JP3574057B2 - 無線受信システム及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無線受信システム及び方法、特にPDMA(Path Division Multiple Access)等の通信方法による無線受信において、他のユーザの干渉信号を除去する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、同一周波数において複数のチャネルを割り当て多重化する技術が知られている。
【0003】
図9には、携帯電話等に適用されているPDMA方式によるチャネル割り当ての様子が示されている。PDMAにおいては、同一周波数における1つのタイムスロットを空間的に分割し、複数のユーザのデータを伝送する。図において、横軸は時間軸であり、縦軸は空間方向(パス多重方向)である。同一周波数において時間軸方向に4つのスロットに分割され(タイムスロット1〜4)、各タイムスロットはさらに空間方向が異なる4つのパスに分割される。例えば、タイムスロット3に着目すると、チャネル3,1(タイムスロット3における第1のパス)、チャネル3,2(タイムスロット3における第2のパス)、チャネル3,3(タイムスロット3における第3のパス)、チャネル3,4(タイムスロット3における第4のパス)の4つに分割され、各チャネルに異なるユーザが割り当てられることになる。同一タイムスロット内の4つのチャネルは、指向性を有するアダプティブアレイ等の信号抽出装置を用いて互いに分離される。アダプティブアレイの基本原理は、異なる方向からの電波を複数のアンテナで受信し、各アンテナからの受信信号に最適なウエイトを掛けることで各ユーザからの信号を分離することにある。
【0004】
図10には、従来のPDMA用受信システムの構成が示されている。この図においては、ユーザ1とユーザ2とを分離するために、4本のアンテナ3〜6が設けられており、それぞれのアンテナの出力は周波数変換回路7において局部発振信号Loにより周波数変換される。周波数変換されたそれぞれの受信信号は、さらにA/D変換器8によりデジタル信号に変換され、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)10に送られる。
【0005】
DSP10には、アダプティブアレイ11,12、受信信号ベクトル計算機13、メモリ14、相関値計算機15、チャネル割当装置16が内蔵されている。アダプティブアレイ11,12は、デジタル受信信号からチャネル割当装置16で指定される特定のユーザ信号のみをそれぞれ抽出する。すなわち、アダプティブアレイ11はユーザ1の受信信号を抽出し、アダプティブアレイ12はユーザ2の受信信号を抽出する。受信信号ベクトル計算機13は、デジタル受信信号とアダプティブアレイ11,12の出力信号に基づき、全てのユーザに対応した受信信号ベクトルを計算してメモリ14に記憶する。チャネル割当装置16は、メモリ14と相関値計算機15とに対して2人のユーザ(ユーザ1とユーザ2)を指定する。相関値計算機15は、メモリ14に記憶した受信信号ベクトルのうち、指定された2人のユーザの受信信号ベクトルの相互相関値を計算する。チャネル割当装置16は、2人のユーザの受信信号ベクトルの算出された相互相関値を受け取り、相互相関値が一定値以下であればその2人のユーザを同一タイムスロットに割当て多重化する。
【0006】
このように、複数のユーザに対して同一タイムスロットを割り当てることができるが、これは複数のユーザからの受信電力強度の差が一定値以下である場合に行われる。両信号の受信電力に大きな差が存在すると、一定の利得条件下において両信号をともに復調することが困難だからである。
【0007】
