JP3572505B2 - 静電画像現像用トナー、現像剤及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電荷像を現像する為の静電画像現像用トナー、現像剤及び画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般的に用いられているトナーは各種重合法で得られるポリマーにカーボンブラック等の着色剤、帯電制御剤及び/又は磁性体を適宜乾式混合を行い、その後押出機等により溶融混練し、次いで粉砕、分級することで製造されている。
【0003】
別の方法として、懸濁重合法等により直接トナーを製造する方法が提案されている。又乳化重合法により生成した粒子を用いる方法も提案(特開昭60−220358号公報、特開平4−284461号公報)されている。
【0004】
しかしながら、上記の様な溶融混練粉砕法により得られるトナーは、トナー粒径の制御に限界があり小粒径のトナーを収率良く製造することが困難である。又、トナーを形成する成分の分散が不均一で、帯電量分布がブロードになり易いという欠点を有している。
【0005】
又、懸濁重合法で直接製造する方法も、小粒径化が困難であるばかりでなく、その粒度分布は広いものになるという欠点を有している。更に、この方法で製造されるトナーは基本的に真球状であり、電子写真プロセス内でクリーニングが困難であるという欠点を有している。
【0006】
一方、特開昭60−220358号公報及び特開平4−284461号公報に開示された方法は、上記のごとく真球状のトナーではなく表面に凸凹のある非球形粒子を得ることが可能であるが、粒径、粒度分布を制御することが困難であり、反応終了後所望の粒径、粒度分布にする為、分級をする必要がある。
【0007】
更に、特開平4−284461号公報に開示された方法では着色剤と重合体粒子のゼータ電位を微妙に調節する必要がある。この事が生産性を向上することを困難としているばかりでなく、着色剤等が生成したトナー粒子内で局在化しやすく、この結果生成したトナー粒子の十分な機械的強度を持ち得ないという欠点を有している。
【0008】
上記欠点を改善するために特開平6−329947号公報に開示された方法が提案された。上記方法で生成されたトナーは、粒径の制御が可能であり、粒度分布が狭いため分級行程が必要ない。また、着色剤などの添加剤がトナー粒子中に局在化する事がないためトナー粒子の機械的強度は十分確保できる。しかしながら、上記方法ではトナー中に界面活性剤が存在するために洗浄を十分に行わないと帯電量の安定性と帯電量の環境差を低減することができない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、乳化重合し、複数個の重合体微粒子を凝集させて製造した静電画像現像用トナーにおいて、界面活性剤の添加量を低減する事により帯電量の安定性と環境差を低減することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
【0011】
(1) 疎水性モノマー、イオン性モノマー、カーボンブラック及び定着改良剤(定着性改良剤ともいう)を乳化重合し、複数個の重合体微粒子を凝集させて製造した静電画像現像用トナーにおいて、該カーボンブラックは界面活性剤を含有しないカーボンブラック分散液として添加され、かつ該カーボンブラックの表面に、親水性基で置換された分子量175以下の、フェニル化合物、ナフチル化合物又はC 1 〜C 12 のアルキル化合物を存在させることを特徴とする静電画像現像用トナー。
【0012】
(2) 上記静電画像現像用トナーのBET比表面積が5m2/gから100m2/gであることを特徴とする前記1記載の静電画像現像用トナー。
【0013】
(3) 前記1又は2記載の静電画像現像用トナーを含有することを特徴とする現像剤。
【0014】
(4) 感光体上に形成された静電荷潜像を顕在化しトナー像とする画像形成方法において、前記1又は2記載の静電画像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【0015】
(5) 感光体上に形成されたトナー像を転写する画像形成方法において、前記1又は2記載の静電画像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【0016】
(6) 感光体上に形成されたトナー像を転写材上に転写した後に、該感光体上に残留するトナーをクリーニングし除去する画像形成方法において、前記1又は2記載の静電画像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、着色剤であるカーボンブラックの官能基に親水性基導入することにより、カーボンブラックの水への分散性を向上させ界面活性剤の低減を達成することを見いだした。
【0018】
(カーボンブラック)
カーボンブラック表面に親水性基を存在させるには親水性基で置換された有機化合物を吸着させる。有機化合物の親水性基としては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、水酸基等アニオン性官能基とカチオン性官能基があげられる。
【0019】
