JP3576951B2 - 周波数間引き装置、周波数間引き方法及び記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、音声を表す信号を圧縮する周波数間引き装置及び周波数間引き方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有線や無線での放送あるいは通信の手法による音楽などの配信が近年盛んになっている。これらの手法による音楽などの配信を行う場合、帯域が過度に広くなることによるデータ量の増大や占有帯域幅の広がりを避けるため、一般に、音楽を表すデータは、MP3(MPEG1 audio layer 3)形式やAAC(Advanced Audio Coding)形式などの音声圧縮形式で圧縮された上で配信されている。
【0003】
これらの音声圧縮形式は、音声信号のうち高レベルのスペクトル成分に周波数が近接する低レベルのスペクトル成分が人間には聞き取られにくい、という現象を利用して音声圧縮を行う形式である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、放送や通信のトラヒックが増大すると、放送や通信に利用可能な占有帯域幅や回線容量を低下させる必要が生じる。この結果、上述の形式による音声圧縮を行うだけでは、データの配信にかかる時間が長くなったりして配信が円滑に行われない、という問題が生じる。このため、データを、高品質を保ちながら高率で圧縮する技術が求められていた。
【0005】
この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、オーディオ信号を高音質を保ちながら高率で圧縮するための周波数間引き装置及び周波数間引き方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するべく、この発明の第1の観点に係る周波数間引き装置は、間引き処理される対象である被処理信号の第1の期間におけるスペクトルを表すスペクトル信号、及び、前記第1の期間より後の第2の期間における前記被処理信号のスペクトルを表すスペクトル信号を生成するスペクトル分布生成手段と、
前記スペクトル信号に基づき、前記第1及び第2の期間における各前記スペクトルの成分の分布の間に一定程度以上の相関関係がある帯域を特定し、前記第2の期間における前記被処理信号のうち特定された帯域内のスペクトルの成分を除去して、前記第1の期間における前記被処理信号のうち前記特定された帯域内のスペクトルの成分を、スペクトルの成分を除去された前記第2の期間における被処理信号に追加すべきスペクトルの成分と決定する間引き手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
このような周波数間引き装置によれば、第2の期間における被処理信号のスペクトルのうち、第1の期間における被処理信号のスペクトルと一定程度以上の相関関係のある帯域内のスペクトル成分が除去され、第1の期間におけるこの帯域内のスペクトルが、補間用のスペクトルに充てられる。
除去されるスペクトル成分は、高レベルのスペクトル成分に周波数が近接する低レベルのスペクトル成分には限られないから、このような周波数間引き装置によれば、信号が高率で圧縮される。また、スペクトルを除去した後の第2の期間の被処理信号を補間用のスペクトルで補間して得られる信号は原信号に近いものとなるから、このような周波数間引き装置によれば、オーディオ信号を間引き処理の対象とした場合、高音質が保たれる。
【0008】
前記間引き手段は、特定された前記帯域を識別する識別情報を生成し、スペクトルの成分を除去された前記第2の期間における被処理信号を表すデータと、前記識別情報とを、互いが対応付けられた態様で出力するものであれば、スペクトルの補間を行う外部の装置は、第1の期間における被処理信号のスペクトルのうち識別情報により識別される帯域内のスペクトル成分を、スペクトルを除去済みの第2の期間における被処理信号に追加すれば、被処理信号の復元を行える。
【0009】
前記被処理信号は、例えば、オーディオ信号によりPCM(Pulse Code Modulation)変調を行って得られるPCM信号より構成されているものであればよい。
