007】
特に、最近では、ITS(インテリジェントトランスポートシステム)技術の発展に伴い、地上側との連携を持った車載電子システムによる新しい車両機能の研究が進んでおり、ドライバに提供される情報がますます増えることは容易に予想される。
したがって、これらの情報をドライバに無秩序に垂れ流すのではなく、ドライバの必要に応じて適切な順序で提供できるようにすることが必要である。このためには、情報提供のためのデータの総合的管理が必要となるが、前述のようにLANをゲートウェイで統合した場合、全てのデータはゲートウェイに集中するようになっている点に着目することができる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、複数の情報の中からドライバが必要とする情報だけを適切な順序で提供できるようにした、車両用ゲートウェイコンピュータ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の車両用ゲートウェイコンピュータ装置では、車両用多重通信システムにおいて、一つ又は複数のノードを接続する複数のLANをゲートウェイで統合することによりLAN間でのデータ通信を可能とするとともに、情報提示手段により各ノードからLANを通じてゲートウェイに入力されるデータに基づきドライバへの情報提示を行なうが、ゲートウェイと情報提示手段との間にエージェントをそなえるとともに、ドライバの指示が入力される指示入力手段をそなえ、エージェントでは、該ゲートウェイを介して入力されるデータの優先順位を該情報提示手段と該指示入力手段とを介したドライバとの対話を通じて決定し、ゲートウェイを介して入力されるデータを、この決定した優先順位に従って情報提示手段へ出力する。
【0010】
また、該エージェントは、該エージェントに要求される機能に応じて複数そなえられたアプリケーションと、上記の各アプリケーション毎に複数そなえられ、該ゲートウェイを介して入力される様々なデータの中から上記の各アプリケーションに応じた必要なデータのみを抽出するとともに、該指示入力手段へのドライバからの入力情報を適宜処理する推論手段と、該推論手段で処理されたドライバからの入力情報に基づいてドライバの要求に対するデータを提示する実行手段とをそなえていることが好ましい(請求項2)。
この場合、該推論手段は、ドライバが何を要求しているのかを理解し要求内容を決定する要求認識手段と、タイプ,意図,状況に関してドライバのモデルを構成し、ユーザモデルデータベースに記憶するとともに、必要に応じて該ユーザモデルデータベースからドライバに関する必要なデータを引き出すユーザモデル化手段と、ドライバの要求状態のモデル化を行なう要求状態モデル化手段とから構成され、該エージェントには、該要求状態モデル化手段によりモデル化されたドライバの要求に基づき、該エージェントが取るべき動作計画を立てる動作計画決定手段と、該動作計画決定手段で立てられた過去の動作計画を評価する自己評価手段とがそなえられていることが好ましい(請求項3)。
さらに、該エージェントには、該実行手段において実際にドライバの要求に応じて動作を行なった段階で、適宜ドライバに該エージェントが行なおうとする動作、又は行なった動作の説明を行なうとともに、該指示入力手段を介した次の指示を受け付けることが好ましい(請求項4)。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図8は本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置を示すもので、図1は本車両用ゲートウェイコンピュータ装置を用いた車両用多重通信システムの構成の概要を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本車両用多重通信システムは、コラムスイッチ,エンジン,ナビゲーションシステム等の車両にそなえられる各種のスイッチ類や機器類及びシステム類のための複数のノードをLAN20,30,40,50で結び、さらに、各LAN20,30,40,50と、ドライバへの情報提示手段となるディスプレイ10,スピーカ(マイク機能付き)11とを、本車両用ゲートウェイコンピュータ装置、即ち、ヒューマンマシンインターフェースゲートウェイコンピュータ装置(以下,HMIゲートウェイコンピュータと表記する)1に接続することによって構成されている。
【0013】
各LAN20,30,40,50は、各ノードにおいて要求されるデータ型,パケットのデータ長,通信速度等に応じて構築されており、ここでは、各ノードを1本のバス21,31,41,51で結んだバス形の接続形式がとられている。