アニオン性官能基としては、酸性基あるいはその塩が挙げられる。アニオン性官能基で置換された有機化合物としては、芳香族或いはC1〜C12のアルキル基と、pKaが11以下の酸あるいはその塩或いはpKaが11以下の酸とその塩の混合物等が挙げられる。より好ましいpKaは10以下、更に好ましくは9以下である。芳香族あるいはC1〜C12のアルキル基は直接カーボンブラックに吸着する。芳香族としては、アルキル基などで置換されていても非置換でも良い。C1〜C12のアルキル基は分岐していてもして無くても良い。アルキル基としては好ましくはエチルであり、有機化合物としてはフェニル基或いはナフチル基が好ましい。酸性基としては、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、カルボン酸が挙げられる。例えば−COOH、−SO3H、−PO3H2、−SO2NH2、−SO2NHCORである。またそれらの塩としては、例えば−COONa、−COOK、−COO−NR4 +、−SO3Na、−HPO3Na、−SO3 −NR4 +、−PO3Na2である。(R:C1〜C12のアルキル基或いはフェニル基)特に好ましくは、カルボン酸、スルホン酸で塩としてはナトリウム、カリウムである。
【0020】
最も好ましい有機化合物は置換された或いは非置換のスルホン酸フェニル基或いはその塩、置換された或いは非置換のポリスルホフェニル基或いはその塩、置換された或いは非置換のスルホン酸ナフチル基或いはその塩、置換された或いは非置換のポリスルホナフチル基或いはその塩である。
【0021】
アニオン性置換基を持つ有機化合物としては、p−スルホン酸フェニル、4−ヒドロキシ3−スルホン酸フェニル、2−スルホン酸エチルが挙げられる。
【0022】
カチオン性官能基としてはアミンが挙げられる。そしてアニオン性官能基と同様の有機化合物に置換される。例えば、アミンは酸性媒体中でアンモニウム基になる。好ましくはアミン置換基を持つ有機化合物は5以下のpKaを持つ。第4級アンモニウム基(−NR3 +)と第4級ホスホニウム基(−PR3 +)もまたカチオン性を示し、そしてアニオン性官能基と同様の有機化合物に置換される。有機化合物は、好ましくはフェニル或いはナフチルのような芳香族と第4級アンモニウム或いは第4級ホスホニウムを含む。芳香族は直接カーボンブラックに吸着する。4級化された環状アミンそして4級化された芳香族アミンも同様に有機化合物として使用できる。従ってN−メチルピリジルのようなN−ピリジウム化合物も使用できる。
【0023】
上記カーボンブラックは、界面活性剤を添加することなく直接水相中で微分散され水性分散液の状態で用いられる。分散液の調製には、超音波分散機、加圧分散機、更に媒体型分散機が用いられる。
【0024】
(疎水性モノマー)
疎水性モノマーとしては、スチレン誘導体、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−エトキシスチレン、m−エトキシスチレン、p−エトキシスチレン、o−ブトキシスチレン、m−ブトキシスチレン、p−ブトキシスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジクロルスチレン、2,4−ジブロモスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0025】
又、(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
【0026】
更にアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のトリル系モノマー、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系モノマー、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジメチルブタジエン等の共役ジエン系モノマー等が挙げられる。
【0027】
(イオン性モノマー)
本発明のイオン性モノマーは、陽イオン性基を有するモノマー又は陰イオン性基を有するモノマーから選択される。これらはトナーの帯電極性により選択され、トナーの帯電性がプラスの場合は陽イオン性基を有するモノマーを、又マイナスの帯電性の場合陰イオン性基を有するモノマーを共重合する。
【0028】
陽イオン性基を有するモノマーの陽イオン性基としては、アミノ基、アミド基、第四級アンモニウム塩基から選択される少なくとも一種の基を持つモノマーが用いられる。該モノマーとしては、下記一般式(I)乃至(VII)で表されるもである。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
(但し、R1は水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、R2は炭素原子数1〜8のアルキレン基、炭素原子数1〜8のアルキレンオキシアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、フェニレンアルキレン基もしくはこれらの基が二以上組み合わされてなる基を示し、R3とR4は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子1〜8のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、もしくはフェニルアルキル基を示す。Mは単なる結合基又は−CONR5−,−COO−を示す。Aはベンジル基又はフェネチル基を示す(但しR5は水素原子又はメチル基を示す)。又、Bはピリジル基、イミダゾリル基を示す。)
