JP3575780B2 - ギヤ付きモータを用いたアイスメーカ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減速歯車機構等のギヤ機構を有するギヤ付きモータおよびモータユニットならびにギヤ付きモータを用いたアイスメーカに関する。さらに詳しく述べれば、低速回転でしかもトルクが大きくならないようにしたギヤ付きモータ等の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、AC同期モータを採用した減速歯車機構等のギヤ機構を有するギヤ付きモータが知られている。このようなギヤ付きモータは、多種のモータユニットに採用されている。例えば、冷蔵庫内のアイスメーカや加熱調理器のターンテーブル駆動ユニット等のモータユニットにギヤ付きモータが使用されている。これは、モータの出力軸に連結される駆動部材が少々ロック(=動作停止)しても、直流モータのように電流が上昇したり発熱することがないというメリットや商用電源を使用できるというメリット等があるためである。そして、これらの同期型のギヤ付きモータは、減速機構により出力軸部分での回転数を減少させる一方、その出力軸のトルクを上げ、駆動部材を確実に動作させるようにしている。すなわち、低速回転、高トルクのモータとなっている。
【0003】
また、従来のアイスメーカには、製氷皿内の氷の氷着部分を製氷皿のヒータで少し溶かし、取り出し部材を回転させて製氷皿から貯氷室内へ氷を落とし込むように構成されるものがある。このようなアイスメーカの取り出し部材を、AC同期モータを採用したギヤ付きモータで駆動する場合、ヒータへの通電開始から所定時間後にギヤ付きモータを動作させるようにしている。このため、ギヤ付きモータの高トルク駆動により、取り出し部材が高トルクにて回転し、製氷皿の氷がスムーズに製氷皿から離され、貯氷室へ落とされるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】
従来のアイスメーカにおいては、製氷皿のヒータに通電し、氷の氷着部分を溶かしたつもりでも、氷と製氷皿との間の氷着部分が完全には溶けていない場合がある。また、スイッチ制御を簡単化するため、ヒータへの通電と同時にギヤ付きモータを動作させたい場合もある。このような各場合、モータへの通電開始当初は、取り出し部材が氷を取り出そうとしても、氷着が生じているため氷が製氷皿から離れず、取り出し部材の動作が停止させられてしまう。すなわち、ギヤ付きモータの出力軸がいわゆるロックされた状態となってしまう。すると、歯車輪列内の歯車には高トルクが加わり、欠歯してしまうことが生ずる危険性がある。
【0005】
このような危険性は、低速回転が要求されるギヤ付きモータでは、その高トルク性から常につきまとうものとなっている。このため、従来のAC同期モータを採用したギヤ付きモータは、コストをかけてその歯車の強度を強化したり、逆にその回転数を低速にさせない使い方にしたりしている。一方、ギヤ付きモータを使用するアイスメーカでは、ヒータをかけ氷を十分溶かすようにしたり、ヒータの通電制御の精度を厳しくしたり、大型のモータを採用したりして対応している。しかし、これらの対策では、コストがかかり過ぎたり、組立効率が悪くなったり、装置が大型化したり、氷が余分に溶けてしまう等の問題が生じている。また、これらの対策を施さないアイスメーカは短期に故障が生じ、寿命の短いものとなっている。
【0006】
本発明は、余分な機構を付加したり、モータ部分の形状を変えたりしないで、低速回転でしかもトルクが大きくならない同期型のギヤ付きモータおよびモータユニットを提供することを目的とする。また、本発明は、氷取り出し用の取り出し部材等の駆動部材がいわゆるロック状態となっても、歯車が損傷せず長期間安定した動作が得られるアイスメーカを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明では、製氷皿または離氷部材等製氷室内の駆動部材を動作させるギヤ付きモータを用いたアイスメーカにおいて、ロータの回転を上記駆動部材に伝達する歯車輪列に、上記ロータの回転を受けて回転する原動歯車と、この原動歯車に噛合し断続回転する従動歯車とからなる断続回転機構を設け、上記原動歯車には、上記従動歯車を動かすための歯部と、上記従動歯車を一定期間静止させると共に、その間上記従動歯車の回転を阻止させるための規制部とを設け、上記従動歯車を動かす駆動期間および上記従動歯車が上記歯車輪列を介して上記出力軸から受ける氷着による上記従動歯車に加わるトルクに抗して上記従動歯車を静止させることができる静止期間を交互に設けることにより、上記駆動部材を断続駆動すると共に、上記原動歯車の歯部を左右非対称とし、上記原動歯車の所定方向の回転時には上記従動歯車を断続回転させ、上記所定方向と反対方向の回転時には、上記従動歯車が回転せず、上記原動歯車を上記所定方向回転となるように反転させている。
