JP3573455B2 - 空気より得る医療用一酸化窒素 - Google Patents

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Description

発明の背景
本発明は、医療に用いられる空気あるいは他の気体と混合された一酸化窒素の製造方法とその装置に関する。
一酸化窒素(NO)は、生物には不可欠である(ジー・コラーダ著、1991年7月2日付けザ・ニューヨーク・タイムズの頁C1)。一酸化窒素は、血圧のコントールの仲立ちをし、免疫機構が細胞内に侵入する寄生体を攻撃するのを援助し、癌細胞の分裂を阻止し、脳細胞間の信号の伝達を行い、発作あるいはハンチントン氏病を持つ人を衰弱させる脳細胞を大量に消滅させるのに寄与すると、コラーダ氏は述べている。
一酸化窒素が胃の平滑筋の弛緩の仲立ちをすることが記載されている(ケイ・エム・デサイ他、「ネイチャー」、Vol.351、1991年6月6日、P.477)。デサイ他は、テンジクネズミの胃を切りとって、非アドレナリン性で非コリン作用性の神経伝達物質(NANC)を用いて目的に応じた(adaptive)弛緩が行えることを示している。さらに、NANC神経伝達物質が、L−アルギニンから誘導される一酸化窒素と区別が付かないことを彼等は示している。一酸化窒素が、平滑筋の弛緩を起こす究極の共通な仲介物であると、著者は結論している。
例えば、平滑筋は、血管、気管支、胃腸管及び尿生殖管の壁部に存在する。吸入によって一酸化窒素ガスを肺に送ると、全身的な副作用をもたらすことなく、平滑筋を局部的に弛緩させることができる。この特性を用いて、気管支の収縮及び肺高血圧症、肺炎等の治療が行える。
現在、一酸化窒素は、自然界に存在する重要な局所細胞ホルモン、すなわち、いわゆる内皮に存在する弛緩因子であることが知られている。この因子は多数の細胞(例えば、内皮細胞内層血管、気管支、腸、膀胱、子宮やアルギニンより誘導される一酸化窒素であるシンセターゼ(すくなくとも6個の酵素のファミリーであると現在は知られている))で作られる。一酸化窒素はひとたび投与されると(released)、平滑筋細胞中の酵素グアニシル酸シクラーゼと結合して、環式循環グアニシル酸モノ燐酸塩(環式GMP)を増加させ、細胞内のカルシウムレベルを下げ、平滑筋を弛緩させる
動物及び人に対する多数の予備研究によって示されるように、吸入された一酸化窒素は、有力な局部肺血管拡張剤及び気管支拡張剤となり、身全体に影響を及ぼすことがない。潅流による換気のマッチングを改善する著しい能力を一酸化窒素は持っており、損傷を受けた肺の酸素伝達効率を増し、動脈の酸素圧を上げる。現在まで、一酸化窒素はこのように選択的特性を持つ唯一の肺血管作用剤であり、肺気管支狭窄及び血管狭窄を伴う急性及び慢性肺病の治療に大きな可能性を持っている。
気管支拡張剤は、気道の反応を抑制し、喘息や、慢性肺閉塞の再発、アレルギー、および過敏反応などによって引き起こされる気管支痙攣の阻止に用いられている。数種類の気管支拡張剤が用いられており、各々が独自の作用モード、耐性及び好ましくない副作用がある。
エピネフリン及びイソプロテレノールで代表されるβ作用薬は、アデニルシクラーゼの沈澱を促進し、細胞内環式アデノシンモノ燐酸塩(AMP)の生産を増すレセプタを刺激して気管支を拡張させる。これらの作用薬は、経口あるいは非経口のエアロゾール剤によって運ばれる。これらの薬剤の投与によって、頻拍、心悸亢進、血圧の変動等の悪影響を心臓に与え、さらに不安、震え、吐き気、頭痛などの副作用が生ずる。より新しいβ選択作用薬、例えばアルブテロール、は副作用は少ないが効果がでるのに多少時間がかかる。
テオフィリン試薬はベータ作用薬よりも効力は少ないが、治療上の有害ウィンドウ(window)は狭い。テオフィリンの気管支拡張効果をもたらすメカニズムは、環式AMPに恐らく起因するのである。テオフィリンによってもたらされる共通の副作用は、神経質な状態、吐き気、嘔吐、食欲不振及び頭痛である。さらに、過剰投与の場合には、テオフィリンは不整脈と発作を引き起こす可能性がある。
