JP3575905B2 - ガス種判別方法及びガス濃度測定方法 - Google Patents

ガス種判別方法及びガス濃度測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、未知のガス種を検知してそのガス種を判別したり、判別しガス種の濃度を測定する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、未知のガス種を特定するためには、ガス選択性の異なるガス検知素子を複数用い、各ガス検知素子の出力から得られるパターン情報が、特定ガス種により異なることを利用してガス種を判別せざるを得なかった。ところで、上述の操作を行うことは困難であり、マイコン等を用いたパターン情報処理技術を開発する試みが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述のパターン情報処理によるガス種判別方法によれば、ガス検知素子を複数利用するために、ガス種の判別操作が煩わしいものになり、ガス検知素子を複数備えたガス検知装置を利用すると、そのガス検知装置自体が大型化し、また、消費電力が大きくなるなど、さらに不都合が生じることが考えられる。また、複数のガス検知素子を併用すると、環境条件の変化や、長期にわたる使用によっては、前記ガス検知素子の特性(例えば、出力の周囲温度依存性、周囲湿度依存性、ガス検知出力、ガスに対する選択性、の応答速度あるいはその波形)が変化してしまう。しかも、その特性変化の度合いが各ガス検知素子ごとにまちまちで、追跡困難である現状では、前記特性変化に対応した情報を欠くという点から、パターン認識技術自体に不確定要素が生じ、ガス種の判別さえ困難な状況になっていた。また、使用環境の相違や、長期使用によっても信頼性高くかつ安定して、前記ガス種の濃度を特定することは、さらに困難とならざるを得なかった。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記実情に鑑み、ガス種の判別操作が容易でかつ、比較的小型のガス検知装置によって、ガス種を判別できる技術を提供する事にある。また、さらには、その判別に基づいてガス濃度までも、容易に決定出来る技術を提供する事にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、半導体式ガス検知素子を構成する金属酸化物半導体では、その表面酸素と被検知ガスである還元性ガスが反応した場合、前記金属酸化物半導体の抵抗値の変化をもたらすと同時に、前記半導体式ガス検知素子の温度を低温にシフトさせる見かけ上の吸熱反応が生じているという新知見を見いだした。本発明は、上記新知見に基づき成されたものである。
つまり、先の新知見によれば、被検知ガスである還元性ガスが半導体式ガス検知素子に接触すれば、通常、その半導体式ガス検知素子を構成する金属酸化物半導体の活性点で反応し、前記半導体式ガス検知素子を高温側にシフトさせるものと思われがちであるのに対して、実際には、例えば、前記被検知ガスがメタンのような燃焼性の低いガスである場合には、接触燃焼による発熱反応が起き難く、表面酸素に反応して前記金属酸化物半導体の抵抗値に変化をもたらす見かけ上の吸熱反応が同時に起きて、時によっては半導体式ガス検知素子を低温側にシフトさせる事があるという現象を説明することが出来る。尚、必ずしも低温側にシフトしないのは、被検知ガスの接触燃焼による発熱反応が同時に伴うという点から説明することが出来、例えば、水素のような燃焼性の高いガスは、前記半導体式ガス検知素子に接触しても、急速に接触燃焼反応が主として前記半導体式ガス検知素子の表層付近で進行し、発熱する現象が主に起き、前記半導体式ガス検知素子内部の金属酸化物半導体の表面酸素と反応して前記金属酸化物半導体の抵抗値に変化をもたらすような反応が起きにくく、つまり見かけ上の吸熱反応が起きにくくなるために、前記金属酸化物半導体と反応して前記半導体式ガス検知素子を低温側にシフトさせる現象が見かけ上観測されないものと考えられる。
〔構成1〕