各LAN20,30,40,50について説明すると、まず、LAN20には、メータ(スピードメータ,タコメータ等)用ノード22,コラムスイッチ用ノード23,エアコン用ノード24が接続されている。すなわち、LAN20は、ボデー制御に関連したコンピュータ類のノードを接続したネットワークであり、ここで使用されるデータとしては、各操作スイッチ,天気,照度,季節及び時間,ドライバの姿勢等である。このため、要求されるネットワークの仕様は、データ型でbit、パケットのデータ長で10byte、通信速度でkbpsのオーダとなる。また、図示はしないが、パワーウインドウ,ヘッドライト,ターンシグナル,ワイパー,シートポジション,ドアミラー等の各スイッチのためのノードもこのLAN20に接続されている。
【0014】
また、LAN30には、エンジンコントローラ用ノード32,自動変速機(A/T)コントローラ用ノード33,ABSコントローラ用ノード34が接続されている。すなわち、LAN30は、パワートレイン(駆動系)やシャシを制御するコントローラのためのノードを接続したネットワークであり、ここで使用されるデータとしては、ハンドル角,スロットル開度,ブレーキ圧,車速,車輪速,加速度,ヨー角,ギア段,エンジン回転数,ホイールストローク,道路勾配等である。このため、要求仕様は、データ型でbyte、パケットのデータ長で10byte、通信速度で102 kbpsのオーダとなる。トラクションコントロール,4WS,サスペンション,及びパワーステアリング等のコントローラのためのノードもこのLAN30に接続されることになる。
【0015】
LAN40は、ドライバの運転支援に関連したシステム類を接続したネットワークであり、ノードとして、ACC(アダプティブクルーズコントロール)システム用ノード42,レーンキーピングシステム用ノード43,ドライバモニタ用ノード44が接続されている。このため、使用されるデータとしては、前方距離,障害物位置,車線位置,路面摩擦係数,ドライバの覚醒度等であり、要求されるネットワークの仕様は、データ型でbyte、パケットのデータ長で20byte、通信速度で102 kbpsのオーダとなる。なお、ACCシステムは、先行車両との車間距離を適正な距離に保つように車速制御を行なうシステムであり、レーンキーピングシステムは、自車両が車線に沿って走行するように、換言すれば、車線からの逸脱を防止するように操舵制御を行なうシステムである。また、ドライバモニタは、ドライバの覚醒度を検出してドライバに注意を喚起するシステムである。このようなドライバの運転支援に関するシステムとしては、その他に車両側方及び後方監視システムや路面摩擦計測システム等があり、これらのシステムのためのノードもLAN40に接続されることになる。
【0016】
そして、LAN50は、ドライバへの情報提供システムのノードを接続したネットワークである。このため、ノードとしては、ナビゲーションシステム用ノード52や路車間通信システム用ノード53,さらに自動料金収受システム(ETC)用ノード54が接続されており、使用されるデータとしては、車両位置情報,渋滞情報,交通規制情報,駐車場情報,走行時間,道路特性,カーブ半径,個人情報,出発地−目的地情報等である。このため、要求されるネットワークの仕様は、データ型でテキスト,音楽,画像、パケットのデータ長で100byte〜Kbyte、通信速度でMbpsのオーダとなる。また、車両間インターネットシステム用のノードもこのLAN50に接続されることになる。
【0017】
このように、ノードの仕様に応じて、また、密接に関連するノード毎にLAN20,30,40,50を構成することにより、配線の肥大化,複雑化やそれに伴うコスト増,重量増を防止することができる。また、各LAN20,30,40,50内における情報データのやり取りの効率化を図ることもできる。しかしながら、情報データのやり取りは、それぞれのLAN内のみならずLAN間でも必要な場合があり、このような場合、各LAN間でのプロトコルの相違は、相互接続による情報データ通信の妨げとなる。したがって、各LAN20,30,40,50間でのプロトコルの相違を解釈して、各LAN20,30,40,50を相互に接続できるようにすることが要求される。
【0018】
また、課題でも述べたように、各LAN20,30,40,50に接続された様々なノードにおいて検出される多大な情報を整理し、必要な情報のみを適切なタイミングでドライバへ伝達することも要求される。
そこで、本車両用多重通信システムでは、HMIゲートウェイコンピュータ1をそなえ、このHMIゲートウェイコンピュータ1に各LAN20,30,40,50を接続することにより、上記の要求を満たしている。
【0019】
HMIゲートウェイコンピュータ1の構成について説明すると、HMIゲートウェイコンピュータ1は、ゲートウェイ2,仲介手段(以下、エージェントという)3,診断手段4,ドライブレコーダ5,音声認識/合成手段6をそなえて構成されている。
ゲートウェイ2は、LAN20,30,40,50間の橋渡しを行なう機能要素であり、パケット長の変調やプロトコル変換を行なうことにより、各LAN20,30,40,50の相互接続を図り情報データのやり取りを可能としている。また、ゲートウェイ2は、LAN20,30,40,50と後述するエージェント3との間の情報データ通信の仲介を行なっている。