噴霧器によって投与されるアトロピン・硝酸メチル及びイプラトビウム臭化物等の抗コリン薬は、比較的副作用の少ない有効な気管支拡張剤である。しかしながら、これらの薬は効くのに時間がかり、気管支拡張のピークに達するまで60〜90分かかることもある。
一酸化窒素は、全身的に影響を及ぼすことなく、投与して数十秒で素速く結合するという点に特徴がある。吸入されると、一酸化窒素は血管系に拡散して血液中に達し、ヘモグロビンと結合することによって直ちに不活性になる。従って、吸引された気管支拡張剤の効果は気動に限定され、吸入された一酸化窒素の血管拡張効果は肺血管系に限定される。
選択的に肺動脈を拡張するという一酸化窒素のこの独特な能力を、急性あるいは慢性の肺高血圧症の治療に使用可能である。肺高血圧症は、平均肺動脈の血圧が12〜15ミリHgの通常レベル以上になることである。
急性肺高血圧症は、肺炎、肺塞栓あるいはアシドーシス等による突然の低酸素症による肺血管の収縮によって起こる。急性の肺高血圧症は、可逆性の症状であり、沈着処理がうまく行けば、肺血圧を通常値に戻すことができる。しかし、低酸素症が長引くと、肺血管系の構造に永久的な変化が生じ、慢性肺高血圧症が続いて起きることになる。慢性肺高血圧症の主な原因は、慢性的な肺血管の病気であり、多数の小さな塞栓、及び僧帽弁狭窄症、心房中隔欠損及び突発性の肺高血圧症などの心臓病の再発である。さらに、肺高血圧症は、成人呼吸困難症候群や新生児の長引く肺高血圧症等の生命を脅かすいくつかの病気とも関連がある。
現在まで、ニトロプシド、ヒドラジン、ニフェジビン、カプトラリル他を含む数種の血管拡張材が、肺効血圧症の治療に用いられている。これらの薬剤の主な欠点は、肺血管及び全身的な血圧の双方を選択的に下げることができないこともあることである。これに反して、吸引された一酸化窒素は、肺血管に限定して血管を拡張するという画期的な治療上の利点を持っている。
一酸化窒素を運ぶ吸入器が、1991年9月23日提出の米国特許出願だい07/767,234号に記載されている。この出願は、本出願人に譲渡されており、参考として本願の一部を構成する。
発明の開示
本発明は、治療に用いられる空気あるいは他の気体と一酸化窒素の混合物を作る装置に関する。本装置は、空気と電気とのみを用いてアーク放電によって、一酸化窒素を作り出す。本発明により、どこででも無限に一酸化窒素の発生が可能である。
本発明を携帯型吸入器として実施すれば、患者はどこにでも持ち運ぶことができ、喘息の発作あるいは気管支の狭窄、急性呼吸困難、可逆性肺血管収縮等の治療が可能となる。さらに、症状に応じて一酸化窒素の吸入量を変えることができる。
本発明の装置は、治療施設あるいは緊急治療施設において、一酸化窒素を発生し、他の気体と混合して治療に有効な濃度で人体の特定の器官に供給する。供給されると、一酸化窒素は直ちに平滑筋を弛緩させる。さらに、一酸化窒素の作用は、治療箇所にのみに限定される。
本発明の一態様では、呼吸系の治療に用いられる空気あるいは他の気体と一酸化窒素に混合気発生させる吸入器として実施される。この吸入器は、電気源を使用してエアーギャップにより隔てられている一対の電極間にアークを発生させる。空気が空気取入口から、電極を収容しているアークチャンバに常時導入される。吸入器は、電極に高電圧電位を供給するための電気回路を持っている。高電圧電位は、エア−ギャップを介してアークを誘起するのに十分なピーク値を持っている。アーク放電が一酸化窒素を発生する。発生した一酸化窒素は、空気と混合され吐出口を介して吐出され、患者に吸入される。
