JP3574779B2 - 感光体および画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機感光層上に主としてアモルファスカーボンの表面保護層を形成してなる感光体およびこの感光体を搭載した画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機半導体材からなる感光層により構成した、いわゆるOPC感光体(有機感光体)は高い帯電性が得られ、暗減衰が小さく、さらに長波長に対し優れた光感度が得られるという点で幅広く使用されている。しかも、OPC感光体を使用するに当って、それを加熱するヒーターを使用しないという利点もある。
【0003】
しかしながら、このOPC感光体においては、その表面の硬度が小さく、耐久性に劣るという課題がある。
【0004】
この課題を解消するために、有機半導体材からなる感光層(有機感光層)の上に炭素又は炭素を主成分とする高い硬度の耐磨耗性の被膜を積層する技術が提示されている(特公平7−27268号、特公平7−122757号、特開平1−86158号、特開平1−227161号、特許第2818881号、特許第2818882号および特許第2979070号参照)。
【0005】
このように有機感光層の上に無機材からなる表面保護層を被覆するに当たっては、下記のような特性が求められる。
▲1▼可視光透過率が高い(有機感光層への入射光量が充分に確保できる)。 ▲2▼表面に傷を受けない程度の高硬度を有する。 ▲3▼有機感光層との接着性に優れ、複写機内での実使用において、機械的接触あるいは温湿度の変化等により剥離しない。 ▲4▼無害である。 ▲5▼有機感光層との電気的整合性に優れ、残留電位、メモリー現象、さらには不整合界面での電荷の横流れ(画像流れ)が発生しない。 ▲6▼高温高湿の条件下において、画像品位が劣化せず、所謂、画像流れが発生しない。 ▲7▼有機感光層は、耐熱性に乏しい化合物からなることで、その上の被膜を常温及至100℃にておこない、有機感光層を熱劣化させない。
【0006】
最近のかかる特性の要求に対し、さまざまな技術開発がおこなわれている。たとえば、酸素原子を含有する炭化水素化合物を用いることで、そのプラズマ有機重合膜が得られることから、それでもって有機感光層上に表面保護層として積層し、これによって接着性、電気的整合性ならびに耐環境性を高める技術が提案されている(特公平7−27268号参照)。
【0007】
また、上記のように酸素原子を含有させる代わりにハロゲン原子を含有させても同等の効果が得られることが提案されている(特公平7−122757号参照)。
【0008】
さらに有機感光層上の表面保護層を、ハロゲン原子と酸素原子とを含有してなる非晶質炭化水素膜でもって構成し、これにより、耐湿性を改善した技術が提示されている(特開平1−86158号参照)。同公報によれば、非晶質炭化水素膜中に含有されるハロゲン原子の量は、全構成原子に対して0.01原子%〜50原子%、酸素原子の量は、0.01〜20原子%である。また、硬度については有機感光層が5B〜B、非晶質炭化水素膜が4H程度である。
【0009】
また、有機感光層上に、1原子%以下の窒素と2原子%以上の弗素を含有するアモルファス構造のダイヤモンド状炭素からなる表面保護層を積層し、撥水性を高めたり(特許第2979070号参照)、表面の酸素濃度が1原子%以下である有機感光層の上に、水素を30原子%以下含有する炭素又は炭素を主成分とする表面保護層を積層し、これら保護層と有機系感光層との接着性を高める技術も提案されている(特許第2818882号参照)。
【0010】
硬度については、表面保護層のビッカ−ス硬度が100〜2500kg/mm2の範囲にあり、かつ有機感光層とのビッカース硬度の差が2500 kg/mm2以下である技術が提案されている。(特許第3057165参照)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように有機感光層上にアモルファスカーボンからなる表面保護層を積層した感光体を実際使用してみると、当初予定していた耐久性は得られず、キズや剥離が発生し、メモリーが悪化し、しかも、高温高湿下にて耐刷をおこなうと、画像流れと呼ばれる画像不良が発生していた。
【0012】
このような耐久性および画像流れの発生を防止するために、表面保護層にハロゲン原子や酸素原子、窒素原子を含有させる技術が提案されているが、電子写真特性を含め、各種の特性を十分に満足する感光体は、いまだ得られていない。
【0013】
具体的には、特公平7−27268号および特公平7−122757号の各公報に記載された技術によれば、画像流れが発生し、さらに耐久による削れ量が大きくキズ等が発生していた。
【0014】
特開平1−86158号では、画像流れは改善されたが、その反面、感光体特性が低下したり(帯電能の低下、残留電位の増大等)、表面硬度が低くなり、耐久性に劣っていた。また、表面保護層にハロゲン原子と酸素原子とを双方とも含有させ、これによって、表面保護層の接着性を向上させ、さらに電子写真特性が大きく向上(光メモリーの減少)させることができるが、その反面、酸素原子の含有量が多くなることで、感光体の特性が低下していた。
【0015】
さらに特許第2979070号によれば、表面保護層の接着性を向上させるために、有機感光層表面の酸素濃度を規定する技術が提案されているが、その有機感光層の表面側の酸素量の管理が非常に難しい上に、成膜条件によっては、所要とおりの性能が得られなかった。
【0016】
また、特許第3057165号によれば、感光体の耐久性を高めるために、表面保護層の硬度及び有機感光体との硬度差を規定する技術が提案されているが、有機感光層の硬度との関連が不明確であり、かつ、硬度差の下限値がなく実際の硬度の設定が困難であった。さらに、特に柔らかい有機感光層の上に硬度差が2500kg/mm2もある表面保護層を設けると硬度差から密着性が低減し、クラック及び剥離が発生し、所要とおりの性能が得られなかった。
