JP3572203B2 - パターン識別方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パターン識別方法に関する。更に詳述すると、本発明は、特に硬貨などの対象物を識別するためのパターン識別方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば円形のパターンを識別するには、特開平5−143731号に示されるように、まず認識しようとするサンプル画像から円形パターンの外径(直径)情報を得て候補のテンプレートを選び、次にサンプル画像から候補のテンプレートと同位置・同サイズでパターンを切り出して必要な処理を施し、0〜2πの全周でテンプレートとのマッチング演算を行い、類似度もしくは非類似度を求めていた。このテンプレートは認識しようとするパターン毎に固有に作られるものであり、例えば同じ外径の対象物を4種類に識別したい時は、各パターン毎にそれぞれ専用の4種類のテンプレートが必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、パターン毎にテンプレートを作成してマッチング演算を行うこのような識別方法では、複数のテンプレートについてそれぞれ0〜2πの全周でマッチング演算を行うため、候補のテンプレートが増えれば演算量が増加するという問題がある。例えばある種類のコインの識別には表裏2枚のテンプレートと2回のマッチング演算が最低限必ず必要である。演算量の増加はそのまま演算時間の増加となるので、高速性を要求される硬貨などの判別には不利となってしまう。また、テンプレートデータを候補の種類だけ装置内に格納しておかなければならないので、テンプレートの種類が増加すると、装置内にメモリなどのリソースを大量に持たなければならず、装置全体のコストが増大するという問題もある。
【0004】
そこで本発明は、パターン識別に要するテンプレート数を少なくしてパターン識別を迅速にし、装置が必要とするメモリを少なくできるパターン識別方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明では、読み取られた画像から比較パターンを形成し、該比較パターンを基準となる複数のテンプレートとマッチング演算し、比較パターンを類似するテンプレートのパターンと識別するようにしたパターン識別方法において、複数のテンプレートの特徴となるパターン部分を合体させて一つの複合テンプレートを構成し、比較パターンを複合テンプレートとマッチング演算することにより、1回のマッチング演算により複数のテンプレートとの識別をするようにしている。
【0006】
この複合テンプレートは各テンプレートの特徴的な部分が組み合わされて形成されたものであり、この一つのテンプレートによって比較パターンを識別することが可能である。したがって、複数のテンプレートを使用せずとも、この複合テンプレートを用いて1回マッチング演算すれば、識別対象である比較パターンの特徴部分が複合テンプレートのどの特徴的パターン部分と対応するかが判り、この比較パターンを識別するための類似度(あるいは非類似度)が求められる。
【0007】
請求項2記載の発明では、請求項1記載のパターン識別方法において、読み取られた画像は円形状物又は四角形状物であり、読み取られた画像のうちの一部が特徴となるパターン部分を有するものである。したがって、特徴となるパターン部分が組み合わされて複合テンプレートが形成され、このテンプレートによって円形状物又は四角形状物の画像が識別される。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のパターン識別方法において、複合テンプレートが比較パターンと同一の大きさに形成されている。この場合、各比較パターンをそれぞれ分割し、分割セグメントを組み合わせればそのまま複合テンプレートとなるから、テンプレートの形成やマッチング演算が簡単なものとなる。
【0009】
請求項4記載の発明のパターン識別方法では、読み取られた画像はコインであり、複合テンプレートはコインの表と裏のテンプレートを合体させたものである。したがってこのような複合テンプレートを用いれば、比較パターンがあるコインの表裏のどちらであるかに関係なく、1枚のテンプレートおよび1回のマッチング演算にて識別が可能である。
【0010】