この態様の好ましい実施例では、電極は2つの軸方向に配置されている金属棒で構成され、その先端はアークチャンバ内に形成された調整可能なエアーギャップによって隔てられている。吸入器の回路は、高電圧変圧器で構成され、その一次コイルは電源回路に接続され、平行RCL回路は変圧器の二次高電圧コイルに平行に接続されている。平行RCL回路の抵抗素子は、エアーギャップによって隔てられている高電圧電極より構成されている。吸入器の空気取入口には、そこを介して導入される空気を濾過するフィルタを有しており、液滴や個体粒子のアークチャンバへの侵入を阻止する。手持ち型吸入器の重量は、約1キロ以下である。
本態様の好ましい実施例では、アークチャンバ内で発生される低レベルの二酸化窒素とオゾンの除去するための浄化装置が含まれる。吸入器から吐出される前に、アークチャンバから出る気体を強制的に浄化装置を通過させている。吐出口には、マウスピースが取り付けられていて、浄化装置を強制的に通過させてから直接混合気体が吸入されるようにしている。
さらに、本発明の装置は、空気取入アッセンブリを持っており、空気の導入量を選択的に制限する開口を複数有し、空気とアークチャンバからの混合気体を混合し、マウスピースを介して混合気が吸入される。浄化装置はオゾン(O3)あるいは二酸化窒素(NO2)のための排出路、すなわちソーダ石灰あるいはバラライム(baralime)を持っている。
本発明の他の実施例では、ガスポンプが含まれており、混合気体を、浄化装置を強制的に介して吐出口へ送っている。混合気体は酸素マスクに送られるか、あるいは保育器などの室内に送出される。
他の態様では、本発明は、人体の器官へ一酸化窒素と空気の混合気体の直接供給が要求される治療のために、この混合気体を連続的に発生する装置として実施される。この装置はエアーギャップに隔てられている一対の電極を含むアークチャンバより構成され、電極間のアーク放電により一酸化窒素を発生する。さらに、電極に高電圧電位を供給する電気回路を有する。高電圧電位は、十分なピーク値を持っていてエアーギャップ間にアークを起させる。装置の空気取入口は、アークチャンバに空気を常時導入するために使われる。発生された一酸化窒素と空気あるいは他の気体との混合気体を浄化し、人体の器官に供給するために気体給送装置が使用され、機械的な通気装置あるいは呼吸装置を使って肺へ混合気体(例えば、麻酔薬等の他の気体を加えて)を投与する。
この態様の好ましい実施例の装置は、気体取入マニフォールドを持っており、選択された気体を給送装置に導入し、発生された一酸化窒素と空気の混合気体にその気体を混合して、給送装置によって供給する。
この態様の好ましい実施例の装置は、気体分析装置(NOX化学発光分析装置等)を有しており、配送装置によって供給される上記混合気体の各成分の濃度を分析する。分析装置と気体取入マニフォールドに調整器を接続して、所定の処方箋に従って個々の気体成分(例えば、吸入される酸素濃度等)の濃度をコントロールしている。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の好ましい実施例の説明及び請求の範囲から、明らかになろう。
好ましい実施例の説明
図1は、本発明の携帯型吸入器としての実施例の概略断面図である。
図2は、実施例に用いられる高電圧発生回路の概略図である。
図3は、家庭用大型吸入器としての実施例の概略断面図である。
図4は、治療施設及び救急施設用の吸入装置の概略断面図である。
図5は、本発明の他の実施例の概略断面図であり、人体の種々の部分に一酸化窒素を供給するものであり、呼吸補助用の機械的換気装置を含んでいる。
図6は、流出一酸化窒素ガス濃度の高電圧変圧器の一次コイル内の平均電流との依存度と、アークチャンバを経由する空気の流量を表すグラフであり、電極間の間隙は例えば3mmである。なお、Vはリットル/分の空気流量であり、一酸化窒素のレベルは、百万volumeに付き数パートである(ppm)。