先述の目的を達成するための本発明のガス種判別方法の特徴手段は、半導体式ガス検出部を設け、前記半導体式ガス検出部を加熱する加熱手段、及び、前記半導体式ガス検出部の温度を測定する温度検出手段を設けてなるガス検知素子を用い、前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、複数種のガス濃度に調整された複数のガス種をそれぞれ各別に接触させたときの前記半導体式ガス検出部からの第一出力と、半導体式ガス検出部の温度変化に伴う前記温度検出手段からの第二出力との相関関係を、前記複数のガス種について各別に予め求めておき、前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、被検知ガスを接触させたときに得られる第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果との関係が前記相関関係のうちいずれかを満たすときに、その被検知ガスが前記相関関係を与えるガス種のものであると判別することにあり、
前記第一出力と第二出力との前記相関関係は、被検知ガスの相関関係曲線図として座標平面上に求めてもよく、前記第一出力と第二出力とから導かれる所定の関数として求めてもよい。
尚、前記ガス検知素子としては、前記加熱手段と前記温度検出手段とを一つの抵抗体から構成してあるものを用いることが好ましい。
以下に上述の構成による作用効果を示す。
【0006】
〔作用効果〕
半導体式ガス検出部を設け、前記半導体式ガス検出部を加熱する加熱手段、及び、前記半導体式ガス検出部の温度を測定する温度検出手段を設けてなるガス検知素子を用い、前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、被検知ガスが接触すると、前記半導体式ガス検出部では、半導体抵抗が変化し、前記被検知ガスを検出できるとともに、前記半導体式ガス検出部が前記被検知ガスを検出したときに、その半導体式ガス検出部が温度変化するのを前記温度検出手段によって測定する事ができる。
【0007】
尚、前記半導体式ガス検出部は前記加熱手段により所定温度に設定された状態で作動させることで、温度変化としては、特に前記被検知ガスによる温度変化だけを検出できる。
【0008】
また、前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、複数種のガス濃度に調整された複数のガス種をそれぞれ各別に接触させると、前記半導体式ガス検出部からの第一出力と、半導体式ガス検出部の温度変化に伴う前記温度検出手段からの第二出力とを得られる。
【0009】
そこで、本発明は、先の新知見を総括し、上述の半導体式ガス検出部を用いて、被検知ガスを検知させれば、例えば、半導体式ガス検出部の抵抗値にあまり影響を与えないガス種は、前記半導体式ガス検出部で、主として接触燃焼が起こり、前記半導体式ガス検出部の温度が上昇するのに対して、半導体式ガス検出部の抵抗値に大きな影響を与えるガス種は、前記半導体式ガス検出部で見かけ上の吸熱反応を併発するために、あまり温度変化を伴わず、前記第一出力と、前記第二出力とは、ガス種によって固有の相関関係を示すという現象を見いだした。従来、複数のガス検知素子を用いてパターン認識してガス種を判別する場合には不可避であった環境変化等によるガス主判別の不確実性を、単一のガス検知素子から二種の出力をえるということで生じにくく出来、容易に環境の変化等に対応して正確な相関関係を得られる。
【0010】
つまり、特定ガス種のガス種の濃度に基づいて、前記第一出力と、前記第二出力との相関関係を求めれば、第一出力と、第二出力と関係がそのガス種固有のものとして得られる。そこで、前記複数のガス種について、各ガス種に対する相関関係を各別に予め求めておく。前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、前記被検知ガスを接触させると、第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果との対応関係が得られる。従って、前記対応関係がいずれかのガス種の相関関係を満たすものであった場合には、その被検知ガスは、前記相関関係を示すガス種のものであると判別する事ができる。
【0011】
例えば、前記第一出力と第二出力との前記相関関係としては、被検知ガスの相関関係曲線図として座標平面上に求めてもよく、前記第一出力と第二出力とから導かれる所定の関数として求めてもよく、先の場合には視覚的にガス種を判別しやすくでき、後の場合には演算素子等を用いて演算させ、自動的にガス種を認識するのに有用である。
【0012】
その結果、複数のガス種について、各ガス種に関する二種の出力の相関関係を各別に予め求めておけば、比較的小型のガス検知装置を適用して、二種の出力を前記相関関係曲線に照合したり、所定の関数に適用して演算結果を求め、その演算結果が、どのガス種が固有に示す数値であるかを認識するだけの簡単な判別方法でガス種を判別できるようになった。