一般式(I)で表されるモノマーの例としては、下記の様な化合物を挙げる事ができる。
【0032】
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N−メチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノメチルアクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニルアクリレート。
【0033】
一般式(II)で表されるモノマーの例としては、下記の様な化合物を挙げる事ができる。
【0034】
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、N−メチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N−メチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノメチルアクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニルアクリルアミド。
【0035】
一般式(III)で表されるモノマーの例としては、下記の様な化合物を挙げることができる。
【0036】
N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド。
【0037】
一般式(IV)で表されるモノマーの例としては、下記の様な化合物を挙げることができる。
【0038】
p−N,N−ジメチルアミノスチレン、p−N,N−ジエチルアミノスチレン、p−N,N−ジプロピルアミノスチレン、p−N−メチルアミノスチレン。
【0039】
一般式(V)で表されるモノマーの例としては、下記の様な化合物を挙げる事ができる。例えば、N−ビニルジメチルアミン、N−ビニルジエチルアミン、N−ビニルジプロピルアミン、N−ビニルプロピルアミン。
【0040】
一般式(VI)で示されるモノマーの例としては下記の様な化合物を挙げることができる。
【0041】
例えば、各々メタ又はパラ位にアミノ基が付いたビニルベンジルジアルキルアミン(アルキル基は、炭素数n=1〜6の置換又は未置換アルキル基)、ビニルフェネチルジアルキルアミン(アルキル基は、炭素数n=1〜6の置換又は未置換アルキル基)。
【0042】
一般式(VII)で示されるモノマーの例としては下記の様な化合物を挙げることができる。
【0043】
4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール。
【0044】
更に上記一般式(I)〜(VII)に対し第四級アンモニウム塩の形にしたものも用いることが出来る。例えば、炭素数1〜6のアルキル基、ベンジル基、シクロアルキル基等が付いているものが挙げられる。
【0045】
陰イオン性基を有するモノマーとしては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基を有するビニルモノマーが用いられる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、テトラヒドロテレフタル酸、α−アルキル置換アクリル酸(置換アルキルは炭素数1〜4)、モノアルキルイタコン酸(アルキルは炭素数1〜4)、モノアルキルマレイン酸(アルキルは炭素数1〜4)が挙げられる。
【0046】
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。
【0047】
リン酸基を有するモノマーとしては、2−アジッドホスホオキシエチルメタクリレート、2−アジッドホスホオキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−アジッドホスホプロピルメタクリレートが挙げられる。
【0048】
(定着性改良剤)
本発明の定着性改良剤としては、例えば低分子量ポリオレフィン(低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン及びそれらの混合物等)、パラフィン、天然ワックス(カルナバワックス、蜜蝋、モンタンワックス)、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖を有するカルボン酸及びそのエステル等を挙げることができる。これらは水性分散液の形で重合時に上記カーボンブラック分散液に加え、重合する。又定着性改良剤の水性分散液は、定着性改良剤の軟化温度以上に加熱した水中に、定着性改良剤を入れ乳化分散することにより得られる。定着性改良剤の軟化温度が100℃を越える場合には加圧乳化を行えば容易に分散液を調製することができる。
【0049】
本発明に好適に用いられる定着性改良剤として、低分子量ポリオレフィン(低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン及びそれらの混合物等)であり、更に低分子量ポリオレフィンをイオン性モノマーで変性した変性ポリオレフィンである。イオン性モノマーとしては、前述のイオン性モノマーが用いられる。イオン性モノマーは、1×10−2mmol/g−Polymerから1mmol/g−Polymerの範囲で変性されることが好ましい。
【0050】
低分子量ポリオレフィンは、好適な分子量として、数平均分子量(以下Mnと略記する。)は500〜10000、更に好ましくは800〜5000である。