図11及び図12には、従来のタイムスロット割当の様子が模式的に示されている。基地局CSとユーザ端末PS1、PS2が通信しているときに(それぞれ異なるタイムスロットで通信しているとする)、新たなユーザ端末PS3が発呼した場合を想定する。図11に示されるように、PS1、PS2とPS3の受信電力差を計算し、PS1とPS3の受信電力差の方が、PS2とPS3の受信電力差よりも大きい場合、基地局CSでは新規のユーザ端末PS3を受信電力差の小さいPS2のタイムスロットに割当て、PS2とPS3を同一タイムスロットにおいて多重化する。一方、図12に示されるように、PS1とPS3の受信電力差の方が、PS2とPS3の受信電力差よりも小さい場合、基地局CSでは新規のユーザ端末PS3を受信電力差の小さいPS1のタイムスロットに割当て、PS1とPS3を同一タイムスロットにおいて多重化する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来においては、相互相関値あるいは受信電力強度差が一定値以下の複数のユーザを同一タイムスロットに割当て、アダプティブアレイでユーザ毎に受信信号を分離抽出しているが、例えば図11に示されたように、PS2とPS3とを同一タイムスロットに割り当てた場合であって、PS2とPS3がほぼ同一方向から信号を送信してきた場合、アダプティブアレイではPS2とPS3を分離することができず、PS2のみ、あるいはPS3のみを分離することができない問題があった。
【0009】
そこで、本願出願人は、先に特願平11−290093号にて、以下のような無線受信システムを提案している。すなわち、アダプティブアレイと、ユーザの信号成分がどの程度信号に含まれているかを推定するパラメータ推定器と、入力信号からあるユーザ以外の全てのユーザの信号成分を差し引くことにより干渉信号成分を除去する演算装置とからなる干渉キャンセラを直列に複数段接続し、それぞれの段においてユーザ信号に含まれる他のユーザ信号成分の割合を段階的に減少させて、最終的に全てのユーザ毎に信号を分離抽出する。
【0010】
ところで、このような干渉キャンセラを複数段直列に接続した構成(以下、これをMIC(マルチステージ干渉キャンセラと称する))では、ある1つの段においていずれかのユーザの信号を正常に復調でき、正常に復調できたユーザの信号を受信信号から差し引いて次段のキャンセラに出力しているため、それぞれの段において少なくとも1つのユーザ信号はエラーなく復調できる必要がある。
【0011】
しかしながら、このMICにおいて従来と同様に受信電力強度差の小さいユーザを同一タイムスロットに割り当ててしまうと、ある段において全てのユーザ信号を正しく復調できる可能性がある反面、全てのユーザ信号が復調エラーとなる可能性も生じることになり、MICの機能を十分発揮できないおそれがある。すなわち、1段のみの構成であれば、全てのユーザを同時に分離することが必要となるため全てのユーザ信号を正しく復調できるような割当てを優先すべきであるが、MICのように複数段の構成ではこのような割当により復調エラーが全てのユーザ信号に生じてしまうと、干渉を順次キャンセルすることができず、ユーザ毎に信号を分離することが困難となる問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、複数のアンテナを用いて複数ユーザからの信号を受信し、ユーザ毎に確実に信号を分離して複数のユーザと通信できる装置及び方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、同一周波数における一つのタイムスロットを空間的に分割し、複数のユーザのデータを受信するPDMA方式を利用し、複数のユーザの入力信号から特定ユーザ以外の全てのユーザの入力信号成分を差し引くことにより干渉信号成分を除去する干渉キャンセラを直列に複数段接続し、それぞれの段においてユーザの入力信号に含まれる他のユーザ信号成分の割合を段階的に減少させて、全てのユーザ毎に入力信号を分離抽出する無線受信システムにおいて、該無線受信システムは、抽出すべきユーザ信号に関するチャネル割当情報を生成するチャネル割当情報生成手段と、前記チャネル割当情報に基づいて前記複数のアンテナで受信した受信信号から各ユーザ毎のユーザ信号を抽出する抽出手段と、を有し、前記チャネル割当情報生成手段は、各ユーザ毎に受信電力差がより大きくなるように抽出すべきチャネル割当情報を生成して前記抽出手段に供給し、前記チャネル割当情報に従って各ユーザを各タイムスロットに割り当てることを特徴とする。したがって、複数のアンテナからの受信信号に含まれる複数のユーザ信号から、確実に分離抽出できたユーザ信号を除去することも可能となる。
【0014】