【0014】
本発明のアイスメーカに使用される同期型のギヤ付きモータは、ロータの回転を歯車輪列からなるギヤ機構を介して出力軸に伝えている。そして、このロータは、起動時にはいずれの方向に回転するか決まっていない。例えば、ロータがある方向に回転し、原動歯車が所定方向に回転すると、この原動歯車に噛合し断続回転する従動歯車が間欠回転する。これにより、出力軸は、低速回転であるにもかかわらず高トルクのものとならないものにすることができる。出力軸部分が低トルクとなると、この出力軸に連結される駆動部材が動作せず、出力軸が強制的かつ一時的に停止させられても、その駆動部材を有するモータユニット内の歯車は損傷しない。
【0015】
また、本発明のアイスメーカは、いわゆる間欠駆動がなされるギヤ付きモータを有している。すなわち、ロータの回転は、原動歯車から従動歯車に伝えられ、従動歯車が断続回転する。このため、駆動部材がロック状態となっても、伝達トルクは大きなものでないため、歯車にかかるトルクも大きくならない。なお、原動歯車の歯部と従動歯車の歯とが噛合しない位置で、ロータの回転を停止させると、次のロータの起動時、ロータはなめらかに起動することとなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を図1から図18に基づき説明する。なお、最初に、図1から図13に基づき第1の実施の形態について説明する。
【0017】
このアイスメーカ1は、図1から図4に示すように、ギヤ付きモータ2と、このギヤ付きモータ2によって駆動される駆動部材となる氷取り出し部材3と、注水された水を氷に形成する製氷室部材4と、この製氷室部材4から取り出された氷を貯氷室(図示省略)へすべらせながら落とし込む氷案内部材5とから主として構成される。
【0018】
ギヤ付きモータ2は、AC小型電動機部と減速歯車輪列やカム等が組み込まれているギヤ部とから構成される。なお、このギヤ付きモータ2の詳細構造については後述する。
【0019】
氷取り出し部材3は、図2に示すように、回転軸6に、外周に突出する複数の氷かき部7が設けられている。この各氷かき部7は、その両側の補強部8によって支持され、ギヤ付きモータ2によって矢示A方向に毎回360度回転させられる。補強部8は、氷かき部7が折れたり取れたり等しないように補強する機能の他に取り出した氷を戴置させると共にすべらせて氷案内部材5側へ移動させる役目も果たすものとなっている。
【0020】
製氷室部材4は、その下部にヒータ(図示省略)が埋め込まれており、製氷室部材4内の氷を取り出し易くしている。また、製氷室部材4内には、複数の仕切り板9が設けられると共にギヤ付きモータ2が取り付けられる側と反対側に氷取り出し部材3の回転軸6を軸受けする軸受部材10が取り付けられている。氷案内部材5は、氷取り出し部材3の氷かき部7が通過する複数の通過切欠き部11と、氷がすべり落ちる複数の羽根状のすべり部12とを有している。
【0021】
ギヤ付きモータ2は、図6に示されるように、下ケース兼用のステータ基板22と、これの上面に組み合わせられる蓋ケース23と、コイルボビン24と、コイル巻線25と、ステータ基板26と、ロータ27と、減速歯車輪列からなるギヤ機構28とを備えている。
【0022】
ステータ基板22,26は、共に磁性板によって構成されており、コイルボビン24を挟み込んだ状態で固定されている。このコイルボビン24は、プラスチックなどの絶縁体で構成されており、中空円筒状の巻胴部29と、この巻胴部29の両端にそれぞれ一体的に形成されたフランジ部30とからなり、それらのフランジ部30の外側面でステータ基板22,26と接している。そして、コイル巻線25は、巻胴部29の外周に巻き付けられており、フランジ部30と一体的に成形された端子台31の端子32を介し端子カバー33から外部に突出している。