【0017】
本発明者は上記事情に鑑みて鋭意研究に努めたところ、有機感光層上の表面保護層に対し、酸素原子を0.0001原子%〜1.0原子%の範囲で含有し、弗素原子を0.1原子%〜25原子%の範囲で含有するアモルファスカーボンから成り、酸素原子を有機感光層と表面保護層との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設け、さらにその表面保護層の硬度が、有機感光層の硬度に比べて6倍〜60倍にすることで画像流れおよび耐久による画像劣化が生じなくなり、OPC感光体に比べて充分に耐久性の高い実用性がある電子写真感光体が提供されることを見出した。
【0018】
本発明は上記知見により完成されたものであり、その目的は優れた耐刷性が得られ、しかも、感光体加熱用のヒーターを設けない程度にまで表面の疎水性を高めて、画像流れが発生しなくなり、さらに電位特性のバラツキがなくなり、その結果、高耐久性、高性能、高信頼性の感光体を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、酸素原子を有機感光層と表面保護層との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設け、これによって、有機感光層との界面での電気整合性を高め、これによってキャリアの移動がしやすくなり、また、表面保護層内においても同様にキャリアが移動しやすくなり、その結果、光感度および残留電位の点で優れた感光体を提供することにある。
【0020】
また、本発明の目的は、本発明の感光体を装着することで、感光体用のヒーターを設けなくてもよく、これにより、構造上簡単となり、製造歩留まりが向上し、さらに部品点数が少なくなることで優れた耐久性が得られ、その結果、低コストかつ高信頼性の画像形成装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の感光体は、導電性支持体上に有機感光層と表面保護層とを順次積層した感光体であって、上記表面保護層は酸素原子を0.0001原子%〜1.0原子%の範囲で含有し、弗素原子を0.1原子%〜25原子%の範囲で含有するアモルファスカーボンから成るとともに、酸素原子を有機感光層と表面保護層との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設けて、その動的押し込み硬度を前記有機感光層の動的押し込み硬度に比べて6倍〜60倍にしたことを特徴とする。
【0022】
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、この感光体の表面に電荷を付与する帯電手段と、感光体の帯電領域に対して光照射する露光手段と、これら帯電手段と露光手段とにより感光体表面に形成された静電潜像に対してトナー像を感光体の表面に形成する現像手段と、上記トナー像を被転写材に転写する転写手段と、転写後に感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段と、転写後に残余静電潜像を除去する除電手段とを配設したことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の感光体1の積層構造であり、導電性基板2の上に前記有機半導体層である感光層3を塗布形成し、この感光層3の上にグロー放電分解法などにより表面保護層4を積層する。
【0024】
この表面保護層4は酸素原子を0.0001原子%〜1.0原子%の範囲で含有し、弗素原子を0.1原子%〜25原子%の範囲で含有するアモルファスカーボンでもって構成する。
【0025】
しかも、表面保護層4に酸素原子を含有させるに当り、酸素原子を感光層3と表面保護層4との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設けている。
【0026】
以下、導電性基板2および各層を詳述する。
導電性基板2について
導電性基板2は銅、黄銅、SUS、Al、Niなどの金属導電体、あるいはガラス、セラミックなどの絶縁体の表面に導電性薄膜を被覆したものなどがある。この導電性基板2はシート状、ベルト状もしくはウェブ状可とう性導電シートでもよく、このようなシートにはSUS、Al、Niなどの金属シート、あるいはポリエステル、ナイロン、ポリイミドなどの高分子樹脂フィルムの上にAl、Niなどの金属もしくは酸化スズ、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)などの透明導電性材料や有機導電性材料を蒸着などにより被覆して導電処理したものを用いる。
【0027】
感光層3の具体的な構成例
感光層3には、電荷輸送剤を電荷発生剤とともに同一の感光層中に分散させた単層型感光層と、電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光層とがあるが、本発明はこのいずれにも適用できる。
【0028】
単層型の感光層は、電荷発生剤、電荷輸送剤および結着樹脂を適当な有機溶媒に溶解または分散した塗工液を、塗布などの手段によって導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成される。かかる単層型の感光層は、層構成が簡単で生産性に優れている。
【0029】
電荷輸送剤としては、電子輸送剤および正孔輸送剤のうちのいずれか一方または両方が使用でき、とくに上記両輸送剤を併用した単層型の感光層は、単独の構成で正負いずれの帯電にも対応できるという利点がある。
【0030】
電子輸送剤および正孔輸送剤としては、それぞれ電荷発生剤とのマッチングがよく、電荷発生剤で発生した電子または正孔を引き抜いて、効率よく輸送できるものが望ましい。
【0031】