ここで、前記チャネル割当情報生成手段は、各ユーザ間の受信電力差の少なくともいずれかが規定値を超えるように抽出すべきチャネル割当情報を生成して前記抽出手段に供給することが好適である。規定値を超えるような大なる受信電力差を生じさせることで、少なくともいずれか(具体的には最も受信電力の大きい信号)を確実に分離抽出することが可能となる。なお、規定値は例えば10dBと固定でもよく、適宜調整可能な可変値とすることもできる。許容エラーレートに応じて規定値を決定してもよい。
【0015】
また、前記抽出手段は、各ユーザ毎のユーザ信号を抽出する抽出ユニットを複数個直列に接続されて構成され、前記抽出ユニットは、少なくともいずれかのユーザ信号を抽出するとともに、抽出したユーザ信号を入力受信信号から除去して次段の抽出ユニットに供給することが好適である。各抽出ユニットを複数個直列に接続してMIC構成とした場合、各段、すなわち各抽出ユニットにおいてユーザ毎に受信電力差が生じているから、いずれかの信号(最も受信電力の大きい信号)を確実に分離抽出することができ、これにより各抽出ユニットでの干渉除去機能を効果的に発揮させることができる。
【0016】
前記チャネル割当情報生成手段は、PDMA方式により多重化されたチャネル割当情報を生成し、前記抽出手段は、前記PDMA方式により多重化されたユーザ信号から各ユーザ毎のユーザ信号を抽出することができる。
【0017】
また、本システムにおいて、前記チャネル割当情報生成手段は、一定時間毎に前記チャネル割当情報を更新することが好適である。これにより、常に最適のチャネル割当情報を生成でき、安定して複数のユーザと通信を確立できる。
【0018】
さらに、本システムにおいて、各チャネル毎に受信電力差が大きくなるようにユーザ端末の送信電力を制御する手段を有することもできる。これにより、当初は受信電力差がなくても、受信電力差を生じさせることが可能となり、適当なチャネル割当情報を生成することが可能となる。
【0019】
また、本発明は、同一周波数における一つのタイムスロットを空間的に分割し、複数のユーザのデータを受信するPDMA方式を利用し、複数のユーザの入力信号から特定ユーザ以外の全てのユーザの入力信号成分を差し引くことにより干渉信号成分を除去する干渉キャンセラを直列に複数段接続し、それぞれの段においてユーザの入力信号に含まれる他のユーザ信号成分の割合を段階的に減少させて、全てのユーザ毎に入力信号を分離抽出する無線受信システムを具備する無線受信方法であって、同一タイムスロット内での受信電力差が互いに大きくなるように複数のユーザ信号を前記タイムスロットに割り当てる割当ステップと、受信信号から前記同一タイムスロットに割り当てられユーザ信号を互いに分離する分離ステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
前記割当ステップでは、前記受信電力差の少なくともいずれかが規定値を超えるように前記複数のユーザを前記同一タイムスロットに割り当てることが好適である。
【0021】
また、前記割当ステップでは、割当可能な複数のタイムスロットが存在する場合に、前記受信電力差がより大きくなるように複数のユーザ信号を同一タイムスロットに割り当てることが好適である。
【0022】
本方法において、前記分離ステップでは、前記受信信号から前記同一タイムスロットに割り当てられたユーザ信号を複数段にわたって順次分離して復調し、復調されたユーザ信号を受信信号から順次除去することが好適である。
【0023】
本方法において、前記割当ステップは、所定周期で繰り返し実行することができる。
【0024】
また、本方法において、前記受信電力差が大きくなるようにユーザ端末の送信電力を制御するステップをさらに有することもできる。
【0026】
まず、本実施形態の前提となるMICを用いた受信システムについて説明する。図1には、MICを用いた受信システムの構成が示されている。4本のアンテナ3〜6、周波数変換器7、及びA/D変換器8が設けられ、A/D変換器8から出力された入力信号ベクトルX1(t)は第1段目の演算装置101と、第1段目のアダプティブアレイAA11〜AAm1と、第1段目のパラメータ推定器PE11〜PEm1に送られる。
【0027】
アダプティブアレイAA11〜AAm1からは対応するユーザの信号成分を最も強く含む複素信号であるユーザ信号Y11〜Ym1がそれぞれ出力され、第1段目の演算装置101に送られ、また対応する検波器(復調器)DE11〜DEm1で検波(復調)される。