【0023】
また、ステータ基板22,26は、フランジ部30の側面に合わせられており、その中心の環状孔に沿って、櫛歯状の複数の極歯34を屈曲状態で備えている。これらの極歯34は、巻胴部29の内周に配列されており、ロータ27の外周と対向している。
【0024】
そして、ロータ27は、円形の永久磁石36とその中心位置のロータ歯車部37とで構成されており、下ケース兼用のステータ基板22と蓋ケース23との間に固定されたロータ軸35に対し回転自在に支持されている。なお、この永久磁石36は、その外周面で、交互に異極となるよう着磁されており、極歯34と隙間を形成しながら対応している。このロータ27の回転は、ロータ歯車部37のピニオン38を含むギヤ機構28を介し、出力軸39に伝達される。
【0025】
ギヤ機構28は、ピニオン38と、ピニオン38に噛合する歯車部40を有する一番歯車41と、この一番歯車41の原動歯車42と噛合する従動歯車43を有する二番歯車44と、この二番歯車44のピニオン部45と噛合する歯車部46を有する三番歯車47と、この三番歯車47のピニオン部48と噛合する歯車部49を有する四番歯車50と、この四番歯車50のピニオン部51と噛合する歯車部52を有する出力軸39とから形成される。なお、出力軸39には、回転をさらに伝達するための出力ギヤ部53が設けられている。
【0026】
これらの歯車41,44,47,50は、ステータ基板26と蓋ケース23との間に設けられた歯車軸54,55,56,57によって回転自在に支持されている。なお、この実施の形態では、各歯車41,44,47,50はいずれも複合歯車(二段歯車)となっており、平歯車よりも軸方向に厚くなっているが、これらを平歯車とすれば、ギヤ付きモータ2の厚みを薄く構成できる。
【0027】
出力軸39は、出力側の出力ギヤ部53と歯車部52と軸部とが樹脂によって一体成形されたものとなっている。そして、この出力軸39は、ステータ基板26の孔から突出したフランジ部30の軸受部58および蓋ケース23の絞り加工により突出されたラジアル軸受部59によって回転自在に支持されている。この出力軸39の出力ギヤ部53は、アイスメーカ1の氷取り出し部材3に連結される。
【0028】
一番歯車41は、歯車部40と原動歯車42とを有している。そして、図9に示すように、原動歯車42には、二番歯車44の従動歯車43と噛合する歯部60と、二番歯車44を静止させるための規制部61とが設けられている。また、この歯部60に隣接して歯形成孔62が規制部61に形成されている。なお、この実施の形態では、歯部60は1つの歯60aから形成され、歯形成孔62も1つとされている。また、原動歯車42と従動歯車43とで、断続回転機構が構成されている。また、歯部60の根元の径は、規制部61の径より小さくされている。
【0029】
なお、通常の両方向回転可能な断続回転機構の場合なら、図14に示す一番歯車65のように、歯部60には2つの歯60a,60bが設けられ歯部60が対称状に形成されるのに対し、この一番歯車41は、歯60bが切り欠かれた形状となっている。このような左右非対称の形状とすることによって、後述するように、一方向回転のみの断続回転機構となっている。
【0030】
二番歯車44は、従動歯車43とピニオン部45とを有している。そして図10に示すように、従動歯車43には、一番歯車41が図5で反時計方向に回転したとき歯部60の歯60aが入る第1嵌合部70と、その歯60aによって回転が伝達される伝達部71と、歯形成孔62に嵌入する噛合歯72と、一番歯車41が図5で時計方向に回転したとき歯部60の歯60aが入るもののそれ以上の回転を阻止する第2嵌合部73が設けられている。
【0031】
なお、一番歯車41と二番歯車44とが回転を伝達していないとき、二番歯車44の2つの噛合歯72,72に一番歯車41の規制部61の外周面が当接するため、二番歯車44は回転が阻止される状態となる。また、その状態時、二番歯車44の伝達部71の下面71aが規制部61の上面61aと対向している状態となっている。さらに、歯60aと、各噛合歯72と、伝達部71の歯60aに当接する面とは、それぞれインボリュート曲線の歯形とされているが、他の歯形曲線としても良い。
【0032】
このように構成されるアイスメーカ1およびギヤ付きモータ2の動作は、次のとおりとなる。
【0033】