また、電子輸送剤と正孔輸送剤とが共存する系では、両者が電荷移動錯体を形成して、感光層全体での電荷輸送能の低下を引き起こし、感光体の感度が低下するのを防止すべく、両輸送剤の組合せについても配慮する必要がある。つまり、両輸送剤を、正孔輸送および電子輸送が効率よく起こる高濃度で同一層中に含有させても、層中で電荷移動錯体が形成されず、正孔輸送剤は正孔を、電子輸送剤は電子を、それぞれ効率よく輸送できる、電子輸送剤と正孔輸送剤との組合せを選択するのが望ましい。
【0032】
一方、積層型の感光層は、まず導電性基体上に、蒸着または塗布などの手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、ついでこの電荷発生層上に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗工液を、塗布などの手段によって塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することで構成される。また、上記とは逆に、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷発生層を形成してもよい。
【0033】
ただし、電荷発生層は、電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0034】
積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれかの帯電型となるかが選択される。
【0035】
たとえば、上記の如く、帯電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した層構成において、電荷輸送層の電荷輸送剤として正孔輸送剤を使用した場合には、感光層は負帯電型となる。この場合、電荷発生層には電子輸送剤を含有させてもよい。電荷発生層に含有させる電子輸送剤としては、電荷発生剤とのマッチングがよく、電荷発生剤で発生した電子を引き抜いて、効率よく輸送できるものが望ましい。
【0036】
一方、上記の層構成において、電荷発生層の電荷輸送剤として電子輸送剤を使用した場合には、感光層は正帯電型となる。この場合、電荷発生層には正孔輸送剤を含有させてもよい。
【0037】
[単層型の感光層3]
電子輸送剤は正孔輸送剤と電荷移動錯体を形成しないため、とくに電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用した単層型の感光層(感光層3)において好適である。
【0038】
単層型の感光層は、電子輸送剤と電荷発生剤と結着樹脂とを含有する単一の層であり、正負いずれの帯電にも対応できるが、負極性コロナ放電を用いる必要のない正帯電型で使用するのが好ましい。この単層型は、層構成が簡単で生産性に優れていること、感光層の被膜欠陥が発生するのを抑制できること、層間の界面が少ないので光学的特性を向上できること等の利点を有する。
【0039】
電子輸送剤を正孔輸送性に優れた正孔輸送剤と併用した単層型は、電子輸送剤と正孔輸送剤との相互作用が生じないため、両輸送剤を高濃度で同一の感光層中に含有させても、電子輸送および正孔輸送がそれぞれ効率よく行うことができ、より高感度の感光体を得ることができる。
【0040】
また、電子輸送剤とともに電子受容体を含有させた単層型の感光層3においては、電子輸送性能をより一層向上することができ、より高感度の感光体を得ることができる。
【0041】
単層型の感光層3において、電子輸送剤は結着樹脂100重量部に対して、5〜100重量部の範囲にて、好適には10〜80重量部にて含有するのがよい。電子輸送剤が10重量部未満の場合、残留電位が高くなり、感度が不十分になる虞があり、500重量部を越える場合は結晶化の可能性があり、感光体としての性能が十分発揮されない。
【0042】
[積層型の感光層3]
一方、積層型は電荷発生剤を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とをこの順で、あるいは逆の順で積層したものである。
【0043】
電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0044】
積層型の感光層3は、電荷発生層と電荷輸送層との形成順序と、電荷輸送層中で使用する電荷輸送剤の種類とによって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。たとえば、導電性基板2の上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した層構成において、電荷輸送層中に電子輸送剤としてキノン誘導体のような電子輸送剤を使用したときは、正帯電型の感光体になる。この場合、電荷発生層には正孔輸送剤や電子輸送剤を含有させてもよい。ここで、前記電荷輸送層に電子受容体を含有させた場合は、電子輸送性が向上するため、より高感度の積層型の感光体が得られる。
【0045】
なお、上記の層構成において、電荷輸送層中の電荷輸送剤として正孔輸送剤を使用したときは負帯電型の感光体になる。この場合、電荷発生層には電子輸送剤や電子受容体を含有させてもよい。
【0046】
積層型の感光層3においては、電荷発生剤と結着樹脂を含む電荷発生層と、電子輸送剤を含む電荷輸送層から構成される。積層型における電子輸送剤の配合割合は、単層型の場合と同様の理由で、結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部、好適には25〜100重量部がよい。
【0047】
前述のように、本発明の感光体は、単層型および積層型のいずれにも適用できるが、とくに正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の皮膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の観点から、単層型が好ましい。
【0048】
