JP3575522B2 - 文化財の殺虫方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、出土木材、漆器、仏像、板絵、木造建材、彫刻等の木製品、華角等の角、骨を利用した工芸品、絹、綿、麻等の織物、繊維、旗等の染織品、古本、古文書、和紙、書籍、典籍、文書、巻物等の紙資料、油彩画、水彩画、日本画、書画等の絵画、琥珀、染料、顔料、昆虫標本、植物標本、皮革、写真フィルム、写真、磁気テープ、楽器の弦など、シバンムシやイガやキクイムシ等の虫やカビ等の微生物による被害を受けたり、酸素やアルデヒドや炭酸ガスとの反応による変退色を生ずる有機物で構成される文化財や、鉄剣、銅剣、銅矛等の刀剣類、銅鐸、銅鏡、鏡、仏像、神像、人形像、動物像等の祭礼具類、首飾り、耳飾り、腕輪、足輪、冠、指輪、鎧、兜、面等の装身具類、楯、食器、金箔、貨幣、馬具、農作業具等の酸化やアルデヒドとの反応による変退色を生ずる金属製文化財等の殺虫方法、及び保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機物で構成される文化財は、それ自身が栄養源になるので、シバンムシやイガやキクイムシ等の虫や、カビ・細菌等の微生物による被害を受け易い。そのため、臭化メチルによる薫蒸が行われているが、倉庫内にいつまでも臭化メチルの臭気がこもり作業者の健康への危惧が具体化している。一方、文化財を脱酸素剤で殺虫する方法が、特開昭57−149201 、特開昭57−153874 、特開昭57−146717 、特開昭57−146606 、特開昭57−146702 、特開昭57−146701 、特開昭56−161963 、特開昭57−144207 、特開平4−29741 、特開平4−96060 、特開平4−100537、Studies in Conservation 39(1994)210−214 、2ND INTERNATIONAL CONFERENCE ON BIODETERIORATION OF CULTURAL PROPERTY(OCTOBER 5−8, 1992, Yokohama Japan)の予稿集に記載されている。
【0003】
近年、文化財を保管する際の環境基準として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド濃度が注目を集めている(文化財保存修復学会第19回大会講演要旨集p4〜p5、1997年6月7〜8日、東北芸術工科大学)。ホルムアルデヒドは展示ケースや収蔵庫壁材等から発生し、博物館内におけるホルムアルデヒド濃度は0.1ppm以下と、少ない。しかし、文化財を脱酸素剤で殺虫する場合、一般に使用される有機系の脱酸素剤、例えば、ヒドロキノン・カテコール・レゾルシン・ピロガロール等のポリフェノール類や、グルコース等の還元性糖類、アスコルビン酸やエリソルビン酸等の還元性の多価アルコール、グリセリン等の還元剤が被酸化主剤として用いられている脱酸素剤は、脱酸素反応に伴って被酸化主剤の分解副成物としてホルムアルデヒドが発生する。また、発明者らが木製文化財、書籍、染色布、プリント写真やネガフィルム、スライド、油彩画、水彩画、日本画等をガスバリヤ性の容器内に密閉保管したところ、密閉容器内のガスからホルムアルデヒドが数ppm検出され、これら文化財自身からもホルムアルデヒドが発生していることが分かった。ホルムアルデヒドは還元性物質で化学反応性が高く、発明者らが数ppmのホルムアルデヒド濃度下で数種の顔料を保存したところ、密陀僧(一酸化鉛)は黄色から緑褐色化し、ひどい場合は白色にまで変色した。
【0004】
脱酸素剤で文化財を殺虫する場合、文化財を脱酸素剤と共にガスバリヤ性の容器内に一定期間密閉保管することが不可欠である。従って、ホルムアルデヒドが脱酸素剤や文化財自身から発生する場合は、密閉することによって、却って密閉容器内にこもって、ホルムアルデヒド濃度は数ppmと博物館内の濃度の10倍以上になる。その場合、密陀僧のようなホルムアルデヒドと化学反応し変色し易い物質からなる染料や顔料等が文化財に使用されていれば、これらが変色する可能性が極めて高い。また、特に有機物で構成される文化財は、相対湿度30%RH〜50%RHの中湿度雰囲気で保管されるので、水分が存在することによりホルムアルデヒドとの化学反応がさらに促進され、変褪色等を起こし易い。
【0005】
また、ホルムアルデヒド以外にも、脱酸素反応に伴って脱酸素剤から、または有機物で構成される文化財等からは、アセトアルデヒド等の他の低級アルデヒドや、ギ酸、酢酸等の低級カルボン酸が発生する。これらはホルムアルデヒド程ではないが、やはり化学反応性があり、これらが文化財の変褪色を招く恐れも高い。
【0006】
このように、従来の脱酸素剤を用いて文化財を密閉保管することにより、殺虫や、微生物の繁殖、文化財の酸化は防止できても、脱酸素剤や文化財自身から発生してくるホルムアルデヒド等との化学反応による文化財の変退色等の悪影響を防ぐことができなかった。
【0007】