【0013】
また、前記ガス検知素子として、前記加熱手段と前記温度検出手段とを一つの抵抗体から構成してあるものを用いれば、さらに前記ガス検知素子を小型化することができ、そのガス検知素子による消費電力も少なくできて好都合である。
【0014】
〔構成2〕
また、先述の目的を達成するための本発明のガス濃度測定方法の特徴手段は、半導体式ガス検出部を設け、前記半導体式ガス検出部を加熱する加熱手段、及び、前記半導体式ガス検出部の温度を測定する温度検出手段を設けてなるガス検知素子を用い、前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、複数種のガス濃度に調整された複数のガス種をそれぞれ各別に接触させたときの前記半導体式ガス検出部からの第一出力と、半導体式ガス検出部の温度変化に伴う前記温度検出手段からの第二出力と、前記被検知ガスのガス濃度との相関関係を、座標空間に求めておき、前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、被検知ガスを接触させたときに得られる第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果とから被検知ガスを判別するとともに、前記ガス濃度を求める、あるいは、
先のガス種判別方法によってガス種を判別し、前記第一出力と第二出力とのいずれか一方とガス濃度との相関関係から、ガス濃度を求めることにある。
尚、この場合も、前記加熱手段と前記温度検出手段とを一つの抵抗体から構成してあるガス検知素子を用いることが好ましい。
以下に上述の構成による作用効果を示す。
【0015】
〔作用効果〕
つまり、先のガス種判別方法の場合に、得られた二次元的な相関関係に、ガス濃度情報を加えた相関関係を予め得ておけば、第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果とから被検知ガスを判別するとともに、前記第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果とを前記ガス濃度情報に対応させるだけで、前記ガス濃度を求める事が出来るのである。
また、先のガス種判別方法によってガス種を判別した後、前記ガス濃度をある程度見当の付けられる様な場合、例えば、ガス濃度が低濃度であると予想される場合には、前記第一出力とガス濃度との相関関係からガス濃度を求めることによって、逆に、ガス濃度が高濃度であると予想される場合には、前記第二出力とガス濃度との相関関係からガス濃度を求めることによって高い精度をもって被検知ガスのガス濃度を測定することができる。
その結果、先のガス種判別方法によって得られるガス種の情報に加えて、そのガス濃度の情報に付いても容易に得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のガス種判別方法に用いるガス検知素子は、センサ基板1の一面に白金を主成分とする櫛形電極部2、他面に白金を主成分とする抵抗部3を設けてあり、前記櫛形電極部2上には酸化スズ半導体層4を設けてある。つまり、前記櫛形電極部2を覆う酸化スズ半導体層4が半導体式ガス検出部となり、前記抵抗部3が、前記酸化スズ半導体層を加熱する加熱手段と、前記酸化スズ半導体層の温度を検出する温度検出手段とを兼ねる抵抗体に形成されている。
【0017】
このような、ガス検知素子は、前記櫛形電極部2の両端を第一ガス検知回路中に接続して、前記酸化スズ半導体層4を組み込み、前記酸化スズ半導体層4が被検知ガスに接触したときの抵抗変化に基づく出力を検知可能に構成するとともに、第二ガス検知回路中に前記抵抗部3の両端を接続して、前記抵抗部3で発生するジュール熱により、前記酸化スズ半導体層4を所定温度に維持可能にし、かつ、前記酸化スズ半導体層4が被検知ガスを検知したときのの温度変化に基づく第二出力を検知可能に構成して用いられる。
【0018】
例えば、図2に示す構成においては、前記酸化スズ半導体層4に対して抵抗11を接続するとともに、前記酸化スズ半導体層4の抵抗値の変化に伴う前記抵抗11の両端12、13にかかる電圧の変化を検知自在に構成して前記第一ガス検知回路10を構成する。また、前記抵抗部3とを抵抗21及び互いに直列に接続した抵抗22、23、及び、可変抵抗24とからブリッジ回路を構成し、前記酸化スズ半導体層4の温度変化に基づき、前記抵抗部3の抵抗値が変化するのに伴う、前記抵抗部3と前記抵抗21の間にある出力端子25と前記抵抗22と23の間にある出力端子26とのブリッジ出力の変化を検知自在に構成して前記第二ガス検知回路20を構成してある。