つぎに感光層3に用いられる種々の材料について説明する。
《電荷発生剤》
種々のフタロシアニン顔料、多環キノン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、スクアリリウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム染料、チオピリリウム染料、キサンテン染料、キノンイムン色素、トリフェニルメタン色素、スチリル色素、アンサンスロン系顔料、ピリリウム塩、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料等の有機光導電材料、セレン、テルル、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等の無機光導電材料があげられ、単独または2種類以上を混合して使用できる。
【0049】
《正孔輸送剤》
高い正孔輸送能を有する主々の化合物、たとえば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系の化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、スチルベン系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等があげられる。
【0050】
正孔輸送剤は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリビニルカルバゾール等の成膜性を有する正孔輸送剤を用いる場合には、結着樹脂は必ずしも必要でない。
【0051】
《電子輸送剤》
電子輸送剤としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、たとえば、ナフトキノン系化合物、ベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレンシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等があげられる。
【0052】
《結着樹脂》感光層に使用されている従来周知の樹脂を使用することができる。たとえば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
【0053】
さらに感光層3には、前記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、たとえば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、たとえばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0054】
単層型の感光層3において、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。電荷輸送剤として、電子輸送剤を含有させる場合は、結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部の割合で配合すればよい。また、正孔輸送剤を含有させる場合、正孔輸送剤の割合を結着樹脂の100重量部に対して5〜500重量部、好ましくは25〜200重量部とすればよい。さらにまた、単層型感光層3の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
【0055】
一方、積層型の感光層3において、電荷発生層を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使用することができるが、結着樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で配合するとよい。電荷発生層に正孔輸送剤あるいは電子輸送剤を含有させる場合は、それらの割合を結着樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部とするとよい。
【0056】
電荷輸送層を構成する電荷輸送剤と結着樹脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲および結晶化しない範囲で種々の割合で使用することができるが、光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂100重量部に対して、電荷輸送剤を10〜500重量部、好ましくは25〜100重量部の割合で配合するとよい。電荷輸送層に正孔輸送剤を含有させる場合は、正孔輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜80重量部とすればよい。
【0057】
単層型においては、導電性基板2と感光層3との間に、また積層型においては、導電性基板2と電荷発生層との間、導電性基板2と電荷輸送層との間または電荷発生層と電荷輸送層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層を形成してもよい。
【0058】
[感光層3の成膜方法]
このような構成の感光層3の形成方法を述べると、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂を適当な溶剤とともに、公知の方法、たとえばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
【0059】
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0060】
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性をよくするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
【0061】