【0010】
また、この発明の第2の観点に係る周波数間引き方法は、
間引き処理される対象である被処理信号の第1の期間におけるスペクトルを表すスペクトル信号、及び、前記第1の期間より後の第2の期間における前記被処理信号のスペクトルを表すスペクトル信号を生成し、
前記スペクトル信号に基づき、前記第1及び第2の期間における各前記スペクトルの成分の分布の間に一定程度以上の相関関係がある帯域を特定し、
前記第2の期間における前記被処理信号のうち特定された帯域内のスペクトルの成分を除去し、
前記第1の期間における前記被処理信号のうち前記特定された帯域内のスペクトルの成分を、スペクトルの成分を除去された前記第2の期間における被処理信号に追加すべきスペクトルの成分と決定する、
ことを特徴とする。
【0011】
このような周波数間引き方法によれば、第2の期間における被処理信号のスペクトルのうち、第1の期間における被処理信号のスペクトルと一定程度以上の相関関係のある帯域内のスペクトル成分が除去され、第1の期間におけるこの帯域内のスペクトルが、補間用のスペクトルに充てられる。
除去されるスペクトル成分は、高レベルのスペクトル成分に周波数が近接する低レベルのスペクトル成分には限られないから、このような周波数間引き方法によれば、信号が高率で圧縮される。また、スペクトルを除去した後の第2の期間の被処理信号を補間用のスペクトルで補間して得られる信号は原信号に近いものとなるから、このような周波数間引き方法によれば、オーディオ信号を間引き処理の対象とした場合、高音質が保たれる。
【0012】
また、この発明の第3の観点に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
コンピュータを、
間引き処理される対象である被処理信号の第1の期間におけるスペクトルを表すスペクトル信号、及び、前記第1の期間より後の第2の期間における前記被処理信号のスペクトルを表すスペクトル信号を生成するスペクトル分布生成手段と、
前記スペクトル信号に基づき、前記第1及び第2の期間における各前記スペクトルの成分の分布の間に一定程度以上の相関関係がある帯域を特定し、前記第2の期間における前記被処理信号のうち特定された帯域内のスペクトルの成分を除去して、前記第1の期間における前記被処理信号のうち前記特定された帯域内のスペクトルの成分を、スペクトルの成分を除去された前記第2の期間における被処理信号に追加すべきスペクトルの成分と決定する間引き手段と、
して機能させるためのプログラムを記録したことを特徴とする。
【0013】
このような記録媒体に記録されたプログラムを実行するコンピュータは、第2の期間における被処理信号のスペクトルのうち、第1の期間における被処理信号のスペクトルと一定程度以上の相関関係のある帯域内のスペクトル成分を除去し、第1の期間におけるこの帯域内のスペクトルを、補間用のスペクトルに充てられるべきものと決定する。
除去されるスペクトル成分は、高レベルのスペクトル成分に周波数が近接する低レベルのスペクトル成分には限られないから、このような記録媒体に記録されたプログラムを実行するコンピュータによれば、信号が高率で圧縮される。また、スペクトルを除去した後の第2の期間の被処理信号を補間用のスペクトルで補間して得られる信号は原信号に近いものとなるから、このような記録媒体に記録されたプログラムを実行するコンピュータによれば、オーディオ信号を間引き処理の対象とした場合、高音質が保たれる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、この発明の実施の形態に係る周波数間引き装置を、音声信号処理装置を例として説明する。
図1は、この発明の実施の形態に係る音声信号処理装置の構成を示す図である。
図示するように、この音声信号処理装置は、周波数間引き部1と、音声圧縮部2と、音声伸長部3と、周波数補間部4とより構成されている。
【0015】
周波数間引き部1は、図2に示すように、アナライザ11と、スペクトル記憶部12と、スペクトル解析部13と、周波数バンドマスキング部14と、シンセサイザ15とより構成されている。
【0016】
