JP3574617B2 - 焙煎小麦粉の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、カレールウ等のルウに特有のとろみを付与するための原料として用いることができる焙煎小麦粉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、小麦粉をカレーパウダーや各種調味料等を加えて加熱混合して、カレールウ等のルウ製品を製造する技術が知られている。ここで、小麦粉は、カレールウ等のルウに特有のとろみを付与する原料として使用される。また、小麦粉を油脂とともに焙煎した焙煎小麦粉を用いて、小麦粉の生っぽさを消失させることもでき、この際、小麦粉全体を均一に加熱するために、小麦粉と油脂とをほぼ同量の割合で用いるのが通常である。このような割合とすることで、両者を撹拌釜等において撹拌混合して流動性のあるペースト状混合物とし、これを流動させながら均一に加熱することを可能とするのである。しかしながら、小麦粉と同量の割合で油脂を含ませた場合には、油脂含量が多くなるため、近年の低カロリー指向、健康指向の観点から、低油脂含量のカレールウ等のルウが求められている。
一方、小麦粉に対する油脂の添加量が少ない場合(例えば、小麦粉100質量部に対し油脂30質量部を添加した場合)、撹拌釜等において撹拌混合したときに流動性のあるペースト状混合物が得られず、ボソボソとした塊状物が多数発生する。この塊状物は流動性がないため、塊状物中の小麦粉を均一に加熱することができず、小麦粉の生っぽさを完全に消失させることができない場合が多い。
また、ルウの製造において油脂を使用せずに小麦粉のみを焙煎した場合には、小麦粉の生っぽさが感じられなくなる一方、所謂はったい粉臭に似た粉っぽい臭いが感じられるといった問題が生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したような問題が解消された、カレールウ等のルウ製品の原料として特に望ましい焙煎小麦粉を製造する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、小麦粉に対して極めて少量の油脂を添加し、小麦粉中に油脂を分散させて、焙煎処理することにより、上記課題を効率的に解決することができるとの知見に基づくものである。
即ち、本発明は、小麦粉100質量部に対して油脂0.8〜5.0質量部を添加し、小麦粉中に油脂を分散させた後、焙煎処理を施すことを特徴とする焙煎小麦粉の製造方法を提供する。また、本発明は、前記製造方法により製造された焙煎小麦粉を含有し、かつ油脂含量が5質量%以下であることを特徴とするルウを提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において用いることができる小麦粉は、例えばカレールウやシチュールウ等のルウ製品にとろみを付与するために通常用いられているものであれば特に制限なく用いることができる。従って、本発明の小麦粉は、その由来品種や粒径等について特に制限されることはない。
本発明では、小麦粉100質量部に対して油脂0.8〜5.0質量部、好ましくは1.0〜3.0質量部を添加する。油脂としては、粒径が10mm以下、より好ましくは5mm以下の固形状の油脂及び/又は上昇融点が30℃以下のものを用いるのが好ましい。また、このような固形状の油脂としては、例えば、フレーカーや押し出し造粒機等を用いて、フレーク状、顆粒状に成形したもの、又はスプレードライ法等により得られる粉末油脂が挙げられる。これらのうち、粉末油脂を用いるのが好ましく、特に、粒径が1mm以下の油脂を用いることが好ましい。上昇融点が30℃以下の油脂としては、例えば、サラダ油、コーン油、大豆油、紅花油、なたね油、パーム油、綿実油、オリーブ油が挙げられ、上昇融点が20℃以下、特に10℃以下の油脂が好ましい。尚、本件明細書において使用する上昇融点は、油脂のほとんどが液相に転じ、残ったわずかの量の固相が存在するまま全体が流動を開始する温度のことをいい、用いる油脂によって変動する。
【0006】
また、小麦粉への油脂の添加は、例えば、スプレーノズルを介して噴霧により行うのが好ましい。これにより小麦粉中への油脂の分散をより確実なものとすることができる。
また、このような分散性を高めるためには、例えば、油脂の添加は、小麦粉を、例えば10〜60rpm程度で撹拌しながら行うのが好ましい。あるいは、小麦粉及び油脂を撹拌羽根を供えた混合容器内に充填しておき、該撹拌羽根を100rpm以上、好ましくは400rpm以上、より好ましくは400〜3000rpmで高速回転させることにより、小麦粉中に油脂を良好に分散させることもできる。尚、本発明においては、小麦粉及び油脂を、焙煎処理を施す際に用いるのと同一の加熱釜に充填してもよいし、あるいは、焙煎処理用加熱釜とは別の容器内に充填して油脂を分散させてから、前記加熱釜に移し替えてもよい。処理工程の簡易性から、同一の容器とするのが好ましい。混合用容器又は加熱釜は、それ自体、撹拌羽根を備えているのが好ましいが、本発明においては、これとは別のシステムに備えられた撹拌羽根により小麦粉の撹拌を行うこともできる。