表面保護層4の構成
表面保護層4については、酸素原子を0.0001原子%〜1.0原子%の含有比率でもって含み、さらに弗素原子を0.1原子%〜25原子%の含有比率でもって含む炭素または炭素を主成分とするアモルファスカーボン膜であり、そして、この膜の硬度は、有機感光層である感光層3の硬度に比べて6倍以上60倍以下に設定している。
【0062】
この点を詳しく説明すると、弗素含有量は表面保護層4を構成する各種原子の全量に対し0.1〜25原子%、好適には2〜20原子%にするとよく、0.1原子%未満の場合には画像流れが発生し、25原子%を超えると結合状態において終端部が増え、原子間のネットワークが少なくなり、C−Cというような原子間結合が減少し、これによって膜強度が弱くなり、その結果、膜削れおよびキズが発生する。
【0063】
また、弗素含有量が25原子%を超える場合には、構造およびグロー放電という製造面から必然的にむずかしく、無理に含有量を増加させようとすると、感光体特性および硬度という点にて劣る。
【0064】
酸素含有量については、表面保護層4を構成する各種原子の全量に対し0.0001〜1.0原子%、好適には0.01〜0.5原子%にするとよく、0.0001原子%未満では密着性および電気整合性が低下傾向にあり、界面から剥離したり、光メモリー特性が悪化する。
【0065】
また、酸素含有量が1.0原子%を超えると、保護層の膜質低下によるトラップ準位が増加したり、残留電位が上昇したり、帯電能が低下するなどのさまざまな感光体特性が悪化し、さらに膜密度が低下することにともなって表面硬度が低下する。
【0066】
また、本発明においては、図3〜図6に示すように酸素原子を感光層3と表面保護層4との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設ける。
【0067】
各図とも、横軸において、aは感光層3と表面保護層4との界面であり、bは表面保護層4の最表面(自由表面)である。縦軸は酸素含有量である。なお、これらの濃度勾配は一例であって、それに限定されるものではなく、その他にさまざまな濃度勾配をおこなってよい。
【0068】
このように酸素原子を感光層3と表面保護層4との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設ける場合には、表面保護層4の全体における平均酸素含有比率を0.0001〜1.0原子%、好適には0.01〜0.5原子%にすればよい。
【0069】
また、表面保護層4の硬度は、有機感光層(感光層3)の硬度に比べて6〜60倍、好適には15〜50倍にするとよく、この比率が6倍未満の場合には硬度が不充分となり、耐久性が満足できず、一方、60倍を超えると硬度差が大きすぎて表面保護層4にクラックが発生する。
【0070】
本発明にて規定する硬度については、動的押し込み硬さで評価をおこなう。この動的押し込み硬さは島津製作所製の超微小硬度計(DUH−201・202)を使用してダイナミック硬さでもって表す。
【0071】
この測定方法によれば、電磁石により圧子(三角すい圧子)を試料に押しつけ、この押圧力を0.1gf〜2gfの荷重まで一定の割合で増加させ、圧子が試料に浸入していく過程で、圧子の試料への浸入深さを自動計測するものであって、その際に生じるくぼみの大きさを顕微鏡にて測定し、塑性変形分から硬さの値を得る。
【0072】
表面保護層4の膜厚は、0.1〜2.5μmが好適である。膜厚が0.1μmより薄いと、膜削れによる耐久性が確保できなくなり、また、下地の影響を受ける。一方、膜厚が2.5μmを超えると、光透過率が悪化し、残留電位が発生する。
【0073】
かくして上記構成のように表面保護層4は酸素原子を0.0001原子%〜1.0原子%の含有比率でもって含み、さらに弗素原子を0.1原子%〜25原子%の含有比率でもって含む炭素または炭素を主成分とするアモルファスカーボン膜でもって成膜し、酸素原子を感光層3と表面保護層4との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設け、そして、この膜の硬度は、有機感光層である感光層3の硬度に比べて6倍以上60倍以下に設定したことで、優れた耐刷性が得られ、紙やトナーなどでもって削れる度合いが著しく低減し、これによって優れた耐久性が得られ、画像流れの発生しない高性能な感光体となった。
【0074】
とくに、酸素原子を感光層3と表面保護層4との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設けて、感光層3との界面での電気整合性を良好にし、これによってキャリアの移動がしやすくなり、また、表面保護層内においても同様にキャリアが移動しやすくなり、その結果、光感度および残留電位の点で優れた結果が得られる。
【0075】
また、本発明者は、このような作用効果を奏するための好適な構成要件として、感光層3と表面保護層4との界面近傍における酸素原子の濃度に対し、その界面とは反対側の表面近傍における酸素原子の濃度を1.5〜100倍、好適には4〜20倍の比率にするとよいことを繰り返しおこなった実験により確認した。
【0076】
表面保護層4の形成方法
グロー放電法により成膜形成するが、その成膜条件は、たとえば真空度0.35torr、基板温度50℃、高周波電力200Wという条件でもってプラズマ化し、有機感光層上に積層を行う。
【0077】
そのためのグロー放電用原料ガスとしては、炭化水素ガスおよび酸素化合物ガス、弗素化合物ガスが用いられ、キャリアガスとしては一般に常用される水素ガスあるいはアルゴンガス等が用いられる。
【0078】
上記炭化水素ガスには飽和炭化水素として、たとえばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ジメチルブタン、メチルヘキサン、エチルペンタン、ジメチルペンタン、トリプタン、メチルヘプタン、ジメチルヘキサン、トリメチルペンタン、イソナノン等がある。