アナライザ11は、図3に示すように、n個の遅延部111−0〜111−(n−1)と、(n+1)個のサンプラー112−0〜112−nと、フィルタバンク113とより構成されている。(ただし、nは1以上の任意の整数とする。)
【0017】
遅延部111−0〜111−(n−1)は、各自に供給された信号を、この信号の周期1周期分遅らせて出力する。
遅延部111−k(kは0以上(n−1)以下の任意の整数)が出力する信号はサンプラー112−kに供給される。また、遅延部111−j(jは0以上(n−2)以下の任意の整数)は、遅延部111−(j+1)が出力する信号を供給される。遅延部111−(n−1)には、周波数間引き部1により周波数の間引きを受ける対象のPCM(Pulse Code Mudulation)信号が供給される。
【0018】
従って、遅延部111−kは、遅延部111−(n−1)に供給されたPCM信号を、このPCM信号の(n−k)周期分遅らせた信号を出力する。なお、上述のPCM信号は、音声等を電圧あるいは電流の変化として表すオーディオ信号を用い、PCM変調を行うことにより得られる信号である。
【0019】
サンプラー112−0〜112−nは、各自に供給された信号を、周波数の間引きを受ける対象のPCM信号の周波数の(n+1)分の1の周波数でサンプリングし、サンプリング結果を表す信号を、フィルタバンク113へと供給する。
【0020】
サンプラー112−kには、上述の通り、遅延部111−kが出力する信号が供給される。サンプラー112−nには、周波数間引き部1により周波数の補間を受ける対象のPCM信号が、遅延部111−(n−1)に供給されるのと実質的に同時に供給される。
【0021】
フィルタバンク113は、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit)等より構成されている。
フィルタバンク113は、上述の通りサンプラー112−1〜112−nが出力する信号の供給を受ける。
【0022】
そして、フィルタバンク113は、ポリフェーズフィルタ、DCT(Discrete Cosine Transform)、LOT(Lapped Orthogonal Transform)、MLT(Modulated Lapped Transform)あるいはELT(Extended Lapped Transform)等の手法を用い、自己に供給されたこの信号のスペクトル分布を表す1番目〜(n+1)番目までの(n+1)個の信号を生成する。そして、生成したこれら(n+1)個の信号を、スペクトル記憶部12、スペクトル解析部13及び周波数バンドマスキング部14へと供給する。
【0023】
フィルタバンク113が生成するp番目(pは1から(n+1)までの整数)の信号は、サンプラー112−0〜112−nが出力する信号のスペクトル分布を(n+1)等分して得られる互いに帯域幅が等しい帯域のうち、周波数がp番目に低い帯域内のスペクトル分布を表す信号であるものとする。
【0024】
スペクトル記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等より構成されており、アナライザ11より(n+1)個ずつ供給される上述の信号のうち、最も新しい2回のタイミングで供給された、各(n+1)個、計{2・(n+1)}個の信号を記憶する。そして、スペクトル解析部13の指示に従って、自己が記憶している信号のうち、2番目に新しいタイミングでアナライザ11より供給された信号(すなわち、自己が記憶している{2・(n+1)}個の信号のうち、古い方の(n+1)個。以下、「過去のスペクトルを表す信号」と呼ぶ)を、スペクトル解析部13へと供給する。
【0025】
スペクトル解析部13は、DSPやCPU等より構成されている。スペクトル解析部13は、上述の(n+1)個の各帯域内のスペクトル分布を表す(n+1)個の信号をアナライザ11より供給されると、スペクトル記憶部12に、過去のスペクトルを表す信号を供給するよう指示する。そして、スペクトル記憶部12より過去のスペクトルを表す信号を供給されると、例えば、以下(1)〜(4)として述べる処理を行う。
【0026】