また、有機物で構成される文化財に限らず、金属、ガラスで構成される文化財等も、それらからホルムアルデヒド等が発生することはないが、脱酸素剤から発生するホルムアルデヒドと化学反応を起こし、腐食、変質する恐れがあった。
【0008】
これまで、ホルムアルデヒド等の低級アルデヒドや低級カルボン酸を吸着するために、主にゼオライトや活性炭が用いられている。しかし、ゼオライト等の水分も吸収する物は、乾燥時はホルムアルデヒドを吸着するが、中湿度域では吸着サイトをまず水の分子が覆ってしまうため、中湿度で保管すべき有機物で構成される文化財を保存する場合、有効的にホルムアルデヒドを吸着できなかった。また、これらは市販の鉄系や有機系の脱酸素剤の酸素吸収反応に必要な水分も吸収してしまい、酸素吸収速度が遅くなるなど酸素吸収性能が不安定になるので好ましくなかった。一方、活性炭は比較的中湿度雰囲気であっても有効に機能するが、ホルムアルデヒドの吸着量は少ないため、大量に必要となり好ましくなかった。
【0009】
また、アスコルビン酸系やカテコール系の脱酸素剤、及び木製の文化財自身からは炭酸ガスが発生するのだが、この炭酸ガスは相対湿度が高ければ高い程、顔料の密陀僧(一酸化鉛、PbO )や鉛丹(酸化鉛、Pb)と反応し、これらの変色を引き起こすことが新たに分かった。有機物で構成される文化財は中湿度域で保管しなければならず、また、通常の脱酸素剤は水分を保有しているので、脱酸素剤を用いて殺虫する際に密閉容器内は中湿度から高湿度になり、特に木製文化財を殺虫する場合は、炭酸ガスと反応し易い雰囲気になるという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、脱酸素剤の酸素吸収反応を阻害しない、水分を吸収しないアルデヒド吸収剤と脱酸素剤を、ガスバリア性の容器内に文化財と共に密閉することによる、アルデヒドによる変退色の恐れのない文化財の殺虫方法を提供するものである。また、新たに炭酸ガスにより、相対湿度が高ければ高い程、顔料の一種である密陀僧(一酸化鉛、PbO )や鉛丹(酸化鉛、Pb)が変色し易いことが分かり、本発明は係る変色の恐れのない文化財の殺虫方法を提供するものである。また、更に本殺虫方法によれば、殺虫後もそのまま長期保管に用いることができる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、脱酸素剤による文化財の殺虫方法に関し鋭意研究したところ、密閉容器内の酸素を取り除くことは殺虫には有効ではあるが、文化財自身や脱酸素反応に伴って脱酸素剤から発生するアルデヒドは、文化財と化学反応を起こし変退色等の悪影響を与えるため、脱酸素剤の酸素吸収反応に悪影響を与えず、使用される湿度雰囲気によって吸収能力が影響されないアルデヒド吸収剤を脱酸素剤と共に用いることが、文化財の殺虫に好適な方法であることを見出した。
【0012】
即ち、アルデヒド吸収剤(A)と脱酸素剤(B)を、文化財と共にガスバリア性の容器中に密閉することを特徴とする文化財の殺虫方法であり、アルデヒド吸収剤(A)が、多孔性物質にアミン、チオールまたはスルホン酸の少なくとも1種を担持したもので、このアミン、チオールまたはスルホン酸は−10℃〜50℃で固体であることが好ましく、更に好ましくはアミン、チオールまたはスルホン酸がアミノ基及びスルホ基を分子中に共有する4B酸、メタニル酸、2B酸、ナフチオン酸、トビアス酸、スルファニル酸、C酸、G酸、J酸、ガンマ酸、H酸、R酸またはアミノ基及びメルカプト基を共有するシスティンの少なくとも1種であるものである。また、このアミン、チオールまたはスルホン酸が、活性炭または200Å〜5000Åの平均細孔径を有する多孔性の珪酸塩に担持されていることが好ましく、その多孔性の珪酸塩が珪藻土、鹿沼土、セピオライトであることが更に好ましい。
【0013】
また、更に炭酸ガス吸収剤(C)として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、消石灰等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物を添加することによって、一部の脱酸素剤や文化財から発生する炭酸ガスを吸収し、顔料の変色を防ぐことができることを見出した。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らが鋭意研究したところ、有機系の酸素吸収剤は、被酸化主剤である有機物の酸化反応を利用するが、その酸化反応に伴って被酸化主剤が分解し、多くの反応生成物の中にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ギ酸、酢酸等の低級アルデヒドや低級カルボン酸が生成することが判明した。また、絵画や染色布等の有機物で構成される文化財の一部からは、ホルムアルデヒド等が発生していることが分かった。そのため、脱酸素剤を用いた密閉容器内では、これらから発生したホルムアルデヒドが大気中に拡散せず濃縮され、数ppm程度と通常の博物館内の濃度0.1ppm以下の10倍以上になる。たとえ数ppmであっても、ホルムアルデヒドは高い還元性を有するため、有機物で構成される文化財の顔料成分や金属文化財等と反応して、文化財の価値を低減させるため、文化財の殺虫方法として脱酸素剤を用いる場合は、ホルムアルデヒド吸収能力を有する吸収剤と共に使用することが必要である。また、アセトアルデヒド等の他の低級アルデヒドやギ酸、酢酸等の低級カルボン酸もホルムアルデヒドと同様に発生する。これらはホルムアルデヒド程ではないが文化財と反応し悪影響を及ぼす恐れがあるので、これらガスも吸収する必要がある。