図7は、流出一酸化窒素ガス濃度の高電圧変圧器の一次巻コイル内の電流との依存度と、アークチャンバを経由する空気の流量を表す図であり、電極間の間隙は、5mmである。なお、Vは1分当たりの空気流量をリットルで表している。一酸化窒素のレベルは百万volumeに付き数パートである(ppm)。
図8は、U46619の注入により急性肺高血圧症に罹っている覚醒している羊に一酸化窒素を吸入させた時の様々な段階における肺動脈圧の依存性(dependence)を表すグラフである。一酸化窒素ガスは、アーク放電によって発生され、著しい肺血管弛緩特性を示している。
図1の携帯型吸入器は、空気をアークチャンバ4に導く取入口2を有する。取入口2は一方向弁と、ミロポア社製の0.22ミクロンフィルタ3を含む。フィルタは導入空気中のバクテリアと不要な成分を除去する。絶縁材からなるアークチャンバ4は、エアーギャップによって分けられている2つの軸方向に設けられた電極5を有する。高電圧発生回路7は、電極5に接続されている。電気的なアークチャンバ4は、吸入口14に取り付けられているソーダ石灰フィルタ13に接続している。吸入口14には、マウスピース17と、一組の選択可能な制限用開口16を有する吸気取入アッセンブリ15が設けられている。各開口にはフィルタが付いており、空気中の液滴と個体粒子を濾過している。ガス通路系(取入口2、フィルタ3、13と、吸入口14とを含む)は、患者が容易にそして比較的無制限に吸入できるように設計されている。吸入器が使用される環境に応じて、異なった種類のフィルタを使用することも可能である。吸入器は、テフロン(商品名)あるいは他の高電圧絶縁体よりなるケース19に収容されている。パイロットライト付きの電源スイッチ11により、吸入器の作動を制御する。
図2により、高電圧発生回路7は、一次と二次コイルを有する昇圧変圧器24より構成されている。一次コイルは電源21に接続され、二次高圧コイル25は平行RCL回路に接続されている。電源21からの電圧はバリアック(variac)23によって調整され、二次コイル25によってより高い値に変圧される。高エネルギー電圧を発生させる他の回路、例えばテスラコイル等を使用することもできる。電気エネルギーは一時的にコンデンサ26に蓄積される。このコンデンサ26は破壊(breakdown)電圧にまで充電され、次にエアーギャップ9を介して放電される。2つの電極5によって形成されるエアーギャップ9が、これらの電極の抵抗値を決定する。破壊電圧
Figure 0003573455
は、エアーギャップの幅と電極5の形状に比例する。
アーク放電が、エアーギャップ内にプラズマを局部的に発生する。プラズマ内では、酵素と窒素粒子が破壊され、原子がイオン化されオゾンと一酸化窒素を形成する。ほんの数量の一酸化窒素が酸化されてより高い酸化状態となり、二酸化窒素(NO2)を発生する。しかし、このプロセスは温度が高いときにのみ、重大となる。NO、NO2及びO3の濃度は、エアーギャップの幅と、アークの期間に応じて変化し、ppmで表される。
吸入器の動作は以下の通りである。アークチャンバ4からの気体は、ソーダ石灰フィルタ13と、吸入口14とマウスピース17を介して、患者に吸引される。ソーダ石灰フィルタ13は有毒な二酸化窒素(NO2)とオゾン(O3)を混合器から除去し、吸入口への到達を阻止する。従って、混合気体は主として空気と一酸化窒素を含有している。さらに、空気が取入口2を介してアークチャンバ4に導入される。引き続くアーク放電が、NO、NO2及びO3を構成するN2とO2分子をイオン化する。アークチャンバ内で発生される一酸化窒素の濃度は、エアーギャップ9の抵抗と電極5に供給される電力に応じて、10ppm〜250ppmの範囲で変動する。治療上有効な一酸化窒素の濃度は、約1ppm〜180ppmである(携帯型吸入器の場合)。吸入される気体の一酸化窒素濃度を上記の数値に維持するために、異なる大きさの制限用開口16を有する追加空気混合用取入口15が用いられる。