冷蔵庫から製氷室部材4内の氷を取り出すように命令する信号が発せられると、アイスメーカ1の、製氷室部材4のヒータがまず通電され、製氷室部材4の底に氷着している氷部分を溶かす。一方、このヒータへの通電と同時にギヤ付きモータ2へも通電が開始される。
【0034】
コイル巻線25に通電されることによってステータ基板22,26が励磁されると、ロータ27は、磁気的相互作用によりいずれかの方向に回転する。もし、このロータ27の回転が図5で時計方向であると、一番歯車41は反時計方向に回転する。すると、図11および図12に示すように、歯60aが第1嵌合部70に入り、伝達部71に回転を伝達し、二番歯車44を時計方向に回転させる。その回転によって噛合歯72が歯形成孔62に入り、回転が継続される。歯60aが第1嵌合部70から抜け出ると、規制部61の外周面が2つの噛合歯72,72に当接し、二番歯車44は回転が阻止される。一方、一番歯車41は、回転を継続し、歯60aが再度二番歯車44に近づき、次の第1嵌合部70に入る。このようにして二番歯車44は間欠的に回転する。これによって一番歯車41から二番歯車44へ伝達される回転は、大幅に減速されることとなる。そして、このロータ27の回転は、減速歯車輪列となるギヤ機構28、すなわち歯車41,44,47,50を介し出力軸39に伝達され、被駆動部材に回転運動として伝達される。
【0035】
一方、もしこのロータ27が図5で反時計方向に回転すると、一番歯車41は時計方向に回転する。すると、図13に示すように、歯60aが第2嵌合部73に入り、伝達部71となめらかに当接し、その伝達部71を押そうとする。しかし、第2嵌合部73に隣接する噛合歯72が、規制部61の外周に突き当たるため、二番歯車44はそれ以上回転できない。この結果、ロータ27は反転する。すなわち、ロータ27は図5で時計方向に回転し始め、一番歯車41が反時計方向に回転する。そして、歯60aがその第2嵌合部73と伝達部71をはさんで反対側の第1嵌合部70に入り、回転伝達可能な状態となる。
【0036】
このように、ロータ27がいずれの方向に回転しても、一番歯車41と二番歯車44の断続回転機構によって一定方向の回転のみが伝達されることとなり、回転方向規制が可能となる。しかも、この断続回転機構によって回転が減速されて伝えられるので、従来の減速歯車輪列を有するギヤ付きモータと同様な機能を発揮するものとなる。加えて、この断続回転機構は、例えば一番歯車41の原動歯車42の歯部60の数を各種に設定することにより減速比を容易に変更できるものとなる。また、回転伝達が行われない場合、すなわち歯60aが伝達部71に突き当たるときは、歯形に沿ってなめらかに当接するので、逆転防止レバー使用時のような衝突音は発生しない。
【0037】
出力軸39が所定方向に回転し始めると、出力軸39に連結された氷取り出し部材3は、図2の矢示A方向に回転しようとする。しかしながら、ヒータの効果はすぐには出ないため、製氷室部材4内の氷は、まだ製氷室部材4の底に氷着している。このため、ギヤ付きモータ2は、いわゆるロック状態となる。しかし、モータ部がAC小型同期電動機であるため、電流の上昇や熱の発生は生じない。しかも、断続回転機構を設けているので、出力軸39は低速回転でありながら低トルクとすることができる。このため、ロック状態となっても、ギヤ機構28内の各歯車にかかるトルクは大きくならず、欠歯などの損傷が生じない。
【0038】
所定時間経過し、氷着部分が溶かされていくと、氷取り出し部材3のトルクが製氷室部材4と氷との間の氷着力を上回り、氷取り出し部材3は図2の矢示A方向に回転する。そして、製氷室部材4内の氷を貯氷室に落下させる。その後、空になった製氷室部材4へ給水する。この給水は、ギヤ付きモータ2内のカムとマイクロスイッチ(共に図示省略)によって制御される。この制御は、極めて高い精度が要求される。すなわち、制御の精度が低いと、水が製氷室部材4からあふれたり、また反対にわずかな氷しか出来なくなるためである。ここで、このギヤ付きモータ2では、カムも断続回転機構を介して動作させている。このため、給水のオフからオンへの切り替わりとオンからオフへの切り替わりのいずれか一方または両動作を、断続回転機構が動作する部分に合わせて設定することにより、精度の良い給水時間を設定することが可能となっている。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図14から図18に基づき説明する。この第2の実施の形態は、断続回転機構のみを変更したもので、他の部分は第1の実施の形態と同様な構成を有するアイスメーカ1およびギヤ付きモータ2となっている。この第2の実施の形態では、従来の断続回転機構における従動歯車側を変更することで、一方向回転を達成している。なお、説明に当たって、第1の実施の形態と同一部分は、同一符号をもって表すこととする。