【0051】
トナー製造の際のイオン性モノマーがアニオン性の場合には、アニオン性モノマーで変性された定着性改良剤を用い、逆にイオン性モノマーがカチオン性の場合には、カチオン性モノマーで変性された定着性改良剤を用いることが好ましい。
【0052】
(トナー製造方法)
本発明のトナーの製造方法は、上述した、本発明の疎水性モノマー、イオン性モノマー、カーボンブラック及び定着改良剤を用いて乳化重合し、更に複数個の重合体微粒子を凝集させて製造する。
【0053】
乳化重合法は、水相中に、本発明のモノマー、カーボンブラック及び定着改良剤を添加し加熱攪拌下に水溶性ラジカル重合開始剤を加え、所望の重合添加率まで重合を行う。その際、カーボンブラックと定着改良剤は上述した分散液を用いる。本発明は、界面活性剤を用いない所謂ソープフリー乳化重合法が好ましいが、界面活性剤を用いることも可能である。
【0054】
界面活性剤は、共重合モノマーとしてカチオン性モノマーを用いる場合には、カチオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤から選択された少なくとも一種の界面活性剤を、アニオン性モノマーを用いる場合は、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤から選択された少なくとも一種の界面活性剤を用いることが望ましい。
【0055】
乳化重合液は、乳化重合工程の終了後、加熱処理を行う。処理工程の温度は、低すぎると効果が少なく、又高いと望ましくない凝集が起きる。又時間も短いと効果が少なく、攪拌速度も早すぎても好ましくないので、適宜設定されるべきである。この加熱処理により複数個の重合体微粒子が凝集し、所望の静電画像現像用トナーとなる。
【0056】
ラジカル重合開始剤も同様に共重合モノマーとしてカチオン性モノマーを用いる場合には、カチオン性水溶性ラジカル重合開始剤及び/又はノニオン性水溶性ラジカル重合開始剤から選択された少なくとも一種の水溶性ラジカル重合開始剤を、アニオン性モノマーを用いる場合は、アニオン性水溶性ラジカル重合開始剤及び/又はノニオン性水溶性ラジカル重合開始剤から選択された少なくとも一種の界面活性剤を用いることが望ましい。
【0057】
更に、必要に応じて分子量調節剤として連鎖移動剤を添加することも可能である。
【0058】
この様にして生成したトナー粒子は、洗浄濾過を繰り返し凝集剤、界面活性剤、有機溶媒等の夾雑物を除去した後、乾燥を行い、更に必要な外添剤を加えトナーとする。更に二成分現像剤の場合、前述のトナーにキャリアを混合し、現像剤として用いられる。
【0059】
この様にして生成されたトナーは、3〜15μmの平均粒径を持ち制御された分子量及び分子量分布を有し、更に粒度分布が狭いトナーが提供される。
【0060】
(ラジカル重合開始剤)
水溶性アニオン性ラジカル重合開始剤の例としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。
【0061】
水溶性カチオン性ラジカル重合開始剤の例としては、例えば2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)〕二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミド)二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミド〕二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミド〕二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミド〕二塩酸塩、2,2−アゾビス〔2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミド〕二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド〕二塩酸塩等が挙げられる。
【0062】
水溶性ノニオン性ラジカル重合開始剤の例としては、例えば2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシエチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕,2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二水和物、2,2′−アゾビス〔2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル〕等が挙げられる。
【0063】
これら水溶性ラジカル重合開始剤は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の群の中から少なくとも一種の開始剤を選択して用いる事が可能である。更に必要に応じて、アニオン性重合開始剤とノニオン性重合開始剤の組み合わせ、カチオン性重合開始剤とノニオン性重合開始剤の組み合わせの中から併用して適宜選択することが可能である。
【0064】
(分子量及び分子量分布)