マウスピース17を介して吸入器から気体を吸引している患者は、取入口15からの空気をアークチャンバからの気体と自動的に混合する。一酸化窒素の濃度を変える際、患者は開口の大きさを選択して、空気取入口15を介して吸入口14に取入られる吸気量を増減する。他の実施例で、患者が吸入不能な場合には、ガスポンプあるいは他の圧力源(換気装置など)が、吸入口14に装備され、吸入器から混合気体を強制的に送り出している。この場合、マウスピースを気管内管あるいは気管切開管に取り付けることができる。この電気一酸化酸素発生器を標準ガス駆動大量投与吸入器(MDi)に取付けることもできる。MDiは、化学気管支拡張剤(テルブタリン、コルチコステロイド等)を空気取入口15に噴出する。素速く気管支拡張するために電気的に発生された一酸化窒素を数秒吸入してから、MDiが起動されて長期間の気管支拡張を行う。結果として、一酸化窒素により拡張された気管支への薬剤の供給が促進され、MDiの効率が上がる。電気的に発生された一酸化窒素(NO発生前あるいは発生後)にたの吸入された薬剤、界面活性剤や粘液溶解剤等を噴射することもできる。
本実施例では、吸入器は携帯手持ち型軽量で電池駆動であり、大きさは約20×20×10cmである。喘息あるいは肺高血圧症の患者が吸入器を持ち運ぶことができ、必要に応じて使用可能である。患者が初期に大量の一酸化窒素の吸入を必要とする、例えば、150ppmの一酸化窒素と空気の混合気体を必要とすることも有り得る。これは、空気取入口15を閉鎖することにより行われる。患者の気管支あるいは肺血管の拡張に応じて、より大きな開口を選んで濃度を下げることができる。手持ち型の吸入器は、無限に一酸化窒素を供給できる。
他の好ましい実施例では、吸入器は家庭用のより大きな装置である。図3に示すように、空気ポンプ32が空気をアークチャンバ35に強制的に送り込む。取入口30に設けられているフィルタ31が、導入空気中の不要成分を除去する。携帯型吸入器の実施例と同様に、電気絶縁材でできているアークチャンバは、エアーギャップで隔てられている2つの電極36を持っている。電極36は、標準の110V、60Hz(あるいは220V、50Hz)コンセントからの電力で作動する高電圧回路34に接続されている。アークチャンバで発生される一酸化窒素、二酸化窒素とオゾンとをソーダ石灰フィルタ38内を強制的に通過させる。フィルタ38は、混合気体からNO2とO3を吸収する。空気あるいは他の気体(例えば、O2)と混合された一酸化窒素は、フェースマスク(すなわち、顔面マスク)に接続可能な吐出口39から吐出される。他の好ましい実施例では、発生された一酸化窒素は、吐出口39を介して保育器あるいは室内に送り出される。
さらに他の好ましい実施例では、吸入器は治療施設及び救急施設で使用される。吸入器の規模は、特定の用途に応じて決まる。大きなユニットは標準の110V、60Hzのコンセントから電力を受け、可搬型ユニットは9V電池駆動である。図4により、空気タンクと調整器40が使用され、17psiに加圧された空気を一酸化窒素発生装置に供給する。他の実施例と同様に、本装置は取入口42、電極46を有するアークチャンバ44、ソーダ石灰フィルタ48をより構成されている。一酸化窒素と空気の混合気体は、前述と同様に発生される。さらに、本装置は、吐出口58に接続されている5リットルの混合袋50を有する。混合袋50は、取入口59を介して供給される空気と、取入口52を介する酸素あるいは酸素を大量に含むN2混合気体とを混合するのに用いられる。空気と、酸素と一酸化窒素の混合気体は、吐出口58を介して換気装置あるいは酸素マスクに送られる。注入酸素フラクション(fraction)(FiO2)メーター56が吐出口58に取り付けられており、O2の割合を体積で測定する。