【0040】
一番歯車65は、歯車部40と原動歯車42とを有している。そして、図14に示すように、原動歯車42には、二番歯車66の従動歯車43と噛合する歯部60と、二番歯車66を静止させるための規制部61とが設けられている。そして、歯部60には、歯形形成孔62を挟んで2つの歯60a,60bが設けられ歯部60が対称状に形成されている。また、原動歯車42と従動歯車43とで、断続回転機構が構成されている。また、歯部60の根元の径は、規制部61の径より小さくされている。
【0041】
二番歯車66は、従動歯車43とピニオン部45とを有している。そして図15に示すように、従動歯車43には、一番歯車65が図5で時計方向に回転したとき歯部60の歯60bが入る第2嵌合部73と、その歯60bによって回転が伝達される伝達部71と、歯形成孔62に嵌入する噛合歯72と、歯60aが入る第1嵌合部70とが設けられている。そして、この第1嵌合部70は、第2嵌合部73より広くされ、噛合歯72を中心とした左右非対称に形成されている。このため、一番歯車65が図5で反時計方向に回転したとき、図18に示すように、歯部60の歯60aは噛合するものの歯60bが噛合歯72とぶつかり、それ以上の回転が阻止され、一番歯車65は逆方向に回転し始める。一方、一番歯車65が図5で時計方向に回転すると、図16および図17に示すように、回転が伝達され、二番歯車66は断続回転する。
【0042】
なお、一番歯車65と二番歯車66とが回転を伝達していないとき、二番歯車66の2つの噛合歯72,72に一番歯車65の規制部61の外周面が当接するため、二番歯車66は回転が阻止される状態となる。また、その状態時、二番歯車66の伝達部71の下面71aが規制部61の上面61aと対向している状態となっている。さらに、歯60a,60bと、各噛合歯72と、伝達部71の歯60a,60bに当接する面とは、それぞれインボリュート曲線の歯形とされているが、他の歯形曲線としても良い。また、この第2の実施の形態は、第1の実施の形態の場合と逆方向に回転規制するものとなっているが、伝達部71の反対側、すなわち第2嵌合部73側を切り欠くことにより、第1の実施の形態と同方向の回転規制を行わせることができる。
【0043】
なお、この各実施の形態では、原動歯車42と従動歯車43とは、ともにポリアセタールからなる樹脂製となっており、一層衝突音は発生しづらいものとなっているが、金属製としても良い。また、この各実施の形態では、一番歯車41,65、二番歯車44,66、三番歯車47、四番歯車50は、共に全体がポリアセタールで形成され軽量かつ静音なものとされているが、すべてまたは一部を金属製としても良い。一方、出力軸39は、66ナイロンからなる樹脂で形成され絶縁性の面で優れたものとなっているが、これも同様に金属製としても良い。なお、組み立てミスを防止するため、この実施の形態では、一番歯車41,65と、二番歯車44,66を白色に、三番歯車47を赤色に、四番歯車50と出力軸39を灰色に、それぞれ形成しているが、従来どおりすべて同色としても良い。
【0044】
また、この各実施の形態で使用している断続回転機構は、通常の減速歯車と比べ減速比を大きくとることができると共に、同じ大きさの歯車に比べ出力軸39の回転トルクをやや小さくすることができるので、出力軸39の回転トルクをそれ程小さくさせず、回転数を大幅に減少させたいときに極めて有利となる。
【0045】
なお、上述の各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施可能である。例えば、断続回転機構を減速歯車輪列中ではなく、全体として増速となるギヤ機構中に設けても良い。さらに、歯部60を1ヶ所ではなく、2ヶ所以上の複数設けても良い。また、第1の実施の形態の歯部60の歯を1つではなく複数としても良い。
【0046】