本発明の静電画像現像用トナーの分子量はその目的に応じて選択可能であるが、好ましい範囲としては重量平均分子量(以下Mwと略記する。)で5千から100万、好ましくは8千から50万の範囲が用いられる。更に分子量分布(重量平均分子量を数平均分子量で割った指標、Mw/Mnと略記する。)としては、2から50の範囲、好ましくは2.1から30の範囲である。
【0065】
更に、分子量分布は単峯性分子量分布であっても多峯性分子量分布であっても良い。多峯性分子量分布をもつ重合体粒子を合成する際には、前述の如く、重合工程を複数回組み合わせることで所望の多峯性分子量分布を有する重合体粒子を得ることが可能である。
【0066】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0067】
実施例1
定着性改良剤乳化分散液の製造
低分子量ポリプロピレン84g(数平均分子量=3300、分子量分布(Mw/Mn)=4.5)に常法に従って、無水マレイン酸4gを用い変性させ、溶融粘度を測定後、本発明の定着性改良剤は塩酸を溶解したノニルフェノキシエタノール(エトキシユニット付加モル数=20、HLB=16.0)水溶液280gに添加し、水酸化カリウムを用いてpHを9に調整し、加圧、昇温し変性ポリプロピレンの軟化点以上で乳化分散し、本発明の定着性改良剤乳化分散液を得た。この変性ポリプロピレン分散粒径を光散乱電気永動粒径測定装置(ELS−800:大塚電子工業社製)で測定した結果、185nmであった。
【0068】
カーボンブラック分散液1製造例
75℃の2Lの水にスルファニル酸43gを溶解する。その水溶液を撹拌しながら、表面積230m2/g、吸油量70ml/100gのカーボンブラックを202g添加する。その後室温まで冷却し、濃硝酸26.2gと亜硝酸ナトリウム20.5gを溶解した水溶液を添加する。発泡が終了するまで撹拌する。この方法によりp−C6H4SO3 −が吸着されたカーボンブラックの分散液が生成された。この分散液を1000rpmで10分間遠心分離し、1.2μmのフィルターで濾過しカーボンブラック分散液1を得た。
【0069】
カーボンブラック分散液2製造例
100mlの温水にスルファニルアミド17gと濃塩酸24.7mlを添加する。その溶液をアイスバスで冷却し、20mlの水に亜硝酸ナトリウム7.49gを溶解した水溶液を添加する。20分間撹拌後、このジアゾニウム水溶液の半量を、水250mlに表面積230m2/g、吸油量70ml/100gのカーボンブラックを50g分散した分散溶液中に添加する。約5分後に気体が発生する。分散液は3時間撹拌する。この方法によりp−C6H4SO2NH2が吸着されたカーボンブラック分散液が生成された。この分散液を1000rpmで10分間遠心分離し、1.2μmのフィルターで濾過しカーボンブラック分散液2を得た。
【0070】
静電画像現像用トナー1の合成
冷却管、温度計、攪拌装置、窒素導入管を付けた1lの4頭フラスコに、カーボンブラック分散液1を64ml、蒸留水480ml、スチレン63.2g、n−ブチルアクリレート12g、メタクリル酸4.8g、tert−ドデシルメルカプタン2.75g更に定着改良剤乳化分散液を16gを添加し、撹拌速度350rpmで撹拌し且つ窒素を流しつつフラスコ内温を70℃になるまで加熱した。70℃に内温を維持しつつ、過硫酸カリウム1.22gを純水100mlに溶解した重合開始剤水溶液を添加し、窒素気流下、内温70℃、撹拌速度350rpmを維持しつつ6時間重合を行った。重合終了後室温まで内温を低下させた後、一部分取しゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下GPCと略す)を用い分子量を測定した。
【0071】
このようにして得られた微粒子分散液500mlを5N水酸化ナトリウムを用いpH=9.0に調整した後、撹拌装置、冷却管、温度センサーを装着した1lの4頭フラスコに入れ、250rpmで撹拌を行った。ここに、塩化カリウム28.18gを140mlの蒸留水に溶解した電解質水溶液を添加し、更にイソプロピルアルコール89.7ml、トリトンX−100の3.40gを蒸留水40mlに溶解したノニオン界面活性剤水溶液を順次添加した後、内温を85℃まで昇温し6時間反応を行った。
【0072】
反応液を濾過後、蒸留水を加え再分散し、5Nの水酸化ナトリウムを用いpH=13に調整し水洗、濾過を繰り返し、界面活性剤及び電解質を除去した後、乾燥し、本発明の静電画像現像用トナー1を得た。乾燥後粒径をコールターカウンターを用い測定した。
【0073】
静電画像現像用トナー2の合成
冷却管、温度計、攪拌装置、窒素導入管を付けた1lの4頭フラスコに、カーボンブラック分散液1を21.3ml、蒸留水160ml、スチレン21.07g、n−ブチルアクリレート4g、メタクリル酸1.6g、tert−ドデシルメルカプタン0.03g、更に、本発明の定着改良剤乳化分散液を5.3gを添加し、撹拌速度350rpmで撹拌し且つ窒素を流しつつフラスコ内温を70℃になるまで加熱した。70℃に内温を維持しつつ、過硫酸カリウム0.41gを純水33mlに溶解した重合開始剤水溶液を添加し、窒素気流下、内温70℃、撹拌速度350rpmを維持しつつ3時間重合を行った。重合終了後室温まで内温を低下させた後、更にカーボンブラック分散液1を42.7ml、蒸留水320ml、スチレン42.1g、n−ブチルアクリレート8g、メタクリル酸3.2g、tert−ドデシルメルカプタン1.83g、更に定着改良剤乳化分散液1を10.6gを添加し、撹拌速度350rpmで撹拌し且つ窒素を流しつつフラスコ内温を70℃になるまで加熱した。70℃に内温を維持しつつ、過硫酸カリウム0.82gを純水66mlに溶解した重合開始剤水溶液を添加し、窒素気流下、内温70℃、撹拌速度350rpmを維持しつつ3時間重合を行った。重合終了後室温まで内温を低下させた後、一部分取しゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下GPCと略す)を用い分子量を測定した。