【0015】
しかしながら、有機物で構成される文化財は中湿度域で保存され、また、通常の脱酸素剤は酸素吸収反応に水分を必要とするため、アルデヒド吸収剤(A)は水分を吸収せず、かつ、アルデヒドやカルボン酸吸収性能がいかなる相対湿度でも影響されないことが必要である。典型的なガス吸収剤の一つであるゼオライトは、乾燥時はアルデヒド等に対する強い吸収能力を有するが、中湿度域では水分子が吸着サイトを占めてしまい、その吸収能力を奪ってしまう。それゆえ相対湿度に関係なく、C1〜C12の低級アルデヒドガスを0.05ppm以下まで吸収でき、C1〜C9の低級カルボン酸ガスを0.05ppm以下まで吸収できる物質(本文中アルデヒド吸収剤(A)と記す)が必要である。係るアルデヒド吸収剤(A)としては、多孔性物質にアミン、チオールまたはスルホン酸の少なくとも1種を担持してなるものが好ましい。
【0016】
なお、アミン、チオールまたはスルホン酸が、本発明が実際に使用される常温付近で液体の場合は、固体に比べ蒸気圧が高く、密閉容器内に充満した係る物質が逆に保存対象物に悪影響を及ぼすおそれがあるので、係る物質は、−10〜50℃の常温付近で固体であることが好ましい。
【0017】
ここで、アミンとしては、尿素やチオ尿素やエチレン尿素等の尿素化合物、ヒドラジン化合物、ジシアンジアジド及びその酸塩、塩酸ヒドロキシアミンや硫酸ヒドロキシアミン等のヒドロキシアミン、リン酸グアニジンやスルファミン酸グアニジンや塩酸アミノグアニジン等のグアニジン塩、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、エタノールアミン等のアミノアルコール、アミノフェノール、フェニルエチルアミンやフェニルエタノールアミン等のフェニルアミン、ドーパミン等のカテコールアミン、セロトニン等のインドールアミン、2ーメチルイミダゾールや4ーメチルイミダゾール等のイミダゾール類、プトレッシン等のポリアミン、アミノ安息香酸、アミノベンゼン、アミノメチレン、メラミン、モルホリン、アニリン、フェニレンジアミン等が例示される。また、チオールとしては、アルキルメルカプタン、チオグリコール酸塩、チオグリセロール、チオサリチル酸、チオフェノール等が例示される。また、スルホン酸としては、スルフォラン、スルファミン酸、チオ硫酸塩、次亜塩素酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、フェノールスルホン酸、NW酸(4−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸)等が例示される。
【0018】
上記本発明に使用されるアミン、チオールまたはスルホン酸の中でも、アミノ基及びスルホ基を分子中に共有する4B酸(2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸)、メタニル酸(m−アミノベンゼンスルホン酸)、2B酸(4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸)、ナフチオン酸(1−ナフチルアミン−4−スルホン酸)、トビアス酸(2−アミノナフタレン−1−スルホン酸)、スルファニル酸(4−アミノベンゼンスルホン酸)、C酸(3−アミノ−6−クロロトルエン−4−スルホン酸)、G酸(7−ヒドロキシナフタレンスルホン酸)、J酸(2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸)、ガンマ酸(6−アミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸)、H酸(4−アミノ−5−ヒドロキシ2,7−ナフタレンスルホン酸)、R酸(2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸)、スルファミン酸グアニジン、またはアミノ基及びメルカプト基を分子中に共有するシステインが低級アルデヒドまたは低級カルボン酸吸収能力が高く、より好ましい。
【0019】
本発明に用いられるアルデヒド吸収剤(A)について、吸収速度を速くして、かつ、取り扱い性を向上させるため、アミン、チオールまたはスルホン酸は、多孔性物質に担持することが好ましい。多孔性物質は、アミン、チオールまたはスルホン酸などを担持することを考慮すると、アルデヒド等との接触面積ができるだけ大きくとれる比表面積の大きいもの、100m/g以上のものが好ましい。具体的には、天然パルプ、合成パルプからなる紙や合成紙、不織布、多孔フィルム、シリカゲル、アルミナ、活性炭や活性炭素繊維や骨炭やモレキュラーシービングカーボン等の活性炭類、モレキュラーシーブス等の合成ゼオライト、モルデナイトやエリオナイト等の天然ゼオライト、パーライトや活性白土等の粘土鉱物等が例示される。