他の好ましい実施例では、本発明の装置は集中治療室あるいは緊急処置室で使用される。図5の実施例では、約50psiに加圧された空気供給源60が使用されている。このより大きなユニットのアークチャンバは、発生される一酸化窒素の量を増すために一対以上の電極を有することも可能である。この装置の構成は、図1、図3と図4のものと同様である。加圧空気は、調整器62を介してアークチャンバ64へ送られる。アークチャンバ64は電極66を持っている。ソーダ石灰フィルタ68が、アーク放電工程での不要な副産物(すなわち、NO2、O3)を吸収する。空気と一酸化窒素の混合気体は、取入口72からの酵素とバード(Bird)ブレンダ70で混合される。吐出口76に取り付けられているFiO2メーター74が、O2の割合を測定する。本装置は、標準の110V、60Hzの電源で駆動される。さらに、空気取入口とガスポンプに接続された自動調整装置とガス分析装置を含むこともできる。ガス分析装置は、人体の器官に供給される混合気体中の一酸化窒素と他の気体の分量を監視する。さらに、分析装置は、自動調整装置を制御して、処方箋に従って一酸化窒素を特定の濃度に維持する。本実施例の装置は、機械的換気装置に取付可能であり、換気治療用の一酸化窒素ガスの供給に用いられる。
吐出口76に種々の付属品(図5には示されていない)を取付けて、特定の器官に種々の気体と一酸化窒素の混合気体を供給することもできる。例えば、フォーリーカテーテルの先端に一酸化窒素を供給する付属品を吐出口に取り付けると、膀胱嚢へのカテーテルの挿入が容易になる。
例1
試験ユニットの性能が図6と図7に示されている。この場合、電極間のギャップは3mmと5mmである。1リットル/分から10リットル/分の範囲で、異なった流量(V)で空気をアークチャンバに導入する。高電圧変圧器の一次コイルの電流を250μA〜1.25mAの範囲で変動させて、高電圧発生回路に供給される電力を増加させる。アークチャンバからの出力は、NOX化学発光ガス分析装置に導入され、異なった濃度の酸化窒素を得る。
図6に示すように、互いに3mmは離れている電極に電力が供給されている状態では、一酸化窒素の濃度(ppmで表す)は単調に増加する。空気の流量(V)が1リットル/分の時、一酸化窒素の最高濃度が得られる。空気の流量が増加すると、一酸化窒素の濃度が低下する。
図7の電極間のギャップが5mmである場合にも、ほぼ同様な傾向が見られる。しかし、エアーギャップが大きいため、アーク放電で発生されるプラズマが大きい。従って、アーク放電は、より高濃度の一酸化窒素を発生する。誘電体を破壊し、電極間にスパークを発生するのに必要な電圧は、20kVである。電極をさらに互いに離すと、より大きな降伏電圧が必要となる。
アーク放電により発生されたオゾンのレベルを、紫外線側光オゾン分析装置で測定した。スパークギャップが3mmで、空気の流量が2リットル/分である一酸化窒素発生装置は、アークチャンバ内で0.01ppmのオゾンを発生した。このオゾンのレベルは、米国労働省の職業の安全及び健康管理部の定めたオゾン露出限界値よりもかなり低い。二酸化窒素のレベルも同様に測定され、非常に低いレベルであった(2%の一酸化窒素のレベル以下)。
最適稼動範囲(regime)は、空気の流量が1.5リットル/分である場合、およそ1.1mAである。しかしこれらの変数は、電極の形状、空気の湿度及び他の要因によって左右される。
例2