(1) スペクトル解析部13はまず、フィルタバンク113から供給された信号が表す各帯域のうちの1つ(以下、「第1の帯域」と呼ぶ)を特定する。一方、スペクトル記憶部12から供給された信号(過去のスペクトルを表す信号)が表す各帯域のうち、周波数の範囲が第1の帯域と同一である帯域(以下、「第2の帯域」と呼ぶ)も特定する。
【0027】
(2) 次いで、スペクトル解析部13は、(1)の処理で特定した第1の帯域内のスペクトル分布と第2の帯域内のスペクトル分布との相関係数を、最小二乗法等の手法を用いて求め、得られた相関係数が所定値以上であるか否かを判定する。そして、判定の結果、得られた相関係数が所定値以下であった場合、(1)で特定した第1の帯域を削除バンドとして特定し、(1)で特定した第2の帯域を、当該削除バンドを補間するための補間用バンドとして特定する。
【0028】
(3) スペクトル解析部13は、第1及び第2の帯域としてとり得るすべての組み合わせについて上述(1)及び(2)の処理を行い、削除バンド及び補間用バンドを特定する。
【0029】
(4) すべての削除バンド及び補間用バンドを特定すると、スペクトル解析部13は、周波数バンドマスキング部14及び音声圧縮部2に、削除バンドと、当該削除バンドを補間するための補間用バンドを特定した結果を通知する。具体的には、たとえば、削除バンドを識別するデータと、当該削除バンドを補間するための補間用バンドを識別するデータとを、互いに対応付けた形で、周波数バンドマスキング部14及び音声圧縮部2へと供給する。
【0030】
周波数バンドマスキング部14は、DSPやCPU等より構成されている。周波数バンドマスキング部14は、上述の(n+1)個の各帯域内のスペクトル分布を表す(n+1)個の信号をアナライザ11(より具体的には、フィルタバンク113)より供給され、スペクトル解析部13より、削除バンドと、当該削除バンドを補間するための補間用バンドを特定した結果の通知を受ける。
そして、フィルタバンク113より供給された上述の(n+1)個の信号のうち、スペクトル解析部13より通知された削除バンド内のスペクトル分布を表すもの以外の信号を、シンセサイザ15へと供給する。
従って、周波数バンドマスキング部14からシンセサイザ15へは、周波数の間引きを受ける対象のPCM信号のスペクトルのうちから削除バンドのスペクトル成分を除去して得られるスペクトルの分布(間引き後のスペクトル分布)を表す信号が供給される。
【0031】
シンセサイザ15は、図4に示すように、フィルタバンク151と、(n+1)個のサンプラー152−0〜152−nと、n個の遅延部153−0〜153−(n−1)と、加算器154−0〜154−(n−1)とより構成されている。
【0032】
フィルタバンク151は、DSPやCPU等より構成されており、上述の通り、周波数バンドマスキング部14が出力する、間引き後のスペクトル分布を表す信号を供給される。
そして、フィルタバンク151は、ポリフェーズフィルタ、DCT、LOT、MLTあるいはELT等の手法を用い、自己に供給された信号が表すスペクトル分布を有する信号を(n+1)点で等間隔にサンプリングした値を表す(n+1)個の信号を生成する。そして、生成したこれら(n+1)個の信号のうちp番目(pは1から(n+1)までの整数)の信号を、サンプラー152−(p−1)へと供給する。
【0033】
なお、フィルタバンク151が生成するこの信号が表す値のサンプリング間隔は、アナライザ11のサンプラー112−1〜112−nのサンプリング間隔に実質的に等しいものとする。
また、フィルタバンク151が生成するp番目の信号は、フィルタバンク151に供給された信号が表すスペクトル分布を有する信号を(n+1)点で等間隔にサンプリングした値のうち、サンプリングの時刻がp番目に早い値を表すものとする。
【0034】
サンプラー152−1〜152−nは、各自に供給された信号を、当該信号の(n+1)倍の周波数の信号へと変換し、変換結果を表すPCM信号を出力するものである。
サンプラー152−(p−1)には、上述の通り、フィルタバンク151が出力するp番目の信号が供給される。そして、サンプラー152−(s−1)は、自己が出力する信号を、加算器154−(s−1)へと供給する(sは1からnまでの整数)。サンプラー152−nは、自己が出力する信号を遅延部153−(n−1)へと供給する。