【0020】
なお、有機物で構成される文化財は、中湿度雰囲気で保存する必要があり、また、一般の脱酸素剤は酸素吸収反応に水分を必要とするため、上記多孔性物質の中でもできる限り水分を吸収しないものが好ましい。多孔性物質が吸収する水分量が多いと、中湿度を保つべき密閉容器内の相対湿度を安定して中湿度域に保つことが難しくなり、文化財によっては、水分が奪われ強度が低下したり剥離が生じるなど形状が変わることがあり、また、脱酸素剤によっては脱酸素剤中の水分が奪われ酸素吸収反応が進まなくなり、酸素濃度が0.1%以下まで下がらず、殺虫、菌の繁殖や酸化を防止することができなくなるからである。但し、モルデナイト等の水分を吸着する物でも、手間がかかる難があるが、予定する文化財の保管温湿度、例えば20℃、40%RH雰囲気で保管したい場合は、あらかじめこの雰囲気下にしばらく放置して、その湿度では水分を吸放出しない平衡状態にしてやれば使用できる。なお、本文中における水分を吸放出しないとは、全くその物から水分が放出されたり、その物に水分が吸着したりしないという意味ではなく、例えば、20℃、40%RHの相対湿度を示す密閉容器内にその物を入れた場合に、その物の表面で水分が吸脱着しているが、平衡状態では密閉容器内の湿度は40%RH付近を保つという、吸着平衡を含む意味である。
【0021】
上記多孔性物質の中でも、通常安価に入手できる物はゼオライト、シリカゲル、モルデナイト、活性白土等の珪酸塩と活性炭、骨炭等の活性炭類である。しかし、珪酸塩は一般式xMO・ySiOで表され、極性分子である水分を吸着し易い。水分子の分子径は2.8Åであり、多孔性の珪酸塩の細孔径がこれに近い例えば、ゼオライト(〜10Å)、シリカゲル(10Å〜200Å)、アルミナゲル(40Å〜400Å)、活性白土(20Å〜300Å)等では、吸湿力、吸湿量はそれぞれの組成、細孔構造を反映して異なるもののの、水分子が細孔に吸着して脱着し難くなるので水分吸収性能が備わってくる。そのため、アミン、チオールまたはスルホン酸を担持する多孔性の珪酸塩の中でも、ほとんど水分を吸着しない(20℃、40%RHでの吸湿率が5wt%以下)、いわゆるマクロポア(500Å以上)付近の200Å〜5000Åの平均細孔径を有するものが好ましい。これ以上平均細孔径が大きな場合は、液体のアミン、チオールまたはスルホン酸を含浸する場合、浸み出しなどが生じてハンドリングに支障を生じる場合があり、また、平均細孔径がこれ以下の場合は、いわゆるミクロポア(20Å以下)、メソポア(20Å〜500Å)の細孔が主要となり、水分を強く吸着する傾向が強くなるからである。200Å〜5000Åの平均細孔径を有する多孔性の珪酸塩としては、珪藻土、クリストバライト、鹿沼土や味噌土やボラや軽石(浮石)等のアロフェン、セピオライト、多孔質ガラス等が例示されるが、中でも細孔容積が比較的大きく被酸化主剤を多く含浸できる珪藻土、鹿沼土、セピオライトが好ましい。また、強度を増し、被酸化主剤の含浸率に変化を与えることなく、ミクロポアをつぶして更に水分を吸収しなくなるので、これらを焼結温度以下の800℃程度で焼成したものが更に好ましい。
【0022】
一方、活性炭、活性炭素繊維、骨炭、モレキュラーシービングカーボン等の活性炭類は炭素を基本構成元素としているため、一般に非極性で、疎水性表面であり、水分は吸着し難く、40%RH以下では水分をほとんど吸着しないので好ましい。
【0023】
担持方法としては一般的な方法で良く、例えば、これらアミン、チオールまたはスルホン酸が固体の場合は水溶液にして、また水にほとんど溶けない場合はメタノール、エタノール、アセトン等の有機溶媒に溶解させた後に、多孔性物質に含浸して混合し、物質の分解温度、気化温度、融解温度以下の好ましくは50〜100℃程度で、乾燥して担持する。これらの物質が液体の場合は、そのままの状態で、あるいは有機溶媒で希釈して多孔性物質に直接含浸して混合し担持する。また、一旦個々の物質を粉砕混合し、水やアルコール等の有機溶媒と共に混練した後に成形、焼成しても良い。
【0024】
アルデヒド吸収剤(A)において、被担持物であるアミン、チオールまたはスルホン酸と担体である多孔性物質の量比は、担体100重量部に対して、被担持物が0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部である。また、アルデヒド吸収剤(A)の使用量は、保存する文化財や使用する脱酸素剤(B)から発生するアルデヒド等の量によって変わり得る。脱酸素剤(B)の酸化反応に共なって発生してくるアルデヒド等のみを対象とした場合は、被酸化物質100重量部に対して、0.01〜1000重量部、好ましくは0.1〜700重量部、更に好ましくは1〜400重量部である。