【0028】
パラメータ推定器PE11〜PEm1は、それぞれ入力ベクトル信号X1(t)と検波出力(復調出力)とに基づき対応するユーザの受信信号係数ベクトルH11〜Hm1を推定し、第1段目の演算装置101に送る。パラメータ推定器PE11〜PEm1は、対応するユーザの信号成分が入力信号ベクトルにどの程度含まれているか、対応するユーザの信号成分が入力信号ベクトルに対してどの程度位相回転しているか、などを推定する。
【0029】
第1段目の演算装置101は、各ユーザi(i=1〜m)毎に、入力信号ベクトルX1(t)から当該ユーザiを除く他の全てのユーザの信号成分を差し引くことにより干渉信号成分を除去し、当該ユーザiの入力信号ベクトルXi2(t)を算出して出力する。但し、復調器DE11〜DEm1で復調エラーが生じた場合、その信号を干渉信号成分として入力信号ベクトルから差し引かない。
【0030】
仮に、復調エラーが生じた信号を用いて干渉成分を除去した場合、復調エラーがそのまま次段の入力信号に影響を与えてしまうからである。演算装置101は、全てのユーザ毎に入力信号X12(t)〜Xm2(t)を算出し、第2段目のアダプティブアレイAA12〜AAm2に送る。
【0031】
第2段目のアダプティブアレイ、パラメータ推定器、検波器、演算装置の動作も第1段目の動作と同様であり、各段毎にユーザiを除く全てのユーザの信号成分を差し引いていく。
【0032】
したがって、第L段目の演算装置10Lを通過した入力信号X1(L+1)(t)〜Xm(L+1)(t)には、他のユーザの信号成分が十分除去されており、最後のアダプティブアレイ及び検波器からなる分離部200により、ユーザ毎に信号を分離して出力することが可能となる。
【0033】
なお、復調エラーが生じず、正常に復調できたユーザ信号については、もはや干渉成分をキャンセルする必要がないので次段のキャンセラに信号を送らなくてもよい。例えば、図1においてユーザ1について信号を分離できた場合、演算装置101はX12(t)は出力せず、X22(t)〜Xm2(t)を次段のアダプティブアレイに出力し、これらの信号について干渉成分を順次除去すればよい。
【0034】
ところで、既述したように、受信電力差が小さいユーザ信号が同一タイムスロットに割り当てられている場合、例えば第1段目のキャンセラにおいて全てのユーザ信号に復調エラーが生じると、次段に与える信号が生成できなくなり、ユーザ毎に信号を分離できなくなる。
【0035】
そこで、本実施形態では、このようなMIC構造を前提としつつ、さらにユーザの割当を調整することでユーザ毎の信号を確実に分離できるようにしている。
【0036】
図2には、本実施形態に係る無線受信システムの構成が示されている。基本的には図1に示された構成と同様であるが、本実施形態ではチャネル割当の方法が異なる。具体的には、各段におけるパラメータ推定器PEからのユーザ信号の受信信号係数Hを記憶するメモリ202、記憶された受信信号係数に基づいて各ユーザ信号の受信電力を算出する受信信号電力計算機204、算出された受信信号電力を記憶するDPRAM206及び受信信号電力に基づいてチャネル割当を決定するチャネル選択部208を有し、従来のように受信電力差の小さいユーザ信号を同一タイムスロットに割り当てるのではなく、その逆に受信電力差の大きいユーザ信号を同一タイムスロットに割り当てるように設定し、各段のアダプティブアレイに指示する。なお、受信信号電力計算機204では、各受信信号係数Hから、P=H2 によりユーザ毎の受信電力を計算できる。また、チャネル選択部208で決定されたチャネル割当情報は各段のアダプティブアレイに供給され、各段のアダプティブアレイで指定されたユーザ信号が抽出される。
【0037】