請求項5記載の発明では、マッチング演算により、比較パターンと複合テンプレートとの類似度又は非類似度を演算し、複合テンプレートを構成する部分テンプレートが比較パターンの一部に類似すると判定された時、この比較パターンは部分テンプレートを含む画像であると識別するようにしている。この場合、複合テンプレートはそれぞれのテンプレートの特徴的なパターン部分を組み合わせたものだから、この複合テンプレートと比較パターンとを1回マッチング演算し、これらパターン部分のいずれかとの類似度が高いとすれば当該パターン部分を有するテンプレートと類似すると判断することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1〜図6に、本発明のパターン識別方法の一実施形態を示す。パターン識別方法は、読み取られた画像から比較パターンを形成し、該比較パターンを基準となる複数のテンプレートとマッチング演算して比較パターンを類似するテンプレートのパターンと識別するものである。本発明は、複数のテンプレートの特徴となるパターン部分を合体させて一つの複合テンプレートTを構成し、比較パターンX′を複合テンプレートTとマッチング演算することにより、1回のマッチング演算により複数のテンプレートとの識別を図ることとしている。
【0013】
このような複合テンプレートTを作成するにあたり、本実施形態では、各テンプレートの特徴部分を抽出し、それらを組み合わせて1つのテンプレートを形成するようにしている。例えば図1に示すように、種類の異なる3つの円形対象物1,2,3に関し、それぞれの基準となる同じ大きさの3枚の環状専用テンプレートA,B,Cがあった場合、各テンプレートA,B,Cからその中で特に特徴をよく示している特徴的なパターン部分(セグメント)A′,B′,C′を部分的に抽出する。
【0014】
この場合の特徴的な部分とは、対象物の表面の凹凸や模様などを他の対象物との違いを明確に示す程度に特徴的に表している部分である。識別対象として読み取られた各画像は、それぞれに、その画像の一部が特徴となるようなパターン部分を有しているものである。ここでは、図示するようにテンプレートA,B,Cをそれぞれ同じ区切り方で放射状に分割し、分割されたセグメントからテンプレートA,B,Cの特徴的パターン部分A′,B′,C′(例えば図示するような斜線または点が付された部分)をそれぞれ1つずつ、別の箇所から抽出している。抽出された各セグメントA′,B′,C′は1つに組み合わされ、3つの特徴的セグメントからなる1つの円形複合テンプレートTが形成される。これら複合テンプレートT作成時に採用する専用テンプレートA,B,Cの各セグメントA′,B′,C′は、そのパターンの最も特徴的な部分を含むものであり、したがって複合テンプレートTは、1つの中に複数のパターン識別情報を有することとなる。これら各セグメントA′,B′,C′の形状やサイズについては特に限定はなく、特徴的部分を含む限りにおいて任意である。なお、読み取られた画像はメモリから切り出されているが、この切り出しは全て中心から同じ位置で、サイズも等しくなるようにして行われる。
【0015】
複合テンプレートTの大きさは特に制限されるものではないが、本実施形態では大きさが等しいテンプレートA,B,Cを分割した後各セグメントA′,B′,C′を組み合わせているから、テンプレートA,B,Cと同一の大きさに形成されることとなる。
【0016】
なお、ここでは複合テンプレートTが3つのテンプレート(の一部)によって形成される場合について説明したが、2つ、あるいは4つ以上のテンプレートによってもこの複合テンプレートTが形成され得ることはいうまでもない。また、複合テンプレートTは上述のようにして1種類を形成する他、残りの分割セグメントを組み合わせることにより2種類以上を同時に形成することも可能である。
【0017】
次に、この複合テンプレートTを基準とし、判別対象となるサンプル画像Xを識別するためのパターンマッチング演算を行う。このマッチング演算は、サンプル画像Xの比較パターンX′と複合テンプレートTとの類似度又は非類似度を演算するものであり、複合テンプレートTを構成する部分テンプレート(つまりもとの各セグメントA′,B′,C′)が比較パターンX′の一部と類似すると判定された時、部分テンプレートA′,B′,C′を含む画像であると識別するようにしている。
【0018】
まず、図2に示すように、サンプル画像Xの円形パターンを読み取り、各画素の濃度をデジタル信号として画像メモリに記憶し(S1:入力工程)、記憶した円形パターンXの中心座標を検出する(S2:中心座標検出工程)。次に、検出座標を基準に、画像記憶部(画像メモリ)から複合テンプレートTと同形状・同サイズで切り出して図3に示すようにエッジ強調や圧縮など必要な加工を行い(S3:切り出し・加工工程)、複合テンプレートT作成時のレベルと同程度となるようにレベル変換した比較パターンX′を形成する(S4:レベル変換工程)。レベル変換は、比較パターンX′を形成する際に切り出された2次元画像が、複合テンプレートTとほぼ同様の輝度分布を示すように、つまり比較パターンX′と複合テンプレートTとの全体的な輝度差をなくすように、テンプレートの輝度分布を使用して比較パターンX′の輝度を変換する工程である。これにより、差分絶対値和を用いたパターンマッチング演算において、比較パターンと複合テンプレートとの差をより明確にすることができる。