【0035】
遅延部153−0〜153−(n−1)は、各自に供給された信号を、この信号の周期1周期分遅らせて出力する。
遅延部153−k(kは0以上(n−1)以下の任意の整数)が出力する信号は加算器154−kに供給される。また、遅延部153−j(jは0以上(n−2)以下の任意の整数)は、加算器154−(j+1)が出力する信号を供給される。遅延部153−(n−1)には、上述の通りサンプラー152−nが出力する信号が供給される。
【0036】
加算器154−0〜154−(n−1)は、各自に供給された2個の信号の和を表す信号を出力する。
加算器154−kには、サンプラー152−kと、遅延部153−kとから信号が供給される。そして、加算器154−m(mは1以上(n−1)以下の整数)が出力する信号は遅延部153−(m−1)に供給される。加算器154−0が出力する信号は、周波数間引き部1の出力信号として、音声圧縮部2へと供給される。
【0037】
加算器154−0が出力するこの出力信号は、サンプラー152−0、152−1、・・・、152−(n−1)及び152−nが出力した信号を、アナライザ11に供給されたPCM信号の周期と実質的に同一の周期で順次出力したものに相当し、そのスペクトル分布が間引き後のスペクトル分布に相当するPCM信号である。
【0038】
音声圧縮部2は、DSPやCPU等を備え、また、記録媒体(例えば、CD−R等)へのデータの記録及び記録媒体からのデータの読み出しを行う記録媒体ドライバを備えている。音声圧縮部2は、周波数間引き部1のシンセサイザ15より出力信号を供給され、スペクトル解析部13より、削除バンドと、当該削除バンドを補間するための補間用バンドを特定した結果を通知されると、供給された出力信号を、MP3やAAC(Advanced Audio Coding)その他任意の手法により圧縮する。そして、圧縮により得られたデータと、削除バンド及び補間用バンドの特定結果を表すデータとを、記録媒体ドライバにセットされた外部の記録媒体に、互いに対応付けた形で記録する。
【0039】
なお、音声圧縮部2は、記録媒体ドライバに代えて、あるいは記録媒体ドライバと共に、外部の通信回線に接続されたモデムやターミナルアダプタ等より構成される通信制御装置を備えていてもよい。この場合、音声圧縮部2は、周波数間引き部1の出力信号が表すデータを圧縮して得られたデータと、削除バンド及び補間用バンドの特定結果を表すデータとを、通信回線を介して外部へと伝送してもよい。
【0040】
音声伸長部3は、DSPやCPU等を備え、また、記録媒体ドライバを備えている。音声伸長部3は、PCM信号をMP3やAAC等の手法により圧縮したものを表す信号を、記録媒体ドライバにセットされた外部の記録媒体より読み出す。そして、読み出したデータをMP3やAAC等の手法により伸長し、伸長により得られたデータを表すPCM信号を生成して、周波数補間部4へと供給する。また、PCM信号を圧縮したものを表すこの信号に対応付けられた、削除バンド及び補間用バンドの特定結果を表すデータも、この記録媒体より読み出して周波数補間部4へと供給する。
【0041】
なお、音声伸長部3は、記録媒体ドライバに代えて、あるいは記録媒体ドライバと共に、通信制御装置を備えていてもよい。この場合、音声伸長部3は、PCM信号をMP3やAAC等の手法により圧縮したものを表すデータと削除バンド及び補間用バンドの特定結果を表すデータとが通信回線を介して外部より自己へと供給されたとき、供給された信号を受信して伸長し、伸長により得られたデータを表すPCM信号と、削除バンド及び補間用バンドの特定結果を表すデータとを、周波数補間部4へと供給するようにしてもよい。
【0042】
周波数補間部4は、図5に示すように、アナライザ41と、スペクトル記憶部42と、周波数補間処理部43と、シンセサイザ44とより構成されている。
このうち、アナライザ41は、周波数間引き部1のアナライザ11と実質的に同一の構成を有しており、シンセサイザ44は、周波数間引き部1のシンセサイザ15と実質的に同一の構成を有している。
【0043】