気管を切開した30キロの雄のドーセット羊に、7Fr肺血管スワン−ガンツ−カテーテルと大腿骨動脈ラインを取り付けて、肺血管と全身の動脈の血圧を連続的に監視した。覚醒中の羊に0.6μg/kg/minのU46619(アップジョーン社製)を常時注入した。これは急性の肺血管収縮と高血圧を起すことができる安定したトロンボキサン(thromboxane)類似体である。U46619注入は、肺動脈血管の圧力(PAP)を平均基準値の19mmHgから79%増加して、33mmHgにした。図4のものと同じアークと回路を使用して、空気と一酸化窒素の混合気体を作った。空気中の一酸化窒素を10ppm吸収後、直ちにPAPが25%減って25mmHgになり、5ミリのエアーギャップ内での高電圧直流スパークによって電気的に発生された一酸化窒素の血管弛緩作用が確認された。図8は、平均PAPの吸入された一酸化窒素の濃度レベル別の依存性を示している。なお、これは化学発光によって測定された。スパーク電流を増加して吸入された一酸化窒素の濃度を15ppmにすると、PAPは23mmHgのレベルに低下した。吸入される一酸化窒素を40ppmにさらに増加させると、PAPはさらに低下して、18mmHgのU46619を注入しなくても基準線のレベルに達した。その後、空気のみが羊の肺に送り込まれ、注入されたU46619の反作用がないため、PAPは34mmHgに達した。この一酸化窒素の吸入試験の間、全身的動脈の圧力(SAP)は94mmHgで一定していた。SAPが一定していたという事実は、吸入された一酸化窒素が肺血管の局部的弛緩剤として作用することを証明するものである。
本発明の他の実施例も請求の範囲に含まれる。請求の範囲で用いられている「空気」は、N2及びO2を含む他の混合気体のみならず通常の空気を意味する。他の種々の気体、麻酔薬、追加O2、他の気管支拡張剤(大量投与吸入剤等)、肺病治療用の他の薬剤(界面活性剤、粘液溶融剤、発火防止剤等)を、本発明の実施例によって発生させる一酸化窒素と空気の混合気体に添加することも可能である。

Claims (21)

  1. 空気と電源とを使用して治療用の空気と一酸化窒素の混合気体の発生用の吸入器であって、
    エア−ギャップにより隔てられている一対の電極を有し、電極間のアーク放電により一酸化窒素を発生するアークチャンバと、
    前記エアーギャップ間にアークを誘起するのに十分なピーク値を有する高電圧電位を前記電極に供給するための電気回路と、
    前記アークチャンバに空気を常時導入するための気体取入口と、
    患者が吸入するように前記発生された混合気体を吐出するための吐出口と、を有することを特徴とする治療用の空気と一酸化窒素の混合気体発生用の吸入器。
  2. 前記アークチャンバの前記電極は、前記エアーギャップによって端部が隔てられており、軸方向に並べられた2本の金属棒であることを特徴とする請求項1に記載の吸入器。
  3. 前記電気回路は、
    一次側が電源に接続されている高電圧変圧器と、
    前記高電圧変圧器の二次高電圧側に平行に接続されている平行RCL回路とから構成され、
    前記平行RCL回路は前記エアーギャップにより隔てられている前記高電圧電極を有していることを特徴とする請求項2に記載の吸入器。
  4. 前記空気取入口は、取入口を介して導入される空気を濾過して液滴あるいは固形物の前記アークチャンバへの進入を阻止することを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載の吸入器。
  5. 吸入器の大きさがおよそ20×20×10cmであり、重量が1kg以下であることを特徴とする請求項4に記載の吸入器。
  6. 前記アークチャンバ内で発生される二酸化窒素とオゾンを除去し、アークチャンバから出る気体が、前記吸入器から吐出される前に強制的に通過されるような位置に設けられた浄化装置と、
    前記出口に設けられ、前記アークチャンバからの混合気体を浄化装置を介して直接吸入させるためのマウスピースと、を有することを特徴とする請求項4に記載の吸入器。
  7. 前記マウスピースを介して前記混合気体が吸入されている際、前記吸入口へ制御された量の空気を導入し、前記アークチャンバからの前記空気と気体の混合気体とを混合するための選択可能な大きさの開口を有する空気取入アッセンブリをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の吸入器。