また、ギヤ付きモータ2の回転方向規制を従来公知の逆転防止レバーを採用するようにしても良い。また、上述の各実施の形態は、モータ部分がAC同期電動機となっているが、他のモータ、例えばステッピングモータ等にギヤ機構が付いた各種のギヤ付きモータに本発明を適用することができる。
【0047】
また、アイスメーカ1としては、ヒータに通電して所定時間経過してからギヤ付きモータ2を動作させるようにしたものでも良い。この場合も、ヒータへの通電時間によっては、氷が十分溶けていないこともあり、いわゆるロック状態が生じる危険性がある。しかし、各実施の形態で示したギヤ付きモータ2を使用すれば、ギヤ機構28内の歯車が損傷することはない。
【0048】
さらに、このギヤ付きモータ2は、低速回転でかつそれ程トルクを必要とされない各種のモータユニットに適用することができる。加えて、出力軸39に連結される氷取り出し部材3等の駆動部材がいわゆるロックされてしまうような状態が発生するモータユニットに本発明のギヤ付きモータを適用すると、ロック状態が発生しても、ギヤ機構28内の歯車が損傷してしまうのを防止することができ、長寿命のモータユニットとすることができる。
【0049】
さらに、ギヤ付きモータ2内のカムとマイクロスイッチを動作させ給水を止める際、ギヤ付きモータ2への給電停止を少し遅延させることにより、断続回転機構中の原動歯車42の歯部60と、従動歯車43の歯とが噛合しない位置でロータ27の回転を停止させることができる。このようにすると、次のロータ27の起動時、歯部60と従動歯車43の歯とが噛んでいない位置で原動歯車42が回転し始めるいわゆるフリー回転となり、スムーズな起動が行われることとなる。なお、このように歯部60と従動歯車43の歯とが噛合しない位置で停止させるには、上述の遅延方法の他、ロータ27のイナーシャを利用する方法等種々の方法を採用することができる。
【0050】
さらには、断続回転機構を出力軸39に近い側の歯車部に設けるようにしても良い。このようにすると、出力軸39に連結される氷取り出し部材3の回転が加速度的動作を持つ間欠回転となり、瞬間的に大きなトルクを発生させることができるものとなる。また、アイスメーカ1の駆動部材としては、氷取り出し部材3等の離氷部材の他に、製氷皿自体をひねるひねり部材や貯氷室内の氷を砕くアイスクラッシャ等他の駆動部材を採用することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載のギヤ付きモータでは、形状を変える工夫等を行うことなく、低速回転でしかもトルクが大きくならないモータとすることができる。このため、ギヤ機構内の歯車を強度の高いものとする必要がなく、また、仮に出力軸がロックしたとしても歯車は損傷せず、モータも発熱することがない。しかも、氷点下で使用して仮にロック状態が発生したとしても、ギヤ機構内の歯車は損傷しない。
【0052】
加えて、請求項2記載の発明では、ギヤ付きモータの再起動時、いわゆるフリー回転となり、スムーズな起動を行わせることができる。
【0053】
さらに、請求項3記載のモータユニットでは、駆動部材によって出力軸が強制的にその回転を阻止される構成としているが、ギヤ機構内の歯車は損傷せず長寿命のモータユニットとすることができる。しかも、出力軸の回転が強制的に停止させられるので、その強制力が無くなったときにはすぐに出力軸が再回転でき、負荷に対してすばやい動作をさせることができるものとなる。
【0054】
また、請求項4記載のアイスメーカでは、低速回転でしかもトルクが大きくならないモータで製氷室内の駆動部材を動作させることができる。よって、製氷室内が氷点下等になって駆動部材が氷結したり、製氷室内の氷を取り出すとき、氷が製氷室に氷着して駆動部材が動作できないようになったとしても、アイスメーカ内のギヤ機構は損傷することがない。このため、長寿命のアイスメーカとすることができる。
【0055】
また、請求項5記載のアイスメーカでは、低速回転でしかもトルクが大きくならないモータで、貯氷室内の駆動部材を動作させることができる。よって、貯氷室内が氷点下等になって、駆動部材が氷結したり、貯氷室内の氷を砕くとき氷が抵抗となって十分動作できないようになったとしても、アイスメーカ内のギヤ機構は損傷することがない。このため、長寿命のアイスメーカとすることができる。
【0056】