【0025】
本発明に用いられる脱酸素剤(B)の被酸化物質は、酸素と反応し吸収し得るものであれば特に限定されないが、例えば、鉄、炭化鉄等の鉄粉とハロゲン化金属等の電解質からなる組成物、その他の還元した金属粉、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、第一鉄塩等の還元性の無機塩、ヒドロキノンやカテコールやレゾルシンやピロガロール等のポリフェノール類や、グルコース等の還元性糖類、アスコルビン酸やエスコルビン酸等の還元性の多価アルコール、グリセリン等の還元剤を主たる有効成分とする組成のものを用いることができる。中でも、酸素吸収に水分を必要とせず、水分の吸放出がなく、相対湿度に関係なく安定して酸素を吸収するので、不飽和脂肪酸化合物および/または不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物が好ましい。
【0026】
本発明に用いられる脱酸素剤(B)の使用量としては、少なくとも密閉容器内を実質的に無酸素状態に保つために必要な量であり、好ましくはその量の1.1〜10倍の量である。ここで、実質的に無酸素状態とは、酸素濃度5%以下、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.1%以下をいう。また、ガスバリア性容器に文化財を封入する際に、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスで容器内を置換することは脱酸素剤の使用量の低減につながり、好ましい。
【0027】
また、本発明では、炭酸ガス吸収剤(C)を併用することが好ましい。文化財自身、例えば、木製の文化財からは炭酸ガスが多量に放出され、また、特にアスコルビン酸やエルソルビン酸、カテコールを被酸化主剤とする脱酸素剤は、脱酸素反応に伴い炭酸ガスを多く発生し、有機物で構成される文化財を保存する場合など、中湿度雰囲気で保存しなければならない場合は、炭酸として悪影響を与えるからである。例えば、顔料の一種である密陀僧(一酸化鉛、PbO)や鉛丹(酸化鉛、Pb)は相対湿度が高ければ高い程、炭酸ガスと反応し炭酸鉛に変化して変色する。炭酸ガス吸収剤(C)としては、実質、水分を吸放出せず、密閉容器内の相対湿度雰囲気に影響を与えることのない、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、消石灰等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物が例示される。炭酸ガス吸収剤(C)の使用量は、保存する文化財や使用する脱酸素剤(B)から発生する炭酸ガスの量によって変わり得るが、脱酸素剤(B)の酸化反応に共なって発生してくる炭酸ガスのみを対象とした場合は、初期の密閉容器内の酸素量1モル量に対して、0.0001〜100モル量、好ましくは0.001〜50モル量、更に好ましくは0.01〜10モル量である。
【0028】
本発明のアルデヒド吸収剤(A)と脱酸素剤(B)、または炭酸ガス吸収剤(C)は、単一剤として個々に、あるいは混合物として、適宜、粉末、顆粒、錠剤やシート状などにして用いられる。これらが、保存対象物に直接触れるのは好ましくなく、通常は紙、不織布またはプラスチック等を基材とする通気性包材に包装して使用され、同一包装体として、また各々別の包装体として使用しても良い。包装体の形態は必ずしも限定されず、目的に応じて、例えば、小袋、シート、ブリスター包装体などが挙げられる。包装体の包装材料はできる限り水分を吸放出しないものが好ましい。また、防塵対策として、上記包装体を酸素、無機ガス、炭酸ガス及び有機ガス透過性に支障を来さず、かつ包装体から発生するダストを外部に放出させない無塵包材で更に覆い、二重包装体とすることも可能である。しかし、包装体自体に防塵対策が施されている場合には、改めて無塵包材で覆う必要はない。
【0029】
本発明では、文化財と共に、アルデヒド吸収剤(A)と脱酸素剤(B)、または炭酸ガス吸収剤(C)とをガスバリア性の高い容器に密閉して保管する。ここでいうガスバリア性の高い密閉容器とは、プラスチック容器、フィルム袋、金属容器、ガラス容器である。そのガスバリア性としては、25℃、60%RHにおける酸素透過度が100cc/m・Day ・ atm 以下であり、好ましくは10cc/m・Day ・ atm 以下であり、更に好ましくは1cc/m・Day ・ atm 以下で、かつ、その40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が10g/m・ Day 以下であり、好ましくは5g/m・ Day 以下であり、更に好ましくは1g/m・ Day 以下のものである。
【0030】