  8. 前記浄化装置はオゾンと二酸化窒素の排出路を有することを特徴とする請求項6に記載の吸入器。
  9. アークチャンバ内で発生される二酸化窒素とオゾンを除去するための浄化装置は、アークチャンバから出る気体が、前記吸入器から吐出される前に強制的に通過させられるような位置に設けられた浄化装置と、前記混合気体を前記吐出口へ強制的に送り込むガスポンプと、をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の吸入器。
  10. 人体器官の治療用の空気と一酸化窒素の混合気体を直接供給するために空気と一酸化窒素の混合気体を発生するための装置であって、
    エアーギャップにより隔てられている一対の電極を有し、電極間のアーク放電により一酸化窒素を発生する電気的なアークチャンバと、
    前記エアーギャップ間にアークを誘起するのに十分なピーク値を有する高電圧電位を前記電極に供給するための電気回路と、
    前記アークチャンバに空気あるいは換気用気体を常時導入するための気体取入口と、
    患者が吸入するように前記発生された混合気体を供給するための供給装置と、を有することを特徴とする治療用の空気と一酸化窒素の混合気体発生装置。
  11. 前記供給装置が特定の器官に混合気体を直接供給する構造となっていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
  12. 選択された気体を前期供給装置に導入し、これらの気体を前記混合気体と混合し、混合された気体を前記供給装置に供給する気体取入マニフォールドをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
  13. 前記供給装置から排出される前記混合気体の各成分の濃度を分析するためのガス分析装置と、
    前記分析装置と前記気体取入マニフォールドに接続され、処方箋に従って前記供給装置に導入される混合気体の各成分の濃度を制御するための調整装置と、をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
  14. 前記混合気体に気体をさらに添加する手 段を含むことを特徴とする請求項1または10に記載の装
  15. さらに、前記アークチャンバ内で発生さ れる二酸化窒素とオゾンを除去する浄化装置を有し、前 記浄化装置は、前記アークチャンバから出る気体が、吸 入器から吐出される前に強制的に通過させられるような 位置に設けられていることを特徴とする請求項10に記載 の装置
  16. 前記浄化装置は、オゾンと二酸化窒素の ための排出路を有することを特徴とする請求項15に記載 の装置
  17. 前記供給装置は、マウスピースであるこ とを特徴とする請求項10に記載の装置
  18. 前記人体器官の治療用の空気と一酸化窒 素の混合気体を直接供給するために空気と一酸化窒素の 混合気体を発生するための装置が吸入器であることを特 徴とする請求項10に記載の装置
  19. さらに、空気取入アッセンブリを有し、 前記空気取入アッセンブリは、空気の導入量を選択的に 制限する開口を複数有し、空気とアークチャンバからの 混合気体を混合しマウスピースを介して混合気体が吸入 されることを特徴とする請求項10に記載の装置
  20. さらに、混合気体を強制的に吐出口へ送 るガスポンプを有することを特徴とする請求項10に記載 の装置
  21. さらに、選択的に制限する開口を複数有 する空気取入アッセンブリを介して導入される空気と、 前記アークチャンバからの空気と一酸化窒素の混合気体 とを混合する装置を有することを特徴とする請求項10に 記載の装置
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