【0079】
表面保護層4を構成するアモルファスカーボン膜の硬度は、成膜装置の形態および成膜時の条件(不純物ドープ量も含む)により変化し、たとえば、基板温度を高くする、希釈率を高くする、印加電力を高くする等で硬度が高くなる。
【0080】
アモルファスカーボン膜に酸素原子を添加するためには、酸素化合物ガスが使用される。酸素化合物としては、たとえば、酸素、オゾン、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、亜酸化炭素、等の無機化合物、水酸基、酸素を含む複素環等の官能基あるいは結合を有する有機化合物等がある。
【0081】
そして、酸素原子を感光層3と表面保護層4との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設けるには、表面保護層4を成膜形成するに当り、かかる酸素化合物ガスの導入量を漸次大きくすればよい。
【0082】
アモルファスカーボン膜に弗素原子を添加するためには、弗素化合物ガスが使用される。この弗素化合物としては、弗素、弗化水素、弗化塩素、弗化沃素等の無機化合物が用いられる。
【0083】
画像形成装置の構成
図2は本発明の感光体を搭載したプリンター構成の画像形成装置7であり、8は感光体であり、この感光体8の周面にコロナ帯電器9と、その帯電後に光照射する露光器10(LEDヘッド)と、トナー像を感光体8の表面に形成するためのトナー11を備えた現像機12と、そのトナー像を被転写材13に転写する転写器14と、その転写後に感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段15と、その転写後に残余静電潜像を除去する除電手段16とを配設した構成である。また、17は被転写材13に転写されたトナー像を熱もしくは圧力により固着するための定着器である。
【0084】
このカールソン法はつぎの(1)〜(6)の各プロセスを繰り返し経る。
(1)感光体8の周面をコロナ帯電器9により帯電する。
(2)露光器10により画像を露光することにより、感光体8の表面上に電位コントラストとしての静電潜像を形成する。
(3)この静電潜像を現像機12により現像する。この現像により黒色のトナーが静電潜像との静電引力により感光体表面に付着し、可視化する。
(4)感光体表面のトナー像を紙などの被転写材13の裏面よりトナーと逆極性の電界を加えて、静電転写し、これにより、画像を被転写材13の上に得る。
(5)感光体表面の残留トナーをクリーニング手段15により機械的に除去する。
(6)感光体表面を強い光で全面露光し、除電手段16により残余の静電潜像を除去する。
【0085】
なお、画像形成装置7はプリンターの構成であるが、露光器10に代えて原稿からの反射光を通すレンズやミラーなどの光学系を用いれば、複写機の構成の画像形成装置となる。
【0086】
また、この画像形成装置7には通常の乾式現像を用いているが、その他、湿式現像に使用される液体現像剤にも適用される。
【0087】
【実施例】
(例1)
純度99.9%のAlからなる円筒状の基板(外径30mm、長さ254mm)の上に感光層3を塗布形成し、正帯電のレーザープリンタ用にする。この感光層3は下記のとおりにて成膜した。
【0088】
電荷発生剤としてX型無金属フタロシアニン5重量部および結着樹脂としてZ型ポリカーボネイト(数平均分子量:20,000)100重量部、溶媒としてテトラヒドロフラン800重量部、正孔輸送剤として化1のジエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン100重量部をボールミルにて50時間混合、分散させて単層感光体用の塗布液を作製した。
【0089】
【化1】
【0090】
そして、この塗布液をアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、100℃で1時間乾燥させて、膜厚25μmの感光層3を形成させ、単層型とした。
【0091】
この感光層3の動的押し込み硬さは20kgf/mm2であった。ただし、保護層をつけないで測定をおこなった。
【0092】
次に表面保護層4を表1に示す成膜条件により0.5μmの厚みでカーボン(C)からなるアモルファス層を成膜形成する。NOガスは、最初に0.8sccmにて導入し、200分間で漸次増大し、最後に11sccmにまで多くしている。このようにNOガスを導入することで、図5に示すように直線的な酸素濃度勾配を設ける。
【0093】
【表1】
【0094】
この表面保護層4は動的押し込み硬さが300kgf/mm2であり、弗素原子含有量が5原子%、酸素原子の平均含有量が0.01原子%である。これらの含有量の測定については、2次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)にておこなった。
かくして得られた本発明の感光体を前記の画像形成装置7(京セラ株式会社製エコシスLS−3550、乾式現像:トナー平均粒径8μm)に搭載し、この装置7に設けられた感光体加熱用ヒーターのスイッチングを常時OFFにして、感光体加熱をおこなわなかった。そして、カールソン法で画像形成して、30万枚のランニングテストをおこない、画像流れと画質を測定したところ、画像流れが発生せず、画質についても、かぶりやスジ等がなく、実用上支障のない良好な結果が得られた。
(例2)
次に(例1)に示す感光体を作製するに当り、感光層3をまったく同一の構成にして、さらに表面保護層4については、NOガスの導入量を変え、その他の成膜条件を(例1)の感光体と同じにて設定し、各種感光体を作製した。
【0095】
すなわち、表面保護層4を成膜形成するに際し、NOガスの導入量を成膜とともに、漸次増大させたが、具体的には、酸素原子含有量は有機感光層との界面近傍の濃度を0.0001原子%に設定し、そして、図5に示すように直線的に酸素濃度を自由表面に向けて高くしている。いずれの感光体も硬度は250〜350kgf/mm2の範囲内にある。