図3には、チャネル割当情報生成手段として機能するチャネル選択部208での割当処理フローチャートが示されている。まず、各タイムスロットに接続中のユーザ数を確認する(S101)。図9に示されるような構成の場合、4個のタイムスロットのそれぞれについて現在のユーザ数を確認する。そして、1層目、すなわちパス多重方向の第1方向に着目し、現在のところ空きが存在するか否かを判定する(S102)。1層目に空きがある場合には、新規に発呼してきたユーザに対しては1層目が空いているタイムスロットを割り当てる(S103)。すなわち、可能であれば複数のユーザをそれぞれ異なるタイムスロットに割り当てるようにする。一方、1層目のタイムスロットがすでに埋まっており、空きがない場合には。次に2層目に空きがあるか否かを判定する(S104)。2層目に空きがあるタイムスロットが1個だけ存在する場合には、複数のユーザを出来るだけ異なるタイムスロットに割り当てるとのアルゴリズムにしたがい、新規に発呼してきたユーザに対してはその空きのあるタイムスロットを割り当てる(S105)。2層目に空きのあるタイムスロットが2個以上存在する場合には、2個の空きがあるタイムスロットのうち、いずれに割当てるのが最適であるかを受信信号電力計算機204で算出された受信電力に基づいて決定する。すなわち、2層目に空きがある全タイムスロットの1層目に既に割り当てられているユーザの受信電力Pと新規に発呼してきたユーザの受信電力Pnewとの差Pdiffをそれぞれ算出する(S106)。例えば、2層目に空きがあるタイムスロットが第2タイムスロット及び第3タイムスロットであり、それぞれのタイムスロットの1層目に既にユーザ2及びユーザ3が割り当てられている場合、ユーザ2の受信電力P2と新規ユーザの受信電力Pnewとの差P2−Pnew、及びユーザ3の受信電力P3と新規ユーザの受信電力Pnewとの差P3−Pnewとを算出する。そして、2層目に空きが存在するタイムスロットのうち、Pdiffが最も大きい、つまり受信電力が互いに最も異なるタイムスロットの2層目を選択し、新規ユーザを割り当てる(S107)。上述の例で云えば、P2−Pnew<P3−Pnewであれば、ユーザ3が割り当てられている第3タイムスロットの2層目に新規ユーザを割り当てる。
【0038】
新規ユーザを受信電力差の大きいタイムスロットに割り当てると、そのタイムスロット内においてユーザ信号を互いに識別しようとする場合、受信電力の大きい信号は復調が容易であり、したがってMICの各段において受信信号の大きい信号を少なくとも1つは確実に復調されることとなり、このユーザ信号を用いて入力信号から干渉成分を除去することが可能となる。
【0039】
一方、全てのタイムスロットで2層目に空きが存在しない場合、チャネル選択部208は図4の処理にしたがって割り当てる。すなわち、層を示すパラメータNを3に設定し(S201)、N層目(つまり3層目)に空きの存在するタイムスロットが存在するか否かを判定する(S202)。3層目に空きが存在するタイムスロットが1個だけ存在する場合には、2層目における処理S104、S105と同様に、できるだけ異なるタイムスロットに割り当てるアルゴリズムにしたがい3層目に空きのある当該タイムスロットに新規ユーザを割り当てる(S203)。
【0040】
一方、3層目に空きのあるタイムスロットが2個以上存在する場合には、3層目に空きがある全タイムスロットの1層目、2層目に割り当てられているユーザの受信電力Piと新規ユーザの受信電力Pnewとの差Pidiffをそれぞれ算出する(S204)。例えば、第2、第3タイムスロットの3層目に空きがあり、第2タイムスロットの1、2層目にはそれぞれユーザ1,2が割り当てられ、第3タイムスロットの1、2層目にはそれぞれユーザ3、4が割り当てられている場合、P1−Pnew、P2−Pnew、P3−Pnew、P4−Pnewを算出する。そして、全てのPidiffについて規定値を超えているか否か、つまり受信電力の差が大きいか否かを判定する(S205)。規定値は、例えば10dBとすることができる。そして、割り当てたユーザ全てについて受信電力差が規定値を超えているタイムスロットが存在する場合、そのタイムスロットに新規ユーザを割り当てる(S206)。例えば、第2タイムスロットについて、P1−Pnew及びP2−Pnewのいずれもが規定値を超えている場合には、第2タイムスロットに新規ユーザを割り当てる。この場合、ユーザ1、ユーザ2、新規ユーザの受信電力がそれぞれ大きく異なることになり、MICの各段においていずれかのユーザ信号(最も受信電力の大きい信号)を確実に復調して入力信号から差し引き、次段の信号を生成することができる。また、割り当てたユーザ全てについて受信電力差が規定値を超えていない場合には、規定値を超えているユーザ数が最も多いタイムスロットを選択して新規ユーザを割り当てる(S207)。