【0020】
エージェント3は、各LAN20,30,40,50からゲートウェイ2に送られる情報を整理して優先順位を決めてドライバに伝えるとともに、ドライバからの入力情報を適宜処理して車両の制御系、例えば、エンジン用ノード31やA/T用ノード32等に伝達する手段である。また、エージェント3は、学習機能を有しており、ドライバからの入力情報に基づきドライバの特性を学習して、ドライバの抱える問題に対する情報提示と行動指示とを行ない、さらには、ドライバの状況に応じて自律して行動するようにもなっている。具体的には、例えば、図2に示すような機能をそなえて構成される。
【0021】
図2に示すように、エージェント3は、推論手段301,動作計画決定手段302,実行手段303,自己評価手段304,ユーザモデルデータベース305,アプリケーション306から構成されている。このうち、アプリケーション306は、警報機能,快適制御機能等のエージェント3に要求される機能に応じて複数そなえられており、また、推論手段301もアプリケーション306毎に複数そなえられている。
【0022】
例えば、警報機能用の推論手段301及びアプリケーション306が機能しているときには、エージェント3は警報エージェントとして機能し、ドライバ状態や制御システムの状態を認識し、警報の優先度と警報手法(制御,音,音声,振動,ランプ,表示等)の決定をするようになっている。また、快適制御機能用の推論手段301及びアプリケーション306が機能しているときには、エージェント3は快適エージェントとして機能し、警報エージェントと同様にドライバが情報パニックに陥らないように、また、車両制御システムがドライバに快適に感じるように運転環境を制御するようになっている。
【0023】
各機能要素について説明すると、推論手段301では、まず、入力データ、即ち、ゲートウェイ2を介して入力される様々なデータの中から、アプリケーション306に応じた必要なデータのみを抽出するようになっている。
例えば、図3は、車間距離警報/制御におけるデータの流れを示す図であるが、ACCシステム用ノード42には、コラムスイッチ用ノード22からは操作スイッチデータが、ABSコントローラ用ノード34からは車速データ,加速度データが、路車間通信システム用ノード53からは路面摩擦係数データがゲートウェイ2を介して入力されるようになっている。また、ACCシステム用ノード42からは、エンジンコントローラ用ノード32へエンジン出力指令が、ABSコントローラ用ノード34へは減速度指令がゲートウェイ2を介して出力されるようになっている。さらに、これらのノード間の通信データのみならず、ゲートウェイ2には、ドライバモニタ用ノード44からはドライバの覚醒度データが入力され、ACCシステム用ノード42からはACCシステム状態データやACC警報状態データが入力されるようになっている。
【0024】
推論手段301では、これらの入力データの中から、アプリケーション306に応じた必要なデータ、ここでは車間距離警報/制御用アプリケーションが必要とする、操作スイッチデータ,ドライバの覚醒度データ,ACCシステム状態データ,ACC警報状態データを抽出するようになっている。そして、抽出したデータをアプリケーション306に適用することにより、ドライバの要求を導き出すようになっている。
【0025】
より具体的には、推論手段301は、要求認識手段310と、ユーザモデル化手段311と、要求状態モデル化手段312とから構成されている。まず、要求記述手段310は、ドライバが何を要求しているのかを理解し、要求内容を決定する手段である。要求認識手段310では、入力データの中から必要なデータを抽出し、アプリケーション306に適用することによって、入力データからドライバの要求を導出するようになっている。
【0026】
ユーザモデル化手段311は、タイプ,意図,状況に関してドライバのモデルを構成し、ユーザモデルデータベース305に記憶するとともに、必要に応じてユーザモデルデータベース305からドライバに関する必要なデータを引き出す手段である。つまり、このユーザモデル化手段311では、ドライバの特性について学習するようになっており、この学習結果を要求認識手段310における要求内容の理解及び決定に反映させることによって、より正確にドライバの要求に答えることが可能になっている。
【0027】
要求状態モデル化手段312は、ドライバの要求状態のモデル化を行なう手段である。つまり、要求認識手段310において決定されたドライバの要求内容を、後段の動作計画決定手段302で処理できるように、モデル化するようになっているのである。
このように、推論手段301は、以上の3つの機能要素310,311,312をそなえることにより、多様な入力データからドライバが要求している事項を導き出せるようになっているのである。