【0096】
また、比較例として、表面保護層4の酸素原子濃度を、層厚方向にわたって一定にして、層全体における酸素濃度を0.0001原子%にした場合、さらに表面保護層4の酸素原子の初期濃度を0.0001原子%にして成膜とともに、漸次、直線的に減少させた場合を示す。これら各感光体もNOガスの導入量を制御することで、それぞれの特性の感光体が得られる。
【0097】
これら各感光体において、表面保護層に弗素原子を含有させない場合、さらにそれぞれに弗素原子を0.05〜50原子%の濃度でもって含有させることで、これら各感光体の画質および画像流れを測定したところ、表2に示すような結果が得られた。なお、同表中、酸素原子含有量は、表面保護層全体の平均値である。
【0098】
その酸素原子の平均含有量が0.0001原子%の場合には、層厚方向にわたって一定の濃度であることを示し、それ以下の平均含有量の場合には、漸次濃度を減少させ、それ以上の平均値の場合には、漸次濃度を増大させた場合を示す。
【0099】
【表2】
【0100】
画像流れは33℃、85%湿度の環境下で8時間放置し、その画質を4段階に評価し、◎印は画像変化がまったくなく、きわめて良好な画像が得られた場合であり、○印は画像変化が若干認められることもあるが、実用上支障がない場合であり、△印は一部画像が流れた場合であり、×印は全面にわたって画像が流れた場合である。
【0101】
画質も4段階にて評価し、黒ベタ、白ベタおよびハーフトーン画像にて評価し、◎印は黒ベタ濃度低下・白ベタにおいて、かぶりがまったく確認されず、またハーフトーン画像にスジがまったく発生せず、きわめて良好な画質が得られた場合であり、○印は黒ベタ濃度低下・白ベタが若干現われたり、またはハーフトーン画像にスジが若干認められることもあるが、実用上支障がない場合であり、△印はハーフトーン画像の一部にスジが発生したり、または黒ベタ濃度の低下、もしくは白ベタでのかぶりが少し発生し、実用上支障になる場合であり、×印はハーフトーン画像にスジが顕著に発生したり、または黒ベタ濃度が低下したり、もしくは白ベタにかぶりが発生し、実用にまったく適していない場合である。
表2から明らかな通り、酸素原子の平均含有量が0.0001〜1.0原子%、かつ弗素原子含有量が0.1〜25原子%にすることで、とくに酸素原子の平均含有量が0.01〜1.0原子%、かつ弗素原子含有量が0.1〜15原子%にすることで、画像流れおよび画質の双方が優れていることがわかる。とくに画質については、黒ベタ濃度低下・白ベタにおいて、かぶりがまったく確認されず、またハーフトーン画像にスジがまったく発生せず、きわめて良好な画質が得られた。
【0102】
しかし、酸素原子の平均含有量が0.0001原子%、すなわち表面保護層4の酸素原子濃度を、層厚方向にわたって一定にして、層全体における酸素濃度を0.0001原子%にした場合には、本発明の感光体に比べて画質が低下していた。
【0103】
さらに酸素原子の平均含有量が0.0001原子%未満、すなわち表面保護層の酸素原子の初期濃度を0.0001原子%にして成膜とともに、漸次、直線的に減少させた場合では光メモリーが悪く、かぶりが発生したり、一部で密着性が悪くなり、剥離が発生し、ハーフトーン画像にキズの発生も見られた。
【0104】
また、酸素原子の平均含有量が1.0原子%を超えるとトラップ準位の増加による残留電位の上昇より、黒ベタ濃度の低下が見られ、さらに、表面硬度の低下よりキズの発生も見られた。
【0105】
弗素原子含有量が0.1原子%未満では、弗素による撥水性の効果が不充分となり、画像流れを発生した。また、25原子%を超える含有量にするのは製造上難しく、無理に作製しようとするとクラックが発生したり(50原子%)、硬度が極端に低くなり(30原子%)、キズが発生した。
(例3)
(例1)に示す成膜条件に対して、NOガスの導入に当り、濃度勾配を設けるよう流量比を変えて、本発明の感光体Cを作製した。その他の成膜条件や層構成は、(例1)の感光体と同一にしている。
【0106】
NOガスは、最初に0.8sccmにて導入し、漸次増大し、最後に11sccmにまで多くしているが、本例においては、前述した図5に示すような濃度勾配でもって作製した。
【0107】
これに対し、比較例の感光体A、B、Dを作製した。感光体Aについては、表面保護層を設けない場合、感光体Bでは、NOガスの導入量を成膜中一定にしている。また、感光体Dでは、NOガスは、最初に11sccmにて導入し、50分間で漸次減少し、最後に0.8sccmにまで下げている。
【0108】
そして、各感光体について(例1)に示すように感光体特性の評価手段でもって評価したところ、表3に示すような結果が得られた。ただし、いずれの感光体A〜Dも酸素の平均含有量が0.01〜0.1原子%、弗素含有量が3〜6原子%の範囲内にある。
【0109】
【表3】
【0110】
表3に示す結果から明らかなとおり、表面保護層の酸素原子の濃度勾配が感光体特性に大きな影響を与えており、本発明の感光体Cにおいては、帯電能および光感度特性に優れ、しかも、残留電位が小さくなっていることがわかる。これら帯電能、光感度特性および残留電位について、3段階に評価し、○印は良好であり、△印はやや良好であり、×印は実用に適していないことを示す。
【0111】
本発明者は、酸素原子の濃度がフラットになっている感光体Bに比べて、表面側に高濃度である感光体Cの方が、光感度および残留電位の点で優れた結果が得られているが、その理由について、感光層3との界面での電気整合性がよく、これによってキャリアの移動がしやすくなっており、また、表面保護層内においても同様にキャリアが移動しやすくなったためであると考える。さらに、濃度勾配を逆にした感光体Dについては、光感度および残留電位が極端に悪くなり、実用上支障があるが、その点については、キャリアの移動が極端に劣化したためであると考える。
(例4)