プラスチックス容器、金属容器やガラス容器を用いる場合は、容器の形状は必ずしも限定されず、例えば円形でも角形でもよい。また容器は、容器開口部を蓋をして封止する容器が好ましく、容器開口部に蓋を嵌め合わせて封止する容器がより好ましい。また、容器と蓋の材質はそれぞれ異なる材料であってもよい。容器の例としては、茶筒、蓋付き金属缶、ネジ口金属缶、蓋付きプラスチック容器、ネジ口プラスチック容器、蓋付きガラス容器、ネジ口ガラス容器等が挙げられる。容器の封止部の気密性保持の為、封止部に気密性ガスケット、Oリングやパッキンを用いたり、金属箔又は金属を蒸着したプラスチックフィルムを基材とするシールテープを貼着したり、接着剤で密封したりして気密性を高めることも実用的な方法である。また缶詰め(金属缶)のように不透明な材質の容器の場合は、一部に透明なガスバリア性の材質(例えばガラス)を組み合わせて使用することも実際的な使用方法である。
【0031】
また、ガスバリヤ性容器の中でも、ガスバリア性のフィルム袋は安価で持ち運びも楽であるため最も実用性が高く、アルミニウム箔等の金属箔をラミネートしたフィルムや、酸化珪素や酸化アルミニウム等を蒸着したラミネートフィルム等が例示される。アルミ蒸着フィルム袋等の不透明袋を用いた場合で、内容物も見えた方がいい場合、その一部に透明なガスバリア性のフィルムを組み合わせて使用することも実用的な方法である。フィルム袋は、開口部をヒートシールにより密封したり、開口部の内側縁を接着剤を使用して密封してもよい。また、フィルム袋からの文化財の出し入れが頻繁で、フィルム袋を繰り返し使用する場合は、プラスチックや金属製のクリップを用いて密封することも実用的な方法である。
【0032】
【発明の効果】
文化財を、多孔性物質にチオールまたはスルホン酸の少なくとも1種を担持してなるアルデヒド吸収剤(A)脱酸素剤(B)及び炭酸ガス吸収剤(C)と共にガスバリア性の容器内に密閉することにより、密閉容器内を脱酸素雰囲気に保つと同時に、文化財や脱酸素反応に伴って発生する低級アルデヒド、低級カルボン酸を吸収して、文化財を変褪色させることなく殺虫し、そのまま長期間保存することができる。
【0033】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1の変色防止効果>
70℃の15重量%スルファニル酸ナトリウム水溶液1.0gを天然ゼオライトの一種であるモルデナイト2.0gに含浸、混合した後、20℃、40%RHで3日間風乾し、アルデヒド吸収剤(A)を調製した。次に、LPB(液状ポリブタジエン)100重量部とナフテン酸Co(Co含有量4重量%)4重量部の混合物に珪藻土を150重量部加え、混合して脱酸素剤(B)を得た。アルデヒド吸収剤(A)2.15gと脱酸素剤(B)3.0gと炭酸ガス吸収剤(C)として水酸化カルシウム0.5gの混合物を、通気性包装材料(紙/開孔ポリエチレン内寸45mm×100mm)の小袋に充填した後、小袋の周囲をヒートシールして包装体を製造した(以下「保存剤」と称す)。一方、保存対象物の文化財サンプルとして、熱水に溶かした膠と混ぜた1種の顔料を、1枚の杉木材(20mm×40mm×10mmt)の片面に平筆で塗った物を、密陀僧(一酸化鉛、99.9% 、(株)レアメタリック製)、鉛白、赤口本朱、弁柄、鉛丹、水干黄土、白緑、群青、藍の9種の顔料それぞれについて作った。続いて、保存剤と、上記顔料を塗った杉木材を、20℃、40%RHの空気500mlと共にセラミックス蒸着フィルムラミネ−トプラスチックフィルム袋(三菱ガス化学(株)製ガスバリヤ袋、商品名「PTS」、サイズ220mm×300mm、以下「透明ガスバリヤ袋」という)に封入し、この袋を20℃、40%RHの雰囲気で保存した。1ヶ月後、透明ガスバリヤ袋中の酸素濃度、相対湿度、炭酸ガス濃度をガスクロマトグラフ法にて分析し、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸の濃度を市販のガス検知管にて分析し、杉木材に塗った顔料の変色状況を目視にて観察した。その結果を表1に示す。酸素濃度は0.03%、相対湿度は初期値を維持したままで、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸は、何れも検出下限未満で、顔料は何れも変色しなかった。
【0034】
<比較例1の変色防止効果>
比較例1では、保存剤にアルデヒド吸収剤(A)と炭酸ガス吸収剤(C)を加えなかった他は実施例1と同様にして行った。この結果、アルデヒド吸収剤(A)と炭酸ガス吸収剤(C)を加えていないため、アルデヒド、炭酸ガスが検出され、密陀僧、鉛丹が変色した(表1)。
【0035】
<比較例2〜3の変色防止効果>
比較例2では、保存剤にアルデヒド吸収剤(A)として、スルファニル酸ナトリウムを添着していないモルデナイトを、比較例3は、アルデヒド吸収剤(A)として粒状活性炭を加えた他は実施例1と同様にして行った。この結果、アルデヒド吸収剤(A)として、スルファニル酸ナトリウムを添着していないモルデナイト、または粒状活性炭を加えているが、何れもアルデヒド吸収能力が低いため、アルデヒド等は完全には吸収されず透明ガスバリヤ袋内に残存して検出され、また、密陀僧、鉛丹が変色した(表1)。