【0019】
次のパターンマッチング演算の工程では、テンプレートTあるいは比較パターンX′のいずれかを、例えば(128/360)度ずつ1回転(0〜2π)させ(図2のS5)、表面形状や凹凸を複合テンプレートT上のパターンと照合させて類似度を求める(S6:マッチング演算工程)。この場合、複合テンプレートTは各テンプレートA,B,Cの特徴的部分を放射状に備えているから、サンプル画像Xを相対的に1回転させることにより、すべての特徴的パターンと照らし合わせることができる。そして、比較円形パターンX′が複合テンプレートTの各セグメントA′,B′,C′に応じたパターンを含むか否かを判定する(S7:演算結果比較工程)。なお、図3において、比較パターンX′とセグメントB′のパターンをそれぞれ関数fp、tで示した場合における非類似度演算あるいは類似度演算を表す式の一例を示している。
【0020】
本実施形態では、複合テンプレートTの分割セグメントA′,B′,C′毎に0から2πまで回転させながらマッチング演算を行うようにしており、このとき、セグメント内部における複合テンプレートTとサンプル画像Xとの類似度もしくは非類似度は各セグメントA′,B′,C′毎に決められたしきい値などによって全角度で評価される。ある角度において類似度(又は非類似度)がもっとも高いピークとなる場合には、マッチング演算において出力される値がしきい値に対して活性状態にあることを示し、このとき、サンプル画像X中の比較パターンX′は複合テンプレートTに含まれるパターンに一致していると判断できることから判別が可能となる。そして0から2πまでの回転中に、マッチング演算結果がどの分割セグメントA′,B′,C′に対しても活性状態とならない場合には、サンプル画像Xの比較パターンX′が複合テンプレートTに含まれないと判断でき、これを排除することができる。なお、複合テンプレートTを構成するセグメントの大きさについては、各比較パターンの中に特に変化をよく示す特徴的なパターン部分があれば、例えば中心角度10°程度のわずかなセグメントであっても識別可能である。このように画像を取り入れてから判別するまでの画像処理部の構成は、図4に示すようになる。
【0021】
以上が環状に作成した複合テンプレートTを用いてのパターン識別方法の一実施形態であるが、識別対象物がコインのように表裏で異なるデザインとなっている場合、以下のように、表面と裏面の模様・形状などをそれぞれテンプレートA1,A2(添字1,2により表裏のいずれかを示す。図6において同じ)とし、この両テンプレートA1,A2により複合テンプレートTを形成することもできる。この場合のテンプレートA1,A2の組み合わせとしては、例えば図5(A)に示すように半分ずつ分割したものを組み合わせたり、図5(B)に示すように異形の分割セグメントを組み合わせたりしたものがある。あるいは、図5(C)に示すように環状のテンプレートA1,A2を異形に分割して組み合わせたり、図5(D)に示すように径の異なる同心円環形分割テンプレートを組み合わせたりしても良い。このような複合テンプレートTによれば、対象物が表であっても裏であっても識別できるし、同時に表裏の判断を行うことができる。
【0022】
また、複数種類のテンプレートA,B,Cを組み合わせる第1の実施形態と、表裏のテンプレートA1,A2を組み合わせる第2の実施形態の両方を合わせた複合テンプレートTを作成することもできる。即ち、図6に示すように、複数のセグメント(ここではA〜Fの6種類を示す)につき、それぞれ表裏のデータをとった各テンプレート(計12種類)を組み合わせ、1つの複合テンプレートTとすることができる。この複合テンプレートTを形成する各パターン部分は、それぞれのテンプレートの形状・模様など特徴をよく表しているものであることはいうまでもない。
【0023】
以上のようにパターン識別を行う本発明の方法によれば、複合形成したテンプレートの中に複数の情報を備えさせたことにより、テンプレートの枚数が少なくて済む。
【0024】
また、本発明の識別方法は、サンプル画像XをテンプレートA,B,Cと順に照らし合わせるのではなく、並行させながらマッチング演算を同時進行させることが可能だから、相対的に1周させるうちに何種類かのテンプレートをマッチングさせることができるものである。したがって、サンプル画像Xを識別する際に多数のテンプレート1枚1枚と照らし合わせなくて済み、識別作業が高速化する。
【0025】
また、パターンマッチング演算においてサンプル画像Xから切り出す円形パターンの位置・サイズは複合テンプレートTと同じである。これにより、テンプレートの種類が増えても処理時間やハード的なリソースを節約できる。