【0028】
次に、動作計画決定手段302について説明すると、動作計画決定手段302は、要求状態モデル化手段312によりモデル化されたドライバの要求に基づき、エージェント3が取るべき動作計画を立てる手段である。具体的には、ディスプレイ10やスピーカ11を通じてどのようなデータをドライバに提示するか、またどのような指示を送るか決定するとともに、ゲートウェイ2を介してエンジン用ノード31やA/T用ノード32等の車両の制御系に入力する制御信号を決定するようになっている。
【0029】
なお、推論手段301はエージェント3に要求される機能に応じてアプリケーション306とともに複数そなえられているため、同時に複数の推論手段301からモデル化されたドライバ要求が入力される場合もあるが、その場合には、予め設定された優先順位又はドライバが選択した優先順位に応じて動作計画を立てるようになっている。また、動作計画決定手段302では、自己評価手段304によって過去の動作計画を評価し、次の動作計画にその評価を反映するようになっている。
【0030】
そして、動作計画決定手段302で決定された動作計画は、実行手段303により実行されるようになっている。つまり、実行手段303は、ディスプレイ10やスピーカ11を通じて、ドライバの要求に対するデータを提示するとともに必要な指示も行ない、また、ゲートウェイ2を介してエンジン用ノード31やA/T用ノード32等の車両の制御系に制御信号を入力し、ドライバの要求に応じた車両制御が行なわれるようにしているのである。また、実行結果はアプリケーション306にもフィードバックされるようになっている。
【0031】
さらに、エージェント3は、ドライバの要求を正確に判断してそれに応じた正確な動作を行ない、また、不必要な動作を行なわないようにするため、ドライバからの一方向の入力データのみに基づいてドライバの要求を判断するのではなく、エージェント3側からも、適宜、データのフィードバックを行なうようになっている。
【0032】
すなわち、エージェント3では、推論手段301においてドライバの要求を認識した段階で、また、実行手段303において実際にドライバの要求に応じて動作を行なった段階で、適宜ドライバにエージェント3が行なおうとする動作、又は行なった動作の説明、例えば、ディスプレイ10への表示等を行なうとともに、コラムスイッチ等の指示入力手段を介した次の指示を受け付けるようになっている。そして、このような対話形式により、エージェント3は動的な判断が可能になり、ドライバの要求とドライバの特性とを正確に判断して、ドライバの要求に適切に対応した動作が可能になっている。また、ドライバ側にとっても、自己の要求を容易かつ正確に伝えることができるようになっているのである。
【0033】
なお、図1における診断手段4はエージェント3の機能やLANにつながるシステムの機能に障害がないか否か診断する手段であり、ドライブレコーダ5は運転記録の保存手段である。また、音声認識/合成手段6は、スピーカ11から入力された音声の認識処理を行なうとともに、スピーカ11から音声アナウンスを出力する際の音声を合成する手段である。これらの手段4,5,6をエージェント3に対して付設することにより、エージェント3の機能の強化がはかられるようになっている。ただし、これらの機能要素4,5,6は、ゲートウェイ2やエージェント3と異なり、必ずしもHMIゲートウェイコンピュータ1における必須要素ではない。
【0034】
本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置は上述のごとく構成されているので、例えば、車間距離警報/制御においては、本車両用ゲートウェイコンピュータ装置(HMIゲートウェイコンピュータ)1は、図4に示すフローに従い動作する。
図4に示すように、車間距離警報/制御においてはHMIゲートウェイコンピュータ1の動作は、6つの段階、すなわち、ステージA〜Fにわけることができる。各ステージについて説明すると、ステージAでは、車間距離警報/制御に必要なデータを検出し、ステージBでは、ACCシステムの作動状態をディスプレイ10上にインジケータで表示する。そして、ステージCでは、現在の警報レベルを判定し、ステージDでは、判定した警報レベルに応じて警報表示を行なう。さらに、ステージEでは、ブレーキの作動等の警報レベルに応じた動作を行ない、ステージFでは、スピーカ11を通してドライバへの情報提示や指示を行なう。
【0035】
例えば、安全車間距離で走行しているときには、インジケータの目盛りは2以下となり、また、警報レベルは「正常」と判定され、ステージD以降の動作は行なわれない。
また、車間距離が短くなったときには、インジケータの目盛りは3〜4となり、警報レベルは「注意」と判定され、ディスプレイ10上には黄色の注意表示が点滅する。この注意表示の点滅頻度はドライバの覚醒度に応じて変化する。さらに、ドライバが操作スイッチを押して情報を要求している場合には、スピーカ11から音声により「前方車両に注意」とドライバに指示する。ただし、ドライバの覚醒度が低い場合には、操作スイッチのオンオフに関係なく音声アナウンスを行ない注意を喚起する。