【0036】
<比較例4の変色防止効果>
比較例4では、保存剤を加えなかった他は実施例1と同様にして行った。その結果、アルデヒドや炭酸ガスが検出され、密陀僧、鉛丹が変色した(表1)。このことから、杉木材サンプルからこれらガスが発生していることが分かった。
【0037】
<比較例5の変色防止効果>
比較例5では、保存剤を加えず、杉木材を透明ガスバリヤ袋に入れて密封した後に、袋内ガスを窒素置換して酸素濃度を0.1%にしてから20℃、40%RHの雰囲気で保存した他は比較例4と同様にして行った。その結果、窒素置換包装をして酸素濃度を0.1%にしても、比較例4と同様、袋内からアルデヒドや炭酸ガスが検出され、密陀僧、鉛丹が変色した(表1)。つまり、窒素置換包装しても、杉木材サンプルからこれらが発生しているので、これらガスの吸収剤を加えない限り、顔料の変色が防げないことが分かった。
【0038】
<比較例6の変色防止効果>
比較例6では、保存剤に脱酸素剤(B)を加えなかった他は実施例1と同様にして行った。その結果、実施例1と同様に顔料は何れも変色しなかった(表1)。つまり、アルデヒド吸収剤(A)、炭酸ガス吸収剤(C)で顔料の変色は防げることが分かった。
【0039】
<実施例1の殺虫効果>
殺虫効果をみるため、コクゾウの成虫20匹と被害玄米5g、または、コクゾウの卵、幼虫、蛹を含む被害玄米5gを、それぞれ内容積25mlのガラス製バイアル瓶に入れ、瓶の口をガス交換が可能なガーゼで覆った物を、実施例1と同様にして作成した保存剤と共に、20℃、40%RHの空気500mlと透明ガスバリヤ袋に封入し、これを20℃、40%RHの雰囲気で保存した。1週間及び1ヶ月後、コクゾウ成虫の生死を、袋を開封後、瓶から取り出して目視で観察、判定した。また、コクゾウの卵、幼虫、蛹の生死は、試験後、瓶を開封して卵等をそのまま飼育し、60日後までに羽化する成虫数により判定した。その羽化率は、卵、幼虫、蛹が入った瓶を単にそのまま20℃、40%RHに1週間、1ヶ月保存したものから羽化した成虫数に対する百分率で算出した。その結果を表2に示す。コクゾウ成虫は全てが1週間後に死んでおり、コクゾウの卵等の羽化率は、1週間後は30%、1ヶ月後は0%であった。
【0040】
<比較例1、比較例5の殺虫効果>
保存剤に脱酸素剤(B)のみ加えた他は実施例1と同様にした比較例1、または保存剤を加えず、窒素置換包装した比較例5の殺虫効果を表2に示す。何れも実施例1と同様の殺虫効果を示し、脱酸素剤(B)のみ、または窒素置換により酸素濃度を0.1%以下にすることで殺虫効果は十分あるということが分かった。但し、表1に示したように、酸素濃度を0.1%以下にするだけでは、顔料の変色は防止できなかった。
【0041】
<比較例4、比較例6の殺虫効果>
保存剤を加えない比較例4、脱酸素剤(B)を加えなかった他は実施例1と同様の保存剤を加えた比較例6の場合は、酸素濃度は初期21%より2〜3%しか減少せず、コクゾウ成虫の死亡率は1週間後30%、1ヶ月後70%で、コクゾウの卵等の羽化率は1週間後100%、1ヶ月後70%で、酸素濃度が0.1%の場合と異なり殺虫効果は低下した(表2)。
【0042】
<実施例2〜13>
実施例2〜13では、アルデヒド吸収剤(A)、脱酸素剤(B)、炭酸ガス吸収剤(C)を表3〜表4記載の物質に変え、変色防止効果を見るために、実施例1に用いた膠で顔料を塗った杉木材の代わりに、1つの小型シャーレに1種の顔料粉末を1.0g入れた計9種の顔料粉末を用い、また、殺虫効果は実施例1に準じて行った。変色防止効果と殺虫効果を合わせて、実施例2〜13の結果を表3〜4に示す。何れも実施例1と同様の結果であった。なお、実施例3では、LPIとは液状イソプレンオリゴマ−のことであり、触媒はトール油脂肪酸Mn(Mn含有量4重量%)を用いた。実施例4では、セピオライトは平均細孔径250Å、800℃焼成品を用い、20℃、40%RHで風乾する代わりに80℃で5時間乾燥した。実施例5では、TAとはトール油脂肪酸のことであり、珪藻土は平均細孔径1000Å、800℃焼成品を用い、20℃、40%RHで風乾する代わりに80℃で5時間乾燥した。実施例6では、多孔質ガラスは平均細孔径1000Åのものを用い、20℃、40%RHで風乾する代わりに80℃で5時間乾燥した。実施例7では、1−チオグリセロールは常温で液体で臭気があるので、0.15gを市販の活性炭素繊維2.0gに含浸し、乾燥せずにそのまま用いた。実施例8では、アセトアニリドは水に難溶なので15重量%エタノール溶液に溶かしてモルデナイトに含浸した後、20℃、40%RHで風乾した物を用いた。実施例10では、90℃の2.5重量%メラミン水溶液5gを、粒状活性炭5.0gに含浸した後、80℃で5時間乾燥した物を用いた。実施例11では、25℃の15重量%チオサリチル酸アセトン溶液を、市販の粉状活性炭に含浸して、40℃で5時間乾燥した物を用いた。実施例12では、スルフォランは常温で液体であるので、そのまま市販の骨炭2.0gに含浸して乾燥せずに用いた。
【0043】