【0026】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、高速でありながらより安定した正確な識別性能が重視される場合には、複数の装置などを用いて段階的に判別がなされることがある。このような場合、本発明を第一の判別処理段階で用いれば、サンプル画像X中のパターンの候補(例えば種類や表裏)や姿勢(角度)が短時間で求まる。そしてこの後に第二の判別処理として従来と同様な専用テンプレートにて詳細なマッチング演算を行うようにすれば、判別の信頼性向上が可能となる。第二の判別処理では候補パターンが1種類まで絞り込まれており、しかもサンプル画像X中のパターンの姿勢が求められているので、従来のように回転させながらのマッチング演算が不要となる。したがって、識別に要する時間の更なる短縮が可能となる。
【0027】
また、上述した実施形態では識別対象がコインである場合を想定していたが、これに限らず、例えば王冠、ラベル、指紋、虹彩(アイリス)などの他の円形状物の認識にも利用できる。更には、これら以外にも、例えば紙幣や有価証券、チケットなどの認識処理において本発明の実施が可能である。換言すれば、本発明による識別対象は円形状物に限らず四角形状物にまで拡大できる。このように四角形状物を識別する場合、複合テンプレートTの分割セグメントは主として短冊状に形成されることになる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、請求項1記載の発明によれば、1回のマッチング演算によって複数のテンプレートとの識別が可能である。このため迅速なパターン識別ができるし、テンプレートが1つで済むことから装置が必要とするメモリを少なくできる。
【0029】
また、請求項2記載の発明では、特徴的パターン部分を読み取ることにより、円形状物又は四角形状物を識別することができる。
【0030】
更に請求項3記載の発明によれば、複合テンプレートを比較パターンと同一の大きさに形成しているから、複数の切り出し形状を準備する必要がない。
【0031】
また、請求項4記載の発明によれば、複合テンプレートを用いてコインの種別や表裏を識別できる。
【0032】
そして請求項5記載の発明によれば、複合テンプレートと比較パターンとを1回マッチング演算することにより当該比較パターンがテンプレートと類似するか否か判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す図であり、3つの環状テンプレートから特徴的なパターン部分を抽出して複合テンプレートを形成する様子を示す。
【図2】本発明のパターン識別方法の流れを示すフロー図である。
【図3】サンプル画像を切り出して加工したり、複合テンプレートと合うようにレベル変換する様子、およびマッチング演算式の例を示す。
【図4】画像を取り入れてから判別するまでの画像処理部の構成を示す図である。
【図5】表面と裏面の模様・形状から複合テンプレートを形成する様子を示す図であり、(A)は同じ形、(B)は異形、(C)は異形のドーナツ形、(D)は同心円環形の分割テンプレートを使用した場合についてそれぞれ示す。
【図6】複数種類の画像の表裏の比較パターンを組み合わせて作成した複合テンプレートの一例を示す。
【符号の説明】
A,B,C テンプレート
A′,B′,C′ パターン部分
T 複合テンプレート
X′ 比較テンプレート
Claims (5)
- 読み取られた画像から比較パターンを形成し、該比較パターンを基準となる複数のテンプレートとマッチング演算し、前記比較パターンを類似するテンプレートのパターンと識別するようにしたパターン識別方法において、前記複数のテンプレートの特徴となるパターン部分を合体させて一つの複合テンプレートを構成し、前記比較パターンを前記複合テンプレートとマッチング演算することにより、1回のマッチング演算により前記複数のテンプレートとの識別をするようにしたことを特徴とするパターン識別方法。
- 前記読み取られた画像は円形状物又は四角形状物であり、読み取られた画像のうちの一部が特徴となるパターン部分を有するものであることを特徴とする請求項1記載のパターン識別方法。
- 前記複合テンプレートは前記比較パターンと同一の大きさに形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン識別方法。
- 前記読み取られた画像はコインであり、前記複合テンプレートは前記コインの表と裏のテンプレートを合体させたものであることを特徴とする請求項3記載のパターン識別方法。
- 前記マッチング演算により、前記比較パターンと前記複合テンプレートとの類似度又は非類似度を演算し、前記複合テンプレートを構成する部分テンプレートが前記比較パターンの一部と類似すると判定された時、前記部分テンプレートを含む画像と識別することを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のパターン識別方法。
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