例えば、第2タイムスロットについてはP1−Pnew及びP2−Pnewのいずれもが規定値以下であり、第3タイムスロットについてはP3−Pnewは規定値以下であるがP4−Pnewは規定値を超える場合、第3タイムスロットに新規ユーザを割り当てる。これにより、新規ユーザが割り当てられたタイムスロットでは、少なくともいずれかのユーザの受信電力は他の受信電力よりも規定値を超えて大きくなるから、このユーザ信号を復調して入力信号から差し引き、MICの次段の信号を生成することができる。なお、3層目に空きの存在するタイムスロットのいずれにおいても全ユーザの受信電力差が規定値以下である場合には、3層目に空きのある任意のタイムスロットに新規ユーザを割り当てる。
【0041】
一方、3層目に空きのあるタイムスロットが存在しない場合には、その層が最終層であるか否かを判定する(S208)。多重化できる層数はアンテナの本数に応じて決定され、例えば図9に示されるようにあるタイムスロットに4つまで多重化できる場合には、未だ最終層ではないのでNを1だけインクリメントし(S209)、S202以降の処理を繰り返す。これにより、いずれかのタイムスロットの4層目に新規ユーザが割り当てられることになる。また、既に最終層である場合には、新規ユーザを割り当てることができないので、チャネル割当を拒否し(S210)、処理を終了する。以上の処理で生成されたチャネル割当情報は既述したように各段のアダプティブアレイに供給される。
【0042】
図5及び図6には、本実施形態の処理による割当処理が模式的に示されている。図5に示されるように新規のユーザ端末PS3が発呼してきた場合、PS1−PS3の方がPS2−PS3よりも受信電力差が大きい場合には、PS2ではなくPS1とPS3を同一タイムスロットに割り当てる。また、図6に示されるように、PS1−PS3の方がPS2−PS3よりも受信電力差が小さい場合には、PS2のタイムスロットにPS3を割当て、同一タイムスロットに多重化する。図11及び図12に示された従来の割当処理と比較されたい。
【0043】
なお、本実施形態における割当処理では、できるだけ異なるタイムスロットにユーザを割当て、これにより各タイムスロットの多重度を少なくしているが、受信電力差の大小を優先させて割り当てることも可能である。すなわち、2層目に空きの存在するタイムスロットが1個存在する場合にこのタイムスロットに新規ユーザを割り当てるのではなく、2層目の空きの有無によらず、受信電力差の大きいタイムスロットの3層目に新規ユーザを割り当てることもできる。例えば、第2タイムスロットにはユーザ1,2が割り当てられ、第3タイムスロットにはユーザ3,4が割り当てられて既に2層目まで空きがなく、第4タイムスロットにはユーザ5のみが割り当てられて2層目に空きが存在する場合でも、新規ユーザ6が発呼してきたときに、ユーザ1、2それぞれと新規ユーザ6との受信電力差が規定値を超えて大きく、一方2層目に空きのある第4タイムスロットに関してはユーザ5と新規ユーザとの受信電力差が規定値以下と小さい場合には、新規ユーザ6を第4タイムスロットではなく第2タイムスロットに割り当てる。
【0044】
新規ユーザの割当アルゴリズムをまとめると、以下のようになる。
【0045】
(1)できるだけタイムスロットの多重度が少なくなるように新規ユーザを異なるタイムスロットに割当て、全てのタイムスロットにおいてN層目が既存ユーザに割り当てられている場合には、N+1層に割り当てるタイムスロットを受信電力差に基づき決定する。すなわち既存ユーザとの受信電力差を大きくとれるタイムスロットのN+1層目に割り当てる。
【0046】
(2)1層目については異なるタイムスロットに新規ユーザを割り当てるが、2層目以降については各タイムスロットの多重度によらず、既存ユーザとの受信電力差を大きくとれるタイムスロットに新規ユーザを割り当てる。
【0047】
図7には、本実施形態のアルゴリズムにより新規ユーザを割り当てた場合のMIC各段における復調の様子が示されている。あるタイムスロットにユーザ1〜4が割り当てられ、ユーザ1〜4の順に受信電力が大きい場合を想定している。図中○はエラーなく復調でき、×は復調エラーが生じたことを示す。MICの第1段(1stステージ)では、受信電力の最も大きいユーザ1の信号が正常に復調され、他のユーザ2〜4の信号は復調エラーが生じる。正常に復調できたユーザ1の信号を用いて入力信号から差し引くことで、入力信号に含まれるユーザ1の信号は除去され、MICの次段の入力信号となる。