【0036】
そして、前方車両と衝突の危険性があるときには、インジケータの目盛りは5〜6となり、警報レベルは「危険」と判定され、ディスプレイ10上には赤色の注意表示が常時点灯し、同時にブザーを鳴らす。そして、ブレーキが作動しているときにスピーカ11から「ブレーキ作動中です」といった音声アナウンスを行ない、ドライバに対して動作の説明を行なう。
【0037】
次に、上記ステージA〜FにおけるHMIゲートウェイコンピュータ1の各機能要素、すなわち、ゲートウェイ2,エージェント3のそれぞれの動作については図5〜図7に示すようになる。
まず、ゲートウェイ2は、ステージA〜Fを通して、常に図5に示すフローに従い動作する。
【0038】
すなわち、ゲートウェイ2は、まず、バス(スイッチ,メータ類コントロールバス)21からの操作スイッチデータをバス(ドライバアシストバス)41に流すとともに、エージェント3にも操作スイッチデータを入力する(ステップS100)。そして、バス31からの車速データ,加速度データをバス41に流し(ステップS110)、次に、バス41からのエンジン出力指令データ,減速度指令データをバス(駆動系,シャシ系コントロールバス) 31に流すとともに、バス41からのACCシステム状態データ,ACC警報状態データをエージェント3に入力する(ステップS120)。そして、バス41からの覚醒度データをエージェント3に入力し(ステップS130)、バス(インフォメーションバス)51からの路面摩擦係数データをバス41に流す(ステップS140)。
【0039】
一方、エージェント3は、ステージA〜Cにおいては図6に示すフローに従い動作し、ステージD〜Fにおいては図7に示すフローに従い動作する。
まず、エージェント3は、図6に示すように、ゲートウェイ2からのACCシステム状態データに応じてインジケータへの表示を行ない(ステップS200)、さらに、ACC警報状態データに基づき、警報レベル判定を行なう(ステップS210)。このとき、警報レベルが「正常」と判定されれば、ステップS200に戻り、図7に示すフローには進まない。一方、警報レベルが「正常」以外であれば、図7に示すフローに進み、ステージD〜Fに対応する動作を行なう。
【0040】
図7に示すように、ステージD〜Fにおいては、エージェント3は、ACC警報状態データに基づき警報レベル判定を行ない(ステップS300)、警報レベルが「危険」と判定されればステップS310に進む。一方、「危険」と判定されなければ、すなわち、警報レベルが「注意」であれば、ステップS340に進む。
【0041】
ステップS310に進んだ場合、まず、ディスプレイ10に赤色の危険表示を点灯させるとともに、ブザーも鳴らす(ステップS320)。そして、ABSによりブレーキが作動しているときにスピーカ11から「ブレーキ作動中です」の音声アナウンスを行なう(ステップS330)。
ステップS340に進んだ場合には、まず、ディスプレイ10に黄色の注意表示を点滅させる。点滅頻度はゲートウェイ2からの覚醒度データに基づき変化させる。そして、ドライバの覚醒度を判定し(ステップS350)、覚醒度が低い場合には、スピーカ11から「前方車両に注意」の音声アナウンスを行なってドライバへの警報を行なう(ステップS360)。これに対し、覚醒度が高い場合には、操作スイッチのオンオフを通してドライバが説明を要求しているか否か判定して(ステップS370)、操作スイッチが押されている場合のみ音声アナウンスによる警報を行なう(ステップS360)。
【0042】
以上が車間距離警報/制御におけるHMIゲートウェイコンピュータ1の動作であるが、実際の車両走行においては、ACCシステムによる車間距離警報/制御とともに、レーンキーピングシステムによるレーンキーピング制御やその他の制御が同時に行なわれる場合がある。このような場合には、HMIゲートウェイコンピュータ1の動作はさらに複雑になり、例えば、レーンキーピング制御も同時に行なわれている場合には、車間距離についての警報と車線逸脱についての警報とを同時に行なわなければならない場合がある。
【0043】
これをHMIゲートウェイコンピュータ1の各機能要素でみた場合、ゲートウェイ2では、LAN間でやり取りされるデータのプロトコル変換等の仕事が単に加算されていくだけである。これに対し、エージェント3では、車間距離についての警報状態データと車線逸脱についての警報状態データとが輻輳する。そこで、エージェント3は、警報レベルに応じてこれらの警報状態データに優先順位をつけ、優先順位毎に図4に示すようなステージを実行していく。つまり、緊急度に応じて情報提供及び指示を行なうのである。
【0044】