【0074】
このようにして得られた微粒子分散液500mlを5N水酸化ナトリウムを用いpH=9に調整した後、撹拌装置、冷却管、温度センサーを装着した1lの4頭フラスコに入れ、250rpmで撹拌を行った。ここに、塩化カリウム28.18gを140mlの蒸留水に溶解した電解質水溶液を添加し、更にイソプロピルアルコール89.7ml、トリトンX−100の3.40gを蒸留水40mlに溶解したノニオン界面活性剤水溶液を順次添加した後、内温を85℃まで昇温し6時間反応を行った。
【0075】
反応液を濾過後、蒸留水を加え再分散し、5Nの水酸化ナトリウムを用いpH=13に調整し水洗、濾過を繰り返し、界面活性剤及び電解質を除去した後、乾燥し、本発明の静電画像現像用トナー2を得た。乾燥後粒径をコールターカウンターを用い測定した。
【0076】
静電画像現像用トナー3の合成
静電画像現像用トナー1の合成において、カーボンブラック分散液1をカーボンブラック分散液2に変え、添加量を39.68mlにした他は静電画像現像用トナー1の合成と同一の処方で本発明の静電画像現像用トナー3を合成した。
【0077】
比較静電画像現像用トナー1の合成
静電画像現像用トナー1の合成において、カーボンブラック分散液1の代わりにカーボンブラック(リーガル330R、キャボット社製)をアルミニウムカップリング剤(プレンアクトALーM、味の素(株)製)で処理した処理済みカーボンブラックの10.68gをイオン交換水200mlにドデシル硫酸ナトリウム2.28gを溶解した水溶液に添加し、超音波ホモジナイザーを用い分散を行い、分散粒径90nmの分散液を120ml使用した他は静電画像現像用トナー合成例1と同一の処方で比較静電画像現像用トナー1を合成した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1において、d50は静電画像現像用トナー粒子50個の体積平均粒径を表し、σ50は静電画像現像用トナー粒子50個の標準偏差を表し、CVは粒径分布として、σ50/d50を用いた。分子量はGCPの測定値を示す。
【0080】
表1から、本発明の静電画像現像用トナーはカーボンブラックの分散に界面活性剤を使用しないのに、粒径分布の均一なトナーであることがわかる。
【0081】
実施例2
本発明の静電画像現像用トナー1〜3及び比較静電画像現像用トナー1を用い、これら100重量部に対して疎水性シリカ2重量部、酸化チタン1重量部を添加混合し、この外添処理トナー5重量部とメタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MAA/St=7/3重量比)で表面被覆したフェライト粒子(キャリア、平均粒径60μm)95重量部を混合し、本発明の現像剤1〜3及び比較現像剤1を作製した。この現像剤を撹拌後60分の帯電量を低温低湿(LL)と高温高湿(HH)の2環境でブローオフ法を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
表2から明らかなように、本発明の現像剤は比較現像剤に比べて帯電量が安定し、LLとHHでの帯電量の環境差が低減されていることがわかる。
【0084】
【発明の効果】
本発明により、乳化重合し、複数個の重合体微粒子を凝集させて製造した静電画像現像用トナーにおいて、界面活性剤の添加量を低減する事により帯電量の安定性と環境差を低減することができた。
Claims (6)
- 疎水性モノマー、イオン性モノマー、カーボンブラック及び定着改良剤を乳化重合し、複数個の重合体微粒子を凝集させて製造した静電画像現像用トナーにおいて、該カーボンブラックは界面活性剤を含有しないカーボンブラック分散液として添加され、かつ該カーボンブラックの表面に、親水性基で置換された分子量175以下の、フェニル化合物、ナフチル化合物又はC 1 〜C 12 のアルキル化合物を存在させることを特徴とする静電画像現像用トナー。
- 上記静電画像現像用トナーのBET比表面積が5m2/gから100m2/gであることを特徴とする請求項1記載の静電画像現像用トナー。
- 請求項1又は2記載の静電画像現像用トナーを含有することを特徴とする現像剤。
- 感光体上に形成された静電荷潜像を顕在化しトナー像とする画像形成方法において、請求項1又は2記載の静電画像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
- 感光体上に形成されたトナー像を転写する画像形成方法において、請求項1又は2記載の静電画像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
- 感光体上に形成されたトナー像を転写材上に転写した後に、該感光体上に残留するトナーをクリーニングし除去する画像形成方法において、請求項1又は2記載の静電画像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
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