【0019】
前記ガス検知素子を用いて本発明のガス種判別方法により、ガス種を判別するには、前記ガス検知素子を、前記抵抗部3に通電することにより所定温度に設定し、例えば、水素ガス、メタンガス、イソブタンガス、エタノール、一酸化炭素ガス等の各種被検知ガスを種々濃度に調整したものを用意しておき、それぞれのガスを各別に前記ガス検知素子に接触させたとき、前記酸化スズ半導体4の抵抗値の変化に基づく第一出力と、前記酸化スズ半導体4の温度変化に伴う前記抵抗部3の抵抗値の変化に基づく第二出力との相関関係を、前記複数のガス種について、例えば、各ガス種に対する相関関係曲線として各別に予め求めておく。前記相関関係曲線としては、図3に示すように、例えば前記抵抗11にかかる電圧の変化を第一出力として縦軸に、前記ブリッジ電圧を第二出力として横軸にとり、相関関係図を作成してあってもよいし、図4、5に示すように、前記第二出力を縦軸に、前記被検知ガスと接触したときの前記酸化スズ半導体4の抵抗値と清浄な空気が接触したときの前記酸化スズ半導体4の抵抗値との比を第一出力として横軸にとり、相関関係図を作成してあってもよい。
【0020】
次に、前記ガス検知素子を前記相関関係図を作成したガス検知条件に維持した状態で、被検知ガスを接触させたときに得られる第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果との関係を示す点を前記相関関係図上に記録する。
このとき、例えば前記点が、a点(図3参照)であったとすると、被検知ガスは水素ガスの相関関係曲線上にあるから、水素ガスであると判断でき、b点(図5参照)であったとすると、被検知ガスはエタノールの相関関係曲線上にあるから、エタノールであると判断するわけである。また、前記a点は、水素ガスの相関関係曲線における1000ppmにおける第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果との関係を示す点に一致しているから(図3中の数値は第一出力と第二出力との相関関係が得られるガス濃度を示している。)、この水素ガス濃度は1000ppmであると判断できる。尚、ガス濃度については、前記相関関係図とは別に、前記第一出力と第二出力とのいずれか一方とガス濃度との相関関係から求めてもよい。
【0021】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
所定濃度の四塩化スズの水溶液に、所定割合で塩化アンチモンを添加した水溶液を調整しておく。この水溶液にアンモニア水を滴下して水酸化スズの沈殿物を得る。前記沈殿物を水洗、乾燥後、電気炉で焼成して、酸化スズを得る。前記酸化スズを粉砕して微粉末にし、水で練って酸化スズのペーストを得る。
【0023】
また、一方、アルミナ製センサ基板1の一面に白金を主成分とする櫛形検出電極2を設けるとともに他面に白金を主成分とする抵抗部3を形成してセンサの基体を形成しておく。
【0024】
前記酸化スズのペーストを前記基体の一面の前記櫛形電極部2を覆うように塗布し、乾燥後900℃で2時間焼成して、前記基体に酸化スズ半導体層4を設けるとともに、予め0.05mol/L、0.1mol/Lの塩化パラジウム水溶液をそれぞれ調整しておき、前記酸化スズ半導体層4に、前記塩化パラジウム水溶液のそれぞれ1μLを含浸させ、前記酸化スズ半導体層4にパラジウム(金属パラジウムのみならずパラジウム酸化物を含む場合もあるが、このような状態のパラジウムを単にパラジウムと称する)を担持させてガス検知素子A、Bを得る。
あるいは、前記酸化スズのペーストを前記基体の一面の櫛形電極部2を覆うように塗布し、乾燥後1200℃で2時間焼成し、前記基体に前記酸化スズ半導体層4を設けてガス検知素子Cを得る。
【0025】
前記ガス検知素子Aのガス検知特性を調べたところ、図6に示すようになり、メタン、イソブタン、水素の順に、前記酸化スズ半導体の抵抗に大きな影響を与え、かつ、水素、イソブタン、メタンの順に、前記酸化スズ半導体の温度に大きな影響を与えるということがわかった。また、前記ガス検知素子Aを図2に示すガス検知回路10、20に組み込み、抵抗11にかかる電圧の変化を第一出力として縦軸に、前記第二ガス検知回路のブリッジ出力を第二出力として横軸にとり、前記ガス検知素子Aを470℃で作動させ、様々な濃度に調整した各種のガスを検知して、これら第一、第二出力の相関関係図を得たところ、図3に示すようになった。これにより、前記第一出力と、前記第二出力とは、ガス種によって固有の相関関係を示すという新知見が得られた。