上述した車間距離警報/制御やレーンキーピング制御時には、警報表示機能用の推論手段301及びアプリケーション306が機能し、エージェント3は警報エージェントとして機能しているが、次に、エージェント3が、その他のエージェントとして機能する場合について、快適エージェントとして機能する場合を例に説明する。図8に示すフローは、エージェント3が快適エージェントとして機能する場合の動作の一例であり、ここでは、エージェント3は、シャシ制御のための道路交通状況とドライバの運転性向との判定を行なっている。
【0045】
図8に示すように、エージェント3では、まず、快適制御用のデータとして、車速データ,ハンドル角データ,スロットル開度データをバス31からゲートウェイ2を介して取得する。そして、車速データから走行時間比率,平均速度を算出し、車速データとハンドル角データとから平均横加速度を算出する。
次に、算出したこれらのデータを所定のファジィルールにあてはめることにより市街地度,渋滞路度,山間路度の適合度を判定する。例えば、走行時間比率が小さく平均速度が中ぐらいであれば、市街地度は高くて渋滞路度は低いと判定し、また、平均横加速度が大きいほど山間路度が高いと判定する。そして、ファジィ推論により判定された市街地度,渋滞路度,山間路度の各度合いから道路交通状況を判定する。
【0046】
また、エージェント3では、取得した車速データ,ハンドル角データ,スロットル開度データの頻度解析を行ない各データの所定時間内での最頻度値を求め、それをドライバの運転性向判定のための運転操作データとする。そして、得られた運転操作データと判定した道路交通状況とをニューラルネットワークに入力して、所定の判定ロジックによりドライバの運転性向を判定する。運転性向の判定値としては、きびきび度合い、すなわち、ゆったりからきびきびまでの運転性向が所定の段階値であらわされる。
【0047】
エージェント3は、こうして判定した運転性向の判定値をゲートウェイ2を介してシャシ制御用のバス31に出力する。これにより、A/T,トラクションコントロール,4WS,サスペンション,及びパワーステアリング等の制御特性はドライバの運転性向及び道路交通状況にあったものに調整され、ドライバの快適度が向上する。
【0048】
このように、本車両用ゲートウェイコンピュータ装置によれば、すべての情報がゲートウェイ2に集まるようになっており、エージェント3は、ゲートウェイ2に集められた情報の中からドライバが必要としているもののみを選択し、また、重要性に応じて優先順位を決めてドライバに提示するようになっているので、各種の情報が入り乱れてドライバに提供されるようなことがなくなり、情報の氾濫によるドライバの混乱を防止することができるという利点がある。さらに、このように必要な情報のみが重要度に応じて提供されることで、ドライバが提供される情報に従い行動すれば、安全かつ快適な運転を確保することができるという利点がある。
【0049】
また、本車両用ゲートウェイコンピュータ装置では、エージェント3は、所定の場合にはドライバとの対話を通じて、動作内容を決定するようになっているので、動的な判断が可能になり、ドライバの要求やドライバの特性を正確に判断して、ドライバの要求に適切に対応した動作を行なうことができ、ドライバ側にとっても自己の要求を容易かつ正確に伝えることができるという利点がある。
【0050】
さらに、本車両用ゲートウェイコンピュータ装置によれば、エージェント3のアプリケーション306を交換したり新設したりすることのみによって、ハード的には何ら変更することなく、容易に制御特性を変更したり新たな機能を加えることができるという利点がある。また、ドライブレコーダ5や,音声認識/合成手段6を有効に活用することができ、その他のオプション装備も容易に装着することができるという利点もある。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるものである。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明の車両用ゲートウェイコンピュータ装置によれば、エージェントはゲートウェイから入力されるデータを優先順位に応じて情報提示手段に出力し、情報提示手段からは優先順位に応じた情報がドライバに提示されるようになっているので、各種の情報が入り乱れてドライバに提供されるようなことがなくなり、情報の氾濫によるドライバの混乱を防止することができるという利点がある。さらに、このように優先順位に従い情報が提供されることで、ドライバが提供される情報に従い行動すれば、安全かつ快適な運転を確保することができるという利点がある。
【0053】