【0048】
MICの第2段(2ndステージ)では、ユーザ1の信号は既に除去されており、ユーザ2の信号が受信電力が最も大きく正常に復調される。正常に復調できたユーザ2の信号は入力信号から差し引かれ、ユーザ2の信号が干渉成分として含まれない入力信号が次段に送られる。
【0049】
MICの第3段(3rdステージ)では、ユーザ1,2の信号は既に除去されており、ユーザ3の信号が最も大きくエラーなく復調される。そして、ユーザ3の信号は入力信号から差し引かれ、ユーザ4の信号のみを含む入力信号が次段に送られる。
【0050】
MICの第4段(4thステージ)では、ユーザ4の信号のみ(あるいは他の信号成分も若干含まれているが微小量)が含まれているので、ユーザ4の信号を容易に抽出して復調することができる。
【0051】
このように、本実施形態では、同一タイムスロットに多重化するときに、既存ユーザとの受信電力差が大きくなるように割り当てるので、図7に示されるように割当ユーザの受信電力間に相違が生じ、これによりMICの各段において少なくともいずれかのユーザの信号を確実に復調することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記の(1)あるいは(2)のアルゴリズムに基づいて新規ユーザをタイムスロットに割当てた後に、ユーザ端末が移動してその受信電力が変化する場合もあり得る。したがって、ユーザのタイムスロットへの割当を動的に変化させることも好適である。
【0053】
図8には、この場合の割当処理フローチャートが示されている。まず、(1)あるいは(2)のアルゴリズムにしたがい、新規ユーザをタイムスロットに割り当てる(S301)。そして、割り当てた後に一定時間経過したか否かを判定し(S302)、一定時間経過した後に、通信中の全ユーザに対して受信電力差を再計算し、受信電力差が大きくなるようにタイムスロットに再割当する(S303)。一例として、1層目のユーザはそのまま維持し、2層目以降のユーザに対して受信電力差を計算し、受信電力差が大きくなるように2層目以降に再割当する等である。
【0054】
また、本実施形態において、既存ユーザとの受信電力差が規定値以下であり、受信電力差が大きくない場合には、任意のタイムスロットに割り当てるのではなく、ユーザの受信電力自体を制御して受信電力差を大きくすることも好適である、このためには、例えば図2の構成においてパワー制御部を新たに設け、新規ユーザと既存ユーザとの受信電力差が規定値以下である場合には、パワー制御部からパワー制御信号を新規ユーザの端末に送り、新規ユーザ端末の送信パワーを増大あるいは減少させ、既存ユーザとの受信電力差を大きくする。これにより、MICの各段をより効果的に機能させることができる。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数のユーザ信号が含まれる受信信号からユーザ毎に確実に信号を分離し、これにより複数のユーザと同時に通信することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の前提となる無線受信システム構成図である。
【図2】実施形態の無線受信システム構成図である。
【図3】実施形態の処理フローチャート(その1)である。
【図4】実施形態の処理フローチャート(その2)である。
【図5】実施形態の新規ユーザ割当説明図である。
【図6】実施形態の新規ユーザ割当説明図である。
【図7】実施形態の処理結果説明図である。
【図8】他の実施形態の処理フローチャートである。
【図9】PDMA方式によるユーザ(チャネル)割当説明図である。
【図10】従来の無線受信システム構成図である。
【図11】従来の新規ユーザ割当説明図である。
【図12】従来の新規ユーザ割当説明図である。
【符号の説明】
3〜6 アンテナ、204 受信電力計算機、208 チャネル選択部。
Claims (12)