【0026】
このような半導体式ガス検知素子の熱収支については、未だ解明されておらず、新たな知見であると言えるので、以下に上述の現象について考察する。
【0027】
還元性ガスに接した時の半導体式ガス検知素子の抵抗値変化は、以下のように説明される。例えば前記半導体式ガス検知素子を構成する金属酸化物半導体がn−型半導体である場合に、還元性ガスはその金属酸化物半導体の表面に負荷吸着し、伝導電子の運動を妨げていた表面酸素を消費するため、前記表面酸素が電子の流通を阻害する作用が減少するとともに、前記表面酸素によって拘束されていた電子が伝導電子として開放されるので、伝導電子金属酸化物半導体の抵抗値は低下する。ここで熱収支について考えると、例えば、前記酸化スズ半導体層4が厚さ1μm以下の酸化スズ薄膜である場合であっても、ガス、固体の熱伝導による放熱の寄与は無視できるほどの微量であることが確認されているため、上述の現象は金属酸化物半導体の表面酸素と還元性ガスとの反応に基づくものといえる。つまり、その金属酸化物半導体の表面から酸素吸着を解き放つ時のエネルギーの一部が前記半導体式ガス検知素子側から供給されているものと考えれば、前記半導体式ガス検知素子がエネルギーを放出して低温側にシフトするとして説明できる。
ここで、被検知ガス(還元性ガス)に生じる反応について考えると、前記被検知ガスは、主に前記半導体式ガス検知素子の表面近傍で生じる前記金属酸化物半導体の燃焼活性点での燃焼反応(発熱反応)と、金属酸化物半導体に負荷吸着している表面酸素との金属酸化物半導体に抵抗値変化をもたらす反応(見かけ上の吸熱反応)という二面性があることが容易に理解できる。そこで、例えばメタンのような燃焼性の低い被検知ガスを検知した場合、見かけ上の吸熱反応が発熱反応に勝ち、前記半導体式ガス検知素子を低温側にシフトさせ、逆に、前記半導体式ガス検知素子を高温側にシフトさせることがあるのは、例えば、水素のような燃焼性の高い被検知ガスを検知した場合に、発熱反応が見かけ上の吸熱反応に勝っているものと説明できる。
【0028】
つまり、各々のガス種が固有に有する燃焼性の差異が、先の二種の出力の相関関係にそのまま反映されるため、その相関関係は、各ガス種について固有のものとなって、二種の出力を測定してその関係を求めたときに、その関係が前記相関関係を満たすかどうかを判断すれば、そのガス種を判別することができるのである。
【0029】
また、前記ガス検知素子B,Cについても、図2に示すガス検知回路10、20に組み込み、酸化スズ半導体4が被検知ガスと接触したときの抵抗値と清浄な空気が接触したときの前記半導体式ガス検出部の抵抗値との比(ガス感度)を第一出力として横軸に、前記第二ガス検知回路のブリッジ出力を第二出力として縦軸にとり、相関関係図を作成したところ、図4、5に示すようになり、やはり、前記第一出力と、前記第二出力とは、ガス種によって固有の相関関係を示すことが判明した。
【0030】
〔別実施形態〕
以下に別実施形態を説明する。
先の実施の形態では、第一出力と第二出力との相関関係図をもってガス種を判別したが、以下のようにして前記第一出力と第二出力とから導かれる所定の関数によって得られる数値をもとに、ガス種を判別してもよい。
【0031】
たとえば先の実施例図6において前記第一出力xと第二出力yとの関係を、
【0032】
【数1】
z=x/y
【0033】
として求めると、表1に示すように、zは各ガス種ごとにある決まった範囲の数値をとり、固有の数値範囲を有するので第一出力と第二出力との相関関係をzの値として求めることが出来ることがわかる。そこで前記第一出力と第二出力との関係を、同様の被検知ガスの検知条件によって求めて得たzの値が、たとえば負の大きな値であったとすると、その被検知ガスはメタンである、あるいは、正の大きな値であれば、イソブタンであり、正の小さな値であれば水素であると判別することが出来る。
【0034】
【表1】
Figure 0003575905
【0035】
また、先の実施の形態では、前記抵抗部3をもって前記酸化スズ半導体層を加熱する加熱手段と、前記酸化スズ半導体層の温度を検出する温度検出手段とを兼ねる構成に形成したが、図7に示すように、前記抵抗部に替え、たとえば、単に前記酸化スズ半導体層を加熱するだけのヒーター5を設けて加熱手段を構成し、かつ、単に温度を検出するだけの温度検出電極部6を設けて温度検出手段を構成してあってもよく、ガス検知素子として、加熱手段、および、温度検出手段を備えてあれば、一体のものに限らず別体であってもよい。