アナライザ41は、周波数の補間を受ける対象として音声伸長部3から供給されたPCM信号のスペクトル分布を表す1番目〜(n+1)番目までの(n+1)個の信号を生成し、生成したこれら(n+1)個の信号を、スペクトル記憶部42及び周波数補間処理部43へと供給する。
【0044】
なお、アナライザ41が生成するp番目(pは1から(n+1)までの整数)の信号は、音声伸長部3から供給されたPCM信号(つまり、周波数の補間を受ける対象のPCM信号)のスペクトル分布を(n+1)等分して得られる互いに帯域幅が等しい帯域のうち、周波数がp番目に低い帯域内のスペクトル分布を表す信号であるものとする。
【0045】
スペクトル記憶部42は、RAM等より構成されており、アナライザ41より1回あたり(n+1)個ずつ供給される上述の信号を、複数回分記憶する。そして、周波数補間処理部43の指示に従って、自己が記憶している信号を周波数補間処理部43へと供給する。
なお、スペクトル記憶部42は、音声伸長部3が供給するデータが示す補間用バンドのスペクトルを、周波数補間処理部43が後述の通りスペクトルの補間を行うために当該補間用スペクトルを取得すべき時点において確実に記憶している程度に大きな記憶容量を有しているものとする。
【0046】
周波数補間処理部43は、DSPやCPU等より構成されている。周波数補間処理部43は、上述の(n+1)個の各帯域内のスペクトル分布を表す(n+1)個の信号をアナライザ41より供給される。また、音声伸長部3が供給した、削除バンド及び補間用バンドの特定結果を表すデータを取得する。また、スペクトル記憶部42から、アナライザ41が過去に供給してスペクトル記憶部42が記憶した信号を読み出す。
【0047】
そして、周波数補間処理部43は、スペクトル記憶部42から読み出した信号が示すスペクトル分布のうち、音声伸長部3より取得したデータが示す補間用バンド内の信号成分のスペクトル分布を、当該補間用バンドを用いて補間すべき削除バンド内の補間後のスペクトル分布を表すものとして扱うことにより、補間後の削除バンド内のスペクトル分布を表す信号を生成する。そして、生成した信号をシンセサイザ44へと供給する。
従って、周波数補間処理部43からシンセサイザ44へは、音声伸長部3から周波数補間部4へ供給されたPCM信号のスペクトルに補間後の削除バンドのスペクトル成分が加算されて得られるスペクトルの分布(補間後のスペクトル分布)を表す信号が供給される。
【0048】
ただし、周波数補間処理部43は、音声伸長部3から供給されたデータが示す補間用バンドが削除バンドでもある場合、削除バンドである当該補間用バンドを補間するために用いた補間用バンド内の信号成分のスペクトル分布を、音声伸長部3から供給されたデータが示す削除バンド内の補間後のスペクトル分布を表すものとして扱うようにする。
【0049】
シンセサイザ44は、周波数補間処理部43が出力する、補間後のスペクトル分布を表す信号を供給されると、スペクトル分布が補間後のスペクトル分布に相当するPCM信号を出力する。シンセサイザ44が出力するPCM信号は、換言すれば、補間後のスペクトル分布を有する信号を(n+1)点で等間隔にサンプリングしてアナライザ41に供給されたPCM信号の周期と実質的に同一の周期で順次出力したものに相当するPCM信号である。
【0050】
なお、図6(a)は、音声伸長部3が特定のタイミング(タイミング#1)においてアナライザ41に供給したPCM信号のスペクトル分布(補間前のスペクトル分布)の例を示す図であり、(b)は、音声伸長部3がタイミング#1の次のタイミング(タイミング#2)でアナライザ41に供給したPCM信号のスペクトル分布の例を示す図であり、(c)は、(b)に示すスペクトル分布を有するPCM信号に周波数の補間を施した結果得られる、補間後のスペクトル分布の例を示す図である。
【0051】
図6(b)に示すように、音声伸長部3がタイミング#2でアナライザ41に供給したPCM信号の11個の帯域(帯域B1〜帯域B11)のうち帯域B5、B7、B9及びB11が削除バンドである場合においては、図6(a)に示す、タイミング#1でアナライザ41に供給したPCM信号のうち帯域B5、B7、B9及びB11が補間用バンドとなる。そして、補間後のスペクトル分布は、図6(c)に示すように、タイミング#2における削除バンドである帯域B5、B7、B9及びB11に、タイミング#2における補間用バンド(すなわち、タイミング#1における帯域B5、B7、B9及びB11)のスペクトル分布と実質的に同一の分布を有するスペクトルが加えられたものとなる。