- 同一周波数における一つのタイムスロットを空間的に分割し、複数のユーザのデータを受信するPDMA方式を利用し、複数のユーザの入力信号から特定ユーザ以外の全てのユーザの入力信号成分を差し引くことにより干渉信号成分を除去する干渉キャンセラを直列に複数段接続し、それぞれの段においてユーザの入力信号に含まれる他のユーザ信号成分の割合を段階的に減少させて、全てのユーザ毎に入力信号を分離抽出する無線受信システムにおいて、
該無線受信システムは、
抽出すべきユーザ信号に関するチャネル割当情報を生成するチャネル割当情報生成手段と、
前記チャネル割当情報に基づいて前記複数のアンテナで受信した受信信号から各ユーザ毎のユーザ信号を抽出する抽出手段と、を有し、
前記チャネル割当情報生成手段は、各ユーザ毎に受信電力差がより大きくなるように抽出すべきチャネル割当情報を生成して前記抽出手段に供給し、前記チャネル割当情報に従って各ユーザを各タイムスロットに割り当てることを特徴とする無線受信システム。 - 請求項1記載のシステムにおいて、
前記チャネル割当情報生成手段は、各ユーザ間の受信電力差の少なくともいずれかが規定値を超えるように抽出すべきチャネル割当情報を生成して前記抽出手段に供給することを特徴とする無線受信システム。 - 請求項1、2のいずれかに記載のシステムにおいて、
前記抽出手段は、各ユーザ毎のユーザ信号を抽出する抽出ユニットを複数個直列に接続されて構成され、
前記抽出ユニットは、少なくともいずれかのユーザ信号を抽出するとともに、抽出したユーザ信号を入力受信信号から除去して次段の抽出ユニットに供給することを特徴とする無線受信システム。 - 請求項3記載のシステムにおいて、
前記チャネル割当情報生成手段は、PDMA方式により多重化されたチャネル割当情報を生成し、
前記抽出手段は、前記PDMA方式により多重化されたユーザ信号から各ユーザ毎のユーザ信号を抽出する
ことを特徴とする無線受信システム。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のシステムにおいて、前記チャネル割当情報生成手段は、一定時間毎に前記チャネル割当情報を更新することを特徴とする無線受信システム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のシステムにおいて、
さらに、各チャネル毎に受信電力差が大きくなるようにユーザ端末の送信電力を制御する手段と、を有することを特徴とする無線受信システム。 - 同一周波数における一つのタイムスロットを空間的に分割し、複数のユーザのデータを受信するPDMA方式を利用し、複数のユーザの入力信号から特定ユーザ以外の全てのユーザの入力信号成分を差し引くことにより干渉信号成分を除去する干渉キャンセラを直列に複数段接続し、それぞれの段においてユーザの入力信号に含まれる他のユーザ信号成分の割合を段階的に減少させて、全てのユーザ毎に入力信号を分離抽出する無線受信システムを具備する無線受信方法であって、
同一タイムスロット内での受信電力差が互いに大きくなるように複数のユーザ信号を前記タイムスロットに割り当てる割当ステップと、
受信信号から前記同一タイムスロットに割り当てられユーザ信号を互いに分離する分離ステップと、
を有することを特徴とする無線受信方法。 - 請求項7記載の方法において、
前記割当ステップでは、前記受信電力差の少なくともいずれかが規定値を超えるように前記複数のユーザを前記同一タイムスロットに割り当てることを特徴とする無線受信方法。 - 請求項7記載の方法において、
前記割当ステップでは、割当可能な複数のタイムスロットが存在する場合に、前記受信電力差がより大きくなるように複数のユーザ信号を同一タイムスロットに割り当てることを特徴とする無線受信方法。 - 請求項7〜9のいずれかに記載の方法において、
前記分離ステップでは、
前記受信信号から前記同一タイムスロットに割り当てられたユーザ信号を複数段にわたって順次分離して復調し、
復調されたユーザ信号を受信信号から順次除去することを特徴とする無線受信方法。 - 請求項7〜10のいずれかに記載の方法において、
前記割当ステップは、所定周期で繰り返し実行されることを特徴とする無線受信方法。 - 請求項7〜10のいずれかに記載の方法において、
さらに、前記受信電力差が大きくなるようにユーザ端末の送信電力を制御するステップと、を有することを特徴とする無線受信方法。
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