(例3)においては、本発明の感光体Cを作製するに当り、NOガスは、最初に0.8sccmにて導入し、漸次増加させ、最後に11sccmにまで多くして、前述した図5に示すような濃度勾配でもって作製したが、これに代えて、図3、図4および図6に示すような濃度勾配でもって酸素を含有してもほぼ同じ良好な結果が得られたことを実験にて確かめた。
【0112】
詳細には、NOガスは、最初に0.8sccmにて導入し、図3に示すように指数関数的に増加させ、最後に11sccmにまで多くした感光体を作製し、その感光体特性を測定したところ、表4に示すような結果が得られた。同図中、その感光体を図3でもって表示している。
【0113】
さらにNOガスは、最初に0.8sccmにて導入し、0.8sccmで60分間成膜し、その後、図4に示すように11sccmにまで多くした感光体や、図6に示すように0.8sccmで180分間成膜させた後、最後の20分間の成膜においては徐々に11sccmまで増加させた感光体も作製し、その感光体特性を測定した。
【0114】
【表4】
【0115】
この表に示す結果から明らかなとおり、本発明の各感光体(図3、図4、図6)においては、帯電能および光感度特性に優れ、しかも、残留電位が小さくなっていることがわかる。
(例5)
(例1)の成膜条件に対して、H2ガスの導入量を変えることで、表面保護層4の動的押し込み硬さを変えた感光体を作製し、それぞれの感光体について(例1)と同様に画像流れと画質を評価測定したところ、表5〜表7に示すような結果が得られた。いずれの感光体についても、(例1)の感光体と同じく図5に示す酸素濃度勾配になっている。また、いずれの感光体も酸素含有量が0.01〜0.1原子%、弗素含有量が3〜6原子%の範囲内にある。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
これらの各表に示す結果から明らかなとおり、表面保護層の動的押し込み硬度が感光層に比べて6倍〜60倍の範囲であれば、画質および画像流れの双方が優れていることがわかる。
【0120】
しかし、6倍未満になると耐刷による削れが大きくなり、ハーフトーン画像にキズが発生する。また、60倍を超えると硬度差から密着性等が低減し、クラックおよび剥離が発生した。
【0121】
本発明者は表面保護層の硬度が同等でも削れ方が違ってくるのは、下地の感光層の硬度が影響しており、下地の感光層の硬度が低いとクッションの役目を果たし、表面保護層の硬度が低くても耐久性に問題がなくなり、よって、有機感光層と表面保護層の硬度差が耐久性向上にとって重要であると考える。
【0122】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の感光体によれば、導電性支持体上に有機感光層と表面保護層とを順次積層し、この表面保護層は酸素原子を0.0001原子%〜1.0原子%の範囲で含有し、弗素原子を0.1原子%〜25原子%の範囲で含有するアモルファスカーボンにて構成し、酸素原子を有機感光層と表面保護層との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設けて、その動的押し込み硬度を前記有機感光層の動的押し込み硬度に比べて6倍〜60倍にしたことで、優れた耐刷性が得られ、しかも、感光体加熱用のヒーターを設けない程度にまで表面の疎水性を高めて、画像流れが発生しなくなり、さらに、電位特性のバラツキがなくなり、その結果、高耐久性、高性能、高信頼性の感光体が提供できた。
【0123】
また、本発明の画像形成装置については、本発明の感光体を装着することで、感光体用のヒーターを設けなくてもよく、これにより、構造上簡単となり、製造歩留まりが向上し、さらに部品点数が少なくなることで優れた耐久性が得られ、その結果、低コストかつ高信頼性の画像形成装置が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感光体の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の概略図である。
【図3】本発明の感光体に係る表面保護層における層厚方向にわたる酸素の濃度勾配を示す線図である。
【図4】本発明の感光体に係る表面保護層における層厚方向にわたる酸素の濃度勾配を示す線図である。
【図5】本発明の感光体に係る表面保護層における層厚方向にわたる酸素の濃度勾配を示す線図である。
【図6】本発明の感光体に係る表面保護層における層厚方向にわたる酸素の濃度勾配を示す線図である。
【符号の説明】
1,8 感光体
2 導電性基板
3 感光層
4 表面保護層
7 画像形成装置
9 コロナ帯電器
10 露光器
12 現像機
14 転写器
15 クリーニング手段
16 除電手段
17 定着器
Claims (2)
- 導電性支持体上に有機感光層と表面保護層とを順次積層した感光体であって、上記表面保護層は酸素原子を0.0001原子%〜1.0原子%の範囲で含有し、弗素原子を0.1原子%〜25原子%の範囲で含有するアモルファスカーボンから成るとともに、酸素原子を有機感光層と表面保護層との界面とは反対側の表面近傍にて高濃度になるよう濃度勾配を設けて、その動的押し込み硬度を前記有機感光層の動的押し込み硬度に比べて6倍〜60倍にしたことを特徴とする感光体。
- 請求項1の感光体と、この感光体の表面に電荷を付与する帯電手段と、感光体の帯電領域に対して光照射する露光手段と、これら帯電手段と露光手段とにより感光体表面に形成された静電潜像に対してトナー像を感光体の表面に形成する現像手段と、上記トナー像を被転写材に転写する転写手段と、転写後に感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段と、転写後に残余静電潜像を除去する除電手段とを配設した画像形成装置。
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