さらに、請求項6および7記載のアイスメーカでは、モータ部分の形状を変える工夫や逆転防止レバー等の機構を付加することなく、ロータの回転を所定方向に規制することができる。このため、機構が簡略化され、生産効率の良いアイスメーカとすることができる。しかも、歯車輪列の歯車を強度の高いものとする必要がなく、また、仮に駆動部材が負荷によってロックしたとしても、アイスメーカ内の歯車は損傷せず、長寿命のアイスメーカとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態のアイスメーカの要部斜視図である。
【図2】図1のアイスメーカに使用される氷取り出し部材の斜視図である。
【図3】図1のアイスメーカに使用される製氷室部材の斜視図である。
【図4】図1のアイスメーカに使用される氷案内部材の要部斜視図である。
【図5】図1のアイスメーカに使用されるギヤ付きモータの各歯車の関係を示す平面図で、図6の矢示V方向から見てかつ蓋ケースを取り除いた要部平面図である。
【図6】図5のギヤ付きモータの断面図である。
【図7】図6の矢示V方向から見た平面図である。
【図8】図5のギヤ付きモータの各歯車の関係を示す輪列展開図である。
【図9】図5のギヤ付きモータの一番歯車の側面図である。
【図10】図5のギヤ付きモータの二番歯車の側面図である。
【図11】図5のギヤ付きモータの一番歯車から二番歯車へ回転が伝達されるときの状態を説明するための図で、噛合直前の状態を示している図である。
【図12】図5のギヤ付きモータの一番歯車から二番歯車へ回転が伝達されるときの状態を説明するための図で、噛合状態を示している図である。
【図13】図5のギヤ付きモータの一番歯車の回転が二番歯車へ伝達されないときの状態を説明するための図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態のアイスメーカに使用されるギヤ付きモータの一番歯車の側面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態のアイスメーカに使用されるギヤ付きモータの二番歯車の側面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態のアイスメーカに使用されるギヤ付きモータの一番歯車から二番歯車へ回転が伝達されるときの状態を説明するための図で、噛合直前の状態を示している図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態のアイスメーカに使用されるギヤ付きモータの一番歯車から二番歯車へ回転が伝達されるときの状態を説明するための図で、噛合状態を示している図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態のアイスメーカに使用されるギヤ付きモータの一番歯車から二番歯車へ回転が伝達されないときの状態を説明するための図である。
【符号の説明】
1 アイスメーカ
2 ギヤ付きモータ
3 氷取り出し部材(駆動部材)
4 製氷室部材
5 氷案内部材
27 ロータ
28 ギヤ機構
39 出力軸
41 一番歯車
42 原動歯車(断続回転機構の一部)
43 従動歯車(断続回転機構の一部)
44 二番歯車
60 歯部
60a 歯
61 規制部
62 歯形成孔
65 一番歯車
66 二番歯車
72 噛合歯
Claims (1)
- 製氷皿または離氷部材等製氷室内の駆動部材を動作させるギヤ付きモータを用いたアイスメーカにおいて、ロータの回転を上記駆動部材に伝達する歯車輪列に、上記ロータの回転を受けて回転する原動歯車と、この原動歯車に噛合し断続回転する従動歯車とからなる断続回転機構を設け、上記原動歯車には、上記従動歯車を動かすための歯部と、上記従動歯車を一定期間静止させると共に、その間上記従動歯車の回転を阻止させるための規制部とを設け、上記従動歯車を動かす駆動期間および上記従動歯車が上記歯車輪列を介して上記出力軸から受ける氷着による上記従動歯車に加わるトルクに抗して上記従動歯車を静止させることができる静止期間を交互に設けることにより、上記駆動部材を断続駆動すると共に、上記原動歯車の歯部を左右非対称とし、上記原動歯車の所定方向の回転時には上記従動歯車を断続回転させ、上記所定方向と反対方向の回転時には、上記従動歯車が回転せず、上記原動歯車を上記所定方向回転となるように反転させたことを特徴とするギヤ付きモータを用いたアイスメーカ。
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