さらに、請求項1記載の本車両用ゲートウェイコンピュータ装置によれば、ドライバの指示が入力される指示入力手段をそなえ、エージェントは、ゲートウェイを介して入力されるデータに関する提示する情報の優先順位を、情報提示手段と指示入力手段とを介したドライバとの対話を通じて決定し、ゲートウェイを介して入力されるデータをこの決定した優先順位に従って情報提示手段へ出力するようになっているので、動的な判断が可能になり、ドライバの要求やドライバの特性を正確に判断して、ドライバの要求に適切に対応した情報提示を行なうことができ、ドライバ側にとっても自己の要求を容易かつ正確に伝えることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置を適用した車両用多重通信システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置にかかる車間距離警報/制御時のデータの流れを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置の車間距離警報/制御時の制御の流れを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置にかかる車間距離警報/制御時のゲートウェイ部の制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置にかかる車間距離警報/制御時のエージェント部の制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置にかかる車間距離警報/制御時のエージェント部の制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態としての車両用ゲートウェイコンピュータ装置の快適制御の流れを示す図である。
【符号の説明】
1 HMIゲートウェイコンピュータ(車両用ゲートウェイコンピュータ装置)
2 ゲートウェイ
3 エージェント(仲介手段)
301 推論手段
302 動作計画決定手段
303 実行手段
306 アプリケーション
10 ディスプレイ(情報提示手段)
11 スピーカ/マイク(情報提示手段)
20,30,40,50 LAN
21,31,41,51 バス
22〜24,32〜34,42〜44,52〜54 ノード
Claims (4)
- 一つ又は複数のノードが接続されたLANを複数そなえた車両用多重通信システムにそなえられ、該複数のLANを統合し該LAN間でのデータ通信を仲介するゲートウェイと、上記の一つ又は複数のノードから該ゲートウェイを介して入力されるデータに基づきドライバへ情報を提示する情報提示手段と、該ゲートウェイと該情報提示手段との間にそなえられたエージェントと、ドライバの指示が入力される指示入力手段とからなり、該エージェントは、該ゲートウェイを介して入力されるデータの優先順位を該情報提示手段と該指示入力手段とを介したドライバとの対話を通じて決定し、該ゲートウェイを介して入力されるデータを、上記の決定した優先順位に従って該情報提示手段へ出力することを特徴とする、車両用ゲートウェイコンピュータ装置。
- 該エージェントは、
該エージェントに要求される機能に応じて複数そなえられたアプリケーションと、
上記の各アプリケーション毎に複数そなえられ、該ゲートウェイを介して入力される様々なデータの中から上記の各アプリケーションに応じた必要なデータのみを抽出するとともに、該指示入力手段へのドライバからの入力情報を適宜処理する推論手段と、
該推論手段で処理されたドライバからの入力情報に基づいてドライバの要求に対するデータを提示する実行手段とをそなえている
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用ゲートウェイコンピュータ装置。 - 該推論手段は、
ドライバが何を要求しているのかを理解し要求内容を決定する要求認識手段と、
タイプ,意図,状況に関してドライバのモデルを構成し、ユーザモデルデータベースに記憶するとともに、必要に応じて該ユーザモデルデータベースからドライバに関する必要なデータを引き出すユーザモデル化手段と、
ドライバの要求状態のモデル化を行なう要求状態モデル化手段とから構成され、
該エージェントには、
該要求状態モデル化手段によりモデル化されたドライバの要求に基づき、該エージェントが取るべき動作計画を立てる動作計画決定手段と、
該動作計画決定手段で立てられた過去の動作計画を評価する自己評価手段とがそなえられている
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用ゲートウェイコンピュータ装置。 - 該エージェントには、
該実行手段において実際にドライバの要求に応じて動作を行なった段階で、適宜ドライバに該エージェントが行なおうとする動作、又は行なった動作の説明を行なうとともに、該指示入力手段を介した次の指示を受け付ける
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の車両用ゲートウェイコンピュータ装置。
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