【0007】
上述のようにして、小麦粉中に油脂を分散させた後、これに焙煎処理を施す。この焙煎処理は、例えば、100〜140℃、好ましくは105〜120℃で、5〜180分間、好ましくは30〜120分間加熱することにより行うことができる。この際、これらを、例えば、10〜60rpm、好ましくは20〜50rpmで撹拌しながら焙煎を行って、小麦粉の均一な加熱を達成するのがよい。
【0008】
本発明においては、上述のようにして焙煎小麦粉を製造することができる。このような焙煎小麦粉は、例えば、カレー、シチュー、ハヤシ、ハッシュドビーフ等を製造するためのルウ製品の原料として特に有用である。また、グラタン、ドリア等のグラタン類の製品の原料としても有用である。
以下、本発明の一態様である、上記焙煎小麦粉を用いた、カレールウの製造方法を例示する。
まず、上述のようにして製造した焙煎小麦粉1〜30部、カレーパウダー等の香辛料1〜20部、調味料5〜50部、水0〜20部、塩1〜10部、ショ糖やブドウ糖等の糖質1〜10部を加熱用容器内に充填して混合する。この混合物を、例えば90〜120℃で30〜240分間加熱することによりカレールウを製造することができる。尚、本発明においては、ルウ製品中の油脂含量が、5質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
このようにして得たルウ製品を用いて、常法により、各種食品を製造することができる。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、極少量の油脂を小麦粉中に添加して分散させることにより、小麦粉を焙煎する際に均一に加熱することを可能にし、焙煎小麦粉の生っぽさを消失させ、かつ、はったい粉臭のような臭いが感じられない焙煎小麦粉を製造することができる。また、上記焙煎小麦粉を用いることにより、生っぽさがなく、はったい粉臭のような臭いが感じられず、良好なとろみを有する低油脂含量のカレールウ、シチュールウ等のルウ製品を得ることができる。
【0010】
【実施例】
実施例1〜4並びに比較例1及び2
(焙煎小麦粉の製造)
斜軸撹拌釜(梶原工業社製)に小麦粉7部(2.0kg)を投入し、斜軸撹拌釜の撹拌羽根を30rpmで回転させて該小麦粉を撹拌しながら、スプレーノズルから下記の添加量でサラダ油(上昇融点0℃)を噴霧して、小麦粉中にサラダ油を分散させた(実施例1〜3並びに比較例1及び2)。
あるいは、底部と側壁部とに撹拌羽根を供えた混合容器(VERTICAL GRANULATOR FM−G25型(富士産業社製))内に小麦粉7部及び上記サラダ油0.1部を充填してから、底部の撹拌羽根を1800rpm、側壁部の撹拌羽根を400rpmで、それぞれ高速回転させて、小麦粉中にサラダ油を分散させた(実施例4)。
以上のようにして得た小麦粉及びサラダ油の混合物を、斜軸撹拌釜により、それぞれ、斜軸撹拌釜の撹拌羽根を30rpmで回転させて撹拌しながら、115℃で50分間焙煎処理することにより焙煎小麦粉を製造した。
【0011】
Figure 0003574617
【0012】
(カレーの製造)
上述のようにして製造した各焙煎小麦粉7.1部、カレーパウダー3部、調味料84.9部、塩1部、ブドウ糖4部を混合し、97℃で120分間加熱してカレールウ(油脂含量約0.3%)を製造した。このようにして製造したカレールウを用いて、常法によりカレーを製造した。
【0013】
得られたカレーの小麦粉の粉っぽさ、はったい粉臭について以下の基準により5名のパネルによる官能評価を行った。その結果(平均値)を表1に示す。
(評価基準)
5:かなり強く感じられる
4:強く感じられる
3:少し感じられる
2:ほとんど感じられない
1:全く感じられない
【0014】
表1
Figure 0003574617

Claims (6)

  1. 小麦粉100質量部に対して油脂0.8〜5.0質量部を添加し、小麦粉中に油脂を分散させた後、焙煎処理を施すことを特徴とする焙煎小麦粉の製造方法。
  2. 小麦粉を撹拌しながら、該小麦粉に油脂を噴霧することにより、小麦粉中に油脂を分散させる請求項1記載の製造方法。
  3. 撹拌羽根を供えた混合容器内に小麦粉及び油脂を充填し、該撹拌羽根を100rpm以上で高速回転させることにより、小麦粉中に油脂を分散させる請求項1記載の製造方法。
  4. 前記油脂が、粒径が10mm以下の固形状の油脂及び/又は上昇融点が30℃以下の油脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 焙煎処理を100〜140℃で5〜180分間施す請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により製造された焙煎小麦粉を含有し、かつ油脂含量が5質量%以下であることを特徴とするルウ。
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