【0052】
図6(c)に示すような補間を行うことにより、周波数の間引きを受ける前のPCM信号のスペクトルに近いスペクトルが得られる。従って、シンセサイザ44が出力するPCM信号を用いてオーディオ信号を復元することにより、オーディオ信号が高音質で復元される。
【0053】
なお、この音声信号処理装置の構成は上述のものに限られない。
例えば、この音声信号処理装置は音声圧縮部2や音声伸長部3を必ずしも備
えている必要はない。
この音声信号処理装置が音声圧縮部2を備えない場合は、周波数間引き部1が、自己のシンセサイザ15が供給する出力信号と、スペクトル解析部13が供給する、削除バンド及び補間用バンドの特定結果を表すデータとを、互いに対応付けた形で出力するようにすればよい。
また、この音声信号処理装置が音声伸長部3を備えない場合は、周波数補間部4が、PCM信号と、当該PCM信号に対応付けられた、削除バンド及び補間用バンドの特定結果を表すデータとを、外部の記録媒体から読み出したり、その他任意の手法で外部より取得するようにすればよい。
【0054】
また、周波数間引き部1が周波数の間引きを行う対象の信号や、周波数補間部4が周波数の補間を行う対象の信号は、PCM信号である必要はなく、オーディオ信号を変調して得られる変調波である必要もない。
また、周波数間引き部1のアナライザ11が供給する信号のうち、補間用バンドを表す信号は、当該補間用バンドを用いて補間される削除バンドを表す信号が供給されたタイミングの直前のタイミングで供給されたものである必要はなく、更にその前のタイミングで供給されたものであってもよい。
【0055】
また、遅延部111−0〜111−(n−1)及び153−0〜153−(n−1)や、サンプラー112−0〜112−n及び152−0〜152−nや、加算器154−0〜154−(n−1)の機能を、DSPやCPUが行ってもよい。
【0056】
また、スペクトル解析部13は、相関係数に代えて、2個の帯域のスペクトルの相関を表す任意の数値を、両帯域スペクトル分布に基づいて求め、削除バンド及び補間用バンドの決定に用いてもよい。
【0057】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明にかかる周波数間引き装置は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。
例えば、パーソナルコンピュータやマイクロコンピュータに上述のアナライザ11、スペクトル記憶部12、スペクトル解析部13、周波数バンドマスキング部14及びシンセサイザ15の動作を実行するためのプログラムを格納した媒体(CD−ROM、MO、フロッピーディスク等)から該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する周波数間引き部1を構成することができる。
【0058】
また、例えば、通信回線の掲示板(BBS)に該プログラムを掲示し、これを通信回線を介して配信してもよく、また、該プログラムを表す信号により搬送波を変調し、得られた変調波を伝送し、この変調波を受信した装置が変調波を復調して該プログラムを復元するようにしてもよい。
そして、このプログラムを起動し、OSの制御下に、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。
【0059】
なお、OSが処理の一部を分担する場合、あるいは、OSが本願発明の1つの構成要素の一部を構成するような場合には、記録媒体には、その部分をのぞいたプログラムを格納してもよい。この場合も、この発明では、その記録媒体には、コンピュータが実行する各機能又はステップを実行するためのプログラムが格納されているものとする。
【0060】
【発明の効果】
以上の説明のように、この発明によれば、オーディオ信号を高音質を保ちながら高率で圧縮するための周波数間引き装置及び周波数間引き方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る音声信号処理装置の構成を示す図である。