さらに、崎の実施形態でも前記金属酸化物半導体層として酸化スズ半導体を用いたが、先に述べた知見に基づけば、還元性ガスが負荷吸着した表面酸素と見かけ上の吸熱反応を起こす、例えば酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化鉄、酸化タングステン等の他の半導体材料を用いて半導体式ガス検出部4を構成してあってもよく、さらにいえば、これら半導体材料に例えば貴金属や金属酸化物等の種々の触媒を添加した金属酸化物半導体層4から前記半導体式ガス検出部を構成してあってもよい。つまり、金属酸化物半導体層4は、材料、構造によらず用いることが出来、上述の種々の構成を半導体式ガス検出部と称する。
【0036】
尚、特許請求の範囲の項に、図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態におけるガス検知素子の概略図
【図2】実施の形態におけるガス検知回路の概略図
【図3】ガス検知素子Aのガス検知特性の相関関係図
【図4】ガス検知素子Bのガス検知特性の相関関係図
【図5】ガス検知素子Cのガス検知特性の相関関係図
【図6】ガス検知素子Aのガス検知特性をしめすグラフ
【図7】別実施形態におけるガス検知素子の概略図
【符号の説明】
4 半導体式ガス検出部
3 抵抗体

Claims (7)

  1. 半導体式ガス検出部(4)を設け、前記半導体式ガス検出部(4)を加熱する加熱手段、及び、前記半導体式ガス検出部(4)の温度を測定する温度検出手段を設けてなるガス検知素子を用い、
    前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、複数種のガス濃度に調整された複数のガス種をそれぞれ各別に接触させたときの前記半導体式ガス検出部(4)からの第一出力と、半導体式ガス検出部(4)の温度変化に伴う前記温度検出手段からの第二出力との相関関係を、前記複数のガス種について各別に予め求めておき、
    前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、被検知ガスを接触させたときに得られる第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果との関係が前記相関関係のうちの何れかを満たすときに、
    その被検知ガスが前記相関関係を与えるガス種のものであると判別するガス種判別方法。
  2. 前記第一出力と第二出力との前記相関関係を、被検知ガスの相関関係曲線図として座標平面上に求める請求項1に記載のガス種判別方法。
  3. 前記第一出力と第二出力とから導かれる所定の関数として、前記相関関係を求める請求項1に記載のガス種判別方法。
  4. 前記加熱手段と前記温度検出手段とを一つの抵抗体(3)から構成してあるガス検知素子を用いる請求項1〜3のいずれかに記載のガス種判別方法。
  5. 半導体式ガス検出部(4)を設け、前記半導体式ガス検出部(4)を加熱する加熱手段、及び、前記半導体式ガス検出部(4)の温度を測定する温度検出手段を設けてなるガス検知素子を用い、
    前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、複数種のガス濃度に調整された複数のガス種をそれぞれ各別に接触させたときの前記半導体式ガス検出部(4)からの第一出力と、半導体式ガス検出部(4)の温度変化に伴う前記温度検出手段からの第二出力と、前記被検知ガスのガス濃度との相関関係を、座標空間に求めておき、
    前記加熱手段により所定温度に設定される前記ガス検知素子に、被検知ガスを接触させたときに得られる第一出力の出力結果と、第二出力の出力結果とから被検知ガスを判別するとともに、前記ガス濃度を求めるガス濃度測定方法。
  6. 前記加熱手段と前記温度検出手段とを一つの抵抗体(3)から構成してあるガス検知素子を用いる請求項5に記載のガス濃度測定方法。
  7. 請求項2〜請求項4のいずれかに記載のガス種判別方法によってガス種を判別し、前記第一出力と第二出力とのいずれか一方とガス濃度とのガス濃度依存関係から、ガス濃度を求めるガス濃度測定方法。
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