<実施例14と比較例7>
変色防止効果、殺虫効果は何れも実施例1に準じて測定した。実施例14では、鹿沼土は平均細孔径2000Å、800℃焼成品を用い、20℃、40%RHで風乾する代わりに80℃で5時間乾燥した。また、脱酸素剤(B)として、鮮度保持剤C500(凸版印刷(株)製、アスコルビン酸系脱酸素剤)の内容物5.0gを用い、炭酸ガス吸収剤(C)として水酸化カルシウムを0.5g添加した。一方、比較例7では、鮮度保持剤C500のみを保存剤として加えた他は実施例14と同様にして行った。実施例14の結果を表5に、比較例7の結果を表6に示す。何れも相対湿度は80%RHと高かったが、実施例14ではアルデヒドや炭酸ガスは検出されず、顔料は変色しなかった。一方、比較例7では、アルデヒドや炭酸ガスが検出され、密陀僧、鉛丹が変色した。
【0044】
<実施例15と比較例8>
変色防止効果、殺虫効果は何れも実施例1に準じて測定した。実施例14では、システインは常温で液体で臭気があるので、0.15gを市販の粒状活性炭2.0gに含浸して乾燥せずそのまま用いた。また、脱酸素剤(B)としてグリセリン、活性炭、水、水酸化アルカリ、コバルト触媒の混合物であるグリセリン系脱酸素剤5.0gを用いた。また、水酸化アルカリを脱酸素剤(B)の構成成分として用いているので、別に炭酸ガス吸収剤(C)として新たに加えなかった。一方、比較例8では、グリセリン系脱酸素剤のみを保存剤として加えた他は実施例15と同様にして行った。実施例15の結果を表5に、比較例8の結果を表6に示す。その結果、何れも相対湿度は80%RHと高かったが、実施例15ではアルデヒドや炭酸ガスは検出されず、顔料は変色しなかった。一方、比較例8では、アルデヒドが検出され、密陀僧、鉛丹が変色した。
【0045】
<実施例16と比較例9>
変色防止効果、殺虫効果は何れも実施例1に準じて測定した。実施例16では、モルホリンは常温で液体で臭気があるので、0.15gを市販の紛状活性炭2.0gに含浸して乾燥せずに用い、脱酸素剤(B)としてタモツS−500Z(王子化工(株)製、カテコール系脱酸素剤)内容物3.6gを用い、炭酸ガス吸収剤(C)として水酸化カルシウムを0.5g添加した。一方、比較例9では、鮮度保持剤C500のみを保存剤として加えた他は実施例16と同様にして行った。実施例16の結果を表5に、比較例9の結果を表6に示す。実施例16ではアルデヒドや炭酸ガスは検出されず、顔料は変色しなかった。一方、比較例9では、アルデヒド、炭酸ガスが検出され、密陀僧、鉛丹が変色した。
【0046】
<実施例17と比較例10>
変色防止効果、殺虫効果は何れも実施例1に準じて測定した。実施例17では、アニリンは常温で液体で臭気があるので、0.15gを市販の骨炭2.0gに含浸して乾燥せずに用い、脱酸素剤(B)として、エージレスZ−100PT(三菱ガス化学(株)製 鉄系脱酸素剤)内容物3.3gを用い、炭酸ガス吸収剤(C)として水酸化カルシウムを0.5g添加した。一方、比較例10では、エージレスZ−100PTのみを保存剤として加えた他は実施例17と同様にして行った。実施例17の結果を表5に、比較例10の結果を表6に示す。何れも相対湿度は75%RHと高かったが、実施例17ではアルデヒドや炭酸ガスは検出されず、顔料は変色しなかった。一方、比較例10では、アルデヒド、炭酸ガスが検出され、密陀僧、鉛丹が変色した。
【0047】
【表1】
Figure 0003575522
【0048】
【表2】
Figure 0003575522
【0049】
【表3】
Figure 0003575522
【0050】
【表4】
Figure 0003575522
【0051】
【表5】
Figure 0003575522
【0052】
【表6】
Figure 0003575522

Claims (6)

  1. 多孔性物質にチオールまたはスルホン酸の少なくとも1種を担持してなるアルデヒド吸収剤(A)脱酸素剤(B)及び炭酸ガス吸収剤(C)を、文化財と共にガスバリア性の容器中に密閉することを特徴とする文化財の殺虫方法。
  2. チオールまたはスルホン酸が−10℃〜50℃で固体である物質であることを特徴とする請求項記載の文化財の殺虫方法。
  3. アルデヒド吸収剤(A)を構成する多孔性物質が、活性炭であることを特徴とする請求項記載の文化財の殺虫方法。
  4. アルデヒド吸収剤(A)を構成する多孔性物質が、200Å〜5000Åの平均細孔径を有する多孔性の珪酸塩であることを特徴とする請求項記載の文化財の殺虫方法。
  5. 200Å〜5000Åの平均細孔径を有する多孔性の珪酸塩が、珪藻土、鹿沼土又はセピオライトであることを特徴とする請求項4記載の文化財の殺虫方法。
  6. 炭酸ガス吸収剤(C)がアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物であることを特徴とする請求項1記載の文化財の殺虫方法。
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