【図2】周波数間引き部の構成を示す図である。
【図3】アナライザの構成を示す図である。
【図4】シンセサイザの構成を示す図である。
【図5】周波数補間部の構成を示す図である。
【図6】(a)は、タイミング#1におけるスペクトル分布の例を示す図であり、(b)は、タイミング#2における補間前のスペクトル分布の例を示す図であり、(c)は、タイミング#2における補間後のスペクトル分布の例を示す図である。
【符号の説明】
1 周波数間引き部
11、41 アナライザ
111−0〜111−(n−1)、153−0〜153−(n−1) 遅延部
112−0〜112−n、152−0〜152−n サンプラー
113、151 フィルタバンク
12、42 スペクトル記憶部
13 スペクトル解析部
14 周波数バンドマスキング部
15、44 シンセサイザ
154−0〜154−(n−1) 加算器
2 音声圧縮部
3 音声伸長部
4 周波数補間部
43 周波数補間処理部
Claims (5)
- 間引き処理される対象である被処理信号の第1の期間におけるスペクトルを表すスペクトル信号、及び、前記第1の期間より後の第2の期間における前記被処理信号のスペクトルを表すスペクトル信号を生成するスペクトル分布生成手段と、
前記スペクトル信号に基づき、前記第1及び第2の期間における各前記スペクトルの成分の分布の間に一定程度以上の相関関係がある帯域を特定し、前記第2の期間における前記被処理信号のうち特定された帯域内のスペクトルの成分を除去して、前記第1の期間における前記被処理信号のうち前記特定された帯域内のスペクトルの成分を、スペクトルの成分を除去された前記第2の期間における被処理信号に追加すべきスペクトルの成分と決定する間引き手段と、を備える、
ことを特徴とする周波数間引き装置。 - 前記間引き手段は、特定された前記帯域を識別する識別情報を生成し、スペクトルの成分を除去された前記第2の期間における被処理信号を表すデータと、前記識別情報とを、互いが対応付けられた態様で出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の周波数間引き装置。 - 前記被処理信号は、オーディオ信号によりPCM(Pulse Code Modulation)変調を行って得られるPCM信号より構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の周波数間引き装置。 - 間引き処理される対象である被処理信号の第1の期間におけるスペクトルを表すスペクトル信号、及び、前記第1の期間より後の第2の期間における前記被処理信号のスペクトルを表すスペクトル信号を生成し、
前記スペクトル信号に基づき、前記第1及び第2の期間における各前記スペクトルの成分の分布の間に一定程度以上の相関関係がある帯域を特定し、
前記第2の期間における前記被処理信号のうち特定された帯域内のスペクトルの成分を除去し、
前記第1の期間における前記被処理信号のうち前記特定された帯域内のスペクトルの成分を、スペクトルの成分を除去された前記第2の期間における被処理信号に追加すべきスペクトルの成分と決定する、
ことを特徴とする周波数間引き方法。 - コンピュータを、
間引き処理される対象である被処理信号の第1の期間におけるスペクトルを表すスペクトル信号、及び、前記第1の期間より後の第2の期間における前記被処理信号のスペクトルを表すスペクトル信号を生成するスペクトル分布生成手段と、
前記スペクトル信号に基づき、前記第1及び第2の期間における各前記スペクトルの成分の分布の間に一定程度以上の相関関係がある帯域を特定し、前記第2の期間における前記被処理信号のうち特定された帯域内のスペクトルの成分を除去して、前記第1の期間における前記被処理信号のうち前記特定された帯域内のスペクトルの成分を、スペクトルの成分を除去された前記第2の期間における被処理信号に追加すべきスペクトルの成分と決定する間引き手段と、
して機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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